説明

クレーン装置

【課題】地上給電と機上給電との切替時にHIDランプの点灯を維持して、スムーズにレーン替えを行う。
【解決手段】電動機30〜32を駆動することにより、コンテナヤード内の任意のレーンでコンテナの巻上げ下げを行う門型のクレーン装置10であって、レーンに沿って延設されたバスバー8から給電された交流電力と、自装置で発電した交流電力とのいずれかを切替選択して出力する給電切替器1Sと、クレーン装置の周囲を照明するHIDランプ35と、給電切替器1Sから出力された交流電力を、直流に変換した後、再び交流に変換してHIDランプ35へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーンに沿って延設したバスバーを介して給電された電力により、コンテナの荷役を行う門型のクレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、門型のクレーン装置を用いて、船舶やトレーラーに対するコンテナの積み降ろしなどの荷役を行うコンテナヤードには、地上の電力設備から、レーンに沿って延設したバスバーを介してクレーン装置へ給電する、いわゆる電動化方式のコンテナヤードがある(例えば、特許文献1など参照)。
【0003】
図4は、一般的なコンテナヤードの構成例を示す平面図である。
コンテナヤード70は、港の埠頭7Aに面して設けられており、埠頭7Aに配置されたコンテナクレーン7Cにより、船舶7Bに対するコンテナ9の積み降ろしが行われる。このコンテナヤード70には、コンテナ9の載置場所として、コンテナ9の長手方向に沿って伸延する平面視長方形状のエリアからなるレーン71が複数設けられており、レーン71内を当該レーン71の長手方向Xにクレーン装置10が走行することにより、レーン71内の各所においてコンテナ9が効率よく仕分けされる。
【0004】
各レーン71には、クレーン装置10に対して電力を供給する変圧器7が設けられており、レーン71に沿って延設されているバスバー8を介して、変圧器7から交流電力がクレーン装置10へ供給される。バスバー8は、支柱に架設されたトロリー線からなり、クレーン装置10に搭載する集電装置をバスバー8と電気的に接触させることにより、クレーン装置10が変圧器7から電力を集電するものとなっている。
【0005】
コンテナヤード70には、道路72側にゲート73が設けられており、トレーラー75はこのゲート73を通過してコンテナ9の搬入・搬出を行う。
レーン71には、トレーラー75の通路が設けられており、この通路に停車したトレーラー75に対して、クレーン装置10によるコンテナ9の積み降ろしが行われる。
クレーン装置10は、レーン71ごとに対応付けて配置してもよいが、他のレーン71へ移動させる、いわゆるレーン替えを行うことにより効率よく荷役を行うことができる。このような場合、レーン71の端部に隣接して設けられているターンレーン74において、長手方向Xと直交する直角方向Yへクレーン装置10を直角走行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−023817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなコンテナヤード70では、レーン替えの際、クレーン装置10がバスバー8から離脱してターンレーン74を走行する必要があるため、バスバー8からの地上給電が停止される。このため、クレーン装置10にエンジン発電機や蓄電装置を搭載し、レーン替えの際には、クレーン装置10において、動作に使用する電力を、バスバー8からの地上給電から、エンジン発電機からの発電電力や蓄電装置からの蓄電電力などの機上給電に切り替えて、ターンレーン74を走行するものとなっている。
【0008】
しかしながら、このような従来技術では、バスバー8からの地上給電から機上給電に切り替える際、クレーン装置10の動作に使用する電力が瞬断する。これにより、クレーン装置10に搭載されているHID(High Intensity Discharge)ランプが消灯してしまうため、再点灯までに要する時間だけクレーン装置を停止させることになり、レーン替えに多くの待ち時間が発生するという問題点があった。
【0009】
一般に、クレーン装置10には、夜間など周囲が暗くなってコンテナ9が見えにくい状況でも、荷役を行うことができるよう、クレーン装置10の周囲を照明するための照明器具として、大きな光量が得られる、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプなどのHIDランプが搭載されている。この種のHIDランプは、金属原子高圧蒸気中のアーク放電を光源とするランプであり、点灯時には、金属蒸気圧が点灯可能な程度まで上昇するのに数分を要する。また、HIDランプへの給電が瞬断した場合には、アーク放電が停止するため消灯状態となり、この期に再点灯時には金属蒸気圧が低下するまで十分程度要する。
【0010】
したがって、レーン替えの場合、クレーン装置10が移動元レーンからターンレーンへ退出する際、地上給電から機上給電への切替時にHIDランプが消灯するため、再点灯までに十数分の待ち時間を要する。また、ターンレーンから移動先レーンへ進入する際、機上給電から地上給電への切替時にHIDランプが再び消灯するため、再点灯までに十数分の待ち時間を要することになる。このため、レーン替えの際、合わせて三十分前後の待ち時間が発生することになり、スムーズにレーン替えを行うことができない。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、地上給電と機上給電との切替時にHIDランプの点灯を維持して、スムーズにレーン替えを行うことができるクレーン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明にかかるクレーン装置は、電動機を駆動することにより、コンテナヤード内の任意のレーンでコンテナの巻上げ下げを行う門型のクレーン装置であって、レーンに沿って延設されたバスバーから給電された交流電力と、自装置で発電した交流電力とのいずれかを切替選択して出力する給電切替器と、当該クレーン装置の周囲を照明するHIDランプと、給電切替器から出力された交流電力を、直流に変換した後、再び交流に変換してHIDランプへ供給するインバータとを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、給電切替器から出力される交流電力が、給電切替器での切替時に瞬断した場合でも、HIDランプへ供給される交流電力が瞬断することはなく、HIDランプが消灯することもない。これにより、レーン替えにおける、HIDランプの再点灯に要する待ち時間を省くことができ、スムーズなレーン替えを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施の形態にかかるクレーン装置の構成を示すブロック図である。
【図2】インバータの基本ブロック図である。
【図3】インバータの動作を示す信号波形図である。
【図4】一般的なコンテナヤードの構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[クレーン装置]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかるクレーン装置10について説明する。図1は、一実施の形態にかかるクレーン装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
このクレーン装置10は、コンテナヤードのレーンに沿って延設したバスバー8を介して給電された変圧器(電源装置)7からの電力により、各種電動機を駆動してコンテナの積み降ろしや走行などの各種クレーン動作を行う装置である。
クレーン装置10には、主な構成として、給電装置1A、エンジン発電機1B、給電切替器1S、集電装置2、主巻電動機30、走行電動機31、横行電動機32、HIDランプ35、インバータ(INV)41,42、インバータ(INV)45、およびコントローラ5が設けられている。
【0017】
給電装置1Aは、レーンごとに設けられている変圧器7からバスバー8を介して供給される、例えば三相交流からなる交流電力を、所定電圧の三相交流に変換して給電切替器1Sへ出力する機能を有している。
集電装置2は、クレーン装置10の外側に取り付けられて、支柱に架設されたトロリー線からなるバスバー8と電気的に接触することにより、変圧器7からの交流電力を集電し、給電装置1Aへ出力する機能を有している。
【0018】
エンジン発電機1Bは、ディーセルエンジンで発電機を駆動することにより交流電力を発電して給電切替器1Sへ出力する機能を有している。
給電切替器1Sは、コントローラ5からの給電切替指令5Sに応じて、給電装置1Aまたはエンジン発電機1Bのいずれか一方からの給電を切替選択して共通母線Bへ供給する機能を有している。
共通母線Bは、給電切替器1Sから出力された交流電力をクレーン装置10内の各部へ供給するための配線である。
【0019】
主巻電動機30は、コンテナの昇降を行うための交流電動機である。走行電動機31は、架台の走行を行うための交流電動機である。横行電動機32は、架台の横行を行うための交流電動機である。
HIDランプ35は、荷役時や走行時にクレーン装置10の周囲を照明するための照明器具である。
【0020】
インバータ41は、給電切替器1Sから共通母線Bへ供給された交流電力を、任意の周波数の交流電力に変換して主巻電動機30および走行電動機31へ供給するAC/AC変換器である。
インバータ42は、給電切替器1Sから共通母線Bへ供給された交流電力を、任意の周波数の交流電力に変換して横行電動機32へ供給するAC/AC変換器である。
【0021】
インバータ45は、給電切替器1Sから共通母線Bへ供給された交流電力を、直流に変換した後、再度交流に変換して、HIDランプ35の駆動用電源や、空調装置、あるいはコントローラ5などの制御装置を含む各種補機設備で用いる補機設備電源として供給するAC/DC/AC変換器である。
【0022】
コントローラ5は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、マイクロプロセッサまたは周辺回路に設けられたメモリからプログラムを読み込んで実行することにより、プログラムと上記ハードウェアとを協働させて、クレーン装置10全体を制御するための各種機能を有している。
【0023】
コントローラ5の主な機能としては、操作レバーや操作スイッチを介して検出した操作者の指令入力5Aに基づいて、各種コマンド4Aをやり取りすることによりインバータ41,42を制御して、コンテナの昇降、架台の走行、横行、直角走行などの運転を制御するクレーン運転機能と、クレーン装置10がターンレーンを通って他のレーンへレーン替えを行う場合、バスバー8からクレーン装置10が切り離されている期間においてエンジン発電機1Bからの電力で走行するために、給電切替指令5Sにより給電切替器1Sを制御して、エンジン発電機1Bからの電力に切り替える給電切替制御機能とを有している。
【0024】
[本実施の形態の動作]
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態にかかるクレーン装置10の動作について説明する。図2は、インバータの基本ブロック図である。図3は、インバータの動作を示す信号波形図である。
【0025】
レーン替えを行う場合、操作者は、コントローラ5を操作して、次のような手順でレーン替えを行う。
まず、移動元レーンにおいて、クレーン装置10がバスバー8に接続されている場合、バスバー8を介して変圧器7から給電された交流電力は、集電装置2で集電される。この後、給電装置1Aで電圧変換され、給電切替器1Sを介して共通母線Bへ供給される。これにより、インバータ41,42,45を介して、クレーン装置10の各部へ交流電力が供給され、コンテナに対する荷役が行われる。
【0026】
この状態で、レーン替えを行う場合、操作者は、クレーン装置10をレーン端までを走行させて停止させる。このとき、クレーン装置10を停止させる前に、エンジン発電機1Bを起動しておく。
次に、エンジン発電機1Bで発電された交流電力が正常値であることを確認した後、給電切替器1Sにより給電元を給電装置1Aからエンジン発電機1Bへ切り替えた後、集電装置2を移動元レーンのバスバー8から切り離す。
【0027】
したがって、クレーン装置10では、バスバー8からの地上給電が切り離されて、エンジン発電機1Bからの交流電力が共通母線Bへ供給される機上給電に切り替えられる。これにより、操作者は、クレーン装置10を、機上給電により移動元レーンからターンレーンへ進入させ、移動先レーンまで走行させる。
【0028】
この後、ターンレーンから移動先レーンへ進入する場合、操作者は、まず、集電装置2を移動先レーンのバスバー8に接続し、給電装置1Aからの交流電力が正常値であることを確認した後、給電切替器1Sにより給電元をエンジン発電機1Bから給電装置1Aへ切り替え、エンジン発電機1Bを停止する。
【0029】
したがって、クレーン装置10では、エンジン発電機1Bによる地上給電が停止されて、バスバー8からの交流電力が共通母線Bへ供給される地上給電に切り替えられる。これにより、操作者は、クレーン装置10を、地上給電によりターンレーンから移動先レーンへ進入させ、移動先レーン内で荷役が行える状態となる。
【0030】
ここで、クレーン装置10では、給電切替器1Sで地上給電と機上給電とを切り替える場合、共通母線Bに対する電力供給が瞬断する。一般的な電気機器では、交流電源の瞬停許容時間は十数ms以下であり、長くても交流周波数の一波長時間以下という規格になっている。このため、一般的なクレーン装置10においても、給電切替器1Sとして、切り替えに伴う瞬断時間が交流電源周波数の一波長時間以下という基準を満たすものが用いられている。
【0031】
図2に示すように、インバータ45は、AC/DC/AC変換器からなり、主な回路部として、整流回路REC、コンデンサC、スイッチング回路SW、および制御回路CONが設けられている。
整流回路RECは、ダイオードなどの整流素子からなり、端子T3pから入力された三相交流信号を直流信号に整流する回路である。
コンデンサCは、電解コンデンサからなり、整流回路RECから出力された直流信号を平滑化する機能を有している。
【0032】
スイッチング回路SWは、ダイオードやスイッチング素子を用いたDC/AC変換回路からなり、コンデンサCの両端の直流信号を、制御回路CONからの制御パルスCPに基づき高速スイッチングすることにより単相交流信号に変換し、端子T1pへ出力する機能を有している。
制御回路CONは、CPUや専用の信号処理回路からなり、所望する単相交流信号に応じたタイミングで制御パルスCPを生成してスイッチング回路SWへ出力することにより、スイッチング回路SWでのDC/AC変換動作を制御する機能を有している。
【0033】
端子T3pへ入力された共通母線Bからの交流電力は、整流回路RECで整流されて、コンデンサCに直流電力として一旦蓄電され、スイッチング回路SWにより再び交流信号に変換されて、端子T1pから出力される。
したがって、図3に示すように、時刻T1から時刻T2までの瞬断期間tにおいて、共通母線Bからの交流電力が瞬断した場合、端子T3pにおける交流電圧V3pはゼロとなる。ここでは、3相交流のうちの任意の位相信号に着目して説明するが、いずれの位相信号についても同様である。
【0034】
このため、瞬断期間tにおいて、整流回路RECからコンデンサCに対して直流電流が出力されないため、コンデンサCの両端の直流電圧Vdcが低下する。この際、コンデンサCの容量が十分大きいため、直流電圧Vdcは、スイッチング回路SWでの消費分だけ低下するものの、その低下分は僅かであり、瞬断期間の終了後、再び上昇する。
したがって、瞬断期間tにおいて、スイッチング回路SWからは継続して単相交流信号が端子T1pへ出力されるため、HIDランプ35への電力供給が瞬断することはなく、HIDランプ35が消灯することもない。
【0035】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、給電切替器1Sから出力された交流電力を、インバータ45により、直流に変換した後、再び交流に変換してHIDランプ35へ供給するようにしたので、給電切替器1Sから出力される交流電力が、給電切替器1Sでの切替時に瞬断した場合でも、HIDランプ35へ供給される交流電力が瞬断することはなく、HIDランプ35が消灯することもない。
これにより、レーン替えにおける、HIDランプ35の再点灯に要する待ち時間を省くことができ、スムーズなレーン替えを実現することができる。
【0036】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0037】
10…クレーン装置、1A…給電装置、1B…エンジン発電機、1S…給電切替器、2…集電装置、30…主巻電動機、31…走行電動機、32…横行電動機、35…HIDランプ、41,42…インバータ、45…インバータ、4A…コマンド、5…コントローラ、5A…指令入力、5S…給電切替指令、B…共通母線、7…変圧器、70…コンテナヤード、71…レーン、72…道路、73…ゲート、74…ターンレーン、75…トレーラー、7A…埠頭、7B…船舶、7C…コンテナクレーン、8…バスバー、9…コンテナ、G…地上。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を駆動することにより、コンテナヤード内の任意のレーンでコンテナの巻上げ下げを行う門型のクレーン装置であって、
前記レーンに沿って延設されたバスバーから給電された交流電力と、自装置で発電した交流電力とのいずれかを切替選択して出力する給電切替器と、
当該クレーン装置の周囲を照明するHIDランプと、
前記給電切替器から出力された交流電力を、直流に変換した後、再び交流に変換して前記HIDランプへ供給するインバータと
を備えることを特徴とするクレーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−211006(P2012−211006A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78049(P2011−78049)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)