説明

ケイ酸質・リン酸質複合肥料

【課題】製造が安価で土壌溶出性に優れたケイ酸質・リン酸質複合肥料の提供を目的とする。
【解決手段】ケイ酸質・リン酸質複合肥料は、ケイ酸ソーダにリン酸を添加してケイ酸をゲル化した後に、そのまま乾燥することで得られることを特徴とする。
ゲル化後に水洗工程を経ないので、固形物の中にリン酸のみならず、ソーダ(ナトリウム)成分をそのまま含有しているため、ケイ酸質肥料とリン酸質肥料の複合化において、ナトリウム成分が存在することで土壌中にナトリウムが水酸化ナトリウムとして溶解し、土壌中の鉄成分を水酸化鉄として不活性化するため、鉄成分によるリン酸の不溶化を防止するとともに、リン酸とケイ酸との相互作用により土壌への溶出性が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケイ酸質とリン酸質との複合肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
植物に対するケイ酸質肥料において、土壌への溶出性の高いものとして、シリカゲルが公知である。
シリカゲルは、SiO・nHOで可溶性ケイ酸95%以上含有することから、高成分のケイ酸質肥料としても使用されている。
しかし、シリカゲルはケイ酸ソーダ(水ガラス)に硫酸を加え、反応させて白色のゲル状ケイ酸を水洗し、不純物を除去後に加熱乾燥して製造されているので非常に高価である。
一方、植物に対する肥料としてはリン酸質肥料も不可欠であり、施肥性の観点から土壌中での溶解性の高い複合肥料に対する要望も高い。
【0003】
特開平9−268092号公報には、酸性ケイ酸ゾルにリン酸質肥料成分とマグネシウム質肥料成分を含有させたコロイド状ケイ酸含有液体肥料を開示する。
しかし、ケイ酸の酸性液体肥料では固化しやすく不安定であり、保存性が不充分であり、コロイド状液体なので施用における取り扱い性にも欠ける。
【0004】
特開平10−167864号公報には、リン酸成分を含む肥料成分をゲル状のシリカによって包含することでリン酸成分の不溶化を防止した技術を開示する。
しかしこの技術は、リン酸分解スラリーにケイ酸原料を加えて造粒化する工程を経ねばならない点で工程が複雑であり、吸湿による固化の恐れも高い。
【0005】
【特許文献1】特開平9−268092号公報
【特許文献2】特開平10−167864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造が安価で土壌溶出性に優れたケイ酸質・リン酸質複合肥料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るケイ酸質・リン酸質複合肥料は、ケイ酸ソーダにリン酸を添加してケイ酸をゲル化した後に、そのまま乾燥することで得られることを特徴とする。
【0008】
より具体的に説明すると、水ガラスと称されるケイ酸ソーダにリン酸を添加してpH4.5〜7.0レベルに中和する。
ケイ酸ソーダはゲル化し、リン酸成分及びソーダ(ナトリウム)成分はリン酸ソーダとして含有したまま固形化する。
この状態で水洗することなく、そのまま乾燥し水分を蒸発させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、ケイ酸ソーダにリン酸を添加しゲル化後にそのまま乾燥するだけなので、水洗工程が不要で非常に安価に製造することができる。
本発明において最も特徴的なのは、ゲル化後に水洗工程を経ないので、固形物の中にリン酸のみならず、ソーダ(ナトリウム)成分をそのまま含有している点である。
即ち、ケイ酸質肥料とリン酸質肥料の複合化において、ナトリウム成分が存在することで土壌中にナトリウムが水酸化ナトリウムとして溶解し、土壌中の鉄成分を水酸化鉄として不活性化するため、鉄成分によるリン酸の不溶化を防止するとともに、リン酸とケイ酸との相互作用により土壌への溶出性が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(肥料の製造例)
ゾル状のケイ酸ソーダ1kg当たりリン酸を230ml添加して中和し、ゲル化した。
そのときのpHは約6.3であった。
これを加熱乾燥して固形肥料を得た。
【0011】
(土壌中への溶出試験)
上記肥料を生土1kg当たり1g施用し、湛水30℃、4週保湿静置後の土壌中のケイ酸濃度の分析結果を図1(表1)に示す。
なお、比較のために生土のみのものをブランクとして、又、シリカゲル1gを生土1kgに施用した結果も示す。
表の結果から、シリカゲルは(20.5ppm−16.0ppm)=4.5ppm溶出したのに対して、本発明に係る肥料は(28.0ppm−16.0ppm)=12ppmも溶出していることになる。
よって、本発明に係る肥料はシリカゲル以上に土壌中への溶出性が高いことが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】土壌への溶出試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸ソーダにリン酸を添加してケイ酸をゲル化した後に、そのまま乾燥することで得られることを特徴とするケイ酸質・リン酸質複合肥料。

【図1】
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