説明

クリップ

【目的】 この発明は、紙束の挿入が容易で、余分な出っ張りがないコンパクトなクリップを提供することを目的とする。
【構成】 クリップ本体、挟持体、連結部から構成されたクリップにおいて、前記クリップ本体は第一の本体壁部と第二の本体壁部から構成され、前記第一の本体壁部と前記第二の本体壁部は対向して形成され、前記挟持体は挟持片と操作片とその結合部、そしてロック部から構成され、前記クリップ本体の第二の本体壁部と前記挟持体は前記連結部を介して繋がり、前記連結部は他の部位より剛性を低くすることにより前記挟持体をクリップ本体に対し前記連結部中心に揺動可能とし、前記操作片を押圧したとき前記挟持片が第一の本体壁部を押圧するとともに前記ロック部がクリップ本体側にロックし、前記ロック部を解除したとき前記挟持片の押圧も解除されるクリップである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙束に孔を開けることなく紙束を綴じるためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙束に孔を開けることなく綴じるために、ゼムクリップやダブルクリップがあったが、ゼムクリップは外れやすく、ダブルクリップはレバーが出っ張って邪魔になり、構成部品点数も多く高価になるという問題点があった。
このため、特許公開2000−37980が提案されたが、これは押さえ片が挿入口を常時押圧して閉じているため、紙を挿入するときの挿入抵抗が大きかった。特に、少数枚の紙束を綴じる場合腰が弱く挿入が困難であった。
一方、特許公開平9−150593は、2つの部品が必要であり、部品の製造工程が2工程とこれを組み立てるための工程の合計3工程が必要であった。特に二つの部品の組立工程は人手を要するため工賃が製造原価を押し上げ、自動化するには高度な技術と高価な設備が必要であった。また材料を多く使うため、資源を浪費するという問題もあった。また、たまたま不用意にクリップにスライド方向に力が加わるとクリップがスライドして開いてしまい、重要な書類が散逸するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2000−37980号公報
【特許文献2】特許公開平9−150593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の従来技術の問題点に鑑み、この発明は、次の点を課題とする。
第一には、クリップを閉じたとき余分な出っ張りがなくコンパクトであることである。第二には、紙束の挿入抵抗が無いこと、したがって少数枚の紙でも容易に挿入でき、紙束を傷つけることがないことである。第三には、片手で望ましくは紙束を閉じることができ操作性を向上させることである。第四に、望ましくは単一の部品で一体に構成し、一つの工程で製造でき、原価低減できるとともに省資源を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
クリップ本体、挟持体、連結部から構成されたクリップにおいて、前記クリップ本体は第一の本体壁部とこれに対向する第二の本体壁部とこれらを結合する基部からなり、前記挟持体は挟持片と操作片とロック部から構成され、前記クリップ本体と前記挟持体は第二の本体壁部の端部近傍で前記連結部を介して連結され、前記挟持体をクリップ本体に対し前記連結部中心に揺動可能とし、前記操作片を押圧すると前記挟持片がクリップ本体の第一の本体壁部側を押圧するとともに前記ロック部がクリップ本体側にロックし、前記ロック部を解除したとき前記挟持片の押圧も解除されるクリップ。
上記のクリップにおいて、前記連結部は他の部位より剛性を下げることにより、前記挟持体を前記連結部を中心に前記クリップ本体に対し揺動可能としたことを特徴とするクリップ。
上記のクリップにおいて、前記クリップ本体、前記挟持体、前記連結部はプラスチックで一体成型したことを特徴とするクリップ。
上記のクリップにおいて、前記本体、前記挟持体、前記連結部は一枚の金属平板により一体に成型したことを特徴とするクリップ。
【0006】
この発明のクリップはロック部が解除されているときは、挟持体が揺動自在であるので、紙束を挿入しようとすると挟持片が押されて、挟持片の抵抗がなく容易に紙束が挿入される。操作片を押圧すると、挟持体が連結部を中心に揺動し挟持片が紙束を押圧するとともにロック部がクリップ本体側にロックする。このとき、操作片は本体側に密接するので余分な出っ張りはなくすことができる。ロック部を外に引き出すとロックが外れ、挟持片は自由状態に戻り挟持片は紙束を解放することができる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、この発明は、次の効果を発揮することができる。
第一には、クリップを閉じたとき余分な出っ張りがなくコンパクトである。第二には、挟持片が容易に揺動可能であり、紙束の挿入抵抗が無い。したがって数枚の紙でも容易に挿入でき、紙束を傷つけることがない。第三には、片手で紙束を閉じることができ操作性を向上させることができる。第四に、単一の部品で一体に構成しとき、一つの工程で製造でき、原価低減できるとともに省資源を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施例を示すクリップの斜視図である。
【図2】第1の実施例のクリップの自由状態を示す断面図である
【図3】第1の実施例のクリップの閉じた状態を示す断面図である。
【図4】第1の実施例のクリップの閉じ方を示す断面図である。
【図5】第1の実施例のクリップの開き方を示す断面図である。
【図6】第2の実施例を示すクリップの斜視図である。
【図7】第2の実施例のクリップの変形例を示す斜視図である。
【図8】第1の実施例のクリップをバインダーに応用した第3の実施例の斜視図を示す。
【図9】第1の実施例の連結部としてのヒンジを拡大した断面図を示す。
【図10】第4の実施例のクリップの斜視図である。
【図11】第5の実施例のクリップの開いた状態を示す斜視図である。
【図12】第5の実施例のクリップの閉じた状態を示す斜視図である。
【図13】第5の実施例のクリップの曲げ加工前の材料の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
クリップ本体、挟持体、連結部から構成されたクリップにおいて、前記クリップ本体は第一の本体壁部とこれに対向する第二の本体壁部とこれらを結合する基部からなり、略コの字状の枠体を形成し、前記挟持体は挟持片と操作片とロック部から構成され、前記クリップ本体と前記挟持体は第二の本体壁部の端部近傍で前記連結部を介して連結され、前記挟持体をクリップ本体に対し前記連結部中心に揺動可能としている。紙束をクリップ本体に挿入して操作片を押圧することにより挟持体が揺動し、挟持片が紙束を押圧して紙束を綴じるとともにロック部をクリップ本体側にロックすることができる。
【実施例1】
【0010】
図1は、この発明の第1の実施例の斜視図である。10はこの実施例のクリップであり、20のクリップ本体、30の挟持体、40の連結部から構成される。クリップ本体20は略コの字状の断面形状を有し、基部21と第一の本体壁部22と第二の本体壁部23から構成される。第一の本体壁部22と第二の本体壁部23は、対向して略平行に形成されるが、ある程度傾きや湾曲を持たせてもよい。挟持体30は、挟持片31と操作片32とその結合部33、そしてロック部35から構成される。クリップ本体20と挟持片30は、プラスチックで一体に成形され、第二の本体壁部23の端部25において連結部40で繋がっている。
【0011】
挟持片31は、結合部33からクリップ本体20の内部空間の奥に向かって斜めに延在し、端部34が第一の本体壁部22に接するか近接する様にしてある。操作片32は、結合部33から斜め外方に向かって延在する。連結部40は、板厚を薄くした柔軟なヒンジ42により構成される。このため、挟持体30はヒンジ42を中心にクリップ本体20に対して揺動可能である。操作片32の先端はクリップ本体20側に曲げられ、ロック部35が形成されている。ロック部35の先端はさらに内側に曲げられ、ロック片36が形成されている。26は第二の本体壁部23の角部に形成されたロック突起である。
【0012】
図2はこの実施例のクリップ10の自由状態の断面図である。図3はクリップ10が閉じた状態を表す断面図である。図4により、紙束50を綴じる場合の操作方法を説明する。クリップ10に紙束50を挿入し、片手の2本の指でクリップ10の第一の本体壁部22と操作片32を挟んで押すとロック部35の先端のロック片36とロック突起26が係合するとともに、挟持片31が紙束50を押圧する。このとき、操作片32が第二の本体壁部23に密接し余分な出っ張りをなくすことができる。
図5は、紙束50を挟んでクリップ10を閉じた状態から、開く場合の操作方法を示し、指の爪でロック部35を矢印方向に引くとロック片36がロック突起26から外れ、挟持体30と連結部40の弾力により図4の状態に戻る。
【0013】
挟持体30は、挟持片31の方を操作片32より薄くして剛性を低くしてある。
このことにより、挟持片31は紙束50の厚さに応じて変形することができ、操作片32は平面を保って第二の本体壁部23に密接することができる。また、操作片32は結合部33に近い方を厚くし先端に向かってだんだん薄くなるようにしある。これにより、曲げモーメントの大きい結合部33に近い方の剛性を上げ、操作片32の曲がりを少なくしている。クリップ10を閉じたとき操作片32と密接する第二の本体壁部23は、曲げモーメントの大きい基部21に近い方を厚くしてある。このことにより、第二の本体壁部23の曲がりを少なくするとともに、操作片32と第二の本体壁部23を合わせた厚さが均等になるようにし、極力出っ張りが少ないようにしている。なお、操作片32は、あらかじめ上方に湾曲させておくと、操作片32を押圧したとき平面を保つことができる。
第一の本体壁部22の先端24には、傾斜部を設けて紙束50を挿入し易くしている。同じく第一の本体壁部22には凹部27を設け、紙束50を挟んだとき抜け難くしている。さらに、挟持片31の先端34は鋭角として、紙束50を抜け難くしている。
この実施例のクリップ10は、プラスチックをインジェクション成形して一体で成形できる。プラスチック材料としては望ましくはポリアセタールを用いると、十分な剛性と弾力性を得ることができ、クリープ現象も少なくすることができる。
【実施例2】
【0014】
図6により、第2の実施例について第1の実施例と異なる点を説明する。第2の実施例のクリップ10は、ばね鋼など一枚の金属板をカットし折り曲げて成形している。挟持体30はクリップ本体20から延長した部分に縦方向にスリット2本を入れて3本の帯を形成し、両側の帯は内側に曲げて挟持片31とし、真ん中の帯は外側に曲げて操作片32としている。挟持体30とクリップ本体20の連結部40にはスリット41を開けて剛性を下げ、挟持体30が連結部40回りに揺動できるようにしてある。この実施例の形状によると、クリップ本体20は幅が広く、挟持片31は幅が狭くなっているので、同一板材であっても、クリップ本体は剛性を高くし、挟持片は剛性を低くできる。
このように、クリップ10の素材を金属板とすることにより、プラスチックより薄くコンパクトにでき、クリープ現象も防止することができる。連結部40のスリット41は、図7の様に、外側から入れることもできる。操作片32は、結合部33に近い方の幅を広くして剛性を高め、押圧時の曲がりを少なくすることもできる。このとき、ロック部35の幅を小さくすることにより、ロック部35の柔軟性を増し、ロック片36の係止、離脱の操作を容易にすることもできる。
【実施例3】
【0015】
図8はクリップ10をバインダー60に用いた実施例である。バインダー60は表紙70にクリップ10をその折り返し近傍に取り付けたものであり、よりコンパクトなバインダーを構成することができる。図9は連結部40としてのヒンジ42の拡大図であり、ヒンジ42は厚さを薄くしてあり、剛性を下げるとともに繰り返しの屈曲に耐えるようにしてある。
【実施例4】
【0016】
図10はクリップ10の挟持片31を下方に湾曲させた実施例を示す。挟持量が少ない場合は、曲げモーメントの大きい挟持片31の根元の部分が変形して根元に近い方から順に第二の本体壁部23側に接触して行き、挟持量が多くなるに従って挟持片31の先端側が変形して行く。すなわち、挟持片31の変形が根元だけに集中されず分散され、内部応力を下げることができる。なお、5か所の円柱部28は、樹脂成型の際、型抜き容易にすると同時にクリップ10の強度を向上する効果も有している。
【実施例5】
【0017】
図11は第5の実施例のクリップ10の開いた状態を示し、第2の実施例と同じくばね鋼などの一枚の金属板をカットし折り曲げて成形してある。第2の実施例と主に異なるのは、挟持体30がクリップ本体20を打ち抜いて成形してある点であり、材料を節約できる利点がある。第二の本体壁部の端部25の近傍から基部21方向に向かって台形状の操作片32を形成し、その先端には膨出部を設け、ロック部35を形成してある。ロック部35は、一旦内側に曲げられから外側に曲げてあり、操作片32に対し鋭角の内向きの斜面37と鈍角の外向きの斜面38を形成している。操作片32の内側には、操作片32の根元側から先端側に向かって台形状の挟持片31が形成されている。このように挟持体30は、操作片32と挟持片31とで構成され、挟持体30は連結部40により第二の本体壁部の先端25に連結されている。連結部40では、狭小としたヒンジ42により低剛性で連結されて、挟持体30が揺動可能である。第一の本体壁部22にも、端部24側から基部21に向かって内方に傾斜する台形状の挟持片29が設けられ、挟持片31と対向している。基部21は中央部を内側に折り曲げ、第二の本体壁部23に対して鋭角の斜面211を形成し、肩はロック突起26としてある。
【0018】
図12は、第5の実施例のクリップ10の閉じた状態を示す。操作片32を押すと挟持体30は連結部40を中心に回転し、ロック部35がロック突起26に係合すると共に、挟持片31と第一の本体壁部の挟持片29が紙束を押圧して保持することができる。解放時には、ロック片36を指で外方に動かしてロックを解除できる。図13に示すように金属板を切断して、曲げ加工を行いクリップ10を成形する。この実施例では、第二の実施例のような折り曲げ部がないので、よりコンパクトにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、紙束を綴じる事務用のクリップに関するものであるが、その他の家庭用品や電気用品、自動車用品等の工業用品に利用可能である。
【符号の説明】
【0020】
(10)はクリップ
(20)はクリップ本体
(21)は基部
(22)は第一の本体壁部
(23)は第二の本体壁部
(24)は第一の本体壁部の端部
(25)は第二の本体壁部の端部
(26)はロック突起
(27)は凹部
(28)は円柱部
(29)は第一の本体壁部の挟持片
(30)は挟持体
(31)は挟持片
(32)は操作片
(33)は結合部
(34)は挟持片の端部
(35)はロック部
(36)はロック片
(37)は内向きの斜面
(38)は外向きの斜面
(40)は連結部
(41)はスリット
(42)はヒンジ
(50)は紙束
(60)はバインダー
(70)は表紙
(211)は斜面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップ本体、挟持体、連結部から構成されたクリップにおいて、前記クリップ本体は第一の本体壁部とこれに対向する第二の本体壁部とを結合して構成され、前記挟持体は挟持片と操作片とロック部から構成され、前記クリップ本体と前記挟持体は第二の本体壁部の端部近傍で前記連結部を介して連結され、前記挟持体をクリップ本体に対し前記連結部中心に揺動可能とし、前記操作片を押圧すると前記挟持片がクリップ本体の第一の本体壁部側を押圧するとともに前記ロック部がクリップ本体側にロックし、前記ロック部を解除したとき前記挟持片の押圧も解除されるクリップ。
【請求項2】
請求項1のクリップにおいて、前記連結部は他の部位より剛性を下げることにより、前記挟持体を前記連結部を中心に前記クリップ本体に対し揺動可能としたことを特徴とするクリップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2のクリップにおいて、前記クリップ本体、前記挟持体、前記連結部はプラスチックで一体成型したことを特徴とするクリップ。
【請求項4】
請求項1または請求項2のクリップにおいて、前記本体、前記挟持体、前記連結部は一枚の金属平板により一体に成型したことを特徴とするクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−251528(P2011−251528A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102630(P2011−102630)
【出願日】平成23年5月1日(2011.5.1)
【出願人】(592114921)
【Fターム(参考)】