説明

クリーニングカセット、サーマルプリンタ、及びクリーニング方法

【課題】サーマルヘッドのクリーニングにおける品質的な部分と、コスト的な部分との両立を図りつつ、サーマルヘッドをクリーニングできるようにし、サーマルプリンタにおける印画品位の維持を可能とする。
【解決手段】クリーニングリボン21をサーマルヘッド10に摺擦させてサーマルヘッド10のクリーニングを行うとともに、クリーニングリボン10の使用程度を記憶手段24に記憶し、記憶された前回のクリーニングリボン21の使用程度に基づいて、今回のクリーニングリボン21の使用程度を決定し、サーマルヘッド10のクリーニングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドを効率的にクリーニングすることができるクリーニングカセットと、このクリーニングカセットが装着可能なサーマルプリンタ、及びサーマルヘッドを効率的にクリーニングすることができるクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラテンに対向するように設けられたサーマルヘッドを用いるサーマルプリンタが知られている。そして、サーマルプリンタには主に、昇華方式、溶融方式、感熱方式があり、いずれの方式であっても、サーマルヘッドには、複数の発熱素子(例えば、発熱抵抗体)がライン状に配列されている。このようなサーマルプリンタによって印画を行うには、各発熱素子に対して階調レベルに応じた選択的な通電を行い、その際に発生する熱エネルギーを利用する。
【0003】
例えば、昇華方式のサーマルプリンタの場合には、プラテンまで搬送されたインクリボンと記録用紙とがサーマルヘッドの下降により、プラテンとサーマルヘッドとの間に挟持される。そして、サーマルヘッドの各発熱素子を選択的に通電駆動してインクリボン上のインクを昇華させ、記録用紙上に転写することで印画を行っている。
【0004】
ここで、サーマルプリンタに使用されるインクリボンは一般的に、インクカセット内の供給リールと巻取りリールとの間に巻き回されており、インクリボンの巻き出し方向と直角な方向に、異なる複数色の昇華性インク(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各インクと、透明なラミネートインク(L))とがベースフィルム上に順次繰り返して配置された構成となっている。そのため、印画が行われる際は、インクリボンの各色が順次高温に熱せられた状態で、サーマルヘッドに摺擦することとなる。
【0005】
そこで、インクリボンにおけるベースフィルムの各昇華性インクが配置される面と反対側の面には、バックコート層が塗布されている。このバックコート層は、インクリボンとサーマルヘッドとの間の滑りを良くするものであり、これにより、サーマルプリンタの機械的なトラブルの発生を抑制するようにしている。
【0006】
ところが、印画が繰り返されると、次第にバックコート層が融解し、サーマルヘッドに焼き付くという問題が生じる。そして、焼付きによる付着物がサーマルヘッド上に堆積するようになると、所望の熱エネルギーがインクリボンに伝わらず、印画品位が低下する原因となってしまう。
【0007】
そのため、このような付着物をはじめとする異物をサーマルヘッドから除去するために、各種のクリーニング方法が提案されている。すなわち、インクリボン上に配置された互いに異なる各色の昇華性インクの間に、クリーニング部を配置するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような技術によれば、非印画時に、搬送されるインクリボンのクリーニング部がプラテンに圧接したサーマルヘッドを摺擦するので、サーマルヘッドをクリーニングすることができる。
【特許文献1】特開平7−172015号公報
【0008】
また、インクリボンの一部にクリ−ニング領域を設けることにより、サーマルヘツドをクリ−ニングできるようにした技術も知られている。すなわち、インクリボンの始端部と終端部とにクリ−ニング領域を設けたり、昇華性インクの4色が配置された領域を1サイクルとして、各サイクルごとにクリ−ニング領域を設けた技術である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開昭63−82775号公報
【0009】
さらにまた、サーマルプリンタに専用のクリーニングカセットを装着し、クリーニングカセットに収容されたクリーニングリボンをサーマルヘッドに接触させた状態で搬送することにより、サーマルヘッドの表面の汚れ等を取り除く技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。このような技術によれば、クリーニングカセットをサーマルプリンタに装着するだけでサーマルヘッドのクリーニングを行うことができるので、クリーニングの煩わしさが解消される。
【特許文献3】特開平10−839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前述の特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、インクカセットに収容されたインクリボンの一部分や、インクリボンの始端部と終端部とにクリ−ニング領域を設けたものである。そのため、サーマルヘッドをクリーニングすることができるのは、インクリボンの搬送中における部分部分となってしまう。
【0011】
ところが、サーマルヘッドのクリーニングが必要な頻度は、サーマルプリンタの使用状況等によって異なったりする。すなわち、印画内容によっては、クリーニングが必要となる時期が早まったり、またその逆に、通常よりも遅くなったりすることがある。そのため、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、サーマルヘッドのクリーニングが必要な時期に応じて適宜クリーニングを実行することが困難であり、クリーニングの品質に問題があるものであった。
【0012】
一方、特許文献3に記載の技術は、インクリボンを収容したインクカセットとは別に、サーマルプリンタに専用のクリーニングカセットを装着し、インクリボンの代わりにクリーニングリボンを搬送させる方法である。そのため、必要に応じてクリーニングを実行することが可能になっている。なお、クリーニングリボンは一般的に、不織布や軟質樹脂シート等から構成されたものであり、特に、ポリエステルフィルム等に超微粒子研磨材を均一にコーティングしたものがサーマルヘッドのクリーニングリボンとして効果的なものである。
【0013】
ところが、クリーニングリボンをインクリボンと同様に搬送させると、クリーニングリボンの全長に対して、実際にクリーニングに使用される部分が断続的になってしまうという問題がある。これは、サーマルプリンタの機構的、制御的な制約や都合によるもので、供給リールに巻き回されたクリーニングリボンが全て巻き出され、交換時期に達したクリーニングカセットであっても、内部のクリーニングリボンには、クリーニングに使用されていない(サーマルヘッドを摺擦していない)未使用部分が断続的に存在してしまう。
【0014】
そして、超微粒子研磨材をコーティングしたクリーニングリボンは、高価であるため、使用される部分が断続的となり、クリーニングリボンに未使用部分が残るクリーニングカセットを使用することは、非効率的であり、コスト高となるものであった。そのため、必要な時期に適宜クリーニングを行うことができ、かつクリーニングに必要なコストを抑制することができるものが求められていた。
【0015】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、サーマルヘッドのクリーニングにおける品質的な部分と、コスト的な部分との両立を図りつつ、サーマルヘッドをクリーニングできるようにし、サーマルプリンタにおける印画品位の維持を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下の解決手段によって、上述の課題を解決する。
本発明の1つである請求項1に記載の発明は、プラテンと、前記プラテンに対向するように設けられたサーマルヘッドとを備えるサーマルプリンタに装着可能なクリーニングカセットであって、前記サーマルヘッドを摺擦可能なクリーニングリボンと、前記クリーニングリボンが巻き回された供給リールと、前記供給リールから巻き出された前記クリーニングリボンを巻き取る巻取りリールと、前記クリーニングリボンの使用程度を記憶する記憶手段と、前記クリーニングリボン、前記供給リール、前記巻取りリール、及び前記記憶手段を収容するカセット本体部とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の1つである請求項2に記載の発明は、プラテンと、前記プラテンに対向するように設けられたサーマルヘッドとを備えるサーマルプリンタであって、前記サーマルヘッドを摺擦可能なクリーニングリボンと、前記クリーニングリボンが巻き回された供給リールと、前記供給リールから巻き出された前記クリーニングリボンを巻き取る巻取りリールと、前記クリーニングリボンの使用程度を記憶する記憶手段と、前記クリーニングリボン、前記供給リール、前記巻取りリール、及び前記記憶手段を収容するカセット本体部とを備えるクリーニングカセットが装着可能であり、装着された前記クリーニングカセットの前記供給リール及び前記巻取りリールを回転駆動させるリール駆動手段と、装着された前記クリーニングカセットの前記記憶手段に記憶された前記クリーニングリボンの使用程度を読み取る読取り手段と、前記読取り手段によって読み取った前記クリーニングリボンの使用程度に基づいて、前記リール駆動手段を制御するリール制御手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のさらに他の1つである請求項6に記載の発明は、プラテンと、前記プラテンに対向するように設けられたサーマルヘッドとを備えるサーマルプリンタのクリーニング方法であって、クリーニングリボンを前記サーマルヘッドに摺擦させて前記サーマルヘッドのクリーニングを行うとともに、前記クリーニングリボンの使用程度を記憶し、記憶された前回の前記クリーニングリボンの使用程度に基づいて、今回の前記クリーニングリボンの使用程度を決定し、前記サーマルヘッドのクリーニングを行うことを特徴とする。
【0019】
(作用)
上記発明においては、クリーニングリボンの使用程度が記憶される。すなわち、サーマルヘッドを摺擦したクリーニングリボンの使用範囲や位置等の情報が記憶される。そのため、前回のクリーニングリボンの使用程度に基づいて、今回のクリーニングリボンの使用程度を決定し、サーマルヘッドのクリーニングを行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
上記発明によれば、前回のクリーニングリボンの使用程度に基づいて、今回のクリーニングリボンの使用程度を決定し、サーマルヘッドのクリーニングを行うことができるので、クリーニングリボンを全長にわたって均一に消費できるようになる。そのため、クリーニングカセットの装着により、必要な時期に適宜クリーニングを行うことができ、かつクリーニングに必要なコストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のサーマルプリンタ1を示す斜視図である。
図1に示すように、サーマルプリンタ1は、筐体部2と、筐体部2の前面に取り付けられたドア部3とを備えている。また、筐体部2の前面側には、電源スイッチ4が設けられている。さらにまた、ドア部3には、ドアパネル5が取り付けられており、その前面に各種スイッチを有する操作パネル6と、各種メッセージを表示するための液晶パネル7とが設けられている。さらに、ドア部3の下端部には、排紙口8を有する排紙トレイ9が取り付けられている。なお、筐体部2の後面側には、外部接続用の複数のコネクタからなるコネクタ接続部(図示せず)が配設されている。
【0022】
図2は、図1に示す本実施形態のサーマルプリンタ1のドア部3を開けた状態を示す斜視図であり、インクカセット30を取り出して図示したものである。なお、インクカセット30は、内部構造が明らかになるように、外形を点線で示している。
また、図3は、図1に示す本実施形態のサーマルプリンタ1の内部を示す側面図である。
図2及び図3に示すように、ドア部3の裏面側には、サーマルヘッド10が実装されている。また、筐体部2内には、ドア部3を閉じたときにサーマルヘッド10と対向する位置に、プラテン11が配置されている。
【0023】
また、筐体部2の内部において、プラテン11の下方には、インクカセット30の供給リール32を回転駆動させるためのリール駆動手段14aが設けられ、プラテン11の上方には、インクカセット30の巻取りリール33を回転駆動させるためのリール駆動手段14bが設けられている。なお、リール駆動手段14a及びリール駆動手段14bは、リール制御手段(図示せず)によって制御される。
【0024】
そして、筐体部2にインクカセット30を装着すると、供給リール32及び巻取りリール33がプラテン11と平行に位置し、インクリボン31がプラテン11上を通過するように配置される。さらに、ドア部3が閉じられると、インクリボン31は、プラテン11とサーマルヘッド10との間に配置される。この状態で、リール駆動手段14bを回転駆動させると、インクリボン31が巻取りリール33に巻き取られ、逆に、リール駆動手段14aを回転駆動させると、インクリボン31が供給リール32に巻き戻される。
【0025】
また、筐体部2の内部には、ペーパーホルダ42に保持されたロール紙41が装着されている。このロール紙41は、プラテン11の近傍に設けられたキャプスタンローラ12とピンチローラ13との間を通り、プラテン11とサーマルヘッド10との間を通って排紙されるようになっている。この状態で、必要に応じてキャプスタンローラ12を回転駆動させると、キャプスタンローラ12の正逆の回転方向にしたがって、ロール紙41が前後に搬送される。
【0026】
ところで、サーマルヘッド10には、複数の発熱抵抗体がライン状に、ロール紙41の幅方向(ライン方向)に配列されている。そして、この発熱抵抗体に通電した際の熱エネルギーを利用して、インクリボン31に塗布された4色(Y・M・C・L)の固体インクを蒸発させ、その各色のインクの蒸気をロール紙41上に順次蒸着させて印画を行うようになっている。
【0027】
この点に関してさらに詳述すると、インクリボン31は、印画する画像データ(色変換処理された階調データ)に応じて駆動されるリール駆動手段14bにより、巻取りリール33が回転することによって供給リール32から巻き出され、プラテン11とサーマルヘッド10との間を通り、巻取りリール33に巻き取られる。一方、プラテン11とサーマルヘッド10との間に配置されたロール紙41は、キャプスタンローラ12及びピンチローラ13の回転駆動によって搬送される。
【0028】
そして、非印画時は、サーマルヘッド10が上昇しており、サーマルヘッド10がプラテン11から少し離れて位置しているが、印画指令が入力されると、上昇していたサーマルヘッド10が下降してプラテン11を押圧し、サーマルヘッド10の発熱抵抗体の配列部分とプラテン11との間にインクリボン31及びロール紙41を挟み込む。すなわち、サーマルヘッド10の発熱抵抗体は、プラテン11上で、インクリボン31を介してロール紙41を圧接する。
【0029】
ここで、画像データが入力されると、キャプスタンローラ12の時計回りの回転駆動により、ロール紙41がペーパーホルダ42に戻される方向に順次搬送される。また、リール駆動手段14bの駆動による巻取りリール33の回転により、ロール紙41と同じ速さでインクリボン31が巻取りリール33に順次巻き取られる。同時に、サーマルヘッド10に配列された発熱抵抗体が駆動制御信号によって選択的に通電駆動され、発熱抵抗体からインクリボン31に熱エネルギーが付与される。すると、サーマルヘッド10の発熱抵抗体の発熱量に応じてインクリボン31上の固体インクがロール紙41上に転写され、印画が行われる。
【0030】
そして、カラー印画の場合には、印画が各色ごとに実行されるため、インクリボン31による転写の色が変更されるごとに、キャプスタンローラ12を逆回転(反時計回りに回転)させてロール紙41を逆送り(ペーパーホルダ42から巻き出す方向に搬送)し、印画の開始地点まで戻してから、上記と同様の印画動作を繰り返す。
【0031】
このようにして印画が行われた後のロール紙41は、サーマルヘッド10の上昇後に、キャプスタンローラ12を反時計回りに回転駆動させることによって搬送され、排紙される。なお、排紙に際しては、ロール紙41の印画部分がカッター(図示せず)によって切断される。
【0032】
図1〜図3に示すサーマルプリンタ1は、このようにしてロール紙41に印画を行うので、高品位な印画画像を得るためには、サーマルヘッド10が清浄な状態に保持されていなければならない。しかしながら、印画が繰り返されると、付着物がサーマルヘッド上に堆積し、印画品位が低下する原因になる。
そこで、本実施形態のサーマルプリンタ1は、インクカセット30に代えて、クリーニングカセットを装着することにより、付着物等の異物をサーマルヘッド10から除去するようにしている。
【0033】
図4は、本実施形態のサーマルプリンタ1に装着可能なクリーニングカセット20を示す斜視図である。
図4に示すクリーニングカセット20は、図2に示すインクカセット30と略同一の筺体であるカセット本体部25を有している。そして、カセット本体部25には、クリーニングリボン21が収容されている。また、カセット本体部25には、クリーニングリボン21の使用程度(本実施形態では、クリーニングリボン21の残量)を記憶する記憶手段24が取り付けられている。
【0034】
クリーニングリボン21は、サーマルヘッド10(図3参照)を摺擦してクリーニングするもので、ポリエステルフィルムに超微粒子研磨材を均一にコーティングしたものである。そして、図2に示すインクカセット30の供給リール32と略同一の供給リール22に巻き回されており、インクカセット30の巻取りリール33と略同一の巻取りリール23により、クリーニングごとに巻き取られるようになっている。
【0035】
このように、クリーニングカセット20のカセット本体部25、供給リール22、及び巻取りリール23は、図2に示すインクカセット30と同様のものとなっている。そのため、インクカセット30と同様にして、サーマルプリンタ1に装着することができる。すなわち、リール駆動手段14a及びリール駆動手段14bにより、インクリボン31と同様に、クリーニングリボン21を巻き出したり巻き戻したりすることができる。
次に、クリーニングカセット20を使用したサーマルヘッド10のクリーニングについて説明する。
【0036】
図5は、本実施形態のサーマルプリンタ1におけるサーマルヘッド10のクリーニング方法を示す概念図である。
サーマルヘッド10をクリーニングするには、図2に示すインクカセット30に代えて、単に図4に示すクリーニングカセット20をサーマルプリンタ1に装着すれば良い。
【0037】
そして、図5に示すように、供給リール22に巻き回されたクリーニングリボン21を巻取りリール23で巻き取ると、クリーニングリボン21にコーティングされた超微粒子研磨材がサーマルヘッド10の表面を摺擦し、サーマルヘッド10に傷を付けることなく確実に、サーマルヘッド10上に堆積した付着物を除去することができる。なお、クリーニング時においては、サーマルヘッド10が上昇しており、サーマルヘッド10は、ロール紙41及びプラテン11から少し離れて位置している。
【0038】
ここで、サーマルプリンタ1の内部には、記憶手段24に記憶されたクリーニングリボン21の残量を読み取る読取り手段15が取り付けられている。そして、サーマルプリンタ1は、クリーニングリボン21が全長にわたって均一に消費されるように、クリーニングリボン21の今回の使用部分が前回の使用済み部分と一部重複するようにして、今回のクリーニングリボン21の開始位置を決定し、かつクリーニングリボン21の開始位置(重複量)がクリーニングごとにランダムに変更されるように、供給リール22及び巻取りリール23を回転させる。
【0039】
このように、本実施形態のサーマルプリンタ1では、今回のクリーニングリボン21の開始位置を決定した後にクリーニングリボン21を所定量消費することにより、前回の使用済み部分との完全な重複が避けられるとともに、高価で短いクリーニングリボン21を有効に活用することができるようになっている。
【0040】
図6は、本実施形態のサーマルプリンタ1のクリーニング動作を示すフローチャートである。
クリーニング動作では、サーマルプリンタ1にクリーニングカセット20(図4参照)を装着し、サーマルプリンタ1にクリーニング指令を出すことにより、スタートとなる。
【0041】
クリーニング動作の最初のステップS1では、図5に示す読取り手段15により、記憶手段24に記憶されたクリーニングリボン21の残量を読み取る。したがって、前回のクリーニングまでに、クリーニングリボン21がどの程度使用(消費)されているかがわかる。そして、読取り手段15によって読み取ったクリーニングリボン21の使用程度(残量)に基づいて、リール制御手段が図2に示すリール駆動手段14bを駆動制御する。
【0042】
すなわち、ステップS2においてリール駆動手段14b(図2参照)を駆動し、巻取りリール23(図5参照)を回転させて、クリーニングリボン21を巻き取る。そして、ステップS3及びステップS4で、タイムアウト5秒でクリーニングリボン21の巻取りが開始されたこと(クリーニングリボン21の回転の有無)を確認する。またその後、ステップS5においてもクリーニングリボン21を巻き取り、ステップS6及びステップ7で、タイムアウト5秒(クリーニングリボン21の巻取りが開始されてからのタイムアウトは10秒)でクリーニングリボン21の停止の有無を確認し、ステップS8でクリーニングリボン21の巻取りを停止する。すると、この停止位置が前回のクリーニングの終了位置付近になる。
【0043】
ステップS8までで前回のクリーニングの終了位置付近に到達したら、ステップS1で読み取ったクリーニングリボン21の残量に基づいて、ステップS9でクリーニングリボン21の巻戻し時間を計算する。巻戻し時間の計算に際して、本実施形態では、クリーニングリボン21を所定の距離(時間)だけ巻き戻すための固定値を800msに設定しており、この固定値(800ms)にランダムな値(0ms〜1000ms)を加算している。そのため、ステップS9で計算されたクリーニングリボン21の巻戻し時間は、800ms〜1800msの間の範囲のランダムな値になる。
【0044】
次のステップS10では、ステップS9で計算されたクリーニングリボン21の巻戻し時間(800ms〜1800ms)だけリール駆動手段14a(図2参照)を駆動し、供給リール22(図5参照)を回転させて、クリーニングリボン21を巻き戻す。このステップS10による巻戻しが終了した位置、すなわち、今回のクリーニングの開始位置は、クリーニングリボン21の前回の使用済み部分の範囲内であり、かつクリーニングリボン21の今回の使用開始位置と前回の使用開始位置とが一致しない位置となっている。また、ステップS9のクリーニングリボン21の巻戻し時間の計算で、ランダムな値が加算されていることから、クリーニングリボン21の巻戻し量がランダムに決定されている。そのため、クリーニングリボン21の今回の使用範囲が前回の使用済み範囲と一部重複しつつ、その重複量が毎回ランダムに変更されることとなる。
【0045】
そして、ステップS11においてクリーニング動作を行う。すなわち、ステップS10によって決定された今回のクリーニングの開始位置からリール駆動手段14b(図2参照)を駆動し、巻取りリール23(図5参照)を回転させて、クリーニングリボン21を所定量だけ巻き取る。すると、クリーニングリボン21にコーティングされた超微粒子研磨材がサーマルヘッド10(図5参照)の表面を所定量だけ摺擦し、サーマルヘッド10上に堆積した付着物を除去する。
【0046】
このようにしてサーマルヘッド10(図5参照)のクリーニングを終了したら、最後のステップS12においてクリーニングリボン21の残量を記憶手段24(図5参照)に記憶させ、一連のクリーニング動作を終了させる。そして、サーマルプリンタ1からクリーニングカセット20(図4参照)を取り出し、図2に示すように、インクカセット30を装着すれば、クリーニングされたサーマルヘッド10による印画が可能となるので、高品位な印画を維持することができる。
【0047】
図7は、本実施形態のサーマルプリンタ1によるクリーニングリボン21の消費状態を示す模式図である。
図7に示すように、クリーニングリボン21は、クリーニングリボン21の使用範囲1と、使用範囲11と、使用範囲21とが一部重複している。そして、使用範囲2でも、使用範囲12と一部重複し、同様に、使用範囲3〜使用範囲10も重複するようになっている。
【0048】
したがって、本実施形態のサーマルプリンタ1によれば、クリーニングリボン21が全長にわたって均一に消費されることとなる。そのため、クリーニングリボン21の消費状態のムラが低減され、高価で短いクリーニングリボン21であっても、その有効活用によって十分なクリーニング回数とクリーニング効果を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態のサーマルプリンタを示す斜視図である。
【図2】図1に示す本実施形態のサーマルプリンタのドア部を開けた状態を示す斜視図であり、インクカセットを取り出して図示したものである。
【図3】図1に示す本実施形態のサーマルプリンタの内部を示す側面図である。
【図4】本実施形態のサーマルプリンタに装着可能なクリーニングカセットを示す斜視図である。
【図5】本実施形態のサーマルプリンタにおけるサーマルヘッドのクリーニング方法を示す概念図である。
【図6】本実施形態のサーマルプリンタのクリーニング動作を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態のサーマルプリンタによるクリーニングリボンの消費状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0050】
1 サーマルプリンタ
10 サーマルヘッド
11 プラテン
14a,14b リール駆動手段
15 読取り手段
20 クリーニングカセット
21 クリーニングリボン
22 供給リール
23 巻取りリール
24 記憶手段
25 カセット本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンと、前記プラテンに対向するように設けられたサーマルヘッドとを備えるサーマルプリンタに装着可能なクリーニングカセットであって、
前記サーマルヘッドを摺擦可能なクリーニングリボンと、
前記クリーニングリボンが巻き回された供給リールと、
前記供給リールから巻き出された前記クリーニングリボンを巻き取る巻取りリールと、
前記クリーニングリボンの使用程度を記憶する記憶手段と、
前記クリーニングリボン、前記供給リール、前記巻取りリール、及び前記記憶手段を収容するカセット本体部と
を備えることを特徴とするクリーニングカセット。
【請求項2】
プラテンと、前記プラテンに対向するように設けられたサーマルヘッドとを備えるサーマルプリンタであって、
前記サーマルヘッドを摺擦可能なクリーニングリボンと、
前記クリーニングリボンが巻き回された供給リールと、
前記供給リールから巻き出された前記クリーニングリボンを巻き取る巻取りリールと、
前記クリーニングリボンの使用程度を記憶する記憶手段と、
前記クリーニングリボン、前記供給リール、前記巻取りリール、及び前記記憶手段を収容するカセット本体部と
を備えるクリーニングカセットが装着可能であり、
装着された前記クリーニングカセットの前記供給リール及び前記巻取りリールを回転駆動させるリール駆動手段と、
装着された前記クリーニングカセットの前記記憶手段に記憶された前記クリーニングリボンの使用程度を読み取る読取り手段と、
前記読取り手段によって読み取った前記クリーニングリボンの使用程度に基づいて、前記リール駆動手段を制御するリール制御手段と
を備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項3】
請求項2に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記リール制御手段は、前記クリーニングリボンの今回の使用範囲が前回の使用済み範囲と一部重複するように、前記クリーニングリボンを巻き取り又は巻き戻す
ことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記リール制御手段は、前記クリーニングリボンの今回の使用範囲と前回の使用済み範囲との重複量を毎回ランダムに変更する
ことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項5】
請求項3に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記リール制御手段は、前記クリーニングリボンの今回の使用開始位置と前回の使用開始位置とが一致しないように使用開始位置を毎回ランダムに変更する
ことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項6】
プラテンと、前記プラテンに対向するように設けられたサーマルヘッドとを備えるサーマルプリンタのクリーニング方法であって、
クリーニングリボンを前記サーマルヘッドに摺擦させて前記サーマルヘッドのクリーニングを行うとともに、前記クリーニングリボンの使用程度を記憶し、
記憶された前回の前記クリーニングリボンの使用程度に基づいて、今回の前記クリーニングリボンの使用程度を決定し、前記サーマルヘッドのクリーニングを行う
ことを特徴とするクリーニング方法。
【請求項7】
請求項6に記載のクリーニング方法において、
前記クリーニングリボンの今回の使用範囲と前回の使用済み範囲とが一部重複するようにする
ことを特徴とするクリーニング方法。
【請求項8】
請求項7に記載のクリーニング方法において、
前記クリーニングリボンの今回の使用範囲と前回の使用済み範囲との重複量を毎回ランダムに変更する
ことを特徴とするクリーニング方法。
【請求項9】
請求項7に記載のクリーニング方法において、
前記クリーニングリボンの今回の使用開始位置と前回の使用開始位置とが一致しないように使用開始位置を毎回ランダムに変更する
ことを特徴とするクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−160817(P2007−160817A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362700(P2005−362700)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】