説明

ケーシング圧入装置の自走移動装置

【課題】 ケーシング圧入装置の移動装置において、走行駆動装置により軽快な移動を可能にすると共に、狭い作業場所へ容易に移動できるようにする。
【解決手段】 ベースフレーム上にケーシング圧入手段を装備したケーシング圧入装置において、上記ベースフレームの前後両端部に、車台に左右2輪を設けてなる前部および後部車輪ユニットを着脱自在に連結し、その連結時にそれら4輪にて上記ベースフレームを無接地で支持できるようにし、上記少くとも一方の車輪ユニットにおいて、その車台に補助輪を昇降自在に設けると共に、該補助輪を降下時に上記左右2輪との3輪にて上記車輪ユニットを走行可能に支持できる位置関係におき、さらに上記車台に上記左右2輪を回転させる駆動装置を設置した、ケーシング圧入装置の自走移動装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ケーシング圧入装置を作業位置に移動させるための移動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ケーシング圧入装置を圧入位置に移動させる手段として、ケーシング圧入装置を複数のクローラに坦持させ、該クローラの走行によりケーシング圧入装置を所定の圧入位置に移動させるものが知られている。しかし、この従来手段は、複数のクローラが横に大きく張り出した構造をとるため、狭い場所への移動が困難となる欠点があった。
【0003】これを改善するため、本出願人は、さきに、ベースフレーム上にケーシング圧入手段を装備したケーシング圧入装置において、該ベースフレームの前後両端部に、車台に左右2輪を有する前部および後部車輪ユニットを、上記ベースフレームの前後両端部にそれぞれ設けられた嵌入孔に上記前部および後部車輪ユニットにそれぞれ突設されたアームを挿脱自在に嵌入することにより、着脱自在に連結した移動装置を提案した(特願平9−363245)。しかし、上記の提案装置は、移動を人力またはけん引車輌によって行うため、人力の場合は過大な労力と時間を要し、けん引車輌の場合は狭い場所への移動が依然困難となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、走行駆動装置により軽快な移動を可能にすると共に狭い場所への移動を容易にするケーシング圧入装置の自走移動装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題達成のため、本発明は、ベースフレーム上にケーシング圧入手段を装備したケーシング圧入装置において、上記ベースフレームの前後両端部に、車台に左右2輪を設けてなる前部および後部車輪ユニットを着脱自在に連結し、その連結時にそれら4輪にて上記ベースフレームを無接地で支持できるようにし、上記少くとも一方の車輪ユニットにおいて、その車台に補助輪を昇降自在に設けると共に、該補助輪を降下時に上記左右2輪との3輪にて上記車輪ユニットを走行可能に支持できる位置関係におき、さらに上記車台に上記左右2輪を回転させる駆動装置を設置した、ケーシング圧入装置の自走移動装置を提案する。
【0006】本発明における上記車台に補助輪を「昇降自在に設ける」手段には、油圧シリンダ、電動ジャッキ等のほか、手動ジャッキ、手作業によるピンの差し替え等の各種の手段が用いられる。
【0007】また、上記左右2輪を回転させる「駆動装置」には、油圧モータとその油圧ユニット、電動モータとそのバッテリー、エンジンとその燃料等がある。以下ケーシング圧入装置の移動位置決め装置に実施した図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【0008】
【実施例】図1(イ)、(ロ)において、ほぼ矩形枠形のベースフレーム(1)上に4本のケーシング圧入用油圧ジャッキ(2)…を立設し、これらジャッキ(2)…に、昇降フレーム(3)を該ジャッキの駆動により昇降可能に支持させ、この昇降フレーム(3)に回転筒(4)を回転自在に支持させ、該回転筒(4)の上部に、ケーシング(C)を垂直に把持すべきチャックアーム連鎖型チャック(5)を取りつけると共に、上記昇降フレーム(3)上に設置されたケーシング回転用油圧モータ(6)、(6)から上記回転筒(4)に回転を伝達するようにしてあり、このようなケーシング回転圧入装置(P)のベースフレーム(1)の前後両端部(図1において左右両端部)に着脱すべき前部および後部車輪ユニット(A)、(Aa)を装備している。(7)…は上記ベースフレーム(1)の四隅部に設けたアウトリガーである。
【0009】上記ベースフレーム(1)への車輪ユニット(A)、(Aa)の着脱手段として、該ベースフレーム(1)において、図2に示すように四角筒からなる前、後枠材(8)、(8a)の各左右両側部に、前後方向に通じる四角筒状の嵌合孔(9)(9)、(9a)(9a)を設け、各嵌合孔の内側端にはストッパー(10)(10)、(10a)(10a)を設けると共に、各嵌合孔の側壁を上下に貫通するピン通し孔(11)(11)、(11a)(11a)を設けてある。
【0010】上記前部および後部車輪ユニット(A)、(Aa)は、特に図4、5に示すように四角筒の長い中空支持枠(12)、(12a)を車台として該支持枠内に、それよりも適宜長い四角筒の中空車輪ロッド(13)、(13a)を軸方向へ摺動自在に挿通し、該車輪ロッド(13)、(13a)の各左右両端部に前輪(14)、(14)、後輪(14a)、(14a)をそれぞれ取りつけ、上記支持枠(12)、(12a)には、上記ベースフレーム(1)の嵌合孔(9)(9)、(9a)(9a)に対向する位置に、該嵌合孔に嵌脱自在の四角筒であって上記ピン通し孔(11)(11)、(11a)(11a)と対応するピン通し孔(16)(16)、(16a)(16a)を有する着脱アーム(15)(15)、(15a)(15a)をそれぞれ平行に突設してある。(17)、(17a)は上記嵌合孔(9)、(9a)と着脱アーム(15)、(15a)のピン通し孔(11)(16)、(11a)(16a)に差しこむべき係止ピンである(図2参照)。
【0011】上記車輪ロッド(13)、(13a)を左右に微動可能に駆動する手段として、上記車輪ロッド(13)、(13a)の中間部に従動ピン(18)、(18a)を直角に固定すると共に、該ピン(18)、(18a)の先端部を、上記支持枠(12)、(12a)の長手方向長孔(19)、(19a)を通して外部へ突出させ、この従動ピン(18)、(18a)突出先端部の左右両側において、上記支持枠(12)、(12a)の各外側面に左右一対づつの左右調整用油圧シリンダ(20)(20)、(20a)(20a)を、そのピストンロッド(21)(21)、(21a)(21a)先端をそれぞれピン(18)、(18a)に向けた状態で、ブラケット(22)(22)、(22a)(22a)を介してそれぞれ取りつけてある。一方の調整手段についてみれば、車輪(14)、(14)を接地した状態で油圧シリンダ(20)、(20)のいずれかを伸長駆動することにより従動ピン(18)を左または右へ押せば、支持枠(12)が長孔(19)の範囲で相対的に左または右へ移動することとなる。
【0012】上記のような構造の前部車輪ユニット(A)に自走駆動装置が装備されている。以下これについて説明する。図4に示すように、上記車輪ロッド(13)の両端面に支持板(30)、(30)を垂直に固定し、該支持板(30)、(30)の外側面にそれぞれ直角に突設されたアーム(31)…、(31)…の先端部に、車輪駆動用ケーシング回転型油圧モータ(32)、(32)の固定がわ軸部をそれぞれボルトにより固定すると共に、車輪(14)、(14)のアーム(33)、(33)に、上記油圧モータ(32)、(32)の回転がわケーシング部をそれぞれボルトにより固定し、そして上記アーム(31)…、(31)…の各内側に上記油圧モータ(32)、(32)の各固定がわ軸部の一端部を突出し、各突出端部に油圧配管の接続口をそれぞれ設けてある。
【0013】上記支持枠(12)の一側部上面に図1、3のように油圧ユニットケース(34)を設置し、該ケース(34)内に、油タンク、油圧ポンプ、油圧ポンプ駆動用モータ、油圧切換回路等の油圧ユニットを内装してある。
【0014】さらに、上記着脱アーム(15)、(15)の中間部基部寄りに桟(35)、(35)を互に適宜間隔をあけて支架し、該桟(35)、(35)上のほぼ中間位置に固定された下面開口のボックス(36)上面に補助輪昇降用油圧シリンダ(37)を垂直に設置し、該シリンダ(37)のピストンロッド(38)をボックス(36)内に垂下すると共に、垂下端にキャスターの補助輪(39)を接続してある。
【0015】この場合、油圧シリンダ(37)の駆動により補助輪(39)を降下させて接地すれば、上記左右の車輪(14)、(14)と該補助輪(39)との3輪により、高重量の油圧ユニットを積んだ車輪ユニット(A)を安定に支持すると共に、その状態で車輪(14)、(14)の回転駆動により走行することとなる。
【0016】なお、上記補助輪(39)の降下による着脱アーム(15)、(15)の水平時の高さが、ケーシング圧入装置のアウトリガー(7)…の最大伸長時の嵌合孔(9)、(9)の高さと等しくなるように設計してある。
【0017】本例では後部車輪ユニット(Aa)がわに操縦手段を装備してあり、図5において上記車輪ロッド(13a)の両端部に、車輪(14a)、(14a)のステアリングナックル(23a)、(23a)をキングピン(24a)、(24a)により旋回自在に支持し、該ナックル(23a)、(23a)に突設されたレバー(25a)、(25a)に連結されたタイロッド(26a)、(26a)をギヤボックス(27a)内のステアリングギヤに接続してある。(28a)は操縦ハンドル(図1参照)、(29a)はハンドル軸である。
【0018】上例の作用を使用例とともに説明する。まず待機位置にあるケーシング圧入装置(P)を圧入作業位置に移動させる場合は、圧入装置(P)の各アウトリガー(7)…を最大伸長させ、図1(ロ)のようにベースフレーム(1)を他面から離間させる。
【0019】次に前部車輪ユニット(A)において、補助輪昇降用油圧シリンダ(37)の駆動により補助輪(39)を降下接地させ、着脱アーム(15)、(15)をほぼ水平にする。その状態で車輪駆動用油圧モータ(32)、(32)の逆回転により車輪(14)、(14)を逆回転させて前部車輪ユニット(A)を着脱アーム(15)、(15)を先頭にゆっくりと自走させ、該アーム(15)、(15)をベースフレーム(1)の嵌合孔(9)、(9)内に嵌入し、係止ピン(17)、(17)をピン通し孔(11)(16)、(11)(16)に差しこむ。上記自走において、補助輪(39)の旋回により走行方向を任意に変えることにより、着脱アーム(15)、(15)を嵌合孔(9)、(9)に容易に嵌入できる。
【0020】後部車輪ユニット(Aa)は、作業員がこれを押して移動させ、その着脱アーム(15a)、(15a)をベースフレーム(1)の嵌合孔(9a)、(9a)に嵌入し、係止ピン(17a)、(17a)をピン通し孔(11a)(16a)、(11a)(16a)に差しこむ。
【0021】次に上記前部車輪ユニット(A)において、上記油圧シリンダ(37)の駆動により補助輪(39)を上昇させて地面から離間させ、ついで圧入装置(P)のアウトリガー(7)…を地面から離間させ、それにより圧入装置(P)を前部および後部車輪ユニット(A)、(Aa)の4輪(14)(14)、(14a)(14a)にて支持する。
【0022】上記の状態で車輪駆動用油圧モータ(32)、(32)の正回転により駆動車輪(14)、(14)を正回転させると共に、作業員の操縦ハンドル(28a)操作により圧入装置(P)をケーシング圧入作業場所に移動させる。上記の移動走行において、補助輪(39)を地面から離間させておくから、地面の凸部に補助輪(39)が乗り上げて駆動車輪(14)、(14)を浮き上がらせることがない。
【0023】所定場所に至ったら、まず車輪駆動用油圧モータ(32)、(32)の正逆回転により駆動車輪(14)、(14)を微動回転させて、圧入装置(P)の前後方向の圧入位置調整を行い、ついで左右調整用油圧シリンダ(20)(20)、(20a)(20a)の各一方のシリンダ(20)、(20a)を縮小させた後各他方のシリンダ(20)、(20a)を微動伸長させて支持枠(12)、(12a)を同期的に左または右に微動させ、それに伴い圧入装置(P)を同方向へ微動させて左右方向の圧入位置調整を行う。
【0024】上記のように前後、左右の位置決めが完了したら、アウトリガー(7)…を伸長接地し、ケーシング(C)の圧入作業を行う。この場合着脱アーム(15)(15)、(15a)(15a)を引き抜いて前部および後部車輪ユニット(A)、(Aa)を圧入装置(P)から分離しておけば、作業スペースが確保される。
【0025】
【発明の効果】本発明のケーシング圧入装置の自走移動装置によれば、一方の車輪ユニットに設置した自走駆動装置によりケーシング圧入装置を作業場所に自走移動させることができると共に、車台に左右2輪と補助輪を設けた車輪ユニットと、車台に左右2輪を設けた車輪ユニットとをベースフレームの前後両端部に連結しても、横へ大きく張り出すことがないから、狭い場所へ容易に移動することができるのである。また本発明によれば、高重量の自走駆動装置をのせた車輪ユニットには補助輪を設けたから、該補助輪と左右2輪との3輪により安定状態で自走できるようになり、それにより高重量の車輪ユニットを圧入装置のベースフレームに着脱する際該車輪ユニットを自走させて容易に行うことができ、さらに上記補助輪を昇降自在に設けたから、ケーシング圧入装置の自走移動時に該補助輪を上昇させて地面から離間させておくことにより、地面の凸部に補助輪が乗り上げて駆動車輪を浮き上がらせることを防止できるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)ケーシング圧入装置およびそれから分離した前部および後部車輪ユニットの平面である。
(ロ)同上正面図である。
【図2】ベースフレームの一部切欠拡大平面図である。
【図3】図1(イ)のIII−III線拡大断面図である。
【図4】前部車輪ユニットの一部縦断拡大平面図である。
【図5】後部車輪ユニットの一部縦断拡大平面図である。
【符号の説明】
P ケーシング圧入装置
1 ベースフレーム
A 前部車輪ユニット
Aa 後部車輪ユニット
14、14a 車輪
32 車輪駆動用ケーシング回転型油圧モータ
34 油圧ユニットケース
37 補助輪昇降用油圧シリンダ
39 補助輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベースフレーム上にケーシング圧入手段を装備したケーシング圧入装置において、上記ベースフレームの前後両端部に、車台に左右2輪を設けてなる前部および後部車輪ユニットを着脱自在に連結し、その連結時にそれら4輪にて上記ベースフレームを無接地で支持できるようにし、上記少くとも一方の車輪ユニットにおいて、その車台に補助輪を昇降自在に設けると共に、該補助輪を降下時に上記左右2輪との3輪にて上記車輪ユニットを走行可能に支持できる位置関係におき、さらに上記車台に上記左右2輪を回転させる駆動装置を設置した、ケーシング圧入装置の自走移動装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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