ゲージ付き角膜保護キャップ
【課題】眼内注射の際に、消毒剤の細胞毒性や外部からの物理的な接触から角膜を十分に保護することができるとともに、注射針の刺入部位を容易に決定することができるゲージ付き角膜保護キャップを提供する。
【解決手段】本ゲージ付き角膜保護キャップ1は、眼内注射の際に用いられるものであって、底部下方が開放されており、眼球表面上において角膜5の表面を覆うことが可能な容器状の角膜保護部2と、角膜保護部2から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部5aからの距離を測定することが可能なゲージ部3と、を備えており、角膜保護部2は弾性変形可能であり、眼球表面上に配置された際に、角膜保護部2の内面と角膜5の表面との間の空間4を負圧状態とすることにより、角膜保護部2の内面と角膜5の表面との間に生じる吸引力によって眼球表面上に固定可能である。
【解決手段】本ゲージ付き角膜保護キャップ1は、眼内注射の際に用いられるものであって、底部下方が開放されており、眼球表面上において角膜5の表面を覆うことが可能な容器状の角膜保護部2と、角膜保護部2から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部5aからの距離を測定することが可能なゲージ部3と、を備えており、角膜保護部2は弾性変形可能であり、眼球表面上に配置された際に、角膜保護部2の内面と角膜5の表面との間の空間4を負圧状態とすることにより、角膜保護部2の内面と角膜5の表面との間に生じる吸引力によって眼球表面上に固定可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲージ付き角膜保護キャップに関する。更に詳しくは、眼内注射の際に、消毒剤の細胞毒性や外部からの物理的な接触から角膜を十分に保護することができるとともに、注射針の刺入部位を容易に決定することができるゲージ付き角膜保護キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、眼科治療において、眼内注射による治療が行われている。例えば、加齢黄斑変性等の治療に対して、抗血管内皮増殖因子(VEGF)製剤を用いた眼内注射による治療を挙げることができる。
眼内注射という操作は比較的に難しく、特に、注射針の刺入部位に注意を払う必要がある。具体的には、注射針を眼球に刺入する際に、網膜や水晶体を損傷させてしまう危険性があるため、角膜輪部から外方へ3.0〜4.0mm(特に3.5〜4.0mm)の位置を計測し、その範囲内に確実に眼内注射を行うことが必要である。
そのため、眼内注射用具として、注射針挿入穴を有する注射針固定板、及び平滑でない眼球接触面を持つリングを備え、注射針挿入穴の位置を眼球上で固定するための眼球固定器からなる硝子体内注射用固定具が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2007−52730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼内注射の際には、眼球表面等に存在する細菌等に起因する施術後の眼内炎を防ぐため、施術前にヨード剤等の消毒剤を用いて眼球表面の消毒が行われている。この際、角膜表面に消毒剤であるヨード剤が長時間に渡って接触すると、角膜上皮に少なからず負担を与えることになり、点状表層角膜症、角膜びらん等の上皮障害等を引き起こす原因となることがある。
従って、眼内注射の際には、注射針の刺入部位を容易に決定することができるとともに、視力を司る重要な部位である角膜に掛かる消毒時の負担を軽減することも必要である。更には、外部からの施術用具等による物理的な接触からも角膜を保護できることが安全面において重要といえる。
しかしながら、従来の眼内注射用具では、用具を装着した状態で消毒を行った際には、消毒剤から角膜を保護することができない。更には、施術用具等の外部からの物理的な接触に対する角膜の保護も十分であるとは言えない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、眼内注射の際に、消毒剤の細胞毒性や外部からの物理的な接触から角膜を十分に保護することができるとともに、注射針の刺入部位を容易に決定することができるゲージ付き角膜保護キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す通りである。
[1]眼内注射の際に用いられるゲージ付き角膜保護キャップであって、
底部下方が開放されており、眼球表面上において角膜表面を覆うことが可能な容器状の角膜保護部と、
前記角膜保護部から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部からの距離を測定することが可能なゲージ部と、を備えており、
前記角膜保護部は弾性変形可能であり、眼球表面上に配置された際に、前記角膜保護部内面と角膜表面との間の空間を負圧状態とすることにより、前記角膜保護部内面と角膜表面との間に生じる吸引力によって眼球表面上に固定可能であることを特徴とするゲージ付き角膜保護キャップ。
[2]前記ゲージ部は、注射針の刺入部位を示すガイド部と、前記ガイド部が一端側に形成されており且つ他端側が前記角膜保護部に固定された支持部と、を備えており、且つ弾性変形可能である前記[1]に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
[3]前記ゲージ部を構成する材質は、ゴム又は熱可塑性エラストマーである前記[1]又は[2]に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
[4]本ゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に固定した際に、前記ゲージ部は眼球表面に接触しない前記[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゲージ付き角膜保護キャップによれば、眼内注射の際に、消毒剤の細胞毒性や外部からの物理的な接触から角膜を十分に保護することができるとともに、注射針の刺入部位を容易に決定することができる。
また、ゲージ部がガイド部と支持部とを備えており、且つ弾性変形可能である場合には、ゲージ部におけるガイド部を眼球表面に押しつけて移動させることにより、眼球の表層(眼球結膜)を強膜上における当初の位置からずらした状態で眼内注射を行うことができる。そのため、ずらされた結膜の位置が当初位置に戻った際には、結膜に形成された針孔の位置と、強膜に形成された針孔の位置が離れるために、眼内に細菌等が針孔から入り込むことを十分に抑制することができる。
更に、本ゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に固定した際に、ゲージ部が眼球表面に接触しない場合、眼球表面に消毒剤を均一に作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ゲージ付き角膜保護キャップを模式的に説明するための正面図である。
【図2】ゲージ付き角膜保護キャップを模式的に説明するための平面図である。
【図3】図2におけるA部分の拡大図である。
【図4】ゲージ付き角膜保護キャップの装着方法を説明するための模式図である。
【図5】ゲージ付き角膜保護キャップの装着方法を説明するための模式図である。
【図6】ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法を説明するための模式図である。
【図7】ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法を説明するための模式図である。
【図8】図7におけるI−I線の模式的な断面図である。
【図9】ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法を説明するための模式図である。
【図10】図9におけるII−II線の模式的な断面図である。
【図11】ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法を説明するための模式図である。
【図12】図11におけるIII−III線の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のゲージ付き角膜保護キャップは、眼内注射の際に用いられるものであって、底部下方が開放されており、眼球表面上において角膜表面を覆うことが可能な容器状の角膜保護部と、角膜保護部から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部からの距離を測定することが可能なゲージ部と、を備えており、角膜保護部は弾性変形可能であり、眼球表面上に配置された際に、角膜保護部内面と角膜表面との間の空間を負圧状態とすることにより、角膜保護部内面と角膜表面との間に生じる吸引力によって眼球表面上に固定可能であることを特徴とする。
具体的には、図1〜図5に示すように、本発明のゲージ付き角膜保護キャップ(1)は、角膜保護部(2)とゲージ部(3)とを備えており、通常、眼球表面における眼球結膜(6)上において、角膜(5)と眼球結膜(6)との境界である角膜輪部(5a)に沿うように配置され、角膜保護部(2)の内面と角膜表面との間の空間(4)を負圧状態とすることにより、角膜保護部(2)の内面と角膜表面との間に生じる吸引力によって眼球表面の眼球結膜(6)上に固定される。
【0010】
上記「角膜保護部」の形状は、底部下方が開放されており、眼球表面上に配置した場合に、角膜表面を覆うことが可能な容器状であればよく、例えば、碗形状、半球形状、皿形状、天面部を有する筒形状、円錐形状等が挙げられる。
角膜保護部の底部下面の内径は、角膜の直径に対して適宜調整することができ、通常は、10〜15mmである。
角膜保護部を構成する材質としては、ヨード剤等の一般的な消毒剤に対して耐食性を有するものが用いられ、例えば、シリコーンゴム等のゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0011】
上記「ゲージ部」の構成は、上記角膜保護部から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部からの距離を測定することが可能である限り特に限定されない。特に、角膜輪部から3.0〜4.0mm(より好ましくは無水晶体眼の場合には3.5mm、有水晶体眼の場合には4.0mm)の距離を測定できるものが好ましい。
ゲージ部は、角膜保護部と一体成形されていてもよいし、角膜保護部の表面に後から形成されたものであってもよい。
ゲージ部を構成する材質としては、ヨード剤等の一般的な消毒剤に対して耐食性を有するものが用いられ、例えば、シリコーンゴム等のゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
また、このゲージ部は、本発明のゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に固定した際に、眼球表面に接触しないことが好ましい。この場合、眼球表面に消毒剤を均一に作用させることができるため好ましい。
【0012】
上記ゲージ部の具体的な構成としては、眼内注射の際に、注射針の刺入部位を示すガイド部と、このガイド部が一端側に形成されており且つ他端側が上記角膜保護部に固定された支持部と、を備えており、且つ弾性変形可能であるものを挙げることができる。
このような構成である場合、ゲージ部におけるガイド部を眼球表面に押しつけて移動させることにより、眼球の表層(結膜)を強膜上における当初の位置からずらした状態で眼内注射を行うことができる。そのため、ずらされた結膜の位置が当初位置に戻った際には、結膜に形成された針孔の位置と、強膜に形成された針孔の位置がずれるために、細菌等が針孔から眼内に入り込むことを十分に抑制することができる(具体的には、後述の実施例を参照)。
【0013】
また、上記ゲージ部(特にガイド部)には、角膜輪部からの距離を示す目盛りや、特定範囲(角膜輪部から3.0〜4.0mmの範囲、特に角膜輪部から3.5〜4.0mmの範囲)を示す記号などが形成されていることが好ましい。
更に、上記ゲージ部(特にガイド部)には、注射針の刺入が容易となるように、切り欠き部や、挿入孔等が形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明のゲージ付き角膜保護キャップにおいては、上記角膜保護部の表面に負圧形成手段を形成することができる。この負圧形成手段によれば、ゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に配置した際に、角膜保護部内面と角膜表面との間の空間を容易に負圧状態とし、角膜保護部内面と角膜表面との間に吸引力を生じさせ、角膜に悪影響を及ぼすことなく眼球表面に固定することができる。
この負圧形成手段の構成は、上述の負圧状態を得ることができる限り特に限定されない。例えば、(1)指やピンセット等によって押圧することにより角膜保護部の体積を変化させることができる中空の弾性変形可能な突起部(図1における突起部22を参照)、(2)押圧することにより角膜保護部を容易に弾性変形させることができる押圧部、(3)容易に弾性変形が可能なように角膜保護部の一部が薄肉状に形成された薄肉部等が挙げられる。尚、これらの手段は組み合わせて用いることもできる。特に、上記中空の弾性変形可能な突起部を備える場合には、その突起部を押圧した状態で眼球表面に配置し、押圧を解くことにより眼球表面上に容易に固定することができる。
上記負圧形成手段の形成箇所は特に限定されず、角膜保護部の表面の1箇所のみに形成されていてもよいし、複数箇所に形成されていてもよい。更に、この負圧形成手段は、上記角膜保護部と一体成形されていてもよいし、角膜保護部の表面に後から形成されたものであってもよい。
【0015】
また、上記角膜保護部の表面には、負圧解除手段を形成することができる。この負圧解除手段によれば、眼球表面上に負圧状態で固定されたゲージ付き角膜保護キャップを、角膜に負担をかけることなく容易に取り外すことができる。
この負圧解除手段の構成は、上述の負圧状態を解除することができる限り特に限定されない。例えば、(1)押圧することにより、負圧状態の角膜保護部内に空気を供給可能な弁機能、(2)押圧することにより角膜保護部を容易に弾性変形させることができる押圧部、(3)容易に弾性変形が可能なように角膜保護部の一部が薄肉状に形成された薄肉部等が挙げられる。尚、これらの手段は組み合わせて用いることもできる。
上記負圧解除手段の形成箇所は特に限定されず、角膜保護部の表面の1箇所のみに形成されていてもよいし、複数箇所に形成されていてもよい。更に、この負圧解除手段は、上記角膜保護部と一体成形されていてもよいし、角膜保護部の表面に後から形成されたものであってもよい。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明のゲージ付き角膜保護キャップを具体的に説明する。尚、本発明のゲージ付き角膜保護キャップは、以下の実施例及び参照する図に制限されるものではない。
【0017】
実施例1(図1〜図5参照)
[1]ゲージ付き角膜保護キャップの構成
実施例1のゲージ付き角膜保護キャップ1は、図1及び図2に示すように、底部下方が開放された容器状(碗形状)の角膜保護部2と、角膜保護部2の外方に延設されたゲージ部3と、を備える。
角膜保護部2は、ゴム又は熱可塑性エラストマー(特にシリコーンゴム)により形成されている。また、角膜保護部2は、眼球表面に保持される底部21を有しており、且つ上部中央には弾性変形可能な突起部(負圧形成手段)22が形成されている。
底部21は眼球表面と接触する下面21aを有しており、底部の下面21aの内径は、10〜15mmである。尚、この内径は、人それぞれの角膜径に合った適切な大きさのものが選択される。
負圧形成手段である突起部22は、角膜保護部2の眼球表面に対する着脱を容易にするためのものであり、角膜保護部2と一体成形されている。この突起部22を、指やピンセット等で挟持して角膜保護部内の内部体積を減少させることにより、空間4(図4及び図5参照)において空気の排出又は供給が行われ、ゲージ付き角膜保護キャップ1が眼球表面に対して着脱可能となる。
【0018】
ゲージ部3は、角膜保護部2の底部21の表面から外方に向けて延設されており、注射針の刺入部位を示すガイド部31と、ガイド部31が一端側に形成されており且つ他端側が角膜保護部2に固定された支持部32と、を備える。
ゲージ部3は、角膜保護部2と一体成形されており、その材質は角膜保護部2と同様にゴム又は熱可塑性エラストマー(特にシリコーンゴム)である。
ガイド部31は、切り欠き部31aを備えており、且つ角膜輪部から3.0〜4.0mmの範囲を示す目盛り31bを備えている(図3参照)。
尚、このゲージ部3は、ゲージ付き角膜保護キャップ1を眼球表面上に固定した際に、眼球表面に接触しないように設計されている(図5参照)。
【0019】
[2]ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法
眼内注射の際における、ゲージ付き角膜保護キャップ1の使用方法について詳細に説明する。
(2−1)ゲージ付き角膜保護キャップ1の装着
まず、図4に示すように、突起部22を押圧しながら、角膜輪部5aに沿ってゲージ付き角膜保護キャップ10の下面21aが眼球結膜6に接触するように配置する。
次いで、突起部22の押圧を解く。そうすると、図5に示すように、弾性体である突起部22は復元力により、元の形状に戻ろうとして、空間4内には負圧が生じ、下面21aが角膜輪部5aに沿って吸着された状態となる。
【0020】
(2−2)眼内注射
図5に示すように、ゲージ付き角膜保護キャップ1を装着したのち、消毒箇所にヨード剤を流し込む。消毒後、ゲージ部3におけるガイド部31を矢印方向(図5参照)に押しつけ、眼球結膜6に接触させる(図6参照)。
その後、図7及び図8に示すように、眼球の表層である眼球結膜6にゲージ部3を押しつけながら矢印方向に数mm移動させる。これにより、強膜7上において、移動性のある眼球結膜6のみが当初の位置から数mm移動し、しわ61(眼球結膜)が生じる[図9及び図10(a)参照]。
次いで、ゲージ部3を押圧した状態で、図10(a)及び(b)に示すように、ゲージ部3のガイド部31における、角膜輪部から3.0〜4.0mmの範囲を示す目盛り31bと、切り欠き部31aをガイドとして、注射針8を刺入し、角膜輪部から3.0〜4.0mmの範囲に眼内注射を行う(一般的には、無水晶体眼の場合には3.5mm、有水晶体眼の場合には4.0mmの位置が推奨されている。)。その後、図10(c)に示すように、注射針8を抜く。
注射針8を抜いた後、ゲージ部3の押圧を解くことにより、図11及び図12に示すように、ゲージ部3によって位置がずらされていた眼球結膜6、61が当初の位置に戻る。即ち、眼内注射により生じた眼球結膜6における針孔6aの位置と、強膜7における針孔7aの位置が、注射直後の上下に並んだ状態[図10(c)参照]から離れることになる(図12参照)。
【0021】
(2−3)ゲージ付き角膜保護キャップ1の取り外し
眼内注射後、ゲージ付き角膜保護キャップ1を取り外す際には、突起部22を押圧することで眼球表面との間に隙間が生じ、空間4内(図5参照)に外部から空気が入り、負圧が低下するため、指やピンセット等で挟持して、取り外すことができる。
【0022】
[3]実施例の作用効果
本実施例のゲージ付き角膜保護キャップ1によれば、眼内注射の前に、消毒箇所にヨード剤を流し込む際、角膜5上にヨード剤がかかるのを防ぎつつ、細菌が多く潜んでいる箇所である、眼瞼の裏を覆う眼瞼結膜、強膜7を覆う眼球結膜6、及び両者を繋ぐ円蓋部結膜の表面上を消毒することが可能となる。特に結膜円蓋部には、細菌が多く潜んでいるため、念入りに消毒することが必要である。このように念入りに消毒する場合であっても、ゲージ付き角膜保護キャップ1がしっかりと吸着固定されているために、ずれたり、外れたりすることなく、角膜5は消毒中、ヨード剤から保護されることになる。
また、ゲージ付き角膜保護キャップ1を眼球表面上に固定した際には、図5に示すように、ゲージ部3が眼球表面に接触しないために、眼球表面に消毒剤を均一に作用させることができる。
【0023】
更に、本実施例のゲージ付き角膜保護キャップ1によれば、ゲージ部3をガイドとして、注射針8の刺入部位を容易に決定することができ、角膜輪部5aから3.0〜4.0mmの範囲に、容易且つ安全に、眼内注射を行うことができる。
また、眼内注射の際に、ゲージ部3におけるガイド部31を眼球表面に押しつけて移動させることにより、眼球の表層(結膜6)を強膜7上における当初の位置からずらした状態(図10参照)で眼内注射を行うことができる。そのため、ずらされた結膜6、61の位置が当初位置に戻った際には、結膜6に形成された針孔6aの位置と、強膜7に形成された針孔7aの位置がずれるために(図11及び図12参照)、細菌等が針孔から眼内に入り込むことを十分に抑制することができる。
【符号の説明】
【0024】
1;ゲージ付き角膜保護キャップ、2;角膜保護部、21;底部、21a;下面、22;突起部、3;ゲージ部、31;ガイド部、31a;切り欠き部、31b;目盛り、32;支持部、4;空間、5;角膜、5a;角膜輪部、6;眼球結膜、61;しわ、6a;針孔、7;強膜、7a;針孔、8;注射針。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲージ付き角膜保護キャップに関する。更に詳しくは、眼内注射の際に、消毒剤の細胞毒性や外部からの物理的な接触から角膜を十分に保護することができるとともに、注射針の刺入部位を容易に決定することができるゲージ付き角膜保護キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、眼科治療において、眼内注射による治療が行われている。例えば、加齢黄斑変性等の治療に対して、抗血管内皮増殖因子(VEGF)製剤を用いた眼内注射による治療を挙げることができる。
眼内注射という操作は比較的に難しく、特に、注射針の刺入部位に注意を払う必要がある。具体的には、注射針を眼球に刺入する際に、網膜や水晶体を損傷させてしまう危険性があるため、角膜輪部から外方へ3.0〜4.0mm(特に3.5〜4.0mm)の位置を計測し、その範囲内に確実に眼内注射を行うことが必要である。
そのため、眼内注射用具として、注射針挿入穴を有する注射針固定板、及び平滑でない眼球接触面を持つリングを備え、注射針挿入穴の位置を眼球上で固定するための眼球固定器からなる硝子体内注射用固定具が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2007−52730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼内注射の際には、眼球表面等に存在する細菌等に起因する施術後の眼内炎を防ぐため、施術前にヨード剤等の消毒剤を用いて眼球表面の消毒が行われている。この際、角膜表面に消毒剤であるヨード剤が長時間に渡って接触すると、角膜上皮に少なからず負担を与えることになり、点状表層角膜症、角膜びらん等の上皮障害等を引き起こす原因となることがある。
従って、眼内注射の際には、注射針の刺入部位を容易に決定することができるとともに、視力を司る重要な部位である角膜に掛かる消毒時の負担を軽減することも必要である。更には、外部からの施術用具等による物理的な接触からも角膜を保護できることが安全面において重要といえる。
しかしながら、従来の眼内注射用具では、用具を装着した状態で消毒を行った際には、消毒剤から角膜を保護することができない。更には、施術用具等の外部からの物理的な接触に対する角膜の保護も十分であるとは言えない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、眼内注射の際に、消毒剤の細胞毒性や外部からの物理的な接触から角膜を十分に保護することができるとともに、注射針の刺入部位を容易に決定することができるゲージ付き角膜保護キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す通りである。
[1]眼内注射の際に用いられるゲージ付き角膜保護キャップであって、
底部下方が開放されており、眼球表面上において角膜表面を覆うことが可能な容器状の角膜保護部と、
前記角膜保護部から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部からの距離を測定することが可能なゲージ部と、を備えており、
前記角膜保護部は弾性変形可能であり、眼球表面上に配置された際に、前記角膜保護部内面と角膜表面との間の空間を負圧状態とすることにより、前記角膜保護部内面と角膜表面との間に生じる吸引力によって眼球表面上に固定可能であることを特徴とするゲージ付き角膜保護キャップ。
[2]前記ゲージ部は、注射針の刺入部位を示すガイド部と、前記ガイド部が一端側に形成されており且つ他端側が前記角膜保護部に固定された支持部と、を備えており、且つ弾性変形可能である前記[1]に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
[3]前記ゲージ部を構成する材質は、ゴム又は熱可塑性エラストマーである前記[1]又は[2]に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
[4]本ゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に固定した際に、前記ゲージ部は眼球表面に接触しない前記[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゲージ付き角膜保護キャップによれば、眼内注射の際に、消毒剤の細胞毒性や外部からの物理的な接触から角膜を十分に保護することができるとともに、注射針の刺入部位を容易に決定することができる。
また、ゲージ部がガイド部と支持部とを備えており、且つ弾性変形可能である場合には、ゲージ部におけるガイド部を眼球表面に押しつけて移動させることにより、眼球の表層(眼球結膜)を強膜上における当初の位置からずらした状態で眼内注射を行うことができる。そのため、ずらされた結膜の位置が当初位置に戻った際には、結膜に形成された針孔の位置と、強膜に形成された針孔の位置が離れるために、眼内に細菌等が針孔から入り込むことを十分に抑制することができる。
更に、本ゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に固定した際に、ゲージ部が眼球表面に接触しない場合、眼球表面に消毒剤を均一に作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ゲージ付き角膜保護キャップを模式的に説明するための正面図である。
【図2】ゲージ付き角膜保護キャップを模式的に説明するための平面図である。
【図3】図2におけるA部分の拡大図である。
【図4】ゲージ付き角膜保護キャップの装着方法を説明するための模式図である。
【図5】ゲージ付き角膜保護キャップの装着方法を説明するための模式図である。
【図6】ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法を説明するための模式図である。
【図7】ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法を説明するための模式図である。
【図8】図7におけるI−I線の模式的な断面図である。
【図9】ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法を説明するための模式図である。
【図10】図9におけるII−II線の模式的な断面図である。
【図11】ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法を説明するための模式図である。
【図12】図11におけるIII−III線の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のゲージ付き角膜保護キャップは、眼内注射の際に用いられるものであって、底部下方が開放されており、眼球表面上において角膜表面を覆うことが可能な容器状の角膜保護部と、角膜保護部から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部からの距離を測定することが可能なゲージ部と、を備えており、角膜保護部は弾性変形可能であり、眼球表面上に配置された際に、角膜保護部内面と角膜表面との間の空間を負圧状態とすることにより、角膜保護部内面と角膜表面との間に生じる吸引力によって眼球表面上に固定可能であることを特徴とする。
具体的には、図1〜図5に示すように、本発明のゲージ付き角膜保護キャップ(1)は、角膜保護部(2)とゲージ部(3)とを備えており、通常、眼球表面における眼球結膜(6)上において、角膜(5)と眼球結膜(6)との境界である角膜輪部(5a)に沿うように配置され、角膜保護部(2)の内面と角膜表面との間の空間(4)を負圧状態とすることにより、角膜保護部(2)の内面と角膜表面との間に生じる吸引力によって眼球表面の眼球結膜(6)上に固定される。
【0010】
上記「角膜保護部」の形状は、底部下方が開放されており、眼球表面上に配置した場合に、角膜表面を覆うことが可能な容器状であればよく、例えば、碗形状、半球形状、皿形状、天面部を有する筒形状、円錐形状等が挙げられる。
角膜保護部の底部下面の内径は、角膜の直径に対して適宜調整することができ、通常は、10〜15mmである。
角膜保護部を構成する材質としては、ヨード剤等の一般的な消毒剤に対して耐食性を有するものが用いられ、例えば、シリコーンゴム等のゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0011】
上記「ゲージ部」の構成は、上記角膜保護部から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部からの距離を測定することが可能である限り特に限定されない。特に、角膜輪部から3.0〜4.0mm(より好ましくは無水晶体眼の場合には3.5mm、有水晶体眼の場合には4.0mm)の距離を測定できるものが好ましい。
ゲージ部は、角膜保護部と一体成形されていてもよいし、角膜保護部の表面に後から形成されたものであってもよい。
ゲージ部を構成する材質としては、ヨード剤等の一般的な消毒剤に対して耐食性を有するものが用いられ、例えば、シリコーンゴム等のゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
また、このゲージ部は、本発明のゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に固定した際に、眼球表面に接触しないことが好ましい。この場合、眼球表面に消毒剤を均一に作用させることができるため好ましい。
【0012】
上記ゲージ部の具体的な構成としては、眼内注射の際に、注射針の刺入部位を示すガイド部と、このガイド部が一端側に形成されており且つ他端側が上記角膜保護部に固定された支持部と、を備えており、且つ弾性変形可能であるものを挙げることができる。
このような構成である場合、ゲージ部におけるガイド部を眼球表面に押しつけて移動させることにより、眼球の表層(結膜)を強膜上における当初の位置からずらした状態で眼内注射を行うことができる。そのため、ずらされた結膜の位置が当初位置に戻った際には、結膜に形成された針孔の位置と、強膜に形成された針孔の位置がずれるために、細菌等が針孔から眼内に入り込むことを十分に抑制することができる(具体的には、後述の実施例を参照)。
【0013】
また、上記ゲージ部(特にガイド部)には、角膜輪部からの距離を示す目盛りや、特定範囲(角膜輪部から3.0〜4.0mmの範囲、特に角膜輪部から3.5〜4.0mmの範囲)を示す記号などが形成されていることが好ましい。
更に、上記ゲージ部(特にガイド部)には、注射針の刺入が容易となるように、切り欠き部や、挿入孔等が形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明のゲージ付き角膜保護キャップにおいては、上記角膜保護部の表面に負圧形成手段を形成することができる。この負圧形成手段によれば、ゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に配置した際に、角膜保護部内面と角膜表面との間の空間を容易に負圧状態とし、角膜保護部内面と角膜表面との間に吸引力を生じさせ、角膜に悪影響を及ぼすことなく眼球表面に固定することができる。
この負圧形成手段の構成は、上述の負圧状態を得ることができる限り特に限定されない。例えば、(1)指やピンセット等によって押圧することにより角膜保護部の体積を変化させることができる中空の弾性変形可能な突起部(図1における突起部22を参照)、(2)押圧することにより角膜保護部を容易に弾性変形させることができる押圧部、(3)容易に弾性変形が可能なように角膜保護部の一部が薄肉状に形成された薄肉部等が挙げられる。尚、これらの手段は組み合わせて用いることもできる。特に、上記中空の弾性変形可能な突起部を備える場合には、その突起部を押圧した状態で眼球表面に配置し、押圧を解くことにより眼球表面上に容易に固定することができる。
上記負圧形成手段の形成箇所は特に限定されず、角膜保護部の表面の1箇所のみに形成されていてもよいし、複数箇所に形成されていてもよい。更に、この負圧形成手段は、上記角膜保護部と一体成形されていてもよいし、角膜保護部の表面に後から形成されたものであってもよい。
【0015】
また、上記角膜保護部の表面には、負圧解除手段を形成することができる。この負圧解除手段によれば、眼球表面上に負圧状態で固定されたゲージ付き角膜保護キャップを、角膜に負担をかけることなく容易に取り外すことができる。
この負圧解除手段の構成は、上述の負圧状態を解除することができる限り特に限定されない。例えば、(1)押圧することにより、負圧状態の角膜保護部内に空気を供給可能な弁機能、(2)押圧することにより角膜保護部を容易に弾性変形させることができる押圧部、(3)容易に弾性変形が可能なように角膜保護部の一部が薄肉状に形成された薄肉部等が挙げられる。尚、これらの手段は組み合わせて用いることもできる。
上記負圧解除手段の形成箇所は特に限定されず、角膜保護部の表面の1箇所のみに形成されていてもよいし、複数箇所に形成されていてもよい。更に、この負圧解除手段は、上記角膜保護部と一体成形されていてもよいし、角膜保護部の表面に後から形成されたものであってもよい。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明のゲージ付き角膜保護キャップを具体的に説明する。尚、本発明のゲージ付き角膜保護キャップは、以下の実施例及び参照する図に制限されるものではない。
【0017】
実施例1(図1〜図5参照)
[1]ゲージ付き角膜保護キャップの構成
実施例1のゲージ付き角膜保護キャップ1は、図1及び図2に示すように、底部下方が開放された容器状(碗形状)の角膜保護部2と、角膜保護部2の外方に延設されたゲージ部3と、を備える。
角膜保護部2は、ゴム又は熱可塑性エラストマー(特にシリコーンゴム)により形成されている。また、角膜保護部2は、眼球表面に保持される底部21を有しており、且つ上部中央には弾性変形可能な突起部(負圧形成手段)22が形成されている。
底部21は眼球表面と接触する下面21aを有しており、底部の下面21aの内径は、10〜15mmである。尚、この内径は、人それぞれの角膜径に合った適切な大きさのものが選択される。
負圧形成手段である突起部22は、角膜保護部2の眼球表面に対する着脱を容易にするためのものであり、角膜保護部2と一体成形されている。この突起部22を、指やピンセット等で挟持して角膜保護部内の内部体積を減少させることにより、空間4(図4及び図5参照)において空気の排出又は供給が行われ、ゲージ付き角膜保護キャップ1が眼球表面に対して着脱可能となる。
【0018】
ゲージ部3は、角膜保護部2の底部21の表面から外方に向けて延設されており、注射針の刺入部位を示すガイド部31と、ガイド部31が一端側に形成されており且つ他端側が角膜保護部2に固定された支持部32と、を備える。
ゲージ部3は、角膜保護部2と一体成形されており、その材質は角膜保護部2と同様にゴム又は熱可塑性エラストマー(特にシリコーンゴム)である。
ガイド部31は、切り欠き部31aを備えており、且つ角膜輪部から3.0〜4.0mmの範囲を示す目盛り31bを備えている(図3参照)。
尚、このゲージ部3は、ゲージ付き角膜保護キャップ1を眼球表面上に固定した際に、眼球表面に接触しないように設計されている(図5参照)。
【0019】
[2]ゲージ付き角膜保護キャップの使用方法
眼内注射の際における、ゲージ付き角膜保護キャップ1の使用方法について詳細に説明する。
(2−1)ゲージ付き角膜保護キャップ1の装着
まず、図4に示すように、突起部22を押圧しながら、角膜輪部5aに沿ってゲージ付き角膜保護キャップ10の下面21aが眼球結膜6に接触するように配置する。
次いで、突起部22の押圧を解く。そうすると、図5に示すように、弾性体である突起部22は復元力により、元の形状に戻ろうとして、空間4内には負圧が生じ、下面21aが角膜輪部5aに沿って吸着された状態となる。
【0020】
(2−2)眼内注射
図5に示すように、ゲージ付き角膜保護キャップ1を装着したのち、消毒箇所にヨード剤を流し込む。消毒後、ゲージ部3におけるガイド部31を矢印方向(図5参照)に押しつけ、眼球結膜6に接触させる(図6参照)。
その後、図7及び図8に示すように、眼球の表層である眼球結膜6にゲージ部3を押しつけながら矢印方向に数mm移動させる。これにより、強膜7上において、移動性のある眼球結膜6のみが当初の位置から数mm移動し、しわ61(眼球結膜)が生じる[図9及び図10(a)参照]。
次いで、ゲージ部3を押圧した状態で、図10(a)及び(b)に示すように、ゲージ部3のガイド部31における、角膜輪部から3.0〜4.0mmの範囲を示す目盛り31bと、切り欠き部31aをガイドとして、注射針8を刺入し、角膜輪部から3.0〜4.0mmの範囲に眼内注射を行う(一般的には、無水晶体眼の場合には3.5mm、有水晶体眼の場合には4.0mmの位置が推奨されている。)。その後、図10(c)に示すように、注射針8を抜く。
注射針8を抜いた後、ゲージ部3の押圧を解くことにより、図11及び図12に示すように、ゲージ部3によって位置がずらされていた眼球結膜6、61が当初の位置に戻る。即ち、眼内注射により生じた眼球結膜6における針孔6aの位置と、強膜7における針孔7aの位置が、注射直後の上下に並んだ状態[図10(c)参照]から離れることになる(図12参照)。
【0021】
(2−3)ゲージ付き角膜保護キャップ1の取り外し
眼内注射後、ゲージ付き角膜保護キャップ1を取り外す際には、突起部22を押圧することで眼球表面との間に隙間が生じ、空間4内(図5参照)に外部から空気が入り、負圧が低下するため、指やピンセット等で挟持して、取り外すことができる。
【0022】
[3]実施例の作用効果
本実施例のゲージ付き角膜保護キャップ1によれば、眼内注射の前に、消毒箇所にヨード剤を流し込む際、角膜5上にヨード剤がかかるのを防ぎつつ、細菌が多く潜んでいる箇所である、眼瞼の裏を覆う眼瞼結膜、強膜7を覆う眼球結膜6、及び両者を繋ぐ円蓋部結膜の表面上を消毒することが可能となる。特に結膜円蓋部には、細菌が多く潜んでいるため、念入りに消毒することが必要である。このように念入りに消毒する場合であっても、ゲージ付き角膜保護キャップ1がしっかりと吸着固定されているために、ずれたり、外れたりすることなく、角膜5は消毒中、ヨード剤から保護されることになる。
また、ゲージ付き角膜保護キャップ1を眼球表面上に固定した際には、図5に示すように、ゲージ部3が眼球表面に接触しないために、眼球表面に消毒剤を均一に作用させることができる。
【0023】
更に、本実施例のゲージ付き角膜保護キャップ1によれば、ゲージ部3をガイドとして、注射針8の刺入部位を容易に決定することができ、角膜輪部5aから3.0〜4.0mmの範囲に、容易且つ安全に、眼内注射を行うことができる。
また、眼内注射の際に、ゲージ部3におけるガイド部31を眼球表面に押しつけて移動させることにより、眼球の表層(結膜6)を強膜7上における当初の位置からずらした状態(図10参照)で眼内注射を行うことができる。そのため、ずらされた結膜6、61の位置が当初位置に戻った際には、結膜6に形成された針孔6aの位置と、強膜7に形成された針孔7aの位置がずれるために(図11及び図12参照)、細菌等が針孔から眼内に入り込むことを十分に抑制することができる。
【符号の説明】
【0024】
1;ゲージ付き角膜保護キャップ、2;角膜保護部、21;底部、21a;下面、22;突起部、3;ゲージ部、31;ガイド部、31a;切り欠き部、31b;目盛り、32;支持部、4;空間、5;角膜、5a;角膜輪部、6;眼球結膜、61;しわ、6a;針孔、7;強膜、7a;針孔、8;注射針。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内注射の際に用いられるゲージ付き角膜保護キャップであって、
底部下方が開放されており、眼球表面上において角膜表面を覆うことが可能な容器状の角膜保護部と、
前記角膜保護部から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部からの距離を測定することが可能なゲージ部と、を備えており、
前記角膜保護部は弾性変形可能であり、眼球表面上に配置された際に、前記角膜保護部内面と角膜表面との間の空間を負圧状態とすることにより、前記角膜保護部内面と角膜表面との間に生じる吸引力によって眼球表面上に固定可能であることを特徴とするゲージ付き角膜保護キャップ。
【請求項2】
前記ゲージ部は、注射針の刺入部位を示すガイド部と、前記ガイド部が一端側に形成されており且つ他端側が前記角膜保護部に固定された支持部と、を備えており、且つ弾性変形可能である請求項1に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
【請求項3】
前記ゲージ部を構成する材質は、ゴム又は熱可塑性エラストマーである請求項1又は2に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
【請求項4】
本ゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に固定した際に、前記ゲージ部は眼球表面に接触しない請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
【請求項1】
眼内注射の際に用いられるゲージ付き角膜保護キャップであって、
底部下方が開放されており、眼球表面上において角膜表面を覆うことが可能な容器状の角膜保護部と、
前記角膜保護部から外方に延設されており、眼球表面上において角膜輪部からの距離を測定することが可能なゲージ部と、を備えており、
前記角膜保護部は弾性変形可能であり、眼球表面上に配置された際に、前記角膜保護部内面と角膜表面との間の空間を負圧状態とすることにより、前記角膜保護部内面と角膜表面との間に生じる吸引力によって眼球表面上に固定可能であることを特徴とするゲージ付き角膜保護キャップ。
【請求項2】
前記ゲージ部は、注射針の刺入部位を示すガイド部と、前記ガイド部が一端側に形成されており且つ他端側が前記角膜保護部に固定された支持部と、を備えており、且つ弾性変形可能である請求項1に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
【請求項3】
前記ゲージ部を構成する材質は、ゴム又は熱可塑性エラストマーである請求項1又は2に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
【請求項4】
本ゲージ付き角膜保護キャップを眼球表面上に固定した際に、前記ゲージ部は眼球表面に接触しない請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゲージ付き角膜保護キャップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−94396(P2013−94396A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239603(P2011−239603)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(505123620)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(505123620)
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