説明

クッション機能を高めた履物並びにその製造方法

【課題】 特にソール部分に組み込まれた緩衝機能材を外部に露見させるにあたり、露見部の位置や形状等が制約を受けることなく、設計上ないし製造上の自由度に優れた緩衝機能を有する履物並びにその製造方法を開発することを技術課題とした。
【解決手段】 ソール1内に緩衝パーツを組み込んで成る履物であって、前記ソール1は、要緩衝個所に緩衝資材3の受入規制空間13が形成されたものであり、一方、前記緩衝資材3は熱可塑性樹脂製の柔軟なチューブ状のケーシング30内にゲル状の緩衝機能材31が封入されて成るものであり、この緩衝資材3が前記ソール1における受入規制空間13に設けられていることを特徴として成るものであり、汎用化された緩衝資材3を用いることができるため、仕様やサイズの異なる履物毎に個別の成型型を要することがなく、コストダウンを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば緩衝機能が要求されるスポーツシューズ等の履物に関するものであって、特にソール部分に組み込まれた緩衝機能材を外部に露見させるにあたり、露見部の位置や形状等が制約を受けることなく、設計上ないし製造上の自由度に優れた緩衝機能を有する履物並びにその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スポーツシューズ等の履物には高い緩衝機能が求められており、このため軟質な樹脂やゲル等を素材とする緩衝資材をソール中に埋め込み状態で一体化させ、所望の性能が発揮できるような構成が採られている。
加えて、その高性能であることを視覚的に積極的に顕示するとともに、装飾効果を発揮させて商品性を高める工夫がされている。具体的には、靴底から、あるいは靴底側縁または後縁等から緩衝部材の一部を外部より露見できる状態に組み込み、装飾部材としての機能を発揮できるような構成が採られている。
【0003】
ところで緩衝機能材としてゲル状物質が採用された緩衝資材は、所定の金型によってフィルムシート状のケーシング素材を上下に最中状にヒートシールする際に、その間にゲル状物質を封入するようにして製造されるものである(例えば特許文献1参照)。
しかしながらこの場合、前記ケーシングの接合部が露見してしまうとデザイン上好ましくないことが多く、そのような事態を回避するとなると、露見部の位置や緩衝資材の形状等が制約を受けることとなり、設計上ないし製造上の自由度がある程度せばめられてしまっているのが実情である。
【0004】
また新規仕様の履物を製造する場合には、ソール部分の金型はもとより緩衝資材の金型も新規に作製する必要があり、それぞれの金型はサイズに応じて複数作製されるため、イニシャルコストを増大させる要因となっていた。
【特許文献1】特開平11−48378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、特にソール部分に組み込まれた緩衝機能材を外部に露見させるにあたり、露見部の位置や形状等が制約を受けることなく、設計上ないし製造上の自由度に優れた緩衝機能を有する履物並びにその製造方法を開発することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち請求項1記載のクッション機能を高めた履物は、ソール内に緩衝パーツを組み込んで成る履物であって、前記ソールは、要緩衝個所に緩衝資材の受入規制空間が形成されたものであり、一方、前記緩衝資材は熱可塑性樹脂製の柔軟なチューブ状のケーシング内にゲル状の緩衝機能材が封入されて成るものであり、この緩衝資材が前記ソールにおける受入規制空間に設けられていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、汎用化された緩衝資材を用いることができるため、仕様やサイズの異なる履物毎に個別の成型型を要することがなく、コストダウンを実現することができる。
【0007】
また請求項2記載のクッション機能を高めた履物は、前記要件に加え、前記ソールは、複数のソール要素が積層形成されたものであり、この積層境界面に前記受入規制空間が設けられていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、ソールを構成するための工程内に、緩衝資材を組み込む工程を設けることができ、生産性を向上することができる。
【0008】
更にまた請求項3記載のクッション機能を高めた履物は、前記要件に加え、前記受入規制空間は、緩衝資材を嵌め込むように形成されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、ソールに対して緩衝資材を一体化する作業を効率的に行うことが可能となる。
【0009】
更にまた請求項4記載のクッション機能を高めた履物は、前記要件に加え、前記受入規制空間は馬蹄型に形成され、ここに緩衝資材が嵌め込まれていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、受入規制空間が形成されたソール全面にかかる衝撃を効果的に吸収することができる。
また特に履物がトラック競技に供されるものである場合には、ランナーが例えば左回りのコーナー部分を走行する際に、右足ではインサイド、左足ではアウトサイドに斜め方向から捻れ力が集中することとなるが、このような外力はケーシング内全域の緩衝機能材によって効果的に吸収されることとなる。更にこのとき、緩衝資材の復元力は馬蹄の中心に向かって作用することとなり、装着者の走行姿勢の安定が図られることとなる。
【0010】
更にまた請求項5記載のクッション機能を高めた履物は、前記要件に加え、前記ソール側面には、前記受入規制空間に設けられた緩衝資材を外部から目視できるような露見部が形成されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、履物を、露見部の位置や形状等が制約を受けることなく、設計上ないし製造上の自由度に優れたものとして形成することが可能となる。
【0011】
更にまた請求項6記載のクッション機能を高めた履物は、前記請求項5記載の要件に加え、前記ケーシングは、可透視状態であることを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝機能材を視覚的に積極的に顕示するとともに、装飾効果を発揮させて商品性を高めることができる。
【0012】
更にまた請求項7記載のクッション機能を高めた履物は、前記請求項5または6記載の要件に加え、前記緩衝資材における露見部から目視される個所には、化粧標示が形成されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝資材に別途装飾効果を付加して履物の商品性を高めることができる。
【0013】
更にまた請求項8記載のクッション機能を高めた履物は、前記要件に加え、前記緩衝機能材はシリコーンゲルを素材としたものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、履物に対して優れた緩衝機能を付与することができる。
またシリコーンゲルは、着色した場合であっても透明感を維持することができるため、独特の装飾効果を奏することができる。
【0014】
更にまた請求項9記載のクッション機能を高めた履物は、前記要件に加え、前記ケーシングは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを素材として成るものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、ケーシングを透明度の高いものとして構成し、内包される緩衝機能材が外部から目視されるのを妨げてしまうことがない。
【0015】
また請求項10記載のクッション機能を高めた履物の製造方法は、ソール内に緩衝資材を組み込んで成る履物の製造方法において、前記ソールはモールド成型された複数のソール要素が積層されて成るものであり、これらのソール要素を形成するにあたっては、いずれかのソール要素に緩衝資材の受入規制空間を同時に形成し、一方、前記緩衝資材を、熱可塑性樹脂製の柔軟なチューブ状のケーシング内にゲル状の緩衝機能材を注入するとともに必要な長さ毎に両端部をシールした状態で切り出すことにより形成し、この緩衝資材を前記ソール要素における受入規制空間に嵌め込むとともに各ソール要素を積層することを特徴として成るものである。
この発明によれば、ソールを構成するための工程内に、緩衝資材を組み込む工程を設けることにより、生産性を向上することができる。
【0016】
更にまた請求項11記載のクッション機能を高めた履物の製造方法は、前記請求項10記載の要件に加え、前記緩衝資材の受入規制空間の一部に露見部を形成することを特徴として成るものである。
この発明によれば、履物のソール部分に組み込まれる緩衝機能材を外部に露見させるにあたり、露見部の位置や形状等が制約を受けることなく、設計上ないし製造上の自由度が増してデザインの多様化が可能となり、更に汎用化された緩衝資材を用いるためコストダウンを実現することができる。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、履物のソール部分に組み込まれる緩衝機能材を外部に露見させるにあたり、露見部の位置や形状等が制約を受けることなく、設計上ないし製造上の自由度が増してデザインの多様化が可能となり、更に汎用化された緩衝資材を用いるため個仕様やサイズの異なる履物毎に緩衝資材の成型型を要することがなく、コストダウンを実現することができ、競争力の高い製品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のクッション機能を高めた履物並びにその製造方法の最良の形態の一つは以下の実施例に説明するとおりであって、始めにクッション機能を高めた履物の構成について説明した後、続いて製造方法について説明を行う。
なお以下の実施例に対して、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0019】
図1、2中、符号Sで示すものは、要緩衝機材(履物の一例であるスポーツシューズ)であって、このものはソール1とアッパー2とが一体化して構成され、前記ソール1内に緩衝資材3が組み込まれることにより、本発明のクッション機能を高めた履物として構成されるものである。
【0020】
前記ソール1は図4に示すように、接地部材であるアウターソール10と、足裏と接する部材であるインナーソール11との間にミッドソール12を介在させて積層し、これらのソール要素を一体化して成るものである。
更に前記ミッドソール12は図4に示すように、アウターベース121、ミッドベース122及びインナーベース123をソール要素とし、これらを積層して成るものであり、一例としてEVA、合成ゴム等を素材として形成されるものである。
前記アウターベース121は一例として踵部分を構成する部材であって、ミッドベース122との接合面であるとともに要緩衝個所となる部分に対して緩衝資材3の受入規制空間13が形成される。
【0021】
この受入規制空間13は、緩衝資材3を嵌め込むことができるように溝状に構成されるものであり、一例としてアウターベース121全面にかかる衝撃を効果的に吸収することを図って図5(a)の平面図で示すように、足の踵の外形に略沿うような馬蹄型となるようにした。
なお緩衝資材3をこのように馬蹄型とすることにより、特に履物がトラック競技に供されるものである場合に、ランナーが例えば左回りのコーナー部分を走行する際に、右足ではインサイド、左足ではアウトサイドに斜め方向から捻れ力が集中することとなるが、このような外力がケーシング30内全域の緩衝機能材31によって効果的に吸収されることとなる。更にこのとき、緩衝資材3の復元力は馬蹄の中心に向かって作用することとなり、装着者の走行姿勢の安定が図られることとなる。
【0022】
また前記受入規制空間13を形成するにあたっては、アウターベース121をモールド成型する際に、同時に形成することが好ましい。
更にまた前記受入規制空間13の一部または複数個所は、緩衝資材3が外部から露見できるように開放状態とした露見部15として構成されるものであり、この実施例では非開放部分を柱状に形成して接合柱14とした。
更にこの接合柱14の内側には図5(c)の断面図に示すように、受入規制空間13の側壁部上端を張り出させて溝の中心付近に至るような突起16が形成されるものであり、この突起16と接合柱14とによって緩衝資材3を保持するように構成される。
【0023】
また前記ミッドベース122は、一例として踵から土踏まず付近の部分を構成する部材であり、更に前記インナーベース123は、一例としてつま先から踵部分を構成する部材であり、更につま先から土踏まずにかけての部分が接地部分となるように構成された部材である。
また前記ミッドベース122の側周部分には、前記アウターベース121における接合柱14の先端部分を受ける凹部17が形成されるものであり、この凹部17に接合柱14が接した状態で、露見部15から緩衝資材3が目視されるように構成される。
なおこの実施例ではミッドベース122を設けるようにしたが、製品の仕様によっては、この部材をインナーベース123と一体化させる場合もある。
更にまた前記受入規制空間13は、前記インナーソール11とミッドソール12との間の境界面や、アウターソール10とミッドソール12との境界面に設けるようにしてもよい。
【0024】
一方、前記アッパー2は、人工皮革や布地等で構成された複数の要素を縫合して構成されるものであり、適宜ハトメ飾りやベロ、更にはストライプ等が具えられ、適宜通気穴が形成される。
【0025】
また前記緩衝資材3は、熱可塑性樹脂製の柔軟なチューブ状のケーシング30内にゲル状の緩衝機能材31が封入されて成るものである。
この実施例では、前記ケーシング30を可透視状態とするものであり、一例として熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)を素材として形成した。因みにこの熱可塑性ポリウレタンエラストマーは柔軟性に優れるとともに透明性に優れたものであり、変形した場合であっても白濁を起こすことが少ないため、スポーツシューズにおける荷重の掛かる個所、すなわち要緩衝個所に設けられるケーシング30の原料として適したものである。
なおこの実施例では一例として、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしてBASF社製、エラストンラン(登録商標)を採用するものであり、一例として硬度がJIS
A 90のものを使用した。
また前記ケーシング30の素材としては、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーの他にもスチレン系、オレフィン系、アクリル系等の合成樹脂や他の合成樹脂を用いることもできる。
【0026】
更に、前記ケーシング30は異型押出成形方法によって成形されるものであり、円形の断面形状を有するものが基本仕様とされるものであるが、断面形状を三角形や他の多角形あるいは楕円等としてもよく、更には空間内に仕切壁を設けて複数の充填空間に区画されたものとしてもよい。このように仕切壁を設けることにより、各々の充填空間に充填される緩衝機能材31同士が混ざってしまうのを防止することができ緩衝機能や装飾効果を、複数種の緩衝機能材31による複合的な相乗効果が発現したものとすることができる。
【0027】
一方、前記緩衝機能材31としては、シリコーンゲルやウレタンゲル等のゲル状物質が適用されるものであり、特にシリコーンゲルが好ましく、この実施例ではシリコーンゲルとしてジェルテック社製、αGEL(登録商標)を採用するものであり、一例としてJIS K2207(50g荷重)に規定する針入度が150のものを使用した。
なお前記αGELは、シリコーンを主成分とするゲル状物質であって、例えば次式〔1〕で示されるジオルガノポリシロキサン(以下A成分という):RR1 2 SiO- (R2 2 SiO)n SiR1 2 R…〔1〕
[ただし、Rはアルケニル基であり、R1 は脂肪族不飽和結合を有しない一価の炭化水素基であり、R2 は一価の脂肪族炭化水素基(R2 のうち少なくとも50モル%はメチル基であり、アルケニル基を有する場合にはその含有率は10モル%以下である)であり、nはこの成分の25℃における粘度が100〜100000cStになるような数である]と、25℃における粘度が5000cSt以下であり、一分子中に少なくとも2個のSi原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B成分)とからなり、且つこのB成分中のSi原子に直接結合している水素原子の合計量に対するA成分中に含まれるアルケニル基の合計量の比(モル比)が0.1〜2.0になるように調整された混合物を硬化させることにより得られる付加反応型シリコーンコポリマーである。
【0028】
またこの実施例では緩衝機能材31を半透明状態に着色し、ケーシング30を通してその存在がはっきりと視認できるようにしたが、製品仕様によっては透明状態のままとしたり、非透明状態にまで着色する場合もある。
更にまた緩衝機能材31に対して、機能部材として金属粒子、金属箔等のフィラー
を混入してもよく、この場合には、負荷がかかることにより流動する緩衝機能材31の動きをフィラーの動きとして外部より視認することができるようになる。
【0029】
そしてこの実施例では長尺状態のケーシング30に緩衝機能材31を注入したものを出発素材とし、図3(a)(b)(c)に示すように所定寸法毎に、凹型51と凸型52とを具えて成る金型5を用いてケーシング30を押し潰した状態で熱溶着して封止部32を形成するとともに、カッター53によって裁断して所望の長さの緩衝資材3を形成するようにした。
なおケーシング30を予め所定の寸法に裁断して短寸にしておき、このものに緩衝機能材31を注入し、その両端部を熱溶着するようにしてもよい。
またこの実施例では前記封止部32の形状を図3(d)に示すように断面視でU字状となるような形状としたが、同図(e)に示すように断面視で直線状となるような形状にしてもよい。
更にまたケーシング30の両端部を熱溶着することなく、蓋体を両端開口部に被せるとともに溶着して緩衝機能材31を封入するようにしてもよい。なおこのような溶着は熱溶着の他に、高周波溶着、超音波溶着等によって行うこともできる。
【0030】
更にまた前記緩衝資材3のケーシング30の表面であり、ソール1に組み込まれた状態で露見部15から目視される個所には、製品名や製造会社名等を一例としてシルク印刷によって印刷した化粧標示33が形成される。
【0031】
本発明のクッション機能を高めた履物の一例であるスポーツシューズ(要緩衝機材S)は上述したように構成されるものであり、以下、本発明の製造方法について説明する。
〔ソールデザインの決定〕
本発明では、緩衝資材3として上述したチューブ状のケーシング30内にゲル状の緩衝機能材31が封入されたものを使用することが前提となるものであり、これに合わせてミッドソール12を構成するアウターベース121に形成される受入規制空間13及び露見部15の形状等が決定され、更にはスポーツシューズ全体のデザインが決定される。
この際、緩衝資材3のケーシング30は、側周部に繋ぎ目が無いチューブ状であるため、封止部32さえ隠蔽しておけばその他の個所のどの部分を露見させても美観を損なってしまうことが無く、自由な設計が可能となるものである。
そしてソール1の構成要素であるアウターソール10、インナーソール11及びミッドソール12(アウターベース121、ミッドベース122及びインナーベース123)それぞれの金型が製作されるものであり、男性物のスポーツシューズの場合、一例として22.0cmから30.0cm位まで、合計七〜十個程度の金型が製作されることとなる。
一方、従来の緩衝資材の製造においては、仕様やサイズに合わせて複数の金型が必要とされていたが、本発明によると緩衝資材3のケーシング30を作製するための異形押出成形に用いられる一つの金型があればよいこととなる。
【0032】
〔各部材の作製〕
次いでソール1の構成要素(ソール要素)たるアウターソール10、インナーソール11及びミッドソール12(アウターベース121、ミッドベース122及びインナーベース123)、アッパー2並びに緩衝資材3がそれぞれ別工程で作製されるものであり、これらソール要素は金型に対してEVA、合成ゴム等の原料を流し込んでモールド成型され、適宜仕上加工される。
またアッパー2は人工皮革や布地等で構成された複数の要素を縫合して構成されるものであり、適宜ハトメ飾りやベロ、更にはストライプ等が縫い付けられ、適宜通気穴が形成される。
更に緩衝資材3は、異形押出成形方法によって形成された長尺状態のケーシング30に対して緩衝機能材31が充填されたものを出発素材とし、この出発素材に熱溶着によって封止部32を形成するとともに、カッター53によって所定長に裁断して形成される。
【0033】
〔ソールの作製〕
次いでソール1を作製するものであり始めにミッドソール12を作製する。
具体的には、まずアウターベース121における受入規制空間13に対して緩衝資材3を嵌め込み、その上に、凹部17に接合柱14の先端が当接するようにしてミッドベース122を重ね合わせ、更にその上にインナーベース123を重ね合わせるととともに、適宜超音波溶着等の手法によってこれらを接合する。
なおこの際、突起16によって緩衝資材3が受入規制空間13から出てしまうのが防止されるため、アウターベース121に対して緩衝資材3を一体化する作業及びミッドソール12を作製する作業を効率的に行うことが可能となる。
またこのように、ミッドソール12を構成するための工程内に、緩衝資材3を組み込む工程が盛り込まれることにより、生産性を向上することができる。
そしてミッドソール12に対してアウターソール10及びインナーソール11を重ね合わせるととともに、適宜超音波溶着等の手法によってこれらを接合すると、ソール1が完成することとなる。
【0034】
〔ソールとアッパーの一体化〕
次いでソール1とアッパー2を接着剤あるいは縫合によって一体化すると、クッション機能を高めた履物としてのスポーツシューズが完成する。
【0035】
〔他の実施例〕
本発明は上述した実施例を基本となる実施例とするものであるが、本発明の技術的思想に基づいて以下に示すような実施例を採ることもできる。
まず基本となる実施例では、緩衝資材3が馬蹄型となるようにしたが、競技種目等に応じて負荷が掛かる位置が異なること等を考慮して、図6に示すように直線状あるいは曲線状の緩衝資材3を複数個所に設けるようにしてもよい。
【0036】
また本発明のクッション機能を高めた履物は、スポーツ以外に供される他の履物として構成してもよく、一例として図7に示すようなサンダルとして構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のクッション機能を高めた履物の一例であるスポーツシューズを示す側面図である。
【図2】同上背面図である。
【図3】緩衝資材並びに緩衝資材の製造の様子を示す斜視図である。
【図4】ソールの分解斜視図である。
【図5】アウターベースを示す平面図並びにb−b断面図及びc−c断面図である。
【図6】緩衝資材の他の実施例を示す平面図である。
【図7】履物の他の実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ソール
10 アウターソール
11 インナーソール
12 ミッドソール
121 アウターベース
122 ミッドベース
123 インナーベース
13 受入規制空間
14 接合柱
15 露見部
16 突起
17 凹部
2 アッパー
3 緩衝資材
30 ケーシング
31 緩衝機能材
32 封止部
33 化粧標示
5 金型
51 凹型
52 凸型
53 カッター
S 要緩衝機材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール内に緩衝資材を組み込んで成る履物であって、前記ソールは、要緩衝個所に緩衝資材の受入規制空間が形成されたものであり、一方、前記緩衝資材は熱可塑性樹脂製の柔軟なチューブ状のケーシング内にゲル状の緩衝機能材が封入されて成るものであり、この緩衝資材が前記ソールにおける受入規制空間に設けられていることを特徴とするクッション機能を高めた履物。
【請求項2】
前記ソールは、複数のソール要素が積層形成されたものであり、この積層境界面に前記受入規制空間が設けられていることを特徴とする請求項1記載のクッション機能を高めた履物。
【請求項3】
前記受入規制空間は、緩衝資材を嵌め込むように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のクッション機能を高めた履物。
【請求項4】
前記受入規制空間は馬蹄型に形成され、ここに緩衝資材が嵌め込まれていることを特徴とする請求項1、2または3記載のクッション機能を高めた履物。
【請求項5】
前記ソール側面には、前記受入規制空間に設けられた緩衝資材を外部から目視できるような露見部が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載のクッション機能を高めた履物。
【請求項6】
前記ケーシングは、可透視状態であることを特徴とする請求項5記載のクッション機能を高めた履物。
【請求項7】
前記緩衝資材における露見部から目視される個所には、化粧標示が形成されていることを特徴とする請求項5または6記載のクッション機能を高めた履物。
【請求項8】
前記緩衝機能材はシリコーンゲルを素材としたものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載のクッション機能を高めた履物。
【請求項9】
前記ケーシングは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを素材として成るものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のクッション機能を高めた履物。
【請求項10】
ソール内に緩衝資材を組み込んで成る履物の製造方法において、前記ソールはモールド成型された複数のソール要素が積層されて成るものであり、これらのソール要素を形成するにあたっては、いずれかのソール要素に緩衝資材の受入規制空間を同時に形成し、一方、前記緩衝資材を、熱可塑性樹脂製の柔軟なチューブ状のケーシング内にゲル状の緩衝機能材を注入するとともに必要な長さ毎に両端部をシールした状態で切り出すことにより形成し、この緩衝資材を前記ソール要素における受入規制空間に嵌め込むとともに各ソール要素を積層することを特徴とするクッション機能を高めた履物の製造方法。
【請求項11】
前記緩衝資材の受入規制空間の一部に露見部を形成することを特徴とする請求項10記載のクッション機能を高めた履物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−319394(P2007−319394A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152570(P2006−152570)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】