説明

コア・シェル構造を有するトナー及びその製造方法

コア・シェル構造を有するトナー及びその製造方法が開示され、該シェル部は、架橋樹脂を含有しており、ホットオフセットを防止することができ、帯電安定性にすぐれるトナーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びその製造方法に係り、さらに詳細には、ホットオフセットを防止でき、帯電安定性にすぐれるコア・シェル構造を有するトナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式画像形成装置において、トナーを定着させる方法としては、熱効率が高くて高速定着が可能であるという点で、熱ロール定着方式が一般的に使われている。しかし、この方法では、定着時に、トナーの一部が加熱ロールの表面に付着して用紙上に再転移し、後続画像を汚染させる、いわゆる、オフセット現象が発生するという問題がある。また、転写紙が加熱ロールの表面に巻き付き、紙が詰まる、いわゆる、ペーパジャム(紙詰まり)現象が発生しもする。このような現象は、加熱ロールによって溶融したトナーの粘弾性が適切ではなく、トナーの粘性と弾性との均衡が適切ではない場合に発生しやすい。トナーの粘弾性的性質は、トナーの主成分である結着樹脂の種類や、その他の成分の種類及び含有量によって決まる。
【0003】
一般的にトナーは、適切な定着温度範囲を有するが、実際の画像形成では、周辺温度の変化や、多数の連続プリントアウト(print out)によって、定着ローラ表面の温度変化が大きくなるために、トナーの可能な定着温度範囲が広いことが望ましい。
【0004】
かようなオフセット現象やペーパジャム現象の発生を防止し、高温での定着特性を改善する方法としては、トナー中に低分子量ワックスのような離型剤を導入する方法が使われているが、この方法では、トナー粒子同士融着したり、現像機を構成する帯電部材にトナーが融着しやすいので、均一な画像形成に妨害になる恐れがある。また、従来の加熱ロール表面を、シリコンゴムやフッ素樹脂のような離型性材料で形成し、その上に、シリコンオイルのような離型性の良好な液剤(solution)を塗布することが一般的に行われているが、その場合、離型性液剤の塗布装置が必要であり、シリコンオイルが熱によって蒸発し、装置内を汚染させるという問題が生じる。また、かような離型性液剤の塗布装置を設けることは、装置の小型化と互いに両立不可能であるという問題がある。
【0005】
トナーの主成分である結着樹脂としては、スチレン−アクリレート系樹脂や、ポリエステル系樹脂が一般的に使われている。ポリエステル系樹脂は、スチレン−アクリレート系樹脂に比べて、ホットオフセットに対する抵抗性や発色性などにすぐれるが、周囲環境変化による帯電安定性の側面では、劣るという問題点がある。一方、スチレン−アクリレート系樹脂は、ポリエステル系樹脂に比べて、吸湿性が低くて耐熱保管性にすぐれるという長所がある。従って、結着樹脂の特性を改善して、オフセットの発生を防止しようという試みがなされている。
【0006】
特許文献1では、ポリエステル樹脂とスチレン−アクリレート樹脂とを溶媒に共に溶かした後、液状に分散させる方法によってトナーを製造し、帯電安定性の問題を解決しようとしたが、定着性は解決されていない。
【0007】
特許文献2には、ポリエステル樹脂またはスチレン−アクリレート樹脂と、ハイブリッド樹脂とを混合するか、または二種の異なるハイブリッド樹脂を混合して製造したトナーが開示されているが、このハイブリッド樹脂を利用したトナーは、オフセット問題を解決できておらず、耐久性にも問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−295105号公報
【特許文献2】特開2007−093809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ホットオフセットを防止でき、周囲環境変化に対する帯電安定性にすぐれるトナー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような課題を解決するために、本発明の一側面は、結着樹脂及び着色剤を含むトナーコア部と、テトラヒドロフラン(THF)に対する不溶分が99重量%ないし100重量%である架橋樹脂、及びこれを取り囲んだスチレン−アクリレート系樹脂を含むトナーシェル部と、からなるトナーを提供する。
【0011】
本発明の一具現例によれば、前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂でありうる。
【0012】
本発明の他の具現例によれば、前記架橋樹脂は、樹脂の活性水素含有基と架橋剤との反応によって形成されうる。
【0013】
本発明の他の具現例によれば、前記活性水素含有基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも一つでありうる。
【0014】
本発明の他の具現例によれば、前記架橋剤は、イソシアネート化合物またはエポキシ化合物でありうる。
【0015】
本発明の他の具現例によれば、前記架橋樹脂は、前記活性水素含有基1モル当たり、0.004ないし0.15モルの架橋剤の反応によって形成されたものでありうる。
【0016】
また、前記課題を解決するために本発明の他の側面によれば、有機溶媒、結着樹脂及び着色剤を含む混合物を分散媒に添加し、トナー微細懸濁液を製造する段階と、前記トナー微細懸濁液から有機溶媒を除去し、コア用トナー組成物を得る段階と、分散媒と有機溶媒との混合物に、活性水素含有基を有する樹脂及び架橋剤を添加し、微細懸濁液を得る段階と、前記微細懸濁液から有機溶媒を除去し、架橋樹脂微細懸濁液を得る段階と、前記架橋樹脂微細懸濁液に、スチレン系モノマー及びアクリレート系モノマーを含む混合物を添加した後に重合し、シェル用重合体懸濁液を得る段階と、前記コア用トナー組成物に、前記シェル用重合体懸濁液を添加した後に凝集させ、トナー粒子を得る段階と、前記凝集されたトナー粒子を融合させる段階と、を含むトナーの製造方法が提供される。
【0017】
本発明の一具現例によれば、前記着色剤は、顔料マスターバッチ状でありうる。
【0018】
本発明の他の具現例によれば、前記分散媒が極性溶媒と界面活性剤との混合物でありうる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ホットオフセットを防止でき、周囲環境変化による帯電安定性を向上させることができるトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の望ましい具現例について詳細に説明する。
【0021】
本発明の一側面によるトナーは、結着樹脂及び着色剤を含むトナーコア部と、テトラヒドロフラン(THF)に対する不溶分が99重量%ないし100重量%である架橋樹脂、及びこれを取り囲んだスチレン−アクリレート系樹脂を含むトナーシェル部と、からなる。
【0022】
前記トナーコア部は、結着樹脂及び着色剤以外に、一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0023】
前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含むが、ポリエステル樹脂は、着色剤の分散性及び低温定着性のような観点で特に望ましい。前記ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボキシル酸成分とを、必要によっては、減圧雰囲気下または触媒の存在下で加熱し、重縮合反応を行わせて製造されうる。多価アルコールの成分としては、具体的には、ポリオキシエチレン−(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2,2)−ポリオキシエチレン−(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2,4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセロール、及びポリオキシプロピレンなどがある。多価カルボキシル酸の成分としては、具体的には、ポリエステル樹脂の製造に一般的に使われる芳香族多価酸及び/またはそのアルキルエステルを含む。かような芳香族多価酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボキシル酸、2,5,7−ナフタレントリカルボキシル酸、1,2,4−ナフタレントリカルボキシル酸、1,2,5−ヘキサントリカルボキシル酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボキシル酸、及び/またはそれらカルボキシル酸のアルキルエステルがあり、このとき、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などを挙げることができる。前記芳香族多価酸及び/またはそのアルキルエステルは、単独でまたは二種類以上が配合された形態で使われうる。
【0024】
前記結着樹脂の含有量は、トナー組成物全体100重量部に対して、50〜98重量部でありうる。前記含有量が50重量部未満であるならば、前記結着樹脂がトナー組成物を結合させるのに不足であり、98重量部を超えれば、前記結着樹脂以外のトナー成分が少ないので、トナーとしての機能を発揮し難くなりうる。ここで、トナー組成物全体というのは、前記結着樹脂及び架橋樹脂以外に、後述する着色剤、添加剤及び外添剤などをいずれも含む概念である。前記結着樹脂は、数平均分子量が1,000〜4,000であり、多分散性指数(PDI:poly dispersity index)は2〜15であり、THFに対する不溶分が1重量%以下でありうる。数平均分子量が1,000未満であるならば、溶融粘度が非常に低く、定着温度領域が狭くなり、4,000を超えれば、粒子形成時に大きい粒子が形成され、粒度分布が広くなりうる。また、PDIが2未満であるならば、定着温度範囲が狭くなり、15を超えれば、THFに対する不溶分が1重量%以下である樹脂を得難くなる。THFに対する不溶分が1重量%を超えれば、微細懸濁粒子の製造が容易ではなくなる。
【0025】
本発明の一側面によるトナーのコア部に含まれる着色剤は、顔料それ自体として使われうるが、顔料が樹脂内に分散された顔料マスターバッチ状でもって使われることが望ましい。このように、マスターバッチ状でもって使用することによって、顔料の表面露出を抑制し、トナー粒子の帯電性能を向上させることができる。
【0026】
顔料マスターバッチに使われる樹脂としては、前述の結着樹脂が使われ、他の任意の公知の樹脂が使われもする。顔料マスターバッチは、顔料が等しく分散された樹脂組成物をいい、これは、高温高圧下で、顔料及び樹脂を混練するか、あるいは樹脂を溶媒に溶解させ、前記形成された溶液に顔料を添加した後、高い剪断力を加えて顔料を分散させる方法によって製造される。本具現例で利用する顔料マスターバッチにおいて、顔料の含有量は、顔料マスターバッチ全体100重量部に対して、10ないし70重量部であり、望ましくは、20ないし50重量部である。前記含有量が10重量部未満であるならば、製造されたトナーの顔料含有量が少ないので、所望の色再現を行うことができず、70重量部を超えれば、マスターバッチ内の顔料分散が均一ではない可能性が高い。
【0027】
前記顔料は、商業的に一般的に使われる顔料であるブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料及びそれらの混合物のうちから適切に選択されて使われうる。
【0028】
前記着色剤の含有量は、トナーを着色して、現像によって可視画像を形成するのに十分な程度であればよく、例えば、結着樹脂100重量部を基準として、3ないし15重量部であることが望ましい。前記含有量が3重量部未満であるならば、着色効果が不充分であり、15重量部を超えれば、トナーの電気抵抗が低くなるために、十分な摩擦帯電量を得られないので、汚染を発生させうる。
【0029】
一方、前記トナーコア部に含まれうる添加剤は、帯電制御剤、離型剤、またはそれらの混合物を含む。
【0030】
帯電制御剤としては、負帯電性帯電制御剤及び正帯電性帯電制御剤がいずれも使われ、負帯電性帯電制御剤としては、クロム含有アゾ錯体(complex)またはモノアゾ金属錯体のような有機金属錯体、またはキレート化合物;クロム、鉄、亜鉛のような金属含有サリチル酸化合物;芳香族ヒドロキシカルボキシル酸のような芳香族ジカルボキシル酸の有機金属錯体;が使われ、公知のものであるならば、特別に制限されるものではない。また、正帯電性帯電制御剤としては、ニグロシンやその脂肪酸金属塩で改質された生成物、トリブチルベンジルアンモニウム1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフェート及びテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような四級アンモニウム塩を含むオニウム塩などが、単独で、または二種以上混合されて使われうる。このような帯電制御剤は、静電気力によってトナーを、安定性を有しつつ高速で帯電させ、前記トナーを現像ローラ上に安定して支持させる。
【0031】
トナーに含まれる帯電制御剤の含有量は、一般的にトナー組成物全体100重量部に対して、0.1重量部ないし10重量部の範囲内である。前記帯電制御剤の含有量が、0.1重量部未満である場合には、トナーの帯電速度が遅くて帯電量が多くなく、帯電制御剤としての機能を発現するのに不足しており、10重量部を超える場合には、過度に帯電量が多くなり、画像に歪曲が発生しうる。
【0032】
前記離型剤としては、トナー画像の定着性を向上させるものであり、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレンのようなポリアルキレンワックス、エステルワックス、カルナウバ(carnauba)ワックス、パラフィンワックスなどが使われうる。トナーに含まれる離型剤の含有量は、一般的にトナー組成物全体100重量部に対して、0.1重量部ないし30重量部の範囲内である。前記離型剤の含有量が0.1重量部未満である場合には、オイルレス定着を実現し難く、30重量部を超える場合には、保管時に、トナーの集塊現象が誘発されうる。
【0033】
また前記添加剤は、高級脂肪酸や脂肪酸アミド、またはその金属塩などをさらに含む。このような高級脂肪酸、脂肪酸アミド、及びその金属塩は、現像特性の劣化を防止し、高品質の画像を得るために適切に使われうる。
【0034】
本発明の一側面によるトナーのシェル部に含まれる架橋樹脂は、樹脂の活性水素含有基の少なくとも一部が架橋剤と反応して、形成されたものでありうる。
【0035】
まず、活性水素含有基を有する樹脂について説明する。
【0036】
活性水素含有基は、後述するイソシアネート化合物またはエポキシ化合物などの架橋剤と容易に結合できる、ヒドロキシル基(OH)、メルカプト基(SH)、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも1つの基を含む。それらのうち、ヒドロキシル基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂が、前記架橋剤との反応に有利である。前記樹脂は、例えば、活性水素含有基を有するポリエステル樹脂でありうる。
【0037】
前記樹脂の活性水素含有基の含有量は、樹脂の酸基含有量とヒドロキシル基含有量とを合わせた数値であり、0.1ないし2mmol KOH/gであることが望ましい。活性水素含有基の含有量が、0.1mmol KOH/g未満であるならば、後述するトナーの製造が容易ではなくて、帯電性が落ちることがあり、2mmol KOH/gを超える場合には、製造されたトナーの環境安定性が顕著に低下する可能性がある。さらに望ましくは、前記活性水素含有基の含有量は、0.15ないし1.2mmol KOH/gである。
【0038】
前記活性水素含有基を有する樹脂は、数平均分子量が600ないし4,000である。数平均分子量が600未満であるならば、溶融粘度が非常に低くて定着温度領域が狭くなり、4,000を超えれば、架橋剤との反応性が低下し、架橋反応が進んでも、高分子量成分が多くなり、低温定着性が悪化して光沢性が低下しうる。
【0039】
前記活性水素基含有樹脂と架橋反応する架橋剤としては、イソシアネート化合物やエポキシ化合物などが使われるが、イソシアネート化合物が望ましい。
【0040】
前記イソシアネート化合物としては、任意の公知の芳香族、脂肪族及び/または脂環族のイソシアネート化合物と、3官能性イソシアネート化合物と、ポリオール及びジイソシアネート化合物のイソシアネート官能性付加物とが使われうる。
【0041】
一般的に有用なイソシアネート化合物としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロンジイソシアネート、4,4−ビフェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ビス−シクロヘキシルジイソシアネート、テトラメチレンキシレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3−ジメチルエチレンジイソシアネート、1−メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ビス−(4−イソシアネートシクロヘキシル)−メタン、4,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,3,5−ベンゼントリイソシアネート、2,4,6−トルエントリイソシアネート、トリオール及びジイソシアネートの三官能性付加物、及び/または前記ポリイソシアネートを、フェノール誘導体,オキシム(oxime),カプロラクタム(caprolactam),ジメチルピラゾールL(dimethylpyrazole)などでブロック化したイソシアネートが使われ、前記ポリイソシアネートが二種以上併用されて使われもする。ブロック共重合されたイソシアネートを使用する場合には、ブロックされた基を解離させるために、解離温度まで加圧して使用することも可能である。
【0042】
エポキシ化合物としては、2ないし5個のエポキシ官能基を有するジフェニロールプロパン(diphenylolpropane)型エポキシ樹脂、ジフェニロールメタン(diphenylolmethane)型エポキシ樹脂、ノボラック(novolac)型エポキシ樹脂、ジアミン(diamine)型エポキシ樹脂、ジアシド(diacid)型エポキシ樹脂、及びジオール(diol)型エポキシ樹脂などが使われうる。
【0043】
前記架橋剤の含有量は、一般的に、使われる樹脂の活性水素含有基1モルに対して、0.004ないし0.15モルであり、望ましくは、0.008ないし0.075モルである。
【0044】
前記架橋剤の含有量が0.004モル未満である場合には、架橋が十分ではなくて耐熱保管性が十分ではなく、耐ホットオフセット性が悪化して定着範囲が狭くなり、0.15モル超える場合には、架橋による高分子量成分が多くなり、低温定着性が悪化しうる。
【0045】
前記樹脂の活性水素含有基と前記架橋剤との架橋反応によって、架橋樹脂が形成される。
【0046】
本発明の一側面によるトナーのシェル部に含まれる前記架橋樹脂を取り囲んだスチレン−アクリレート系樹脂は、疎水性樹脂として、スチレン−アクリレート系エチレン性不飽和単量体の混合物から、乳化剤及び重合開始剤の存在下で重合されうる。前記エチレン性不飽和単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルナフタレンのような芳香族ビニル単量体;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートのような不飽和カルボキシル酸アルキルエステル;β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレートのような不飽和カルボキシル酸ヒドロキシアルキルエステル;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、イタコン酸アミド、マレイン酸モノアミド、N−メチロールメタクリルアミドのような不飽和カルボキシル酸アミド及びそれらの誘導体;酢酸ビニル;ビニルピリジンなどを挙げることができ、それらから一種以上選択して使用することができる。
【0047】
前記スチレン−アクリレート系樹脂は、2つ以上のビニル基を有する架橋性単量体をさらに含むことができる。架橋性単量体としては、アリールアクリレート、アリールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジアリールフタレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジアリールマレート、trans−ファルネシル(farnesyl)アセテート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを挙げることができ、それらから一種以上選択して使用できる。
【0048】
本発明の一側面によるトナーのシェル部に含まれる前記架橋樹脂を取り囲んだスチレン−アクリレート系樹脂の含有量は、架橋樹脂とスチレン−アクリレート系樹脂とを合わせた量100重量部に対して、10ないし50重量部である。10重量部未満である場合には、分子量が少なくなって定着温度範囲が狭くなり、50重量部を超える場合には、樹脂が過度に硬くなって低温定着性にプラスにならず、結着樹脂との相溶性低下によって、トナー製造時に凝集性が良好ではない。
【0049】
本発明の一側面によるトナーは、前記架橋樹脂を取り囲んだスチレン−アクリレート系樹脂を含むシェル部が、前記結着樹脂及び着色剤を含むコア部を覆い包む複合構造を有する。
【0050】
本発明の一側面によるトナーは、外添剤をさらに含むことができる。外添剤は、トナーの流動性を向上させたり、帯電特性を調節するためのものであり、大粒径シリカ、小粒径シリカ及びポリマービードを含む。
【0051】
本発明の他の側面によるトナーの製造方法は、有機溶媒、結着樹脂及び着色剤を含む混合物を分散媒に添加し、トナー微細懸濁液を製造する段階と、前記トナー微細懸濁液から有機溶媒を除去し、コア用トナー組成物を得る段階と、分散媒と有機溶媒との混合物に、活性水素含有基を有する樹脂及び架橋剤を添加し、微細懸濁液を得る段階と、前記微細懸濁液から有機溶媒を除去し、架橋樹脂の微細懸濁液を得る段階と、前記架橋樹脂の微細懸濁液に、スチレン系モノマー及びアクリレート系モノマーを含む混合物を添加した後に重合し、シェル用重合体懸濁液を得る段階と、前記コア用トナー組成物に、前記シェル用重合体懸濁液を添加した後に凝集させ、トナー粒子を得る段階と、前記凝集されたトナー粒子を融合させる段階と、を含む。
【0052】
以下、本具現例によるトナーの製造方法について詳細に説明する。
【0053】
まず、有機溶媒、結着樹脂、着色剤、及び必要によって少なくとも1つの添加剤を含む混合物を分散媒に添加し、トナー混合液を形成した後に、前記トナー混合液を、極性溶媒、界面活性制、及び選択的に増粘剤などから構成された分散媒内に添加して撹拌し、トナー微細懸濁液を形成する。
【0054】
次に、前記トナー微細懸濁液を撹拌及び加熱しつつ、望ましくは、部分減圧状態で有機溶媒を除去し、コア用トナー組成物を得る。
【0055】
一方、極性溶媒、界面活性剤、及び選択的に増粘剤などを混合した後に撹拌及び加熱し、その混合液に含まれた固形分を十分に溶解させることによって、分散媒を製造する。前記固形分が完全に溶解されたことを確認した後、前記分散媒に有機溶媒を添加し、乳白色の液体組成物を製造する。その後、前記液体組成物に活性水素含有基を有する樹脂と架橋剤とを添加及び混合し、微細懸濁液を形成する。
【0056】
次に、前記微細懸濁液を撹拌及び加熱しつつ、望ましくは、部分減圧状態で有機溶媒を除去し、架橋樹脂微細懸濁液を得る。
【0057】
極性溶媒、界面活性剤、スチレン系モノマー及びアクリレート系モノマーを混合して製造したエマルジョン状態のモノマー混合物を、開始剤存在下で、前記架橋樹脂微細懸濁液に徐々に添加し、架橋樹脂を取り囲んだスチレン−アクリレート系シェル用重合体懸濁液を得る。
【0058】
次に、前記コア用トナー組成物に、前記シェル用重合体懸濁液を投入混合し、凝集剤、温度及びpHなどを調節することによって、それらを凝集させ、トナー粒子を得る。
【0059】
次に、前記トナー粒子を融合させ、所望の粒径のトナー複合体を得る。かような融合によって、前記トナー粒子の硬度が強化され、その形状が規則的になる。また、融合程度によって、集塊したトナー粒子の形状が、ゆがんだ球形から完全な球形まで多様に変化する。特に、かような融合によって、架橋樹脂を取り囲んだスチレン−アクリレート系シェル用重合体が、コア用トナー粒子を覆い包んでいる形態のコア・シェル構造のトナーが得られる。すなわち、融合によって結着樹脂は、1つのように群がるが、架橋樹脂を取り囲んだスチレン−アクリレート系樹脂は、結着樹脂と融合されずに、トナー粒子外郭に、外皮状に取り囲む。
【0060】
最後に、前記融合されたトナーを冷却させた後で洗浄及び乾燥し、最終トナー粒子を得る。
【0061】
前記製造方法で使われる有機溶媒は、揮発性であり、極性溶媒より低い沸点を有し、極性溶媒と混合されないものであり、例えば、酢酸メチルや酢酸エチルのようなエステル系;アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系;ジクロロメタンやトリクロロエタンのような炭化水素系;ベンゼンのような芳香族炭化水素系などから選択された一種以上でありうる。
【0062】
極性溶媒は、水、グリセロール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びソルビトールなどから選択された一種以上であり、水が望ましい。
【0063】
増粘剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ゼラチン、キトサン及びアルギン酸ナトリウムなどから選択された一種以上であり、ポリビニルアルコールが望ましい。
【0064】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のうちから選択された一種以上が使われうる。
【0065】
本発明のトナーの製造方法で、凝集剤として使われうるものとしては、分散媒に使われた界面活性剤及び前記界面活性剤の極性と反対極性の界面活性剤、または一価以上の無機金属塩がある。
【0066】
本発明の一具現例による製造方法によって製造されたトナーは、電子写真方式の画像形成装置に使われうる。ここで、電子写真方式の画像形成装置とは、レーザプリンタ、複写機またはファクシミリなどを意味する。
【0067】
以下、実施例を挙げて、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がかような実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
[製造例]
(活性水素含有基を有するポリエステル樹脂の合成)
製造例1:ポリエステル樹脂(1)の合成
撹拌器、温度計及びコンデンサが設けられた体積が3リットルである反応器を、熱伝逹媒体であるオイルバス内に設けた。このように設けられた反応器内に、ジメチルテレフタレート50g、ジメチルイソフタレート47g、1,2−プロピレングリコール80g、及びトリメリット酸3gを投入した。その後、触媒として、ジブチルスズオキシドを0.09g(すなわち、単量体全体重量に対して、500ppmの比率)を投入した。次に、150rpmの速度で、反応器内の混合物を撹拌しつつ、反応温度を150℃まで上昇させた。その後、約6時間反応を進めた後、反応温度をさらに220℃まで上昇させた。次に、副反応物の除去のために、反応器を0.1torrに減圧し、前記圧力で15時間維持させた後に反応を完了した。結果として、ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0069】
反応完了後、示差走査熱量計(DSC)を利用し、ポリエステル樹脂(1)のガラス転移温度(Tg)を測定した結果、前記温度は、62℃であった。また、ポリスチレン基準試料を使用し、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC:gel permeation chromatography)によって、ポリエステル樹脂(1)の数平均分子量とPDIとを測定し、その結果、数平均分子量は4,000であり、PDIは3.5であった。滴定によって測定した結果、活性水素含有基の含有量は、0.4mmol KOH/gであった。
【0070】
製造例2:ポリエステル樹脂(2)の合成
副生成物の除去工程を10時間行ったことを除いては、製造例1と同じ方法でポリエステル樹脂(2)を製造した。反応完了後、示差走査熱量計(DSC)を利用し、ポリエステル樹脂(2)のガラス転移温度(Tg)を測定した結果、前記温度は58℃であった。また、ポリスチレン基準試料を使用し、GPCによって、ポリエステル樹脂(2)の数平均分子量とPDIとを測定し、その結果、数平均分子量は2,100であり、PDIは3.4であった。滴定によって測定した結果、活性水素含有基の含有量が0.2mmol KOH/gであった。
【0071】
(顔料マスターバッチの製造)
製造例3:ブラック顔料マスターバッチの製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂(1)とカーボンブラック顔料(ドイツ・デグサ社製、NIPEX 150)とを、重量基準で8:2の割合で混合した。その後、ポリエステル樹脂100重量部に対して、酢酸エチル50重量部を添加し、前記混合物を約60℃に加熱した後、ニーダ(kneader)で60分間混合した。次に、前記混合物を、真空装置が連結された二軸圧出機を利用し、50rpmの速度で混合しつつ、真空装置を利用して、溶媒である酢酸エチルを除去することによって、ブラック顔料マスターバッチを得た。
【0072】
(架橋樹脂の製造)
製造例4
コンデンサ、温度計及びインペラ型撹拌器を装着した1L反応器に、蒸溜水400g、ポリビニルアルコール20g(P−24TM、DC Chemical Co.、韓国ソウル所在)、中性界面活性剤14g(tween 20TM、Aldrich Chemical Company、米国ウィスコンシン・ミルウォーキー所在)、及び陰イオン性界面活性剤である硫酸ドデシルナトリウム4g(Aldrich Chemical Company)を入れ、70℃の温度で500rpmの撹拌速度で加熱し、固形分を十分に溶解させた。前記固形分が完全に溶解されたことを確認した後、メチルエチルケトン100g(Aldrich Chemical Company)を混合することによって、乳白色の液体組成物を得た。前記液体組成物に、前記製造例2で合成したポリエステル樹脂(2)120g及びイソシアネート架橋剤(toluene diisocyanate、Aldrich Chemical Company)6g(樹脂の活性水素含有基の含有量1モルに対して、0.07モルに該当)を添加した後、1,000rpmで撹拌しつつ、還流状態で75℃の温度で5時間混合し、微細懸濁液を形成した。次に、撹拌速度を300rpmに減速し、反応器の温度を90℃に加熱しつつ、100mmHgの部分減圧状態で有機溶媒であるメチルエチルケトンを反応器から除去した後、コンデンサを介して収得した。4時間経過後、収得されたメチルエチルケトンの量を確認し、添加されたメチルエチルケトンがいずれも除去されたことを確認した。次に、反応器内の温度を25℃に冷却し、架橋樹脂微細懸濁液を得た。架橋樹脂微粒子の体積平均粒径は、280nmであり、THFに対する不溶分は、99重量%であった。
【0073】
(シェル用重合体懸濁液の製造)
製造例5
製造例4で作られた架橋樹脂の微細懸濁液に、蒸溜水70gをさらに投入した後、撹拌しつつ75℃に昇温させ、蒸溜水70g、硫酸ドデシルナトリウム1g、スチレンモノマー40g、ブチルアクリレートモノマー10gを混合し、モノマーエマルジョンを別途に作っておいた。次に、75℃に昇温された架橋樹脂の微細懸濁液に、過硫酸カリウム5%溶液を10g投入した後、先に作ったモノマーエマルジョンを、300分間徐々に添加して重合反応を進めた。モノマーが投入された後、75℃で180分間さらに反応を進めた後、反応器温度を25℃に冷却し、架橋樹脂を取り囲んだスチレン−アクリレート系シェル用重合体懸濁液を得た。シェル用重合体懸濁液の体積平均粒径は、310nmであった。
【0074】
製造例6
前記製造例5でモノマーエマルジョンを、蒸溜水150g、硫酸ドデシルナトリウム2g、スチレンモノマー80g及びブチルアクリレートモノマー20gを混合して製造し、過硫酸カリウム5%溶液20gを使用したことを除いては、製造例5と同じ方法でシェル用重合体懸濁液を得た。
【0075】
(トナー粒子の製造)
実施例1
コンデンサ、温度計及びインペラ型撹拌器を装着した体積1リットルの反応器に、製造例1で合成したポリエステル樹脂(1)60g、製造例3で合成したブラック顔料マスターバッチ40g、帯電制御剤1g(N−23、HB Dinglong社製)、パラフィンワックス4g、及び有機溶媒としてメチルエチルケトン150gを投入し、トナー混合液を形成した。前記トナー混合液を600rpmの速度で撹拌しつつ、1N NaOH水溶液25mlを添加した後、還流状態で80℃の温度で5時間混合した。前記トナー混合液が十分な流動性を有することを確認した後、500rpmの速度で2時間さらに撹拌した。
【0076】
次に、コンデンサ、温度計及びインペラ型撹拌器が装着された体積3リットルの他の反応器に、蒸溜水600g、中性界面活性剤5g(tween 20、Aldrich社製)、陰イオン性界面活性剤である硫酸ドデシルナトリウム1g(Adrich社製)を投入し、前記混合物を85℃で600rpmの速度で1時間撹拌して分散媒を得た。
【0077】
前記分散媒に前記トナー混合液を投入し、同一温度、すなわち85℃で1時間1,000rpmの速度で撹拌することによって、トナー微細懸濁液を形成した。
【0078】
次に、反応器内の温度を90℃に加熱しつつ、100mmHgの部分減圧状態で有機溶媒であるメチルエチルケトンを除去し、コア用トナー組成物を得た。コールター・マルチサイザ(Beckman Coulter社製)で、メチルエチルケトンが除去されたトナー組成物のサイズを測定した結果、体積平均粒径が400nmであった。
【0079】
次に、前記トナー組成物を含む前記反応器の反応物に、製造例5で製造されたシェル用重合体懸濁液を添加した。
【0080】
次に、塩化マグネシウム10gを蒸溜水50gに溶かし、徐々に反応器内に投入した後、30分かけて80℃まで昇温させ、シェル用重合体−トナー組成物混合物を凝集させてトナー粒子を得た。5時間経過後、コールター・マルチサイザ(Beckman Coulter社製)で、トナー粒子のサイズを測定した結果、体積平均粒径が6.8μmであった。
【0081】
次に、反応器に蒸溜水500gを投入し、80℃で8時間融合を進めた後、前記反応器を冷却させた。
【0082】
その後、通常の濾過装置を使用し、融合されたトナー粒子を分離し、1N塩酸水溶液で洗浄した後、蒸溜水で5回再洗浄し、界面活性剤などをいずれも除去した。洗浄が完了したトナー粒子を、流動層乾燥器で40℃の温度で5時間乾燥させることによって、最終トナー粒子を得た。
【0083】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は、6.9μmであり、80%スパン値は、0.65であった。また、電子走査顕微鏡(SEM:JEOL社製)を使用し、ランダムなトナー粒子サンプル100個に対して、Image J softwareで分析した結果、形状係数(shape factor)の平均は、0.90であった。
【0084】
実施例2
製造例6で製造した架橋樹脂を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0085】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は、7.0μmであり、80%スパン値は、0.63であった。また、電子走査顕微鏡(SEM:JEOL社)を使用し、ランダムなトナー粒子サンプル100個に対して、Image J softwareで分析した結果、形状係数の平均は、0.91であった。
【0086】
比較例1
得られたトナー組成物を、製造例5で製造したシェル用重合体懸濁液に混合する過程を省略したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0087】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は、6.5μmであり、80%スパン値は、0.65であった。また電子走査顕微鏡(SEM:JEOL社)を使用し、ランダムなトナー粒子サンプル100個に対して、Image J softwareで分析した結果、形状係数の平均は、0.87であった。
【0088】
前記実施例及び比較例で、体積平均粒径は、コールター・マルチサイザ(Coulter Multisizer 3)で測定した。前記コールター・マルチサイザにおいて、アパーチャ(aperture)は100μmを利用し、電解液であるISOTON−II(Beckman Coulter社製)50〜100mlに、界面活性剤を適量添加し、ここに測定試料10〜15mgを添加した後、超音波分散器で5分間分散処理することによって、サンプルを製造した。
【0089】
また、80%スパン値は、粒子のサイズ分布を規定する指数であり、体積を基準として10%に該当する粒径、すなわち、粒径を測定して、小粒子から体積を累積する場合、総体積の10%に該当する粒径をd10、50%に該当する粒径をd50、90%に該当する粒径をd90と定義し、下記数式1によってその値を求めた。
【0090】
[数1]
80%スパン値=(d90−d10)/d50
【0091】
ここで、スパン値が小さいほど狭い粒度分布を示し、大きいほど広い粒度分布を示す。
【0092】
また、形状係数(shape factor)は、ランダムなトナー粒子サンプル100個をSEM image(x1,500)で測定した後、Image J softwareで分析し、下記数式2によって求めた。
【0093】
[数2]
形状係数(shape factor)=4π(面積/(周囲長)
【0094】
前記式で、面積(area)は、投影されたトナーの面積を意味し、周囲長(perimeter)は、投影されたトナーの周囲長を意味する。この値は、0〜1値を有し、1に近いほど球形を意味する。
【0095】
一方、樹脂の評価方法は、下記の通りである。
【0096】
ガラス転移温度(Tg、℃)は、示差走査熱量計(Netzsch社製)を使用し、試料を10℃/分の加熱速度で、20℃から200℃まで昇温させた後、20℃/分の冷却速度で、10℃まで急冷させた試料を、10℃/分の加熱速度で昇温させて測定した。
【0097】
活性水素含有基の含有量は、酸基含有量とヒドロキシル基との含有量を合わせた値であり、次のように求める。
【0098】
まず、酸基含有量(mmol KOH/g)は、樹脂0.5〜2gをジクロロメタン100mlに溶解させた後で冷却させ、0.1N KOHメチルアルコール溶液で、電位差滴定装置(Metrohm 736 GP Titrino、Metrohm社製)を利用して滴定し、滴定に使われた0.1N KOHメチルアルコール溶液の使用量S(ml)と、滴定に使用した樹脂の重量W(g)とを測定し、下記数式3によって求める。
【0099】
[数3]
酸基含有量(mmol KOH/g)=S/(W×10)
【0100】
次に、ヒドロキシル基含有量(mmol KOH/g)は、樹脂0.5〜2gに無水酢酸1〜2g、ピリジン3〜4gを混合し、90〜100℃で1時間加熱した後に冷却する。ここに水1〜2mlを投入し、反応していない無水酢酸を分解させる。ここに、ジクロロメタン100mlを入れて溶解させた後、0.1N KOHメチルアルコール溶液で、酸価測定と同じ方法で滴定し、滴定に使われた0.1N KOHメチルアルコール溶液の使用量S’(ml)と、滴定に使用した樹脂の重量W’(g)とを測定する。また、樹脂だけない状態で、ブランク(blank)実験を実施し、滴定に使われた0.1N KOH使用量B(ml)を測定し、下記数式4によって、ヒドロキシル基含有量を求める。
【0101】
[数4]
ヒドロキシル基含有量(mmol KOH/g)=(B−S’)/(W’×10)+酸基含有量
【0102】
以下、前記実施例及び比較例で製造したトナー粒子を、下記の方法で評価した。
【0103】
(定着温度範囲:ホットオフセットに対する抵抗性)
トナー粒子100g、シリカ(TG 810G、Cabot社製)2g、及びシリカ(RX50、Degussa社製)0.5gを混合して製造したトナー組成物を使用し、三星CLP−510プリンタで、30mmx40mmソリッド(solid)状の未定着画像を得た。次に、定着温度を任意に変更できるように改造された定着試験器で、定着ローラの温度を変化させつつ、前記未定着画像の定着性を評価した。
【0104】
(周囲環境変化による帯電安定性)
下記3つの環境(温度/湿度)で、それぞれ16時間放置したトナー0.2gとキャリア2gとを、150rpmの速度で15分間混合した。その後、一般的に実施する二成分系トナーの帯電量測定法で、ブローオフ帯電量(Vertex社製)を測定した。
1)10℃/10%,2)25℃/55%,3)32℃/80%
【0105】
前記のような評価結果を、下記表1に示した。
【0106】
【表1】

【0107】
表1を参照すれば、定着温度範囲は、実施例1の場合、130〜210℃、実施例2の場合、130〜220℃であり、比較例1の場合には、120〜170℃であると分かり、実施例1、2の場合、定着温度範囲、特に、高温定着温度の範囲がさらに広いということが分かる。
【0108】
従って、実施例1、2の場合の方が比較例1の場合より、ホットオフセットが発生する可能性が低いという事実が分かる。また、周囲環境変化による帯電安定性について述べれば、比較例1の場合は、周囲温度と湿度とが上昇することによって、帯電量の変化が非常に大きいのに対し、実施例1、2の場合は、帯電量の変化量が小さいという事実が分かる。従って、実施例1、2の場合の方が比較例1の場合より、周囲環境変化による帯電安定性にすぐれるという事実が分かる。
【0109】
以上、本発明による望ましい実施例について説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当技術分野で当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他実施例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決まるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含むトナーコア部と、
テトラヒドロフラン(THF)に対する不溶分が99重量%ないし100重量%である架橋樹脂、及びこれを取り囲んだスチレン−アクリレート系樹脂を含むトナーシェル部と、からなるトナー。
【請求項2】
前記架橋樹脂は、樹脂の活性水素含有基と架橋剤との反応によって、形成されたものである請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記スチレン−アクリレート系樹脂の含有量は、
架橋樹脂とスチレン−アクリレート系樹脂とを合わせた量100重量部に対して、10ないし50重量部である請求項1に記載のトナー。
【請求項4】
前記活性水素含有基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも1つである請求項2に記載のトナー。
【請求項5】
前記架橋剤が、イソシアネート化合物またはエポキシ化合物である請求項2に記載のトナー。
【請求項6】
前記架橋樹脂が、前記活性水素含有基1モル当たり0.004ないし0.15モルの架橋剤の反応によって形成されたものである請求項2に記載のトナー。
【請求項7】
有機溶媒、結着樹脂及び着色剤を含む混合物を分散媒に添加し、トナー微細懸濁液を製造する段階と、
前記トナー微細懸濁液から有機溶媒を除去し、コア用トナー組成物を得る段階と、
分散媒と有機溶媒との混合物に、活性水素含有基を有する樹脂及び架橋剤を添加し、微細懸濁液を得る段階と、
前記微細懸濁液から有機溶媒を除去し、架橋樹脂微細懸濁液を得る段階と、
前記架橋樹脂微細懸濁液に、スチレン系モノマー及びアクリレート系モノマーを含む混合物を添加した後に重合し、シェル用重合体懸濁液を得る段階と、
前記コア用トナー組成物に、前記シェル用重合体懸濁液を添加した後で凝集させ、トナー粒子を得る段階と、
前記凝集されたトナー粒子を融合させる段階と、を含むトナーの製造方法。
【請求項8】
前記活性水素含有基が、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも1つの基である請求項7に記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
前記架橋剤が、イソシアネート化合物またはエポキシ化合物である請求項7に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
前記架橋剤を、前記活性水素含有基1モル当たり、0.004ないし0.15モルの量で添加する請求項7に記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
前記着色剤が、顔料マスターバッチ状である請求項7に記載のトナーの製造方法。
【請求項12】
前記分散媒が、極性溶媒と界面活性剤との混合物である請求項7に記載のトナーの製造方法。

【公表番号】特表2012−517036(P2012−517036A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549059(P2011−549059)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/000459
【国際公開番号】WO2010/090409
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(508130188)サムスン ファイン ケミカルズ カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】