説明

クレーン桁・サドル組立装置

【課題】天井クレーンの組立工数の低減を目的とするもので、少人数の作業者で短時間にクレーン桁とサドルの組立を行うことができる組立装置を提供する。
【解決手段】天井クレーンのスパン(桁長さ)に対応する長さを備えた桁方向(Y方向)レール1と、この桁方向レールの両端部分に少なくとも一方を当該レールに沿って移動可能にして設けた一対のサドル基台2、4と、各サドル基台上の一対の桁直角方向の(X方向)移動台6と、各桁直角方向移動台上の昇降台21と、各昇降台上のX方向調整台及びY方向調整台とを備えている。組立てようとする天井クレーンのスパンとホイルベースの寸法によってサドル基台2、4の間隔及び各基台上での一対のX移動台6の位置及び間隔を設定し、サドルを一対のX移動台頂部の載置台8で支持してその位置関係を計測し、昇降台21の高さ並びにX調整台9及びY調整台10の位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井クレーンの桁とサドルとの組立に使用する組立装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井クレーンは、図6に示すように、工場や倉庫などの建屋31の上部に所定間隔を隔てて2本の走行レール32を平行に固定し、各走行レール上を走行するサドル7に両端を固定した状態で2本の桁33を装架し、この桁33に沿って走行するトロリー34に巻上機35を搭載して、この巻上機で昇降するフック36を2本の桁33の間を通るワイヤ37の先端に懸吊した構造である。天井クレーンには種々の大きさのものがあるが、一般的にはスパン(桁長さ)が数十m、ホイールレース(サドルの車輪間隔)が数mという大きさである。
【0003】
天井クレーンの桁とサドルの組立には、長大な2本の桁の両端をそれぞれの側のサドル上面の正確な位置に固定するという作業が必要である。従来、このクレーン桁とサドルの組立作業は、図7に示すような方法で行われていた。
【0004】
すなわち、4個の架台39をスパンSとホイールベースWに対応する間隔で配置し(図7(a))、サドル7を2個の架台39で両端を支持した状態で載置する。この状態で両側のサドルの間隔S、対角寸法C、レベル(高さ)Hを測定しながら、クレーンを使って架台39上でのサドル7の位置決めを行い(同図(b))、両側のサドル7の位置が設定された後、その上に2本の桁33を載置して、溶接やボルト止めにより固定する(同図(c))というものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来方法による組立作業は、2個のサドル7の位置関係を設定するときに、クレーンによるサドル7の吊上げ・吊降し作業を繰り返す必要があり、熟練したクレーンの運転者を含む多くの作業者が必要で、かつ作業時間も長くかかるという問題があった。
【0006】
この発明は、天井クレーンの組立工数の低減を目的とするもので、少人数の作業者で短時間にクレーン桁とサドルの組立を行うことができる技術手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、天井クレーンのスパン(桁長さ)に対応する長さを備えた桁方向(Y方向)レール1と、この桁方向レールの両端部分に少なくとも一方を当該レールに沿って移動可能にして設けた一対のサドル基台2、4と、各サドル基台上の一対の桁直角方向の(X方向)移動台6と、各桁直角方向移動台上の昇降台21と、各昇降台上の桁直角方向(X方向)調整台及び桁方向(Y方向)調整台とを備えた、クレーン桁とサドルとの組立装置を提供することにより、上記課題を解決している。
【0008】
この発明の組立装置を用いたクレーン桁とサドルの組立作業は、次のようにして行われる。まず、組立てる天井クレーンのスパンとホイルベースに合せて2個のサドル基台2、4相互の間隔と、各基台上におけるX移動台6、6の位置及び間隔を設定する。
【0009】
2個のサドル基台2、4相互のレール1と直交する方向の位置関係は、レール1によって規定されるので、各基台上におけるX移動台6の基準位置は、この発明の組立装置を設置した後、2個の基台2、4相互の位置関係を計測することによって求めておくことができる。従って、組立てる天井クレーンのスパンとホイルベースの寸法が与えられれば、サドル基台2、4の間隔と、各基台上のX移動台6、6の位置を設定することができる。
【0010】
この状態でサドル7を各基台に設けた一対のX移動台6頂部の載置台8上に載置する。載置されたサドル7の両端は、サドル基台2上の2つのX移動台6に昇降台21、X調整台9及びY調整台10(X調整台とY調整台のいずれか上方に位置するものが載置台となる。)を介して支持されるので、載置した2つのサドルの相対位置関係を計測して、所定位置関係からの誤差に相当する分を4個の昇降台21、X調整台9及びY調整台10の高さないし位置を適宜調整することによって修正する。これらの調整は、手動のハンドルや電動機の運転停止によって行われる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の組立装置を用いれば、組立てようとする天井クレーンのスパンとホイルベースの寸法によってサドル基台2、4の間隔及び各基台上での一対のX移動台6の位置及び間隔を設定し、次に天井クレーンのサドルを各基台上の一対のX移動台頂部の載置台8で支持して相対位置関係を計測し、所定の位置関係からのずれを各X移動台に設けられている昇降台21の高さ並びにX調整台9及びY調整台10の位置を調整することにより、簡単に修正できる。
【0012】
従って、クレーン桁とサドルの組立作業を少人数の作業者で、かつ従来方法に比べて遥かに短時間で行うことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。図1及び図2は、この発明の組立装置全体の模式的な平面図及び長手方向側面から見た側面図である。
【0014】
図において、1は床板上に設けた桁方向のレールで、2本のレール1の間隔は数m、レール長さは数十mである。レール1の長手方向(Y方向)一方端には、定位置の固定側サドル基台2が配置され、他方側にはレール1上を転動する車輪3を設けた移動側サドル基台4が配置されている。各サドル基台2、4の長手方向(レールと直交する方向。X方向)両端と中央には、基台を固定ないし安定化させるためのアウトリガー5が設けられている。
【0015】
各基台2、4の上面両端部には、X方向に各別に移動可能なX移動台6が搭載されており、各X移動台の頂部に天井クレーンのサドルを支持する載置台8が設けられている。載置台8には、固定ボルト用のねじ孔その他の、位置決めされたサドルを固定する固定具が設けられている。この載置台は、各X移動台6に設けた後述するX調整台9とY調整台10とのいずれか(図の装置ではY調整台)と同一の部材である。
【0016】
図3ないし5は、移動側基台の端部と、その上に搭載されているX移動台の詳細を示した図で、図3は、図1のA方向から見た図、図4は同B方向から見た図、図5は平面図である。
【0017】
これらの図において、3は前述したレール1上を転動する車輪で、レール1の一方を転動する車輪が鍔付き車輪、他方のレールを転動する車輪が鍔なし車輪となっており、鍔付き車輪の走行するレールが基台2、4のX方向の基準位置を規定している。車輪3を軸支している車軸台11には、レール1を両側から挟んでクランプするロック装置12が設けられている。なお、車軸台11は基台4と一体であり、ロック装置12はクランプねじ13を備えた手動式のものである。
【0018】
各基台2、4の上面両端には、2本のX方向のLM(リニアモーション)ガイド(以下、「X移動ガイド」と言う。)14が固定されており、これに隣接して2本のラック15が固定されている。X移動台6は、X移動ガイド14に摺動自在に搭載されている。X移動台6には、Y方向のピニオン軸16が軸支されており、このピニオン軸に固着した2個のピニオン17が上記2本のラック15にそれぞれ噛合している。ピニオン軸16の一端にはハンドル18が設けられており、このハンドルを回してX移動台6を移動させる。
【0019】
X移動台6は平面略正方形の台で、その四隅の内側部分に鉛直方向のガイド孔が設けられおり、中央部に電動機駆動のジャッキ20が装着されている。ジャッキ20上には昇降台21が固定され、この昇降台に上端を固着したガイドロッド22が前記ガイド孔に摺動自在に挿通されている。すなわち、ジャッキ20の電動機を正逆転駆動することにより、昇降台21はX移動台6上で昇降する。
【0020】
昇降台21上にはX方向のLMガイド(以下、「X調整ガイド」と言う。)23が設けられて、このX調整ガイド上にX調整台9が摺動自在に搭載されている。2本のX調整ガイド23の中央にこれと平行にX送りねじ24が設けられ、このX送りねじは、X調整台9に設けられた図示されていない送りナットに螺合している。昇降台21には、X送りねじ24と直交する方向の操作軸25が軸支されており、この操作軸25とX送りねじ24とは、ギアボックス26内の傘歯車対により、回転連結されている。操作軸25の先端には、手動ハンドルを差し込むための角軸部27が形成されている。作業者は、手動ハンドルの基端をこの角軸部27に差し込んで、当該ハンドルを回すことにより、X調整台9のX方向の位置を調整することができる。
【0021】
X調整台9の上面には、Y方向の2本のLMガイド(以下、「Y調整ガイド」と言う。)28が装着されており、このY調整ガイドにY調整台10が摺動自在に搭載されている。2本のY調整ガイド28の中央には、これと平行にY送りねじ29がX調整台9に軸支して装架されており、このY送りねじがY調整台10に設けた図示されていない送りナットに螺合している。Y送りねじ29の一端には、操作軸25に設けたと同様な角軸部27が形成されており、前述したハンドルを操作軸25の角軸部とY送りねじ29の角軸部27とに交互に差し込んで回動することにより、サドルの載置台となっているY調整台10のX方向及びY方向の位置を調整する。
【0022】
次に上記実施例装置を用いたクレーン桁とサドルの組立について説明する。まず、組立てようとするクレーン桁のスパンに合せて移動側基台4を押動して、固定側基台2との間隔を設定し、ロック装置12で移動側基台4を固定し、更に固定側及び移動側基台のアウトリガー5を進出させて、基台2、4を安定化させる。次に鍔付き車輪側のX移動台6を基準位置に移動して、図示していないクランプ装置で固定し、組立てようとするサドルのホイルベースに合せて、鍔なし車輪側のX移動台6の位置を設定して、同様なクランプ装置で固定する。
【0023】
次に各X移動台の昇降台21をその上下ストロークの中間の高さに設定し、更にX調整台9及びY調整台10をその移動ストロークの中間の位置に設定した状態で、載置台となっているY調整台10に両端部を支持した状態で天井クレーンのサドルを各基台上に支持する。
【0024】
そして、図7(b)に示したと同様に、載置した2個のサドル間の距離S、対角寸法C、平行度、レベルHなどを計測し、所定寸法からのずれを算出する。そして、このずれを修正するために4個あるX移動台のどの昇降台21をどれだけ昇降し、どのX調整台9をどれだけ移動し、どのY調整台10をどれだけ移動させるかを算出した後、その算出量に応じて選択したX移動台の昇降台21、X調整台9及びY調整台10を調整する。
【0025】
以上の操作で2個のサドル7の位置関係が設定されるから、各寸法関係を確認し、要すれば再調整してサドル位置を決め、固定ボルトなどの固定具で位置決めされたサドルを載置台8に固定する。次に位置決めされた2つのサドル7の上に両端を支持した状態で2本の桁33を載置し、桁33の両端とそれぞれの側のサドル7との位置決めをした後、溶接やボルト止めによって、桁33をサドル7に固定する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例装置を示す模式的な全体平面図
【図2】図1の装置の長手方向から見た側面図
【図3】図1のA方向から見た移動側基台端部の詳細側面図
【図4】図1のB方向から見た移動側基台端部の正面図
【図5】図3、4に示した基台端部の平面図
【図6】天井クレーンの模式的な斜視図
【図7】従来方法によるクレーン桁とサドルの組立順序を示す説明図
【符号の説明】
【0027】
1 レール
2 固定側サドル基台
4 移動側サドル基台
6 X移動台
21 昇降台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井クレーンの桁長さに対応する長さを備えた桁方向レール(1)と、この桁方向レールの両端部分に少なくとも一方を当該レールに沿って移動可能にして設けた一対のサドル基台(2,4)と、各サドル基台上の一対の桁直角方向の移動台(6)と、各桁直角方向移動台上の昇降台(21)と、各昇降台上の桁直角方向調整台及び桁方向調整台とを備えた、クレーン桁・サドル組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−44861(P2006−44861A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227027(P2004−227027)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(391064566)株式会社北都鉄工 (3)
【Fターム(参考)】