説明

ケミカルヒートポンプ

【課題】外部からの熱供給が無くても化学反応を進ませられ、化学反応によって発生する反応熱の熱ロスを低減できるケミカルヒートポンプを得る。
【解決手段】化学反応物質を収容するとともに、化学反応物質の化学反応によって発生した反応熱を回収する熱回収器26と、化学反応後の化学反応物質を元の状態に戻すための再生加熱源16と、を備えた反応器12と、化学反応物質と反応させる反応媒体を収容する媒体貯蔵容器14と、媒体貯蔵容器14内の反応媒体を反応器12へ輸送するための媒体輸送手段22と、媒体貯蔵容器14から反応器12へ輸送される反応媒体の流量を調整する流量調整手段24と、を介して、媒体貯蔵容器14と熱回収器26とを接続するとともに、熱回収器26によって回収された温熱を外部へ供給する外部熱交換器28を介して、熱回収器26と反応器12とを接続する連通管20と、を有するケミカルヒートポンプ10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
外気温が高いときには、水の蒸発潜熱を利用して冷熱を取り出し、外気温が低いときには化学反応物質の反応熱を利用して温熱を取り出すことができるケミカルヒートポンプは、従来から知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−213529号公報
【特許文献2】特開2003−214721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているケミカルヒートポンプでは、外気温が低いときに、化学反応を進ませるための熱供給源が別途必要となる。これに対し、特許文献2に記載されているケミカルヒートポンプでは、化学反応物質の反応熱を、熱輸送媒体が封入された循環ループを通じて熱輸送するため、別途熱供給源が必要とされない。
【0005】
しかしながら、この特許文献2に記載されているケミカルヒートポンプでは、循環ループを構成する加熱管の温度が高温になってしまうため、熱輸送媒体の熱伝導及び自然対流により、化学反応によって発生する反応熱の熱ロスが大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、外部からの熱供給が無くても化学反応を進ませられるとともに、化学反応によって発生する反応熱の熱ロスを低減できるケミカルヒートポンプを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のケミカルヒートポンプは、化学反応物質を収容するとともに、前記化学反応物質の化学反応によって発生した反応熱を回収する熱回収器と、化学反応後の前記化学反応物質を元の状態に戻すための再生加熱源と、を備えた反応器と、前記化学反応物質と反応させる液体及び気体からなる反応媒体を収容する媒体貯蔵容器と、前記媒体貯蔵容器内の前記反応媒体を前記反応器へ輸送するための媒体輸送手段と、前記媒体貯蔵容器から前記反応器へ輸送される前記反応媒体の流量を開閉部材の開度によって調整する流量調整手段と、を介して、前記媒体貯蔵容器と前記熱回収器とを接続するとともに、前記熱回収器によって回収された温熱を外部へ供給する外部熱交換器を介して、前記熱回収器と前記反応器とを接続する連通管と、前記開閉部材の開度を制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、化学反応物質を収容した反応器に熱回収器が備えられるとともに、反応媒体を収容した媒体貯蔵容器と反応器とを接続する連通管に、その熱回収器と外部熱交換器とが接続されている。したがって、外部熱交換器から外部へ温熱を供給する放熱時において、外部からの熱供給が無くても、化学反応を進ませることができる。また、化学反応後の化学反応物質を元の状態に戻す再生時において、それによって発生する気体で連通管内を満たすことができるため、断熱性を確保することができ、化学反応によって発生する反応熱の熱ロスを低減することができる。
【0009】
また、本発明に係る請求項2に記載のケミカルヒートポンプは、化学反応物質を収容するとともに、前記化学反応物質の化学反応によって発生した反応熱を回収する熱回収器と、化学反応後の前記化学反応物質を元の状態に戻すための再生加熱源と、を備えた反応器と、前記化学反応物質と反応させる液体及び気体からなる反応媒体を収容する媒体貯蔵容器と、前記媒体貯蔵容器内の前記反応媒体を循環させるための媒体輸送手段と、循環させる前記反応媒体の流量を第1開閉部材の開度によって調整する第1流量調整手段と、を介して、前記媒体貯蔵容器の前記反応媒体の液体と接する部位と前記熱回収器とを接続するとともに、前記熱回収器によって回収された温熱を外部へ供給する外部熱交換器を介して、前記熱回収器と前記媒体貯蔵容器の前記反応媒体の気体と接する部位とを接続する第1連通管と、前記媒体貯蔵容器と前記反応器との間で輸送される前記反応媒体の気体の流量を第2開閉部材の開度によって調整する第2流量調整手段を介して、前記媒体貯蔵容器の前記反応媒体の気体と接する部位と前記反応器とを接続する第2連通管と、前記第1開閉部材の開度及び前記第2開閉部材の開度を制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、化学反応物質を収容した反応器に熱回収器が備えられるとともに、媒体貯蔵容器内の反応媒体を循環させる第1連通管に、その熱回収器と外部熱交換器とが接続されている。そして、媒体貯蔵容器の反応媒体の気体と接する部位と反応器とが第2連通管によって接続されている。したがって、外部熱交換器から外部へ温熱を供給する放熱時において、外部からの熱供給が無くても、化学反応を進ませることができる。また、化学反応後の化学反応物質を元の状態に戻す再生時において、それによって発生する気体で第2連通管内及び第1連通管内を満たすことができるため、断熱性を確保することができ、化学反応によって発生する反応熱の熱ロスを低減することができる。
【0011】
また、請求項3に記載のケミカルヒートポンプは、請求項2に記載のケミカルヒートポンプであって、前記第1流量調整手段と前記熱回収器との間の前記第1連通管から分岐されるとともに、前記反応媒体の液体の流量を第3開閉部材の開度によって調整する第3流量調整手段と、冷熱を外部へ供給する蒸発器と、を介して、前記反応器に接続された第3連通管を有し、前記制御手段は、前記第3開閉部材の開度を制御することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、第1連通管から分岐された第3連通管に蒸発器が接続されているので、その蒸発器により外部へ冷熱を供給することができる。
【0013】
また、請求項4に記載のケミカルヒートポンプは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のケミカルヒートポンプであって、前記媒体貯蔵容器の上部に凝縮器が備えられていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、媒体貯蔵容器の上部に凝縮器が備えられているので、再生時において、凝縮器によって液化した反応媒体を重力の作用によって媒体貯蔵容器内へ戻すことができる。したがって、媒体貯蔵容器内における凝縮性能を向上させることができるとともに、液化した反応媒体を媒体貯蔵容器内へ戻すための動力を不要にでき、コストの低減を図ることができる。
【0015】
また、請求項5に記載のケミカルヒートポンプは、請求項2又は請求項3に記載のケミカルヒートポンプであって、前記第2流量調整手段と前記媒体貯蔵容器との間の前記第2連通管に凝縮器が接続されるとともに、前記凝縮器と熱交換する熱交換手段が備えられていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、第2連通管に凝縮器が接続されているので、再生時において、反応器側から媒体貯蔵容器側へ反応媒体の流れが一方向になる。したがって、スムーズな凝縮が実現できる。
【0017】
また、請求項6に記載のケミカルヒートポンプは、請求項5に記載のケミカルヒートポンプであって、前記外部熱交換器と前記媒体貯蔵容器との間の前記第1連通管と、前記第2流量調整手段と前記凝縮器との間の前記第2連通管と、が方向切換弁を介して接続されていることを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、第1連通管と第2連通管とが方向切換弁を介して接続されているので、第1連通管によって戻される反応媒体を凝縮器で放熱した後に、媒体貯蔵容器内へ戻すことができる。つまり、これによれば、媒体貯蔵容器内の反応媒体の温度上昇を最小限に抑制することができ、温熱よりも冷熱が必要な条件下で、より温度の低い冷熱を供給することができる。
【0019】
また、請求項7に記載のケミカルヒートポンプは、請求項1に記載のケミカルヒートポンプであって、前記流量調整手段と前記熱回収器との間の前記連通管から分岐されるとともに、前記反応媒体の液体の流量を分岐開閉部材の開度によって調整する分岐流量調整手段と、冷熱を外部へ供給する蒸発器と、を介して、前記反応器に接続された分岐連通管を有し、前記制御手段は、前記分岐開閉部材の開度を制御することを特徴としている。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、連通管から分岐された分岐連通管に蒸発器が接続されているので、その蒸発器により外部へ冷熱を供給することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、外部からの熱供給が無くても化学反応を進ませられるとともに、化学反応によって発生する反応熱の熱ロスを低減できるケミカルヒートポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係るケミカルヒートポンプの構成を示す概略図である。
【図2】第2実施形態に係るケミカルヒートポンプの構成を示す概略図である。
【図3】第3実施形態に係るケミカルヒートポンプの構成を示す概略図である。
【図4】第4実施形態に係るケミカルヒートポンプの構成を示す概略図である。
【図5】第5実施形態に係るケミカルヒートポンプの構成を示す概略図である。
【図6】第6実施形態に係るケミカルヒートポンプの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、矢印UPを反応器12及び媒体貯蔵容器14の上方向とする。また、液体や気体が流れる方向における上流側及び下流側を単に「上流側」、「下流側」という場合がある。更に、以下において「水」という場合は、液体の状態であり、気体の状態の「水蒸気」とは区別される。
【0024】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態について説明する。図1で示すように、第1実施形態に係るケミカルヒートポンプ10は、化学反応物質を収容した反応器12と、化学反応物質と反応する、液体及び気体からなる反応媒体を収容した媒体貯蔵容器14と、を有している。なお、ここで言う、化学反応物質とは、例えば酸化カルシウム(CaO)等のアルカリ土類酸化物であり、液体及び気体からなる反応媒体とは、例えば水及び水蒸気(HO)である。
【0025】
反応器12内の下部には、化学反応物質の化学反応によって発生した反応熱を回収する熱回収器26が備えられており、反応器12内の上部には、化学反応物質の化学反応によって生成された生成物質(Ca(OH))を元の化学反応物質(CaO)に戻すための再生加熱源16が備えられている。そして、媒体貯蔵容器14の下部(反応媒体の液体と接する部位)と反応器12の上部(接続部)とは連通管20によって連通接続されている。
【0026】
なお、この連通管20の中途部に熱回収器26が連通接続されている。また、媒体貯蔵容器14と熱回収器26との間の連通管20には、媒体貯蔵容器14内の反応媒体(液体)を反応器12へ輸送するための媒体(液体)輸送手段としてのポンプ22と、媒体貯蔵容器14から反応器12へ輸送される反応媒体(液体)の流量を開閉部材24Aの開度によって調整する流量調整手段24と、がそれぞれ連通接続されている。
【0027】
更に、熱回収器26と反応器12との間の連通管20には、熱回収器26によって回収された温熱を外部へ供給するための外部熱交換器28が連通接続されている。つまり、この連通管20には、媒体貯蔵容器14から反応器12へ反応媒体(液体)が流れる方向における上流側から下流側へかけて順に、ポンプ22、流量調整手段24(開閉部材24A)、熱回収器26、外部熱交換器28が連通接続されている。
【0028】
なお、外部熱交換器28には、外部の温熱利用機器(図示省略)が熱交換可能に接続されている。また、このケミカルヒートポンプ10には、流量調整手段24における開閉部材24Aの開度を制御する制御手段18が備えられている。また、再生加熱源16は、電気的に接続されたヒーターで構成してもよいし、排熱を利用して加熱する構成などにしてもよい。
【0029】
以上のような構成の第1実施形態に係るケミカルヒートポンプ10において、次にその作用について説明する。
【0030】
媒体貯蔵容器14に収容されている反応媒体(水)は、流量調整手段24(制御手段18によって制御された開閉部材24A)により、その流量が調整されつつ、ポンプ22によって連通管20内を輸送され、反応器12内に供給される。すると、その反応媒体(水)と化学反応物質(CaO)とが化学反応を起こして反応熱が発生される。この反応熱は、熱回収器26によって回収され、熱回収器26内を流れる反応媒体(水)に温熱を与える。
【0031】
したがって、熱回収器26内を流れる反応媒体(水)の一部(又は全部)は、その温熱によって気化される(水蒸気とされる)。そして、熱回収器26によって回収された温熱で温められた反応媒体(水及び水蒸気)は、連通管20内を輸送されて外部熱交換器28内を流れる。これにより、外部熱交換器28から外部の温熱利用機器へ熱交換され、その温熱利用機器で温熱が利用される。
【0032】
外部熱交換器28を通過して熱交換された反応媒体(水及び水蒸気)は、反応器12内へ供給され、化学反応物質(CaO)との化学反応に用いられる。ここで、熱回収器26は、反応器12内に設けられている。したがって、外部の温熱利用機器へ温熱を供給する放熱時において、反応器12に対して外部から温熱を供給しなくても、化学反応を進ませることができる。
【0033】
一方、反応器12内の生成物質(Ca(OH))を元の化学反応物質(CaO)に戻す再生時には、再生加熱源16によって反応器12内を加熱する。すると、その反応器12内の生成物質(Ca(OH))から、媒体貯蔵容器14内に収容されている反応媒体の気体(水蒸気)と同じ気体(水蒸気)が生成される。そして、この生成された気体(水蒸気)は、反応媒体(水)のときとは逆方向で連通管20内を輸送され、連通管20内に溜まった液体の反応媒体(水)を媒体貯蔵容器14内へ押し戻す。
【0034】
こうして、連通管20内を逆輸送された気体(水蒸気)によって、連通管20内が(熱回収器26を過ぎて)開閉部材24Aまでドライな状態になったら、制御手段18により開閉部材24Aを閉塞する。これにより、液体の反応媒体(水)が媒体貯蔵容器14から熱回収器26へ流れることが防止されるとともに、連通管20内が気体(水蒸気)で満たされる。よって、連通管20において、断熱性が確保され、反応器12から連通管20を介して放熱される反応熱の熱ロスを低減することができる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図2で示すように、第2実施形態に係るケミカルヒートポンプ10は、連通管20の代わりに、媒体貯蔵容器14の下部(反応媒体の液体と接する部位)と上部(反応媒体の気体と接する部位)とを連通接続する第1連通管30と、媒体貯蔵容器14の上部(反応媒体の気体と接する部位)と反応器12の上部(接続部)とを連通接続する第2連通管32と、を備えている点が、第1実施形態とは異なっている。
【0036】
詳細には、第1連通管30には、媒体貯蔵容器14の下部から上部へ反応媒体(液体)が流れる方向における上流側から下流側へかけて順に、ポンプ22、第1流量調整手段34(第1開閉部材34A)、熱回収器26、外部熱交換器28が連通接続されている。なお、第1流量調整手段34は、媒体貯蔵容器14の下部から上部へ循環させる反応媒体(液体)の流量を第1開閉部材34Aの開度によって調整するようになっている。
【0037】
そして、第2連通管32には、媒体貯蔵容器14の上部と反応器12の上部との間で輸送される反応媒体(気体)の流量を第2開閉部材36Aの開度によって調整する第2流量調整手段36が連通接続されている。なお、第1流量調整手段34における第1開閉部材34Aの開度及び第2流量調整手段36における第2開閉部材36Aの開度は、制御手段18によって制御されるようになっている。
【0038】
以上のような構成の第2実施形態に係るケミカルヒートポンプ10において、次にその作用について説明する。なお、上記第1実施形態と同等の作用については、その記載を適宜省略する。
【0039】
第2流量調整手段36の第2開閉部材36Aを制御手段18によって開放させると、媒体貯蔵容器14に収容されている気体の反応媒体(水蒸気)が、第2連通管32によって反応器12内に供給される。すると、その気体の反応媒体(水蒸気)と化学反応物質(CaO)とが化学反応を起こして反応熱が発生される。
【0040】
一方、媒体貯蔵容器14に収容されている液体の反応媒体(水)は、第1流量調整手段34(制御手段18によって制御された第1開閉部材34A)により、その流量が調整されつつ、ポンプ22によって第1連通管30内を輸送される。したがって、上記反応熱は、熱回収器26によって回収され、熱回収器26内を流れる反応媒体(水)に温熱を与える。
【0041】
よって、熱回収器26内を流れる反応媒体(水)の一部(又は全部)が、その温熱によって気化される(水蒸気とされる)。そして、熱回収器26によって回収された温熱で温められた反応媒体(水及び水蒸気)は、第1連通管30内を輸送されて外部熱交換器28内を流れる。これにより、外部熱交換器28から外部の温熱利用機器へ熱交換され、その温熱利用機器で温熱が利用される。
【0042】
外部熱交換器28を通過して熱交換された反応媒体(水及び水蒸気)は、媒体貯蔵容器14内へ戻される。そして、媒体貯蔵容器14内へ戻された気体の反応媒体(水蒸気)は、媒体貯蔵容器14内から第2連通管32を通って反応器12内へ供給され、化学反応物質(CaO)との化学反応に用いられる。
【0043】
ここで、熱回収器26は、反応器12内に設けられている。したがって、外部の温熱利用機器へ温熱を供給する放熱時において、反応器12に対して外部から温熱を供給しなくても、化学反応を進ませることができる。
【0044】
また、この第2実施形態では、媒体貯蔵容器14の下部から上部へ循環させる反応媒体(水)の流量は、第1流量調整手段34(第1開閉部材34A)によって調整される。また、媒体貯蔵容器14内から反応器12内へ供給する反応媒体(水蒸気)の流量は、第2流量調整手段36(第2開閉部材36A)によって調整される。
【0045】
つまり、第1実施形態では、反応器12が消費する反応媒体(水)の量に応じた流量しか、媒体貯蔵容器14から反応媒体(水)を流すことができないため、熱回収器26や外部熱交換器28での熱交換性能が、その反応媒体(水)の流量によって制約を受ける。
【0046】
しかしながら、第2実施形態では、第1連通管30内を流れる反応媒体(水)の流量と、第2連通管32内を流れる(反応器12へ供給される)反応媒体(水蒸気)の流量とを独立して制御できるため、熱回収器26や外部熱交換器28での熱交換性能に制約を受けなくて済む。
【0047】
なお、反応器12内の生成物質(Ca(OH))を元の化学反応物質(CaO)に戻す再生時には、再生加熱源16によって反応器12内を加熱する。すると、その反応器12内の生成物質(Ca(OH))から、媒体貯蔵容器14内に収容されている反応媒体の気体(水蒸気)と同じ気体(水蒸気)が生成される。そして、この生成された気体(水蒸気)は、第2連通管32によって媒体貯蔵容器14内へ逆輸送される。
【0048】
媒体貯蔵容器14内へ逆輸送された気体(水蒸気)は、第1連通管30内を逆輸送される。そして、その気体(水蒸気)によって、第1連通管30内が(熱回収器26を過ぎて)第1開閉部材34Aまでドライな状態になったら、制御手段18により第1開閉部材34Aを閉塞する。
【0049】
これにより、液体の反応媒体(水)が媒体貯蔵容器14から熱回収器26へ流れることが防止されるとともに、第1連通管30内も気体(水蒸気)で満たされる。よって、第1連通管30及び第2連通管32において、断熱性が確保され、反応器12から第1連通管30及び第2連通管32を介して放熱される反応熱の熱ロスを低減することができる。
【0050】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1及び第2実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図3で示すように、第3実施形態に係るケミカルヒートポンプ10は、第1流量調整手段34と熱回収器26との間の第1連通管30と、反応器12とを連通接続する第3連通管(分岐連通管)40が備えられるとともに、その第3連通管40に蒸発器42が連通接続されている点が、第2実施形態とは異なっている。
【0051】
詳細には、この第3連通管40には、第1連通管30から分岐されて輸送される反応媒体(液体)の流量を第3開閉部材(分岐開閉部材)38Aの開度によって調整する第3流量調整手段(分岐流量調整手段)38と、外部へ冷熱を供給可能な蒸発器42とが、その反応媒体(液体)の流れる方向における上流側から下流側にかけて順に連通接続されている。
【0052】
蒸発器42は、外気から吸熱することによって反応媒体(液体)を気化するようになっている。そして、この蒸発器42には、外部の冷熱利用機器(図示省略)が熱交換可能に接続されている。また、第3流量調整手段38における第3開閉部材38Aの開度は、制御手段18によって制御されるようになっている。
【0053】
以上のような構成の第3実施形態に係るケミカルヒートポンプ10において、次にその作用について説明する。なお、上記第1及び第2実施形態と同等の作用については、その記載を適宜省略する。
【0054】
媒体貯蔵容器14に収容されている気体の反応媒体(水蒸気)が、第2連通管32によって反応器12へ輸送され、媒体貯蔵容器14に収容されている液体の反応媒体(水)が、ポンプ22によって第1連通管30内を輸送されると、上記第2実施形態と同様に、外部熱交換器28から外部の温熱利用機器へ熱交換され、その温熱利用機器で温熱が利用される。そして、外部の温熱利用機器へ温熱を供給する放熱時において、反応器12に対して外部から温熱を供給しなくても、化学反応を進ませることができる。
【0055】
また、媒体貯蔵容器14に収容されている反応媒体(水)が、ポンプ22によって第1連通管30内を輸送されると、その一部が第3連通管40内へ流れる。すると、その第3連通管40内を流れて来た反応媒体(水)は、第3流量調整手段38(制御手段18によって制御された第3開閉部材38A)により、その流量が調整されつつ、蒸発器42によって気化される(水蒸気とされる)。
【0056】
ここで、この蒸発器42は、外気から吸熱することによって反応媒体(水)を気化する。したがって、この蒸発器42では、冷熱が発生される。つまり、これにより、蒸発器42から外部の冷熱利用機器へ熱交換され、その冷熱利用機器で冷熱が利用される。このように、この第3実施形態では、温熱だけではなく、冷熱も取り出すことができる。
【0057】
したがって、ケミカルヒートポンプ10の汎用性を向上させることができる。なお、蒸発器42によって気化された反応媒体(水蒸気)は反応器12内へ供給される。すなわち、この気体の反応媒体(水蒸気)でも、反応器12内の化学反応物質(CaO)に化学反応を起こさせることができる。よって、効率よく冷熱及び温熱を得ることができる。
【0058】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。なお、第1〜第3実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図4で示すように、第4実施形態に係るケミカルヒートポンプ10は、媒体貯蔵容器14の上部に、その媒体貯蔵容器14の内部と連通する凝縮器44が備えられている点が、第3実施形態とは異なっている。
【0059】
詳細には、この凝縮器44は、媒体貯蔵容器14内の反応媒体(気体)が凝縮されて液化された(液体になった)際、重力の作用によって、その反応媒体(液体)が媒体貯蔵容器14内へ戻るように、媒体貯蔵容器14の上部に、外気に接触した状態で取り付けられている。
【0060】
以上のような構成の第4実施形態に係るケミカルヒートポンプ10において、次にその作用について説明する。なお、上記第1〜第3実施形態と同等の作用(特に放熱時の作用)については、その記載を適宜省略する。
【0061】
反応器12内の生成物質(Ca(OH))を元の化学反応物質(CaO)に戻す再生時には、再生加熱源16によって反応器12内を加熱する。すると、その反応器12内の生成物質(Ca(OH))から、媒体貯蔵容器14内に収容されている反応媒体の気体(水蒸気)と同じ気体(水蒸気)が生成される。そして、この生成された気体(水蒸気)は、第2連通管32によって媒体貯蔵容器14内へ逆輸送される。
【0062】
ここで、媒体貯蔵容器14の上部には、凝縮器44が外気に接触した状態で取り付けられている。したがって、その外気によって凝縮器44を冷却することにより、反応器12から放出された気体(水蒸気)を素早く凝縮して液体(水)に戻すことができる。このように、第4実施形態に係るケミカルヒートポンプ10では、媒体貯蔵容器14内における気体の反応媒体(水蒸気)に対する凝縮性能を向上させることができる。
【0063】
しかも、この凝縮器44は、媒体貯蔵容器14の上部に設けられているため、凝縮して液化した反応媒体(水)を重力の作用によって媒体貯蔵容器14内へ戻すことができる。したがって、凝縮器44によって得られた反応媒体(水)を媒体貯蔵容器14内へ戻すための動力などは不要となり、コストの低減を図ることができる。
【0064】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。なお、第1〜第3実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図5で示すように、第5実施形態に係るケミカルヒートポンプ10は、第2連通管32が、凝縮器46を介して、媒体貯蔵容器14の上部に接続されるとともに、その凝縮器46と熱交換する熱交換手段48が設けられている点が、第3実施形態とは異なっている。
【0065】
詳細には、凝縮器46の外表面には、熱交換流体(例えば外気)が供給可能になっており、その熱交換流体の供給又は停止が、熱交換手段48における第4開閉部材48Aの開閉動作によって行われるようになっている。つまり、熱交換流体が凝縮器46の外表面に供給されているときだけ、その凝縮器46が凝縮機能を備えるようになっている。なお、第4開閉部材48Aの開閉動作も、制御手段18によって制御されるようになっている。
【0066】
以上のような構成の第5実施形態に係るケミカルヒートポンプ10において、次にその作用について説明する。なお、上記第1〜第3実施形態と同等の作用(特に放熱時の作用)については、その記載を適宜省略する。
【0067】
反応器12内の生成物質(Ca(OH))を元の化学反応物質(CaO)に戻す再生時には、再生加熱源16によって反応器12内を加熱する。すると、その反応器12内の生成物質(Ca(OH))から、媒体貯蔵容器14内に収容されている反応媒体の気体(水蒸気)と同じ気体(水蒸気)が生成される。そして、この生成された気体(水蒸気)は、第2連通管32によって媒体貯蔵容器14内へ逆輸送される。
【0068】
ここで、その第2連通管32には、凝縮器46が連通接続されている。そして、その凝縮器46には、制御手段18によって第4開閉部材48Aが制御されることにより、熱交換流体(外気)が供給されている。つまり、その凝縮器46は、熱交換流体(外気)によって冷却されている。したがって、反応器12から放出された気体(水蒸気)は、その熱交換流体と熱交換(熱交換流体に放熱)されることで凝縮され、液体(水)に戻される。
【0069】
このように、第5実施形態に係るケミカルヒートポンプ10では、反応器12から放出された気体(水蒸気)を、凝縮器46の上部から供給することができる。したがって、凝縮して液化した反応媒体(水)を重力の作用及び第2連通管32内における反応器12側と媒体貯蔵容器14側との差圧によって媒体貯蔵容器14内へ戻すことができる。
【0070】
つまり、この第5実施形態では、第2連通管32を通る気体の反応媒体(水蒸気)の凝縮を含む流れが、反応器12側から媒体貯蔵容器14側へ向かう一方向となる。よって、この第5実施形態に係るケミカルヒートポンプ10では、第4実施形態に係るケミカルヒートポンプ10よりもスムーズな凝縮を実現することができる。
【0071】
なお、反応器12から放出された気体(水蒸気)を凝縮しないときには、凝縮器46を冷却しなければよい。すなわち、制御手段18により第4開閉部材48Aを制御し、凝縮器46に対する熱交換流体の供給を停止させる。この場合には、第2実施形態に係るケミカルヒートポンプ10と同等の構成となる。
【0072】
<第6実施形態>
最後に、第6実施形態について説明する。なお、第1〜第5実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図6で示すように、第6実施形態に係るケミカルヒートポンプ10は、外部熱交換器28と媒体貯蔵容器14との間の第1連通管30と、凝縮器46と第2流量調整手段34との間の第2連通管32と、が方向切換弁52を介して連通接続されている点が、第5実施形態とは異なっている。
【0073】
詳細には、外部熱交換器28と媒体貯蔵容器14との間の第1連通管30には、方向切換弁52が連通接続されており、その方向切換弁52と、凝縮器46と第2流量調整手段34との間の第2連通管32と、が第4連通管50を介して連通接続されている。そして、この方向切換弁52は、制御手段18によって制御され、その経路が切り換えられるようになっている。
【0074】
以上のような構成の第6実施形態に係るケミカルヒートポンプ10において、次にその作用について説明する。なお、上記第1〜第5実施形態と同等の作用(特に放熱時の作用)については、その記載を適宜省略する。
【0075】
すなわち、外部熱交換器28を通過して第1連通管30内を流れて来た反応媒体(水及び水蒸気)を、凝縮器46を経由させずに媒体貯蔵容器14内へ戻す経路に、方向切換弁52が切り換えられている場合には、第5実施形態と同等になる。
【0076】
したがって、以下においては、外部熱交換器28を通過して第1連通管30内を流れて来た反応媒体(水及び水蒸気)を、凝縮器46を経由させて媒体貯蔵容器14内へ戻す経路に、方向切換弁52が切り換えられている場合について説明する。
【0077】
反応器12内の生成物質(Ca(OH))を元の化学反応物質(CaO)に戻す再生時には、再生加熱源16によって反応器12内を加熱する。すると、その反応器12内の生成物質(Ca(OH))から、媒体貯蔵容器14内に収容されている反応媒体の気体(水蒸気)と同じ気体(水蒸気)が生成される。そして、この生成された気体(水蒸気)は、第2連通管32によって媒体貯蔵容器14内へ逆輸送される。
【0078】
ここで、その第2連通管32には、凝縮器46が連通接続されている。そして、その凝縮器46には、制御手段18によって第4開閉部材48Aが制御されることにより、熱交換流体(外気)が供給されている。つまり、その凝縮器46は、熱交換流体(外気)によって冷却されている。したがって、反応器12から放出された気体(水蒸気)は、その熱交換流体と熱交換(熱交換流体に放熱)されることで凝縮され、液体(水)に戻される。
【0079】
一方、外部熱交換器28を通過して第1連通管30内を流れて来た反応媒体(水及び水蒸気)は、方向切換弁52によって第4連通管50へ送られ、第4連通管50と連通接続されている第2連通管32に送られる。つまり、この反応媒体(水及び水蒸気)は、第2連通管32に連通接続されている凝縮器46に送られる。そして、その凝縮器46により、気体の反応媒体(水蒸気)が凝縮されて液化される。
【0080】
ここで、第1連通管30から凝縮器46を経由して媒体貯蔵容器14内へ戻された反応媒体(水)は、その凝縮器46により、熱交換流体と熱交換(熱交換流体に放熱)されているため、第1連通管30から凝縮器46を経由しないで媒体貯蔵容器14内へ戻された反応媒体(水)よりも冷却されている。
【0081】
したがって、媒体貯蔵容器14内の反応媒体(水)の温度上昇を最小限に抑制することができ、蒸発器42に供給する反応媒体(水)のエンタルピーを低減させることができる。つまり、第6実施形態に係るケミカルヒートポンプ10は、温熱よりも冷熱が必要な条件下に最適であり、蒸発器42において、第3〜第5実施形態に係るケミカルヒートポンプ10よりも低い温度の冷熱を供給することができる。
【0082】
以上、本実施形態に係るケミカルヒートポンプ10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係るケミカルヒートポンプ10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、第1実施形態に係るケミカルヒートポンプ10に、第3実施形態における蒸発器42を設けたり、第4実施形態における凝縮器44を設けたりする構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 ケミカルヒートポンプ
12 反応器
14 媒体貯蔵容器
16 再生加熱源
18 制御手段
20 連通管
22 ポンプ(媒体輸送手段)
24 流量調整手段
26 熱回収器
28 外部熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応物質を収容するとともに、前記化学反応物質の化学反応によって発生した反応熱を回収する熱回収器と、化学反応後の前記化学反応物質を元の状態に戻すための再生加熱源と、を備えた反応器と、
前記化学反応物質と反応させる液体及び気体からなる反応媒体を収容する媒体貯蔵容器と、
前記媒体貯蔵容器内の前記反応媒体を前記反応器へ輸送するための媒体輸送手段と、前記媒体貯蔵容器から前記反応器へ輸送される前記反応媒体の流量を開閉部材の開度によって調整する流量調整手段と、を介して、前記媒体貯蔵容器と前記熱回収器とを接続するとともに、前記熱回収器によって回収された温熱を外部へ供給する外部熱交換器を介して、前記熱回収器と前記反応器とを接続する連通管と、
前記開閉部材の開度を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするケミカルヒートポンプ。
【請求項2】
化学反応物質を収容するとともに、前記化学反応物質の化学反応によって発生した反応熱を回収する熱回収器と、化学反応後の前記化学反応物質を元の状態に戻すための再生加熱源と、を備えた反応器と、
前記化学反応物質と反応させる液体及び気体からなる反応媒体を収容する媒体貯蔵容器と、
前記媒体貯蔵容器内の前記反応媒体を循環させるための媒体輸送手段と、循環させる前記反応媒体の流量を第1開閉部材の開度によって調整する第1流量調整手段と、を介して、前記媒体貯蔵容器の前記反応媒体の液体と接する部位と前記熱回収器とを接続するとともに、前記熱回収器によって回収された温熱を外部へ供給する外部熱交換器を介して、前記熱回収器と前記媒体貯蔵容器の前記反応媒体の気体と接する部位とを接続する第1連通管と、
前記媒体貯蔵容器と前記反応器との間で輸送される前記反応媒体の気体の流量を第2開閉部材の開度によって調整する第2流量調整手段を介して、前記媒体貯蔵容器の前記反応媒体の気体と接する部位と前記反応器とを接続する第2連通管と、
前記第1開閉部材の開度及び前記第2開閉部材の開度を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするケミカルヒートポンプ。
【請求項3】
前記第1流量調整手段と前記熱回収器との間の前記第1連通管から分岐されるとともに、前記反応媒体の液体の流量を第3開閉部材の開度によって調整する第3流量調整手段と、冷熱を外部へ供給する蒸発器と、を介して、前記反応器に接続された第3連通管を有し、
前記制御手段は、前記第3開閉部材の開度を制御することを特徴とする請求項2に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項4】
前記媒体貯蔵容器の上部に凝縮器が備えられていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項5】
前記第2流量調整手段と前記媒体貯蔵容器との間の前記第2連通管に凝縮器が接続されるとともに、前記凝縮器と熱交換する熱交換手段が備えられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項6】
前記外部熱交換器と前記媒体貯蔵容器との間の前記第1連通管と、前記第2流量調整手段と前記凝縮器との間の前記第2連通管と、が方向切換弁を介して接続されていることを特徴とする請求項5に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項7】
前記流量調整手段と前記熱回収器との間の前記連通管から分岐されるとともに、前記反応媒体の液体の流量を分岐開閉部材の開度によって調整する分岐流量調整手段と、冷熱を外部へ供給する蒸発器と、を介して、前記反応器に接続された分岐連通管を有し、
前記制御手段は、前記分岐開閉部材の開度を制御することを特徴とする請求項1に記載のケミカルヒートポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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