説明

ケーブル用水密コンパウンド

【課題】水密コンパウンド同士のブロッキングを防止でき、しかも長尺化が可能で、作業性も良好なケーブル用水密コンパウンドを提供すること。
【解決手段】水密コンパウンドを押出機で紐状に押し出しながら、その紐状の水密コンパウンドをフィルムで包み込み、水密コンパウンド同士がブロッキングしないようにして、長尺に巻けるようにするとともに、前記フィルムとしてケーブルに充填される時の温度以下で溶融するフィルムを使用することで、フィルムを水密コンパウンドから剥がすことなく、同時に充填できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル内への水の浸入を防止する目的で使用されるケーブル用水密コンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ケーブルに充填される水密コンパウンドは、熱可塑性のポリマーに可塑剤を添加して、充填時に容易に流動するよう設計されており(例えば特許文献1,2)、ペール缶に充填して供給されたり、剥離紙に挟んでテープ状で供給される。
【0003】
しかしながら、ペール缶に充填された水密コンパウンドは、取出し難く作業性が悪い。また、剥離紙で挟んでテープ状にしたものも、輸送中に変形し、水密コンパウンドが剥離紙からはみ出して融着し、水密コンパウンド同士のブロッキングが生じるという問題がある。また、剥離紙で挟んだ状態では長尺にできず、さらに、ケーブルに充填する際、剥離紙を剥がす必要があり、手間が掛かって作業性が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−325626号公報
【特許文献2】特開2008−102320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、水密コンパウンド同士のブロッキングを防止でき、しかも長尺化が可能で、作業性も良好なケーブル用水密コンパウンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水密コンパウンドを押出機で紐状に押し出しながら、その紐状の水密コンパウンドをフィルムで連続的に包み込み、水密コンパウンド同士がブロッキングしないようにして、長尺に巻けるようにするとともに、前記フィルムとしてケーブルに充填される時の温度以下で溶融するフィルムを使用することで、フィルムを水密コンパウンドから剥がすことなく、充填できるようにしたものである。
【0007】
すなわち、本発明のケーブル用水密コンパウンドは、押出機で紐状に押し出した水密コンパウンドを、融点が150℃以下、かつ厚さが50μm以下のフィルムで包み込んだものである。
【発明の効果】
【0008】
紐状の水密コンパウンドを薄いフィルムで包み込んだことで、輸送中に水密コンパウンドがはみ出し融着して水密コンパウンド同士のブロッキングが生じるようなことがなく、容易に水密コンパウンドを取り出すことができるとともに、連続して巻き取ることができるので長尺化が可能である。また、剥離紙を使用した場合のようにフィルムを水密コンパウンドから剥がす必要がないことから、水密コンパウンドをケーブルへ充填する際の作業性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のケーブル用水密コンパウンドは、水密コンパウンドを押出機で紐状に押し出しながら、その紐状の水密コンパウンドを、融点が150℃以下で、厚さが50μm以下のフィルムで連続的に包み込むことで得られる。フィルムによる水密コンパウンドの包み込みは、紐状の水密コンパウンドにフィルムを連続的に巻きつける、あるいは紐状の水密コンパウンドをフィルムで長さ方向に連続的に包むことによって行うことができる。
【0010】
フィルムの融点を150℃以下としたのは、水密コンパウンドがケーブルに充填される時の温度が150℃程度であることから、融点が150℃以下であれば、ケーブルに充填される時に、使用したフィルムが溶融して水密コンパウンド中に均一に分散されるからである。また、フィルムの厚さを50μm以下としたのは、50μmより厚くなると、フィルムで包み込まれた水密コンパウンドが全体として硬くなり、巻き取り難くなるからである。
【0011】
使用されるフィルムの材質としては、ポリエチレン、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリ1,2ブタジエン等が挙げられる。
【実施例】
【0012】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【0013】
[実施例1]
ブチルゴムと可塑剤及び充填剤等からなる、針入度35の水密コンパウンドを、押出機で16mmφの円形の紐状に押し出しながら、その紐状の水密コンパウンドに厚さ25μm、幅60mmのポリエチレンフィルム(融点120℃)を連続的に巻きつけ、巻き芯が100mmφ、幅が300mm、つばの外径が500mmのボビンに、200m巻き取った。これを、トラック便にて、佐賀と東京を1往復させて、水密コンパウンドの変形や、巻き解きが可能かを調査した。
【0014】
[実施例2]
実施例1と同様に押出機で水密コンパウンドを紐状に押し出しながら、その紐状の水密コンパウンドを厚さ25μm、幅60mmのエチレン・アクリル酸エチル共重合フィルム(融点105℃)で長さ方向に連続的に包み、タテ・ヨコ・高さ共1mのパレット付ケースに連続して500mをらせん状に巻き取った。これを、トラック便にて、佐賀と東京を1往復させて、水密コンパウンドの変形や、巻き解きが可能かを調査した。
【0015】
[比較例1]
実施例と同じ水密コンパウンドを、押出機で厚さ5mm、幅40mmのテープ状に押し出しながら、厚さ100μm、幅60mmの剥離紙の上に載せてレコード状に巻き取った(長さ25m)。これの2巻を重ねてダンボールケースに梱包し、実施例1と同様の運送テストを行い、変形や巻き解き性を調査した。
【0016】
調査結果を表1に記す。
【表1】

【0017】
表1に示すとおり、本発明の実施例では、コンパウンド同士のブロッキングは生じず、長尺化が可能であった。これに対し比較例1では、コンパウンド同士のブロッキングが生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機で紐状に押し出した水密コンパウンドを、融点が150℃以下、かつ厚さが50μm以下のフィルムで包み込んでなるケーブル用水密コンパウンド。

【公開番号】特開2012−9173(P2012−9173A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141758(P2010−141758)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000239079)福岡クロス工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】