説明

ケミカルループ燃焼システムおよびそれを構成する酸化反応系装置と還元反応系装置

【課題】COの回収と熱利用とを互いに制約を受けることなくそれぞれ実施することができるケミカルループ燃焼を実施するためのシステムを提供する。
【解決手段】金属粒子Mを酸化する酸化反応系と金属酸化物MOを還元する還元反応系との間で金属粒子Mおよび金属酸化物MOを循環させることで熱を得るケミカルループ燃焼を実施するためのシステムにおいて、酸化反応系を司る酸化反応系装置Aと還元反応系を司る還元反応系装置Bとをそれぞれ独立した施設として設置し、移送系装置Cを用いて、両装置間での金属粒子Mおよび金属酸化物MOの移送を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルループ燃焼システムと、それを構成する酸化反応系装置および還元反応系装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子を酸化する酸化反応系と金属酸化物を還元する還元反応系との間で金属粒子および金属酸化物を循環させることで熱を得るようにしたケミカルループ燃焼法は知られている。ケミカルループ燃焼は、燃料を直接空気と燃焼させる代わりに、燃焼反応を「金属粒子の酸化」と、「金属酸化物の還元」という2つに分け、両者を物理的な粒子の循環で結ぶシステムである。燃料と空気は直接接触することがなく、金属を媒体として純酸素のやり取りをしている。
【0003】
ケミカルループ燃焼では、メタンなどの炭化水素は、還元反応系において、あくまで酸化金属の還元剤として働き、金属の還元反応で吸熱する。また酸化反応系には、空気と金属粒子だけが供給され酸化反応によって発熱するが、燃焼温度が比較的低いことからサーマルNOxは殆ど生成しない。さらに、還元反応系では、燃料の炭化水素と酸化金属から供給される酸素のみが存在し、そのため、排ガス成分はほぼ二酸化炭素と水だけとなる。そのために、排出されたガスを冷却して水を取り除けばほぼ純粋なCOを容易に回収可能となる。
【0004】
上記のような利点があることから、ケミカルループ燃焼を実際に実施するためのシステムや装置がすでに提案されており、特許文献1には、ケミカルループ燃焼方式による発電プラントシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−337168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来提案されているケミカルループ燃焼を実施するためのシステムあるいは装置は、特許文献1にも記載されるように、全体として酸化反応系と還元反応系とが1つの連続した反応系を構成するようになっているのが普通である。そのために、燃料を使用する場所と熱を利用する場所とが、ごく近接したあるいは同一の場所となっており、COを容易に取り出すことができるとしても、実際の運転においては、CO回収場所と、熱利用場所のどちらかが制約を受けることになる。
【0007】
また、従来のケミカルループ燃焼システムにおいては、燃料と熱利用は、ほぼ同時に行わなければならないため、運転中に燃料供給と熱需要のバランスを常に保つ必要があり、熱需要の変動に応じて燃料供給量も変化させることが求められる。燃料の供給は可能な限り平準であることが燃料供給側の設備の負荷率的には望ましいが、その観点からも、従来のケミカルループ燃焼システムを実際の運転に当たっては、なお改善すべき余地がある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、実際の運転時に、COの回収と熱利用とを互いに制約を受けることなくそれぞれ実施することができ、かつ燃料供給側の設備の負荷率も大きく改善することのできる、ケミカルループ燃焼を実施するためのシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明によるケミカルループ燃焼システムは、金属粒子を酸化する酸化反応系と金属酸化物を還元する還元反応系との間で金属粒子および金属酸化物を循環させることで熱を得るケミカルループ燃焼を実施するためのシステムであって、前記ケミカルループ燃焼システムは、酸化反応系を司る酸化反応系装置と還元反応系を司る還元反応系装置とがそれぞれ独立した施設として設置されており、両装置間での金属粒子および金属酸化物の移送を行う移送系装置をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によるケミカルループ燃焼システムでは、酸化反応系を司る酸化反応系装置と還元反応系を司る還元反応系装置とはそれぞれ独立した施設として設置され、その間で必要とされる金属粒子および金属酸化物の移送は、別途設ける移送系装置によって行うようにしている。それにより、還元反応系装置で排出されるCOの回収と、熱利用側(すなわち、酸化反応系装置側)とを切り離すことが可能となり、結果として、熱利用の時間と燃料供給の時間との制約も解消される。換言すれば、燃料を使用する時間(還元)と、熱を利用する時間(酸化)の同時使用の制約を失くすことができる。
【0011】
さらに、酸化反応系装置側(熱利用側)においては、NOx、COの排出がなされないゼロエミッションとなる。また、還元反応系装置側でCOを固定化すれば、トータルでもゼロエミッションの運転が可能となる。また、熱利用者(事業者、国)とCOの排出者(事業者、国)を分けることにより、COの排出権の取引も有効に行うことが可能となる。
【0012】
本発明によるケミカルループ燃焼システムのより具体的な構成では、前記酸化反応系装置は、還元後の金属粒子を貯留するための金属粒子第1タンクと、前記金属粒子第1タンクからの金属粒子が投入される酸化塔と、酸化塔で酸化された金属酸化物を貯留するための金属酸化物第1タンクとを少なくとも備え、前記金属粒子第1タンクには前記移送系装置が搬送してくる金属粒子を受け入れるための受け入れ手段が備えられ、前記金属酸化物第1タンクには貯留する金属酸化物を前記移送系装置へ搬出するための搬出手段が備えられており、かつ、前記還元反応系装置は、酸化後の金属酸化物を貯留するための金属酸化物第2タンクと、前記金属酸化物第2タンクからの金属酸化物が投入される還元塔と、還元塔で還元された金属粒子を貯留するための金属粒子第2タンクとを少なくとも備え、前記金属酸化物第2タンクには前記移送系装置が搬送してくる金属酸化物を受け入れるための受け入れ手段が備えられ、前記金属粒子第2タンクには貯留する金属粒子を前記移送系装置へ搬出するための搬出手段が備えられている。
【0013】
本発明は、また、上記したケミカルループ燃焼システムで用いる酸化反応系装置として、還元後の金属粒子を貯留するための金属粒子タンクと、前記金属粒子タンクからの金属粒子が投入される酸化塔と、酸化塔で酸化された金属酸化物を貯留するための金属酸化物タンクとを少なくとも備え、前記金属粒子タンクには適宜の移送系装置が搬送してくる金属粒子を受け入れるための受け入れ手段が備えられ、前記金属酸化物タンクには貯留する金属酸化物を適宜の移送系装置へ搬出するための搬出手段が備えられていることを特徴とする酸化反応系装置も開示する。
【0014】
さらに、上記したケミカルループ燃焼システムで用いる還元反応系装置として、酸化後の金属酸化物を貯留するための金属酸化物タンクと、前記金属酸化物タンクからの金属酸化物が投入される還元塔と、還元塔で還元された金属粒子を貯留するための金属粒子タンクとを少なくとも備え、前記金属酸化物タンクには適宜の移送系装置が搬送してくる金属酸化物を受け入れるための受け入れ手段が備えられ、前記金属粒子タンクには貯留する金属粒子を適宜の移送系装置へ搬出するための搬出手段が備えられていることを特徴とする還元反応系装置も開示する。
【0015】
本発明において、還元反応系で用いられる還元するエネルギーには、化石燃料(天然ガス、LPG、重油、石炭)、水素(原子力、太陽光、風力などから得る)などを挙げることができる。また、金属粒子あるいは金属酸化物としては、Fe、Mn、Ni、Cu、Mgなどの様々な金属、あるいはそれらの金属酸化物が利用可能である。
【0016】
両装置間での金属粒子および金属酸化物の移送を行う移送系装置も、それらを大きな化学変化を起こすことなく搬送できる手段であれば任意であり、トラック、列車、船舶などの移送手段、さらには、通常は酸化反応系装置および還元反応系装置からは分離しており必要時にそれらに接続するようにされるパイプラインなどを例示できる。好ましくは、搬送中、移送系装置の内部は不活性雰囲気に維持される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実際の運転時に、熱利用とCOの回収とを互いに制約を受けることなくそれぞれ実施することができ、かつ燃料供給側の設備の負荷率も大きく改善することのできる、ケミカルループ燃焼の実施システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるケミカルループ燃焼システムの一実施の形態を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1を参照しながら、本発明によるケミカルループ燃焼システムの一実施の形態を、その運転状態とともに、説明する。
【0020】
本発明によるケミカルループ燃焼システム100は、基本的に、酸化反応系装置Aと還元反応系装置Bと移送系装置Cとで構成される。酸化反応系装置Aと還元反応系装置Bは、それぞれ物理的に独立した施設であり、距離的な間隔をおいて設置される。同一国内ばかりでなく、一方と他方を異なった国に設置してもよい。移送系装置Cは、酸化反応系装置Aと還元反応系装置Bの間で金属粒子Mおよび金属酸化物MOを搬送するのに用いられるものであり、図では車両を示しているが、これに限らない。なお、本発明において金属粒子Mは、金属のみでなく金属酸化物も含まれる。金属粒子Mが金属酸化物の場合、金属酸化物MOは前記金属酸化物がさらに酸化した形態の金属酸化物が該当する。金属粒子Mの好ましいものとしては、鉄(Fe)または酸化鉄(FeO)を例示できる。金属粒子MがFeOの場合、金属酸化物MOは例えばFeが挙げられる。
【0021】
酸化反応系装置Aは、還元後の金属粒子Mを貯留するための金属粒子第1タンク1と、金属粒子第1タンク1から金属粒子Mが投入される酸化塔2と、酸化塔2で酸化された金属酸化物MOを貯留するための金属酸化物第1タンク3とを備える。
【0022】
金属粒子Mは、輸送手段Cである金属搬送用車両C1によって、系外(酸化反応系装置A外)から搬送されてくる。好ましくは、搬送する金属粒子Mの酸化が進まないように、金属搬送用車両C1の収容室内を窒素のような不活性ガスで充満する。
【0023】
この例において、金属粒子第1タンク1には、金属搬送用車両C1が搬送してくる金属粒子Mを受け入れるための受け入れ手段が備えられている。受け入れ手段は、例えば秤4と投入装置5を備え、計量後の金属粒子Mがスクリューポンプのような投入装置5によって金属粒子第1タンク1内に投入され、そこに貯留される。金属粒子第1タンク1には不活性ガスが充填され、貯留中の金属粒子Mが酸化するのを防止する。必要時に、貯留されている金属粒子Mの必要量が、やはり不活性ガス雰囲気下におかれる適宜の投入装置6によって、酸化塔2に投入される。なお、必須ではないが、金属粒子第1タンク1には、粉塵爆発などの不測な事態が発生するのを防止するために、静電防止対策を施すことが望まれる。
【0024】
酸化塔2は予熱器7を備えており、投入される金属粒子Mが酸化反応を開始できる温度(例えば800℃程度)に予熱されている。また、酸化塔2には、ブロワ8からの環境温度(例えば20℃)の空気が、後記する熱交換器9で例えば500℃程度に加熱された状態で、投入される。それにより、酸化塔2内では、次式1のような、金属粒子Mの酸化反応が進行して発熱し、金属酸化物MOと800℃程度に昇温した加熱空気が酸化塔2から排出される。
【0025】
式1 M + O → 2MO
【0026】
金属酸化物MOと空気との混和物は、耐熱性を備えた従来知られた形式の固気分離装置10内に流入し、そこで加熱空気と金属酸化物MOに分離される。加熱空気は適宜の熱利用設備11の熱源として利用され、その後に、排ガスとして系外に排出される。排ガスの温度は、ここでは150℃程度としているが、熱利用設備11の具体例によって異なってくる。熱利用設備11の具体例としては、工業炉、ボイラ、ガスタービン、化学プロセスなどが例示できる。
【0027】
分離後の800℃程度の温度である金属酸化物MOは、熱交換器9において前記したブロワ8から送られてくる空気と熱交換して50℃程度に降温した後、適宜の投入装置12によって、前記した金属酸化物第1タンク3内に投入され、そこに任意の期間にわたって貯留される。金属酸化物第1タンク3内も、好ましくは不活性雰囲気下におかれると共に、金属粒子第1タンク1の場合と同様、静電防止対策が施される。
【0028】
上記のようであり、酸化反応系装置Aは、還元後の金属粒子Mを貯留するための金属粒子第1タンク1と、金属粒子第1タンク1から金属粒子Mが投入される酸化塔2と、酸化塔2で酸化された金属酸化物MOを貯留するための金属酸化物第1タンク3とを備えることにより、酸化反応系装置A単独で、金属粒子Mの酸化反応を進行させることが可能であり、また酸化塔2で生成された熱を、ケミカルループ燃焼システム100を構成する他の装置とは独立して利用することができる。反応に使用する金属粒子Mが不足したときには、やはりシステムを構成する他の装置である輸送手段C(金属搬送用車両C1)によって、金属粒子第1タンク1内に補充すればよい。そして、反応で生成された金属酸化物MOの量が金属酸化物第1タンク3の許容収容量を超える恐れがあるときには、金属酸化物第1タンク3に貯留されている金属酸化物MOを系外に搬出すればよい。
【0029】
そのために、金属酸化物第1タンク3は、貯留する金属酸化物MOを系外に搬出するための適宜の搬出手段13が備えられている。この例では、搬出手段13の搬出側には秤14が備えられており、金属酸化物第1タンク3内で15℃程度の温度で貯留されていた金属酸化物MOは、必要なときに、計量後、その所定量がケミカルループ燃焼システム100を構成する他の装置、すなわち酸化反応系装置Aから見れば系外の装置である輸送手段C(金属酸化物搬送用車両C2)に移される。金属酸化物搬送用車両C2も、搬送する金属酸化物MOが化学変化しないように収容室内を窒素のような不活性ガスで充満することが望ましい。また、15℃程度に保温されていることが望ましい。
【0030】
金属酸化物搬送用車両C2に収容された金属酸化物MOは、酸化反応系装置Aとは独立した設備として設置されている前記した還元反応系装置Bに搬入される。以下、還元反応系装置Bをその運転状態と共に説明する。
【0031】
還元反応系装置Bは、酸化後の金属酸化物MOを貯留するための金属酸化物第2タンク31と、金属酸化物第2タンク31から金属酸化物MOが投入される還元塔32と、還元塔32で酸化された金属粒子Mを貯留するための金属粒子第2タンク33とを備える。
【0032】
金属酸化物第2タンク31内に貯留されるべき金属酸化物MOは、前記したように、輸送手段Cを構成する金属酸化物搬送用車両C2によって、還元反応系装置Bから見れば系外の装置である酸化反応系装置Aから搬送されてくる。
【0033】
この例において、金属酸化物第2タンク31には、金属酸化物搬送用車両C2が搬送してくる金属酸化物MOを受け入れるための受け入れ手段が備えられており、受け入れ手段は、例えば秤34と適宜の投入装置35を備える。15℃程度に保持された計量後の金属酸化物MOが、投入装置35によって金属酸化物第2タンク31内に投入され、そこに貯留される。好ましくは金属酸化物第2タンク31には不活性ガスが充填され、貯留中の金属酸化物MOが化学的に変化するのを防止する。
【0034】
必要時に、貯留されている金属酸化物MOの必要量が、やはり不活性ガス雰囲気下におかれる適宜の投入装置36によって、還元塔32に投入される。なお、必須ではないが、ここでも、金属酸化物第2タンク31には、粉塵爆発などの不測な事態が発生するのを防止するために、静電防止対策を施すことが望まれる。
【0035】
還元塔32は予熱器37を備えており、投入される金属酸化物MOの還元反応が開始できる温度(例えば600℃程度)に予熱されている。また、還元塔32内での還元反応は吸熱反応であることから、この例では、適宜の廃熱源38から例えば700℃程度の廃熱を利用して還元塔32の保熱するための熱交換器39が設置されている。廃熱は還元塔32を保温した後、例えば600℃程度に降温し系外へ排出されるか、図示しない適宜の手段によってさらに余熱の利用が行われる。例えば、廃熱を化学エネルギーに変換して、酸化反応系装置A側まで移動させることができる。なお、廃熱源38は、工業炉等の廃熱や低質燃料の燃焼熱が有効である。
【0036】
予熱された状態の還元塔32には、金属酸化物MOを還元するための燃料(エネルギー)として、例えば15℃程度に保持された天然ガス等が、後記する熱交換器40で例えば500℃程度に加熱された状態で、流入する。それにより、還元塔32内では、次式2のような金属酸化物MOの還元反応が進行し、600℃程度の金属粒子MとCOと蒸気の混合体が還元塔32から排出される。
【0037】
式2 4MO + CH → 4M + CO + 2H
【0038】
前記した混合体は、耐熱性を備えた従来知られた形式の固気分離装置41内に流入し、そこでガス化したCOを含む気体と金属粒子Mとに分離される。600℃程度の気体分は熱交換器42を通すことで水分は取り除かれ、例えば150℃程度に降温したガス状のCOのみが、従来知られた適宜のCO回収装置43に導入される。そして、回収されたCOの固定化や貯留(CCS)が行われる。熱交換器42からは、温水や蒸気が得られる。
【0039】
固気分離装置41で分離された金属粒子Mは、前記した熱交換器40で燃料ガスと熱交換することで200℃程度に降温した後、適宜の投入装置44によって、前記した金属粒子第2タンク33内に投入され、そこに任意の期間にわたって貯留される。金属粒子第2タンク33内も、不活性雰囲気下におかれると共に、金属酸化物第2タンク31の場合と同様、静電防止対策が施される。
【0040】
さらに、金属粒子第2タンク33には、貯留する金属粒子Mを系外に搬出するための適宜の搬出手段45と秤46が備えられており、金属粒子第2タンク33内に貯留されている金属粒子Mを系外に搬出するのに用いられる。
【0041】
上記のようであり、還元反応系装置Bは、金属酸化物MOを貯留するための金属酸化物第2タンク31と、金属酸化物第2タンク31から金属酸化物MOが投入される還元塔32と、還元塔32で還元された金属粒子Mを貯留するための金属粒子第2タンク33とを備えることで、還元反応系装置B単独で、金属酸化物MOの還元反応を進行させることが可能であり、また還元塔32で生成されるCOを、ケミカルループ燃焼システム100を構成する酸化反応系装置A側の運転とは無関係に、独立して回収することができる。
【0042】
一方、別施設として存在する酸化反応系装置A側から要請があったときには、金属粒子第2タンク33内に貯留してある金属粒子Mを、前記した金属搬送用車両C1を用いて、酸化反応系装置Aの金属粒子第1タンク1に移送する。また、金属酸化物搬送用車両C2が金属酸化物MOを搬送してきたときには、それを受け入れて金属酸化物第2タンク31内に貯留する。そして、必要時に、還元塔32を作動して金属酸化物MOの還元処理を行う。
【0043】
以上のように、本発明によるケミカルループ燃焼システム100では、酸化反応系を司る酸化反応系装置Aと還元反応系を司る還元反応系装置Bとがそれぞれ独立した施設として設置されており、かつ独立して運転することが可能であることから、燃料を使用する場所とCO排出場所とを完全に分離することができ、結果として、熱利用者とCO排出者とを分離することができる。それにより、熱利用者(事業者、国)と、COの排出者(事業者、国)を分けることが可能となり、COの排出権の取引にも有効にも寄与することができる。
【0044】
また、燃料を使用する時間(還元)と、熱を利用する時間(酸化)の同時使用の制約をなくすことができ、システム運転の自由度が大きく向上する。
【0045】
さらに、酸化反応系装置A側(熱利用側)においては、NOx、COがまったく排出されず、ゼロエミッションとなり、また、還元反応系装置BでCOの固定化を行えば、システム全体でのゼロエミッション運転が可能となる。
【0046】
なお、図に示したケミカルループ燃焼システム100では、1施設の酸化反応系装置Aに対して1施設の還元反応系装置Bが対応する態様となっているが、これは1つの例であって、1施設の酸化反応系装置Aに対して複数施設の還元反応系装置Bが対応する態様、複数施設の酸化反応系装置Aに対して1施設の還元反応系装置Bが対応する態様、あるいは、複数施設の酸化反応系装置Aに対して複数施設の還元反応系装置Bが対応する態様であってもよく、酸化反応系装置Aあるいは還元反応系装置Bの処理能力あるいはその地域の熱需要等を勘案して適宜選択される。また、その形態に対応して効率的に金属粒子および金属酸化物の移送が行われるように、金属搬送用車両C1および金属酸化物搬送用車両C2の台数や容積あるいは運転回数等を設定する。
【符号の説明】
【0047】
100…本発明によるケミカルループ燃焼システム、
A…酸化反応系装置、
B…還元反応系装置、
C…移送系装置、
M…金属粒子、
MO…金属酸化物、
C1…金属搬送用車両、
C2…金属酸化物搬送用車両、
1…金属粒子第1タンク、
2…酸化塔、
3…金属酸化物第1タンク、
4、14、34、46…秤、
5、6、12、35、44…投入装置、
7、37…予熱器、
8…ブロワ、
9、30、42、70…熱交換器、
10、41…固気分離装置、
11…熱利用設備、
13、45…搬出手段、
31…金属酸化物第2タンク、
32…還元塔、
33…金属粒子第2タンク、
38…廃熱源、
43…CO回収装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子を酸化する酸化反応系と金属酸化物を還元する還元反応系との間で金属粒子および金属酸化物を循環させることで熱を得るケミカルループ燃焼を実施するためのシステムであって、
前記ケミカルループ燃焼システムは、酸化反応系を司る酸化反応系装置と還元反応系を司る還元反応系装置とがそれぞれ独立した施設として設置されており、両装置間での金属粒子および金属酸化物の移送を行う移送系装置をさらに備えることを特徴とするケミカルループ燃焼システム。
【請求項2】
前記酸化反応系装置は、還元後の金属粒子を貯留するための金属粒子第1タンクと、前記金属粒子第1タンクからの金属粒子が投入される酸化塔と、酸化塔で酸化された金属酸化物を貯留するための金属酸化物第1タンクとを少なくとも備え、前記金属粒子第1タンクには前記移送系装置が搬送してくる金属粒子を受け入れるための受け入れ手段が備えられ、前記金属酸化物第1タンクには貯留する金属酸化物を前記移送系装置へ搬出するための搬出手段が備えられており、かつ、
前記還元反応系装置は、酸化後の金属酸化物を貯留するための金属酸化物第2タンクと、前記金属酸化物第2タンクからの金属酸化物が投入される還元塔と、還元塔で還元された金属粒子を貯留するための金属粒子第2タンクとを少なくとも備え、前記金属酸化物第2タンクには前記移送系装置が搬送してくる金属酸化物を受け入れるための受け入れ手段が備えられ、前記金属粒子第2タンクには貯留する金属粒子を前記移送系装置へ搬出するための搬出手段が備えられている、ことを特徴とする請求項1に記載のケミカルループ燃焼システム。
【請求項3】
請求項2に記載のケミカルループ燃焼システムで用いる酸化反応系装置であって、還元後の金属粒子を貯留するための金属粒子タンクと、前記金属粒子タンクからの金属粒子が投入される酸化塔と、酸化塔で酸化された金属酸化物を貯留するための金属酸化物タンクとを少なくとも備え、前記金属粒子タンクには適宜の移送系装置が搬送してくる金属粒子を受け入れるための受け入れ手段が備えられ、前記金属酸化物タンクには貯留する金属酸化物を適宜の移送系装置へ搬出するための搬出手段が備えられていることを特徴とする酸化反応系装置。
【請求項4】
請求項2に記載のケミカルループ燃焼システムで用いる還元反応系装置であって、酸化後の金属酸化物を貯留するための金属酸化物タンクと、前記金属酸化物タンクからの金属酸化物が投入される還元塔と、還元塔で還元された金属粒子を貯留するための金属粒子タンクとを少なくとも備え、前記金属酸化物タンクには適宜の移送系装置が搬送してくる金属酸化物を受け入れるための受け入れ手段が備えられ、前記金属粒子タンクには貯留する金属粒子を適宜の移送系装置へ搬出するための搬出手段が備えられていることを特徴とする還元反応系装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−179773(P2011−179773A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45671(P2010−45671)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)