説明

クレーン用給電中継装置

【課題】中継用接続器へのケーブルの脱着作業が容易で且つ給電ピットを小型にできるクレーン用給電中継装置を提供する。
【解決手段】自走式クレーンへケーブルにより電源を供給する給電中継装置5であって、一端側がクレーンの巻取用ドラムに巻き取られるとともに他端側がクレーンの走行経路に沿って形成された案内溝21に配置されたクレーン側ケーブル22と電源側からの電源側ケーブル23とを接続するための中継用接続器25と、クレーン側ケーブル22の他端側である中継用接続器25寄り端部側を巻き付けることによりケーブル端部の移動を規制する移動規制用ドラム31とを具備し、さらに中継用接続器25を地上に配置するとともに、地下に形成され且つ案内溝21に連通された収容ピット27内に移動規制用ドラム31を配置し、移動規制用ドラム31を昇降させる揺動レバー体32を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン用給電中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾でコンテナの荷役を行う岸壁クレーンは、給電点からケーブルにより給電されて走行および荷役が行われる。そして、クレーンの走行時には、クレーンに設けられたケーブルリールにより、ケーブルの引き出しや巻き取りを行うことで、移動するクレーンへのケーブルの長さを調整している。このとき、引き出されたケーブルが、クレーン用レールに沿って形成されたケーブル溝に落とし込まれることで、岸壁で作業を行う際の障害物とならないようにされていた(例えば特許文献1)。
【0003】
また、ケーブルには電源を接続する必要があり、そのためには、図5および図6に示すように、接続用(中継用)の中継用接続器およびケーブルにおける中継用接続器との接続部分に余分な力が作用するのを防止するためのケーブル引留ドラム51が必要となり、これら中継用接続器およびケーブル引留ドラム51も、ガイド53と同様に、障害物とならないように、地下に形成された給電ピット52内に配置されている。したがって、ケーブルの一端部は中継用接続器に接続されるとともに、他端側は、ケーブル引留ドラム51に数回巻き付けられた後、ガイドを介して給電ピット52の外部に導かれ、クレーンに接続されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3337324号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】社団法人港湾荷役機械システム協会機関誌「港湾荷役」第44巻6号638頁 平成11年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の構成によると、中継用接続器へのケーブルの脱着作業が地下の狭い給電ピット内で行わなければならず、作業がやりにくいという問題があり、また給電ピット内に作業用空間部を必要とするため、給電ピットが大きくなってしまうという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、中継用接続器へのケーブルの脱着作業が容易で且つ給電ピットを小型にできるクレーン用給電中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係るクレーン用給電中継装置は、荷役作業用の自走式クレーンにケーブルを介して電源を供給するための給電中継装置であって、一端側がクレーン側に設けられた巻取用ドラムに巻き取られるとともに他端側がクレーンの走行経路に沿って形成された案内溝に配置されたクレーン側ケーブルと電源に接続された電源側ケーブルとを接続するための中継用接続器と、上記クレーン側ケーブルの他端側である上記中継用接続器寄り端部側を巻き付けることによりそのケーブル端部の移動を規制するための移動規制用ドラムとを具備し、さらに上記中継用接続器を地上に配置するとともに、地面下に形成され且つ上記案内溝に連通された収容ピット内に上記移動規制用ドラムを配置し、上記収容ピット内に配置された移動規制用ドラムを昇降させる揺動レバー体を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
上記クレーン用給電中継装置の構成によると、中継用接続器へのケーブルの脱着作業を地上で行うことができるため、従来の収容ピット内で行う場合に比べて当該作業が容易となる。
【0010】
また、収容ピット内のケーブル脱着作業用スペースが不要となるため、収容ピットを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係るクレーン用給電中継装置が設けられた岸壁の全体平面図である。
【図2】同クレーン用給電中継装置から給電を受ける橋形クレーンの斜視図である。
【図3】同クレーン用給電中継装置の側面図である。
【図4】同クレーン用給電中継装置の平面図である。
【図5】従来例のクレーン用給電中継装置の側面図である。
【図6】従来例のクレーン用給電中継装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例に係るクレーン給電中継装置を図1〜図4に基づき説明する。
なお、クレーン給電中継装置の例として、例えば岸壁に設けられたコンテナヤードで使用される電力駆動式のタイヤ付橋形クレーン用の給電中継装置について説明する。
【0013】
図1に示すように、このような岸壁1には、陸揚げされたコンテナ2が整然と列状に留置されるコンテナヤード3が設けられるとともに、このコンテナヤード3は、複数の区画(ブロックともいう)に仕切られている。
【0014】
そして、これら各区画には、積み上げられたコンテナ2を跨いでタイヤにより自走するとともにコンテナ2の荷役を行う橋形クレーン(以下、単に、クレーンともいう)4が配置されるとともに、上記区画の側方の所定位置には、電源側からの電力を中継してクレーン4への給電をケーブルにより行う給電中継装置5が設けられている。
【0015】
ここで、コンテナヤード3を簡単に説明すると、搬送車両の進入通路6と退出通路7との間に、これら通路と直交する方向の区画列9が複数平行に設けられ、また両通路5,6の間には作業用通路8(作業用空間)が設けられている。したがって、各区画列9には、平面視が長方形状の進入通路側区画10と、同じ長方形状の退出通路側区画11とが配置されている。なお、この区画の配置方向を前後方向という。
【0016】
上記、各区画には、当該区画を跨ぐように且つ各区画の長手方向(つまり、前後方向)に沿って走行自在なコンテナ荷役用の橋形クレーン4が配置されている。そして、このクレーン4にケーブルを介して電気を供給するための給電中継装置5が、クレーン4の走行に邪魔にならないようにその走行経路の一側方位置で、且つ前後の区画に配置されたクレーン4に電気を供給し得るように一方の区画の作業用通路8寄り位置に設けられている。
【0017】
上記橋形クレーン4は、図2に示すように、概略的には、下部に走行用タイヤ12が設けられた左右一対の脚柱体13およびこれら両脚柱体13の上端部同士を連結する上部桁材14により門型に構成されたクレーン本体15と、上部桁材14に横行自在に配置されて荷役を行うための移動式巻揚機16と、クレーン本体15の脚柱体13に設けられてケーブルの巻き取りおよび引き出しを行う巻取用ドラム17と、クレーン走行用の駆動源としてのモータ18とから構成されている。
【0018】
また、図1に示すように、上記岸壁1の各区画の一側方、つまり給電中継装置5が配置されている側方には、ケーブルを収納し案内するための案内溝21がクレーン4の走行経路沿って、つまり前後方向で形成されている。
【0019】
上記構成において、コンテナ船(図示しない)からコンテナクレーン(図示しない)によりコンテナヤード3に搬入されたコンテナ2は、クレーン4の荷役および走行によって、仕分けのための積み替えや、トレーラなどの搬送車両への積み込みが行われる。
【0020】
このとき、クレーン4が給電中継装置5から離れる方向に移動すれば、不足するケーブル長さを補うために巻取用ドラム17からケーブルが引き出され、またクレーン4が給電中継装置5へ近づく方向に移動すれば、巻取用ドラム17により余分なケーブルが巻き取られる。なお、地上側に引き出されたケーブルは、案内溝21に落とし込まれて収納されるため、クレーン4の走行や他の作業の妨げにはならない。
【0021】
次に、本発明に係る給電中継装置5について説明する。
図3および図4に示すように、この給電中継装置5は、上述したようにクレーン4にケーブルを介して電気を供給するものであって、一端側がクレーン4に接続されたクレーン側ケーブル22と電源に接続された電源側ケーブル23とのそれぞれの他端側を接続するための中継用接続器25と、上記案内溝21に連通されるとともに中継用接続器25の側方に形成された収容ピット27と、この収容ピット27内に配置されてクレーン側ケーブル22の移動を規制する移動規制用ドラム31と、この移動規制用ドラム31を昇降させる揺動レバー体32とから構成されている。
【0022】
上記中継用接続器25は、上述したように、一端側がクレーン4に接続されるとともに上記巻取用ドラム17に巻き取られ且つ上記案内溝21に配置されたクレーン側ケーブル22と、一端側が電源に接続されて且つ地面下の埋設管24により引き込まれた電源側ケーブル23とを接続するためのものである。なお、この中継用接続器25とクレーン側ケーブル22との接続は接続端子部26を介して行われる。
【0023】
上記中継用接続器25の前後側方には、上述したように、上記案内溝21に連通された無蓋の収容ピット27が地面下にそれぞれ形成されている。そして、この収容ピット27内には、クレーン側ケーブル22の中継用接続器25寄り端部側を巻き付けることによりそのケーブルの端部の移動を規制するための移動規制用ドラム31が、上記中継用接続器25からのケーブルを巻き取る方向、すなわちドラム軸方向と前後方向とが直交するように配置されている。
【0024】
また、上記移動規制用ドラム31は、クレーン側ケーブル22を巻き付けるドラム本体31aと、クレーン側ケーブル22の脱落を防止するためにドラム本体31aの両側面に取り付けられたフランジ31bと、巻き付けられたクレーン側ケーブル22を固定する固定具31cとから構成されている。なお、上記ドラム本体31aへのケーブルの巻き付けは2回乃至3回で済むため、ドラム本体31aは直径よりも幅の方が小さい短円柱形状にされている。一方、収容ピット27は、平面視が長方形状であって案内溝21方向が長手方向となり、長手方向に沿う縦断面形状は略逆台形にされており、上記移動規制用ドラム31を1個収容できる大きさとなっている。
【0025】
さらに、上記移動規制用ドラム31を昇降させるための棒状の揺動レバー体32が案内溝21と平行に設けられている。この揺動レバー体32は、その移動規制用ドラム31の側面に一端部が連結されるとともに、中央部が地上に設置された支柱部材33に支持軸34を介して鉛直面内で揺動自在に支持され、他端側の把持部35にカウンターウエイト36が取り付けられることで、当該移動規制用ドラム31を昇降可能としている。なお、上記揺動レバー体32の中央部および上記支柱部材33にそれぞれ固定用ピン孔37,38が形成されており、固定用ピン39の挿入により揺動自在な揺動レバー体32を固定することができる。
【0026】
上記構成において、上記クレーン4の走行時には、案内溝21に納められたクレーン側ケーブル22が巻取用ドラム17に巻き取られ、または巻取用ドラム17からクレーン側ケーブル22が案内溝21に落とし込まれて収納されるが、クレーン側ケーブル22は移動規制用ドラム31に巻き付けられて固定されているため、中継用接続器25に接続されたクレーン側ケーブル22の端部の移動が規制される。このため、中継用接続器25の接続端子部26とクレーン側ケーブル22との接続部に過度の引張力が作用せず、クレーン側ケーブル22の損傷を防止できる。
【0027】
次に、上記接続端子部26に対するクレーン側ケーブル22の脱着作業について説明する。
上記揺動レバー体32の一端側の把持部35を押し下げることで、図3の仮想線にて示すように、他端部に連結された移動規制用ドラム31が収容ピット27から持ち上げられる。次に、揺動レバー体32の中間部に形成された固定用ピン孔37と支柱部材に形成された固定用ピン孔38とが連通する位置、つまり移動規制用ドラム31を地上に出す位置まで上記把持部35を押し下げ、固定用ピン39を上記固定用ピン孔37,38に挿入して揺動レバー体32を固定する。これにより、移動規制用ドラム31が収容ピット27上に上昇されてケーブルが緩められるため、上記クレーン側ケーブル22の脱着作業を行うことができる。
【0028】
したがって、クレーン側ケーブル22の脱着作業は、上記の通り地上で行うことができるため、従来のピット内で行う場合に比べて容易となり、さらに収容ピット27の大きさも、作業スペースが不要であるため、小さくすることができる。
【0029】
なお、本実施例においては、収容ピット27に配置された昇降可能な移動規制用ドラム31を中継用接続器25の両側方に配置したが、区画列9に配置された区画が1つである場合には、移動規制用ドラム31を中継用接続器25の片側方にのみ配置すればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 岸壁
2 コンテナ
3 コンテナヤード
4 橋形クレーン
5 給電中継装置
6 進入通路
7 退出通路
8 作業用通路
9 区画列
10 進入通路側区画
11 退出通路側区画
12 走行用タイヤ
15 クレーン本体
16 移動式巻揚機
17 巻取用ドラム
21 案内溝
22 クレーン側ケーブル
23 電源側ケーブル
24 埋設管
25 中継用接続器
26 接続端子部
27 収容ピット
31 移動規制用ドラム
32 揺動レバー体
33 支柱部材
35 把持部
36 カウンターウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役作業用の自走式クレーンにケーブルを介して電源を供給するための給電中
継装置であって、
一端側がクレーン側に設けられた巻取用ドラムに巻き取られるとともに他端側がクレーンの走行経路に沿って形成された案内溝に配置されたクレーン側ケーブルと電源に接続された電源側ケーブルとを接続するための中継用接続器と、
上記クレーン側ケーブルの他端側である上記中継用接続器寄り端部側を巻き付けることによりそのケーブル端部の移動を規制するための移動規制用ドラムとを
具備し、
さらに上記中継用接続器を地上に配置するとともに、地面下に形成され且つ上記案内溝に連通された収容ピット内に上記移動規制用ドラムを配置し、
上記収容ピット内に配置された移動規制用ドラムを昇降させる揺動レバー体を設けたことを特徴とするクレーン用給電中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228826(P2010−228826A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75313(P2009−75313)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)