説明

クロマトグラフ迅速試験の測定範囲の拡張

【課題】試料中のアナライトの定量的に測定する方法と装置を提供する。
【解決手段】本発明の方法では、作成した検定グラフはアナライト特異的物質と試料中のアナライトとの反応から生じる測定シグナルが、所望の精度でのアナライトの定量的測定に十分であるかを検査するための基礎として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中のアナライトを定量的に測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、薬物、妊娠ホルモン、感染症又はCARDIACマーカーなどのアナライトを迅速に測定する一般的な分析方法は、免疫学的テストストリップを利用する。この関連で、単に視覚的に読み出される定性試験(例えばCARDIAC D-ダイマー、Trop Tセンシティブなど)、並びに読出し装置(例えばElecsys(登録商標)proBNP、Roche CARDIAC proBNPなど)を用いて評価される定量試験が広く使用されている。
【0003】
このような定量的な免疫学的テストストリップは、特に、その取り扱いの簡便さによって特徴付けられる。これらのテストストリップは、通常、テストストリップが試料中のアナライトとの反応によって検出可能なシグナルをもたらす試薬を含むという事実を基礎とする。検出可能なシグナルは、通常、指定の時間後の反射率測定によって測定される。アナライトと試薬とを接触させてからシグナルを測定するまでの時間は可能な限り長く選択される。これにより、試薬とアナライトとの長い反応時間が保証され、その結果、かかるテストストリップの可能な最大の感度が保証される。しかし、反応速度論的理由のために、そのような長い反応時間後、試料中に高濃度で存在するアナライトを定量的に測定することはもはや可能ではない。
【0004】
したがって、このようなテストストリップは、その性能の点で、慣用の実験分析システム(例えばElecsys (Roche Diagnostics)、IM(Abbott)、Dimension(Dade Behring)など)に比較して、依然としてかなりの欠点を有する。特に測定精度及び動的測定範囲は、テストストリップにおいて、例えば溶液中の反応に比較してかなり損なわれる。このため、高感度並びに可能な限り広い測定範囲を要求するアナライトを測定する際にその使用が制限される。特に患者の救急治療の場合、その高感度に起因して、一方で特定の疾患を高い信頼性で排除することができるが、他方で広範な測定範囲も与えることができる試験又は方法が得られれば、主治医にとって非常に有用であろう。アナライトの広い測定範囲は、重症度分類(risk stratification)及び治療モニタリングに特に望まれる。試験の測定範囲の拡張は、症状の特性であるアナライト又はマーカーの濃度が病態の重篤度に相関する病的症状に特に所望であろう。このような場合に、マーカー濃度(例えばNT-proBNP)の上昇は、患者のリスク状況の増加を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の1つの目的は、試料中のアナライトの定量的測定範囲を拡張する方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、
(a)アナライトと接触したときに、検出可能なシグナルを生成する反応をすることが可能なアナライト特異的物質を準備し、
(b)少なくとも2つの検定グラフを準備し、但し該検定グラフは、各同一のアナライト特異的物質と、様々な量の各同一の試験アナライトとを、各所定反応時間にわたって反応させることによって作成されたものである、
(c)アナライト特異的物質を、検出されるべきアナライトを含む試料と接触させ、
(d)(b)で準備した第1の検定グラフの第1の所定反応時間でシグナルを測定し、
(e)(d)に従って測定したシグナルが、所望の精度でのアナライトの定量的測定を可能にするかを検査し、
(f)(1)所望の精度に至っている場合には、(d)に従って測定したシグナルに基づいてアナライトを定量的に測定し、或いは(2)(b)で準備した第2の検定グラフの第2の所定反応時間でシグナルを測定し、
(g)(f)(2)に従って測定したシグナルが、所望の精度でのアナライトの定量的測定を可能にするかを検査し、そして
(h)(1')所望の精度に至っている場合には、(f)(2)に従って測定したシグナルに基づいてアナライトを定量的に測定し、或いは(2')少なくとも1つの別の所定反応時間で測定を継続する((f)(2)、(g)、(h)(1')に相当する)、すなわち場合により、
(i)(b)で準備した第3の検定グラフの第3の所定反応時間でシグナルを測定し、
(j)(i)に従って測定したシグナルが、所望の精度でのアナライトの定量的測定を可能にするかを検査し、
(k)(1")所望の精度に至っている場合には、(i)に従って測定したシグナルに基づいてアナライトを定量的に測定し、或いは(2")少なくとも1つの別の所定反応時間で測定を継続する
ことを含む、試料中のアナライトの定量的測定によって達成される。
【0007】
この方法の工程(f)(2)、(g)及び(h)(1')は、所望なだけ繰り返すことができる。好適な実施形態では、これらの工程は2回又は3回繰り返される、すなわち、2つ又は3つの所定反応時間に対して2つ又は3つの検定グラフが作成又は準備される。
【0008】
本発明の別の態様は、
(a)アナライトと接触したときに、検出可能なシグナルを生成する反応をすることが可能なアナライト特異的物質を準備し、
(b)少なくとも2つの検定グラフを準備し、但し該検定グラフは、各同一のアナライト特異的物質と、様々な量の各同一の試験アナライトとを、各所定反応時間にわたって反応させることによって作成されたものである、
(c)アナライト特異的物質を、検出されるべきアナライトを含む試料と接触させ、
(d)(b)で準備した第1の検定グラフの第1の所定反応時間で第1のシグナルを測定し、
(e)(b)で準備した第2の検定グラフの第2の所定反応時間で第2のシグナルを測定し、
(f)場合により、更なるシグナルを測定し、
(g)(d)、(e)又は(f)に従って測定したいずれのシグナルがアナライトを定量的に測定するための十分な精度を可能にするかを検査し、そして
(h)適切な精度を可能にするシグナルに基づいてアナライトを定量的に測定する
ことを含む、サンプル中のアナライトを定量的に測定する方法に関する。
【0009】
第1の測定シグナル又は第2の測定シグナルが、より良い精度でのアナライトの定量的測定を可能にするかを検査するために、好適な実施形態では、準備される少なくとも2つの検定グラフに基づいて経験的な濃度限度が規定される。この限度を超えるアナライトの濃度は、2つの反応時間のうちのより短いものに従って評価されるが、この限度を下回るアナライトの濃度は2つの反応時間うちのより長いものに従って測定される。アナライトの濃度が上記短い反応時間後にこの限度を上回る、すなわち高いアナライト濃度が測定されることがわかった場合、この方法をこの時点で停止することができる。
【発明の効果】
【0010】
驚くべきことに、本発明の方法により、測定範囲の上限を公知の先行技術の方法に比較して3倍超増加できることがわかった。したがって、本発明の方法は、主治医の診断能力を向上させる。
【0011】
本発明による試験の測定範囲の拡張により、しばしば追加の面倒な試験(例えば侵襲性の診断法など)を省略することができる。
【0012】
下記で詳細に記載されるように、本発明の方法は、先行文献に記載されている方法又は試験よりも迅速な濃度の(特に試料中の高アナライト濃度の)測定を可能にする。例えば、NT-proBNPの血中レベルは心機能異常の程度に相関するため、本発明の方法は緊急事態に患者の心臓特異的状態をより迅速に評価することができる。このため、緊急の心臓事象(例えば急性心筋梗塞など)が起ったとき、患者を現在の診断法によるよりも早急に診断しかつ適切に治療できるという利点が得られる。本発明の方法によって、特に緊急の心臓事象の場合により迅速に診断できることによって、主治医はより迅速に適当な対応策を開始することが可能になり、その結果、他の心合併症及び死亡率を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態では、好ましくは体液由来の、液体試料を使用する。血液、血漿、血清、唾液又は尿サンプルを使用することが特に好ましい。
【0014】
定量的に測定されるべきアナライトは、核酸、脂質、炭水化物、タンパク質から、特にDNA、RNA、抗体、抗原、代謝産物、ホルモン、ウイルス、微生物、細胞、心臓特異的マーカー、神経ホルモンマーカー、虚血マーカー及び筋肉特異的マーカーから選択することが好ましい。
【0015】
脂質の好適な例としては、コレステロール、HDLコレステロール及びトリグリセリドが挙げられる。特に好適な炭水化物アナライトはグルコースである。測定される酵素の例としては、アルカリホスファターゼ及びアミラーゼが挙げられる。尿酸、ビリルビン及びウロビリノーゲンは代謝産物の好適な例である。
【0016】
神経ホルモンマーカーの例としては、心房性(A型)ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、又は各プロペプチドNT-ProANP及びNT-ProBNPのN末端断片が挙げられる。
【0017】
虚血マーカーの例としては、虚血変性アルブミン(IMA)、脂肪酸結合タンパク質、遊離脂肪酸、妊娠関連血漿タンパク質A、グリコーゲンホスホリラーゼイソ酵素BB及びスフィンゴシン-1-リン酸が挙げられる。
【0018】
ミオグロビン及びクレアチンキナーゼMB(CK-MB)は、筋肉特異的マーカーの好適な例である。
【0019】
CD40は血小板活性化に関するマーカーの好適な例である。
【0020】
好適な心臓特異的虚血-壊死マーカーはトロポニンT又はトロポニンIである。
【0021】
特に好適な実施形態では、好ましくはトロポニンT、ミオグロビン、D-ダイマー及びNT-proBNPから選択される少なくとも1種のCARDIACマーカー又は心臓特異的マーカーを測定する。
【0022】
アナライト特異的物質は、アナライトと結合可能な受容体、抗体、抗原、レクチン、核酸及び核酸類似体から選択することが好ましい。アナライト特異的物質は、アナライトと結合したときに検出可能なシグナルを生成する酵素又は検出試薬とさらに結合されていることが好ましい。好適な実施形態では、アナライトとアナライト特異的物質との結合の結果、直接反応によって、検出可能なシグナルが生じる。別の実施形態では、アナライトがアナライト特異的物質に結合した後に、アナライト又はアナライト特異的物質のいずれかによって変換されて検出可能なシグナルを放出する基質を添加することができる。好適な検出系は、例えばコロイド金属粒子、特に金、蛍光ナノ粒子、例えばラテックス、アップコンバージョン燐光体(up-converting phosphors)、量子ドット又は超常磁性粒子である。
【0023】
本発明に従って好適に測定されるアナライトであるBNP又はNT-proBNPの検出は、例えばStruthers (Eur. Heart J. 20 (1999), 1374-1375)、Huntら,Clin. Endocrinol. 47 (1997, 287-296)、Talwarら(Eur. Heart J. 20 (1999), 1736-1744)、並びにEP-0 648 228及びWO 00/45176に記載されている。
【0024】
好適な実施形態では、アナライトとアナライト特異的物質との間の反応は免疫反応である。
【0025】
本発明の意味において、「検定グラフ」は、規定量の試験アナライトを検出可能なシグナルを記述する規定のパラメーターに割り当てることによって導き出される関数として理解される。このプロセスでは、規定量の試験アナライトは、このプロセスにおける規定シグナルを記述するパラメーターに割り当てられる。複数の好ましくは独立の測定から導き出される平均値も検定グラフを作成するために使用することができる。
【0026】
検出可能なシグナルを記述するパラメーターは、好ましくは、アナライトとアナライト特異的物質との反応の結果としてある波長の光の吸収又は放出を記述するパラメーターである。シグナルを記述するパラメーターの好適な例は、反射率、発光及び吸光値である。さらに、例えば磁気粒子を用いて、シグナルを記述するパラメーターとして磁場(磁場状態)を考慮することも可能である。
【0027】
検出可能なシグナルを記述するパラメーターは、各同一のアナライト特異的物質と、様々な量の各同一のアナライトとを、各所定反応時間にわたって反応させることによって測定することが好ましい。このために、個別量の各同一の試験アナライトを、各同一のアナライト特異的物質と反応させ、検出可能なシグナルを所定反応時間後に測定する。これは、各同一のアナライト特異的物質及び各同一の試験アナライトを様々な量で使用して検定グラフを作成することを意味する。5〜50の異なる試験アナライト量(すなわち様々な別個の反応)、より好ましくは10〜40の個別の反応、そして最も好ましくは10〜25の個別の反応を、所定反応時間ごとに、対応数の試験アナライト量をシグナル記述パラメーターに割り当てるために実施して、検定グラフを作成する。
【0028】
検定グラフを作成する前に、実験的に測定した値を動的評価プロセスに供することもでき、この評価プロセスで決定された値を使用して検定グラフを作成することもできる。
【0029】
試験アナライトと定量的に検出されるべきアナライトとが同一であることが好ましい。
【0030】
本発明の方法では、作成した検定グラフはアナライト特異的物質と試料中のアナライトとの反応から生じる測定シグナルが、所望の精度でのアナライトの定量的測定に十分であるかを検査するための基礎として使用される。精度はシグナルの振幅又は精密さを考慮する特別の分野で公知の評価手順を用いて検査することができる。
【0031】
本発明の好適な実施形態では、所定反応時間後に測定されるアナライトとアナライト特異的物質との間のシグナルを、これに対応する所定反応時間で準備された検定グラフと比較する。測定されるべきアナライトの量に関する所望の精度は、観測された検定グラフが、所定の全検定曲線のうちで、対応する試験アナライトの量について最大の傾きを有する場合に達成される。
【0032】
検定グラフを決定するための少なくとも2つの所定反応時間は、試料中のより高濃度のアナライトを検出でき、かつ必要な試験感度をも達成するように選択する。必要な試験感度を達成するために、可能な限り長い反応時間とすることが必要である。反応時間が短いほど、アナライト特異的物質とアナライトとの間で形成される複合体、好ましくは免疫複合体が少なくなる。これに対応してより低いシグナル強度が検出される。一方、アナライト濃度が低い場合は、形成される複合体、好ましくは免疫複合体は少なくなり過ぎ、試験の感度が失われる。しかし、濃度が高い場合、実質的により多くの複合体が得られ、その結果、短い反応時間であっても明確なシグナル及び高いシグナル強度を検出することができる。アナライトとアナライト特異的物質との間の反応の定量的測定範囲は、必要な感度を保証する長い反応時間と、より高濃度を検出するために使用する短い反応時間とを組合せることによって著しく増加する。
【0033】
したがって、アナライトとアナライト特異的物質との反応に関して、アナライトとアナライト特異的物質との反応が飽和領域又は定常状態となる所定反応時間として長い反応時間が選択される。別の所定反応時間を、これより短くなるように選択して、これらの短い所定反応時間ではアナライト特異的物質とアナライトとの反応が飽和領域又は定常状態とならないものとすることが好ましい。長い反応時間のおよそ半分に相当する時間を少なくとも1つの短い反応時間として選択することが好ましい。
【0034】
アナライト特異的物質は、支持体、好ましくはテストストリップ又は迅速テストストリップ(試薬担体又はデバイスとも称する)上に準備されることが好ましい。また、言うまでもなくアナライトは液体試験で測定することもできる。しかし、アナライト特異的物質又はアナライトを測定するために使用される試薬が1以上の乾燥域に配置され、サンプルとの接触後に可溶化し、検出可能なシグナルが、検出域、好ましくは検出域とは別個の領域で検出される、試験デバイス(試験担体、特にテストストリップ)上での測定が好ましい。特に所定の規定時間後にアナライトを定量的に測定するのに適当な市販の全てのテストストリップを本発明の方法に使用することができる。
【0035】
使用するテストストリップの測定範囲の限度は、本発明の方法によって2〜5倍、好ましくは3倍超拡張することができる。
【0036】
本発明の別の態様では、定量的に測定されるべきアナライトに加えて、別のアナライトを同一の支持体上で定性的に及び/又は定量的に測定する。そのとき、これに対応して、より多くのアナライト特異的物質が支持体上に存在する。この場合、アナライト特異的物質と結合した検出試薬を用い、単一試験形式(例えば酵素試験、電気化学発光試験、蛍光又は吸光試験、或いは濁度試験)により全アナライトの定性的又は定量的測定を可能にすることがさらに好都合である。言うまでもなく、異なるアナライト特異的物質用の異なる検出試薬が単一のテストストリップ上に存在していてもよい。
【0037】
特に好適な実施形態では、Roche-CARDIAC-proBNPテストストリップを使用する。
【0038】
このように、60〜3000pg/mlの範囲であるRoche-CARDIAC-proBNPテストストリップの測定範囲は、本発明の方法によって60〜10000pg/mlまで拡張することができる。したがって、本発明の好適な実施形態は、好ましくはトロポニンT、ミオグロビン、D-ダイマー及びNT-proBNPから選択されるアナライトの濃度の定量的測定に関する。NT-proBNPの場合、測定は、例えばアナライト特異的物質とアナライトとの3〜9分、好ましくは8分の短い反応時間により、3000〜10000pg/mlの範囲で実施される。60〜3000pg/mlの濃度範囲でのNT-proBNPの測定は、好ましくは10〜15分、好ましくは12分の長い反応時間により実施する。
【0039】
アナライトとアナライト特異的物質との間の反応から生じる検出可能なシグナルは、光学的方法によって、特に反射光度又は蛍光検出、或いは電気化学発光によって定量的に測定することが好ましい。他の好適な定量的測定方法としては、誘電率の変化、伝導度測定値、磁場の変化又は偏光の旋光度の変化、の測定が挙げられる。
【0040】
本発明の別の好適な実施形態では、この方法は自動的形態、好ましくは自動分析器で実施される。
【0041】
本発明の別の態様は、本発明の方法を実施するための装置に関する。この装置は、所与のアナライトについて一度作成した検定グラフを保存した記憶素子を備える。記憶素子の例としては、共通の全データ担体(ROMキー、ハード・ドライブ、CD、ディスク、DVD、USBスティックなど)がある。この場合、保存した検定グラフを複数のアナライト試料の連続的な定量的測定のために備えることができる。
【0042】
本発明の方法は、特に急性冠症候群に罹患した患者を同定するために、特に急性の冠動脈事象の早期検出を向上させるために、例えば急性心筋梗塞の早期検出を向上させるために使用することができる。
【実施例】
【0043】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。
【0044】
実施例:
6、8及び12分の反応時間後の検定グラフをCARDIAC-proBNPテストストリップを用いて作成した。proBNPの各量は、Elecsys-proBNP参照法(図1)によって測定した。検定グラフは、傾きが反応時間の減少とともに減少することを示す。結果として、シグナル振幅及び、その結果、3000pg/mlより高い濃度で感度が増大する。
【0045】
本発明の方法に従って使用したCARDIAC-proBNP試験と、Elecsys-proBNP試験との間の方法比較(図2)は、12分後に60〜2800pg/mlの濃度範囲、及び8分後に2800pg/ml超の濃度(これは経験的に決定した又は規定の反射率の値に相当する)を評価することによって得られる。
【0046】
Elecsys-proBNP参照法による測定値の比較は、2つの異なる反応時間を用い、本発明に従って実施したCARDIAC-proBNP試験が、60〜約10000pg/mlの定量的測定範囲を有することを示した。12分後に3000pg/mlの測定範囲の上限を有する従来の評価に比較して、測定範囲の上限はこのように3倍超増加した。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は6分、8分及び12分後のCARDIAC-proBNPの反射率の動力学を示す。反射率(%)を、Elecsys-proBNP参照試験によって測定したproBNPの濃度(pg/ml)に対してプロットする。
【図2】図2は、CARDIAC-proBNPテストストリップを用いた本発明の方法とElecsys-proBNP試験との間の方法比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のアナライトを定量的に測定する方法であって、
(a)アナライトと接触したときに、検出可能なシグナルを生成する反応をすることが可能なアナライト特異的物質を準備し、
(b)各同一のアナライト特異的物質と、様々な量の各同一の試験アナライトとを、各所定反応時間にわたって反応させることによって作成された少なくとも2つの検定グラフを準備し、
(c)アナライト特異的物質を、検出されるべきアナライトを含む試料と接触させ、
(d)(b)で準備した第1の検定グラフの第1の所定反応時間でシグナルを測定し、
(e)(d)に従って測定したシグナルが、所望の精度でのアナライトの定量的測定を可能にするかを検査し、
(f)(i)所望の精度に至っている場合には、(d)に従って測定したシグナルに基づいてアナライトを定量的に測定し、或いは(ii)(b)で準備した第2の検定グラフの第2の所定反応時間でシグナルを測定し、
(g)(f)(ii)に従って測定したシグナルが、所望の精度でのアナライトの定量的測定を可能にするかを検査し、そして
(h)(i)所望の精度に至っている場合には、(f)(ii)に従って測定したシグナルに基づいてアナライトを定量的に測定し、或いは(ii)少なくとも1つの別の所定反応時間で測定を継続する((f)(ii)、(g)、(h)(i)に相当する)
ことを含む、上記方法。
【請求項2】
試料中のアナライトを定量的に測定する方法であって、
(a)アナライトと接触したときに、検出可能なシグナルを生成する反応をすることが可能なアナライト特異的物質を準備し、
(b)各同一のアナライト特異的物質と、様々な量の各同一の試験アナライトとを、各所定反応時間にわたって反応させることによって作成された少なくとも2つの検定グラフを準備し、
(c)アナライト特異的物質を、検出されるべきアナライトを含む試料と接触させ、
(d)(b)で準備した第1の検定グラフの第1の所定反応時間で第1のシグナルを測定し、
(e)(b)で準備した第2の検定グラフの第2の所定反応時間で第2のシグナルを測定し、
(f)場合により、更なるシグナルを測定し、
(g)(d)、(e)又は(f)に従って測定したいずれのシグナルがアナライトを定量的に測定するための十分な精度を可能にするかを検査し、そして
(h)適切な精度を可能にするシグナルに基づいてアナライトを定量的に測定する
ことを含む、上記方法。
【請求項3】
アナライトの定量的測定の精度を検定グラフの傾きを用いて検査することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
試験アナライトと定量的に測定されるべきアナライトとが同一であることを特徴とする請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
2つ又は3つの検定グラフを準備することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
支持体、好ましくはテストストリップを使用してアナライト特異的物質を準備することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
測定されるべきアナライトの測定範囲の限度が、2〜5倍、好ましくは3倍超拡張されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
体液、好ましくは血液、血漿、血清、唾液又は尿試料由来の試料を用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
定量的に測定されるべきアナライトと同時に、追加のアナライトを定性的に及び/又は定量的に測定することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
アナライトを核酸、脂質、炭水化物、タンパク質、特にDNA、RNA、抗体、抗原、代謝産物、ホルモン、ウイルス、微生物、細胞、心臓特異的マーカー、神経ホルモンマーカー、虚血マーカー及び筋肉特異的マーカーから選択することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
トロポニンT、ミオグロビン、D-ダイマー及びNT-proBNPから選択される少なくとも1つの心臓特異的マーカーを測定することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アナライト特異的物質を、アナライトと結合可能な抗体、受容体、抗原、レクチン、核酸及び核酸類似体から選択し、ここでアナライト特異的物質が好ましくは検出試薬に結合されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アナライトとアナライト特異的物質との反応が好ましくは免疫反応であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
定量的測定を光学的方法、特に反射光度又は蛍光検出、或いは電気化学発光によって実施することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法を自動的様式で進めることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−70366(P2008−70366A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−234331(P2007−234331)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT