クッション成分を加えた履物底の構造
【課題】履物は甲革と靴底構造体とで作られており、そのうちの靴底構造体は中底と、中物と表底とで作られている。そのうちの中物にはクッション成分が用いられて、底に加えられる力を和らげ、エネルギーを吸収するようになっている。ところが従来のクッション成分は履いている間にその能力が低下するので、これを改良しようとする。
【解決手段】流体が充満している区室(50)と、区室の一部の上に延びている被覆素材(60)とを含むクッション成分を履物に用いる。上記の区室は内部接続を欠落しており、区室内の流体は外界の圧力に実質的に等しい圧力を持っている。区室は多数の突部(56a〜56f)を形成しており、クッション成分は突部の間に延びる多数の挿入部を含んでいる。挿入部は、クッション成分の周縁部分の圧縮性を減少させる長い構造のものである。
【解決手段】流体が充満している区室(50)と、区室の一部の上に延びている被覆素材(60)とを含むクッション成分を履物に用いる。上記の区室は内部接続を欠落しており、区室内の流体は外界の圧力に実質的に等しい圧力を持っている。区室は多数の突部(56a〜56f)を形成しており、クッション成分は突部の間に延びる多数の挿入部を含んでいる。挿入部は、クッション成分の周縁部分の圧縮性を減少させる長い構造のものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は履物に関するものである。さらに詳しく言えば、この発明は履物への使用に適したクッション成分に関するものであり、そのクッション成分は履物の中で突部を持った区室(chamber)と突部(lobes)間に付設された挿入部(inserts)とからなるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の履物は、2つの主要な構成材料、すなわち甲革(upper)と靴底構造体(sole structure)とで作られている。運動競技用の履物については、例えば甲革が一般に織物、発泡体及び皮革のような材料からなる多数の層で作られ、それらの材料は一体に縫い合わされ又は接着されて、履物の内部に足を確実にまた気持ちよく入れるための空所を形成している。靴底構造体は、中底(insole)と、中物(midsole)と、表底(outsole)との層状構造とされている。中底は空所内に付設される薄いクッション部材であって、足に接近して履物の快適性を高めている。中物は、靴底構造体の中間層を形成し、多くの場合ポリウレタン又はエチルビニルアセテートのような発泡した材料で作られている。表底は中物の下面に固定されて、地面に密接するための耐久性と耐摩耗性のある表面を提供している。
【0003】
従来の発泡した材料で作られた中物は、その上に加えられる荷重を受けて弾性的に縮小し、それによって、例えばウォーキング又はランニングに伴なう力を和らげ、エネルギーを吸収している。発泡した材料の弾性に富んだ圧縮は、発泡構造材が気泡を含有しており、且つその気泡が実質的に気体によって置換されていて、内部容積が限定されていることに一部依存している。すなわち、発泡した材料は空気を封入している多数のポケットを含んでいる。しかし、圧縮が繰り返されたあとでは、気泡構造が崩壊し始め、発泡体の圧縮率が減少する結果となる。従って、中物が力を弱め、エネルギーを吸収する全体としての能力が中物の使用期間中に劣化する。
【0004】
従来の発泡材料における気泡構造崩壊の影響を最小にするための1つの方法は、Rudyの下記特許文献1に記載されているように、流体の充満している区室が配置された構造を使用することであって、この特許はこれを引用して組み入れる。流体の充満している区室は袋状構造を持っており、その袋はエラストマー材料で作られた外がわ包囲部材を持ち、その包囲部材は履物商品の長手方向に貫通する多数の管状部材の輪郭を形成している。管状部材は互いに流体を流通し合っており、共同して履物の幅を横切って延びている。Rudyの下記特許文献2は、またこれを引用して組み入れるが、これは発泡した材料中にカプセル化された流体充満の同様な区室を記載しており、そこでは流体充満の区室と、カプセル化している発泡した材料との組み合わせが、中物として機能している。
【0005】
Parker他の下記特許文献3は、これを引用して組み入れるが、これは発泡材でカプセル化された流体充満の区室を記載しており、そこでは孔が発泡体に、しかも区室の側面部分に沿ってあけられている。中物が圧縮されると区室が孔内へ広がる。従って、孔は中物が圧縮されている間剛性を減少させ、他方で孔は履物全体の重量を減少させている。さらに、発泡した材料に孔を適当に付設することにより、衝撃応答特性の全体を履物の特定領域で調整することができる。
【0006】
上記の流体充満の区室は、2枚のフィルムを使用する技術によって製造することができ、その場合エラストマーからなる2枚の別々のフィルム層を配置して、全体が区室を形成するようにする。その後、それらの層をそれぞれの周縁で一体に溶着して、区室の上面、下面及び側壁を形成し、それらの層を内部の予め定められた位置で溶着して、区室に所望の配置を付与する。すなわち、層の内部の一部を接続して、所望の位置で予め定められた形と大きさを持った多数の区室を形成する。その後、流体加圧源に接続されたノズル又は針を、区室内に作られた充填入口へ挿入して、これらの区室を外気圧以上に加圧する。区室が加圧されたあとで、ノズルを除き、例えば溶着によって充填入口をシールする。
【0007】
上記タイプの流体充満の区室を製造するための別の製造技術は、ブローモールド法によるものであり、その方法では溶融されたエラストマー材料を所望の全体形状と区室配置とを持った成形型内に入れる。成形型は加圧空気を付与するための開口を一個所に持っている。加圧空気は溶融された弾性高分子材料を成形型の内面に向かって押し付け、成形型内で材料を硬化させ、こうして区室を成形して所望の配置を持たせる。
【0008】
履物の中物に用いられる別のタイプの区室は、何れもRudyの下記特許文献4及び特許文献5に記載されており、何れも引用して組み入れる。区室は二重壁の織物芯材上に、強固に接着された外側の遮断層を気密にシールしたもので作られている。二重壁の織物芯材は、通常互いに予め定められた距離を隔てている上方と下方との外側の織物層からなり、二重針竿のラッシェル編み法によって作ることができる。接続糸は多数の個々の繊維を持ったマルチフィラメントヤーンの形をしていることが多く、織物の内部で織物層の向き合った面の間に延びており、織物層に固定されている。接続糸の個々のフィラメントは、遮断層が外方向に移動するのを所望の距離に制限する伸び抑制部材を形成している。
【0009】
下記特許文献6及び特許文献7は何れもGoodwill他の発明したものであり、何れも引用して組み入れるが、また二重壁の織物芯材を加えた区室を記載しているけれども、区室の上面と下面との間には途中に周縁の縫い目を設けないこととしている。その代わりに、縫い目を区室の上面に接近して設けている。このデザインの利点は、最大の側壁湾曲部分から縫い目をなくしており、接続糸も含めて区室の内部の視界を増大させていることである。このタイプの区室を作るのに用いられている方法は、成形型を使用して下面と側壁とからなる殻を成形することからなる。二重壁の織物芯材を被覆層の上面上に載せ、上記の殻を上記の被覆層と芯材との上に載せる。こうして組み合わされた殻と、被覆層と芯材とをその後積層場所へ移し、そこで無線周波エネルギーにより芯材の反対側を殻と被覆層とに接着し、且つ殻の周縁を被覆層に接着する。その後、連結している糸を緊張状態にするために流体を挿入して区室を加圧する。
【0010】
区室を熱成形する方法は、Skaja他の下記特許文献8に記載されているので、これを引用して組み込むが、そこでは一組の柔軟な熱可塑性層を加熱し、一対の成形型に向けて置き、真空を使用して上記の層を成形型内に引き込む。その後、上記層を一体に押圧して区室を形成する。
【0011】
上に述べた区室内に含まれている流体は、Rudyの下記特許文献9に記載されているどのようなガスであってもよく、例えばヘキサフルオロエタンやサルファーヘキサフルオライド(六弗化硫黄)のようなものであってもよい。さらに、或る区室は加圧されたオクタフルオロプロパン、窒素又は空気のようなガスを封入している。上に述べた区室の外層を形成する材料は、区室内の流体を実質的に透過させない熱可塑性エラストマーのような重合体材料で作ることができる。さらに、特定して言えば、1つの適当な材料は、Mitchell他の下記特許文献10及び特許文献11に記載されているような、熱可塑性のポリウレタンとエチレン・ビニルアルコール共重合体の交互の層で作られたフィルムであって、上記2つの特許を引用して組み入れる。この材料の変形物として、中心層がエチレン・ビニルアルコール共重合体で作られ、この中心層に隣接する2つの層が熱可塑性ポリウレタンで作られ、外層が熱可塑性ポリウレタンとエチレン・ビニルアルコール共重合体の再粉砕材料で作られているような変形物も使用することができる。別の適当な材料は、Bonk他の下記特許文献12及び特許文献13に記載されているような、ガス不透過性材料とエラストマー材料との交互層からなる柔軟な薄膜であるから、上記特許を引用して組み入れる。他の適当な熱可塑性エラストマー材料又はフィルムはポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、例えば流延又は押し出しによるエステル基材のポリウレタンフィルムである。さらに適当な材料は、上述のRudyの下記特許文献1及び特許文献2に記載されている。さらに、ダウ ケミカル カンパニーの製品、PELLETHANE、BASF コーポレイションの製品、ELASTOLLAN、B.F.グッドリッチ カンパニーの商品、ESTANEのような多くの熱可塑性ウレタンを使用することができ、これらはすべてエステルか又はエーテルを基材とするものである。さらに、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン及びポリカーボネートのマクロゲルを基材とする他の熱可塑性ウレタンも使用することができ、また、種々の窒素ブロッキング材料も使用することができる。さらに、適当な材料は、Rudyの下記特許文献14及び特許文献15に記載されているような結晶性材料を含む熱可塑性フィルムであるから、上記特許を引用して組み込み、またBonk他の下記特許文献16と、特許文献17及び特許文献18に記載されているようなポリエステルポリオールを含むポリウレタンも使用でき、上記特許を引用して組み込む。
【0012】
上述の区室は、一般に履物の中物を構成している発泡した重合体の中でカプセルに包み込まれている。Skaja他の下記特許文献19とShorten他の下記特許文献20とは、何れも引用して組み入れるが、それら明細書に記載されている区室は、区室の反対側で内側へ延びる多数の窪みを持った重合体層で作られている。区室の上端面上の窪みは、区室の下側で対応する窪みに接して接着され、重合体層が外がわへ移動するのを抑制している。その上に、窪みの形に一致する形を持った重合体素材が、窪み内に付設され、且つ袋状組織の外部に接着されて付加的な支持を与えている。その後、区室と重合体素材とは発泡材料内でカプセルに包まれて中物を形成する。
【特許文献1】米国特許第4,183,156号明細書
【特許文献2】米国特許第4,219,945号明細書
【特許文献3】米国特許第4,817,304号明細書
【特許文献4】米国特許第4,906,502号明細書
【特許文献5】米国特許第5,083,361号明細書
【特許文献6】米国特許第5,993,585号明細書
【特許文献7】米国特許第6,119,371号明細書
【特許文献8】米国特許第5,976,451号明細書
【特許文献9】米国特許第4,340,626号明細書
【特許文献10】米国特許第5,713,141号明細書
【特許文献11】米国特許第5,952,065号明細書
【特許文献12】米国特許第6,082,025号明細書
【特許文献13】米国特許第6,127,026号明細書
【特許文献14】米国特許第4,936,029号明細書
【特許文献15】米国特許第5,042,176号明細書
【特許文献16】米国特許第6,013,340号明細書
【特許文献17】米国特許第6,203,868号明細書
【特許文献18】米国特許第6,321,465号明細書
【特許文献19】米国特許第5,572,804号明細書
【特許文献20】米国特許第6,029,962号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は、区室と多数の挿入部とを含む履物用のクッション成分を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
区室は、第1表面材と、これと向き合う第2表面材とを持ち、それら表面材は周縁が接合されて流体を入れるための容積を形成している。第1表面材と第2表面材とは、第1表面材の内部の或る部分を第2表面材の内部の或る部分に固定するような内部接続部を欠落しており、第1表面材と第2表面材とは、区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成している。突部は中心領域と流体を流通させており、また突部は、互いに隣接して付設されている突部の間に間隔をおいている。挿入部はその間隔内に付設され、柔軟な材料で作られている。
【0015】
材料の層が第1表面材と第2表面材との上に延びており、挿入部はその材料の層に固定され、挿入部が区室の突部の間へ延びるようになっている。各挿入部は、第1表面材に接近して付設された第1部分と、第2表面材に接近して付設された第2部分とからなり、第1部分が第2部分に固定されている。この発明の或る具体例では、第1部分が3個の凹状(concave)構造で作られ、第2部分がまた3個の凹状構造で作られている。それらの構造の形状、とくに挿入部の形状を変更することにより、クッション成分のクッション特性を修正することができる。
【0016】
区室内の流体は、履物の周りの外気圧に実質的に等しい圧力にすることができ、その流体は例えば空気であってもよい。比較的低い圧力にすると、第1表面材と第2表面材との間に内部接続部がなくても、第1表面材と第2表面材とが所望の形状を保持することができることとなる。すなわち、比較的低い圧力では、加圧された区室内で起きる外がわへの移動を抑制するような引張部材を区室内に付設する必要がなくなり、第1表面材と第2表面材とが平らな又は湾曲した形を持つことができることとなる。
【0017】
この発明が特徴としている新規な利点と特徴とは、添付の特許請求の範囲において以下に詳細に指摘される。しかし、新規な利点と特徴をよりよく理解するために、この発明についての種々な具体例と概念とを記載し例示している下記の説明事項と、添付図面とを参照することができる。
【0018】
前述のこの発明の開示と、下記のこの発明を実施するための最良の形態とは、添付の図面に関連させて読むと、一層よく理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
下記の説明と添付図面とは、この発明に従ってクッション成分が付加された中物を持った運動用履物を開示している。履物、とくにクッション成分に関する概念は、競技的活動に適した構造を持った履物について開示する。従って、この発明は、例えば、ランニング、バスケットボール、ウォーキング、テニス及びサッカーのような活動に際して、訓練と競技の期間に使用するように設計された履物に適している。さらに、この発明は、ドレスシューズ、ローファー、サンダル及びワークブーツのような非競技用履物の型に適用できる。従って、ここに開示されている概念が、以下に説明し添付の図面に描かれている特定の型以外に、さらに広い範囲の種々の履物の型に適用できる、ということは当業者に明らかであろう。
【0020】
1つの履物10が図1に描かれており、この履物は甲革20と靴底構造体30とで作られている。甲革20は実質的に従来の構造のものであり、織物、発泡体、及び皮革のような多数の素材で構成されており、それら素材は縫い付けられ又は接着されて一体となり、足を確実に且つ快適に収容するための内腔を形成している。靴底構造体30は甲革20の下方に位置しており、2つの主要素材である中物31と表底32とで構成されている。中物31は甲革20の下面に、例えば縫い付け又は接着により固定され、靴底構造体30は地面に接触するときに、力をやわらげエネルギーを吸収する。すなわち、中物31は、例えばウォーキング又はランニングの間に足にクッションを与える構造にされている。表底32は、中物31の下面に固定されており、地面に接触して耐久性と耐摩耗性とを持った材料で作られている。さらに、靴底構造体30は中底33を含んでおり、中底33は薄いクッション部材であって、空所内に位置し足に接近して履物10の快適性を向上させている。
【0021】
中物31は、主としてポリウレタン又はエチルビニルアセテートのような重合体の発泡材料で作られ、その発泡材料は少なくとも部分的にクッション成分40をカプセル化している。クッション成分40は、中物31の持つ力の減弱化とエネルギー吸収特性とを補充し、それによって靴底構造体30は一層のクッション性を与えるのに利用される。その上に、クッション成分40は靴底構造体30の安定性を高めている。クッション成分40の構造の説明に続いてより詳しく説明するように、望ましいクッションと安定性は、圧力変動、クッション成分40の構造的及び材料的特性及びフィルムの引張りによって与えられる。
【0022】
中物31に対するクッション成分40の特別な位置は、この発明の範囲内で有意義に変化することができる。図2〜4に示したように、クッション成分40は中物31の上面と実質的に同じ広がりを持っている。従って、クッション成分40の上面は一般に中物31を形成している重合体の発泡材料の上面と同じ平面にある。しかし、他の具体例ではクッション成分40は中物31の発泡した材料内に埋め込まれてもよく、又は例えば中物31の下面と実質的に同じ広がりを持っていてもよい。また、クッション成分40は中物31のかかとの領域内に位置するものとして示されており、その領域は足で蹴る間、一般に最高の初期荷重のかかる部分となっている。しかし、クッション成分40は中物31のどのような領域にあっても、必要な程度のクッション応答が得られるものであればよい。さらに、クッション成分40の一部は、中物31内の重合体の発泡材料によってカプセル化されている場合には、中物31の端34へ延びて、図1〜3に示されているように、クッション成分40が履物10の外部から見えるように端34から延びていてもよい。その代わり、区室50の端は、図16〜18の別の具体例に示されているように、中物31の発泡した材料内に悉く埋め込まれていてもよい。さらに、中物31はクッション成分40の一般的配置を持った多重成分を含んでいてもよい。発泡した材料がクッション成分40内へ延びる程度は、また変えることができる。図4に示されているように、発泡した材料はクッション成分40の上面と下面とに沿って延びて、窪み66及び67中へ延びている。しかし、或る具体例では、発泡した材料は窪み66及び67で無くなっていてもよい。
【0023】
クッション成分40の主要な素材は、図5〜9に個別に示されているように、区室50と被覆素材60とである。区室50は第1表面材51と、これと向き合う第2表面材52とを持ち、これら表面材は一体に接着されて周縁に継ぎ目53を形成している。表面材51と52の大部分は、ほぼ平らな配置になっており、互いに一様に間隔をあけている。他の具体例では、第1表面材51と第2表面材52との一方又は両方が湾曲されることもあり、又はその他の高低のある配置を採ることもある。表面材51と52の周縁で継ぎ目53に直接に接近している領域は、区室50の側壁54を形成している。各表面材51と52とは、中心領域55と6個の突部56a〜56fを形成しており、各突部は中心領域55から外がわへ突出している。6個の突部56a〜56fはそれぞれ中心領域55の反対がわに位置する先端57a〜57fを持っている。ここでは6個の突部56a〜56fが示され説明されているが、3個から20個までの範囲のどのような個数の突出部も、この発明の範囲内に入ると考えられる。しかし、突部の適当な個数は5個から9個である。図10〜12では、区室50は被覆素材60から離して示されている。突部56a〜56fを作るには、表面材51と52の重合体材料の部分を突部56a〜56fの間で一体に接着して、接着された部分58a〜58eを作り、それらの部分が被覆素材60を区室50に固定するための部分を提供している。
【0024】
背景技術のところで説明したように、履物用の流体を満たした区室の外層を作るのに、これまで用いられてきた重合体材料が含まれる種々の材料を使用して、区室50を作ることができる。しかし、大多数の先行技術の区室構造に比べて、区室50内の流体は外界圧力に等しいか、又は外界圧力より僅かに高い圧力にあるとされている。従って、区室50内の流体の圧力は、ゲージ圧で平方インチあたり0から5ポンドの範囲内にある。しかし、区室50の別の具体例では、区室50内の流体の圧力は、平方インチあたり5ポンドを越えることができる。区室50内では比較的圧力が低いために第1表面材51と第2表面材52とを構成するのに用いられる材料は、先行技術の区室のように比較的高い流体圧力を保持するために働くバリヤ(遮断)特性を与える必要がない。従って、熱可塑性ウレタンのような広い範囲の重合体材料を使用して区室50を作ることができ、また空気のような多種の流体を区室50内に用いることができる。さらに、区室50内に入れられている流体の拡散を防ぐ材料の能力よりも、むしろ動的係数やロスタンジェントのような材料の機械的特性を主に基準として、広い範囲の重合体材料を選ぶことができる。熱可塑性ポリウレタンで作ると、第1表面材51と第2表面材52とは、約0.040インチの厚みを持つことができ、例えば0.030から0.060インチまでの範囲内にすることができる。
【0025】
区室50内の比較的低い流体圧は、区室50と先行技術の区室との間に、また別の相違を与えることになる。先行技術の区室内の比較的高い圧力は、区室が或る程度外がわへ膨れるのを防ぐために、重合体層の間に多数の内部連結を作らなければならない。すなわち、先行技術の区室では、内部連結を使用して区室全体の厚さを制御してきたが、これは先行技術における区室の圧縮を制限する効果を持っていた。これに対して、区室50は圧力が比較的低いために、第1表面材51と第2表面材52との間に内部連結が存在しないので、これによって圧縮の程度をより大きくすることができる。
【0026】
区室50は、例えば吹込成形法、熱成形法、及び回転成形法を含む種々の製造技術によって作ることができる。吹込成形技術については、熱可塑性材料を区室50の概略形状を持った成形型内に入れ、加圧空気を使用して成形型の表面を覆うように材料を誘導する。熱成形技術では、熱可塑性材料の層を成形型の対応する部分の間に入れ、成形型を使用して層を区室50の周縁位置で一体に圧縮する。正圧を熱可塑性材料の層の間にかけて、層を成形型の輪郭内へ誘導する。なお、層と成形型との間の部分へ真空を導入して、層を成形型の輪郭内へ引き込むことができる。
【0027】
ここに開示した区室50の構造は、クッション成分40に適した流体充満の袋の一例を与えることが意図されている。この発明の別の具体例では、区室50がより少ないか又はより多い突部56a〜56fを持っており、接着された部分58a〜58eがなくてもよく、区室50内の流体圧力が外界圧力よりも実質的に大きくてもよく、又は周縁の継ぎ目53が第1表面材51の平らな部分に接近して付設され、例えば側壁54を通して見える範囲を大きくしていてもよい。
【0028】
被覆素材60は表面材51と52の上へ延びて、接近している突部56a〜56fの間へ延びている。被覆素材60の主要な部分は、第1表面材51に接近して付設されている第1層61と、第2表面材52に接近して付設されている第2層62と、層61と62との間に延びていてこれらを接続している多数の挿入部63である。図面に示されているように、第1層61は、第1表面材51の平らな部分に接して平らな部分上に延びるほぼ平らな構造を持っている。従って、第1層61は、第1表面材51の部分を覆う薄い平らな部材を与えている。同様に第2層62は、第2表面材52の平らな部分に接して平らな部分上に延びているほぼ平らな構造を持っている。これに代わる具体例では、第1層61と第2層62のうちの一方又は双方が湾曲したり又はそのほかの輪郭を持った配置にされていてもよい。挿入部63は互いに接近している突部56a〜56fの間に付設され、側壁54に沿って延びて第1層61と第2層62とを連結している。従って層61と62とは一体に固定され、挿入部63によって区室50に固定されている。挿入部63は、区室50に対して層61と62の位置を固定するに充分であるけれども、接着剤を用いて被覆素材60を区室50に普通に固定してもよい。上に説明したように、挿入部63は突部56a〜56fの間に付設されている。従って、先端57a〜57fは挿入部63の間で外がわへ突出しているので、クッション成分40の横から見ることができる。その代わり、突部56a〜56fの長さは、先端57a〜57fが見えない程に小さくされていてもよい。
【0029】
各挿入部63は第1部分64を含んでおり、第1部分64は第2部分65に接続されている。第1部分64は、凹状構造を持ち、第1表面材51が形成している側壁54の部分に接近して延びている。凹状構造については、各第1部分64が、窪み(indentation)66を含んでおり、窪み66はほぼクローバーの葉に似た形をしてY形に配列された3つの押し下げられた部分(depressed areas)を持っている。従って、各窪み66のうちの3つの押し下げられた部分はほぼ三角形に配置され、その押し下げられた部分のうちの1つはクッション成分40の側面から内側へ離れており、押し下げられた部分の2つはクッション成分40の側面を形成している。
【0030】
第2部分65の構造は第1部分64の構造に似ている。従って、第2部分65は凹状構造を持ち、第2表面材52が形成している側壁54の部分に接近して延びている。凹状構造については、各第2部分65が窪み67を含んでおり、窪み67はほぼクローバーの葉の形に似た形をしてY形に配列された3つの押し下げられた部分を持っている。従って、各窪み67中の3つの押し下げられた部分はほぼ三角形に配置され、その押し下げられた部分のうちの1つはクッション成分40の側面から内側へ離れており、押し下げられた部分の2つはクッション成分40の側面を形成している。
【0031】
上記の説明に基づいて、挿入部63は突部56a〜56fの間の空間を通って延びる構造を形成している。図面に示されているように、挿入部63の外がわは丸められた形をしており、窪み66と67とは共に先細となり周縁の継ぎ目53に近づくほど幅が次第に小さくなっている。しかし、他の具体例では、挿入部63と窪み66及び67は一定の厚みを持ってもよく、又は外に向かって先細となっていてもよい。しかし、一般に挿入部63は突部56a〜56fの間の空間を通って延びている。
【0032】
被覆素材60の製造では、第1層61は各第1部分64と一体に成形することができる。同様に第2層62は各第2部分65と一体に成形することができる。その後、各第1部分64は各第2部分65と並ぶように第1層61と第2層62とを区室50の反対側に位置させる。その後、各第1部分64と第2部分65との間に接着剤を塗布し、被覆素材60を区室50に固定する。接着された部分58a〜58eが接近している第1部分64と第2部分65との少なくとも一部の間に延びるように、各窪み66と67とは接着された部分58a〜58eの1つに接近したところに位置している。従って、各第1部分64と各第2部分65とは、接着された部分58a〜58eに効率よく接着されている。しかし、一般に、接着された部分58a〜58eは、第1部分64と第2部分65の外の部分の間へ延びてはいない。従って、第1部分64と第2部分65との外の部分は互いに直接に接着されている。
【0033】
種々のエラストマーや熱可塑性エラストマーを含む種々の材料を使用して、被覆素材60を作ることができる。或る具体例では、被覆素材60を熱可塑性ポリウレタン又はアトフィナ カンパニーの製品、PEBAXで作ることができる。ポリエーテルブロックアミドであるPEBAXは、低温での高い衝撃抵抗、−40℃から+80℃までの範囲内での少ない特性変化、種々の化学品による劣化抵抗、及び選択的屈曲の間の低い履歴現象(ヒステレシス)のような、この発明に有利な種々の特性を与える。また、上に述べた重合体材料にガラス繊維又は炭素繊維を加えた複合材料を形成することもできる。
【0034】
この発明の別の具体例がクッション成分40´として図13〜15に示されているが、そのクッション成分40´は区室50´と被覆素材60´とからなるものである。区室50´は区室50の一般的構造を持っている。同様に、被覆素材60´は被覆素材60の一般的構造を持っている。従って、被覆素材60´は挿入部63´によって接続されている第1層61´と第2層62´とを含んでいる。第1層61´は多数の第1部分64´を備え、第2層62´は多数の第2部分65´を備えている。しかし。被覆素材60と対照的に、挿入部63´は補強された構造を持っている。さらに詳しく言えば、窪み66´及び67´はより大きい厚みの一層実質的な構造を持ち、各窪み66´と67´とは内部の壁68´を持っている。内部の壁68´はY形構造を持って輪の締め付け効果により各挿入部63´の圧縮可能性を減少させるように働く。挿入部63´はクッション成分40の周縁部に位置しているので、圧縮可能性の減少は周縁部の硬さをそれに対応して増加させる。当業者はクッション成分40全体の圧縮可能性を修正するために、挿入部63と挿入部63´に多くの変更を施すことができることは理解できよう。
【0035】
実質的に外界の流体圧力であるために、クッション成分40は、背景技術の節で述べた或る流体充満区室に比べると、圧縮の初期段階の間は、与えられた荷重に対して比較的大きな湾曲を生じる。クッション成分40が圧縮されると、クッション成分40は、言い変えると、クッションと言われる力の減衰とエネルギー吸収を起こす。しかし、クッション成分40の圧縮が大きくなると、クッション成分40の構造と、クッション成分40が中物31に合体する形のために、それに対応してクッション成分40の硬さが増す。3つの現象が同時に働いて上述の効果を生じ、また圧力変動、挿入部63の特性及びフィルムの引張りを起こす。これらの現象の各々は以下にさらに詳しく記載する。
【0036】
圧力変動(pressure ramping)は、区室50を圧縮する結果として起こる区室50内の圧力上昇である。実際には、区室50が中物31内で圧縮されていないときには区室50は初めの圧力と初めの容積とを保っている。しかし、中物31が圧縮されると、区室50の実際の体積が減少し、これによって区室50内の流体の圧力が増大する。圧力の上昇はクッション成分40の一部のクッション応答を与えるように働く。従って、区室50の容積は区室50の設計によって制御され、これによってクッション成分40内の圧力変動効果を制御する。
【0037】
また、挿入部63の特性は中物31のクッション応答に影響する。上述のように、挿入部63は、挿入部63´と同じようにより厚いより実質的な構造を持つように修正される。このことはクッション成分40の圧縮率を減少させ、中物31のクッション応答に影響する。さらに、内部壁68´を設けてクッション成分40の圧縮率をさらに減少させることもできる。別の具体例では、挿入部63を窪み66又は67を含んでいない固体構造とすることもできる。クッション成分40の圧縮率は、被覆素材60を構成するのに用いられている材料を変えることによって、修正することもできる。例えば、突部56a〜56fの数を変えると、挿入部63の数を減らし又は増すことができる。従って、挿入部63に用いられている形状と材料、挿入部63の数及び区室50の対応する形状を修正して、クッション応答に影響を与えることができる。
【0038】
また、フィルムを引張るという考えは、クッション成分40のクッション応答に影響を与える。この影響は、先行技術における加圧された区室と比較すると、最もよく理解される。先行技術の区室では、区室内の圧力は、外層を引張られた状態にするものである。しかし、先行技術の区室が圧縮されると、外層における引張りは和らぐか又は少なくなる。従って、先行技術の区室の圧縮は、外層の引張りを少なくするように働く。この先行技術の加圧された区室に対して第1表面材51の引張りは、第1表面材51が湾曲しているために圧縮に対応して増大する。引張りのこの増大は上述のクッション応答に貢献する。さらに、また第1層61の湾曲は、第1層61の引張りを増大させ、これがまた上述のクッション応答に貢献する。
【0039】
圧力変動、挿入部63の特性及びフィルムの引張りは、一緒になって力を弱めエネルギーを吸収するように働く。圧力変動、挿入部63の特性及びフィルムの引張りがクッション応答に与える特殊な影響は、クッション成分40に対する位置によって変動する。挿入部63の位置に対応する区室50の周縁部分では、挿入部63の特性は順応性を少なくするために用いられ、従って対応する剛性を増大させる。その位置が中心領域55へ近づくに従って、力を減衰させエネルギーを吸収する顕著な現象がフィルムの引張りと圧力変動とになる。上記の説明に基づいて、当業者は靴底構造体30の特殊なクッション応答が、従って主としてクッション成分40の配置に関係するものであることがわかるであろう。さらに詳述すれば、中物31の特殊なクッション応答は、挿入部63の構造も含めて、区室50と被覆素材60の構造によって変わる。
【0040】
圧力変動、挿入部63a〜63eの特性、及びフィルムの引張りについての考慮に基づくと、中物31のクッション応答は、力の減衰とエネルギーの吸収とを望ましい程度にするように修正することができる。例えば、区室50の容積、突部56a〜56fの数と形、挿入部63a〜63eの特殊な形状、表面材51と52とを形成している材料と厚み、被覆素材60を作るのに用いられている材料と厚み、中物31内のクッション成分40の位置と整列状態を変更して、クッション応答を修正することができる。さらに、挿入部63の特性は、壁の厚みと材料も含めて、これらを調整してクッション応答を修正することもできる。例えば、中物31の初めの圧縮程度に対して、挿入部63a〜63eの圧縮率を区室50の圧縮率よりも大きくなるように選ぶことができる。従って、これらと他のパラメーターを変更することによって、特殊な個人に合うように、又は使用中に特殊なクッション応答をするように、中物31を注文仕立てにすることができる。
【0041】
上記の説明は、この発明の範囲内のクッション成分の実施例と、それらの成分が履物に組み込まれる状態を提供する。上に述べた構造に代わるものとして、靴底構造体30の重要な一部をクッション成分40と置き換えることができる。すなわち、クッション成分40が履物10の長さ方向の長さ全体に貫通しているように配置することができ、また被覆素材60が表底32の配置を持つことができる。こうして、クッション成分40が従来の中物と表底の構造を置き換えるように使用することができる。さらに、第1層61と第2層62は、図面では連続したシート状構造物として示されている。それに代わり、第1層61と第2層62とは、多数の互いに連結しているセグメントで作られたウェブの形状をしていてもよく、又は第1層61と第2層62とが、例えば多数の孔を形成していてもよい。さらに、或る具体例では、被覆素材60が挿入部63を含んでいるだけであるように、第1層61と第2層62とは全体にわたって無くなっていてもよい。
【0042】
クッション材40の変形のさらに別の一例は、挿入部63が接近している各突部56a〜56fの間に延びているものとして示されているが、或る突部56a〜56fのところで圧縮率を増大させるために、或る突部の間で挿入部63がなくなっている。また、クッション成分40の圧縮応答を調整するために各挿入部63は違った形にすることができる。例えば、ランニングシューズでは、走っている間、最初に地面に接触する履物10の部分に一層大きい圧縮率を与えるために、履物10の後部側面のコーナーに位置する挿入部63を他の挿入部63よりも一層大きい圧縮率を表わすように構成することができる。しかし、バスケットボールシューズの各挿入部63は実質的に同様な構造を持って一様な圧縮を与え、それによって安定性を与えることができる。
【0043】
多くの具体例を引用して上述のようにこの発明を記載し、添付の図面に示している。しかしその説明によって提供された目的は、この発明に関する種々な特徴と概念の一例を提供することであって、この発明の範囲を限定することではない。当業者はこの発明の範囲から外れることなく、添付の請求範囲によって規定している範囲内で、上記具体例に多くの変化と修正とを加えることができることは分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の具体例に従ってクッション成分を持った中物を備えた履物の斜視図である。
【図2】図1に示した履物の分解斜視図である。
【図3】図1に示した中物の平面図である。
【図4】図3の線4−4により切断された中物の断面図である。
【図5】この発明に係るクッション成分の斜視図である。
【図6】この発明に係るクッション成分の側面図である。
【図7】この発明に係るクッション成分の平面図である。
【図8】この発明に係るクッション成分の底面図である。
【図9】この発明に係るクッション成分の分解斜視図である。
【図10】この発明に係るクッション成分の区室部分の平面図である。
【図11】この発明に係るクッション成分の区室部分の底面図である。
【図12】この発明に係るクッション成分の区室部分の側面図である。
【図13】この発明の他の具体例によるクッション成分の斜視図である。
【図14】図13に示されたクッション成分の平面図である。
【図15】図13に示されたクッション成分の底面図である。
【図16】この発明の具体例に従って、クッション成分を持った中物を備えた別の履物の分解斜視図である。
【図17】図16の履物における中物の平面図である。
【図18】図17中の線18−18により切断した中物の断面図である。
【技術分野】
【0001】
この発明は履物に関するものである。さらに詳しく言えば、この発明は履物への使用に適したクッション成分に関するものであり、そのクッション成分は履物の中で突部を持った区室(chamber)と突部(lobes)間に付設された挿入部(inserts)とからなるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の履物は、2つの主要な構成材料、すなわち甲革(upper)と靴底構造体(sole structure)とで作られている。運動競技用の履物については、例えば甲革が一般に織物、発泡体及び皮革のような材料からなる多数の層で作られ、それらの材料は一体に縫い合わされ又は接着されて、履物の内部に足を確実にまた気持ちよく入れるための空所を形成している。靴底構造体は、中底(insole)と、中物(midsole)と、表底(outsole)との層状構造とされている。中底は空所内に付設される薄いクッション部材であって、足に接近して履物の快適性を高めている。中物は、靴底構造体の中間層を形成し、多くの場合ポリウレタン又はエチルビニルアセテートのような発泡した材料で作られている。表底は中物の下面に固定されて、地面に密接するための耐久性と耐摩耗性のある表面を提供している。
【0003】
従来の発泡した材料で作られた中物は、その上に加えられる荷重を受けて弾性的に縮小し、それによって、例えばウォーキング又はランニングに伴なう力を和らげ、エネルギーを吸収している。発泡した材料の弾性に富んだ圧縮は、発泡構造材が気泡を含有しており、且つその気泡が実質的に気体によって置換されていて、内部容積が限定されていることに一部依存している。すなわち、発泡した材料は空気を封入している多数のポケットを含んでいる。しかし、圧縮が繰り返されたあとでは、気泡構造が崩壊し始め、発泡体の圧縮率が減少する結果となる。従って、中物が力を弱め、エネルギーを吸収する全体としての能力が中物の使用期間中に劣化する。
【0004】
従来の発泡材料における気泡構造崩壊の影響を最小にするための1つの方法は、Rudyの下記特許文献1に記載されているように、流体の充満している区室が配置された構造を使用することであって、この特許はこれを引用して組み入れる。流体の充満している区室は袋状構造を持っており、その袋はエラストマー材料で作られた外がわ包囲部材を持ち、その包囲部材は履物商品の長手方向に貫通する多数の管状部材の輪郭を形成している。管状部材は互いに流体を流通し合っており、共同して履物の幅を横切って延びている。Rudyの下記特許文献2は、またこれを引用して組み入れるが、これは発泡した材料中にカプセル化された流体充満の同様な区室を記載しており、そこでは流体充満の区室と、カプセル化している発泡した材料との組み合わせが、中物として機能している。
【0005】
Parker他の下記特許文献3は、これを引用して組み入れるが、これは発泡材でカプセル化された流体充満の区室を記載しており、そこでは孔が発泡体に、しかも区室の側面部分に沿ってあけられている。中物が圧縮されると区室が孔内へ広がる。従って、孔は中物が圧縮されている間剛性を減少させ、他方で孔は履物全体の重量を減少させている。さらに、発泡した材料に孔を適当に付設することにより、衝撃応答特性の全体を履物の特定領域で調整することができる。
【0006】
上記の流体充満の区室は、2枚のフィルムを使用する技術によって製造することができ、その場合エラストマーからなる2枚の別々のフィルム層を配置して、全体が区室を形成するようにする。その後、それらの層をそれぞれの周縁で一体に溶着して、区室の上面、下面及び側壁を形成し、それらの層を内部の予め定められた位置で溶着して、区室に所望の配置を付与する。すなわち、層の内部の一部を接続して、所望の位置で予め定められた形と大きさを持った多数の区室を形成する。その後、流体加圧源に接続されたノズル又は針を、区室内に作られた充填入口へ挿入して、これらの区室を外気圧以上に加圧する。区室が加圧されたあとで、ノズルを除き、例えば溶着によって充填入口をシールする。
【0007】
上記タイプの流体充満の区室を製造するための別の製造技術は、ブローモールド法によるものであり、その方法では溶融されたエラストマー材料を所望の全体形状と区室配置とを持った成形型内に入れる。成形型は加圧空気を付与するための開口を一個所に持っている。加圧空気は溶融された弾性高分子材料を成形型の内面に向かって押し付け、成形型内で材料を硬化させ、こうして区室を成形して所望の配置を持たせる。
【0008】
履物の中物に用いられる別のタイプの区室は、何れもRudyの下記特許文献4及び特許文献5に記載されており、何れも引用して組み入れる。区室は二重壁の織物芯材上に、強固に接着された外側の遮断層を気密にシールしたもので作られている。二重壁の織物芯材は、通常互いに予め定められた距離を隔てている上方と下方との外側の織物層からなり、二重針竿のラッシェル編み法によって作ることができる。接続糸は多数の個々の繊維を持ったマルチフィラメントヤーンの形をしていることが多く、織物の内部で織物層の向き合った面の間に延びており、織物層に固定されている。接続糸の個々のフィラメントは、遮断層が外方向に移動するのを所望の距離に制限する伸び抑制部材を形成している。
【0009】
下記特許文献6及び特許文献7は何れもGoodwill他の発明したものであり、何れも引用して組み入れるが、また二重壁の織物芯材を加えた区室を記載しているけれども、区室の上面と下面との間には途中に周縁の縫い目を設けないこととしている。その代わりに、縫い目を区室の上面に接近して設けている。このデザインの利点は、最大の側壁湾曲部分から縫い目をなくしており、接続糸も含めて区室の内部の視界を増大させていることである。このタイプの区室を作るのに用いられている方法は、成形型を使用して下面と側壁とからなる殻を成形することからなる。二重壁の織物芯材を被覆層の上面上に載せ、上記の殻を上記の被覆層と芯材との上に載せる。こうして組み合わされた殻と、被覆層と芯材とをその後積層場所へ移し、そこで無線周波エネルギーにより芯材の反対側を殻と被覆層とに接着し、且つ殻の周縁を被覆層に接着する。その後、連結している糸を緊張状態にするために流体を挿入して区室を加圧する。
【0010】
区室を熱成形する方法は、Skaja他の下記特許文献8に記載されているので、これを引用して組み込むが、そこでは一組の柔軟な熱可塑性層を加熱し、一対の成形型に向けて置き、真空を使用して上記の層を成形型内に引き込む。その後、上記層を一体に押圧して区室を形成する。
【0011】
上に述べた区室内に含まれている流体は、Rudyの下記特許文献9に記載されているどのようなガスであってもよく、例えばヘキサフルオロエタンやサルファーヘキサフルオライド(六弗化硫黄)のようなものであってもよい。さらに、或る区室は加圧されたオクタフルオロプロパン、窒素又は空気のようなガスを封入している。上に述べた区室の外層を形成する材料は、区室内の流体を実質的に透過させない熱可塑性エラストマーのような重合体材料で作ることができる。さらに、特定して言えば、1つの適当な材料は、Mitchell他の下記特許文献10及び特許文献11に記載されているような、熱可塑性のポリウレタンとエチレン・ビニルアルコール共重合体の交互の層で作られたフィルムであって、上記2つの特許を引用して組み入れる。この材料の変形物として、中心層がエチレン・ビニルアルコール共重合体で作られ、この中心層に隣接する2つの層が熱可塑性ポリウレタンで作られ、外層が熱可塑性ポリウレタンとエチレン・ビニルアルコール共重合体の再粉砕材料で作られているような変形物も使用することができる。別の適当な材料は、Bonk他の下記特許文献12及び特許文献13に記載されているような、ガス不透過性材料とエラストマー材料との交互層からなる柔軟な薄膜であるから、上記特許を引用して組み入れる。他の適当な熱可塑性エラストマー材料又はフィルムはポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、例えば流延又は押し出しによるエステル基材のポリウレタンフィルムである。さらに適当な材料は、上述のRudyの下記特許文献1及び特許文献2に記載されている。さらに、ダウ ケミカル カンパニーの製品、PELLETHANE、BASF コーポレイションの製品、ELASTOLLAN、B.F.グッドリッチ カンパニーの商品、ESTANEのような多くの熱可塑性ウレタンを使用することができ、これらはすべてエステルか又はエーテルを基材とするものである。さらに、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン及びポリカーボネートのマクロゲルを基材とする他の熱可塑性ウレタンも使用することができ、また、種々の窒素ブロッキング材料も使用することができる。さらに、適当な材料は、Rudyの下記特許文献14及び特許文献15に記載されているような結晶性材料を含む熱可塑性フィルムであるから、上記特許を引用して組み込み、またBonk他の下記特許文献16と、特許文献17及び特許文献18に記載されているようなポリエステルポリオールを含むポリウレタンも使用でき、上記特許を引用して組み込む。
【0012】
上述の区室は、一般に履物の中物を構成している発泡した重合体の中でカプセルに包み込まれている。Skaja他の下記特許文献19とShorten他の下記特許文献20とは、何れも引用して組み入れるが、それら明細書に記載されている区室は、区室の反対側で内側へ延びる多数の窪みを持った重合体層で作られている。区室の上端面上の窪みは、区室の下側で対応する窪みに接して接着され、重合体層が外がわへ移動するのを抑制している。その上に、窪みの形に一致する形を持った重合体素材が、窪み内に付設され、且つ袋状組織の外部に接着されて付加的な支持を与えている。その後、区室と重合体素材とは発泡材料内でカプセルに包まれて中物を形成する。
【特許文献1】米国特許第4,183,156号明細書
【特許文献2】米国特許第4,219,945号明細書
【特許文献3】米国特許第4,817,304号明細書
【特許文献4】米国特許第4,906,502号明細書
【特許文献5】米国特許第5,083,361号明細書
【特許文献6】米国特許第5,993,585号明細書
【特許文献7】米国特許第6,119,371号明細書
【特許文献8】米国特許第5,976,451号明細書
【特許文献9】米国特許第4,340,626号明細書
【特許文献10】米国特許第5,713,141号明細書
【特許文献11】米国特許第5,952,065号明細書
【特許文献12】米国特許第6,082,025号明細書
【特許文献13】米国特許第6,127,026号明細書
【特許文献14】米国特許第4,936,029号明細書
【特許文献15】米国特許第5,042,176号明細書
【特許文献16】米国特許第6,013,340号明細書
【特許文献17】米国特許第6,203,868号明細書
【特許文献18】米国特許第6,321,465号明細書
【特許文献19】米国特許第5,572,804号明細書
【特許文献20】米国特許第6,029,962号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は、区室と多数の挿入部とを含む履物用のクッション成分を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
区室は、第1表面材と、これと向き合う第2表面材とを持ち、それら表面材は周縁が接合されて流体を入れるための容積を形成している。第1表面材と第2表面材とは、第1表面材の内部の或る部分を第2表面材の内部の或る部分に固定するような内部接続部を欠落しており、第1表面材と第2表面材とは、区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成している。突部は中心領域と流体を流通させており、また突部は、互いに隣接して付設されている突部の間に間隔をおいている。挿入部はその間隔内に付設され、柔軟な材料で作られている。
【0015】
材料の層が第1表面材と第2表面材との上に延びており、挿入部はその材料の層に固定され、挿入部が区室の突部の間へ延びるようになっている。各挿入部は、第1表面材に接近して付設された第1部分と、第2表面材に接近して付設された第2部分とからなり、第1部分が第2部分に固定されている。この発明の或る具体例では、第1部分が3個の凹状(concave)構造で作られ、第2部分がまた3個の凹状構造で作られている。それらの構造の形状、とくに挿入部の形状を変更することにより、クッション成分のクッション特性を修正することができる。
【0016】
区室内の流体は、履物の周りの外気圧に実質的に等しい圧力にすることができ、その流体は例えば空気であってもよい。比較的低い圧力にすると、第1表面材と第2表面材との間に内部接続部がなくても、第1表面材と第2表面材とが所望の形状を保持することができることとなる。すなわち、比較的低い圧力では、加圧された区室内で起きる外がわへの移動を抑制するような引張部材を区室内に付設する必要がなくなり、第1表面材と第2表面材とが平らな又は湾曲した形を持つことができることとなる。
【0017】
この発明が特徴としている新規な利点と特徴とは、添付の特許請求の範囲において以下に詳細に指摘される。しかし、新規な利点と特徴をよりよく理解するために、この発明についての種々な具体例と概念とを記載し例示している下記の説明事項と、添付図面とを参照することができる。
【0018】
前述のこの発明の開示と、下記のこの発明を実施するための最良の形態とは、添付の図面に関連させて読むと、一層よく理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
下記の説明と添付図面とは、この発明に従ってクッション成分が付加された中物を持った運動用履物を開示している。履物、とくにクッション成分に関する概念は、競技的活動に適した構造を持った履物について開示する。従って、この発明は、例えば、ランニング、バスケットボール、ウォーキング、テニス及びサッカーのような活動に際して、訓練と競技の期間に使用するように設計された履物に適している。さらに、この発明は、ドレスシューズ、ローファー、サンダル及びワークブーツのような非競技用履物の型に適用できる。従って、ここに開示されている概念が、以下に説明し添付の図面に描かれている特定の型以外に、さらに広い範囲の種々の履物の型に適用できる、ということは当業者に明らかであろう。
【0020】
1つの履物10が図1に描かれており、この履物は甲革20と靴底構造体30とで作られている。甲革20は実質的に従来の構造のものであり、織物、発泡体、及び皮革のような多数の素材で構成されており、それら素材は縫い付けられ又は接着されて一体となり、足を確実に且つ快適に収容するための内腔を形成している。靴底構造体30は甲革20の下方に位置しており、2つの主要素材である中物31と表底32とで構成されている。中物31は甲革20の下面に、例えば縫い付け又は接着により固定され、靴底構造体30は地面に接触するときに、力をやわらげエネルギーを吸収する。すなわち、中物31は、例えばウォーキング又はランニングの間に足にクッションを与える構造にされている。表底32は、中物31の下面に固定されており、地面に接触して耐久性と耐摩耗性とを持った材料で作られている。さらに、靴底構造体30は中底33を含んでおり、中底33は薄いクッション部材であって、空所内に位置し足に接近して履物10の快適性を向上させている。
【0021】
中物31は、主としてポリウレタン又はエチルビニルアセテートのような重合体の発泡材料で作られ、その発泡材料は少なくとも部分的にクッション成分40をカプセル化している。クッション成分40は、中物31の持つ力の減弱化とエネルギー吸収特性とを補充し、それによって靴底構造体30は一層のクッション性を与えるのに利用される。その上に、クッション成分40は靴底構造体30の安定性を高めている。クッション成分40の構造の説明に続いてより詳しく説明するように、望ましいクッションと安定性は、圧力変動、クッション成分40の構造的及び材料的特性及びフィルムの引張りによって与えられる。
【0022】
中物31に対するクッション成分40の特別な位置は、この発明の範囲内で有意義に変化することができる。図2〜4に示したように、クッション成分40は中物31の上面と実質的に同じ広がりを持っている。従って、クッション成分40の上面は一般に中物31を形成している重合体の発泡材料の上面と同じ平面にある。しかし、他の具体例ではクッション成分40は中物31の発泡した材料内に埋め込まれてもよく、又は例えば中物31の下面と実質的に同じ広がりを持っていてもよい。また、クッション成分40は中物31のかかとの領域内に位置するものとして示されており、その領域は足で蹴る間、一般に最高の初期荷重のかかる部分となっている。しかし、クッション成分40は中物31のどのような領域にあっても、必要な程度のクッション応答が得られるものであればよい。さらに、クッション成分40の一部は、中物31内の重合体の発泡材料によってカプセル化されている場合には、中物31の端34へ延びて、図1〜3に示されているように、クッション成分40が履物10の外部から見えるように端34から延びていてもよい。その代わり、区室50の端は、図16〜18の別の具体例に示されているように、中物31の発泡した材料内に悉く埋め込まれていてもよい。さらに、中物31はクッション成分40の一般的配置を持った多重成分を含んでいてもよい。発泡した材料がクッション成分40内へ延びる程度は、また変えることができる。図4に示されているように、発泡した材料はクッション成分40の上面と下面とに沿って延びて、窪み66及び67中へ延びている。しかし、或る具体例では、発泡した材料は窪み66及び67で無くなっていてもよい。
【0023】
クッション成分40の主要な素材は、図5〜9に個別に示されているように、区室50と被覆素材60とである。区室50は第1表面材51と、これと向き合う第2表面材52とを持ち、これら表面材は一体に接着されて周縁に継ぎ目53を形成している。表面材51と52の大部分は、ほぼ平らな配置になっており、互いに一様に間隔をあけている。他の具体例では、第1表面材51と第2表面材52との一方又は両方が湾曲されることもあり、又はその他の高低のある配置を採ることもある。表面材51と52の周縁で継ぎ目53に直接に接近している領域は、区室50の側壁54を形成している。各表面材51と52とは、中心領域55と6個の突部56a〜56fを形成しており、各突部は中心領域55から外がわへ突出している。6個の突部56a〜56fはそれぞれ中心領域55の反対がわに位置する先端57a〜57fを持っている。ここでは6個の突部56a〜56fが示され説明されているが、3個から20個までの範囲のどのような個数の突出部も、この発明の範囲内に入ると考えられる。しかし、突部の適当な個数は5個から9個である。図10〜12では、区室50は被覆素材60から離して示されている。突部56a〜56fを作るには、表面材51と52の重合体材料の部分を突部56a〜56fの間で一体に接着して、接着された部分58a〜58eを作り、それらの部分が被覆素材60を区室50に固定するための部分を提供している。
【0024】
背景技術のところで説明したように、履物用の流体を満たした区室の外層を作るのに、これまで用いられてきた重合体材料が含まれる種々の材料を使用して、区室50を作ることができる。しかし、大多数の先行技術の区室構造に比べて、区室50内の流体は外界圧力に等しいか、又は外界圧力より僅かに高い圧力にあるとされている。従って、区室50内の流体の圧力は、ゲージ圧で平方インチあたり0から5ポンドの範囲内にある。しかし、区室50の別の具体例では、区室50内の流体の圧力は、平方インチあたり5ポンドを越えることができる。区室50内では比較的圧力が低いために第1表面材51と第2表面材52とを構成するのに用いられる材料は、先行技術の区室のように比較的高い流体圧力を保持するために働くバリヤ(遮断)特性を与える必要がない。従って、熱可塑性ウレタンのような広い範囲の重合体材料を使用して区室50を作ることができ、また空気のような多種の流体を区室50内に用いることができる。さらに、区室50内に入れられている流体の拡散を防ぐ材料の能力よりも、むしろ動的係数やロスタンジェントのような材料の機械的特性を主に基準として、広い範囲の重合体材料を選ぶことができる。熱可塑性ポリウレタンで作ると、第1表面材51と第2表面材52とは、約0.040インチの厚みを持つことができ、例えば0.030から0.060インチまでの範囲内にすることができる。
【0025】
区室50内の比較的低い流体圧は、区室50と先行技術の区室との間に、また別の相違を与えることになる。先行技術の区室内の比較的高い圧力は、区室が或る程度外がわへ膨れるのを防ぐために、重合体層の間に多数の内部連結を作らなければならない。すなわち、先行技術の区室では、内部連結を使用して区室全体の厚さを制御してきたが、これは先行技術における区室の圧縮を制限する効果を持っていた。これに対して、区室50は圧力が比較的低いために、第1表面材51と第2表面材52との間に内部連結が存在しないので、これによって圧縮の程度をより大きくすることができる。
【0026】
区室50は、例えば吹込成形法、熱成形法、及び回転成形法を含む種々の製造技術によって作ることができる。吹込成形技術については、熱可塑性材料を区室50の概略形状を持った成形型内に入れ、加圧空気を使用して成形型の表面を覆うように材料を誘導する。熱成形技術では、熱可塑性材料の層を成形型の対応する部分の間に入れ、成形型を使用して層を区室50の周縁位置で一体に圧縮する。正圧を熱可塑性材料の層の間にかけて、層を成形型の輪郭内へ誘導する。なお、層と成形型との間の部分へ真空を導入して、層を成形型の輪郭内へ引き込むことができる。
【0027】
ここに開示した区室50の構造は、クッション成分40に適した流体充満の袋の一例を与えることが意図されている。この発明の別の具体例では、区室50がより少ないか又はより多い突部56a〜56fを持っており、接着された部分58a〜58eがなくてもよく、区室50内の流体圧力が外界圧力よりも実質的に大きくてもよく、又は周縁の継ぎ目53が第1表面材51の平らな部分に接近して付設され、例えば側壁54を通して見える範囲を大きくしていてもよい。
【0028】
被覆素材60は表面材51と52の上へ延びて、接近している突部56a〜56fの間へ延びている。被覆素材60の主要な部分は、第1表面材51に接近して付設されている第1層61と、第2表面材52に接近して付設されている第2層62と、層61と62との間に延びていてこれらを接続している多数の挿入部63である。図面に示されているように、第1層61は、第1表面材51の平らな部分に接して平らな部分上に延びるほぼ平らな構造を持っている。従って、第1層61は、第1表面材51の部分を覆う薄い平らな部材を与えている。同様に第2層62は、第2表面材52の平らな部分に接して平らな部分上に延びているほぼ平らな構造を持っている。これに代わる具体例では、第1層61と第2層62のうちの一方又は双方が湾曲したり又はそのほかの輪郭を持った配置にされていてもよい。挿入部63は互いに接近している突部56a〜56fの間に付設され、側壁54に沿って延びて第1層61と第2層62とを連結している。従って層61と62とは一体に固定され、挿入部63によって区室50に固定されている。挿入部63は、区室50に対して層61と62の位置を固定するに充分であるけれども、接着剤を用いて被覆素材60を区室50に普通に固定してもよい。上に説明したように、挿入部63は突部56a〜56fの間に付設されている。従って、先端57a〜57fは挿入部63の間で外がわへ突出しているので、クッション成分40の横から見ることができる。その代わり、突部56a〜56fの長さは、先端57a〜57fが見えない程に小さくされていてもよい。
【0029】
各挿入部63は第1部分64を含んでおり、第1部分64は第2部分65に接続されている。第1部分64は、凹状構造を持ち、第1表面材51が形成している側壁54の部分に接近して延びている。凹状構造については、各第1部分64が、窪み(indentation)66を含んでおり、窪み66はほぼクローバーの葉に似た形をしてY形に配列された3つの押し下げられた部分(depressed areas)を持っている。従って、各窪み66のうちの3つの押し下げられた部分はほぼ三角形に配置され、その押し下げられた部分のうちの1つはクッション成分40の側面から内側へ離れており、押し下げられた部分の2つはクッション成分40の側面を形成している。
【0030】
第2部分65の構造は第1部分64の構造に似ている。従って、第2部分65は凹状構造を持ち、第2表面材52が形成している側壁54の部分に接近して延びている。凹状構造については、各第2部分65が窪み67を含んでおり、窪み67はほぼクローバーの葉の形に似た形をしてY形に配列された3つの押し下げられた部分を持っている。従って、各窪み67中の3つの押し下げられた部分はほぼ三角形に配置され、その押し下げられた部分のうちの1つはクッション成分40の側面から内側へ離れており、押し下げられた部分の2つはクッション成分40の側面を形成している。
【0031】
上記の説明に基づいて、挿入部63は突部56a〜56fの間の空間を通って延びる構造を形成している。図面に示されているように、挿入部63の外がわは丸められた形をしており、窪み66と67とは共に先細となり周縁の継ぎ目53に近づくほど幅が次第に小さくなっている。しかし、他の具体例では、挿入部63と窪み66及び67は一定の厚みを持ってもよく、又は外に向かって先細となっていてもよい。しかし、一般に挿入部63は突部56a〜56fの間の空間を通って延びている。
【0032】
被覆素材60の製造では、第1層61は各第1部分64と一体に成形することができる。同様に第2層62は各第2部分65と一体に成形することができる。その後、各第1部分64は各第2部分65と並ぶように第1層61と第2層62とを区室50の反対側に位置させる。その後、各第1部分64と第2部分65との間に接着剤を塗布し、被覆素材60を区室50に固定する。接着された部分58a〜58eが接近している第1部分64と第2部分65との少なくとも一部の間に延びるように、各窪み66と67とは接着された部分58a〜58eの1つに接近したところに位置している。従って、各第1部分64と各第2部分65とは、接着された部分58a〜58eに効率よく接着されている。しかし、一般に、接着された部分58a〜58eは、第1部分64と第2部分65の外の部分の間へ延びてはいない。従って、第1部分64と第2部分65との外の部分は互いに直接に接着されている。
【0033】
種々のエラストマーや熱可塑性エラストマーを含む種々の材料を使用して、被覆素材60を作ることができる。或る具体例では、被覆素材60を熱可塑性ポリウレタン又はアトフィナ カンパニーの製品、PEBAXで作ることができる。ポリエーテルブロックアミドであるPEBAXは、低温での高い衝撃抵抗、−40℃から+80℃までの範囲内での少ない特性変化、種々の化学品による劣化抵抗、及び選択的屈曲の間の低い履歴現象(ヒステレシス)のような、この発明に有利な種々の特性を与える。また、上に述べた重合体材料にガラス繊維又は炭素繊維を加えた複合材料を形成することもできる。
【0034】
この発明の別の具体例がクッション成分40´として図13〜15に示されているが、そのクッション成分40´は区室50´と被覆素材60´とからなるものである。区室50´は区室50の一般的構造を持っている。同様に、被覆素材60´は被覆素材60の一般的構造を持っている。従って、被覆素材60´は挿入部63´によって接続されている第1層61´と第2層62´とを含んでいる。第1層61´は多数の第1部分64´を備え、第2層62´は多数の第2部分65´を備えている。しかし。被覆素材60と対照的に、挿入部63´は補強された構造を持っている。さらに詳しく言えば、窪み66´及び67´はより大きい厚みの一層実質的な構造を持ち、各窪み66´と67´とは内部の壁68´を持っている。内部の壁68´はY形構造を持って輪の締め付け効果により各挿入部63´の圧縮可能性を減少させるように働く。挿入部63´はクッション成分40の周縁部に位置しているので、圧縮可能性の減少は周縁部の硬さをそれに対応して増加させる。当業者はクッション成分40全体の圧縮可能性を修正するために、挿入部63と挿入部63´に多くの変更を施すことができることは理解できよう。
【0035】
実質的に外界の流体圧力であるために、クッション成分40は、背景技術の節で述べた或る流体充満区室に比べると、圧縮の初期段階の間は、与えられた荷重に対して比較的大きな湾曲を生じる。クッション成分40が圧縮されると、クッション成分40は、言い変えると、クッションと言われる力の減衰とエネルギー吸収を起こす。しかし、クッション成分40の圧縮が大きくなると、クッション成分40の構造と、クッション成分40が中物31に合体する形のために、それに対応してクッション成分40の硬さが増す。3つの現象が同時に働いて上述の効果を生じ、また圧力変動、挿入部63の特性及びフィルムの引張りを起こす。これらの現象の各々は以下にさらに詳しく記載する。
【0036】
圧力変動(pressure ramping)は、区室50を圧縮する結果として起こる区室50内の圧力上昇である。実際には、区室50が中物31内で圧縮されていないときには区室50は初めの圧力と初めの容積とを保っている。しかし、中物31が圧縮されると、区室50の実際の体積が減少し、これによって区室50内の流体の圧力が増大する。圧力の上昇はクッション成分40の一部のクッション応答を与えるように働く。従って、区室50の容積は区室50の設計によって制御され、これによってクッション成分40内の圧力変動効果を制御する。
【0037】
また、挿入部63の特性は中物31のクッション応答に影響する。上述のように、挿入部63は、挿入部63´と同じようにより厚いより実質的な構造を持つように修正される。このことはクッション成分40の圧縮率を減少させ、中物31のクッション応答に影響する。さらに、内部壁68´を設けてクッション成分40の圧縮率をさらに減少させることもできる。別の具体例では、挿入部63を窪み66又は67を含んでいない固体構造とすることもできる。クッション成分40の圧縮率は、被覆素材60を構成するのに用いられている材料を変えることによって、修正することもできる。例えば、突部56a〜56fの数を変えると、挿入部63の数を減らし又は増すことができる。従って、挿入部63に用いられている形状と材料、挿入部63の数及び区室50の対応する形状を修正して、クッション応答に影響を与えることができる。
【0038】
また、フィルムを引張るという考えは、クッション成分40のクッション応答に影響を与える。この影響は、先行技術における加圧された区室と比較すると、最もよく理解される。先行技術の区室では、区室内の圧力は、外層を引張られた状態にするものである。しかし、先行技術の区室が圧縮されると、外層における引張りは和らぐか又は少なくなる。従って、先行技術の区室の圧縮は、外層の引張りを少なくするように働く。この先行技術の加圧された区室に対して第1表面材51の引張りは、第1表面材51が湾曲しているために圧縮に対応して増大する。引張りのこの増大は上述のクッション応答に貢献する。さらに、また第1層61の湾曲は、第1層61の引張りを増大させ、これがまた上述のクッション応答に貢献する。
【0039】
圧力変動、挿入部63の特性及びフィルムの引張りは、一緒になって力を弱めエネルギーを吸収するように働く。圧力変動、挿入部63の特性及びフィルムの引張りがクッション応答に与える特殊な影響は、クッション成分40に対する位置によって変動する。挿入部63の位置に対応する区室50の周縁部分では、挿入部63の特性は順応性を少なくするために用いられ、従って対応する剛性を増大させる。その位置が中心領域55へ近づくに従って、力を減衰させエネルギーを吸収する顕著な現象がフィルムの引張りと圧力変動とになる。上記の説明に基づいて、当業者は靴底構造体30の特殊なクッション応答が、従って主としてクッション成分40の配置に関係するものであることがわかるであろう。さらに詳述すれば、中物31の特殊なクッション応答は、挿入部63の構造も含めて、区室50と被覆素材60の構造によって変わる。
【0040】
圧力変動、挿入部63a〜63eの特性、及びフィルムの引張りについての考慮に基づくと、中物31のクッション応答は、力の減衰とエネルギーの吸収とを望ましい程度にするように修正することができる。例えば、区室50の容積、突部56a〜56fの数と形、挿入部63a〜63eの特殊な形状、表面材51と52とを形成している材料と厚み、被覆素材60を作るのに用いられている材料と厚み、中物31内のクッション成分40の位置と整列状態を変更して、クッション応答を修正することができる。さらに、挿入部63の特性は、壁の厚みと材料も含めて、これらを調整してクッション応答を修正することもできる。例えば、中物31の初めの圧縮程度に対して、挿入部63a〜63eの圧縮率を区室50の圧縮率よりも大きくなるように選ぶことができる。従って、これらと他のパラメーターを変更することによって、特殊な個人に合うように、又は使用中に特殊なクッション応答をするように、中物31を注文仕立てにすることができる。
【0041】
上記の説明は、この発明の範囲内のクッション成分の実施例と、それらの成分が履物に組み込まれる状態を提供する。上に述べた構造に代わるものとして、靴底構造体30の重要な一部をクッション成分40と置き換えることができる。すなわち、クッション成分40が履物10の長さ方向の長さ全体に貫通しているように配置することができ、また被覆素材60が表底32の配置を持つことができる。こうして、クッション成分40が従来の中物と表底の構造を置き換えるように使用することができる。さらに、第1層61と第2層62は、図面では連続したシート状構造物として示されている。それに代わり、第1層61と第2層62とは、多数の互いに連結しているセグメントで作られたウェブの形状をしていてもよく、又は第1層61と第2層62とが、例えば多数の孔を形成していてもよい。さらに、或る具体例では、被覆素材60が挿入部63を含んでいるだけであるように、第1層61と第2層62とは全体にわたって無くなっていてもよい。
【0042】
クッション材40の変形のさらに別の一例は、挿入部63が接近している各突部56a〜56fの間に延びているものとして示されているが、或る突部56a〜56fのところで圧縮率を増大させるために、或る突部の間で挿入部63がなくなっている。また、クッション成分40の圧縮応答を調整するために各挿入部63は違った形にすることができる。例えば、ランニングシューズでは、走っている間、最初に地面に接触する履物10の部分に一層大きい圧縮率を与えるために、履物10の後部側面のコーナーに位置する挿入部63を他の挿入部63よりも一層大きい圧縮率を表わすように構成することができる。しかし、バスケットボールシューズの各挿入部63は実質的に同様な構造を持って一様な圧縮を与え、それによって安定性を与えることができる。
【0043】
多くの具体例を引用して上述のようにこの発明を記載し、添付の図面に示している。しかしその説明によって提供された目的は、この発明に関する種々な特徴と概念の一例を提供することであって、この発明の範囲を限定することではない。当業者はこの発明の範囲から外れることなく、添付の請求範囲によって規定している範囲内で、上記具体例に多くの変化と修正とを加えることができることは分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の具体例に従ってクッション成分を持った中物を備えた履物の斜視図である。
【図2】図1に示した履物の分解斜視図である。
【図3】図1に示した中物の平面図である。
【図4】図3の線4−4により切断された中物の断面図である。
【図5】この発明に係るクッション成分の斜視図である。
【図6】この発明に係るクッション成分の側面図である。
【図7】この発明に係るクッション成分の平面図である。
【図8】この発明に係るクッション成分の底面図である。
【図9】この発明に係るクッション成分の分解斜視図である。
【図10】この発明に係るクッション成分の区室部分の平面図である。
【図11】この発明に係るクッション成分の区室部分の底面図である。
【図12】この発明に係るクッション成分の区室部分の側面図である。
【図13】この発明の他の具体例によるクッション成分の斜視図である。
【図14】図13に示されたクッション成分の平面図である。
【図15】図13に示されたクッション成分の底面図である。
【図16】この発明の具体例に従って、クッション成分を持った中物を備えた別の履物の分解斜視図である。
【図17】図16の履物における中物の平面図である。
【図18】図17中の線18−18により切断した中物の断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
区室(chamber)と挿入部(inserts)とからなり、区室は流体を入れるための或る容積を形成するために、周縁が結合されている第1表面材とこれと向き合う第2表面材とを持っており、前記第1表面材と第2表面材とは第1表面材の内部部分を第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、前記第1表面材と第2表面材とは区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部(lobes)を形成しており、突部は中心領域と流体が流通できる状態にあって、突部は互いに接近している突部の間に間隔をあけており、前記挿入部は前記間隔内に付設されて、弾力性のある材料で作られていることを特徴とする、履物用クッション成分。
【請求項2】
前記流体の圧力が、平方インチあたり0から5ポンドの範囲内にある、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項3】
前記流体の圧力が靴底構成体を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しくされている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項4】
前記流体が空気である、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項5】
重合体材料の第1層が前記第1表面材の少なくとも一部の上に延びていて前記挿入部に固定されている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項6】
重合体材料の第2層が前記第2表面材の少なくとも一部の上に延びていて前記挿入部に固定されている、請求項5に記載のクッション成分。
【請求項7】
前記第1層と第2層とが前記挿入部と一体に形成されている、請求項6に記載のクッション成分。
【請求項8】
材料の層が前記第1表面材と第2表面材の上へ延びていて、前記挿入部が前記材料の層に固定され材料の層の間に延びている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項9】
前記挿入部が前記区室の側壁に接近して付設され、側壁が前記第1表面材と第2表面材との間に延びている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項10】
前記各挿入部が、前記第1表面材に接近して付設されている第1部分と、前記第2表面材に接近して付設されている第2部分とを含んでいる、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項11】
前記第1部分が前記第2部分に固定されている、請求項10に記載のクッション成分。
【請求項12】
前記第1部分が3個の凹状(concave)構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項10に記載のクッション成分。
【請求項13】
前記第1表面材と第2表面材との中心領域が実質的に平らな配置(configuration)を持っている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項14】
前記区室が少なくとも5個の突部を含んでいる、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項15】
前記挿入部の少なくとも一部が前記区室に接着されている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項16】
前記挿入部が前記区室より圧縮性に乏しくなっている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項17】
区室と被覆素材とからなるクッション成分であって、
前記区室はクッション成分を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しい圧力を持つ流体を封入しており、区室は前記流体を入れるための或る容積を形成するために、周縁が結合されている第1表面材とこれと向き合う第2表面材とを持っており、第1表面材と第2表面材とは第1表面材の内部部分を第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、前記第1表面材と第2表面材とは区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成しており、突部は中心領域と流体が流通できる状態にあって、突部は互いに接近して付設されている突部の間に間隔をあけており、
前記被覆素材は第1層と、第2層と、第1層と第2層との間に延びる多数の挿入部とを備えており、第1層は第1表面材の少なくとも一部の上に延びており、第2層は第2表面材の少なくとも一部の上に延びており、挿入部が前記間隔内に付設されている履物用クッション成分。
【請求項18】
前記流体が空気である、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項19】
前記挿入部が前記区室より圧縮性に乏しくなっている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項20】
各挿入部が前記第1表面材に接近して付設されている第1部分と、前記第2表面材に接近して付設されている第2部分とを含んでいる、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項21】
前記第1部分が前記第2部分に固定されている、請求項20に記載のクッション成分。
【請求項22】
前記第1部分が3個の凹状構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項20に記載のクッション成分。
【請求項23】
前記第1表面材と第2表面材との中心領域が、実質的に平らな配置を持っている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項24】
前記区室が少なくとも5個の突部を持っている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項25】
前記挿入部が前記区室の側壁に接近して付設され、前記側壁が第1表面材と第2表面材との間に延びている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項26】
前記挿入部の少なくとも一部が前記区室に接着されている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項27】
区室と被覆素材とからなるクッション成分であって、
前記区室は流体を入れるための或る容積を形成するために、周縁が結合されている第1表面材とこれと向き合う第2表面材とを備えており、第1表面材と第2表面材とは、第1表面材の内部部分を第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、前記第1表面材と第2表面材とは区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成しており、突部は中心領域と流体を流通できる状態にあって、突部は互いに接近して付設されている突部の間に間隔をあけており、
前記被覆素材は第1層と、第2層と、第1層と第2層との間に延びる多数の挿入部とを備えており、前記第1層は前記第1表面材の上に延びており、前記第2層は前記第2表面材の上に延びており、前記挿入部は前記間隔内に付設されており、各挿入部は第1部分と第2部分とを持ち、第1部分は第1表面材に接近して付設され、第2部分は第2表面材に接近して付設され、第1部分は第2部分と一体になって被覆素材を区室に固定しており、挿入部は区室より圧縮性に乏しい形状を持っている、履物用クッション成分。
【請求項28】
前記流体の圧力が平方インチあたり0から5ポンドの範囲内にある、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項29】
前記流体の圧力が、靴底構造体を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しくされている、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項30】
前記流体が空気である、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項31】
前記第1部分が3個の凹状構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項32】
前記第1表面材と第2表面材との中心領域が、実質的に平らな形状を持っている、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項33】
着用者の足を入れるための甲革と甲革に固定された靴底構造体とからなる履物であって、
前記靴底構造体は発泡した重合体材料で作られた中物と、中物の発泡した材料によって少なくとも部分的にカプセル化されたクッション成分とを含んでおり、前記クッション成分は1つの区室と多数の挿入部とを備え、前記区室はクッション成分を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しい圧力を持つ流体を封入しており、前記区室は第1表面材と、これと向き合う第2表面材とを周縁で接合して流体を入れるための或る容積を形成しており、前記第1表面材と第2表面材とは第1表面材の内部部分と第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、前記第1表面材と第2表面材とは前記区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成しており、前記突部は中心領域と流体が流通できる状態にあって、また前記突部は互いに接近して付設されている突部の間に間隔をあけており、前記挿入部が前記間隔内に付設され、挿入部は前記区室よりも圧縮性に乏しくなっている履物。
【請求項34】
前記クッション成分が中物の踵部分内に位置している、請求項33に記載の履物。
【請求項35】
前記クッション成分の一端が中物の一端から突出している、請求項33に記載の履物。
【請求項36】
前記クッション成分の上面が中物の上面と同じ広がりを持っている、請求項33に記載の履物。
【請求項37】
前記流体が空気である、請求項33に記載の履物。
【請求項38】
第1層が前記第1表面材の少なくとも一部の上に延びており、前記挿入部に固定されている、請求項33に記載の履物。
【請求項39】
第2層が前記第2表面材の少なくとも一部の上に延びており、前記挿入部に固定されている、請求項33に記載の履物。
【請求項40】
材料の層が前記第1表面材と第2表面材の上に延びており、前記挿入部は前記材料の層に固定されて材料の層の間に延びている、請求項33に記載の履物。
【請求項41】
前記各挿入部は、前記第1表面材に接近して付設されている第1部分と、第2表面材に接近して付設されている第2部分とを含んでいる、請求項33に記載の履物。
【請求項42】
前記第1部分が上記第2部分に固定されている、請求項41に記載の履物。
【請求項43】
前記第1部分が3個の凹状構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項41に記載の履物。
【請求項44】
第1表面材と第2表面材との中心領域が実質的に平らな形状を持っている、請求項33に記載の履物。
【請求項45】
前記空洞が、少なくとも5個の前記突部を含んでいる、請求項33に記載の履物。
【請求項46】
甲革と、甲革に固定された靴底構造体とを持った履物であって、
前記靴底構造体は発泡した重合体材料で作られた中物と、中物の発泡した材料によって少なくとも部分的にカプセル化されたクッション成分と、中物に固定された表底とからなり、前記クッション成分は、区室と被覆素材とを備えており、区室はクッション成分を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しい圧力を持つ流体を封入しており、且つ区室は上記流体を入れるための或る容積を形成するために、周縁が接続されている第1表面材とこれに向き合う第2表面材とを備えており、第1表面材と第2表面材とは第1表面材の内部部分と第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、第1表面材と第2表面材とは区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成しており、突部は中心領域と流体の流通する状態にあり、突部は互いに接近して設けられている突部の間に間隔をあけており、
前記被覆素材は、第1層と、第2層と、第1層と第2層との間に延びる多数の挿入部とを備えており、前記第1層は前記第1表面材の上に延び、前記第2層は第2表面材の上に延び、前記挿入部は前記間隔内に付設されており、各挿入部は第1部分と第2部分とを備え、第1部分は第1表面材に接近して付設され、第2部分は第2表面材に接近して付設され、第1部分は第2部分と一体になって前記被覆素材を前記区室に固定しており、挿入部は区室よりも圧縮性に乏しい形状をを持っている履物。
【請求項47】
前記クッション成分の一端が中物の一端から突出している、請求項46に記載の履物。
【請求項48】
前記クッション成分の上面が中物の上面と同じ広がりを持っている、請求項46に記載の履物。
【請求項49】
前記流体が空気である、請求項46に記載の履物。
【請求項50】
前記第1部分が3個の凹状構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項46に記載の履物。
【請求項1】
区室(chamber)と挿入部(inserts)とからなり、区室は流体を入れるための或る容積を形成するために、周縁が結合されている第1表面材とこれと向き合う第2表面材とを持っており、前記第1表面材と第2表面材とは第1表面材の内部部分を第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、前記第1表面材と第2表面材とは区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部(lobes)を形成しており、突部は中心領域と流体が流通できる状態にあって、突部は互いに接近している突部の間に間隔をあけており、前記挿入部は前記間隔内に付設されて、弾力性のある材料で作られていることを特徴とする、履物用クッション成分。
【請求項2】
前記流体の圧力が、平方インチあたり0から5ポンドの範囲内にある、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項3】
前記流体の圧力が靴底構成体を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しくされている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項4】
前記流体が空気である、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項5】
重合体材料の第1層が前記第1表面材の少なくとも一部の上に延びていて前記挿入部に固定されている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項6】
重合体材料の第2層が前記第2表面材の少なくとも一部の上に延びていて前記挿入部に固定されている、請求項5に記載のクッション成分。
【請求項7】
前記第1層と第2層とが前記挿入部と一体に形成されている、請求項6に記載のクッション成分。
【請求項8】
材料の層が前記第1表面材と第2表面材の上へ延びていて、前記挿入部が前記材料の層に固定され材料の層の間に延びている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項9】
前記挿入部が前記区室の側壁に接近して付設され、側壁が前記第1表面材と第2表面材との間に延びている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項10】
前記各挿入部が、前記第1表面材に接近して付設されている第1部分と、前記第2表面材に接近して付設されている第2部分とを含んでいる、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項11】
前記第1部分が前記第2部分に固定されている、請求項10に記載のクッション成分。
【請求項12】
前記第1部分が3個の凹状(concave)構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項10に記載のクッション成分。
【請求項13】
前記第1表面材と第2表面材との中心領域が実質的に平らな配置(configuration)を持っている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項14】
前記区室が少なくとも5個の突部を含んでいる、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項15】
前記挿入部の少なくとも一部が前記区室に接着されている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項16】
前記挿入部が前記区室より圧縮性に乏しくなっている、請求項1に記載のクッション成分。
【請求項17】
区室と被覆素材とからなるクッション成分であって、
前記区室はクッション成分を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しい圧力を持つ流体を封入しており、区室は前記流体を入れるための或る容積を形成するために、周縁が結合されている第1表面材とこれと向き合う第2表面材とを持っており、第1表面材と第2表面材とは第1表面材の内部部分を第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、前記第1表面材と第2表面材とは区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成しており、突部は中心領域と流体が流通できる状態にあって、突部は互いに接近して付設されている突部の間に間隔をあけており、
前記被覆素材は第1層と、第2層と、第1層と第2層との間に延びる多数の挿入部とを備えており、第1層は第1表面材の少なくとも一部の上に延びており、第2層は第2表面材の少なくとも一部の上に延びており、挿入部が前記間隔内に付設されている履物用クッション成分。
【請求項18】
前記流体が空気である、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項19】
前記挿入部が前記区室より圧縮性に乏しくなっている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項20】
各挿入部が前記第1表面材に接近して付設されている第1部分と、前記第2表面材に接近して付設されている第2部分とを含んでいる、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項21】
前記第1部分が前記第2部分に固定されている、請求項20に記載のクッション成分。
【請求項22】
前記第1部分が3個の凹状構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項20に記載のクッション成分。
【請求項23】
前記第1表面材と第2表面材との中心領域が、実質的に平らな配置を持っている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項24】
前記区室が少なくとも5個の突部を持っている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項25】
前記挿入部が前記区室の側壁に接近して付設され、前記側壁が第1表面材と第2表面材との間に延びている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項26】
前記挿入部の少なくとも一部が前記区室に接着されている、請求項17に記載のクッション成分。
【請求項27】
区室と被覆素材とからなるクッション成分であって、
前記区室は流体を入れるための或る容積を形成するために、周縁が結合されている第1表面材とこれと向き合う第2表面材とを備えており、第1表面材と第2表面材とは、第1表面材の内部部分を第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、前記第1表面材と第2表面材とは区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成しており、突部は中心領域と流体を流通できる状態にあって、突部は互いに接近して付設されている突部の間に間隔をあけており、
前記被覆素材は第1層と、第2層と、第1層と第2層との間に延びる多数の挿入部とを備えており、前記第1層は前記第1表面材の上に延びており、前記第2層は前記第2表面材の上に延びており、前記挿入部は前記間隔内に付設されており、各挿入部は第1部分と第2部分とを持ち、第1部分は第1表面材に接近して付設され、第2部分は第2表面材に接近して付設され、第1部分は第2部分と一体になって被覆素材を区室に固定しており、挿入部は区室より圧縮性に乏しい形状を持っている、履物用クッション成分。
【請求項28】
前記流体の圧力が平方インチあたり0から5ポンドの範囲内にある、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項29】
前記流体の圧力が、靴底構造体を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しくされている、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項30】
前記流体が空気である、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項31】
前記第1部分が3個の凹状構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項32】
前記第1表面材と第2表面材との中心領域が、実質的に平らな形状を持っている、請求項27に記載のクッション成分。
【請求項33】
着用者の足を入れるための甲革と甲革に固定された靴底構造体とからなる履物であって、
前記靴底構造体は発泡した重合体材料で作られた中物と、中物の発泡した材料によって少なくとも部分的にカプセル化されたクッション成分とを含んでおり、前記クッション成分は1つの区室と多数の挿入部とを備え、前記区室はクッション成分を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しい圧力を持つ流体を封入しており、前記区室は第1表面材と、これと向き合う第2表面材とを周縁で接合して流体を入れるための或る容積を形成しており、前記第1表面材と第2表面材とは第1表面材の内部部分と第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、前記第1表面材と第2表面材とは前記区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成しており、前記突部は中心領域と流体が流通できる状態にあって、また前記突部は互いに接近して付設されている突部の間に間隔をあけており、前記挿入部が前記間隔内に付設され、挿入部は前記区室よりも圧縮性に乏しくなっている履物。
【請求項34】
前記クッション成分が中物の踵部分内に位置している、請求項33に記載の履物。
【請求項35】
前記クッション成分の一端が中物の一端から突出している、請求項33に記載の履物。
【請求項36】
前記クッション成分の上面が中物の上面と同じ広がりを持っている、請求項33に記載の履物。
【請求項37】
前記流体が空気である、請求項33に記載の履物。
【請求項38】
第1層が前記第1表面材の少なくとも一部の上に延びており、前記挿入部に固定されている、請求項33に記載の履物。
【請求項39】
第2層が前記第2表面材の少なくとも一部の上に延びており、前記挿入部に固定されている、請求項33に記載の履物。
【請求項40】
材料の層が前記第1表面材と第2表面材の上に延びており、前記挿入部は前記材料の層に固定されて材料の層の間に延びている、請求項33に記載の履物。
【請求項41】
前記各挿入部は、前記第1表面材に接近して付設されている第1部分と、第2表面材に接近して付設されている第2部分とを含んでいる、請求項33に記載の履物。
【請求項42】
前記第1部分が上記第2部分に固定されている、請求項41に記載の履物。
【請求項43】
前記第1部分が3個の凹状構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項41に記載の履物。
【請求項44】
第1表面材と第2表面材との中心領域が実質的に平らな形状を持っている、請求項33に記載の履物。
【請求項45】
前記空洞が、少なくとも5個の前記突部を含んでいる、請求項33に記載の履物。
【請求項46】
甲革と、甲革に固定された靴底構造体とを持った履物であって、
前記靴底構造体は発泡した重合体材料で作られた中物と、中物の発泡した材料によって少なくとも部分的にカプセル化されたクッション成分と、中物に固定された表底とからなり、前記クッション成分は、区室と被覆素材とを備えており、区室はクッション成分を取り巻いている外界の空気圧に殆ど等しい圧力を持つ流体を封入しており、且つ区室は上記流体を入れるための或る容積を形成するために、周縁が接続されている第1表面材とこれに向き合う第2表面材とを備えており、第1表面材と第2表面材とは第1表面材の内部部分と第2表面材の内部部分に固定する内部接続を欠落しており、第1表面材と第2表面材とは区室の中心領域から外がわへ延びる多数の突部を形成しており、突部は中心領域と流体の流通する状態にあり、突部は互いに接近して設けられている突部の間に間隔をあけており、
前記被覆素材は、第1層と、第2層と、第1層と第2層との間に延びる多数の挿入部とを備えており、前記第1層は前記第1表面材の上に延び、前記第2層は第2表面材の上に延び、前記挿入部は前記間隔内に付設されており、各挿入部は第1部分と第2部分とを備え、第1部分は第1表面材に接近して付設され、第2部分は第2表面材に接近して付設され、第1部分は第2部分と一体になって前記被覆素材を前記区室に固定しており、挿入部は区室よりも圧縮性に乏しい形状をを持っている履物。
【請求項47】
前記クッション成分の一端が中物の一端から突出している、請求項46に記載の履物。
【請求項48】
前記クッション成分の上面が中物の上面と同じ広がりを持っている、請求項46に記載の履物。
【請求項49】
前記流体が空気である、請求項46に記載の履物。
【請求項50】
前記第1部分が3個の凹状構造に作られており、前記第2部分が3個の凹状構造に作られている、請求項46に記載の履物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−501064(P2007−501064A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522655(P2006−522655)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/024884
【国際公開番号】WO2005/016051
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(592228398)ナイキ・インコーポレーテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】Nike Inc
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/024884
【国際公開番号】WO2005/016051
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(592228398)ナイキ・インコーポレーテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】Nike Inc
【Fターム(参考)】
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