説明

クロマトグラフィー用カラム

【課題】ロッド状の担体を備えたクロマトグラフィー用カラムであって、分離性能が高く、かつ、未だ実用化されていない内径サイズのものを提供する。
【解決手段】ロッド状の担体と該担体を被覆する被覆体と該被覆体の担体に対する密着性を調節する締着体とを備えたクロマトグラフィー用カラムにおいて、締着体を被覆体の周面を囲む筒状に形成すると共に両開口を結ぶように伸びる少なくとも一つの隙間によって分断し、締着体の隙間幅を広狭させることによって被覆体の担体に対する密着性を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用カラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、近年、クロマトグラフィー用カラム(以下、「カラム」ともいう)の固定相形成において採用されているモノリス(三次元ネットワーク状の骨格とその空隙が一体となった)構造を有する担体は、多孔質粒子集合構造を有する担体と同様の比表面積を有するにもかかわらず、移動相を低圧・高速で送液でき、かつ、高い分離性能を有することから注目を集めており、その改良が進められている。
【0003】
モノリス構造を有する担体を固定相とするカラムは、その製造方法によって二種類に大別でき、一方は、予めロッド状に形成された担体を樹脂製の外筒体に挿入し、外筒体の熱膨張や熱収縮を利用して外筒体を担体に対して密着させる製造方法によるもの(以下、「第一従来カラム」という)であり、他方は、外筒体の中空内で担体を生成し、外筒体の内面に対して担体を結合させる製造方法によるもの(以下、「第二従来カラム」という)である。
【0004】
第一従来カラムとしては、後出特許文献1に、一体型多孔質体からなる充填物と、その外周を被覆する密着性、耐熱性、耐薬品性及び耐圧性を有する有機系樹脂外筒部材とを具備し、有機系樹脂外筒部材は、熱収縮チューブと、この熱収縮チューブの外側に設けられた熱硬化性樹脂層の二層構造より形成されている液体クロマトグラフィー用カラムが開示されている。また、市販品として、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)製の外筒体を高温で熱膨張させてモノリス構造を有する担体を挿入した後、外筒体を収縮させて外筒体を担体に密着させたクロマトグラフィー用カラムが知られている。
【0005】
第二従来カラムとしては、後出特許文献2に、第2の材料の表面と化学的に相互作用できる支持骨格官能基を含み重合した支持骨格ナノコンポジット(PSN)を備えるハイブリッド無機/有機キャピラリーモノリスが第2の材料内で形成されたカラムが開示されている。
【特許文献1】特開平10−197508号公報
【特許文献2】特表2007−515503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示された液体クロマトグラフィー用カラムによって試料を分離して得られるクロマトグラムは、特許文献1の図2に示されているとおり、各溶質のピークが重なった状態で現れており、分離性能が高いと言えるものではなかった。これは、充填物に対する外筒部材の密着度が制御できないため、カラム内で移動相が不均一な流路を形成し、注入された試料がそこを通過していることが原因の一つと推測される。
【0007】
また、前記市販品として知られているクロマトグラフィー用カラムにおいては、予め担体の表面を化学修飾したものを採用すると、高温で加熱して熱膨張させたPEEK樹脂製の外筒体に担体を挿入した際に、外筒体と接触した担体の外表面において熱による酸化等の化学反応が促されて分離性能に影響が出ることから、その性能劣化が影響し難くなる体積に対する外表面積の比率が低い担体を採用したカラム、換言すれば、内径サイズの大きいカラムしか実用化されていなかった。
【0008】
さらに、前記特許文献2に開示されるような第二従来カラムにおいては、担体を生成する際に必要となる焼成によって担体が収縮するため、外筒体の内径が小さいと、担体の体積に対する外筒体の内表面積の比率が高くなって担体の外筒体に対する結合が維持されるが、外筒体の内径が大きくなると、担体の体積に対する外筒体の内表面積の比率が低くなり担体の外筒体に対する結合が維持されなくなる。このため、担体の外筒体に対する結合が維持できる内径サイズの小さいカラムしか実用化されていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、ロッド状の担体を備えたクロマトグラフィー用カラムであって、分離性能が高く、かつ、未だ実用化されていない内径サイズのものを実現できる構造のクロマトグラフィー用カラムを提供することを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試作・実験を繰り返した結果、ロッド状の担体と該担体を被覆する被覆体と該被覆体の担体に対する密着性を調節する締着体とを備えたクロマトグラフィー用カラムにおいて、締着体を被覆体の周面を囲む筒状に形成すると共に両開口を結ぶように伸びる少なくとも一つの隙間によって分断すれば、締着体の隙間幅を広狭させることによって被覆体の担体に対する密着性を調節することができるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0011】
即ち、本発明に係るクロマトグラフィー用カラムは、ロッド状の担体と該担体を被覆する被覆体と該被覆体の担体に対する密着性を調節する締着体とを備えており、締着体は被覆体の周面を囲む筒状に形成されていると共に両開口を結ぶように伸びる少なくとも一つの隙間によって分断されており、締着体の隙間幅を広狭させることによって被覆体の担体に対する密着性が調節されるものである。
【0012】
また、本発明は、前記クロマトグラフィー用カラムにおいて、締着体の開口を塞ぐように接続具が取り付けられているものである。
【0013】
また、本発明は、前記いずれかのクロマトグラフィー用カラムにおいて、被覆体で覆われた担体の先端にシーリングが嵌められているものである。
【0014】
また、本発明は、前記被覆体で覆われた担体の先端にシーリングが嵌められているクロマトグラフィー用カラムにおいて、シーリングが締着体内面に沿うように位置付けられており、締着体の隙間幅を広狭させることによってシーリングの被覆体に対する密着性が調節されるもの、或いは、シーリングが被覆体で被覆された担体を挿入する中空に向かって傾斜したバンク面上に位置付けられており、シーリングを接続具によって締着体側へ押さえ付けることによってシーリングの被覆体に対する密着性が調節されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロッド状の担体を被覆する被覆体の周面を隙間によって分断された筒状の締着体によって囲み、その隙間幅を広狭することで締着体の締め付け度合いを調整し、担体に対する被覆体の密着性を調節できるので、移動相による不均一な流路の形成を防ぐように締着体の被覆体で覆われた担体に対する締め付け度合いを分離性能を確認しながら任意に調節することで分離性能の高いクロマトグラフィー用カラムを得ることができる。また、担体に対する被覆体の密着性を締着体の締め付け度合いによって調節するため、被覆体を形成する素材の選択の幅が広がり、比較的低温で熱収縮や熱膨張する素材を採用できることから、予め担体表面を化学修飾したものに対して被覆体を被覆する際の加熱温度が低くなり、担体の外表面における酸化等の化学反応を抑制することができる。これにより、従来においては実用化されていなかった内径サイズのカラムを形成することができる。
【0016】
従って、本発明は分離分析分野における分離性能や感度向上に関して産業上利用性が非常に高いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0018】
実施の形態1.
【0019】
図1は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解斜視図である。図2は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解断面図である。図3は図2に示すクロマトグラフィー用カラムを組み立てた状態を示した断面図である。図4は図2に示す締着体を示した横端面図であり、図4の(a)における図2のA−A端面を示しており、図4の(b)は図2におけるB−B端面を示している。これらの図において、1は、モノリス構造を有する担体2と、担体2を被覆する被覆体3と、被覆体3の担体2に対する密着性を調節する締着体4とを備えたクロマトグラフィー用カラムであり、締着体4の両端には、締着体4に挿入される被覆体3で覆われた担体2の先端に嵌められるシーリング5を閉じ込めるように接続具6が装着される。
【0020】
担体2は、ロッド状に形成されている。担体2を形成する素材としては、シリカ、アルミナ、セルロース、アガロース、デキストリン、キサトン、ハイドロキシアパタイト又はジルコニアや、ポリスチレン(スチレン・ジビニルベンゼン共重合体)、ポリメタクリレート、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリビニルアルコールなどのポリマー等を用いることが好ましい。
【0021】
被覆体3は、担体2の周面を覆う筒状に形成されている。被覆体3を形成する素材としては、締着体4によって締め付けられることで担体2に対する密着性が向上するように柔軟性を有し、また、カラム1に流し込まれる薬品に対する耐性(耐薬品性)を備えたものを選択する。具体的には、フッ素樹脂やシリコンゴムなどの合成樹脂を用いることが好ましい。なお、フッ素樹脂は、比較的低温で熱収縮するため、化学修飾した担体2を被覆体3で覆う場合においても担体2の外表面における化学反応を促進することなく低温で熱収縮させることができるのでより好ましい。
【0022】
締着体4は、被覆体3で覆われた担体2の周面を囲む筒状に形成されている。そして、締着体4は、両開口7を結ぶように軸方向に沿って伸びる隙間8によって断面C字状に分断されており、両端面9には縁部を残して窪んだ段差10が形成されており、外面には接続具6がネジ止めされるネジ溝11が形成されている。
【0023】
また、締着体4には、図4に示すように、隙間8を挟んで対向する分断面12に隙間8を跨いで連通するネジ孔13,14が形成されており、ネジ孔13,14にはそれぞれネジ15,16が通されている。なお、一方のネジ15は、締着体4の隙間8を挟んで一方側の外面から頭を突出させており、他方のネジ16は、締着体4の隙間8を挟んで他方側の外面から頭を突出させている。また、一方のネジ15が通されるネジ孔13には、隙間8を跨いで同じピッチのネジ溝17,18が形成されており(図4の(a)参照)、他方のネジ16が通されるネジ孔14には、隙間8を跨いで異なるピッチのネジ溝19,20が形成され、他方のネジ16の頭側に位置するネジ溝19よりも先端側に位置するネジ溝20の方がピッチが広く形成されている(図4の(b)参照)。これにより、一方のネジ15をネジ孔13に回し込むことによって締着体4の隙間8幅を狭める調整ができ、他方のネジ16をネジ孔14に回し込むことによって締着体4の隙間8幅を広げる調整ができる。
【0024】
なお、締着体4は、被覆体3で覆われた担体2を中空に挿入した際に、両端から被覆体3で覆われた担体2の先端が僅かに突出するような長さに形成されている。そして、被覆体3で覆われた担体2の締着体4の両端から突出した先端にはシーリング5が嵌められる。
【0025】
接続具6は、締着体4の中空と連通するように設置されるリング体21と、リング体21と連通する締着体4の中空の開口7を塞ぐように設置されるシール体22と、リング体21とシール体22とを締着体4側へ押さえ付けるキャップ体23とから構成されている。
【0026】
リング体21は、締着体4の端面9と対面する側に該端面9に形成された段差10に嵌る突起面24を有しており、突起面24と反対側に内側へ向かって傾斜するバンク面25を有している。そして、リング体21を締着体4に対して連通するように設置した状態において、被覆体3で覆われた担体2の先端に嵌められたシーリング5がバンク面25上に位置付けられる。この時、シーリング5は、バンク面25上端から僅かに飛び出した状態となる。
【0027】
シール体22は、シーリング5のバンク面25上端から飛び出した部分を押さえ付ける押圧面26を有しており、押圧面26と反対側にキャップ体23と嵌り合う突起部27が形成されている。そして、シール体22には、クロマトグラフィー装置側の接続具(図示せず)を接続するための接続孔28が中心を通るように貫通している。
【0028】
キャップ体23は、締着体4の端面9上に積み上げられたリング体21とシール体22とを収納できる中空を有する筒状に形成されており、一方の開口28がシール体22の突起部27に合致する大きさに閉じられている。キャップ体23の中空内面には、締着体4の外面に形成されたネジ溝11と噛み合うネジ溝29が形成されている。
【0029】
次に、本実施の形態に係るカラムの組立手順を説明する。
【0030】
先ず、予めロッド状に形成された担体2を被覆体3に挿入した後に加熱して被覆体3を熱収縮させて担体2に密着させる。次に、一方のネジ15を緩めた締着体4の中空に被覆体3で覆われた担体2を挿入する。そして、一方のネジ15を締めて隙間8幅を狭めることにより、締着体4の中空に被覆体3で覆われた担体2を保持する。続いて、締着体4の両端面9にリング体21の突起面24を嵌め合わせて締着体4とリング体21の中空を連通させる。この時、リング体21のバンク面25側に被覆体3で覆われた担体2の先端が突出した状態となり、その担体2の先端にシーリング5を嵌める。シーリング5は、バンク面25上に接した状態でバンク面25上端から僅かに飛び出した状態となる。次に、バンク面25上端から飛び出したシーリング5にシール体22の押圧面26を押し当てる。そして、締着体4上に積み上げられたリング体21とシール体22に対してキャップ体23を被せてキャップ体23を締着体4にネジ止めする。この時、キャップ体23を締着体4に対して締め込むと、キャップ体23の閉じられた開口28にシール体22の突起部27が嵌り込んでキャップ体23によってシール体22が締着体4側へ押さえ付けられるため、図3の拡大部分に示すように、シーリング5が変形しながらバンク面25の傾斜に誘導されて被覆体3で覆われた担体2の先端に対して強く密着する。この後、組み立てられたカラム1をクロマトグラフィー装置側の接続具と接続し、試料を流し込んで測定されるクロマトグラムを参照しながら、被覆体3で覆われた担体2に対する締着体4の締め付け度合いを両ネジ15,16によって調節する。
【0031】
なお、前記組立手順においては、被覆体3を熱収縮する素材で形成した場合の手順を示したが、被覆体3を熱膨張する素材で形成した場合には、先ず、被覆体3を加熱して熱膨張させた後に該膨張した被覆体3に対して担体2を挿入し、その後、被覆体3を冷却して収縮させて担体2に密着させることができる。
【0032】
実施の形態2.
【0033】
本実施の形態は、前記実施の形態1における締着体の変形例である。図5は前記実施の形態1における締着体の変形例を示した縦断面図である。図6は前記実施の形態1における締着体の他の変形例を示した縦断面図である。図7は前記実施の形態1における締着体の他の変形例を示した横断面図である。これらの図において、図1〜図4と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0034】
変形例1:本変形例に係る締着体4は、図5に示すように、端面9が内側に向かって傾斜するバンク状に形成されており、被覆体3で覆われた担体2の先端に嵌められるシーリング5はバンク状の端面9と接するように位置付けられる。
【0035】
本変形例によれば、締着体4の端面9をバンク状に形成したので、接続具6を構成する部材としてリング体21を用いることなく、前記実施の形態1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0036】
変形例2:本変形例に係る締着体4は、図6に示すように、内面に周回する段溝29が連続的に複数形成されている。
【0037】
本変形例においても、前記実施の形態1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0038】
変形例3:本変形例に係る締着体4は、図7に示すように、両開口7を結ぶように軸方向に沿って伸びる二本の隙間30,30によって二つの部材に分断されている。そして、それぞれの隙間30を挟んで対向する分断面31に隙間30を跨いで連通するネジ孔32が形成されており、ネジ孔32にはネジ33が通されている。
【0039】
本変形例においても、前記実施の形態1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0040】
なお、変形例3においては、締着体4を二本の隙間によって分断したが、三本以上の隙間によって分断してもよい。この場合、締着体は隙間の本数と同じ数の部材に分断される。また、締着体を分断する隙間は両開口を結ぶものであれば湾曲するものであってもよい。
【0041】
実施の形態3.
【0042】
図8は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解斜視図である。図9は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解断面図である。図10は図9に示すクロマトグラフィー用カラムを組み立てた状態を示した断面図である。これらの図において、図1〜4と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0043】
本実施の形態に係るカラム1においては、締着体4の隙間8幅を調整するネジ15を通すためのネジ孔13が軸方向に沿って複数形成されており、締着体4の一端側から他端側に至るまで等間隔に並んでいる。そして、いずれのネジ孔35も隙間8を跨いで同じピッチのネジ溝18,19が形成されており、締着体4の隙間8を挟んで一方側の外面に頭を突出させるようにネジ15が差し込まれている。従って、各ネジ15を締めることによって締着体4の隙間8幅を狭める調整ができ、各ネジ15を緩めることによって締着体4の隙間8幅を広げる調整ができる。
【0044】
また、締着体4の両端面9に形成された段差10は、被覆体4で覆われた担体2の先端には嵌められるシーリング5を嵌め込むことができる形状に形成されている。従って、シーリング5は、締着体4の内面に沿うように位置付けられる。
【0045】
さらに、接続具34は、図9に示すように、締着体4の外面に形成されたネジ溝11に噛み合うネジ溝35が内面に形成された中空部36と、中空部36の一方側の開口を閉じる押圧部37とから構成されている。そして、押圧部37には、クロマトグラフィー装置側の接続具を接続するための接続孔38が中心を通るように貫通しており、接続孔38の一方の開口39が貫通する中空部内方に向けられる面が僅かに突起40している。
【0046】
次に、本実施の形態に係るカラム1の組立手順を説明する。
【0047】
先ず、予めロッド状に形成された担体2を被覆体3に挿入した後に加熱して被覆体3を熱収縮させて担体2に密着させる。次に、各ネジ15を緩めて隙間8幅を広げた締着体4の中空に被覆体3で覆われた担体2を挿入し、締着体4の両端から突出した被覆体3で覆われた担体2の先端に嵌めたシーリング5を締着体4の両端面9に形成された段差10に嵌め込む。そして、各ネジ15を締めて隙間8幅を狭めることにより、締着体4の中空に被覆体3で覆われた担体2を保持すると共に、シーリング5の被覆体3で覆われた担体2の先端に対する密着性を増す。続いて、接続具34の中空部36に締着体4の先端を差し込んでネジ止めする。この時、接続具34の押圧部37に形成された突起40によってシーリング5が締着体4側に押されて変形し、被覆体3で覆われた担体2の先端に対する密着性が更に増す。この後、組み立てられたカラム1をクロマトグラフフィー装置と接続し、試料を流し込んで測定されるクロマトグラムを参照しながら、被覆体3で覆われた担体2に対する締着体4の締め付け度合いを各ネジ15によって調節する。
【0048】
なお、前記各実施の形態においては、担体としてモノリス構造のものを採用しているが、本発明の構造を有するカラムは、ロッド状の担体であれば、モノリス構造を有するものに限定されることなく、例えば、三次元ハニカム構造などの他の構造を有する担体を採用することもできる。
【0049】
また、前記各実施の形態においては、被覆体で覆われた担体の周囲を一つの締着体によって囲む構造となっているが、多段状に重ねれた複数の締着体によって囲む構造としてもよい。
【0050】
さらに、前記各実施の形態においては、締着体の隙間をネジの締め具合によって調整しているが、これに限定されることなく、締着体の隙間を広狭することができる手段であれば、どのような手段であってもよい。
【0051】
実施例1.
【0052】
モノリス構造のシリカからなる外径19mm、長さ50mmの円柱状の担体2を用意し、80〜150℃に加熱すると熱収縮するフッ素樹脂からなる内径25mm、長さ60mmの円筒状の被覆体3を用意した。そして、担体2を被覆体3に挿入して100℃にて加熱することにより、被覆体3を熱収縮させて担体2に密着させた。なお、被覆体3の担体2より長い部分は切除した。
【0053】
次に、ステンレスからなる内径20mm、長さ50mmの円筒を軸方向に沿って伸びる幅0.5mmの隙間によって分断してなる締着体4を用意し、ゴムからなる内径19mmのシーリング5を用意し、ステンレスからなるリング体21、シール体22及びキャップ体23から構成される接続具6を用意した。なお、シール体22の接続孔28における押圧面26に貫通する開口は直径1.5mmである。そして、被覆体3に覆われた担体2を締着体4に挿入した後、シーリング5を閉じ込めるように接続具6を組み立てカラム1を得た。
【0054】
続いて、得られたカラム1の接続具6にクロマトグラフィー装置(型番:ナノスペースSI-1;株式会社資生堂製)側の接続具を接続した。そして、クロマトグラフィー装置によってカラム1に試料を所定条件にて注入し、カラム1から溶出する物質を測定してクロマトグラムを作成した。
【0055】
なお、移動相は、メタノール60vol%と水40vol%とし、その流量を20ml/minに設定した。また、試料として、ウラシル0.1mg/ml、安息香酸メチル2.2mg/ml、トルエン8.7mg/ml及びナフタレン0.9mg/mlを移動相に溶解したものを用意し、カラム温度を常温(25℃)にして測定を実施した。
【0056】
前記測定によって得られたクロマトグラムを図11に示す。当該クロマトグラムにおいては、各溶質がカラム内で充分分離されて溶出したことが検出された。そして、最後に検出されたナフタレンのピーク4に基づいて理論段数を計算したところ1836という数値が得られた。
【0057】
実施例2
【0058】
前記実施例1の締着体4に内面を周回する深さ0.5mm、幅1.0mmの段溝29を1.0mmピッチで複数形成した他は、前記実施例1と同様にしてカラム1を得た。
【0059】
得られたカラム1を用いて前記実施例1と同様の条件にて測定を実施してクロマトグラムを作成した。
【0060】
前記測定によって得られたクロマトグラムを図12に示す。当該クロマトグラムにおいても、各溶質がカラム内で充分分離されて溶出したことが検出された。そして、最後に検出されたナフタレンのピーク4に基づいて理論段数を計算したところ1311という数値が得られた。
【0061】
実施例3.
【0062】
前記実施例1の締着体4に内面を周回する深さ1.0mm、幅2.0mmの段溝29を2.0mmピッチで複数形成した他は、前記実施例1と同様にしてカラムを得た。
【0063】
得られたカラム1を用いて前記実施例1と同様の条件にて測定を実施してクロマトグラムを作成した。
【0064】
前記測定によって得られたクロマトグラムを図13に示す。当該クロマトグラムにおいても、各溶質がカラム内で充分分離されて溶出したことが検出された。そして、最後に検出されたナフタレンのピーク4に基づいて理論段数を計算したところ5133という数値が得られた。
【0065】
実施例4.
【0066】
モノリス構造のシリカからなる外径1.0mm、長さ50mmの円柱状の担体2を用意し、80〜150℃に加熱すると熱収縮するフッ素樹脂からなる内径1.3mm、長さ60mmの円筒状の被覆体2を用意した。そして、担体2を被覆体3に挿入して100℃にて加熱することにより、被覆体3を熱収縮させて担体2に密着させた。なお、被覆体3の担体2より長い部分は切除した。
【0067】
次に、PEEK樹脂からなる内径1.9mm、長さ50mmの円筒を軸方向に沿って伸びる幅1.5mmの隙間によって分断してなる締着体4を用意し、ゴムからなる内径2.0mmのシーリング5を用意し、PEEK樹脂からなる接続具34を用意した。なお、接続具34の接続孔38における押圧部37に貫通する開口は直径1.5mmである。そして、被覆体3に覆われた担体2を締着体4に挿入した後、シーリング5を閉じ込めるように接続具34を組み立てカラム1を得た。
【0068】
得られたカラム1を用いて、移動相をアセトニトリル60%と水40%とし、その流量を100μl/minに設定した他は、前記実施例1と同様の条件にて測定を実施してクロマトグラムを作成した。
【0069】
前記測定によって得られたクロマトグラムを図14のに示す。当該クロマトグラムにおいても、各溶質がカラム内で充分分離されて溶出したことが検出された。そして、最後に検出されたナフタレンのピーク4に基づいて理論段数を計算したところ2246という数値が得られた。
【0070】
なお、図11〜図14において、横軸は、カラムに試料が注入されてから経過した時間[min]を示しており、縦軸は、カラムから溶出する物質を検出するクロマトグラフィー装置に備えられたUV-VIS検知器より出力される電圧値[mV]を示している。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施の形態1に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解斜視図である。
【図2】実施の形態2に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解断面図である。
【図3】図2に示すクロマトグラフィー用カラムを組み立てた状態を示した断面図である。
【図4】図2に示す締着体を示した横断面図である。
【図5】実施の形態1における締着体の変形例を示した縦断面図である。
【図6】実施の形態1における締着体の他の変形例を示した縦断面図である。
【図7】実施の形態1における締着体の他の変形例を示した横断面図である。
【図8】実施の形態3に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解斜視図である。
【図9】実施の形態3に係るクロマトグラフィー用カラムを示した分解断面図である。
【図10】図9に示すクロマトグラフィー用カラムを組み立てた状態を示した断面図である。
【図11】実施例1の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図12】実施例2の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図13】実施例3の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図14】実施例4の測定によって得られたクロマトグラムである。
【符号の説明】
【0072】
1 クロマトグラフィー用カラム
2 担体
3 被覆体
4 締着体
5 シーリング
6 接続具
7 開口
8 隙間
9 端面
10 段差
11 ネジ溝
12 分断面
13,14 ネジ孔
15,16 ネジ
17,18,19,20 ネジ溝
21 リング体
22 シール体
23 キャップ体
24 突起面
25 バンク面
26 押圧面
27 突起部
28 接続孔
29 段溝
30 隙間
31 分断面
32 ネジ孔
33 ネジ
34 接続具
35 ネジ溝
36 中空部
37 押圧部
38 接続孔
39 開口
40 突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド状の担体と該担体を被覆する被覆体と該被覆体の担体に対する密着性を調節する締着体とを備えており、締着体は被覆体の周面を囲む筒状に形成されていると共に両開口を結ぶように伸びる少なくとも一つの隙間によって分断されており、締着体の隙間幅を広狭させることによって被覆体の担体に対する密着性が調節されることを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。
【請求項2】
締着体の開口を塞ぐように接続具が取り付けられている請求項1記載のクロマトグラフィー用カラム。
【請求項3】
被覆体で覆われた担体の先端にシーリングが嵌められている請求項1又は2のいずれかに記載のクロマトグラフィー用カラム。
【請求項4】
シーリングが締着体内面に沿うように位置付けられており、締着体の隙間幅を広狭させることによってシーリングの被覆体に対する密着性が調節される請求項3記載のクロマトグラフィー用カラム。
【請求項5】
シーリングが被覆体で被覆された担体を挿入する中空に向かって傾斜したバンク面上に位置付けられており、シーリングを接続具によって締着体側へ押さえ付けることによってシーリングの被覆体に対する密着性が調節される請求項3記載のクロマトグラフィー用カラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−244086(P2009−244086A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90749(P2008−90749)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)