説明

ケイ酸塩無機高分子系ホウ素吸着材料及びその製造方法

【課題】ホウ素吸着能力に優れたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ホウ素吸着能力に優れたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を製造する方法であって、ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物及び/又は遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製し、上記工程で副生成した塩を除去し、上記前駆体懸濁液に、水熱反応を行い、上記工程により、ホウ素吸着能力に優れたケイ酸塩無機高分子を合成する、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法、及びそのケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料。
【効果】本発明のホウ素吸着材料は、無機化合物本来の優れた耐水性、耐熱性や耐腐食性に優れるため、空気中に存在する有害物質の吸着材料、水中に溶解している有機溶剤や農薬のような有機化合物の有害物質の吸着、廃水処理や浄水処理、触媒担体、等の環境浄化材料として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法、及びケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料に関するものであり、更に詳しくは、水熱反応を利用して、化学組成や細孔構造の制御された、優れたホウ素吸着能力を有するケイ酸塩無機高分子を合成する方法、及びホウ素吸着性能に優れたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料に関するものである。本発明は、ホウ素吸着能力を有する、ケイ酸塩無機高分子を、低コストで、かつ安全に、大量に製造することを可能とする新しいホウ素吸着能力を有するケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法、及び該方法で作製されるケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホウ素は、高等植物にとっては、必須の微量栄養素であり、成長に必要な最適な濃度には、種差がある。ホウ素は、自然界の至る所に存在するが、ヒトにおいて、ホウ素の暴露は、主に食物と飲料水を介して起こる。ホウ酸塩の哺乳動物に対する毒性は、微弱であるが、長期間にわたる過剰摂取は、危険を伴うとされている。世界保健機構(WHO)は、飲料水中のホウ素は、1l当たり1mgを超えないよう指導している。
【0003】
飲料水中の世界的なホウ素の平均濃度は、0.1〜0.3mgホウ素/lの間であり、動物実験で、ホウ酸とホウ酸塩の形のホウ素は、通常の暴露濃度より、約100倍から1000倍高い濃度で、生殖及び発生毒性が証明されている。ホウ素は、男性の生殖機能に与える影響の調査における最優先物質となっており、不妊症の病歴に関し、ホウ素の暴露を受けていない調査対象は、4.8%であるのに比べ、暴露を受けている調査対象は、9.6%であることが報告されている。
【0004】
2001年に、水質汚濁防止法(1970)が改正され、排水基準に、「ホウ素及びその化合物」が追加された(排水基準:10mg/l以下)。この暫定基準は、2010年から強化される見通しであり、厳しい「新基準」に移行する予定となっている。これは、工場排水に主眼を置いた規制であるが、温泉旅館も、工場並みの排水規制がかけられる。
【0005】
この規制強化は、ここ十年程の間に生じた、日本の湖沼での急激なホウ素濃度の上昇に起因しており、日本における環境基準値の1mg/lを超える事例が出現しているためである。環境科学では、廃水は、河川に流れ込んで10倍程度に希釈されると想定されるため、排水中のホウ素濃度の許容限界は、10mg/lと決定された。廃水規制は、飲料水の品質確保のため、必要な措置といえる。
【0006】
この様な点で、ホウ素を含む薬剤を扱う工場においては、その廃水処理に、多くの努力をしているところであるが、設備投資や使用薬品の経費等で、改良されるべき課題が、多く残っているのが現状である。従来法として、アルミニウム及びカルシウム化合物による凝集沈殿法によるホウ素の除去が提案されている。この場合、ホウ素を1kg除去するに当たり、化合物中のアルミニウム量として、約30kgが必要となり、同様に、化合物としてのカルシウムも多量に必要とされ、使用する薬剤コストに問題が生じる。
【0007】
また、イオン交換樹脂の使用によるホウ素除去も提案されているが、例えば、多種多様な化合物を含有するメッキ排水を処理する場合、有機物による汚染や樹脂の目詰まり等の問題が生じるため、交換樹脂ラインに直接メッキ排水を通過させることが困難となる。そのための事前濾過装置設置等の設備投資を行う必要が出てくる。更に、活性炭プレフィルターや、イオン交換樹脂自体が高額であるため、費用対性能比率が低くなる。
【0008】
従来、ホウ素吸着材料として、架橋型共重合体に官能基を導入した高分子多孔体(特許文献1、2)、有機高分子樹脂に金属酸化物を担持させた多孔性成形体(特許文献3)、天然アロフェンを主成分とする火山灰土壌を用いたホウ素除去材料(特許文献4、5)、等が提案されている。また、従来、ホウ素吸着材料として、架橋型共重合体に官能基を導入した高分子多孔体や有機高分子樹脂に、金属酸化物を担持させた多孔性成形体の作製等が試みられている。
【0009】
しかし、従来、担体の化学組成や表面物性を制御して、ホウ素に対する吸着親和性を制御した例はなく、また、従来のホウ素吸着材料は、吸着能力に満足できるものではなかった。また、従来、水熱反応を利用して、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を合成することは、行われておらず、また、例えば、水熱反応を用いて、ケイ酸塩高分子重合体に、N−メチル−D−グルコサミンを担持させたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を合成することも全く知られていない。
【0010】
環境を汚染する無機化合物の吸着担持には、高比表面積かつメソ細孔を有する固体の使用が有効であり、また、水中における極性分子の捕捉には、固体マトリックスの電荷分布も制御できることが望ましい。例えば、火山噴出物の風化鉱物として、地球表層中に産出するケイ酸塩群は、その特異な形状に起因する微細構造により、高比表面積や高細孔容積及び選択的イオン交換能を有することが明らかとなっている。
【0011】
しかし、天然に産出するケイ酸塩無機高分子群は、夾雑物等の混入や、粒径や、周期構造・化学組成等が広範に分布していること及び地殻の微量構成成分であることから、土壌からの分離精製が困難であった。そのため、天然に産出するケイ酸塩無機高分子群は、物理的化学的特性を十分に発揮することが難しく、これまで、材料工学的観点からの特性評価については、殆ど研究がなされていなかった。
【0012】
【特許文献1】特開2003−64128号公報
【特許文献2】特開2004−337749号公報
【特許文献3】特開2007−14826号公報
【特許文献4】特開2002−263640号公報
【特許文献5】特開2004−283760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、ケイ酸塩無機高分子を用いて、表面露出水酸基による優れた吸着能力による酸性雨の緩和、有害物質の吸着や省エネルギーを念頭に置いた調湿材料、ヒートポンプ用吸着材料等の地球環境に優しい物質としての利用や、触媒担体、脱臭剤、ガス分離剤、セラミックフィルター等、広範な産業分野での利用が期待される、新しいホウ素吸着材料及びその製造方法を開発することを目標として鋭意研究を重ねた。
【0014】
その結果、本発明者らは、環境親和材料として有用であり、かつ多孔質であり、化学組成や細孔構造の制御されたケイ酸塩無機高分子が、優れたホウ素吸着能力を有することを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。本発明は、化学組成や細孔構造の制御された多孔質ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法、及び当該方法で作製したケイ酸塩無機高分子から構成されるホウ素吸着材料を提供することを目的とするものである。本発明でいうホウ素吸着材料とは、ホウ素吸着材(部材)のことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)ケイ酸化合物を構成要素として含むケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を製造する方法であって、
1)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物及び/又は遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製し、2)上記工程で副生成した塩を除去し、3)上記前駆体懸濁液を用いて、水熱反応による熟成反応を行い、4)これらの工程により、多孔質のケイ素酸塩無機高分子を合成することを特徴とする、ケイ酸塩化合物を構成要素として含むケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
(2)上記ケイ素化合物が、オルトケイ酸塩、オルトケイ酸アルキル、メタケイ酸塩、又は無定形コロイド状二酸化ケイ素である、前記(1)に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
(3)上記ケイ酸塩化合物に、N−メチル−D−グルコサミンよる表面処理を施すことにより、所定の有機官能基で表面修飾する、前記(1)に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
(4)上記ケイ酸塩化合物を、加熱あるいはグラインディング(破砕)することで、表面水酸基を露出させる、前記(1)に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
(5)無機ケイ酸塩化合物が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体、アルミニウム及び/又は遷移金属よりなる群から選ばれる1種又は2種以上からなるケイ酸塩の内から選ばれた少なくとも一種のケイ酸塩である、前記(1)に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
(6)溶液の濃度が、それぞれ、1mmol/l〜10000mol/lのケイ素化合物の溶液と、アルミニウム化合物及び/又は遷移金属化合物の溶液を混合する、前記(1)のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
(7)無機高分子を形成するケイ酸粒子の直径平均値が、1〜10nmの範囲にあり、窒素吸着による比表面積が10m/g以上である、前記(1)に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
(8)ケイ素と、アルミニウム及び/又は遷移金属化合物のモル比率が、0.1〜5.0である、前記(1)に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
(9)前記(1)から(6)のいずれかに記載の方法で製造されたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料であって、無機高分子を形成するケイ酸塩の中空球の直径平均値が、1〜10nmの範囲にあり、窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gであり、ホウ素吸着能を有することを特徴とするケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料。
(10)上記無機高分子を形成するケイ酸塩が、アロフェン又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体である、前記(8)に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料。
【0016】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明では、ホウ素吸着能に優れたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を得るための出発原料として、ケイ素化合物と、アルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物が用いられる。ケイ素源として使用される試剤は、モノケイ酸であれば良く、具体的には、例えば、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸アルキル、メタケイ酸ナトリウム、無定形コロイド状二酸化ケイ素(エアロジル等)等が好適なものとして挙げられる。
【0017】
これらのケイ酸化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。上記ケイ酸塩分子集合体と結合させるアルミニウム源としては、アルミニウムイオンであれば良く、具体的には、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルキル化合物等のアルミニウム化合物が好適なものとして挙げられる。
【0018】
また、遷移金属化合物源としては、それらのイオンであれば良く、例えば、バナジウム、鉄、タングステン、チタン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム等の遷移金属化合物、例えば、それらの塩化物、硫化物、水酸化物、硝酸塩ならびに有機金属塩等が好適なものとして挙げられる。
【0019】
これらのアルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。これらのケイ素源と、アルミニウム源あるいは遷移金属源は、上記の化合物に制限されるものではなく、それらと同効のものであれば同様に使用することができる。
【0020】
本発明のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、これらの出発原料を、水に溶解して、1mmol/l〜10000mol/l濃度のケイ素化合物水溶液と、1mmol/l〜10000mol/l濃度のアルミニウム化合物あるいはバナジウム、鉄、タングステン、チタン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム等の遷移金属化合物等の1種類以上の水溶液を調製する。
【0021】
これらの溶液を、分速1ml〜10000lで、同時混合あるいは両溶液を急速混合して、混合溶液を得る。この時のケイ素/アルミニウムあるいは遷移金属化合物のモル比率は、0.1〜5.0程度が望ましく、化学組成を制御することで、細孔構造が制御される。モル比が0.1を下回ると、副生成物として、ベーマイトやギブサイトを生成し、また、5.0を上回ると、非晶質シリカが副生成物として、多量に生成する。
【0022】
また、前駆体溶液の液性は、弱酸性から中性付近(pH3からpH8)程度が好ましく、好適にはpH6から8付近である。組成を制御する目的で、混合溶液のpHが大幅に上記領域よりずれる場合、液性を調製するために、酸成分として、塩酸、硝酸ならびに硫酸をあらかじめ遷移金属化合物溶液に計算して添加しておくか、又は、アルカリ成分として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ成分をあらかじめケイ素化合物溶液に計算して添加しておくことも有効である。
【0023】
この時、凝集阻止剤として、ポリエチレングリコールやポリビニールアルコール、界面活性剤等の水溶性あるいは非水溶性の試剤を添加しても良い。このように、アルミニウム/遷移金属溶液にケイ素化合物溶液を混合した後、もしpHが弱酸性領域であれば、アルカリ性溶液を0.1から5ml/分の速度で滴下して、pHが中性付近になるように調製して、前駆体を生成させる。この時、前駆体の生成過程に滴下するアルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等が挙げられる。勿論、混合段階で、溶液の液性が、中性付近のpH6.5から8の領域でも、前駆体は生成される。
【0024】
得られた前駆体懸濁液は、室温で、0.1〜72時間程度、振盪した後、反応副生成物である塩を除去する。その除去方法は、特に制限されないが、好適には、例えば、限外濾過、遠心分離機による分離等で行うことができる。脱塩後、除去した量と同量の純水を添加し、良く分散させる。
【0025】
生成されるケイ酸塩の形態を制御するために、この時、もし必要であれば、その前駆体懸濁液に、酸性溶液を添加して、pHが3から6の弱酸性溶液、好適にはpH3.5から4.5付近になるような弱酸性に調整する。この時、使用する酸性溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、過塩素酸等が挙げられる。
【0026】
本発明のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法は、上記ケイ酸塩前駆体用いて、水熱反応を利用することにより、化学組成や細孔構造の制御された多孔質のケイ酸塩を生成させることを特徴とするものである。
【0027】
所定濃度の出発溶液より調製した前駆体懸濁液を、所定の温度で加熱して、反応させる。反応温度の範囲は20〜150℃であり、反応時間は12〜240時間程度である。この時、懸濁液の水分が蒸発しないような方法で、加熱熟成を行えば良く、例えば、反応装置として、オートクレーブをはじめとする密閉容器や、冷却管付きマントルヒーター等を用いることができる。好適には、100℃前後で、48時間程度の条件が望ましい。
【0028】
反応終了後、得られた生成物は、そのまま、あるいは数回純水で洗浄処理、乾燥を行うことにより、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料が合成される。得られた生成物は、無機化合物であるため、耐熱性が高く、比較的過酷な条件下で、乾燥させることができるが、乾燥条件としては、常圧下、温度40〜100℃が好適である。
【0029】
この場合は、反応終了後の懸濁液に、アルカリ性水溶液を添加することで、溶液の液性をpH8〜12程度に調整し、生成物をゲル状物質として凝集させて回収しても良い。この時用いられるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等が挙げられる。更に、その後、アルカリ溶液で凝集したゲル状生成物を遠心分離器や半透膜を用いて回収することもできる。
【0030】
凝集阻止剤を添加している場合であれば、乾燥終了後、これを、200℃以下の温度で、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の有機溶媒で、1時間以上、抽出除去するか、あるいは、空気中、300〜600℃、保持時間1〜8時間の加熱処理を行うことにより、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料が得られる。
【0031】
本発明では、無機ケイ酸塩として、好適には、アロフェン、イモゴライト及びそれらの類似物の非晶質体ないし準結晶質体が挙げられる。それにより、球状又はチューブ状のアロフェン又はイモゴライト系のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を合成し、提供することが可能となる。
【0032】
上記方法により、比表面積が、10m/g以上であり、反応条件、及びケイ素化合物と他の金属元素化合物の比率を制御することにより、ホウ素吸着物性を変化させた、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を合成することができる。
【0033】
無機ケイ酸塩として、アロフェンを担持させる方法及び条件の一例を示すと、例えば、100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム溶液と、100mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を調製する。それぞれを、Si/Al比が0.75となるように秤量し、塩化アルミニウム溶液に、オルトケイ酸ナトリウム溶液を添加する。この時の混合溶液の液性が、pH4〜7付近になることが望ましく、十分に撹拌して、前駆体懸濁液を生成させる。
【0034】
この混合後の液性を制御するために、予め無機酸水溶液あるいは無機塩基水溶液を添加しておいても良い。液性が酸性側に移行するときには、前駆体懸濁液は、透明な溶液へと変化するが、その後、水酸化ナトリウム溶液を1ml/分程度でゆっくり添加して、液性をpH6〜7付近まで調整すると、前駆体は生成する。
【0035】
前駆体の生成と同時に、塩化ナトリウムが副生成するので、それを、遠心分離等を用いて除去し、前駆体を洗浄処理する。前駆体濃度10mmol/lの懸濁液100mlに、100℃で、48時間、オートクレーブを用いて水熱反応を行うことで、アロフェン系のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料が得られる。
【0036】
次に、無機ケイ酸塩として、イモゴライト系材料の合成方法及び条件の一例を示すと、例えば、100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム溶液と、100mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を調製し、Si/Al比が0.70となるように秤量し、塩化アルミニウム溶液にオルトケイ酸ナトリウム溶液を添加する。この時の混合溶液の液性が、pH4〜7付近になることが望ましく、十分に撹拌して、前駆体懸濁液を生成させる。
【0037】
この混合後の液性を制御するために、予め無機酸水溶液あるいは無機塩基水溶液を添加しておいても良い。液性が酸性側に移行するときには、前駆体懸濁液は、透明な溶液へと変化するが、その後、水酸化ナトリウム溶液を1ml/分程度でゆっくり添加して、液性をpH6付近まで調製すると、前駆体は生成する。前駆体の生成と同時に、塩化ナトリウムが副生成するので、それを遠心分離等を用いて除去し、前駆体を洗浄処理する。
【0038】
前駆体濃度20mmol/lの懸濁液100mlに、塩酸を加えて、pHが4になるように液性を調節する。100℃で48時間オートクレーブを用いて、水熱反応を行うことで、イモゴライト系のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料が得られる。アロフェン、イモゴライト両方に関して、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、出発無機溶液の濃度、及び反応前駆体の濃度によって、制御される。
【0039】
上記方法及び条件により、アロフェン系及びイモゴライト系のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料が合成される。アロフェン系の場合では、塊状の中空球状アロフェン粒子(中空球状粒子直径平均値が1〜10nm)凝集体が電子顕微鏡により確認され、イモゴライト系の場合では、繊維束(チューブ直径及びその繊維束直径が1nm〜100μm)が凝集したヒゲ状の塊が確認される。
【0040】
これらの生成物の理化学的性質を、以下に示す。BET法による比表面積、及びHK法による平均細孔直径が、それぞれ約500m/g及び約3nm程度であり、X線的には、アロフェン系では、Cu−Kα線で2θ=25〜26°付近と38〜42°付近のブロードなピークが確認され、イモゴライト系では、2θ=5〜20°付近に特徴のある3本のピークが確認される。
【0041】
本発明のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、ケイ酸塩化合物の多孔質性や、膜厚、形状を、前駆体の組成や、温度、浸積時間を変えることによって、制御することができる。ケイ素や他の金属化合物の含有率を低くしたり、反応温度を低くしたり、時間を短くした場合には、基材の表面に、ドメイン状のケイ酸塩が生成したり、ケイ酸塩の薄膜が生成する。ケイ素や他の金属化合物の含有率を高くしたり、反応温度を高くすることにより、ケイ酸塩の膜厚を厚くすることができる。
【0042】
また、本発明のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、例えば、環境浄化材料として使用される。上記ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を、水処理技術に関連した分野にも、応用可能であり、例えば、汚染帯水層の地下水浄化や、ゴミ焼却場の洗煙排水や、火力発電所の排煙脱硫排水、メッキ工場排水中等に含まれるホウ素を、除去及び回収するための吸着材料、として使用できる。
【0043】
更に、本発明によるケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、ケイ酸塩前駆体懸濁液の組成や、反応温度、時間を変化させることによって、表面の細孔径の大きさや、細孔分布の密度等を制御することができる。
【0044】
本発明は、有機官能基で表面修飾したケイ酸塩無機高分子の新規製造方法を提供するものとして有用であり、該方法で作製される有機官能基で表面修飾したケイ酸塩無機高分子は、優れた耐水性、耐熱性、耐腐食性、イオン交換能や吸着能、及び高比表面積を有し、それらの機能を利用した有害汚染物質吸着剤、脱臭剤、触媒担体、居室内や車内等の生活環境の湿度を自律的に制御する湿度調節材、メタンや水素等の天然ガスの貯蔵媒体等に応用可能なものとして有用である。
【発明の効果】
【0045】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)上記方法により得られるケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、前述のように、窒素吸着による比表面積が、10m/g以上であり、電子顕微鏡での観察により、合成方法に応じた、特異な形態(球状及び繊維状)が観察される。
(2)これらケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、既存の固体材料よりも、比表面積が大きいため、表面水酸基の露出度が高いことと、細孔径の制御された構造を有しているため、ホウ素以外の金属イオン、あるいはそれらの金属化合物等の吸着材料としての使用も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
メタケイ酸ナトリウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/lメタケイ酸ナトリウム水溶液を38.46ml調製し、この水溶液に1mol/l水酸化ナトリウム水溶液7.5mlを添加し、メタケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を50ml調製した。
【0048】
次に、この塩化アルミニウム溶液に、上記メタケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は0.75であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、1000mlの脱イオン水中に分散させた。
【0049】
この前駆体懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間、加熱した。加熱終了後、遠心分離機により充分に洗浄処理を行った。その後、これを、電気乾燥機中で、40℃、常圧で、乾燥し、アロフェン系のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を得た。
【0050】
このようにして得られたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、X線回折図形から、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークが20〜40°付近に確認された。窒素吸着による比表面積は、約500m/g、平均細孔直径は、約3nm程度の値を示した。
【実施例2】
【0051】
100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液と、150mmol/l塩化アルミニウム水溶液を、125mlずつ、それぞれ秤量した。塩化アルミニウム水溶液中に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で十分に撹拌した。撹拌しながら1mol/lの水酸化ナトリウムを、液性がpH6になるまで、1ml/分の速度で添加した。生成した前駆体を、遠心分離機により脱イオン水を用いて洗浄処理し、前駆体濃度が20mmol/lになるように、1000mlのオートクレーブ中に分散させた。
【0052】
この前駆体懸濁液に、5mol/lの塩酸水溶液を、pH4程度になるまで添加した。これを、撹拌後に、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間の水熱反応を行った。反応終了後、アンモニアを添加して、液性をpH10程度まで上昇させて、ゲル化し、ケイ酸塩無機高分子材料を凝集させ、脱イオン水を用いた遠心分離による洗浄処理を行った。その後、これを、電気乾燥機を用いて、40℃、常圧で、乾燥し、イモゴライト系のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を得た。
【0053】
このようにして得られたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、X線回折図形から、イモゴライト系ケイ酸塩成分の特徴である、若干ブロードなピークが、2〜15°付近に、3本確認された。窒素吸着による比表面積は、約400m/g、平均細孔直径は、約2nm程度の値を示した。
【実施例3】
【0054】
オルトケイ酸ナトリウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を50ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加し、オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、この塩化アルミニウム水溶液に、上記オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は0.50であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0055】
この前駆体懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間、加熱した。加熱終了後、遠心分離機により充分に洗浄処理を行った。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で、乾燥し、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を得た。
【0056】
このようにして得られたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、X回折図形から、非晶質ケイ酸塩成分の特徴である、ブロードなピークが確認された。窒素吸着によるBET比表面積は、360m/g、比細孔容積は、0.68cm/g、細孔径分布曲線より細孔ピーク直径は、8nm程度の数値を示した。蛍光X線分析より得られたSi/Al比は、0.62であった。
【実施例4】
【0057】
オルトケイ酸ナトリウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を75ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、この塩化アルミニウム水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は0.75であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0058】
この前駆体懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間、加熱した。加熱終了後、遠心分離機により充分に洗浄処理を行った。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で、乾燥し、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を得た。
【0059】
このようにして得られたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、X回折図形から、非晶質ケイ酸塩成分の特徴である、ブロードなピークが確認された。窒素吸着によるBET比表面積は、409m/g、比細孔容積は、0.63cm/g、細孔径分布曲線より細孔ピーク直径は、8nm程度の数値を示した。蛍光X線分析より得られたSi/Al比は、0.83であった。
【実施例5】
【0060】
オルトケイ酸ナトリウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を100ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、この水溶液に1mol/l塩酸10mlを添加し、塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液を調製した。次に、上記塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、1.00であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0061】
この前駆体懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間、加熱した。加熱終了後、遠心分離機により充分に洗浄処理を行った。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で、乾燥し、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を得た。
【0062】
このようにして得られたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、X回折図形から、非晶質ケイ酸塩成分の特徴である、ブロードなピークが確認された。窒素吸着によるBET比表面積は、398m/g、比細孔容積は、0.83cm/g、細孔径分布曲線より細孔ピーク直径は、14nm程度の数値を示した。蛍光X線分析より得られたSi/Al比は、0.99であった。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から明らかなように、窒素吸着によるBET比表面積が、400m/g程度、比細孔容積が、0.6から0.8cm/g程度、Si/Al比が、0.6から1.0程度のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料が合成されたことが確認された。得られた材料は、バルクのまま使用しても良いが、表面水酸基を更に露出させるために、長周期構造が破砕されない程度に、粉砕して使用することもできる。
【0065】
(1)吸着のpH依存性
本発明のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料のホウ素吸着におけるpH依存性を調査した。ケイ酸塩無機高分子材料1gに対して、5mg/l濃度のホウ酸水溶液100mlを添加し、溶液のpHを4から11まで変化させて、各段階でのホウ素濃度を測定した。溶液中のホウ素濃度の測定には、紫外可視吸収スペクトル法を用いた。その結果を図1に示した。図において、縦軸は、単位質量当たりのホウ素吸着率であり、横軸は、pHである。
【0066】
図中aは、実施例3の試料を、bは、実施例5の試料を、cは、実施例3の試料にN−メチル−D−グルコサミンよる表面処理を行った吸着材料を示している。実施例3及び実施例5の試料については、溶液のpHが9付近で吸着率が最大となり、溶液の液性による依存性が確認されたが、実施例3の試料にN−メチル−D−グルコサミンよる表面処理を行った吸着材料については、pHに依存することなく、広範囲において、一定の吸着率を示す傾向が確認された。
【0067】
(2)吸着の濃度依存性
最大吸着率を示す液性であるpH9.2でのホウ素吸着の濃度依存性を調査した。実施例3、4及び5の試料に、空気中、400℃で、2時間の熱処理を行った無機高分子材料についての吸着実験も同時に行った。ケイ酸塩無機高分子材料1gに対して、溶液のpHを9.2に調整した0〜100mg/l濃度のホウ酸水溶液100mlを添加し、各濃度段階でのホウ素濃度を測定した。
【0068】
図2に、その結果を吸着等温線(25℃)として示した。縦軸は、単位質量当たりのホウ素吸着量であり、横軸は、平衡濃度である。ケイ酸塩無機高分子材料に、熱処理を行うことで、表面吸着サイトである水酸基が露出し、ホウ素吸着量が大幅に増大したことが確認された。更に、Si/Al比の上昇に伴い、ホウ素吸着量も増加することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上詳述したように、本発明は、ケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料及びその製造方法に係るものであり、本発明の方法により合成される新しいケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、化学組成や細孔構造の制御されたケイ酸塩無機高分子材料の表面、あるいは細孔の空隙を利用して、優れたホウ素吸着能を示す。また、表面処理を行うことで、溶液のpHに依存しないホウ素吸着性能を賦与することもできる。更に、ケイ酸塩無機高分子の周期構造が壊変されない程度の温度領域で加熱を行い、表面水酸基を露出させることで、ホウ素吸着量を大幅に増大させることもできる。
【0070】
本発明による新しいケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、例えば、環境浄化材料として使用でき、無機化合物本来の優れた耐水性、耐熱性や耐腐食性に優れるため、例えば、悪臭や煙草の煙、NOx、SOxのような、空気中に存在する有害物質の吸着材料、水中に溶解している有機溶剤や農薬のような有機化合物の有害物質の吸着、廃水処理や浄水処理、触媒担体、居室内や車内等の生活環境の湿度を自律的に制御する湿度調節材や、その特異な形状を利用した薬剤のマイクロカプセルや、浄水用フィルター等、広範な産業分野での利用が可能である。
【0071】
更に、本発明のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料は、水処理技術に関連した分野にも応用可能であり、例えば、汚染帯水層の地下水浄化や、ゴミ焼却場の洗煙排水や火力発電所の排煙脱硫排水、メッキ工場排水中等に含まれるホウ素を、除去及び回収するための吸着材料、として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施例のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料のホウ素吸着に対するpH依存性を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施例のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料のホウ素吸着に対する吸着等温線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸化合物を構成要素として含むケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料を製造する方法であって、
(1)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物及び/又は遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製し、(2)上記工程で副生成した塩を除去し、(3)上記前駆体懸濁液を用いて、水熱反応による熟成反応を行い、(4)これらの工程により、多孔質のケイ素酸塩無機高分子を合成することを特徴とする、ケイ酸塩化合物を構成要素として含むケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
【請求項2】
上記ケイ素化合物が、オルトケイ酸塩、オルトケイ酸アルキル、メタケイ酸塩、又は無定形コロイド状二酸化ケイ素である、請求項1に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
【請求項3】
上記ケイ酸塩化合物に、N−メチル−D−グルコサミンよる表面処理を施すことにより、所定の有機官能基で表面修飾する、請求項1に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
【請求項4】
上記ケイ酸塩化合物を、加熱あるいはグラインディング(破砕)することで、表面水酸基を露出させる、請求項1に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
【請求項5】
無機ケイ酸塩化合物が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体、アルミニウム及び/又は遷移金属よりなる群から選ばれる1種又は2種以上からなるケイ酸塩の内から選ばれた少なくとも一種のケイ酸塩である、請求項1に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
【請求項6】
溶液の濃度が、それぞれ、1mmol/l〜10000mol/lのケイ素化合物の溶液と、アルミニウム化合物及び/又は遷移金属化合物の溶液を混合する、請求項1に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
【請求項7】
無機高分子を形成するケイ酸粒子の直径平均値が、1〜10nmの範囲にあり、窒素吸着による比表面積が10m/g以上である、請求項1に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
【請求項8】
ケイ素と、アルミニウム及び/又は遷移金属化合物のモル比率が、0.1〜5.0である、請求項1に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の方法で製造されたケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料であって、無機高分子を形成するケイ酸塩の中空球の直径平均値が、1〜10nmの範囲にあり、窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gであり、ホウ素吸着能を有することを特徴とするケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料。
【請求項10】
上記無機高分子を形成するケイ酸塩が、アロフェン又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体である、請求項8に記載のケイ酸塩無機高分子ホウ素吸着材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−155217(P2010−155217A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335325(P2008−335325)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】