説明

クリーニングウエッブの製造方法、クリーニングウエッブ、画像形成装置及び定着装置

【課題】ウエッブの成形にバインダーを使用せず、配向性、毛羽立が少なく、耐熱温度が高く、また非吸水性に優れてオイルとの親和性が良く、所定のクリーニング特性が得られる。
【解決手段】被清掃部材の表面をクリーニングするウエッブにおいて、ウエッブが、310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、メルトブローン法によって製造され、平均繊維径が3μm以上15μm以下で、かつ厚みが20μm以上80μm以下、平均目付が9g/m以上30g/m以下、密度が0.25g/cm以上1.4g/cm以下、縦方向/横方向の引っ張り強さが1.0以上4.0以下、縦方向と横方向の伸度が約3%、である不織布であり、不織布にオイルを含浸してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリーニングを必要とする被清掃部材の清掃用として使用されるクリーニングウエッブの製造方法、クリーニングウエッブ、クリーニングウエッブを備える画像形成装置及び定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置のクリーニング方式としてウエッブ状のもので残留トナーを拭き取る方法、パイル糸などからなるブラシで擦り落す方法、ゴム材をブレード状にして残留トナーをかき取る方法あるいは、一対のローラ間にシート状のクリーニング材を通過せしめて除去する方法等がよく知られている。
【0003】
しかし最近のように耐熱性を要求されるエンドユースに対応するため定着性の余りよくない耐熱トナーを用いる場合や、熱ローラ方式の定着装置を用い、限られた電力(熱量)で高速複写する場合には、残留トナー除去効率のよいウエッブクリーニングが最も好ましい。
【0004】
ウエッブクリーニング方式で重要なウエッブの構成素材として、芳香族ポリアミド樹脂にポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する不織布(特許文献1)あるいはアラミド繊維と未延伸ポリ(フェニレンサルファイド)繊維からなる不織布を加熱圧着したウエッブ(特許文献2)、またアラミド繊維と未延伸ポリエステル繊維からなるウエッブ(特許文献3)等が提案されている。
【特許文献1】特開昭58―199371号公報
【特許文献2】特開昭61―289162号公報
【特許文献3】特開平5―119688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アラミド繊維に未延伸ポリ(フェニレンサルファイド)繊維を混合し加熱圧着する方法は、ポリ(フェニレンサルファイド)繊維が極めて高価であることを考えると、工業素材として利用することは困難である。
【0006】
アラミド繊維と未延伸ポリエステル繊維からなる乾式不織布あるいは湿式不織布をカレンダーロールで熱圧着したウエッブがこの用途には最も適していると考えられるが、熱圧着の際、未延伸ポリエステルの熱融着が発生するため毛羽立ち、ローラとられに基くシート切断をおこし易い。そのためカレンダー加工速度を極めて低速に落さねばならず、ウエッブの生産性を著しく損なう欠点をもっていた。
【0007】
アラミド繊維と未延伸ポリエステル繊維からなるウエッブのカレンダー熱ロールへの融着発生を防止し、かつ被清掃部ローラの摩耗も起さないようにするものであるが、ウエッブの成形にバインダーを使用しており、配向性、毛羽立があり、耐熱温度が低く、また非吸水性が悪く、オイルとの親和性が悪いことにより、所定のクリーニング特性が得られないなどの問題がある。
【0008】
この発明は、前記課題を解決するもので、ウエッブの成形にバインダーを使用せず、配向性、毛羽立が少なく、耐熱温度が高く、また非吸水性に優れてオイルとの親和性が良く、所定のクリーニング特性が得られるクリーニングウエッブの製造方法、クリーニングウエッブ、画像形成装置及び定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成されている。
【0010】
請求項1に記載の発明は、
被清掃部材の表面をクリーニングするウエッブであり、
前記ウエッブが310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、メルトブローン法によって製造され、
平均繊維径が3μm以上15μm以下で、かつ
厚みが20μm以上80μm以下、
平均目付が9g/m以上30g/m以下、
密度が0.25g/cm以上1.4g/cm以下、
縦方向/横方向の引っ張り強さが1.0以上4.0以下、
縦方向と横方向の伸度が約3%、
である不織布であり、
前記不織布にオイルを含浸することを特徴とするクリーニングウエッブの製造方法である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
熱変形温度が280℃以上である請求項1に記載のクリーニングウエッブの製造方法である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
前記不織布を金属製ロールと弾性体ロールとの間で加圧加熱して搬送し、
前記不織布に前記弾性体ロールで加圧加熱した側から前記オイルを含浸させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクリーニングウエッブの製造方法である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
被清掃部材の表面をクリーニングするウエッブであり、
前記ウエッブが310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、メルトブローン法によって製造され、
平均繊維径が3μm以上15μm以下で、かつ
厚みが20μm以上80μm以下、
平均目付が9g/m以上30g/m以下、
密度が0.25g/cm以上1.4g/cm以下、
縦方向/横方向の引っ張り強さが1.0以上4.0以下、
縦方向と横方向の伸度が約3%、
である不織布であり、
前記不織布にオイルを含浸してなることを特徴とするクリーニングウエッブである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、
熱変形温度が280℃以上である請求項4に記載のクリーニングウエッブである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、
前記不織布を金属製ロールと弾性体ロールとの間で加圧加熱して搬送し、
前記不織布に前記弾性体ロールで加圧加熱した側から前記オイルを含浸したことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のクリーニングウエッブである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、
像担持体上に画像の潜像が形成され、この潜像をトナー像として現像されて後、記録紙上に転写する画像形成装置において、
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のクリーニングウエッブにより前記像担持体の表面をクリーニングすることを特徴とする画像形成装置である。
【0017】
請求項8に記載の発明は、
未定着トナー像を形成した記録媒体を定着ローラと加圧ローラの間に挟み込んで圧力と熱によってトナー像を記録媒体に定着させる定着装置において、
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のクリーニングウエッブにより前記定着ローラの表面をクリーニングすることを特徴とする定着装置である。
【発明の効果】
【0018】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0019】
請求項1及び請求項4に記載の発明では、ウエッブが310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、メルトブローン法によって製造され、ウエッブの成形にバインダーを使用せず、平滑性がよく剥離性が向上し、配向性、毛羽立が少なく、耐熱温度が高く、また非吸水性に優れてオイルとの親和性が良く、極めて細い繊維であり、かつ縦横の引っ張り強さの差が少なく、伸度が小さく安定しており、所定のクリーニング特性が得られる。
【0020】
請求項2及び請求項5に記載の発明では、熱変形温度が280℃以上であり、熱寸法安定性(耐熱性)に優れる。
【0021】
請求項3及び請求項6に記載の発明では、不織布を金属製ロールと弾性体ロールとの間で加圧加熱して搬送することで、不織布の弾性体ロールで加圧加熱した側がフィルム状になることが軽減でき、この不織布の弾性体ロールで加圧加熱した側からオイルを十分に含浸させることができ、所定のクリーニング特性が得られる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のクリーニングウエッブにより像担持体の表面をクリーニングすることで、所定のクリーニング特性が得られる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のクリーニングウエッブにより定着ローラの表面をクリーニングすることで、所定のクリーニング特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明のクリーニングウエッブの製造方法、クリーニングウエッブ、画像形成装置及び定着装置の実施の形態について説明するが、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、
この発明はこれに限定されない。
【0025】
以下、この発明のクリーニングウエッブの製造方法を示す。全芳香族ポリエステルは、その分子骨格から融点が高く、耐熱性に優れているばかりでなく、耐薬品性にも優れており、繊維として利用されているが、熔融液晶を形成するために繊維化が困難であり、また通常のポリエステルやポリアミド繊維などで用いられている延伸処理が殆ど不可能なため、細デニールの繊維とすることが困難であった。
【0026】
しかし、この発明においては、熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルとして、310℃における熔融粘度が20Pa・s以下のものを用いることにより、上記の課題が解決され、
熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルからなる極細繊維で不織布を得ることが可能となる。
【0027】
この発明で使用される熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルは、310℃における熔融粘度が20Pa・s以下であれば特に限定されないが、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸と1,6−ヒドロキシナフトエ酸の縮合体やその共重合体等、また、下記の化学式に示す如き構成単位を有するポリエステルを例示することができる。
【0028】
【化1】

【0029】
310℃での溶融粘度が20Pa・sを超える全芳香族ポリエステルは、極細繊維化が困難であったり、重合時のオリゴマーの発生、重合時や造粒時のトラブル発生などの理由から好ましくない。一方、溶融粘度が低すぎる場合も繊維化が困難であり、好ましくは310℃において5Pa・s以上の溶融粘度を示すことが望ましい。また、本質粘度で表した場合、この発明で使用する全芳香族ポリエステルは6.0以下、好ましくは3.0〜6.0の本質粘度(ηinh)を有していることが望ましい。かかる溶融粘度を有する溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルは、従来公知の全芳香族ポリエステルの重合技術によって製造することができる。
【0030】
この発明の不織布の製造方法(紡糸方法)は、メルトブローン法を用いることができ、メルトブローン法によれば、極細繊維からなる不織布の製造が比較的容易にでき、紡糸時に溶剤を必要とせず環境への影響を最小限とすることができる。メルトブローン法で製造する場合、紡糸装置は、図1に示す従来公知のメルトブローン装置1を用いることができ、
全芳香族ポリエステル2を塗布ノズル3によってメッシュ4に吹き付けて不織布5を成形
し、直接シート化する。
【0031】
紡糸条件としては、紡糸温度310℃〜350℃、熱風温度(一次エア温度)310℃〜370℃、ノズル長1mあたり、エアー量10Nm〜50Nmで行なうことが好ましい。また、このようにして製造される不織布を構成する繊維の平均繊維径は3μm以上15μm以下であることが必要であり、好ましくは平均繊維径は3μm以上8μm以下である。平均繊維径が3μm未満では風綿の発生やウェブの形成が困難となり好ましくなく、また、15μmを超えると所定のクリーニング特性が得られない。なお、この発明において平均繊維径は、不織布を走査型電子顕微鏡で拡大撮影し、任意の100本の繊維の径を測定した値の平均値を指すものである。
[実施例]
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明は何らこれらに限定されるものではない。
(ウェブの厚み)
ウェブの厚みは、以下の式から計算する。
【0032】
(厚み)=π/4×{[(巻き終わり径)−(巻き始め径)]/巻き長さ}
(溶融粘度)
東洋精機キャピログラフ1B型を用いて、温度310℃、剪断速度r=1000−1の条件下で測定した。
(耐薬品性の評価)
O−クロロフェノールに30℃で24時間浸漬し、目視にて溶解の程度を確認する。さらに1規定の水酸化ナトリウム水溶液中で沸騰処理1時間を行い、重量減少率を確認する。さらにヘキサフロロイソプロパノール中に室温で24時間浸漬し目視にて溶解の程度を確認する。この発明において、実質的に溶剤に不溶であるとは、O−クロロフェノールに不溶であること、また1規定の水酸化ナトリウム水溶液中で沸騰処理1時間を行っても、重量減少率が10%以下であること、ヘキサフロロイソプロパノール中に室温で24時間浸漬しても溶解しないことをいう。
(熱変形温度の測定)
島津製作所製TMA−50を用いて、試料長を20mmとし、被測定試料重量1g当たり1gを付与し、昇温速度5℃/ minにいて室温から昇温し、急激な伸びが発生する温度を熱変形温度とする。該温度は、温度−伸度カーブより接線の交点をもって定義した。
【0033】
実施例1
液晶形成性全芳香族ポリエステルを、低露点エアー式乾燥機にて十分に乾燥し、二軸押出機により押し出し、幅1m、ホール数1000のノズルを有するメルトブローン不織布
製造装置に供給した。メルトブローン装置にて、単孔吐出量0.3g/min、樹脂温度310℃、熱風温度310℃、20Nmにてブローンし、厚みが20μm、平均目付が9g/m、密度が0.30g/m、縦方向/横方向の引っ張り強さが1.0、縦方向と横方向の伸度が約3%のメルトブローン不織布を得た。この不織布は、ヘキサフロロイソプロパノールには24時間で溶解するものの、O−クロロフェノールには全く溶解せず、水酸化ナトリウム処理での重量減少率も0.8%と、耐薬品性に優れたものであった。さらに、100℃の熱風を該不織布に通過させたが、形状変化がなく耐熱性が良好であった。熱変形温度を測定した結果210℃であった。
【0034】
比較例1
液晶形成性ポリエステル樹脂の310℃での溶融粘度を30Pa・s(本質粘度6.3)とすること以外は実施例1と同様にしてメルトブローン不織布を得たが、ショット(繊維を形成出来なかった樹脂粒)がウェブ上に多発し、不調であった。
【0035】
比較例2
全芳香族ポリエステルに代えて、ポリエチレンテレフタレート(本質粘度0.59)を用いること以外は実施例1と同様にして、樹脂温度295℃、一次エアー温度295℃、20Nmにてブローンし、平均目付60g/m、平均繊維径3.8μmの不織布を得た。この不織布の耐熱性評価を行ったところ、40%もの収縮が発生し、耐熱性が不良なものであった。さらに、O−クロロフェノールに浸けたところ、短時間に溶解し、耐薬品性の無いものであった。
【0036】
実施例2
実施例1と同様にして、厚みが50μm、平均目付が14g/m、密度が0.28g
/cm、縦方向/横方向の引っ張り強さが1.8、縦方向と横方向の伸度が約3%のメ
ルトブローン不織布を得た。この不織布は、実施例1と同様に耐薬品性に優れ、さらに耐熱性が良好であった。この不織布の耐薬品性を調べたところ良好であり、水酸化ナトリウム処理での重量減少率は0.1%以下であり、O−クロロフェノールへは全く溶解しなかった。また、ヘキサフロロイソプロパノールにもわずかに膨潤するものの、耐薬品生は良好であった。不織布の熱変形温度を測定したところ、273℃を示し、きわめて良好なものであった。
【0037】
実施例3
液晶形成性ポリエステルとして、ブローン温度、熱風温度を315℃にすること以外実施例1と同様にして、厚みが70μm、平均目付が22g/m、密度が0.31g/c
、縦方向/横方向の引っ張り強さが3.1、縦方向と横方向の伸度が約3%のメルト
ブローン不織布を得た。この不織布の熱変形温度は220℃と良好なものであった。また、ヘキサフロロイソプロパノールには、24時間でほぼ溶解するものの、O−クロロフェノールには全く溶解せず、水酸化ナトリウム処理による減量率は、1.0%と耐薬品性も良好であった。さらに、100℃の熱風を該不織布に通過させたが、ほとんど寸法変化が無く、熱変形温度を測定したところ、223℃を示した。
【0038】
実施例4
液晶形成性ポリエステルとして、ブローン温度、熱風温度を315℃にすること以外実施例1と同様にして、厚みが80μm、平均目付が25g/m、密度が0.31g/c
以上、縦方向/横方向の引っ張り強さが3、縦方向と横方向の伸度が約3%のメルト
ブローン不織布を得た。この不織布の熱変形温度は220℃と良好なものであった。また、ヘキサフロロイソプロパノールには、24時間でほぼ溶解するものの、O−クロロフェノールには全く溶解せず、水酸化ナトリウム処理による減量率は、1.0%と耐薬品性も良好であった。さらに、100℃の熱風を不織布に通過させたが、ほとんど寸法変化が無く、熱変形温度を測定したところ、223℃を示した。
(オイルの含浸)
この発明のウエッブは、310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、メルトブローン法によって製造され、
平均繊維径が3μm以上15μm以下で、かつ
厚みが20μm以上80μm以下、
平均目付が9g/m以上30g/m以下、
密度が0.25g/cm以上1.4g/cm以下、
縦方向/横方向の引っ張り強さが1.0以上4.0以下、
縦方向と横方向の伸度が約3%、
である不織布である。
【0039】
引っ張り強さは、不織布が引っ張りを受けて破断するまでの最大応力であり、最大荷重を不織布の元の断面積で割った値で示す。不織布の一例として厚みが70μmでは、縦方向の引っ張り強さが26.0(N/1,5cm)、横方向の引っ張り強さが13.0(N/1,5cm)であるものでは、縦方向/横方向の引っ張り強さが2.0である。また、
伸度は、不織布の引き伸ばさないときの長さと、元の長さの差の、ものと長さに対する百分率であり、縦方向と横方向の伸度が約3%である。クリーニングウエッブは、不織布にオイルを6g/m以上30g/m以下を含浸してなり、このオイルとしてシリコンオ
イルが好ましく用いられる。
【0040】
図2に示すクリーニングウエッブ製造機10により不織布16にオイルを含浸する。この実施例では、クリーニングウエッブ製造機10がオイルタンク11、供給ローラ12、塗布ローラ13及び転写ローラ14を備え、原反ロール15の不織布16に塗布ローラ13からオイルを塗布して含浸させ、巻き取りロール17に巻き取り、クリーニングウエッブが形成される。オイルの供給量は、供給ローラ12に接触したブレード18によって行なわれる。
【0041】
このようにして、ウエッブが、310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、メルトブローン法によって製造された不織布であり、この不織布16のウエッブの成形にバインダーを使用せず、さらにオイルを塗布して含浸させることで、クリーニングウエッブは平滑性がよく剥離性が向上し、配向性、毛羽立が少なく、耐熱温度が高く、また非吸水性に優れてオイルとの親和性が良く、極めて細い繊維であり、かつ縦横の引っ張り強さの差が少なく、伸度が小さく安定しており、所定のクリーニング特性が得られる。
【0042】
また、この実施例の不織布16を、図3及び図4に示すように、金属製ロール19aと弾性体ロール19bとの間で加圧加熱して搬送する。金属製ロール19aは例えば鉄の加熱ロールとし、弾性体ロール19bは例えばゴム製ロールとする。金属製ロール19aの加熱する温度や圧力は特に限定されないが、金属製ロール19aで加圧加熱した側16aの不織布16の表面がフィルム状になる温度、圧力とする。また、不織布16は、金属製ロール19aと弾性体ロール19bとの間で加圧加熱した後の厚みが20μm以上80μm以下となるようにする。不織布16のウエッブが、310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とすることで、不織布16の金属製ロール19aで加圧加熱した側16aは、不織布16の表面がフィルム状になるが、弾性体ロール19bで加圧加熱した側16bは、不織布16の表面がフィルム状になることが軽減できる。したがって、不織布16の弾性体ロール19bにより加圧加熱した側から塗布ローラ13によってオイルを十分に含浸させることができ、より優れたクリーニング特性が得られる。
【0043】
(画像形成装置)
次に、クリーニングウエッブにより像担持体の表面をクリーニングする画像形成装置について説明する。図5は画像形成装置の概略構成図である。画像形成装置31としてのレ
ーザプリンタには、プリンタ部32の下部に記録媒体供給部34が配置され、記録媒体供給部34には自動供給カセット44が複数段に設けられ、異なるサイズの記録媒体がセットされている。プリンタ部32の側壁には手差し供給カセット72が開閉可能に配置され、この自動供給カセット44と手差し供給カセット72から記録媒体を転写部36へ搬送する供給搬送路7,8が形成されている。
【0044】
自動供給カセット44に設けられた底板41はスプリング42で常にセットされた記録媒体が送出ローラ43に接するように付勢され、送出ローラ43の駆動で1枚ずつ記録媒体が供給搬送路7に送り出される。手差し供給カセット72にセットされた記録媒体は、送出ローラ50の駆動で1枚ずつ記録媒体が供給搬送路8に送り出される。供給搬送路7,8は転写部36側で集合され、この供給搬送路7,8には、搬送ローラ対53及び搬送ガイド54が配置され、これらにより記録媒体が転写部36に所定のタイミングで搬送される。
【0045】
転写部36は、像担持体30に対向する位置に配置され、像担持体30周面上の像が一括して記録媒体に移される。画像を転写された記録媒体の排出搬送路55には定着部56及び排出ローラ57が配置され、転写部36から分離した記録媒体は、定着部56へと搬送される。定着部56には、少なくとも一方のローラ内部にヒータを有する2本の圧着ローラ58で構成され、その2本の圧着ローラ58間で熱と圧力とを加えられることにより付着トナーは溶解し、記録媒体上に定着され、この後排出搬送路55から排出ローラ57により装置外へ排出される。
【0046】
プリンタ部32には、像書き込み部20が設けられ、この像書き込み部20により画像信号に基づいて像担持体30周面上に像露光が行なわれる。像書き込み部20はレーザ光源から発光されるレーザ光を回転多面鏡21により回転走査され、fθレンズ22、フィルタ23を経て反射ミラー24により光路を曲げられ、予め帯電された像担持体30の周面上に投射され、像担持体30の表面に潜像が形成される。
【0047】
像担持体30は、一方向(図では時計回り方向)に駆動回転に設けられ、さらに像担持体30の周囲に、PCL31、帯電器32、現像器33、クリーニング部34及び除電器35が配置されている。PCL31による除電を行なって前回プリント時の帯電を除去された後、帯電器32により周面に対し一様に帯電され、新たなプリントに備える。この一様帯電の後、像書き込み部20により画像信号に基づいて像露光が行なわれる。
【0048】
像担持体30の周縁にはトナーと磁性を有するキャリアとの混合剤で構成される現像剤を充填した現像器33が設けられ、この現像器33には撹拌スクリュー36、搬送回転体37及び現像剤担持体38が備えられている。現像剤は層形成棒39によって現像剤担持体38上に所定の厚さに規制されて現像域へと搬送される。
【0049】
像担持体30と現像剤担持体38との間にはACバイヤス電圧とDCバイヤス電圧とが重畳して印加され、公知の方法により顕像化される。現像器33が像担持体30上に形成された静電潜像を現像剤により顕像化する現像手段を構成する。
【0050】
クリーニング部34には、クリーニングウエッブ60が備えられている。このクリーニングウエッブ60は巻き出しロール61からクリーニングローラ62を介して巻取りロール63で巻き取られ、クリーニングローラ62によりクリーニングウエッブ60が像担持体30に接触して接し、像担持体30の表面をクリーニングする。
【0051】
クリーニングウエッブ60は、ウエッブの成形にバインダーを使用せず、平滑性がよく剥離性が向上し、配向性、毛羽立が少なく、耐熱温度が高く、また非吸水性に優れてオイルとの親和性が良く、極めて細い繊維であり、かつ縦横の引っ張り強さの差が少なく、伸度が小さく安定しており、所定のクリーニング特性が得られる。
【0052】
(定着装置)
次に、クリーニングウエッブにより定着ローラの表面をクリーニングする定着装置について説明する。図6はモノクロの定着装置の一例の概略構成図、図7はカラーの定着装置の一例の概略構成図である。
【0053】
図6のモノクロの定着装置80は、モノクロの未定着トナー像81を形成した記録媒体
82を定着ローラ83と加圧ローラ84の間に挟み込んで圧力と熱によってトナー像を記録媒体82に定着させる。この定着装置80には、クリーニング部85が備えられる。このクリーニング部85には、クリーニングウエッブ86が備えられている。このクリーニングウエッブ86は巻き出しロール87から転写ローラ88を介して巻取りロール89で巻き取られ、転写ローラ88によりクリーニングウエッブ86が定着ローラ83に接触し、定着ローラ83の表面をクリーニングする。
【0054】
図7のカラーの定着装置90は、カラーの未定着トナー像91を形成した記録媒体92
を定着ローラ93と加圧ローラ94の間に挟み込んで圧力と熱によってカラーのトナー像を記録媒体92に定着させる。この定着装置90には、クリーニング部85が備えられる。このクリーニング部85には、クリーニングウエッブ86が備えられ、このクリーニング部8は図4の実施の形態と同様に構成されるが、この実施の形態では、カラーの定着トナーが多く定着ローラ93に付着するため、まずクリーニングローラ95により定着ローラ93の表面をクリーニングする。そして、転写ローラ88によりクリーニングウエッブ86がクリーニングローラ95に接触してクリーニングし、定着ローラ93の表面を間接的にクリーニングする。
【0055】
クリーニングウエッブ86は、ウエッブの成形にバインダーを使用せず、平滑性がよく剥離性が向上し、配向性、毛羽立が少なく、耐熱温度が高く、また非吸水性に優れてオイルとの親和性が良く、極めて細い繊維であり、かつ縦横の引っ張り強さの差が少なく、伸度が小さく安定しており、所定のクリーニング特性が得られる。
【0056】
クリーニングウエッブの評価実験を、以下に説明する。
[実験条件]
40枚/分で用紙に形成した画像を定着処理することができる実験機を用いた。
【0057】
用紙は、市販のコピー上質紙を用い、画像として6%文字を形成した場合と、ハーフトーンの絵を形成した場合について評価した。
[評価試料のクリーニングウエッブ]
比較例
アラミド繊維60%にポリエステル繊維40%を混合し加熱圧着してクリーニングウエッブを作成した。
【0058】
クリーニングウエッブは、
平均繊維径が15μm、
厚みが40μm、
平均目付が20g/m
密度が0.30g/cm
縦方向/横方向の引っ張り強さが1.8、
縦方向と横方向の伸度が約3%、
であり、
シリコンーンオイルを12g/m含浸させた。
【0059】
実施例
310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、メルトブローン法によってクリーニングウエッブを作成した。
【0060】
クリーニングウエッブは、
平均繊維径が10μm
厚みが30μm、
平均目付が11g/m
密度が0.37g/cm
縦方向/横方向の引っ張り強さが1.8、
縦方向と横方向の伸度が約3%、
であり、
シリコンーンオイルを12g/m含浸させた。
[評価方法]
用紙に形成した画像を定着処理し、用紙100枚毎にサンプリングし、比較例のクリーニングウエッブを用いた場合と、実施例のクリーニングウエッブを用いた場合とで、剥離爪の汚れと、用紙の汚れを目視で評価した。評価結果を表1に示す。
【0061】
△:汚れがある。
【0062】
○:多少汚れがある。
【0063】
◎:汚れがない。
表1

【0064】
このクリーニングウエッブの評価実験によって、比較例のクリーニングウエッブよりも実施例のクリーニングウエッブがクリーニング性が高いことが確認できた。さらに、比較例のクリーニングウエッブの厚みが40μmに対し、実施例のクリーニングウエッブの厚みが30μmでもクリーニング性が高く、クリーニングウエッブを薄くすることができた。したがって、クリーニングウエッブの送り量を同じとした場合にはクリーニングウエッブの長さを長くすることができ、クリーニングウエッブの交換時期を長くすることが可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明は、クリーニングを必要とする被清掃部材の清掃用として使用されるクリーニングウエッブの製造方法、クリーニングウエッブ、クリーニングウエッブを備える画像形成装置及び定着装置に適用でき、平滑性がよく剥離性が向上し、配向性、毛羽立が少なく、耐熱温度が高く、また非吸水性に優れてオイルとの親和性が良く、極めて細い繊維であり、かつ縦横の引っ張り強さの差が少なく、伸度が小さく安定しており、所定のクリーニング特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】メルトブローン装置の概略構成図である。
【図2】クリーニングウエッブ製造機の概略構成図である。
【図3】クリーニングウエッブ製造機の他の実施の形態の概略構成図である。
【図4】クリーニングウエッブの製造を示す図である。
【図5】画像形成装置の概略構成図である。
【図6】モノクロの定着装置の一例の概略構成図である。
【図7】カラーの定着装置の一例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1 メルトブローン装置
2 全芳香族ポリエステル
3 塗布ノズル
4 メッシュ
5 不織布
10 クリーニングウエッブ製造機
11 オイルタンク
12 供給ローラ
13 塗布ローラ
14 転写ローラ
15 原反ロール
16 不織布
17 巻き取りロール
18 ブレード
19a 金属製ロール
19b 弾性体ロール
20 像書き込み部
30 像担持体
31 画像形成装置
32 プリンタ部
34 クリーニング部
36 転写部
60 クリーニングウエッブ
61 巻き出しロール
62 クリーニングローラ
63 巻取りロール
80 モノクロの定着装置
81 モノクロの未定着トナー像
82 記録媒体
83 定着ローラ
84 加圧ローラ
85 クリーニング部
86 クリーニングウエッブ
86 クリーニングウエッブ
87 巻き出しロール
88 転写ローラ
89 巻取りロール
90 カラーの定着装置
91 カラーの未定着トナー像
92 記録媒体
93 定着ローラ
94 加圧ローラ
95 クリーニングローラ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清掃部材の表面をクリーニングするウエッブであり、
前記ウエッブが、310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、メルトブローン法によって製造され、
平均繊維径が3μm以上15μm以下で、かつ
厚みが20μm以上80μm以下、
平均目付が9g/m以上30g/m以下、
密度が0.25g/cm以上1.4g/cm以下、
縦方向/横方向の引っ張り強さが1.0以上4.0以下、
縦方向と横方向の伸度が約3%、
である不織布であり、
前記不織布にオイルを含浸することを特徴とするクリーニングウエッブの製造方法。
【請求項2】
熱変形温度が280℃以上である請求項1に記載のクリーニングウエッブの製造方法。
【請求項3】
前記不織布を金属製ロールと弾性体ロールとの間で加圧加熱して搬送し、
前記不織布に前記弾性体ロールで加圧加熱した側から前記オイルを含浸させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクリーニングウエッブの製造方法。
【請求項4】
被清掃部材の表面をクリーニングするウエッブであり、
前記ウエッブが310℃における溶融粘度が20Pa・s以下である熔融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、メルトブローン法によって製造され、
平均繊維径が3μm以上15μm以下で、かつ
厚みが20μm以上80μm以下、
平均目付が9g/m以上30g/m以下、
密度が0.25g/cm以上1.4g/cm以下、
縦方向/横方向の引っ張り強さが1.0以上4.0以下、
縦方向と横方向の伸度が約3%、
である不織布であり、
前記不織布にオイルを含浸してなることを特徴とするクリーニングウエッブ。
【請求項5】
熱変形温度が280℃以上である請求項4に記載のクリーニングウエッブ。
【請求項6】
前記不織布を金属製ロールと弾性体ロールとの間で加圧加熱して搬送し、
前記不織布に前記弾性体ロールで加圧加熱した側から前記オイルを含浸したことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のクリーニングウエッブ。
【請求項7】
像担持体上に画像の潜像が形成され、この潜像をトナー像として現像されて後、記録紙上に転写する画像形成装置において、
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のクリーニングウエッブにより前記像担持体の表面をクリーニングすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
未定着トナー像を形成した記録媒体を定着ローラと加圧ローラの間に挟み込んで圧力と熱によってトナー像を記録媒体に定着させる定着装置において、
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のクリーニングウエッブにより前記定着ローラの表面をクリーニングすることを特徴とする定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−20886(P2008−20886A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118873(P2007−118873)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(596086262)株式会社立花商店 (8)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(507226019)MC山三ポリマーズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】