説明

ケイ酸ナトリウム水溶液の脱アルカリケイ酸水溶液の製造方法、及び製造装置

【課題】 高アルカリ性のケイ酸ナトリウム水溶液からアルカリ性分を除去し、pHを自由に変動できるケイ酸水溶液を製造する方法、及びその装置
【解決手段】 電解槽は陽極室、及び陰極室と隔膜(陽イオン交換膜等)で仕切られた室を設け、各室に電極板を配備する。陽極室にはケイ酸ナトリウム水溶液を供給ポンプにより、また、陰極室には陽極室に供給される水溶液の電気伝導度を同等にした塩化ナトリウム水溶液、またはケイ酸ナトリウム水溶液等を供給ポンプを用いて循環供給する。陽極電極板、及び陰極電極板に電解電流を印加することにより、陽極室のケイ酸ナトリウム水溶液のNaイオンが陽イオン交換膜を通り陰極室に移行する。この操作によって、脱アルカリ性のケイ酸水溶液を生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強アルカリ性であるケイ酸ナトリウム水溶液水からアルカリ性分を除去し、pHを自由に変動できるケイ酸水溶液を生成するための技術である。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では化学薬品を用いてアルカリ性分を除去する方法、イオン交換樹脂を用いて除去する方法、及び電気分解と化学薬品を併用して生成する方法がなされていた。
しかしながら、ケイ酸ナトリウム水溶液からアルカリ成分を除去する方法は、化学薬品を使用することによって生成されたケイ酸水溶液中に化学薬品が残留するため、その薬品を除去しなければならず、またその品質が低下し、多大な工程を必要としていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近のケイ酸ナトリウム水溶液からケイ酸水溶液を生成する方法として、電気泳動法による電気分解の方式が用いられているが、得られるケイ酸水溶液のpHは、アルカリ性から中性領域までの範囲のものがほとんどである。他方、酸性領域のケイ酸水溶液を得るには、一度電気泳動を停止し、その溶液に酸を加える加酸工程が入り、難しいのが実情である。
【0004】
当該の発明の技術は、ケイ酸水溶液のpH範囲が2.5〜12まで自由に嘱望するpHのケイ酸水溶液を選択的に生成することが可能である。そのため、pH測定器、あるいは電気伝導度のセンサーを設け、所定のpHのケイ酸水溶が生成され、制御できるように装置を製造した。
【0005】
また、ケイ酸ナトリウム水溶液を電解槽に供給して電気分解することで、隔膜と特に電解槽の陽極室、及び電極板にケイ酸イオンを含む化合物が付着、もしくは沈着し、電気分解の電解効率を低下させることが生じる。
【0006】
この電解効率の低下を防止するために、定期的に電極板への電源供給の極性を逆にすると共に、陽極室には酸性電解質を、陰極室には水道水、または塩化ナトリウム等を供給しながら数分間電気分解することにより、陽極室の電極板、及び隔膜等に付着、もしくは沈着した化合物等が排出される。
このような工夫したケイ酸水溶液からアルカリ性分を除去する製造方法、及び製造装置を提供することである。
【発明が解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するための手段は下記のようである。
電解槽は陽極室、及び陰極室と隔膜(陽イオン交換膜等)で仕切られた室を設け、各室に電極板を配備する。陽極室にはケイ酸ナトリウム水溶液を供給ポンプにより、また、陰極室には陽極室に供給される水溶液の電気伝導度を同等にした塩化ナトリウム水溶液、またはケイ酸ナトリウム水溶液等を供給ポンプを用いて循環供給する。
【0008】
それと同時に、陽極電極板、及び陰極電極板に電解電流を印加することにより、陽極室のケイ酸ナトリウム水溶液のNaイオンが陽イオン交換膜を通り陰極室に移行する。その結果、アルカリ性のケイ酸ナトリウム水溶液が酸性側に傾いていく。これによって、脱アルカリ性のケイ酸水溶液を生成することができる。
【0009】
なお、嘱望するケイ酸水溶液の生成制御回路については、操作盤に表示される嘱望されるpH、または電気伝導度の数値を設定することにより、陽極室に接続されるセンサーボックに電気伝導度測定、またはpH測定のために設置されたセンサーからの電気信号を制御回路に伝達される。これにより、嘱望するpH、または電気伝導度との数値を比較し、その数値が同等であれば装置の動作を停止し、嘱望するpHの脱アルカリ性のケイ酸水溶液が生成されたことを表示する。もしくはブザーで知らせることを可能にしている。
【発明の効果】
【0010】
ケイ酸ナトリウム水溶液から化学薬品を用いずに、また、薬品除去の後処理を行うことなく、自由にpHを変動できる脱アルカリ性のケイ酸水溶液を生成することができる。
【実施例1】
【0011】
最初に、ケイ酸ナトリウムを水で希釈(3号溶液)し、8mass%のケイ酸ナトリウム水溶液を作成し、YS1のタンクに入れる。その水溶液の性状はpHが12.20で、電気伝導度15.23mS/cmであった。次にYA1のタンクには水道水を入れ、それに塩化ナトリウムを投入し、電気伝導度が約10.00mS/cm 程度の水溶液を作成する。
【0012】
SV1及びSV2の三方電磁弁を設置することで、陽極室の電解質はYS1タンクで、陰極室の電解質はYA1タンクで循環できるように、循環ポンプPV1及びPV2を設置し、動作させる。その後、電解電流電源を電解槽の陽極端子(MT2)及び陰極端子(MT1)に36VDC30Aを印加する。
【0013】
8mass%のケイ酸ナトリウム水溶液50リットルから、pH9.00の脱アルカリ性のケイ酸水溶液を生成するには、約4時間30分を必要とし、pH3.00の脱アルカリ性のケイ酸水溶液を生成するには約6時間を必要とした。
【0014】
pH9.00での電気伝導度は、2.2mS/cmであり、pH5.00では0.20mS/cmに、pH3.00では0.24mS/cmまで低下し、また、電解電流は1A以下まで低下した。
【0015】
生成されたケイ酸水溶液のケイ酸濃度は11727mg/L (ppm分光光度計による測定)であり、また、Naイオン濃度は、電解前は7900mg/LであったのがpH3.00では6.4mg/Lまで低下していた。これらの結果より、脱アルカリ性のケイ酸水溶液が生成したことが確認された。
【実施例2】
【0016】
ケイ酸脱水溶液が生成された後、一旦、装置を停止し、三方電磁弁SV1,SV2をHS1タンクの酸電解質(塩酸等)が陽極室に、またSV3,SV4を酸性排水タンクの電解質(水道水とアルカリ水の混合水)が陰極室に供給できるように切替える。
【0017】
その後、電解電流電源の極性を切替え、今まで陽極端子(MT2)に供給されていた正電圧を陰極端子(MT1)に、また、陰極端子(MT1)に供給されていた負電圧を陽極端子(MT2)にする。
【0018】
巡回ポンプPV1とPV2を動作させ、その後に電源電流電源を印加し、電気分解を約30分間行う。それにより、酸電解質がpH1.5にあったものが、陽極室の化合物が排出されて、pHが約12.00まで上昇する。これより電解槽内の電極、隔膜等に付着、もしくは沈着していた化合物が洗浄され、電解効率を低下させることなく、次の電気分解が正常に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ケイ酸ナトリウム水溶液からケイ酸水溶液を製造する装置
【符号の説明】
【0020】
1 電解槽
IK 隔膜(陽イオン交換膜)
MD1 MD2 :電極板(チタンベース、白金)
MT1 Mt2 :電極端子
SE センサーボックス(pH,電気伝導度の電極)
SV1 SV2 :三方電磁弁
PV1 PV2 :循環ポンプ
YS1 ケイ酸ナトリウム水溶液、及び脱アルカリ性ケイ酸水溶液貯水タンク
HS1 酸電解質及び酸廃液貯水タンク
YA1 塩化ナトリウム水溶液、及びアルカリ性水溶液貯水タンク
HA1 酸性排水貯水タンク
DK 電解電流電源、制御回路、及び操作パネルと表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸ナトリウム水溶液を電気分解することにより、pHを酸性からアルカリ性まで自由に変動できるケイ酸水溶液を生成する方法、及び製造装置
【請求項2】
電気分解により生じる電極への化合物の付着、もしくは沈着による分解能の低下、及び分解能の防止方法
【請求項3】
電気分解により生じる電極への化合物の付着、もしくは沈着による電解槽の保護のための逆電解方法

【図1】
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