説明

クルクミノイド及びこれらの類似体の治療有効性を改善するための方法

本発明は、クルクミノイド及び類似体の治療有効性を増加するための方法に関連する。より詳細には、本発明はクルクミノイド及びそれらの治療上等価物を含む全身投与される製剤の治療有効性を増加するための方法に関連する。前記方法は、患者は前記製剤の投与と一緒に可視線-紫外線照射されることを特徴とする。本発明はまた、0.2m2以上の表面積上に可視線及び2mW/cm2以上の放射量を照射する、増殖性疾患の、特に中等度〜重度の乾癬または腫瘍の過程の治療における使用に適当な光線療法装置に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤が全身に投与される場合に、クルクミノイド及びこれらの類似体を含んでなる製剤の治療有効性を改善するための方法を記載する。この方法は、製剤の投与と同時に定量化可能な可視線−紫外線放射線が患者にされることを特徴とする。
本発明はまた、2mW/cm2以上の照射量で0.20m2以上の表面に可視光線を放射するための光線療法装置、並びに皮膚疾患及び/または増殖性疾患におけるその使用を記載する。
【背景技術】
【0002】
クルクミン及びその治療上の類似体: ウコン根茎、抽出物、クルクミノイド(デスメトキシクルクミン、ビスデスメトキシクルクミン、テトラヒドロクルクミン)、プロドラッグ及び代謝産物は、抗酸化特性及び抗増殖性、アポトーシス誘動等の様々な薬理活性を示すことが証明されている。インビトロ(in vitro)における結果に基づき、クルクミンは、現在の技術において記載される、乾癬、癌、炎症の過程、白斑症等の病状の治療のための薬剤として作用する可能性を示す。
【0003】
しかしながら、クルクミン及びこの等価物は、非常に低い生体利用効率を示す。2004年3月8日のBr J Cancer.90(5)巻1011〜5ページには、投与後、追跡レベルのその代謝産物のみが肝組織で発見され、そしてクルクミンは発見されなかった、と記載される。従って、クルクミノイドはインビボ(in vivo)で有効性が欠乏し、或いはインビトロで示されるものと比較して有効性は非常に減少する。2008年4月のJ Am Acad Dermatol.58(4)巻625〜31ページには、(優先日後に公表された)この発見が実証されている。この文書では、1日に4.5gのクルクミノイドが投与された18才以上の患者における第II相の非対照試験は、たった17%の患者でしか75%の乾癬プラーク減少という形で治療に対して反応がみられなかったので断念しなければならなかった、と報告される。
【0004】
(優先日後に公開の)2008年8月19日のAmand等のBiochem Pharmacol.の「印刷物に先駆けたオンライン出版」で挙げられるように、当業者は、インビボでのクルクミン製剤の有効性を改善するための解決法を探すこと、及び「スーパークルクミン」を発見することに意欲的となり、そして意欲的となっている。発見された解決法は、例えば、クルクミンの吸収を改善するための構造の変更(ヨーロッパ特許第1837030号)、新規の方鉛鉱製剤(国際公開第2008/030308号)及び他の活性成分との組み合わせにおける高用量の投与(米国特許第5925376号、国際公開第03088986号)であった。
【0005】
光線療法は、増殖性の及び/または皮膚の病状(乾癬、癌)、ざ瘡並びに黄疸等の様々な疾患の治療の有用な手段である。光線療法の活性は照射によって誘起される構造の変化に基づく。
光線療法は、新生児での黄疸の治療のために使用される。0.20m2の体表面積を有する新生児は、ビリルビンを分解するために、可視光線で照射され、好ましくは550nmに最大放射を有するものであって、そして40W/m2近くの照射量で照射される。
【0006】
化学光(420nmに最大放射を有するもの)は、その殺菌特性に基づきざ瘡の治療のために使用される。これらのランプによって照射される表面積は、400cm2以下である。
光化学療法、同時のプソラレン投与及び紫外線による放射は、中等度から重度の乾癬に対する最適な治療であるが、この治療は多くの副作用: 高色素沈着、肝毒性、過敏反応を有し、そして放射線量は慎重に調整しなければならない。
【0007】
青色光との組み合わせにおけるアミノレブリン酸は、日光性角化症の治療で効果的であることが証明されている。このように、J Invest Dermatol.の2002年7月の119(1)巻77〜83ページに乾癬の治療のための1〜20J/cm2の可視光線(417nmにLED最大放射を有するもの)と組み合わされるその全身(経口)投与が記載されるが、その有効性は限度がありそしてかかる治療は中等度から重度の乾癬では使用することができない。得られた結果から、1.5×1.5cmの15個のプラーク(34cm2)で、基準値と比較してプラークの重症度が42%だけ改善されたことが示された。
【0008】
インビトロでの試験及び局所投与では、照射によってインサイチュ(in situ)で産生される光ラジカルまたは人工産物は不安定であり、そしてそれらは薬理活性に関与する。全身経路によって投与された感光剤の投与後の光増感は、即座に生じさせることはできず; この薬剤はまず代謝されなければならず、そして後に、光活性化されなければならない。要約すれば、光線療法の有効性は経験的に予測することができない、というのもそれは投与された薬剤の生体利用効率及び照射の間に形成される人工産物の薬理活性次第だからである。
【0009】
クルクミンの特殊な例において、現在の技術水準ではそれが非常に低い生体利用効率を有することが示されており、さらに溶液状態及び固体状態どちらでもクルクミノイドが可視線−紫外線によって分解されることが知られる。主要な分解産物は、2つの水素原子の損失によりクルクミンが環化したものである。
【0010】
乾癬は慢性疾患であり、その病因論は十分には理解されていない。臨床的には、乾癬は、存在するパッチ(patches)またはエリテマトーデスの暗赤色の区切られた境界を有するプラーク(plaques)を特徴とし、さらに多くの場合遺伝機構及び免疫機構を特徴とする細胞増殖における変化に起因する鱗屑で覆われる。したがって、乾癬は増殖性疾患として考えることができる。
【0011】
乾癬の重症度は、PASI(Psoriasis Area Severity Index、乾癬面積重症度指標)指標、BSA(Body Surface Area、体表面積)及びPGA(Physician Global Assessment、医師による包括的な評価)によって測定される。PGAに従って、乾癬を:
-軽度から中等度の乾癬: 病斑は局所治療で抑制される; BSA<10%, PASI<10、
-中等度の乾癬: 局所治療でこの疾患を抑制することはまだ可能である; BSA>10%、PASI 10 またはそれ以上、
-中等度から重度の乾癬: 局所治療ではこの疾患を抑制できない; BSA>10%、PASI 10〜20; 治療が困難な部位に非常に大きな病斑、
-重度の乾癬: この疾患を抑制するために全身の治療が必要; BSA>20%、またはPASI>20; BSA>10%である局所性の非常に大きな病斑
に分類することができる。
【0012】
現在、乾癬の治療におけるインビボでの医薬の有効性を評価するための動物モデルはいない。薬剤の有効性は、腫瘍増殖、例えば、A431細胞株(表皮癌の細胞)の細胞増殖の抑制を実験することによって、乾癬を患う人でまたは動物モデルで試験されなければならない。
PASIは乾癬の重症度を評価するための客観的指標であるが、薬剤の治療有効性を評価するために使用される。EMEAのガイドライン基準には、PASIの減少が少なくとも基準値の75%である場合に患者をレスポンダーとみなす、と規定されている。
【0013】
エファリズマブは、乾癬の治療用に近年許可されたものであり、有効性を有する。12週の実験で、22〜35%の患者がPASI-75のスコア(75%の改善)に到達した。
アミノレブリン酸及び可視光線による光化学療法は、基準値と比較して42%の乾癬プラークの改善を示しただけである。EMEAのガイドラインによると、特に中等度から重度の治療及び重度の乾癬において治療は有効性に欠ける。
【0014】
乾癬の患者は病斑を隠し、そしてしばしば局所治療を断念する傾向がある、というのもこれらは衣服を着色するからである。欧州乾癬連合(European Federation of Psoriasis Associations)によって実施された世論調査によると、当該疾患のこのような治療の有効性に関心を示している乾癬患者では不満が高く、そして彼らは治療を中断する。
欧州特許第1133992号には、乾癬の治療のために、局所に塗布される抽出物の形態で投与されたクルクミノイドに対する、可視光線−UVの光感作性活性が記載されている。欧州特許第1133992号に記載されるクリームは照射前に塗布されなければならないが、ウコン抽出物は有色でありそして衣服に着色するため、患者によってこの治療は断念される。体表面積の10%以上に関与する中等度から重度の乾癬は、局所経路では治療することができない、というのもこれらの患者は局所経路を用いて投与される治療に反応しないからである。
【0015】
局所投与経路による光線療法で得られる結果は、アミノレブリン酸に関して記載したように、全身投与へ外挿することはできない。
現在使用されているその他の光線療法のタイプは、光線力学的治療である。薬剤が投与され、そして患者は約300mW/cm2の高照射量を有するパルス光で照射される。この光は、100J/cm2照射しながら、短期間に狭い表面に投与されるが、この方法は患者に対して痛みを生じる。
【0016】
本発明とほぼ同等の光線療法装置は:
-患者の体表面積全体に渡って2〜30mW/cm2の紫外線の照射量を放射するが、可視光線を放射することがないUV-キャビン、
-約500cm2の、しかしながら常に成人の体表面積の10%未満である、小さな表面積を照射する可視光線を放射する装置、
-400〜550nmの放射範囲を有し、そしてUV-キャビンへ取り付けることができるガス放電ランプであり、例えば、フィリップス社(Phillips)製のTLK 40 W/03またはTLK 140 W/03であるが、しかしながらこれらのランプは写真の現像及び水槽の照明に使用されるランプ、
である。
【0017】
選択的に一定の波長を吸収しそして400〜430nmの放射線を透過するためのフィルターもまた存在する。
可視光線による光線療法において有効性が示された薬剤が現在までないので、当業者は0.2m2以上の表面に2mW/cm2以上の照射量を有する可視光線を放射する光線療法装置を製造するために、上述の装置の技術的特徴を組み合わせることはないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的
本発明により解決される課題は、クルクミノイド及びこれらの治療上の等価物の治療有効性を、これらが全身経路によって投与される場合に改善することである。
本発明によって発見された解決法は、クルクミノイドの全身投与を、定量化できる可視光線−紫外線の照射と組み合わせることである。
本発明者によって発見された解決法を使用することで、1〜18J/cm2の紫外線かまたは可視光線の光照射の後に、PASIの減少が75%以上でありそしてこれは80%以上の可能性を有する患者の少なくとも80%で達成され、この結果EMEAの有効性基準を満たす。
【0019】
J Am Acad Dermatol.の2008年4月の;58(4)巻:625〜31ページには、乾癬の治療で4.5g/日の用量で投与されるクルクミノイドは有効性に欠けると報告するものであるが、これと対照的に、紫外線かまたは可視光線とのクルクミノイドの組み合わせは効果的であり、そして全患者はPASIの75%の減少を達成し、そして治療を断念した患者はいなかった。試験の途中で、4週目に(8回の光線療法セッションの後)、50%の患者が基準値の75%以上のPASIの減少を達成した。試験の途中で、治療の12週後にエファリズマブによる治療より有効性は高くそして副作用はなかった。
【0020】
乾癬の治療の好適な実施形態において、クルクミンと治療上の等価物は、ウコン抽出物(12%のクルクミノイド濃度を有するヒドロアルコール抽出物または90%のクルクミノイド濃度を有するアルコール抽出物)である。
他の好適な実施形態において、マウスでは腫瘍増殖を抑制するために可視光線と組み合わされてクルクミンが非経口(腹腔内)投与されるが、クルクミン単独或いは光線単独では腫瘍増殖を抑制しなかった。
【0021】
可視光及び/又は紫外線光のクルクミノイドとの組み合わせは、相乗効果をもたらし、そしてクルクミンが潜在活性を有していたかもしれないあらゆる病状の治療に使用されるかもしれない。しかしながら、全身でのクルクミノイドまたはこの等価物の使用が薬剤のメインの食事との投与、及び照射2時間前でない投与を可能にする限りでは、可視光線が好ましい。
【0022】
可視光線−紫外線の照射と同時の経口経路によるクルクミン、クルクミノイド、これらの代謝産物またはこれらのプロドラッグの投与は、光化学療法に通常関連する問題を回避する。照射と一緒に、クルクミンまたはその類似体の全身投与によって:
-クルクミンの治療有効性はインビボで改善され、そして認可された治療よりも高い有効性が達成され、
-可視光線が使用される場合には、投与されるクルクミノイド用量を調整する必要も、供給する照射を調整する必要もなく、
-患者の衣服に着色せず、
-患者の情動状態を改善し、そして治療患者の人間関係が改善され、
-可視光線及び紫外線を組み合わせると、患者は高色素沈着なく均一に日焼けし、
-副作用が報告されていないため、小児患者を治療することが可能であり、
-光線療法の後に、患者は光から遮断される必要がなく、
-アミノ基転移酵素が正常化され、そして放射線との組み合わせにおける生成物は肝毒性がなく、
-照射後、コルチコイド及び抗ヒスタミンの使用は必要なく、或いは少なくとも軽減され、
-治療のコンプライアンスは改善され、そして患者は自身の治療を断念せず、
-照射線量は光線療法セッションあたり増加されず、光線療法セッションの回数が減少しそして乾癬の病斑をブリーチする(bleaching)ために必要な時間が減少され、
-可視光線を使用する場合には、同様の治療有効性を有しながら紫外線の蓄積によって生じる副作用が回避される。
【0023】
他の態様では、本発明によって解決される課題は、増殖性疾患の治療、特に中等度から重度の或いは重度の乾癬の治療のための光線療法装置を発見することである。本発明によって発見される解決法は、可視光線を0.2m2以上の表面積上にそして2mW/cm2以上の照射量で照射することを特徴とする光線療法システムである。好ましいモードでは、最大波長は420nmであり、そして光源はLEDsであり、そして装置は良好な色素沈着及び健康的な日焼けを促進するために任意に紫外線光源を有することができる。
クルクミンの全身投与またはその治療上の等価物とのこの光線療法システムの使用は、現在使用されるUV-キャビン以上の高い有効性を有する。
【0024】
発明の詳細な説明
クルクミン、アルコール性ウコン抽出物(90%のクルクミノイド)またはヒドロアルコール性ウコン抽出物(12%のクルクミノイド)の形態でのクルクミノイドは、可視光線−紫外線の照射(315〜550nm)との組み合わせで全身投与される場合にインビボでのそれら自体の治療有効性が増加する。
【0025】
また、現在の技術水準において記載されるクルクミノイドの他の治療上の等価物または類似体、例えばAnand等のBiochem Pharmacol.の2008年8月19日の「印刷物に先駆けたオンライン出版」に記載されるもの、ウコン根茎または照射作用によって環化されたクルクミンは、可視線−紫外線と同時に投与される場合にそれら自体のインビボでの有効性が増加する。
【0026】
クルクミノイドの経口投与の後に、可視光線/クルクミノイドの組み合わせは紫外線との組み合わせと同様に中等度から重度の乾癬で同様の有効性を示す。
マウスモデルでは、腹腔内のクルクミンと組み合わされるマウスに照射された可視光線は、ヒト表皮癌細胞(A431)の増殖の70%の抑制を生じた。可視光線−紫外線及び体系的に投与されるクルクミノイドの組み合わせは、例えば、表皮、食道、十二指腸、結腸、胸部、肝臓、腎臓または前立腺のいずれの腫瘍型の治療にとっても効果的となり得る。可視光線を使用する場合には、副作用が存在しないので、あらゆる照射量及びあらゆるタイプの光線、例えば、非干渉性の、偏向した、パルス状の、或いはレーザーの光線を使用することができる。好ましいモードでは、1〜18J/cm2を照射するために2〜300mW/cm2の照射量を、より好ましくは2〜30mW/cm2の照射量を使用することができる。
【0027】
クルクミノイド/可視光線−紫外線の組み合わせは、現在の技術水準において記載されるものよりも低用量で、例えば乾癬において1mg/kg/日の経口投与でまたはマウスモデルの腫瘍の抑制において50mg/kg/日の腹腔内投与で治療上効果的である。
白斑症の実験で、クルクミノイド/紫外線の組み合わせは、治療を受ける患者で火傷を生じることなく色素沈着を生じた。紫外線を加えたクルクミノイド/可視光線の組み合わせは、クルクミノイド/可視光線で治療を受ける全ての患者で均一の色素沈着が可能であろう。
このように、全身投与用に許容される賦形剤及び任意に他の有効成分と一緒に、少なくともクルクミノイドまたは類似体を含んでなる製剤を、開発することができる。
【0028】
一旦可視光線と同時に投与される場合にそれ自体の有効性を増加することができる薬剤が発見されたので、当業者は0.20m2以上の表面上に2mW/cm2以上の照射量によって可視波長(400〜550nm)を放射する手段を具備するあらゆる光線療法システムを開発することができる。使用することができる光源は、例えば、ガス放電灯、LEDs、偏向した光線、少なくともビームまたはフィルター処理した(filtered)太陽放射線を含む。
【0029】
ガス放電灯の中で、フィリップス社製のTLK 40W/03及びTLK 140W/03は420nmにおいて最大を有し400〜550nmの範囲で放射する。それらの寸法は、それぞれ60×4cm及び140×4cmである。45cmの距離で、10個のフィリップス社製のTLK 40W/03ランプは5500 lxを放射し、これは3mW/cm2の照射量である。論理的に、光源及び照射表面間の距離が短縮されれば、照射量は増加されるであろう。20分間の放射で3mW/cm2の照射量を有する光源は、3×20×60/1000J/cm2=3.6 J/cm2の線量を供するであろう。このようなランプは、紫外線放出チューブを使用する最新の光線療法キャビンへ問題なく接続することができる。
【0030】
LED技術の開発により大きな発光効率及び非常に狭い波長発光(+ 5nm)を有する放射線を得ることができ、そして光線療法で使用することができる。J Invest Dermatol.の2002年7月の;119(1)巻:77〜83ページでは、9〜11mW/cm2の照射量で30cm2の表面上を照射するためにLEDパネルが使用されたが、光源及び乾癬プラークとの距離は明記されていない。光源及び照射された表面の間の距離が短縮されれば、すると照射量は大きくなるであろうが、しかしながら照射表面積は小さくなるであろう。5cmの距離で照射すると、現在商品化されているLEDsで30mW/cm2の照射量を達成することが可能である。
【0031】
同様に、LEDsのパネル数の増加は照射される表面を増加する。J Invest Dermatol.の2002年7月の;119(1)巻:77〜83ページに記載されるものと同様に、12×25cmの60個のパネルは、中等度から重度の乾癬を治療するために成人の体の表面全体を5cmの距離で30mW/cm2の照射量で照射するであろう。
放射線における少しのスペクトル変化または入射角は放射定量を修正するであろう、ということを留意すべきである。
【実施例】
【0032】
I.中等度から重度の乾癬における、紫外線との組み合わせによる経口投与されたウコン(Curcuma longa)のヒドロアルコール抽出物の効果
パイロット臨床試験は、シクロスポリン、プソラレン/UVAまたはコルチコイド等の他の治療が以前に失敗した、中等度から重度のプラークを有する慢性の乾癬と診断された患者の治療用に設計した。この実験のパラメータは:
-患者の数: 22
-試験期間: 8週//16回の紫外線照射セッション
-処方: 12%のクルクミノイド濃度を有するヒドロアルコール性ウコン(Curcuma longa)抽出物の形態での24mgのクルクミノイド。製剤で使用される賦形剤は: セルロース、ステアリン酸マグネシウム、コーンスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カリウム及び二酸化ケイ素、であった。水中に分散された1つの錠剤(5% w/v)のpHは5であった。
【0033】
ウコン抽出物は、以下の方法に従って得られた: エタノールでのウコン(Curcuma longa)の根茎の抽出、溶媒の蒸発及びクルクミンとして表わされるクルクミノイドの含有量の定量化;前段階の根茎の水による抽出及び溶媒の蒸発; 生じた抽出物を混合し、そして抽出物を10〜15%のクルクミノイド濃度で得た。
-投与計画: メインの食事前に3錠/日(72mgのクルクミノイド/日)。
-照射光源: 32個のフィリップス社製のランプUVA 100 W (315〜400nm 最大 365nm)を有するPUVA COMBI LOGHTキャビン。
-照射される表面: 生殖器を除いて裸体表面全体、約2m2
-線量: 1週間あたり2回の光線療法セッションを実施。初期線量は2.5J/cm2であった。非常に小さな紅斑に達するまで線量を0.5〜1J/cm2ずつ増加し、そして後に16J/cm2に到達するまで1セッションあたり2J/cm2ずつ増加した。16J/cm2に到達するまでの照射時間は、約30分であった。
-救急薬:
-皮膚の症状軽減のためにビタミンB3を含有するエモリエント剤。
-痒みが生じた場合用に、デスロラタジン。
患者のフォトタイプは、I、II、III、IVであった。平均体重は70kgであった。
PASIの減少を、V1〜V16(1週間に2度の来診)の異なる来診に関する以下の表で詳述する。90%以上のPASIの減少を達成した患者は、この実験を去った。
【0034】
【表1】

【0035】
例えば、患者1、2、3及び9に照射された線量は、:
【0036】
【表2】

であった。
【0037】
22人の患者が16J/cm2の照射に到達し、そして蓄積線量はほぼ170〜180J/cm2程度であった。
治療を断念した患者はおらず、そして照射は重度の光毒性反応なく十分に耐容された。唯一1人の患者が5mgのデスロラタジン錠剤を受け取った。
【0038】
7回目の光線療法セッションの後に、患者はシミまたは高色素沈着なく健康的な日焼けを示した。いずれの患者においても高色素沈着は現れなかった。
肝臓のパラメータは正常範囲であり、そして肝毒性は確認されなかった。レッドシリーズ(red series)の増加が観察された。
試験の最後に、患者は治療に満足し、そして自身の自尊心及び人間関係が改善された、とコメントした。
【0039】
結果は、可視線−紫外線に対する日光のフィルターとしてのクルクミン、クルクミノイド、代謝産物またはそれらのプロドラッグの潜在的な用途を示す。このように、フォトタイプIII及びIVの患者では高色素沈着は生成されず、そして色白の患者で紅斑及びシミが回避された。
試験の途中の、4週目そしてたった8回の光線療法セッションの後に、50%の患者が75%以上のPASIの減少に到達した。試験の途中の有効性は、12週のエファリズマブのものと同様でありそして副作用はなかった。
全ての患者は80%のPASIの減少に到達した。
【0040】
II.中等度から重度の乾癬にける、可視光線と組み合わされ経口投与されるウコン(Curcuma longa)のヒドロアルコール抽出物の効果
パラメータは:
-患者の数: 10
-試験期間: 8週//可視光線での16回の光線療法セッション
-投与: 12%のクルクミノイド濃度を有するヒドロアルコール性ウコン(Curcuma longa)抽出物の形態での24mgのクルクミノイド。製剤で使用される賦形剤は: セルロース、ステアリン酸マグネシウム、コーンスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カリウム及び二酸化ケイ素であった。水に分散された1つの錠剤(5% w/v)のpHは5であった。ウコン抽出物は上述の試験のように得られた。
【0041】
-投与計画: メインの食事前に3錠/日(72mgのクルクミノイド/日)。
-照射光源: 5500lxの可視光線100×40W、400〜550nm、最大放射420nmを供する、フィリップス社製のTLK 40W/03ランプ
-照射される表面: 裸体表面上に100×60×4cm=2.4m2
-線量: 1週間あたり2回の光線療法セッション。照射された線量は、18J/cm2、照射時間は1時間40分。
-救急薬:
-皮膚の症状軽減のためにビタミンB3を含有するエモリエント剤。
-痒みが生じた場合用に、デスロラタジン。
試験されている患者のフォトタイプは、皮膚タイプII及びIIIであった。平均体重は70kgであった。
【0042】
PASIの減少を、V1〜V16(1週間に2度の来診)の異なる来診に関する以下の表に詳述する。90%以上のPASIの減少を達成した患者は、この実験を去った。
【0043】
【表3】

【0044】
得られた結果は、紫外線による場合と同様に、可視光線で同様の有効性が達成されたことを示す。治療8週より前に、全ての患者は80%以上のPASIの減少を示した。
治療は十分に耐容され、そして抗ヒスタミン及びコルチコイドは投与されなかった。
【0045】
III. 中等度から重度の乾癬における、可視光線と組み合わされ経口投与されるウコン(Curcuma longa)のアルコール抽出物の効果
臨床試験は、平均年齢48歳、平均体重68kgを有する、中等度から重度の乾癬と診断された4人の患者に実施した。
診断基準は、30〜35cm2の表面積を有する背または殿筋上の乾癬プラークに関するPASIであった。
【0046】
照射はLEDランプで実行し、最大放射は420nmであった。40cm2の表面上へ30mW/cm2の照射量で行われ、照射距離は5cmであった。
含まれる患者に心電図及び分析決定を実行するためのスクリーニング来診の後に、30〜35cm2の間の表面積を有する最も重要なプラークを各患者に対して選択した。
【0047】
患者は、90%のクルクミノイドを有するアルコール抽出物として、280mgのクルクミノイドを含有する1カプセル/日を受け取った。ウコン抽出物の治療の開始の1週間後に、選択したプラークに照射し、そして1週間あたり2回の光線療法セッションにより照射を継続した。初期照射線量は2J/cm2であり、そして徐々に16J/cm2まで増加させた。
4人の患者は、8週後照射されたプラークに関して基準値の90%以上のPASIの減少に到達した。
【0048】
IV. 白斑症における、紫外線と組み合わされ経口投与されるウコン(Curcuma longa)のヒドロアルコール抽出物の効果
白斑症と診断された6人の患者は、ウコンのヒドロアルコール抽出物を3錠/日(72mgクルクミノイド/1日)及びUV-キャビン(315〜400nm、最大365nm)における照射で治療した。初期線量は1J/cm2であり、そして2J/cm2ずつ7J/cm2まで増加させた。最後の照射セッションは8J/cm2であった。
【0049】
-患者1. 大きな顔面のパッチを有する全身性白斑症。8回の光線療法セッション。火傷または紅斑なく急速な日焼けが達成された。
-患者2. 手、あご及び脚にパッチを有する白斑症。手に12J/cm2の8回の光線療法セッション。色素沈着病巣(foci)が白斑症のパッチの端に現れた。
-患者3. 線維筋痛及び甲状腺疾患に関連する、広範囲に及ぶ白斑症。8回の光線療法セッション。良好な日焼け。再色素沈着過程が首で観察された。
- 患者4. 広範囲に及ぶ白斑症。8回の光線療法セッション。甲状腺機能低下。火傷なく日焼けが急増。色素沈着が腹部に現れた。
- 患者5. 大きな顔面のパッチを有する広範囲に及ぶ白斑症。8回の光線療法セッション。火傷なく良好な日焼け。顔面及び首の色素沈着の出現。
- 患者6. 大きな顔面のパッチを有する広範囲に及ぶ白斑症。8回の光線療法セッション。良好な日焼け。関節上の白斑。肘上の色素沈着の存在。
【0050】
V. マウスにおける腫瘍増殖の抑制に関する、腹腔内投与によるクルクミンの効果
5×106のA431細胞(ヒト表皮癌)を胸腺欠損ヌードマウス(NMRI)(5〜6週齢、20〜24g)の左及び右の側腹部の中に皮下注入した。マウスは、無菌条件で飼育した。動物には滅菌食で不断給餌した。動物を、ケタミン/キシラジンで滅菌した。治療のために、5mgのクルクミンを、まず50μlのエタノールに溶解し、そしてさらに2mlの1%メチルセルロースで希釈し、そして滅菌した。マウスに、1日に2度200μlの溶液またはメチルセルロース溶液を単独で腹腔内に投与した。1日に50mgのクルクミノイド/kg。
【0051】
1群のマウス(クルクミン及びメチルセルロース)には、注入後に5500 lxで20分間照射した。照射装置は、45cm離した10個のフィリップス社製のTLK 40W/03ランプ(長さ60cm×直径4cm)であった。ランプの放射範囲は、400〜550nmであり、420nmにおいて最大を有した。
コントロールである、照射の無いメチルセルロース及びクルクミンの群は、注入の後、1時間遮光した。腫瘍のサイズを最初及び10〜12日後に測定し; その後、腫瘍の体積及び重量を週に2度測定した。29日の実験の最後に、動物に麻酔しそして屠殺した。
【0052】
結果から、コントロール群と比較して、クルクミン/光線で処理した群のみが腫瘍増殖の抑制で有意差が示された。クルクミン/光線で処理したマウスの12日目の平均的な腫瘍体積は、コントロールマウスと比較して70%減少された。クルクミンで処理したが照射しなかった群の腫瘍体積は、顕著に減少されず(p=0.16)、すなわち可視光線がインビボにおけるクルクミノイドの有効性を改善した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2mW/cm2以上の照射量で0.20m2以上の表面積上に可視光線(400〜550nm)を照射するための手段を含んでなる光線療法のための装置。
【請求項2】
前記装置がさらに紫外線の光源を含むことを特徴とする、請求項1記載の光線療法のための装置。
【請求項3】
前記光源が、420nmに放射最大を有することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項4】
光源が、LEDsであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
照射される前記表面積が、1.0〜2.0m2であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記照射量が、300mW/cm2未満であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の装置を製造するための方法。
【請求項8】
感光剤が、クルクミン或いはクルクミノイド、テトラヒドロクルクミン、代謝産物、プロドラッグ、ウコンの根茎またはウコン抽出物等のこの治療上の等価物を含んでなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の装置の使用。
【請求項9】
乾癬、苔癬または癌等の増殖性疾患及び白斑症の治療における、請求項8記載の使用。
【請求項10】
80%以上の可能性を有する乾癬の患者の80%以上において、1〜18J/cm2による照射後に乾癬患者のPASI指標を基準値の75%以上減少させるための、請求項8記載の使用。
【請求項11】
クルクミンまたはその治療上の等価物が哺乳類で全身経路で投与された場合に、これらの治療有効性を改善するための方法であって、哺乳類が1J/cm2以上の線量で可視光線−紫外線(315〜550nm)で照射されることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記照射が420nmに最大放射を有する可視光線であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
全身経路によって投与される等価なクルクミン用量が1〜40mg/kg/日であることを特徴とする、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
クルクミノイドがウコン(Curcuma longa)抽出物の形態で存在することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
増殖性疾患の治療のための請求項11〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳類が中等度から重度の乾癬を患い、そして該乾癬のプラークが照射されることを特徴とする、請求項11〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
照射された表面が患者の体表面積の10%以上であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
照射された前記表面積が0.1m2であることを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項19】
腫瘍の治療のための請求項15記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのクルクミノイド及び少なくとも2mW/cm2照射する1つの可視光線光源を具備する、全身投与のための組成物によって形成されるキット。
【請求項21】
腫瘍の治療用の、可視光線と同時に投与される場合の、医薬賦形剤と一緒の全身投与用製剤の生産のための、クルクミン、クルクミノイド、これらの代謝産物またはクルクミンのプロドラッグの使用。
【請求項22】
少なくとも1つのクルクミノイド及び全身投与に適当な賦形剤を含んでなる医薬組成物であって、患者の体重あたりのクルクミノイド1日用量が1mg/kgであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項23】
透過され患者へ照射される400〜430nmの波長を除いて太陽放射線を吸収するフィルターを含んでなるスーツ。

【公表番号】特表2011−506019(P2011−506019A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538803(P2010−538803)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/ES2008/000787
【国際公開番号】WO2009/080850
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(510169398)アサク コンパーニャ デ ビオテクノロヒア エ インベスティガシオン,ソシエダ アノニマ (1)
【Fターム(参考)】