説明

クライアント端末、当該クライアント端末にインストールされるコンピュータソフトウェアプログラム、ファイル管理サーバと複数のクライアント端末とを有する通信システム及び通信方法

【課題】各クライアント端末においてファイル管理サーバに格納されているデータが要求された際に、各クライアント端末がその要求データを取得するまでの時間を短縮することのできるクライアント端末および当該クライアント端末を提供する。
【解決手段】このクライアント端末は、ファイルシステム220上でファイルが選択され、そのファイルに付きファイル管理サーバ120に対してダウンロード要求が出された際に、当該要求ファイルが分割キャッシュされたデータが自己又は他のクライアント端末200に格納されているか否かが判断され、格納されている場合は当該分割キャッシュされたデータが収集されると共に前記要求データが再構築され、その再構築されたファイルがファイル管理サーバ120からダウンロードしたデータとして前記ファイルシステム220に渡される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークを介してファイル管理サーバ及び他のクライアント端末と通信可能に接続されたクライアント端末、当該クライアント端末にインストールされるコンピュータソフトウェアプログラム、ファイル管理サーバと複数のクライアント端末とを有する通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェアの開発現場では、ソフトウェアの構成管理や開発中ファイルの更新管理をサーバ装置において一元管理しながら、サーバ装置に接続された各クライアント端末がサーバ装置からソースファイルやコンテンツをダウンロードし、クライアント端末においてダウンロードしたファイルに対して様々な作業が行われる。ソフトウェア開発の現場は一例であるが、このようなサーバクライアント型のシステムは、ファイルの更新管理をサーバ装置において一元管理出来るメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−048595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えばゲームソフト開発など大量のデータを扱うデジタルコンテンツの開発現場では、各クライアント端末はファイル管理サーバから大容量の開発関連データ等を頻繁にダウンロードする必要がある。このため、各クライアント端末とファイル管理サーバとの間のデータの伝送速度に限界があることや、複数のクライアント端末が同時にファイル管理サーバにアクセスする事による通信速度の低下等が、作業効率に大きな影響を与えている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、各クライアント端末においてファイル管理サーバに格納されているデータが要求された際に、各クライアント端末がその要求データを取得するまでの時間を短縮することができるクライアント端末、当該クライアント端末にインストールされるコンピュータソフトウェアプログラム、ファイル管理サーバと複数のクライアント端末とを有する通信システム及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この本発明の主要な観点によれば、通信ネットワークを介してファイル管理サーバ及び他のクライアント端末と通信可能に接続されたクライアント端末であって、コンピュータに、前記ファイル管理サーバに格納されたファイルの情報をユーザインタフェース上に選択可能に表示させ、前記ユーザインタフェース上で選択されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してダウンロードを要求させるファイルシステムと、コンピュータに、前記ファイルシステムからダウンロード要求されたファイルに付き、前記通信ネットワークに接続された所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバに分割キャッシュされたデータが存在するかを判断させ、存在する場合に前記所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバから当該分割キャッシュされたデータを受け取り、前記ダウンロード要求に基づいて前記ファイル管理サーバからダウンロードしたファイルとして前記ファイルシステムに渡させる中継処理システムとを有する。
【0007】
また、本願の他の主要な観点によれば、通信ネットワークを介してファイル管理サーバ及び他のクライアント端末と通信可能に接続されたクライアント端末にインストールされるコンピュータソフトウェアプログラムであって、前記クライアント端末は、前記ファイル管理サーバに格納されたファイルの情報をユーザインタフェース上に選択可能に表示させ、前記ユーザインタフェース上で選択されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してダウンロードを要求させるファイルシステムを有するものであり、このコンピュータソフトウェアプログラムは、前記クライアント端末に、前記ファイルシステムからダウンロード要求されたファイルについて前記通信ネットワークに接続された所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバに分割キャッシュされたデータが存在するかを判断させ、存在する場合に前記所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバから当該分割キャッシュされたデータを受け取り、前記ダウンロード要求に基づいて前記ファイル管理サーバからダウンロードしたファイルとして前記ファイルシステムに渡させるように機能させる中継指令を有する。
【0008】
また、本願のさらに他の主要な観点によれば、ファイル管理サーバと、このファイル管理サーバからファイルをダウンロードする複数のクライアント端末とを有する通信システムであって、前記ファイル管理サーバは、コンピュータにより、所定のファイルが分割キャッシュされたデータについて、前記各クライアント端末及び/又は前記ファイル管理サーバがどのデータを有するかを示す分割キャッシュ情報を前記各クライアント端末に配信させる情報配信手段を有し、前記クライアント端末は、コンピュータにより、前記分割キャッシュ情報を受け取り格納するキャッシュ情報格納手段と、コンピュータにより、前記ファイル管理サーバに格納されたファイルの情報をファイルシステムを介してユーザインタフェース上に選択可能に表示し、前記ユーザインタフェース上で選択されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してダウンロード要求するダウンロード要求手段と、コンピュータにより、前記ダウンロード要求されたファイルに付き、前記分割キャッシュ情報に基づき所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバに分割キャッシュされたデータが存在するかを判断し、存在する場合に前記所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバから当該分割キャッシュされたデータを受け取り、前記ダウンロード要求に基づいて前記ファイル管理サーバからダウンロードしたファイルとして前記ファイルシステムに渡す中継処理手段とを有する。
【0009】
また、本願のさらに他の主要な観点によれば、ファイル管理サーバと、このファイル管理サーバからファイルをダウンロードする複数のクライアント端末との間で実行される通信方法であって、前記ファイル管理サーバが、所定のファイルが分割キャッシュされたデータについて、前記各クライアント端末及び/又は前記ファイル管理サーバがどのデータを有するかを示す分割キャッシュ情報を前記各クライアント端末に配信させる情報配信工程と、前記クライアント端末が、前記分割キャッシュ情報受け取り格納するキャッシュ情報格納工程と、前記ファイル管理サーバに格納されたファイルの情報をファイルシステムを介してユーザインタフェース上に選択可能に表示させ、前記ユーザインタフェース上で選択されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してダウンロードを要求するダウンロード要求工程と、前記ダウンロード要求されたファイルについて、前記分割キャッシュ情報に基づき所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバに分割キャッシュされたデータが存在するかを判断し、存在する場合に前記所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバから当該分割キャッシュされたデータを受け取り、前記ダウンロード要求に基づいて前記ファイル管理サーバからダウンロードしたファイルとして前記ファイルシステムに渡す中継処理工程とを有する。
【0010】
このような構成によれば、ユーザインタフェース上でファイルが選択され、そのファイルに付きファイル管理サーバに対してダウンロード要求が出された際に、当該要求ファイルが分割キャッシュされたデータが所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバに格納されているか否かが判断され、格納されている場合は中継処理システムが当該分割キャッシュされたデータを受け取り、前記ダウンロード要求に基づいて前記ファイル管理サーバからダウンロードしたファイルとして前記ファイルシステムに渡される。このため、大容量のデータのダウンロードをファイル管理サーバに要求し、そのキャッシュデータが前記ファイル管理サーバ及び/又は各クライアント端末に格納されている場合、クライアント端末が要求データを取得するまでの時間を短縮することができる。また、ユーザは通常通りユーザインタフェースを操作してファイル管理サーバからのダウンロードを要求するだけなので、ユーザに煩わしい操作を要求することなく、クライアント端末が要求データを取得するまでの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各クライアント端末においてファイル管理サーバに格納されているデータの要求があった際に、各クライアント端末がその要求データを取得するまでの時間を短縮することができるので、例えば大量のデータを扱うデジタルコンテンツの開発現場において、作業効率を向上することが可能となる。
【0012】
また、ファイル管理サーバに格納されているデータをあるクライアント端末が要求する時、そのクライアント端末の近傍の他のクライアント端末に要求データの分割キャッシュデータがある場合は、これを活用することでデータの全量をファイル管理サーバから取得せずに済むので、ファイル管理サーバ負荷の低減と、ファイル管理サーバとの通信経路上のボトルネックの影響が軽減される。
【0013】
なお、この発明の更なる他の特徴と顕著な効果は次の発明を実施するための最良の形態の項に記載された実施形態及び図面を参照することによって当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る全体構成を示す図
【図2】クライアント端末における処理を示す工程図
【図3】ユーザインタフェースによる表示の例
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る全体構成を示す図である。このデータ送信システムは、サーバ装置100と、当該サーバ装置100にインターネットなどの公衆回線1やLAN2を介して接続されている複数のクライアント端末200とを備えている。図1ではクライアント端末A及びBのみを示しているが、A及びB以外にも複数のクライアント端末が存在するものとする。各クライアント端末200とサーバ装置100とは任意の通信プロトコルによって通信するようになっている。例えば各クライアント端末200は通信インターフェース210を介してサーバ装置100への要求やサーバ装置100からのデータの受け取りを行うようになっており、サーバ装置100も同様の構成となっている。
【0017】
サーバ装置100は、通信インターフェース110と、ファイル管理サーバ120と、構成管理システム130と、構成管理システム130のメタ情報を保存するレポジトリストレージ140とを備えている。本実施形態では、通信インターフェース110は所謂通信プロトコルスタックであり、サーバ装置100と外部の通信線やアンテナとの接続部(OSI参照モデルにおける物理層)と、PPP、HDLC、IPv4、IPX、TCP、UDP等の通信プロトコル(OSI参照モデルにおけるリンク層、ネットワーク層、トランスポート層等の任意の通信プロトコル)とを含むものである。通信インターフェース110は場合によってはトランスポート層及びネットワーク層を含んでいなくても良い。構成管理システム130は、例えばゲームソフトを開発する際に用いるソースコード、デジタルコンテンツ等のファイルの最新版や変更履歴の管理等を行う公知の構成管理システムを用いることが可能であり、レポジトリストレージ140には当該ソースコードや画像データのメタ情報が保存されている。
【0018】
ファイル管理サーバ120は、例えばゲームソフト開発の開発を行う際に用いるソースコードやデジタルコンテンツ等のファイルを格納するストレージ121を有する。ファイル管理サーバ120はさらに、ストレージ121内の所定のファイル、例えば所定種類のファイルや所定容量以上のファイルを分割して分割キャッシュデータを作成し、作成した分割キャッシュデータをストレージ121に格納するようにコンピュータを機能させるファイル分割部122を有する。ファイル管理サーバ120はさらに、コンピュータにそれぞれ所定の動作を行わせるキャッシュ情報管理部123及び分割キャッシュ情報格納部124を有する。これらについては後述する。
【0019】
クライアント端末200は、通信インターフェース210と、ファイルシステム220と、中継処理システム230とを備えている。通信インターフェース210はサーバ端末100の前記通信インターフェース110と同様の構成を有する。ファイルシステム220はユーザインタフェース221を有し、ユーザインタフェース221はファイル管理サーバ120と通信してファイル管理サーバ120のストレージ121に格納されているファイルの情報、例えばファイル名やファイルサイズや更新日時等を液晶ディスプレイ等の表示装置222にユーザに選択可能に表示させるようになっている。本実施形態では、図3に示すように、ユーザインタフェース221としてウィンドウズエクスプローラ(Windows Explorer)等のようにツリー構造でファイルを表示するものを用いているが、リストでファイルを表示するタイプのものを用いることも可能であり、その他のタイプのものを用いることも可能である。
【0020】
クライアント端末200はストレージ231を備え、キャッシュ取得部232は、ファイル管理サーバ120のストレージ121に格納されている前記分割キャッシュデータのうち任意の分割キャッシュデータをダウンロードしてストレージ231に格納するようにコンピュータを機能させる。各クライアント端末200において分割キャッシュデータのダウンロードが行われ、各クライアント端末200のストレージ231にはそれぞれ分割キャッシュデータが格納される。ファイル管理サーバ120の前記キャッシュ情報管理部123は各クライアント端末200に定期的に問い合わせを行い、各クライアント端末200のストレージ231に何の分割キャッシュデータが格納されているかを示す分割キャッシュ情報を作成し、その分割キャッシュ情報を前記分割キャッシュ情報格納部124に格納する。この分割キャッシュ情報としては、各ファイルの分散キャッシュデータがどのクライアント端末に分散されて格納されているかを示す分散ノード情報と、各ファイルや各分散キャッシュデータについてのメタ情報を示す分散キャッシュ情報とを含む。各クライアント端末200はそれぞれキャッシュ情報取得部233を有し、このキャッシュ情報取得部233は、ファイル管理サーバ120に問い合わせを行い、ファイル管理サーバ120の前記分割キャッシュ情報格納部124に格納されている分割キャッシュ情報を取得して自己の分割キャッシュ情報格納部234に格納するようにコンピュータを機能させる。尚、各クライアント端末200が他のクライアント端末200に直接問い合わせを行い、各クライアント端末200において前記分割キャッシュ情報を作成することも可能である。また、各クライアント端末200にキャッシュ情報配信部243を格納することも可能である。この場合、キャッシュ情報配信部243が、そのクライアント端末200に、自己の分割キャッシュ情報格納部234に格納されている分割キャッシュデータについての分割キャッシュ情報や、他のクライアント端末200やファイル管理サーバ120に格納されている分割キャッシュデータについての分割キャッシュ情報を、他のクライアント端末200やサーバ装置100のファイル管理サーバ120に送信させるように機能する。これにより、各クライアント端末200がそれぞれ他のクライアント端末200やファイル管理サーバ120の有する分割キャッシュデータの情報を保有するようになる。
【0021】
各クライアント端末200の中継処理システム230はP2P通信部235を有する。P2P通信部235は、前記分割キャッシュ情報に基づいて、各クライアント端末200のストレージ231又はサーバ装置100のストレージ121に格納されている分割キャッシュデータをP2P通信によって相互に送受信し、受信した分割キャッシュデータをストレージ231や図示しない一時メモリに記憶させる。
【0022】
各クライアント端末200はさらに、コンピュータに所定の処理を行わせるキャッシュダウンロード部236、ファイルダウンロード部237、種別判定部239、判定部240、比較部241、選択実行部242及びファイルアップロード部238を有する。これらの機能については、図2を参照しながら、各クライアント端末200が行う処理の一例に沿って以下に説明する。
【0023】
各クライアント端末200の中継処理システム230は、前述のように、ファイル管理サーバ120に定期的に問い合わせを行い(ステップS1)、ファイル管理サーバ120の前記分割キャッシュ情報格納部124に格納されている分割キャッシュ情報を取得している(ステップS2)。
【0024】
各クライアント端末200のファイルシステム220は、ユーザがファイルシステム220上でファイル管理サーバ120のファイルを選択してダウンロードの要求をすると、当該ファイルをダウンロードする要求をファイル管理サーバ120側に向かって送信する(ステップS3)。
【0025】
中継処理システム230はファイルシステム220からの前記要求を捕捉する。この時、種別判定部239が、前記ダウンロード要求されたファイルが所定種別のファイル、例えばゲームソフトを開発する際に用いるソースコード、デジタルコンテンツのファイルのうち予め中継処理システム230に設定されている所定種別のファイルであるか否かを判定し、所定種別であると判定されると中継処理システム230に以下のステップS5以下を行わせ、所定種別でないと判定されると前記ダウンロード要求を処理せず透過させる(ステップS4)。前記要求を透過させると、ファイル管理サーバ120はその要求を受け取ることになる。
【0026】
ステップS4で所定種別であると判定されると、分割キャッシュ情報格納部234に格納されている分割キャッシュ情報を参照することにより、前記ダウンロード要求のあったファイルの分割キャッシュデータを自己のストレージ231、他のクライアント端末200のストレージ231及びサーバ装置100のストレージ121から全て取得出来るか否かを判定部240が判定する(ステップS5)。この時、自己の端末、クライアント端末200及びサーバ装置100のうち所定範囲を参照する。所定範囲は自己を含むものであっても良く、含まないものであっても良く、ネットワークで接続されている全てのクライアント端末200を含むものであっても良く、一部のクライアント端末200だけであっても良く、サーバ装置100を含むものであっても良く、含まないものであっても良い。ステップS5で存在すると判定された場合、後述するようにキャッシュダウンロード部236によって要求ファイルの分割キャッシュデータを受け取ると共に、受け取ったデータを合成して要求ファイルを再構築するための所要時間と、同じく後述するようにファイルダウンロード部237で要求ファイルをファイル管理サーバ120からダウンロードするための所要時間とを比較部241によって比較する(ステップS6)。そして、選択実行部242によって、ステップS6の比較結果に基づき、以下のステップS8〜S10の処理(キャッシュダウンロード処理)若しくは以下のステップS11〜S12の処理(ファイルダウンロード処理)を選択して実行する(ステップS7)。
【0027】
ステップS7でキャッシュダウンロード処理が選択実行された場合、クライアント端末200はキャッシュダウンロード部236により、分割キャッシュ情報格納部234に格納されている分割キャッシュ情報に基づき、前記所定範囲の他のクライアント端末200やサーバ装置100に要求ファイルの分割キャッシュデータの送信を要求し(ステップS8)、他のクライアント端末200やサーバ装置100から分割キャッシュデータを受け取りストレージ231又は一時メモリに記憶し(ステップS9)、収集した分割キャッシュデータ及び/又は自己のストレージ231に元々格納されている分割キャッシュデータを用いて要求ファイルを再構築する(ステップS10)。
【0028】
一方、ステップS7でファイルダウンロード処理が選択実行された場合、クライアント端末200はファイルダウンロード部237により、ファイル管理サーバ120に前記要求ファイルの送信を要求し(ステップS11)、ファイル管理サーバ120から要求ファイルを受取ストレージ231又は一時メモリに記憶する(ステップS12)。
【0029】
続いて、クライアント端末200は中継処理システム230により再構築又はダウンロードした要求ファイルをファイルシステム220に渡す(ステップS13)。
【0030】
一方、ファイルシステム220を介して図3のようにユーザインタフェース221によって表示される各ファイルについて、例えばユーザによってクライアント端末Aのフォルダaのファイルa1が選択されそのファイルa1を新たにファイル管理サーバ120のフォルダXに保存することや、ユーザによってフォルダXのファイルX1の更新が指示されると、ファイルシステム220はその新たなファイル又は更新ファイルにつきファイル管理サーバ120に送信し、その格納を要求する。この時、中継処理システム230は、前記データ及び要求をそのままファイル管理サーバ120に渡すようになっている。尚、前記データ及び要求が中継処理システム230を経由せずに直接ファイル管理サーバ120によって受け取られるようにすることも可能である。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、ユーザインタフェース221上でファイルが選択され、そのファイルに付きファイル管理サーバ120に対してダウンロード要求が出された際に、当該要求ファイルが分割キャッシュされたデータが自己や他のクライアント端末200やサーバ装置100に格納されているか否かが判断され、格納されている場合は当該分割キャッシュされたデータが収集されると共に前記要求ファイルが再構築され、その再構築されたファイルがファイル管理サーバ120からダウンロードしたデータとして前記ファイルシステム220に渡される。このため、大容量のデータのダウンロードがファイル管理サーバ120に要求され、その分割キャッシュデータを収集することが出来る場合、クライアント端末200が要求データを取得するまでの時間を短縮することができる。また、ユーザは通常通りユーザインタフェース221を操作してファイル管理サーバ120からのダウンロードを要求するだけであるので、ユーザに煩わしい操作を要求することなく、クライアント端末200が要求データを取得するまでの時間を短縮することができる。
【0032】
また、クライアント端末200が分割キャッシュ情報格納部234を有し、当該分割キャッシュ情報格納部234には各クライアント端末200やファイル管理サーバ120のストレージに何の分割キャッシュデータが格納されているかを示す分割キャッシュ情報が格納されている。このため、クライアント端末200は前記所定範囲のクライアント端末200に要求ファイルが分割キャッシュされたデータが所定範囲のクライアント端末200やファイル管理サーバ120に存在するか否かを迅速に判断することができる。
【0033】
また、本実施形態では、前記所定範囲の各クライアント端末200やファイル管理サーバ120に分割キャッシュされたデータは、ファイル管理サーバ120がストレージ121に有するファイルを分割キャッシュしたものである。また、ゲームソフト開発に用いるコンテンツファイルやソースコードがサーバ装置100のストレージ121に格納されており、これらのファイルは構成管理システム130によって最新版や変更履歴の管理等が行われている。つまり、各クライアント端末200やファイル管理サーバ120に分割キャッシュされたデータは構成管理システム130によって管理されたデータのキャッシュデータである。したがって、本実施形態は、構成管理システム130によるファイル管理を確実に行いながら、クライアント端末200が要求データを取得するまでの時間の短縮を可能とするものである。
【0034】
また、前記所定範囲のクライアント端末200やファイル管理サーバ120に前記要求ファイルが分割キャッシュされた全部のデータが存在しない場合、ファイル管理サーバ120から当該要求ファイルがダウンロードされるので、各クライアント端末200における作業が滞ることはない。
【0035】
また、分割キャッシュを収集して要求ファイルを再構築するための所要時間と、ファイル管理サーバ120から当該要求ファイルがダウンロードするための所要時間とを比較し、その比較結果に応じてクライアント端末200におけるファイルの取得が行われるので、クライアント端末200が要求データを取得するまでの時間の更なる短縮を図ることが可能となる。
【0036】
尚、本実施形態では、ステップS7でキャッシュダウンロード処理とファイルダウンロード処理の何れかを選択して実行するものを示した。これに対し、ステップS6及びS7を省き、ステップS5で要求データのキャッシュデータが存在すると判定された後すぐにキャッシュダウンロード処理を行わせることも可能である。
【0037】
また、本実施形態では、サーバ装置100が各クライアント端末200に定期的に問い合わせを行い、これにより各クライアント端末200のストレージ231に何のキャッシュデータが格納されているか示す分割キャッシュ情報を作成し、この分割キャッシュ情報がクライアント端末200の分割キャッシュ情報格納部234にも格納され、この分割キャッシュ情報に基づいてキャッシュダウンロード処理を行う際のP2P通信が行われている。これに対し、何れのクライアントが何のキャッシュデータを持っているかの情報の集め方や管理の方法や、その情報のP2P通信への適用は自由に変更可能であり、例えば公知のP2P型のファイル送信に用いられる方法を用いてキャッシュダウンロード処理を行うことも可能である。
【0038】
また、本実施形態では、中継処理システム230が前記ステップS11〜S12のようにファイルダウンロード処理を行うものを示したが、中継処理システム230を単にブリッジとして機能させることも可能である。この場合、ファイルシステム220からのダウンロード要求を直接ファイル管理サーバ120が受け取り、ファイル管理サーバ120から送信される要求データを直接ファイルシステム220が受け取る。
【0039】
また、本実施形態においてクライアント端末200がゲームソフト開発用のアプリケーションソフトを備えている場合、当該アプリケーションソフトによって前記ユーザインタフェース221によって表示されているファイルを選択できるように、前記ファイルシステム220を構成することが可能である。この場合、アプリケーションソフトがユーザインタフェース221又はファイルシステム220にファイル選択の要求を送信し、これによりユーザインタフェース221によって表示されるファイルのダウンロード要求がファイルシステム220から出され、ユーザがファイルを選択する場合と同様に作動する。
【0040】
尚、本実施形態では、ステップS4において要求ファイルが所定種別のファイルであるか否かを判定しているが、ステップS4を省き、ファイルの種別を判定せずにステップS5以下を行うことも可能である。
【0041】
また、本実施形態では、ファイル管理サーバ120のキャッシュ情報管理部123が各クライアント端末200に定期的に問い合わせを行い、各クライアント端末200のストレージ231に何の分割キャッシュデータが格納されているかを示す分割キャッシュ情報を作成している。これに対し、中継処理システム230が、分割キャッシュ情報配信部243によって、自己がストレージ121に格納している分割キャッシュデータの情報を前記ファイル管理サーバ120に定期的に通知するようし、ファイル管理サーバ120が各クライアント端末200から通知される情報に基づき前記分割キャッシュ情報作成するように構成することも可能である。
【0042】
尚、本実施形態では、ステップS5において要求ファイルの分割キャッシュデータを全て取得出来るか否かを判定している。これに対し、ステップS5において要求ファイルの分割キャッシュデータの少なくとも一部が所定範囲のクライアント端末に存在するか否かを判定し、ステップS8において、前記所定範囲の他のクライアント端末200には前記分割キャッシュデータの一部の送信を要求すると共に、残りの分割キャッシュデータをファイル管理サーバ120に要求し、ステップS9では他のクライアント端末200及びファイル管理サーバ120から分割キャッシュデータを受け取り、その受け取った分割キャッシュデータを用いてステップS10を行うようにすることも可能である。
【0043】
尚、本実施形態では、単一のサーバ装置100にファイル管理サーバ120の機能を集約したものを示したが、サーバ装置100は複数のサーバにより構成されてもよい。例えば、複数のサーバによりサーバ装置100を構成する場合、当該サーバ装置100が有するストレージ121の実体は、ネットワーク上の複数ノードにわたって配備される複数台のコンピュータから構成されるので、ストレージ121におけるファイルの格納を、これら複数台のコンピュータにわたって分割(ここでの語句「分割」の意味はいわゆるストライピング等での「分割」の意味に近い)および/または冗長化させるよう行うと、さらに効果的となる。複数のストレージに分割および/または冗長化され保存されているデータがマルチパスでクライアント端末200に送信されるので、1コネクションあたりの通信速度が原因で通信完了までの速度が遅くなる従来の問題を解決することが可能となる。また、複数のストレージに分割され保存されているデータ(たとえば同一ファイルの異なるブロック)が並列処理かつマルチパスでクライアント端末200に送信されるので、更なる高速化が実現できる。
【0044】
また、本実施形態では、サーバ装置100にファイル管理サーバ120の機能を集約したものを示したが、ファイル管理サーバ120の機能の一部を一部のクライアント端末200に担わせることも可能である。例えば、図1において、サーバ装置100と同様の分割キャッシュ情報格納部をクライアント端末Bにも設け、サーバ装置100に格納されている分割キャッシュデータの一部又は全部をクライアント端末Bのストレージにも格納させ、サーバ装置100の分割情報格納部124に格納されている分割キャッシュ情報の一部又は全部をクライアント端末Bの分割キャッシュ情報格納部にも格納させる等により、ファイル管理サーバ120の機能の一部を一部のクライアント端末Bに担わせることも可能である。この場合、クライアント端末Aがあるファイルの分割キャッシュデータを集める時に、対象となる分割キャッシュデータがクライアント端末Bにも格納されていれば、分割キャッシュデータの全量をサーバ装置100から取得せずに済む。このため、サーバ装置100の負荷の低減と、サーバ装置100との通信経路上のボトルネックの影響が軽減される。
【0045】
なお、本発明の構成要素となっている「ファイルシステム」は、上述した例で示す「ファイルシステム220」のように、オペレーティングシステムが持つファイル操作機能を意味するファイルシステムに限定されず、例えばオーサリングツール等の個別具体的なアプリケーションが持つファイル操作機能のことであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…公衆回線、2…LAN、100…サーバ装置、110…通信インターフェース、120…ファイル管理サーバ、121…ストレージ、122、ファイル分割部、123…キャッシュ情報管理部、124…分割キャッシュ情報格納部、130…構成管理システム、140…レポジトリストレージ、200…クライアント端末、210…通信インターフェース、220…ファイルシステム、221…ユーザインタフェース、222…表示装置、230…中継処理システム、231…ストレージ、232…キャッシュ取得部、233…キャッシュ情報取得部、234…分割キャッシュ情報格納部、235…P2P通信部、236…キャッシュダウンロード部、237…ファイルダウンロード部、238…ファイルアップロード部、239…種別判定部、240…判定部、241…比較部、242…選択実行部、243…キャッシュ情報配信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介してファイル管理サーバ及び他のクライアント端末と通信可能に接続されたクライアント端末であって、
コンピュータに、前記ファイル管理サーバに格納されたファイルの情報をユーザインタフェース上に選択可能に表示させ、前記ユーザインタフェース上で選択されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してダウンロードを要求させるファイルシステムと、
コンピュータに、前記ファイルシステムからダウンロード要求されたファイルに付き、前記通信ネットワークに接続された所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバに分割キャッシュされたデータが存在するかを判断させ、存在する場合に前記所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバから当該分割キャッシュされたデータを受け取り、前記ダウンロード要求に基づいて前記ファイル管理サーバからダウンロードしたファイルとして前記ファイルシステムに渡させる中継処理システムと
を有する
ことを特徴とするクライアント端末。
【請求項2】
請求項1記載のクライアント端末において、
前記ファイルシステムは、コンピュータに、前記ファイル管理サーバのファイル格納位置を前記ファイルシステムを介して前記ユーザインタフェース上にディレクトリとして表示させ、前記ユーザインタフェース上で選択され前記ディレクトリへの保存が要求されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してアップロード要求させるものである
ことを特徴とするクライアント端末。
【請求項3】
請求項1又は2記載のクライアント端末において、
コンピュータに、自己の前記ファイルシステム上で取り扱われる所定のファイルに付き、前記ファイル管理サーバ及び/又は各クライアント端末が格納している分割キャッシュされたデータの情報を他のクライアント端末に配信させる情報配信手段を有する
ことを特徴とするクライアント端末。
【請求項4】
通信ネットワークを介してファイル管理サーバ及び他のクライアント端末と通信可能に接続されたクライアント端末にインストールされるコンピュータソフトウェアプログラムであって、
前記クライアント端末は、前記ファイル管理サーバに格納されたファイルの情報をユーザインタフェース上に選択可能に表示させ、前記ユーザインタフェース上で選択されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してダウンロードを要求させるファイルシステムを有するものであり、
このコンピュータソフトウェアプログラムは、
前記クライアント端末に、前記ファイルシステムからダウンロード要求されたファイルについて前記通信ネットワークに接続された所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバに分割キャッシュされたデータが存在するかを判断させ、存在する場合に前記所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバから当該分割キャッシュされたデータを受け取り、前記ダウンロード要求に基づいて前記ファイル管理サーバからダウンロードしたファイルとして前記ファイルシステムに渡させるように機能させる中継指令
を有する
ことを特徴とするコンピュータソフトウェアプログラム。
【請求項5】
ファイル管理サーバと、このファイル管理サーバからファイルをダウンロードする複数のクライアント端末とを有する通信システムであって、
前記ファイル管理サーバは、
コンピュータにより、所定のファイルが分割キャッシュされたデータについて、前記各クライアント端末及び/又は前記ファイル管理サーバがどのデータを有するかを示す分割キャッシュ情報を前記各クライアント端末に配信させる情報配信手段を有し、
前記クライアント端末は、
コンピュータにより、前記分割キャッシュ情報を受け取り格納するキャッシュ情報格納手段と、
コンピュータにより、前記ファイル管理サーバに格納されたファイルの情報をファイルシステムを介してユーザインタフェース上に選択可能に表示し、前記ユーザインタフェース上で選択されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してダウンロード要求するダウンロード要求手段と、
コンピュータにより、前記ダウンロード要求されたファイルに付き、前記分割キャッシュ情報に基づき所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバに分割キャッシュされたデータが存在するかを判断し、存在する場合に前記所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバから当該分割キャッシュされたデータを受け取り、前記ダウンロード要求に基づいて前記ファイル管理サーバからダウンロードしたファイルとして前記ファイルシステムに渡す中継処理手段と
を有する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項5記載の通信システムにおいて、
前記ダウンロード要求手段は、前記ファイル管理サーバのファイル格納位置を前記ファイルシステムを介して前記ユーザインタフェース上にディレクトリとして表示し、前記ユーザインタフェース上で選択され前記ディレクトリへの保存が要求されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してアップロード要求するものであり、
前記ファイル管理サーバは、コンピュータにより、前記クライアント端末からアップロード要求され受け取ったファイルを分割して格納する分割格納手段をさらに有する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項7】
ファイル管理サーバと、このファイル管理サーバからファイルをダウンロードする複数のクライアント端末との間で実行される通信方法であって、
前記ファイル管理サーバが、
所定のファイルが分割キャッシュされたデータについて、前記各クライアント端末及び/又は前記ファイル管理サーバがどのデータを有するかを示す分割キャッシュ情報を前記各クライアント端末に配信させる情報配信工程と、
前記クライアント端末が、
前記分割キャッシュ情報受け取り格納するキャッシュ情報格納工程と、
前記ファイル管理サーバに格納されたファイルの情報をファイルシステムを介してユーザインタフェース上に選択可能に表示させ、前記ユーザインタフェース上で選択されたファイルに付き前記ファイル管理サーバに対してダウンロードを要求するダウンロード要求工程と、
前記ダウンロード要求されたファイルについて、前記分割キャッシュ情報に基づき所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバに分割キャッシュされたデータが存在するかを判断し、存在する場合に前記所定範囲のクライアント端末及び/又はファイル管理サーバから当該分割キャッシュされたデータを受け取り、前記ダウンロード要求に基づいて前記ファイル管理サーバからダウンロードしたファイルとして前記ファイルシステムに渡す中継処理工程と
を有する
ことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−20575(P2013−20575A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155538(P2011−155538)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
2.WINDOWS
【出願人】(308033283)株式会社スクウェア・エニックス (173)