説明

ケースの組立構造

【課題】ケースの各面を構成する面部材をネジ止めや溶接によることなく確実に接合でき、組立作業を容易にし、防水性を確保できるようにする。
【解決手段】側面部材1の背面側端部に平板状の折曲部11を45度の角度で折り曲げて形成し、背面部材3の側面側端部に平板状の折曲部31を45度の角度で折り曲げて形成した。折曲部11の外側面と折曲部31の外側面とを当接させた後、折曲部11及び折曲部31に、弾力性を有する略Ω状のクリップ7を装着する。クリップ7を折曲部11,31に装着すると、当接部71,72が折曲部11の内側面と折曲部31の内側面とに弾性力によって圧接する。当接部71,72から作用する弾性力により、折曲部11の外側面と折曲部31の外側面との密着状態が維持され、防水性が保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の面で構成されたケースの組立構造に関し、特に、複数の面部材のそれぞれの端部同士を接合して構成されるケースの組立構造に関する。
【背景技術】
【0002】
郵便ポストのように、屋外で使用される防水型のケースの構造として、複数の面を一体に形成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ケースを構成する複数の面を一体に形成した場合、部品点数は減少するが、1部品の容積が大型化し、組立前の各部品の保管スペースが大型化する。また、複数の面を一体に形成した場合、内側面の塗装が困難になる。
【0004】
一方、ケースの各面を個別の面部材で構成し、隣接する面部材をネジ止めや溶接によって接合する場合には、組立前の各面部材を積層することで保管スペースを狭小化できる。また、組立前の各面部材の両面を容易に均一塗装することができる。
【特許文献1】特開2000−333818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケースの各面を個別の面部材で構成し、隣接する面部材をネジ止めによって接合すると、ケースの防水性を確保することが難しい。また、ケースの形状によっては、ケースの内側にネジ止めや溶接のための工具を挿入することができず、ケースの形状の自由度が低下する。
【0006】
この発明の目的は、ケースの各面を構成する面部材をネジ止めや溶接によることなく確実に接合できるようにし、組立作業が容易で、防水性を確保することができるケースの組立構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のケースの組立構造は、複数の面部材のそれぞれの端部同士を接合してケースを構成する組立構造であって、折曲部及びクリップを備えている。折曲部は、複数の面部材のうち互いに接合される2つの面部材のそれぞれの端部を、2つの面部材の内角を2分する角度に折り曲げて平板状に形成されている。クリップは、2つの面部材のそれぞれの折曲部の内側面に圧接し、2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面同士が接触する状態で保持する。
【0008】
2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面を当接させると、2つの面部材のそれぞれの折曲部によって規定される角度で2つの面部材が接合される。2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面の当接状態は、2つの面部材のそれぞれの折曲部の内側面に圧接するクリップによって維持される。組立前の各面部材は、単一の面を構成する形状であり、折曲部を含む表裏全面を均一に塗装可能であり、複数枚を積層して保管できる。
【0009】
この構成において、クリップを、面部材の端部に端部の長手方向の全長にわたって圧接するものとしてもよい。2つの面部材のそれぞれの折曲部の当接状態を端部の全長にわたって確実に維持することができる。
【0010】
また、2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面の間に挿入されるパッキンをさらに備えてもよい。2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面の間に空間が形成されることを確実に防止でき、防水性を向上させることができる。
【0011】
さらに、2つの面部材のそれぞれの折曲部に、互いに係合する係合部を形成してもよい。2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面の相対的な位置を規定することができ、端部の長手方向に沿う方向における2つの面部材の相対的な位置決めを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面を当接させることで、2つの面部材のそれぞれの折曲部によって規定される角度で2つの面部材を接合することができる。2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面の当接状態は、2つの面部材のそれぞれの折曲部の内側面に圧接するクリップによって維持することができる。組立前の各面部材を単一の面で構成することができ、折曲部を含む表裏全面を均一に塗装することができるとともに、複数枚を積層して小さいスペースに保管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明の実施形態に係るケースの組立構造を適用した郵便ポストの要部の外観図である。郵便ポスト10は、左右の側面部材1,2、背面部材3、天面部材4、底面部材5及び図示しない正面部材によって略直方体の筐体形状に形成される。側面部材1,2、背面部材3、天面部材4、底面部材5のそれぞれは、例えば、SPCC等の鋼板を素材として、プレス加工によって所定の形状に形成された後、表裏面の全面に塗装を施された後に組み立てられる。側面部材1,2、背面部材3、天面部材4、底面部材5は、表裏面の全面が塗装されるため、耐腐食性材料を素材とする必要がない。
【0014】
側面部材1,2、背面部材3、天面部材4、底面部材5は、略平面状を呈している。天面部材4は、少なくとも左右の側面側に垂直面41が形成されており、背面側に傾斜面42及び垂直面43が形成され、立体形状を呈している。背面部材3には、開口部3Aが形成されており、開口部3Aを開閉する蓋体6が揺動自在に取り付けられている。
【0015】
郵便ポスト10の組立後に、側面部材1及び側面部材2のそれぞれの背面側端部が背面部材3の左右の側面側端部に接合し、側面部材1及び側面部材2のそれぞれの上面側端部が天面部材4の左右の側面側端部に接合し、側面部材1及び側面部材2のそれぞれの底面側端部が底面部材5の左右の側面側端部に接合する。また、郵便ポスト10の組立後に、背面部材3は、上面側端部が天面部材4の背面側端部に接合し、底面側端部が底面部材5の背面側端部に接合する。
【0016】
図2は、上記郵便ポストの要部の分解斜視図である。側面部材1の背面側端部には、円弧部12に連続して折曲部11が上下方向の全域にわたって形成されている。折曲部11は、側面部材1の平面部分に対して平面視において45度の角度で折り曲げられている。背面部材3の側面側端部には、円弧部32に連続して折曲部31が上下方向の全域にわたって形成されている。折曲部31は、背面部材3の平面部分に対して平面視において45度の角度で折り曲げられている。折曲部11及び折曲部31は平板状を呈している。
【0017】
側面部材1の背面側端部及び背面部材3の側面側端部は、折曲部11の外側面と折曲部31の外側面とを当接させて接合される。これによって、側面部材1と背面部材3とは、内角を90度にして接合される。折曲部11及び折曲部31は、それぞれが平板状を呈しているため、それぞれの外側面が上下方向の全域にわたって密着する。
【0018】
互いの外側面を当接させた折曲部11及び折曲部31に、クリップ7が装着される。クリップ7は、一例として弾力性を有する樹脂を素材として、略Ω状の断面形状を呈している。クリップ7は、折曲部11,31に装着されていない状態で圧接部71,72が当接している。クリップ7を折曲部11,31に装着すると、当接部71,72が折曲部11の内側面と折曲部31の内側面とに弾性力によって圧接する。当接部71,72から作用する弾性力により、折曲部11の外側面と折曲部31の外側面との密着状態が維持され、防水性が保たれる。
【0019】
また、折曲部11の外側面と折曲部31の外側面との少なくも一方が平滑性でない場合でも、両外側面から内部に侵入した液体は、クリップ7の中間部で塞き止められ、郵便ポスト10の内部に漏出することがない。
【0020】
したがって、側面部材1と背面部材3とをネジ止めや溶接によることなく確実に接合することができ、組立作業を容易することができるとともに、防水性を確保できる。
【0021】
なお、側面部材2は、側面部材1と同様にして背面部材3に接合され、クリップ7によって接合状態を維持される。
【0022】
図3は、上記郵便ポストの要部の内部上面側を示す分解斜視図である。側面部材1の上面側端部には、内側に平行に折り曲げられた固定部13が段部14に連続して前後方向の略全域にわたって形成されている。固定部13には、一例として3箇所に孔部15が形成されている。
【0023】
天面部材4は、垂直面41の内側面を固定部13の外側面に当接させて側面部材1に接合される。垂直面41の内側面には、一例として3箇所に突起44が形成されている。突起44のそれぞれは、孔部15のそれぞれに嵌入し、側面部材1と天面部材4との接合位置を規定する。
【0024】
背面部材3の上面側端部には、内側に平行に折り曲げられた固定部33が段部34に連続して左右方向の略全域にわたって形成されている。天面部材4は、垂直面43の内側面を固定部33の外側面に当接させて背面部材3に接合される。
【0025】
天面部材4は、垂直面41,43を側面部材1及び背面部材3の上端部の外側に位置させて側面部材1及び背面部材3に接合される。このため、天面部材4と側面部材1及び背面部材3との接合部分における防水性が確保される。
【0026】
なお、段部14及び34の幅を天面部材4の板厚に等しくすることにより、郵便ポスト10の側面及び背面を上下方向の全域にわたって面一に形成することができる。
【0027】
また、側面部材2は、側面部材1と同様に形成されている。天面部材4は、側面部材1と同様にして側面部材2と接合される。
【0028】
天面部材4の前端部には、段部45が形成されており、段部45から下方に延出した延出部46に孔部47が形成されている。図示しない前面部材は、段部45の外側面に当接して天面部材4に接合され、孔部47嵌入するピン又はネジを介して固定される。
【0029】
図4は、上記郵便ポストの要部の内部底面側を示す分解斜視図である。側面部材1の折曲部11及び背面部材3の折曲部31には、少なくとも1箇所の同一の高さ位置に、切り起こし片8が、互いに上下対称かつ表裏対称に形成されている。切り起こし片8は、互いに上下方向に係合する。切り起こし片8は、この発明の係合部であり、側面部材1と背面部材3との互いの上下方向の接合位置を規定するとともに、折曲部11と折曲部31との当接状態を維持することにより、組立作業を容易化する。
【0030】
また、折曲部11と折曲部31との間に、ゴム等を素材とした平板状のパッキン9を配置してもよい。これによって、折曲部11の外側面と折曲部31の外側面との少なくとも一方が平滑でない場合でも、パッキン9の弾性変形によって側面部材1と背面部材3との接合部における防水性を維持することができる。パッキン9を用いる場合には、クリップ7を折曲部11及び折曲部31の上下方向の全域にわたって装着する必要は必ずしも無く、部分的に配置することもできる。この場合に、クリップ7の切り起こし片8が位置している部分を除去してもよい。
【0031】
なお、側面部材1と背面部材3との上下方向の接合位置の規定、及び折曲部11と折曲部31との当接状態の維持を他の手段によって実現できる場合には、切り起こし部8を省略することもできる。側面部材2についても、側面部材1と同様である。
【0032】
上記の実施形態では、郵便ポストを例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、複数の面部材によって構成される種々のケースにこの発明を適用することができる。
【0033】
また、上記の実施形態では、側面部材1と背面部材3との内角を90度とすべく折曲部11及び折曲部31を側面部材1及び背面部材3に対して45度の角度で形成したが、側面部材1と側面部材3との内角、並びに折曲部11及び折曲部31の側面部材1及び背面部材3に対する角度はこれに限るものではなく、側面部材1と側面部材3との内角を必ずしも2等分する角度でなくてもよい。さらに、側面部材1,2と背面部材3との接合だけでなく、他の面部材を折曲部11,31及びクリップ7を用いて接合してもよい。
【0034】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施形態に係るケースの組立構造を適用した郵便ポストの要部の外観図である。
【図2】上記郵便ポストの要部の分解斜視図である。
【図3】上記郵便ポストの要部の内部上面側を示す分解斜視図である。
【図4】上記郵便ポストの要部の内部底面側を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1,2−側面部材
3−背面部材
4−天面部材
5−底面部材
7−クリップ
8−切り起こし片(係合部)
9−パッキン
11,31−折曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の面部材のそれぞれの端部同士を接合してケースを構成する組立構造であって、
前記複数の面部材のうち互いに接合される2つの面部材のそれぞれの端部に、前記2つの面部材の内角を2分する角度に折り曲げた平板状の折曲部を形成し、
前記2つの面部材のそれぞれの折曲部の内側面に圧接するクリップであって前記2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面同士が接触する状態で保持するクリップを備えたケースの組立構造。
【請求項2】
前記クリップは、前記端部に全長にわたって圧接する請求項1に記載のケースの組立構造。
【請求項3】
前記2つの面部材のそれぞれの折曲部の外側面の間に挿入されるパッキンをさらに備えた請求項1又は2に記載のケースの組立構造。
【請求項4】
前記2つの面部材のそれぞれの折曲部に、互いに係合する係合部を形成した請求項1乃至3の何れかに記載のケースの組立構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−165721(P2009−165721A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8887(P2008−8887)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000001074)クロイ電機株式会社 (49)
【Fターム(参考)】