説明

ケーシング移動装置及び食肉充填装置

【課題】 充填ノズルに装着されて回転する食肉充填用のケーシングを、充填ノズルの食肉吐出方向に移動させるときに、ケーシングの削りくずの発生を防止することによって、ケーシングの削りくずが食肉に付着したり混入することを解消すること。
【解決手段】 食肉充填装置の充填ノズル19に装着されて回転する食肉充填用のケーシング16を、充填ノズル19の食肉吐出方向35に移動させるケーシング移動装置21において、ケーシング16を押圧するための押圧部28と、押圧部28を食肉吐出方向35に移動させる移動機構部34とを備え、押圧部28は、充填ノズル19に沿って移動可能であると共に、充填ノズル19を中心に回動自在に軸受部45に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉充填装置の充填ノズルに装着されて回転する食肉充填用のケーシングを、充填ノズルの食肉吐出方向に移動させるケーシング移動装置、及びこのケーシング移動装置を備える食肉充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の食肉充填装置の一例として図5〜図7に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。この食肉充填装置1は、図5(a)、(b)及び(c)に示すように、分散加工された食肉(ソーセージの原料)2を、先端が封止された短円筒形状のケーシング(コラーゲン等で人工的に形成されたもの)3内に充填して、連鎖状充填ソーセージ10を製造する装置であり、食肉2の定量供給装置(図示せず)、回転ノズル3、捻り装置4、及びケーシング5の押圧装置6を備えている。
【0003】
この食肉充填装置1によると、図5(a)、(b)に示すように、定量供給装置から供給される食肉2は、回転ノズル3を通ってケーシング5内に充填される。このとき、回転ノズル3が回転しており、この回転ノズル3の回転によって押圧部材6aが回転ノズル3の先端側(矢印7の方向)に向かって移動する。そして、この押圧部材6aの移動によってケーシング5が押圧部材6aに押されて回転ノズル3の先端側方向に移動する。これによって、ケーシング5の先端側が回転ノズル3から外れる方向に押し出される。次に、図5(c)に示すように、捻り装置4の回転パッキング4aが回転する。回転パッキング4aが回転すると、この回転パッキング4a及び回転ノズル3の回転に伴って、回転ノズル3に装着されているケーシング5が回転し、このケーシング5の回転によって、ケーシング5に捻り部8が形成される。このように、捻り部8が形成されるのは、ケーシング5の回転ノズル3から押し出されている部分(食肉2が充填されている充填ソーセージ部9)がその重みによって回転しない状態で、ケーシング5の回転ノズル3に装着されている部分(食肉2が充填されていない部分)が回転するからである。このようにして、充填ソーセージ部9と捻り部8とが交互に形成された連鎖状充填ソーセージ10を製造することができる。
【0004】
図6は、押圧装置6を示す縦断面図である。押圧部材6aは、同図に示すように、回転ノズル3が回転すると、複数の送りローラ6bが回転するので、この送りローラ6bの回転によって回転ノズル3の先端側(矢印7の方向)に向かって移動する。
【0005】
図7は、捻り装置4を示す縦断面図である。捻り装置4は、同図に示す駆動歯車11が回転すると、これと噛み合う従動歯車12及びこの従動歯車12に設けられている回転パッキング4aが回転する。回転パッキング4aが回転すると、この回転パッキング4aと回転ノズル3との間に挟み込まれているケーシング5が同方向に回転する。この従動歯車12は、軸受部13を介して固定枠体14に取り付けられており、この固定枠体14は食肉充填装置1の架台(図示せず)に取り付けられている。
【特許文献1】特開平7−115891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の食肉充填装置1では、図5(c)に示すように、ケーシング5に捻り部8を形成するときに、回転パッキング4a、回転ノズル3、及びケーシング5が回転するが、押圧部材6aが回転ノズル3を中心に回転しないので、この回転しない押圧部材6aの押圧面6cと、これと接触した状態で回転するケーシング5の後端部との間で滑り(動摩擦)が生じることとなる。このように両者の間で滑りが生じると、ケーシング5の後端部が押圧面6cによって削られて削りくずが発生する。この削りくずは、ケーシング5の外面や内面に付着することがある。このようにしてケーシング5の内面に付着する削りくずは、ケーシング5内に充填される食肉2に付着することがある。そして、ケーシング5の外面に付着する削りくずは、ケーシング5を剥離して内部の食肉(ソーセージ)2を取り出す際に、その取り出されたソーセージに混入する恐れがある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、充填ノズルに装着されて回転する食肉充填用のケーシングを、充填ノズルの食肉吐出方向に移動させるときに、ケーシングの削りくずの発生を防止することによって、ケーシングの削りくずが食肉に付着したり混入することを解消できるケーシング移動装置、及びこのケーシング移動装置を備える食肉充填装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る食肉充填装置は、充填ノズルを有し、前記充填ノズルに食肉充填用のケーシングを装着して、前記ケーシング内に前記充填ノズルから吐出される食肉を充填し、この食肉が充填されるごとに前記ケーシングを捻ることによって連鎖状充填食肉体を製造する食肉充填装置において、前記ケーシングを、本発明に係るケーシング移動装置によって、前記充填ノズルの食肉吐出方向に移動させることを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係る食肉充填装置によると、充填ノズルにケーシングを装着して、この充填ノズルから食肉を吐出することによって、食肉をこのケーシング内に充填することができる。そして、ケーシング内に食肉が充填されると、ケーシングのうち充填ノズルに装着されている部分を回転させることによって、ケーシングに捻り部を形成することができる。このような工程を繰り返して行うことによって、充填食肉部と捻り部とが交互に形成された連鎖状充填食肉体を製造することができる。
【0010】
本発明に係るケーシング移動装置は、食肉充填装置の充填ノズルに装着されて回転する食肉充填用のケーシングを、前記充填ノズルの食肉吐出方向に移動させるケーシング移動装置において、前記ケーシングを押圧するための押圧部と、前記押圧部を前記食肉吐出方向に移動させる移動手段とを備え、前記押圧部は、前記充填ノズルに沿って移動可能であると共に、前記充填ノズルを中心に回動自在であることを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係るケーシング移動装置によると、ケーシング内に食肉が充填されるときに、押圧部が移動手段によって駆動されて、この押圧部がケーシングを押圧する。そして、押圧部に押圧されるケーシングは、充填ノズルの食肉吐出方向に移動する。これによって、ケーシングの長さ方向に沿って、食肉を例えば一定体積ずつケーシング内に充填することができる。そして、ケーシングに捻り部を形成するために、ケーシングを回転させたときに、このケーシングを押圧する押圧部がケーシングに伴って同方向に回転するので、互いに接触する押圧部とケーシングとの間で滑り(動摩擦)が生じることがない。よって、ケーシングが押圧部によって削られることがなく、削りくずの発生を防止できる。
【0012】
そして、この発明に係るケーシング移動装置において、前記押圧部は、軸受部を介して回動自在に前記移動手段に設けるとよい。このようにすると、押圧部は、軸受部によって、充填ノズルを中心にして、比較的小さい力で滑らかに回動するようにできる。よって、押圧部とケーシングとの間の滑りを確実に防止でき、ケーシングの削りくずの発生を確実に防止できる。
【0013】
また、この発明に係るケーシング移動装置において、前記押圧部の前記ケーシングを押圧する押圧面が、前記充填ノズルに対して垂直な平面で形成されているようにしてもよい。このようにすると、ケーシングが例えば略短円筒形状であるときに、充填ノズルに装着されたケーシングの円形後端部を押圧面によって略均等に押圧することができる。これによって、この押圧面によってケーシングの後端部を座屈させることなく、ケーシングを充填ノズルの食肉吐出方向に確実に移動させることができる。
【0014】
更に、この発明に係るケーシング移動装置において、前記移動手段は、前記押圧部と連結し、前記食肉吐出方向に移動して前記押圧部を同方向に移動させる送り軸と、前記送り軸の自由端側部の撓み方向の変形を防止する支持部とを備えるようにするとよい。このようにすると、送り軸が充填ノズルの食肉吐出方向に移動することによって、この送り軸と連結する押圧部を同方向に移動させることができる。この送り軸の自由端側部は、撓み方向の変形を支持部で防止されている。つまり、押圧部の重量は、送り軸によって支持され、この送り軸は、支持部によって支持されている。その結果、押圧部がケーシングを押圧して充填ノズルの先端側に移動したときに、押圧部の重量がノズルの先端側に掛からないように支持部で支持することができ、充填ノズルが撓むことを防止できる。よって、充填ノズルが撓むことによって、例えばケーシングが引っ張られて破れることを防止できる。
【0015】
そして、この発明に係るケーシング移動装置において、前記送り軸を、一定圧力の流体で作動するシリンダ装置で、前記食肉吐出方向に移動させるようにできる。このようにすると、シリンダ装置によって一定の適切な力で、送り軸、これと連結する押圧部、及びこの押圧部によって押圧されるケーシングを、充填ノズルの食肉吐出方向に移動させるようにすることができる。そして、この押圧部がケーシングを押圧する力は、押圧部がケーシングに対して滑りが生じないように回転するように、適切な大きさとなるように設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係るケーシング移動装置、及びこの移動装置を備える食肉充填装置によると、ケーシングが回転したときに、このケーシングを押圧する押圧部がケーシングに伴って同方向に回転するので、両者の間で滑りが生じることがなく、よって、ケーシングの削りくずの発生を防止できる。従って、ケーシングの削りくずが食肉に付着したり混入することを解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るケーシング移動装置、及びこのケーシング移動装置を備える食肉充填装置の実施形態を図1〜図4を参照して説明する。この食肉充填装置(以下、単に「充填装置」と言うこともある。)15は、図3に示すように、分散加工された食肉(ソーセージの原料)2を、先端が封止された短円筒形状のケーシング16内に充填して、連鎖状充填ソーセージ(連鎖状充填食肉体)17を製造する装置である。なお、ケーシング16は、例えばコラーゲンやセルロース等によって人工的に製造されたものである。この充填装置15は、図1に示すように、食肉2の定量供給装置18、充填ノズル19、捻り装置4、ケーシング移動装置21、及び排出装置22を備えており、これら定量供給装置18等は、この充填装置15の架台23に設けられている。
【0018】
定量供給装置18は、定量ポンプであり、食肉2を単位時間当たりに一定体積ずつ吐出口(図示せず)から吐出できるものである。そして、この定量供給装置18は、図2に示すように、食肉2を吸い込むための吸込み口18aを有し、この吸い込んだ食肉2を吐出口から吐出することができる。そして、吸込み口18aには、食肉供給管18bが接続されている。吐出口には、充填ブロック24が設けられている。この充填ブロック24には、充填ノズル19の挿通孔24aが形成されており、この挿通孔24aに充填ノズル19が挿通されている。
【0019】
充填ノズル19は、図2に示すように、基端部が封止された所定長の円筒形状体である。この充填ノズル19は、その基端部が連結部25を介して第1シリンダ装置(例えばエアーシリンダ装置)26のピストンロッド26aと連結している。この第1シリンダ装置26は、充填ノズル19をその長さ方向に押引きして移動させるためのものである。
【0020】
第1シリンダ装置26が伸長方向に駆動されて伸長状態となると、図2に示すように、充填ノズル19の先端部が捻り装置4の第1スリーブ27内に収容された状態(充填位置にある状態)となる。ただし、図2では、充填ノズル19の先端部の様子を分かり易くするために、先端部が第1スリーブ27の少し手前に位置する状態を示している。このように、充填ノズル19が充填位置にある状態で、ケーシング16内に食肉2を充填することができる。
【0021】
そして、図には示さないが、第1シリンダ装置26が短縮方向に駆動されて短縮状態となると、充填ノズル19の先端部がケーシング移動装置21の押圧部28から少し突出した状態(待機位置にある状態)となる。このように、充填ノズル19が待機位置にある状態で、ケーシング16を充填ノズル19に装着することができる状態となる。
【0022】
ケーシング16は、図1に示すホッパ29に多数貯留されており、充填ノズル19が待機位置にあるときに、ホッパ29から1本のケーシング16が排出されて、その1本のケーシング16がケーシング位置決め部30上に配置されて位置決めされる。位置決め部30上に位置決めされたケーシング16は、充填ノズル19と平行している。ケーシング16が位置決め部30上に位置決めされた状態で、待機位置にある充填ノズル19を伸長させることによって、図2に示すように、ケーシング16内に充填ノズル19を挿通させて、充填ノズル19にケーシング16を装着することができる。このように、充填ノズル19にケーシング16が装着された状態で、定量供給装置18を駆動して、充填ノズル19の先端から食肉2を吐出することによって、この吐出する食肉2を一端が封止されたケーシング16内に充填することができる。なお、充填ノズル19の側壁には開口部(図示せず)が形成されており、この開口部は、充填ノズル19が図2に示す充填位置に移動した状態で、充填ブロック24内に収容されて、定量供給装置18の吐出口と連通する状態となる。従って、充填ノズル19が充填位置に移動した状態で定量供給装置18を駆動すると、定量供給装置18の吐出口から吐出された食肉2は、充填ブロック24内の通路及び開口部を通って、充填ノズル19の先端開口部から吐出される。
【0023】
捻り装置4は、図7に示す従来のものと同等である。同図に示すように、充填位置にある充填ノズル19の先端部外周面と密着する回転パッキング4aを備えている。この回転パッキング4aは、第2スリーブ32の内面に形成された環状溝に装着されており、この第2スリーブ32の内側に第1スリーブ27が装着されている。第1スリーブ27は、その先端部と第2スリーブ32の溝の側面との間に回転パッキング4aを挟み込んでおり、これによって、回転パッキング4aが環状溝から外れないように固定している。そして、第1及び第2スリーブ27、32は、従動歯車12の内周面に固定して取り付けられており、この従動歯車12は、駆動歯車11と噛み合っている。駆動歯車11は、例えば電気モータ(図示せず)の回転軸と連結している。
【0024】
また、従動歯車12は、図7に示すように、2つの軸受部13、13を介して固定枠体14に取り付けられており、この固定枠体14は充填装置15の架台23に取り付けられている。更に、固定枠体14には、固定パッキング33が固定して取り付けられている。この固定パッキング33は、その内周面33aが漏斗状に形成されており、充填ノズル19から吐出されてケーシング16内に充填された食肉2の形状を、所定の略円柱形状に形成するものである。
【0025】
図7は、充填ノズル19が充填位置にあり、この充填ノズル19にケーシング16が装着されている。そして、充填ノズル19から吐出された食肉2がケーシング16内に充填されており、食肉2が充填されたケーシング(充填食肉部(充填ソーセージ部9))16が固定パッキング33を通って排出装置22側に送り出されている。回転パッキング4aは、その内周縁と、充填ノズル19の先端部外周面との間にケーシング16を挟み込んで互いに密着しているので、充填ノズル19から吐出される食肉2が充填ノズル19の外周面と、ケーシング16との間に逆流することを防止できる。なお、図7では、従来のケーシング5が蛇腹状に屈曲しているが、本発明の実施形態のケーシング16は、蛇腹状に屈曲しておらず、略短円筒形状である。
【0026】
このようにして、例えば所定長さの充填ソーセージ部(充填食肉部)9が形成されたときに、電気モータが所定時間だけ駆動する。この電気モータの回転軸の回転は、駆動歯車11及び従動歯車12等を介して回転パッキング4aに伝達されて、この回転パッキング4aが充填ノズル19を中心に所定方向に回転する。回転パッキング4aが回転すると、この回転パッキング4aに伴って、ケーシング16のうち充填ノズル19に装着されている部分が回転する。このようにして、充填ソーセージ部9と充填ソーセージ部9との間に捻り部8を形成することができる。なお、充填ノズル19は、回転しない構成である。
【0027】
ケーシング16のうち充填ノズル19に装着されている部分が回転するのは、回転パッキング4aの内周縁が、充填ノズル19の外周面との間にケーシング16を挟み込んだ状態でケーシング16と密着しているからである。そして、充填ソーセージ部9が排出装置22によって保持されており、これによって充填ソーセージ部9が回転しないからである。
【0028】
ケーシング移動装置21は、図2に示すように、押圧部28と、移動機構部34とを備えている。押圧部28は、充填ノズル19に装着されているケーシング16を、充填ノズル19の食肉吐出方向35に押圧して移動させることができるものである。そして、この押圧部28は、図4に示すように、外周面が短円筒形に形成されたカップ状体であり、底壁の外面が押圧面28aとして形成されている。この底壁の中心には、円形の挿通孔28bが形成されており、この挿通孔28bに充填ノズル19が挿通している。この挿通孔28bの内径は、充填ノズル19の外径よりも少し大きい寸法である。そして、押圧面28aは、ケーシング16を押圧するための部分であり、その全体が充填ノズル19に対して垂直な平面で形成されている。この押圧部28は、内周面に軸受部(例えばラジアル玉軸受)45が取り付けられており、この軸受部45の内側に摺動筒36が取り付けられている。
【0029】
この摺動筒36は、図4に示すように、移動機構部34を構成するものであり、この摺動筒36の一端の外周面に、固定カラー37が固定して取り付けられている。摺動筒36は、その内孔36aに充填ノズル19が挿通しており、充填ノズル19に沿って移動可能である。つまり、押圧部28は、充填ノズル19に沿って移動可能であると共に、充填ノズル19を中心に回動自在に設けられている。
【0030】
移動機構部34は、図2に示すように、送り軸38を備えている。この送り軸38は、連結アーム39を介して摺動筒36と連結している。この送り軸38は、連結部40を介して第2シリンダ装置(例えばエアーシリンダ装置)41のピストンロッド41aと連結している。この第2シリンダ装置41は、送り軸38をその長さ方向に押引きして移動させるためのものである。
【0031】
図2に示すように、第2シリンダ装置41が短縮方向に駆動されて短縮状態となると、送り軸38と連結する押圧部28が待機位置となる。押圧部28が待機位置にあるときは、充填ノズル19を後退させて待機位置に移動させることができる。このように、押圧部28及び充填ノズル19が後退して待機位置にあるときに、ホッパ29内のケーシング16のうちの1本のケーシング16を位置決め部30上に配置することができる。しかる後に、充填ノズル19を前進させて充填位置に移動させることによって、ケーシング16が充填ノズル19に装着される。これで、ケーシング16内に食肉2を充填可能な状態となる。
【0032】
次に、図3に示すように、第2シリンダ装置41を伸長方向に駆動すると、押圧部28が充填ノズル19の先端部に接近する方向(食肉吐出方向35)に前進する。このように、押圧部28が前進すると、この押圧部28が充填ノズル19に装着されているケーシング16の後端部を押圧して、ケーシング16を充填ノズル19の先端部から外れる方向に移動させることができる。そして、第2シリンダ装置41が伸長状態になると、押圧部28は前進位置に移動した状態となり、食肉2が充填されたケーシング(連鎖状充填ソーセージ17)16を充填ノズル19の先端部から取り外すことができる状態となる。この連鎖状充填ソーセージ17は、排出装置22によって取り込まれて次の工程に搬送される。
【0033】
また、図3に示すように、送り軸38は、第1支持部42及び第2支持部43によって支持されている。第1支持部42は、定量供給装置18に設けられており、支持孔42aが形成されている。この支持孔42aに送り軸38が進退自在に挿通している。第1支持部42は、送り軸38が待機位置と前進位置との間を滑らかに進退移動するように、送り軸38を支持している。
【0034】
第2支持部43は、図3に示すように、略直方体のブロックであり、充填装置15の架台23に設けられており、上面に支持溝43aが形成されている。この支持溝43aは、送り軸38の下面と対応する略半円形の断面に形成されており、送り軸38と同一直線上に配置されている。この第2支持部43は、送り軸38が図3に示す前進位置の少し手前の位置から前進位置までの範囲に移動したときに、送り軸38の自由端側部38aが撓み方向に変形することを防止できるものである。
【0035】
排出装置22は、図1に示すように、捻り装置4の後段に設けられている。この排出装置22は、2つの環状チェーン22a、22aを備えており、各チェーン22a、22aには、多数のホルダ22bが取り付けられている。各ホルダ22bは、捻り装置4から送り出される連鎖状充填ソーセージ17のそれぞれの充填ソーセージ部9を1つずつ保持して、後段に搬送することができるものである。
【0036】
次に、上記のように構成された食肉充填装置15を使用して、連鎖状充填ソーセージ17を製造する手順を説明する。まず、図1に示す充填ノズル19及び押圧部(図示せず)のそれぞれを待機位置に移動させる。そして、ケーシング16を位置決め部30上に配置して、所定の位置に位置決めする。次に、待機位置にある充填ノズル19を前進させて充填位置に移動させる。これによって、充填ノズル19にケーシング16を装着した状態となる。そして、定量供給装置18を作動させて、充填ノズル19から食肉2を吐出して食肉2をケーシング16内に充填する。このとき、押圧部28を前進させてケーシング16を前進させる。そして、ケーシング16内に食肉2が充填されて、1つの充填ソーセージ部9が形成されたときに、捻り装置4を所定時間だけ作動させてケーシング16に捻り部8を形成する。次に、上記と同様にして、食肉2がケーシング16内に充填されて充填ソーセージ部9が形成されるたびに、捻り装置4を所定時間だけ作動させて捻り部8を形成する。このようにして、図3に示す連鎖状充填ソーセージ17を製造することができる。この製造された所定長さの連鎖状充填ソーセージ17は、排出装置22によって後段に搬送される。次に、上記の工程を繰り返して行うことによって、次の連鎖状充填ソーセージ17を製造することができる。
【0037】
次に、図3に示すケーシング移動装置21によると、ケーシング16内に食肉2が充填されるときに、押圧部28が移動機構部34によって駆動されて、この押圧部28がケーシング16の後端部を押圧して、ケーシング16を充填ノズル19の食肉吐出方向35に、略一定の速度で移動させることができる。これによって、食肉2をケーシング16の長さ方向に沿って略一定量ずつケーシング16内に充填することができる。そして、ケーシング16に捻り部8を形成するために、ケーシング16を回転させたときに、このケーシング16を押圧する押圧部28がケーシング16に伴って同方向に回転する。押圧部28がケーシング16に伴って同方向に回転するのは、押圧部28が軸受部13を介して回動自在に摺動筒36に設けられており、押圧部28の押圧面28aとケーシング16の後端部との接触圧により両者間に摩擦力が生じるからである。よって、互いに接触する押圧部28とケーシング16との間で滑り(動摩擦)が生じることなく、ケーシング16の回転に伴って押圧部28が回転する。その結果、ケーシング16が押圧部28によって削られることがなく、削りくずの発生を解消できる。
【0038】
このように、削りくずが発生しないので、削りくずがケーシング16の内面に付着することがなく、よって、ケーシング16内に充填された食肉(ソーセージ)2に削りくずが付着することがない。そして、削りくずがケーシング16の外面にも付着することがないので、例えばケーシング16を剥離して内部(充填ソーセージ部9の内部)のソーセージを取り出す際に、その取り出されたソーセージに削りくずが混入することがない。
【0039】
そして、図4に示すように、押圧部28が軸受部45を介して回動自在に摺動筒36に設けられているので、押圧部28は、軸受部45によって、充填ノズル19を中心にして、比較的小さい力で滑らかに回動することができる。よって、押圧部28とケーシング16との間の滑りを確実に防止でき、ケーシング16の削りくずの発生を確実に防止できる。
【0040】
また、図4に示すように、押圧部28のケーシング16を押圧する押圧面28aが、充填ノズル19に対して垂直な平面で形成されているので、充填ノズル19に装着されたケーシング16の円形後端部16aを、押圧面28aによって略均等に、充填ノズル19の食肉吐出方向35に押圧することができる。これによって、この押圧面28aによってケーシング16の後端部16aを座屈させることなく、ケーシング16を食肉吐出方向35に確実に移動させることができる。
【0041】
更に、図3に示すように、送り軸38の自由端側部38aの撓み方向の変形を防止する第2支持部43を設けてあるので、この自由端側部38aの撓みを防止することができる。つまり、押圧部28、軸受部45、固定カラー37、及び摺動筒36の重量は、送り軸38によって支持され、この送り軸38は、第1及び第2支持部42、43によって支持されている。そして、押圧部28がケーシング16を押圧して充填ノズル19の先端側に移動したときに、押圧部28、軸受部45、固定カラー37、及び摺動筒36の重量が充填ノズル19及び送り軸38のそれぞれの先端側に掛からないように、主に、第2支持部43で支持することができる。これによって、充填ノズル19が撓むことを防止でき、充填ノズル19の撓みが原因して起こるケーシング16の破れを防止できる。
【0042】
なお、充填ノズル19の自由端側部が撓むと、ケーシング16が破れることがあるのは、図7に示す充填ノズル19の自由端側部の中心軸線が、固定パッキング33の内周面33a、及び回転パッキング4aの内周縁のそれぞれの中心軸線からずれることになり、ケーシング16が回転するときに、ケーシング16が固定パッキング33の内周面33a、及び回転パッキング4aの内周縁で強く引っ張られたり擦られるからである。
【0043】
そして、図3に示すように、送り軸38を、一定の圧力流体(例えば圧力空気)が供給される第2シリンダ装置41によって、充填ノズル19の食肉吐出方向35に移動させるようにしているので、第2シリンダ装置41によって一定の適切な力で、送り軸38、これと連結する押圧部28、及びこの押圧部28によって押圧されるケーシング16を、充填ノズル19の食肉吐出方向35に移動させることができる。そして、この押圧部28がケーシング16を押圧する力は、押圧部28がケーシング16に対して滑りが生じないように回転するように、適切な大きさとなるように設定することができる。
【0044】
ただし、上記実施形態では、図4に示すように、押圧部28を回動自在に摺動筒36に取り付けるために、軸受部45として例えばラジアル玉軸受を使用したが、これに代えて、滑り軸受を使用してもよい。
【0045】
そして、上記実施形態では、図3に示すように、送り軸38を、互いに間隔を隔てて配置されている第1支持部42と第2支持部43とによって支持する構成としたが、これに代えて、例えば第2支持部43を、捻り装置4と第1支持部42との間の全範囲に亘る長さに形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明に係るケーシング移動装置、及びこのケーシング移動装置を備える食肉充填装置は、充填ノズルに装着されて回転する食肉充填用のケーシングを、充填ノズルの食肉吐出方向に移動させるときに、ケーシングの削りくずの発生を防止することができ、これによって、ケーシングの削りくずが食肉に付着したり混入することを解消できる優れた効果を有し、このようなケーシング移動装置及び肉充填装置等に適用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の実施形態に係る食肉充填装置を示す斜視図である。
【図2】同実施形態に係る食肉充填装置に設けられているケーシング移動装置を示す拡大斜視図である。
【図3】同実施形態に係るケーシング移動装置によって、ケーシングを食肉吐出方向に移動させた状態を示す拡大斜視図である。
【図4】同実施形態の押圧部を示す拡大縦断面図である。
【図5】従来の食肉充填装置によって、連鎖状充填ソーセージを製造する手順を示す図であり、(a)は食肉をケーシング内に充填し始めた状態を示す図、(b)は食肉をケーシング内に略充填し終わった状態を示す図、(c)は捻り装置によってケーシングに捻り部を形成した状態を示す図である。
【図6】同従来の食肉充填装置に設けられている押圧部材を示す拡大縦断面図である。
【図7】同従来の食肉充填装置に設けられている捻り装置を示す拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
2 食肉
4 捻り装置
4a 回転パッキング
8 捻り部
9 充填ソーセージ部
11 駆動歯車
12 従動歯車
13、45 軸受部
14 固定枠体
15 食肉充填装置
16 ケーシング
16a ケーシングの後端部
17 連鎖状充填ソーセージ
18 定量供給装置
19 充填ノズル
21 ケーシング移動装置
22 排出装置
23 架台
24 充填ブロック
26 第1シリンダ装置
27 第1スリーブ
28 押圧部
28a 押圧面
29 ホッパ
30 ケーシング位置決め部
32 第2スリーブ
33 固定パッキング
34 移動機構部
35 食肉吐出方向
36 摺動筒
37 固定カラー
38 送り軸
38a 送り軸の自由端側部
41 第2シリンダ装置
42 第1支持部
43 第2支持部
43a 支持溝
45 軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉充填装置の充填ノズルに装着されて回転する食肉充填用のケーシングを、前記充填ノズルの食肉吐出方向に移動させるケーシング移動装置において、
前記ケーシングを押圧するための押圧部と、前記押圧部を前記食肉吐出方向に移動させる移動手段とを備え、前記押圧部は、前記充填ノズルに沿って移動可能であると共に、前記充填ノズルを中心に回動自在であることを特徴とするケーシング移動装置。
【請求項2】
前記押圧部は、軸受部を介して回動自在に前記移動手段に設けられていることを特徴とする請求項1記載のケーシング移動装置。
【請求項3】
前記押圧部の前記ケーシングを押圧する押圧面が、前記充填ノズルに対して垂直な平面で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のケーシング移動装置。
【請求項4】
前記移動手段は、前記押圧部と連結し、前記食肉吐出方向に移動して前記押圧部を同方向に移動させる送り軸と、前記送り軸の自由端側部の撓み方向の変形を防止する支持部とを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のケーシング移動装置。
【請求項5】
前記送り軸を、一定圧力の流体で作動するシリンダ装置で前記食肉吐出方向に移動させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のケーシング移動装置。
【請求項6】
充填ノズルを有し、前記充填ノズルに食肉充填用のケーシングを装着して、前記ケーシング内に前記充填ノズルから吐出される食肉を充填し、この食肉が充填されるごとに前記ケーシングを捻ることによって連鎖状充填食肉体を製造する食肉充填装置において、
前記ケーシングを、請求項1乃至5のいずれかに記載のケーシング移動装置によって、前記充填ノズルの食肉吐出方向に移動させることを特徴とする食肉充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−129720(P2006−129720A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319408(P2004−319408)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000118497)伊藤ハム株式会社 (57)
【Fターム(参考)】