説明

クランプ追尾式の開先加工装置

【課題】 本発明は、小型軽量で金属板材の端部に簡単に装着できるクランプ追尾式の開先加工装置を提供する。
【解決手段】 被開先加工材の金属板材3をXYZ方向から位置決めして進行方向を制御しながら自走して、開先予定面を自動的に追尾して指定されたエリアを正確に開先加工して開先エンド部3ebでは自動的に停止する高精度なクランプ追尾式の開先加工装置であって、カッター4aと、金属板材の下面3cに当接する下部車輪5bと、この下部車輪と協働して金属板材をクランプする上部車輪3aとを有するクランプ装置5と、開先加工される端面3aに対して角度を有して並設され、端面3aに当接して摺動可能に支持する傾斜支持板6とを備え、カッターと後方側車輪5ab、5bbとの間に表面有無検出センサー8aとを設けることによって、金属板材の開先エンド部の開先加工が完了した後に自動的に停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板材の開先加工を行う開先加工装置に関し、特に、小型軽量で金属板材の端部に簡単に装着できて、被開先加工材の金属板材をXYZ方向から位置決めし進行方向を制御しながら自走して、開先予定面を自動的に追尾して指定されたエリアを正確に開先加工する高精度なクランプ追尾式の開先加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、背景技術について説明する。
図9は、従来の開先加工装置の一実施形態を示す図である。図9に示すように、この開先加工装置110は自走式であり、被加工材である鋼板上を走行する台車114を備えている。台車114の略矩形の下面には複数個(図示実施形態では4個)の走行車輪116、118が設けられている。これらの走行車輪116、118は、台車下面の長辺に対して所定の角度をもって、矢印Aの方向に向けられている。矢印A方向において前側の走行車輪116には、適当な伝動機構120を介して走行モータ122が接続され、後側の走行車輪118はチェーン伝動機構124により前側の走行車輪116と等速で連動するようになっている。カッター126としては、形成すべき開先の形状、鋼板の板厚、材質等に応じて種々の形式のものが使用可能であるが、図示実施形態のカッター126はV字開先用であり、切頭円錐形の刃物台142と、その円錐面に適宜配設されたチップ144とから構成されたものである。この開先加工装置110は、前述したように、鋼板上を自走し、その走行によりカッター126を移動させて開先加工を行う。この開先加工の際、ローラ152は鋼板の加工すべき端面に当接し、ガイドローラ(案内手段)として機能する。また、カッター126は、ガイドローラ152が常に鋼板の端面に当接した状態で、端面を切削する。従って、ガイドローラ152とカッター126とはほぼ同じ高さ位置に配置されると共に、カッター126は、その一部がガイドローラ152の周面についての台車114側の共通接線よりも台車114側に突出するように、配置されている。まず、加工すべき鋼板を適当な架台に載せる。次いで、開先加工装置110を鋼板の上に載置する。その際、ガイドローラ152及びカッター126は、鋼板の加工すべき端面の側方に配置する。そして、一方のL字状支持プレート146を固定しているナットを弛めて支持プレート146を左右に移動させ、開先深さを調節する。開先深さが決定されたならば、ナットを締め付け、支持プレート146をブラケット130に固定する。この状態で、外部電源を開先加工装置110につなぐ。この後、コントローラ上のスイッチにより走行モータ122及び切削モータを起動すると共に、モータ122の回転速度を切削条件に適合する速度に選定し、開先加工を開始する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−314412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、台車の略矩形の下面に4個の走行車輪と、鋼板の加工すべき端面に当接して、ガイドローラ(案内手段)として機能するローラとを備え、被加工材である鋼板上を走行する台車によって自走する開先加工装置は、ガイドローラが常に鋼板の端面に当接した状態でカッターが端面を切削するが、鋼板の端面のコーナーを開先加工するには、延長プレートを取り付ける必要があり、段取り工数が発生するという問題があった。また、ガイドローラによって鋼板の端面を支持すると共に、鋼板上に自重で載っているだけであるため、Z方向には開先加工精度が出ないという問題があった。
本発明は、小型軽量で金属板材の端部に簡単に装着できて、金属板材の開先加工を行う開先加工装置であって、特に、被開先加工材の金属板材をXYZ方向から位置決めし進行方向を制御しながら自走して、開先予定面を自動的に追尾して指定されたエリアを正確に開先加工する高精度なクランプ追尾式の開先加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明のクランプ追尾式の開先加工装置は、金属板材の端面および上下面に当接して走行自在に装着され、前記金属板材の端面及び角部の少なくとも一方の開先加工を行う開先加工装置であって、前記開先加工装置は、回転体の周囲に刃先チップを有するカッターと、このカッターを回転させるカッター用電動機と、前記金属板材の下面に当接する複数の下部車輪と、この下部車輪と対向して配置され、前記金属板材の上面に当接して前記金属板材を前記下部車輪と協働してクランプする複数の上部車輪と、を有するクランプ装置と、前記下部車輪および前記上部車輪のいずれか一方を駆動する駆動輪用電動機と、前記カッターと前記端面との位置関係を一定に維持すると共に、前記端面に対して角度を有して並設され、前記端面に当接して摺動可能に支持する傾斜支持板と、を備えることによって、前記端面および前記角部の少なくとも一方を開先加工することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクランプ追尾式の開先加工装置であって、前記傾斜支持板は、前記端面の上方および下方のいずれか一方に当接して、前記端面に対して進行方向に開くように角度を有して並設され、前記カッターと開先加工面との位置関係が一定に維持されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のクランプ追尾式の開先加工装置であって、前記角度は、0.5〜5.0°であることを特徴とする。なお、最適値を0.5〜2.5°とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のクランプ追尾式の開先加工装置であって、開先加工された前記端面の上方および下方のいずれか一方には開先残り代を、少なくとも2mm有することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のクランプ追尾式の開先加工装置であって、前記金属板材の上面、下面および端面のうち少なくとも一方の表面を検出する表面有無検出センサーを、前記カッターと後方側車輪との間に設け、この表面有無検出センサーが前記表面を検出しない場合、前記角部では自動的に停止することを特徴とする。
【0010】
また、カッターと端面との位置関係を一定に維持するためのガイド機構を備え、このガイド機構は、レールおよび倣い車輪を有し、倣い車輪をレールの溝に沿って走行させてモノレール状に懸架する補助的なもので、これによって二重の安全性を確保可能である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、カッターを回転させるカッター用電動機と、複数の下部車輪と上部車輪とを有するクランプ装置と、車輪駆動輪用電動機と、傾斜支持板とを備えることによって、小型軽量で金属板材の端部に簡単に装着できて、被開先加工材の金属板材をXYZ方向から位置決めし進行方向を制御しながら自走して、開先予定面を自動的に追尾して指定された金属板材の端面および金属板材の角部の少なくとも一方のエリアを正確に開先加工することができる高精度なクランプ追尾式の開先加工装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、金属板材の端面の上方および下方のいずれか一方に当接して、この端面に対して進行方向に開くように角度を有して並設される傾斜支持板によって、開先加工装置の車輪駆動力が金属板材に切り込む方向に向き、その分力がカッターと端面または角部が接する箇所を支点として、開先加工装置の進行方向、および進行方向側の傾斜支持板を常に端面を押圧する方向に働くため、開先加工面とカッターとの位置関係が一定に維持されて精度良く開先加工することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、車輪駆動輪の駆動方向と傾斜支持板との角度を、0.5〜5.0°とすることによって、開先加工面とカッターとの位置関係が適切に一定に維持されて精度良く開先加工することができる。なお、0.5〜2.5°がさらに最適である。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、開先加工された金属板材の端面の上方および下方のいずれか一方に開先残り代が、少なくとも2mmあれば、傾斜支持板の機能を発揮することができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、金属板材の上面、下面および端面のうち少なくとも一方の表面を検出する表面有無検出センサーを、開先加工装置の進行方向に対してカッターと後方側車輪との間に設けることによって、この表面有無検出センサーが表面を検出しない場合、金属板材の角部の開先加工が完了した後に開先加工装置を自動的に停止することができる。
【0016】
なお、レールおよび倣い車輪を有し、倣い車輪をレールの溝に沿って走行させてモノレール状に懸架する補助的なガイド機構に備えることによって、二重の安全性を確保可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を説明するためのクランプ追尾式の開先加工装置の構成を示す概略図であり、(a)は開先加工装置が金属板材の端面を自動走行しながら開先加工をしている様子を示す斜視図であり、(b)は(a)に示すF矢視図、(c)は(a)に示すA―A線の断面図であり、開先加工装置の断面図である。図1の(a)に示すように、被溶接材であり被開先加工材である金属板材3は、作業台2に載置されて、ボルト・ナットなどを用いた固定具2aで固定されている。そして、クランプ追尾式の開先加工装置1は金属板材3の端面3aに走行自在に装着されている。また、クランプ追尾式の開先加工装置1は、後記する傾斜支持板6の少なくとも一部が金属板材3の端面3aに当接すると同時に、後記する上部車輪5aおよび下部車輪5bが金属板材3の上面3bおよび下面3cをしっかりとクランプしてZ方向(上下方向)への位置ずれが無いようにして、金属板材3の開先加工を行う。なお、XYZ方向とは、金属板材3において、開先加工装置1の進行方向をX方向、このX方向と同一面上でX方向に直角な方向をY方向、および、金属板材3に垂直(上下)方向をZ方向としている。また、金属板材3の端面3aにおいて、開先加工装置1が開先加工を始める位置の角部を開先スタート部3ea、開先加工を停止する位置の角部を開先エンド部3ebとしている。また、開先加工された面を開先加工面3dとし、図1の(b)に示すように、端面3aの開先残り代αを下方3abに設けている。なお、開先残り代αは上方3aaに設けるようにしても構わない。この開先残り代αは少なくとも2mm有することにしている。このように、開先加工された金属板材3の端面3aの上方3aaおよび下方3abのいずれか一方に開先残り代αを少なくとも2mm有することによって、溶接時の突き当て代として充分であり、傾斜支持板6の機能を良好に発揮することができる。
【0018】
次に、図1の(c)に示すように、この開先加工装置1は、回転体の周囲に刃先チップ(超硬チップ)4aaを有するカッター4aと、このカッター4aを回転させるカッター用電動機4bとを有するカッター部4と、金属板材3の下面3cに当接する複数の下部車輪(従動車輪)5bと、この下部車輪5bと対向して上方に配置され、金属板材3の上面3bに当接して金属板材3を下部車輪5bと協働してクランプする駆動車輪である複数の上部車輪(駆動車輪)5aとを有するクランプ装置5と、上部車輪5aをプーリやベルトなどからなる回転伝達手段5cで駆動する駆動輪用電動機5dと、金属板材3の端面3aとカッター4aとの位置関係を一定に維持すると共に、金属板材3の開先加工される端面3aに対して角度βを有して並設され、端面3aに当接して摺動可能に支持する傾斜支持板6とを備えている。これによって、金属板材3の角部(開先スタート部)3eaと端面3aとが、開先残り代αを残して開先加工されて開先加工面3dが形成される。さらに、開先エンド部3ebでは、開先エンドである角部3ebの開先加工が完了した状態を表面有無検出センサー8a(後記)が検出して開先加工装置1が自動的に停止するように制御部10によって制御されている。なお、上部車輪5aを駆動車輪として説明したが下部車輪5bを駆動車輪としても構わない。
【0019】
これによれば、カッター4aを回転させるカッター用電動機4bと、複数の下部車輪5bと上部車輪5aとを有するクランプ装置5と、駆動車輪用電動機5dと、傾斜支持板6とを備えることによって、小型軽量で金属板材の端部に簡単に装着できて、被開先加工材の金属板材をXYZ方向から位置決めし進行方向を制御しながら自走して、開先予定面を自動的に追尾して指定された金属板材の端面および金属板材の角部を正確に開先加工することができる高精度なクランプ追尾式の開先加工装置を提供することができる。
【0020】
図2は、開先加工装置のクランプ機構および送り駆動部の構成を示す概略図であり、(a)は図1の(c)に示すB部の詳細な拡大断面図、(b)は図2の(a)に示すC矢視図であり、クランプ機構および送り駆動部の正面図である。
図2の(a)(b)に示すように、金属板材3は上部車輪5aと下部車輪5bによって上下からクランプされている。このクランプする力によって駆動車輪である上部車輪5aの駆動力を金属板材3に伝達して、開先加工装置1は金属板材3の上面3bとの間に推進力を得て、上面3b、端面3aおよび下面3cに沿って走行する。下部車輪5bは従動車輪であり、金属板材3の下面3cを走行する。下部車輪5bは、枠体の下板7cに固定された支柱5qに回転自在に支持されている。下部車輪5bに対向する上部車輪(駆動車輪)5aは、駆動用電動機5dから出力される回転が回転伝達手段5cによって伝達されて金属板材3の上面3bを走行する。駆動用電動機5dには小プーリ5caaが設けられ、この小プーリ5caaと、駆動車輪5aの前方駆動車輪5aaの一つに設けられた小プーリ5caaとの間にベルト5cbaが掛けられている。さらに、前方駆動車輪5aaには大プーリ5が設けられており、後方に隣接する駆動車輪5aに順次駆動力を伝達して上部車輪5aのすべてを駆動する。これらの駆動車輪5aは、上部車輪支持板5mに設けられた支柱5nに軸と軸受によって回転自在に支持されている。なお、小プーリ、大プーリ、ベルトの組み合わせは、これらに限るものではない。適宜変更が可能である。
【0021】
この上部車輪支持板5mには、高さ調節ボルト支柱5pが固定され、この高さ調節ボルト支柱5pには高さ調節ボルト5hが螺着されて、この高さ調節ボルト5hを回すことによって高さ調節ボルト5hは上下に移動する。また、高さ調節ボルト5hは、中間板5eに設けられた摺動自在の孔5eaに挿通されている。そして、高さ調節ボルト5hには、この中間板5eと上部車輪支持板5mとの間の位置に、ばね5fが挿着されており、このばね5fによって、その位置を上下動自在に支持されている。さらに、高さ調節ボルト5hは、上板7aに設けられた図略の孔に摺動自在に挿着されて、その端部には高さ調節ナット5jが螺着されている。この高さ調節ナット5jと上板7aとによって高さ調節ボルト5hが固定されている。この高さ調節ナット5jを回すことによって高さ調節ボルト5hが上下して駆動車輪5aを上下動させるようになっている。また、中間板5eの上面を上下させるように押圧力調節カム5gが設けられている。押圧力調節カム5gの取り付けられた軸の端部には押圧力調節カム5gと連動するように押圧力調節ハンドル5kが設けられている。この押圧力調節ハンドル5kを回して、押圧力調節カム5gを回動させることによって中間板5eが押し下げられる。この中間板5eが押し下げられると、ばね5fが収縮して、金属板材3の上面3bに駆動車輪5aを押圧して、駆動車輪5aと金属板材3との間に適度な摩擦を生じる。この摩擦力によって、開先加工装置1に推進力を発生させて、端面3aの開先加工が行われる。なお、カッター4aは、前方上部車輪5aaと後方上部車輪5abとの間、および前方下部車輪5baと後方下部車輪5bbとの間に位置しており、図中のカッター部中心軸位置として一点鎖線で表示されている。なお、ばね5fや中間板5eを設けずに高さ調節ボルト5hだけでクランプ力を出すようにして、胴突状態で直接クランプしても構わない。
【0022】
図3は、金属板材3の端面3aの下方3abのフラット面を支持する傾斜支持板を示す概略図であり、(a)は図2の(a)に示すD部の拡大断面図、(b)は金属板材の角部の開先スタート部に開先加工装置が配置された様子を示す平面図であり、金属板材の角部から自動走行を開始する様子を示している。
図3の(a)に示すように、クランプ追尾式の開先加工装置1の傾斜支持板6は、金属板材3の開先スタート部である角部3eaの下方3abに当接している。これによって、カッター4aと金属板材3との位置決めがなされて、開先加工装置1の進行方向が制御される。そして、開先加工することによって、金属板材3の端面3aは、端面3aが開先加工された開先加工面3dと、開先加工面3dの下方3abには、開先加工された後の開先残り代αが形成されている。
【0023】
図3の(b)に示すように、傾斜支持板6は、角部3eaと当接して、端面3aに対して進行方向に開くように角度βを有して並設され、カッター4aと開先加工面3dとの位置関係が一定に維持される。当初、金属板材3の角部3eaは、角度βを有した状態で接触している傾斜支持板6に当接しながら、回転しているカッター4aの刃先チップ4aaの位置まで進み、端面3aが開先加工される。このとき、駆動車輪5aの駆動方向は、金属板材3の端面3aと並行になっている。この角度βは傾斜支持板6が金属板材3の端面3aに対して進行方向に開くように設定された角度であり、駆動車輪5aの駆動方向と傾斜支持板6との角度を、0.5〜5.0°とすることによって、開先加工面3dとカッター4aとの位置関係が適切に一定に維持されて精度良く開先加工することができる。なお、角度βは0.5〜2.5°がさらに最適である。そして、開先加工装置1には、進行方向に対して刃先チップ4aaの位置と後方側車輪5ab、5bbとの間に表面有無検出センサー8aが設けられている。表面有無検出センサー8aをさらに前方に設けても良いし、各々複数の表面有無検出センサー8a、8bを設けても構わないが、少なくとも後方に1個の表面有無検出センサー8aを設ける必要がある。これによって、角部3ea、3ebの開先加工を自動的に行うことができる。また、傾斜支持板6によって開先加工装置1の進行方向を制御することができる。
【0024】
これによれば、詳細は図5において後記するが、開先加工装置1の駆動車輪の駆動力fが金属板材3の端面3aに切り込む方向に向き、その分力がカッター4aと端面3aが接する箇所を支点として、開先加工装置1の進行方向側の傾斜支持板6を常に端面3aに押圧する方向に働く。このため、開先加工面3dとカッター4aとの位置関係が一定に維持されて精度良く開先加工することができる。
【0025】
図4は、開先加工装置に係る傾斜支持板の構成を示す概略図であり、(a)は金属板材の端面を開先加工装置が進行する様子を示す平面図、(b)は金属板材の角部の開先エンド部に開先加工装置が進行した様子を示す平面図である。
図4の(a)に示すように、クランプ追尾式の開先加工装置1の傾斜支持板6は、金属板材3の端面3aの下方3abに全体が当接して、カッター4aと金属板材3との位置決めをして、開先加工装置1の進行方向を制御する。開先加工することによって、金属板材3の端面3aは、端面3aが開先加工された開先加工面3dと、開先加工面3dの下方3abには、開先加工された後の開先残り代αが継続的に形成されている。
図4の(b)に示すように、傾斜支持板6は、金属板材3の開先エンド部である角部3ebを含めて開先残り代α全体に当接している。表面有無検出センサー8aの位置を金属板材3の開先エンド部3ebが通りすぎたことを検出して、開先加工装置1は自動的に停止する。同時にカッター用電動機4bが停止してカッター4の回転が停止する。なお、金属板材3の上面3b、下面3cおよび端面3aのうち少なくとも一方の表面を検出する表面有無検出センサー8aを開先加工装置1の進行方向に対してカッター4aと後方側車輪5ab、5bbとの間に設けることによって、この表面有無検出センサー8aが表面を検出しない場合、金属板材3の角部3ebの開先加工が完了した後に自動的に停止することができる。
【0026】
図5は、傾斜支持板6がカッター4aと開先加工面3dとの位置関係を一定に維持して、開先加工しながら自動走行するメカニズムを説明する工程図であり、(a)は傾斜支持板6は、金属板材3の開先スタート部である角部3eaで金属板材と角度βを有して当接している状態を示し、(b)は開先加工が始まって傾斜支持板が金属板材の端面に向かって回動する状態を示し、(c)は傾斜支持板が金属板材と並行になって開先加工している様子を示している。
図5の(a)(b)(c)に示すように、駆動車輪5aの駆動力fから分力aと分力bが発生し、さらに、分力aによって、分力a1が発生して、この分力a1によって反力a2が発生することで、傾斜支持板6と端面3aが互いに押圧する。これによって、開先加工装置1の位置が安定する。さらに、分力bが推進力となって、開先加工装置1を走行させる。
【0027】
図6は、開先加工装置が、金属板材をクランプして、開先加工する様子を説明する工程図であり、(a)は金属板材がクランプされる前、(b)は金属板材がクランプされて、開先加工開始前、(c)は開先加工途中を、開先加工装置1が図中の奥側から手前側に進行しているとして表示している。
図6の(a)に示すように、カッター4aと駆動車輪5aが上方から開先位置に下りて来ている様子を示している。次に、図6の(b)に示すように、カッター4aが図中の奥側から手前側に向かってまさに進行して開先加工を始めようとしている。さらに、図6の(c)に示すように、開先角度θで開先加工されている。なお、θは35〜45°としているが、これに限るものではない。
【0028】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図7および図8は、本発明の第2の実施形態を説明するためのクランプ追尾式の開先加工装置の構成を示す概略図であり、図7の(a)は開先加工装置が金属板材の端面を自動走行しながら開先加工をしている様子を示す斜視図であり、図7の(b)は(a)に示すE―E線の断面図であり、開先加工装置の断面図である。
図8は、ガイド機構を備えた開先加工装置が、金属板材の角部の開先スタート部に配置された様子を示す平面図であり、金属板材の角部から自動走行を開始する様子を示している。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態ではガイド機構を設けてないが、第2の実施形態ではガイド機構を適用した点である。第1の実施形態と同様の構成については同符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
図7の(a)(b)に示すように、開先加工装置1がガイド機構を設けた場合を示し、カッター4aと端面3aとの位置関係を一定に維持するためのガイド機構9をさらに付随的に備えている。このガイド機構9は、開先加工装置1を金属板材3の端面3aにぴったりと装着させるためのもので、金属製のレール9aおよび倣い車輪9eを有し、この倣い車輪9eをレール9aの溝9gに沿って走行させて、モノレール状に懸架する補助的なものである。これによって二重の安全性を確保可能である。すなわち、レール9aは作業台2の両端部に設けられた適当な取付具9b、9bに固定されている。そして、開先加工装置1からは2個の支柱9c、9dが延出されている。この支柱9c、9dに支持された軸9fが備えられ、この軸9fに倣い車輪9eが、適当な固定具によって、回転自在に設けられている。この倣い車輪9eはレール9aに設けられた溝9gに摺動自在に挿着されている。
【0030】
以上、好ましい実施の形態を説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することの無い範囲内において適宜変更が可能なものである。例えば、ガイド機構は簡単なロープなどで支持するように構成しても構わない。また、カッターの回転方向は反時計回りにしているが時計方向に設定しても構わない。また、ばねと中間板は設けなくても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明するためのクランプ追尾式の開先加工装置の構成を示す概略図であり、(a)は開先加工装置が金属板材の端面を自動走行しながら開先加工をしている様子を示す斜視図であり、(b)は(a)に示すF矢視図、(c)は(a)に示すA―A線の断面図であり、開先加工装置の断面図である。
【図2】開先加工装置のクランプ機構および送り駆動部の構成を示す概略図であり、(a)は図1の(c)に示すB部の詳細な拡大断面図、(b)は図2の(a)に示すC矢視図であり、クランプ機構および送り駆動部の正面図である。
【図3】金属板材の端面の下方のフラット面を支持する傾斜支持板を示す概略図であり、(a)は図2の(a)に示すD部の拡大断面図、(b)は金属板材の角部の開先スタート部に開先加工装置が配置された様子を示す平面図であり、金属板材の角部から自動走行を開始する様子を示している。
【図4】開先加工装置に係る傾斜支持板の構成を示す概略図であり、(a)は金属板材の端面を開先加工装置が進行する様子を示す平面図、(b)は金属板材の角部の開先エンド部に開先加工装置が進行した様子を示す平面図である。
【図5】傾斜支持板がカッターと開先加工面との位置関係が一定に維持して、開先加工しながら自動走行するメカニズムを説明する工程図であり、(a)は傾斜支持板は、金属板材の開先スタート部である角部で金属板材と角度を有して当接している状態を示し、(b)は開先加工が始まって傾斜支持板が金属板材の端面に向かって回動する状態を示し、(c)は傾斜支持板が金属板材と並行になって開先加工している様子を示している。
【図6】開先加工装置が金属板材をクランプして、開先加工する様子を説明する工程図であり、(a)は金属板材がクランプされる前、(b)は金属板材がクランプされて、開先加工の開始前、(c)は開先加工の途中を示している。
【図7】本発明の第2の実施形態を説明するためのクランプ追尾式の開先加工装置の構成を示す概略図であり、(a)は開先加工装置が金属板材の端面を自動走行しながら開先加工をしている様子を示す斜視図であり、(b)は(a)に示すE―E線の断面図であり、開先加工装置の断面図である。
【図8】ガイド機構を備えた開先加工装置が、金属板材の角部の開先スタート部に配置された様子を示す平面図であり、金属板材の角部から自動走行を開始する様子を示している。
【図9】従来の開先加工装置の一実施形態を示す図である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、小型軽量で金属板材の端部に簡単に装着できて、被開先加工材の金属板材をXYZ方向から位置決めして、進行方向を制御しながら自走して、開先予定面を自動的に追尾して、指定されたエリアの正確で低コストな開先加工を必要とする開先加工装置に適用される。
【符号の説明】
【0033】
1 開先加工装置
2 作業台
2a 固定具、金属板材固定具
3 金属板材、被溶接材、被開先加工材
3a 端面
3aa 上方
3ab 下方
3b 上面
3c 下面
3d 開先加工面
3ea 角部、開先スタート部
3eb 角部、開先エンド部
4 カッター部
4a カッター
4aa 刃先チップ、超硬チップ
4b カッター用電動機、モータ
5 クランプ装置
5a 上部車輪、駆動車輪
5aa 前方駆動車輪、前方上部車輪、前方側車輪
5ab 後方駆動車輪、後方上部車輪、後方側車輪
5b 下部車輪、従動車輪
5ba 前方従動車輪、前方下部車輪、前方側車輪
5bb 後方従動車輪、後方下部車輪、後方側車輪
5c 回転伝達手段、ベルト、プーリ
5caa 小プーリ
5cab 大プーリ
5cba ベルト
5cbb ベルト
5cbc ベルト
5cbd ベルト
5d 駆動輪用電動機
5e 中間板
5ea 孔、摺動自在の孔
5f ばね
5g 押圧力調節カム
5h 高さ調節ボルト
5j 高さ調節ナット
5k 押圧力調節ハンドル
5m 上部車輪支持板
5n 支柱、駆動車輪支柱
5p 高さ調節ボルト支柱、ボルト支持部
5q 支柱、従動輪支柱
6 傾斜支持板
7a 上板
7b 側板
7c 下板
8、8a、8b 表面有無検出センサー
9 ガイド機構
9a レール
9b 取付具、レール固定具
9c 支柱
9d 支柱
9e 倣い車輪
9f 軸
9g 溝
10 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板材(3)の端面(3a)および上下面(3b、3c)に当接して走行自在に装着され、前記金属板材の端面および角部の少なくとも一方の開先加工を行うクランプ追尾式の開先加工装置(1)であって、
前記開先加工装置は、
回転体の周囲に刃先チップ(4aa)を有するカッター(4a)と、
このカッターを回転させるカッター用電動機(4b)と、
前記金属板材の下面に当接する複数の下部車輪(5b)と、この下部車輪と対向して配置され、前記金属板材の上面に当接して前記金属板材を前記下部車輪と協働してクランプする複数の上部車輪(5a)と、を有するクランプ装置(5)と、
前記下部車輪および前記上部車輪のいずれか一方を駆動する駆動輪用電動機(5d)と、
前記カッターと前記端面との位置関係を一定に維持すると共に、前記端面に対して角度を有して並設され、前記端面に当接して摺動可能に支持する傾斜支持板(6)と、
を備えることによって、前記端面および前記角部(3ea、3eb)の少なくとも一方を開先加工することを特徴とするクランプ追尾式の開先加工装置(1)。
【請求項2】
前記傾斜支持板は、前記端面の上方(3aa)および下方(3ab)のいずれか一方に当接して、前記端面に対して進行方向に開くように角度(β)を有して並設され、開先加工面(3d)と前記カッターとの位置関係が一定に維持されることを特徴とする請求項1に記載のクランプ追尾式の開先加工装置。
【請求項3】
前記角度は、0.5〜5.0°であることを特徴とする請求項2に記載のクランプ追尾式の開先加工装置。
【請求項4】
開先加工された前記端面の上方および下方のいずれか一方には開先残り代(α)を、少なくとも2mm有することを特徴とする請求項1に記載のクランプ追尾式の開先加工装置。
【請求項5】
前記金属板材の上面、下面および端面のうち少なくとも一方の表面を検出する表面有無検出センサー(8)を、前記カッターと後方側車輪(5ab、5bb)との間に設け、この表面有無検出センサーが前記表面を検出しない場合、前記角部では自動的に停止することを特徴とする請求項1に記載のクランプ追尾式の開先加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−210682(P2012−210682A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77481(P2011−77481)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【特許番号】特許第4959011号(P4959011)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(599093225)株式会社プラスワンテクノ (13)
【出願人】(511082481)
【Fターム(参考)】