説明

グラフト重合物の製造方法

【課題】前照射法によるグラフト重合物の製造において、グラフト重合を円滑に進行させた上で、生成したグラフト重合物を固液分離により回収する。
【解決手段】水溶性多糖類及び/又はその誘導体よりなる基材に反応性モノマーをグラフト重合させてグラフト重合物を製造する方法において、放射線を照射した水溶性多糖類及び/又はその誘導体を、該水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒と水との混合溶媒中で、反応性モノマーと反応させることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。貧溶媒としてはエタノール等の炭素数2以上のアルコールが好ましく、混合溶媒中の水の含有量は10重量%以下、特に2〜5重量%とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラフト重合物の製造方法に係り、特に放射線を照射した水溶性多糖類及び/又はその誘導体に反応性モノマーをグラフト重合させて、グラフト重合物を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却場より排出される飛灰、有害物質により汚染された土壌、産業廃棄物最終処分場で埋設処理される廃棄物、工場排水、工場や下水水処理場などから排出される悪臭ガスなどに含まれる有害物質の捕集材として、本出願人は先に、メチルセルロース等の生分解性水溶性基材に導入されたグラフト鎖に、有害物質捕捉能を有する官能基を結合させてなる有害物質捕集材を提案した(特許文献1)。この有害物質捕集材は、基材として生分解性水溶性基材を用いているため、環境への負荷が小さい。また、基材が水溶性であるため、排水、汚染土壌、臭気物質含有空気等に十分に拡散させることができ、有害物質の除去能力に優れたものになる。さらに、このように有害物質の除去能力が高いため、有害物質捕集材の使用量を削減することができ、環境への負荷をより一層低減することが可能であると共に、経済性にも優れる。
【0003】
この有害物質捕集材を製造するには、まず、生分解性水溶性基材に反応性モノマーをグラフト重合させてグラフト鎖を導入し、得られたグラフト重合物のグラフト鎖部分に有害物質捕捉能を有する官能基を反応させて製造される。
【0004】
このグラフト重合物の製造に当って、特許文献1では、メチルセルロース等の基材に、放射線を照射してラジカルを生成させ、その後、この放射線照射基材を反応溶媒中で反応性モノマー(特許文献1の実施例ではメタクリル酸グリシジル)と反応させてグラフト重合物を得る。特許文献1には、この反応溶媒として、「典型的には、水、メタノール等のアルコール類、非プロトン性の極性溶媒であるジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド、エーテル類、又はそれらの混合液を使用することができる。」と記載されているが、特許文献1の実施例ではメタノールの単独溶媒が使用されている。
【特許文献1】特開2008−105025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが、水溶性基材に放射線を照射した後、反応溶媒中で反応性モノマーをグラフト重合させてグラフト重合物を製造する方法(以下、この方法を「前照射法」と称す場合がある。)について検討した結果、次のことが判明した。
【0006】
即ち、反応溶媒として水溶性基材の良溶媒であるメタノールや水を用いると、グラフト重合物はこれらの反応溶媒に溶解した状態で生成するため、これを固液分離により回収することができない。
【0007】
グラフト重合物のグラフト鎖に更に前述の有害物質捕捉能を有する官能基を結合させるためには、反応生成液中に生成したグラフト重合物を固液分離により反応溶媒と分離して一旦回収し、回収したグラフト重合物に対して、次工程で官能基を導入する反応を行うことが反応操作上有利であるが、上述の如く、メタノールや水といった水溶性基材の良溶媒を反応溶媒として用いた場合には、グラフト重合物を固液分離により回収することができない。
【0008】
一方、反応溶媒としてエタノール等の、水溶性基材の貧溶媒を用いると、前照射法でグラフト重合を進行させることができない。本発明者らの検討により、これは、水溶性基材に放射線を照射することにより生成したラジカルが、この水溶性基材に親和性のない貧溶媒中では反応活性を示さず、この結果、このラジカルに対して反応性モノマーがグラフト重合し得ないためと考えられた。
【0009】
本発明は上記従来の問題点を解決し、前照射法によるグラフト重合物の製造において、グラフト重合を円滑に進行させた上で、生成したグラフト重合物を固液分離により回収することができるグラフト重合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、前照射法によるグラフト重合物の製造に当たり、反応溶媒として、エタノール等の貧溶媒と水との混合溶媒を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0011】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0012】
[1] 水溶性多糖類及び/又はその誘導体よりなる基材に反応性モノマーをグラフト重合させてグラフト重合物を製造する方法において、放射線を照射した水溶性多糖類及び/又はその誘導体を、該水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒と水との混合溶媒中で、反応性モノマーと反応させることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【0013】
[2] [1]において、前記貧溶媒が炭素数2以上のアルコールであることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【0014】
[3] [1]又は[2]において、前記混合溶媒中の水の含有量が10重量%以下であることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【0015】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記水溶性多糖類及び/又はその誘導体が、天然セルロース、合成セルロース、でんぷん、キトサン及びグルコースからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【0016】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記反応性モノマーがグリシジル系化合物であることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【0017】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記貧溶媒、水及び反応性モノマーをそれぞれ脱酸素処理して用いることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【0018】
[7] [1]ないし[6]のいずれかにおいて、グラフト重合物を反応生成液から固液分離により回収することを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放射線を照射した水溶性多糖類及び/又はその誘導体に反応性モノマーをグラフト重合させて、グラフト重合物を製造するに当たり、反応溶媒として、水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒と水との混合溶媒を用いることにより、グラフト重合を円滑に進行させた上で、反応生成液中のグラフト重合物を固液分離により容易に回収することが可能となる。
【0020】
即ち、反応溶媒中に、水を含むことから、放射線照射で水溶性多糖類及び/又はその誘導体上に生成したラジカルが、十分な反応活性を示すことにより、グラフト重合が円滑に進行し、また、水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒を含むことから、水溶性多糖類及び/又はその誘導体を基材とするグラフト重合物は、反応液中で固体として析出するため、これを濾過等により容易に固液分離して回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明のグラフト重合物の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
本発明のグラフト重合物の製造方法は、放射線を照射した水溶性多糖類及び/又はその誘導体を、水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒と水との混合溶媒よりなる反応溶媒中で反応性モノマーと反応させてグラフト重合物を得るものである。
【0023】
<水溶性多糖類及び/又はその誘導体>
本発明において、グラフト重合物の基材となる水溶性多糖類及び/又はその誘導体としては、水溶性の多糖類ないしその誘導体であれば良く、特に制限はないが、例えば、天然セルロース類、合成セルロース類、水溶性のセルロース誘導体例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース、でんぷん類、キトサン類、例えばキトサンの塩酸塩、酢酸塩などの水溶性塩、グルコース(ブドウ糖)など、好ましくはメチルセルロース等のアルキルセルロースのような水溶性のセルロース誘導体が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0024】
<反応性モノマー>
水溶性多糖類及び/又はその誘導体にグラフト重合させる反応性モノマーとしては、放射線照射により水溶性多糖類及び/又はその誘導体上に生成したラジカルに対してグラフト重合可能なものであれば良く、特に制限はないが、各種薬剤等の用途に適用すべく、得られたグラフト重合物のグラフト鎖に更に有害物質捕捉能を有する官能基等を結合させるためには、当該官能基との反応性を有するものが好ましく、反応性官能基として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基などをグラフト鎖に導入し得るもの、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアルコール、グリシジルエステル(例えば、グリシジルアルコールの脂肪酸エステル)、グリシジルエーテル等のグリシジル系化合物、その他アリルアミンなど、好ましくはGMA等のグリシジル系化合物が挙げられる。これらの反応性モノマーは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0025】
<反応溶媒>
本発明において、反応溶媒としては、前述の水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒と水との混合溶媒を用いる。
【0026】
ここで、水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒とは、グラフト重合後にグラフト重合物が固体として存在し得る程度に、水溶性多糖類及び/又はその誘導体に対する溶解性の低いものであれば良く、例えば、エタノール、プロパノール等の炭素数2以上のアルコール、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの貧溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0027】
反応溶媒中の水の含有量は、少な過ぎると水を用いたことによるグラフト重合の促進効果が得られず、多過ぎると得られるグラフト重合物が反応溶媒中に溶解し易くなり、固液分離による回収ができないか、或いは回収率が低下することとなる。従って、反応溶媒中の水の含有量は、用いる貧溶媒の種類によっても異なるが、10重量%以下、例えば、1〜10重量%、中でも2〜5重量%とすることが好ましい。
【0028】
<脱酸素処理>
本発明に係るグラフト重合は、反応系に酸素が存在すると放射線照射で水溶性多糖類及び/又はその誘導体上に生成したラジカルが酸素により失活し、グラフト重合が阻害される。
【0029】
従って、反応に供する反応溶媒や反応性モノマーは、予め窒素ガス通気等により脱酸素処理を行って、溶存酸素を十分に除去しておくことが好ましい。
【0030】
この脱酸素処理において、貧溶媒と水との混合後の混合溶媒や、この混合溶媒に更に反応性モノマーを混合した混合液に対して窒素ガス通気(以下「窒素曝気」と称す場合がある。)を行うと、溶媒の気散で混合比率が変化して目的とするグラフト重合を行えなくなるため、貧溶媒、水及び反応性モノマーは各々別々に予め脱酸素処理した後、反応に供することが好ましい。
【0031】
この脱酸素処理としては、窒素曝気の他、ヘリウムガス、アルゴンガス等の他の不活性ガスの通気、真空ポンプ等による吸引による減圧脱気等を行うことができるが、特に経済的であることにより、窒素曝気が好ましい。
【0032】
<放射線>
本発明において、放射線としては電子線やγ線を用いることができる。
【0033】
<使用割合>
本発明において、水溶性多糖類及び/又はその誘導体、混合溶媒、反応性モノマーの使用割合は特に制限はないが、次のような範囲とすることが好ましい。
【0034】
反応性モノマーの使用量は、目的とするグラフト重合率に応じて適宜調整されるが、少な過ぎると、得られるグラフト重合物の用途において、グラフト鎖導入の機能を十分に得ることができないおそれなるため、用いる水溶性多糖類及び/又はその誘導体に対して1重量倍以上、特に5重量倍以上とすることが好ましい。ただし、反応性モノマーの使用量が多過ぎると反応に関与しない反応性モノマー量が多量に残留し経済的に不利であるため、水溶性多糖類及び/又はその誘導体に対して20重量倍以下、特に10重量倍以下とすることが好ましい。本発明では、水溶性多糖類及び/又はその誘導体に対して、反応性モノマーをこのような割合で用いて、グラフト率10〜90%、特に40〜60%のグラフト重合物を得ることが好ましい。ここで、グラフト率とは、水溶性多糖類及び/又はその誘導体に対する反応性モノマーのグラフト重合割合であり、理論的には[{(生成したグラフト重合物の重量)−(用いた水溶性多糖類及び/又はその誘導体の重量)}/(用いた水溶性多糖類及び/又はその誘導体の重量)]×100で算出される。
【0035】
反応溶媒である水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒と水との混合溶媒の使用量は、少な過ぎるとグラフト重合が円滑に進行し得ず、多過ぎると反応系の容量が大きくなり、不経済であることから、混合溶媒と反応性モノマーとの混合液中の反応性モノマーの濃度が5〜30重量%、特に10〜20重量%となるような量とすることが好ましい。
【0036】
<反応操作、反応条件>
本発明において、グラフト重合反応の操作は、例えば、次のようにして実施される。
【0037】
まず、水溶性多糖類及び/又はその誘導体に放射線を照射して、水溶性多糖類及び/又はその誘導体上にラジカルを生成させる。水溶性多糖類及び/又はその誘導体への放射線照射は、真空(減圧)雰囲気下、又は、窒素等の不溶性ガス雰囲気下、室温又はドライアイスなどによる冷却下で実施される。照射線量は水溶性多糖類及び/又はその誘導体にラジカルを生成させるのに充分な線量であることを条件に適宜決定することができるが、典型的には10〜200kGyである。
【0038】
別に、反応に用いる水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒、水及び反応性モノマーを、それぞれ別々に窒素曝気するなどして脱酸素処理する。
【0039】
脱酸素処理した貧溶媒、水及び反応性モノマーを、放射線照射した水溶性多糖類及び/又はその誘導体と混合する直前に混合し、混合液中に放射線照射した水溶性多糖類及び/又はその誘導体を投入し、加熱して反応させる。
【0040】
加熱温度は、反応性モノマーの反応性に依存するが、典型的には40〜70℃であり、好ましくは40〜50℃である。反応時間は30分〜24時間であるが、反応温度と必要とされるグラフト率とに依存して決定することができる。反応温度及び反応時間とともに反応率を決定する因子であり、同様に適宜決定することができる。
【0041】
反応後は、グラフト重合物を濾過等により固液分離して回収し、減圧乾燥等により乾燥することにより、目的のグラフト重合物を得ることができる。
【0042】
なお、水溶性多糖類及び/又はその誘導体に放射線照射した後、この水溶性多糖類及び/又はその誘導体を、反応性モノマーを混合溶媒に混合した混合液に投入してグラフト重合を行うまでの時間は、ラジカルが消失するため、過度に長くない方が良い。即ち、放射線照射後の水溶性多糖類及び/又はその誘導体をグラフト重合に供するまでの時間が長いとグラフト率が低下する。従って、水溶性多糖類及び/又はその誘導体は、放射線照射後、24時間以内にグラフト重合に供することが好ましい。
【0043】
<用途>
本発明の方法により製造されるグラフト重合物は、前述の特許文献1に記載される有害物質捕集材の中間体として有用であり、このグラフト重合物のグラフト鎖に更に、有害物質捕捉能を有する官能基を反応させて、各種用途に有用な有害物質捕集材を製造することができる。
【0044】
この場合、有害物質捕捉能を有する官能基としては、廃水、汚染土壌、臭気含有空気などの処理対象中に含まれる有害物質を効率的に捕捉することができる官能基が選択される。例えば、以下の表1に示す官能基の1種又は2種以上が選択される。
【0045】
【表1】

【0046】
これらの官能基をグラフト鎖に導入するには、例えば、目的の官能基を含む塩などの水溶液やイソプロピルアルコール(IPA)の溶解液にグラフト重合物を浸漬し、必要に応じて加熱すればよい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0048】
なお、以下において、メチルセルロースとしては信越化学工業(株)社製「SM25乾燥品」を用い、また、GMAとしては東京化成工業(株)製試薬特級を、エタノールとしては和光純薬工業(株)製試薬特級を用いた。
【0049】
また、反応成績は、反応生成液を濾過して得られた固形分を乾燥した後重量(回収量)を測定し、反応に供したメチルセルロースの重量(供試量)とから、以下式により回収率を算出し、この回収率の値で比較した。ここで、グラフト重合が円滑に進行し、また生成したグラフト重合物を濾過で分離可能な場合、供試量は、生成したグラフト重合物の基材量とみなすことができ、また、回収量に生成したグラフト重合物量とみなすことができることから、回収率はグラフト率にほぼ等しいと言える。
回収率(%)={(回収量−供試量)/供試量}×100
【0050】
[実施例1,2、比較例1]
メチルセルロース2gに、窒素置換条件下、電子線を60kGy照射してラジカルを生成させた。
この電子線照射メチルセルロースを、電子線照射後24時間以内に、GMA、エタノール、及び純水を表2に示す割合で混合して得られた混合液(ただし、比較例1では、水を使用せず)100gに添加して真空条件下、50℃で表2に示す時間加温した。なお、用いたGMA、エタノール及び水は、各々、予め2時間以上の窒素曝気により脱酸素処理したものである。
【0051】
反応後、反応生成物をガラス繊維濾紙で濾過して回収し、減圧乾燥して生成物(グラフト重合物)の重量を計測し、回収率を算出して結果を表2に示した。
【0052】
【表2】

【0053】
表2より、エタノールと水との混合溶媒を用いることにより、グラフト重合を進行させると共に、生成したグラフト重合物を固液分離により回収することができることが分かる。
なお、比較例1では、水を用いていないことによるメチルセルロースの一部溶解及びテクニカルロスで、固液分離回収ができなかったことにより、回収率がマイナスとなっている。
【0054】
[実施例3〜6、参考例1]
実施例1において、メチルセルロースへの電子線照射量を100kGyとし、また、GMA、エタノール及び純水の混合割合を表3に示す割合としたこと以外は同様にして反応を行い、同様に回収率を調べ、結果を表3に示した。
【0055】
【表3】

【0056】
表3より、水をエタノールと水との合計に対して10重量%以下用いることにより、グラフト重合物を固液分離により回収することができることが分かる。
【0057】
[参考例2〜6]
実施例1において、メチルセルロースへの電子線照射量を100kGyとし、また、GMA、エタノール及び純水の窒素曝気による脱酸素処理を、GMA、エタノール及び純水の混合液に対して表4に示す時間行い、加温時間を表4に示す時間としたこと以外は同様にして反応を行い、同様に回収率を調べ、結果を表4に示した。
【0058】
【表4】

【0059】
表4より、GMA、エタノール及び水を混合した後窒素曝気を行うと、エタノールと水との混合比がずれることにより、反応結果が安定しないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性多糖類及び/又はその誘導体よりなる基材に反応性モノマーをグラフト重合させてグラフト重合物を製造する方法において、
放射線を照射した水溶性多糖類及び/又はその誘導体を、該水溶性多糖類及び/又はその誘導体の貧溶媒と水との混合溶媒中で、反応性モノマーと反応させることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記貧溶媒が炭素数2以上のアルコールであることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記混合溶媒中の水の含有量が10重量%以下であることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記水溶性多糖類及び/又はその誘導体が、天然セルロース、合成セルロース、でんぷん、キトサン及びグルコースからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記反応性モノマーがグリシジル系化合物であることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記貧溶媒、水及び反応性モノマーをそれぞれ脱酸素処理して用いることを特徴とするグラフト重合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、グラフト重合物を反応生成液から固液分離により回収することを特徴とするグラフト重合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−83996(P2010−83996A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254103(P2008−254103)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(391030882)オリエンタル技研工業株式会社 (5)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】