説明

コネクター用キャップ及びこれを備えた輸液ラインの接続装置

【課題】流体の漏出を抑制することのできるコネクター用キャップ及びこれを備えた輸液ラインの接続装置を得る。
【解決手段】第1開口部14及び第2開口部15を備えたハウジング11と、ハウジング11内とその外部とを隔てるようにして第1開口部14に保持され、外部からハウジング11内部まで雄コネクター40の注入管部43を挿入させることのできるスリット22が形成されたセプタム21と、第2開口部15に保持される疎水性のフィルター31とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液などの流体を患者へと導く輸液ラインのプライミングに用いるコネクター用キャップ及びこれを備えた輸液ラインの接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用の輸液ラインにおいては、感染防止機能や針刺事故防止機能を備えたいわゆる閉鎖式輸液システムが用いられている。閉鎖式輸液システムは、例えば、雄コネクターと雌コネクターからなるカテーテルの継ぎ手部を備えている。そして、雌コネクター側にセプタム等の封止部を設けてこの封止部により薬液などの流体を閉じこめ、雌コネクターの封止部に雄コネクターの雄型ルアーを接続すると、薬液などの流体が流通するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1のような継ぎ手部を備えた輸液システムのプライミングを行う際には、雄コネクターの雄型ルアー先端の開口部から、例えば抗がん剤や輸液剤などの流体が漏れる場合がある。このような流体は、細胞障害の誘発特性や、遺伝毒性、発がん性、胎児奇形性等を有することがある。このため、医療従事者が流体に接触するのを防ぐべく、プライミング時に液漏れしない輸液システムが望まれている。
【0004】
プライミング時の液漏れを防ぐことを目的として、「近位端部の第1開口部、及び疎水性のフィルターが配設される第2開口部を有する貯蔵装置」を備えたコネクター用キャップが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平8−500983号公報(第2頁、図2)
【特許文献2】特表2009−522048号公報(第7頁、第8頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載のコネクター用キャップは、プライミング時に雄コネクターに組み付けて用いられる。そして、プライミング時には、気体はコネクター用キャップの疎水性のフィルターを介して大気中へと通過するが、雄型ルアーの開口部から流れ出た液体はコネクター用キャップの第1開口部を通って貯蔵装置内に保持されるようになっている。
【0007】
しかし、プライミング終了後に、コネクター用キャップを雄コネクターから取り外すと、コネクター用キャップの貯蔵装置(収容部)内に流入した液体が第1開口部から飛散したり、気化したりして漏れ出すおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、流体の漏出を抑制することのできるコネクター用キャップ及びこれを備えた輸液ラインの接続装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコネクター用キャップは、雄コネクターに着脱可能に取り付けられるコネクター用キャップであって、第1開口部及び第2開口部を備えた収容部と、収容部内部とその外部とを隔てるようにして第1開口部に保持され、外部から収容部内部まで挿入体を挿入させることのできる挿入路が形成された封止部と、第2開口部に保持される疎水性のフィルターと、を備えたものである。
【0010】
本発明に係るコネクター用キャップは、フィルターの外側から第2開口部を液密状態に覆うことのできるフタ部を備えたものである。
【0011】
本発明に係るコネクター用キャップは、フィルターを第2開口部に着脱可能に取り付けるフィルター取付部を備えたものである。
【0012】
本発明に係る輸液ラインの接続装置は、上記コネクター用キャップと、コネクター用キャップの封止部の挿入路に挿入可能な注入管部を有する雄コネクターと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコネクター用キャップは、収容部内部とその外部とを隔てるようにして第1開口部に保持され、外部から収容部内部まで挿入体を挿入させることのできる挿入路が形成された封止部を備え、収容部の第2開口部には疎水性フィルターを備えた。このため、コネクター用キャップを雄コネクターから取り外した場合でも、プライミング時に収容部内に流入した流体を収容部内に閉じこめることができる。したがって、プライミング時の液漏れを防ぐことができる。
【0014】
本発明に係るコネクター用キャップは、第2開口部の前記フィルターを外側から液密に覆うフタ部を備えた。このため、疎水性のフィルターが万一親水化したとしても、疎水性のフィルターを介して流体が漏出するのを抑制できる。また、プライミング後にはフタ部によりフィルターを覆うことで、プライミング後にフィルターを介して空気が雄コネクター内に引き込まれるのを防止できる。
【0015】
本発明に係るコネクター用キャップは、疎水性のフィルターを収容部の第2開口部に着脱可能に取り付けるフィルター取付部を備えた。このため、疎水性のフィルターが万一親水化したとしても、フィルターのみを交換してプライミングを行うことができる。
【0016】
本発明に係るカテーテル接続具は、上記コネクター用キャップを備えているので、プライミング時の液漏れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1に係る輸液ラインセットの構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態1に係る輸液ラインの接続装置の平面、側面、及び縦断面を示す図である。
【図3】実施の形態1に係るコネクター用キャップの正面、側面、背面、及び縦断面を示す図である。
【図4】実施の形態1に係るコネクター用キャップと雄コネクターの接続状態を示す断面模式図である。
【図5】実施の形態2に係るコネクター用キャップの正面、側面、背面、及び縦断面を示す図である。
【図6】実施の形態2に係る輸液ラインの接続装置の平面及び側面断面を示す図である。
【図7】実施の形態2に係るコネクター用キャップと雄コネクターの接続状態を示す断面模式図である。
【図8】実施の形態3に係る輸液ラインの接続装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る輸液ラインセットの構成例を示す図である。
輸液ラインセット1は、薬液等を供給するためのものであり、薬液等の流体が入った流体容器2と、点滴筒4と、ローラクランプ6と、雄コネクター40と、コネクター用キャップ10とを備えている。
流体容器2は、薬液、栄養剤、抗がん剤、生理食塩水、血液などの各種医療用液体を貯留する容器である。
点滴筒4は、チューブ3を介して流体容器2から供給される薬液等を内部に一時的に溜めるとともに、チューブ5を介して薬液等を所定量ずつローラクランプ6側に送るものである。
ローラクランプ6は、チューブ5を介して供給される薬液等の流体の流量を調節するためのものである。ローラクランプ6は、軟質のチューブ5を圧迫することにより流量調節が可能であり、チューブ5を最大限まで圧迫すると薬液等の流れを停止させることができる。
【0019】
雄コネクター40は、チューブ5の下流側先端に取り付けられている。雄コネクター40を、図示しない雌コネクターに接続することで、医療用の継ぎ手部を構成する。
コネクター用キャップ10は、雄コネクター40の下流側に接続されて、プライミング時に使用されるキャップである。
【0020】
図2は、雄コネクター40を示す図であり、(a)は平面を、(b)は側面を、(c)は縦断面を示している。雄コネクター40は、薬液等の流体の流路を形成する流通管41と、流通管41と同軸に流通管41の外側に形成された外筒体51とを備える。なお、図2では、説明上、図面左側を基端側(後端側)、図面右側を先端側としている。
【0021】
流通管41は、チューブ5のほかカテーテルやシリンジなどに接続される円筒状の基管部42と、コネクター用キャップ10や雌コネクター(図示せず)に接続される注入管部43と、基管部42と注入管部43とを繋ぐ中間管部44とを備えている。注入管部43は、断面がテーパー状の鈍針(カニューレ)である。
【0022】
外筒体51は、基管部42と中間管部44の連結部付近から外向きフランジ状に張り出した底部52と、底部52の外周縁から連続して軸方向先端側に延びて流通管41の先端部、すなわち注入管部43を囲繞する外筒部53を備えている。
外筒部53の先端周縁近傍には、コネクター用キャップ10や雌コネクター(図示せず)を係止して連結するための溝部54で画定された係止部57が設けられている。この係止部57は、軸方向の力に対応する係止面55と、この係止面55からフック状に延設され周方向(管の径方向)の力に対応する鉤面56とにより形成されている。
なお、係止部57は、外筒部53の先端周縁部の対向する位置に少なくとも2つ設けられている。
【0023】
図3は、実施の形態1に係るコネクター用キャップ10を示す図であり、(a)は正面を、(b)は側面を、(c)は背面を、(d)は縦断面を示している。コネクター用キャップ10は、ほぼ円筒状に形成されたハウジング11と、セプタム21と、フィルター31とを備えている。ハウジング11は、本発明の収容部に相当する。
ハウジング11は、合成樹脂等で構成されていてほぼ円筒状であり、軸方向端部に第1開口部14と第2開口部15が設けられている。ハウジング11の第1開口部14側に、雄コネクター40が接続される。ハウジング11の内部空間であって、第1開口部14に保持されたセプタム21(後述する)が占める空間を除く空間を、貯留部13と称する。貯留部13は、薬液等の流体を貯留可能であり、貯留部13の容積は、例えば0.06〜0.1ミリリットル程度である。
【0024】
ハウジング11の外周面には、雄コネクター40の係止部57に嵌合可能で、鉤面56に係合可能な突起12が少なくとも2つ設けられている。突起12の雄コネクター40の鉤面56との係合面は、両者が直線状に係合できるように直線状に形成する。さらに、突起12は、雄コネクター40の係止面55と鉤面56の双方に接しつつそれらに嵌合する形状とするのが好ましい。
【0025】
セプタム21は、本発明の封止部に相当し、ゴムなどの弾性体で構成されていてハウジング11の第1開口部14に保持されている。セプタム21の中心部には、本発明の挿入路に相当するスリット22が形成されている。スリット22は、本発明の挿入体としての雄コネクター40の注入管部43を挿入可能に形成されている。セプタム21は、注入管部43の挿入の容易性と、注入管部43を引き抜いた後のシール性との両方を適切に実現する弾性力を有している。また、セプタム21の軸方向の厚さは、雄コネクター40の係止部57とコネクター用キャップ10の突起12を係合状態としたときに、スリット22が開いて注入管部43と貯留部13内とで流体が流通可能となる程度の厚さである。
【0026】
フィルター31は、気体は通過させるが液体は通過させない疎水性のフィルターで構成されている。フィルター31は、フィルター取付部32に保持されており、このフィルター取付部32を介してハウジング11の第2開口部15に取り付けられている。
【0027】
フィルター取付部32は、ハウジング11の第2開口部15に嵌合するリング形状(ドーナツ形状)あるいは多角形形状を有し、フィルター取付部32の内周側にフィルター31を保持している。フィルター取付部32は、第2開口部15に着脱可能である。したがって、フィルター31は、フィルター取付部32を介してハウジング11に着脱可能であると言える。
【0028】
フィルター取付部32には、フィルター取付部32の外周部に設けられたヒンジ34を介してフタ33が設けられている。フタ33は、ヒンジ34により開け閉め可能となっている。フタ33を閉めると、フィルター31を外側から覆うことができる。すなわち、フタ33を閉めると、フィルター31はコネクター用キャップ10の外側に晒されない状態となる。フタ33の内面側は、フィルター取付部32の内周とほぼ同じ外形を有する凸部によりフタ係止部35が構成されている。フタ33を閉めると、フタ係止部35がフィルター取付部32の内周に嵌合して、フタ係止部35の外周とフィルター取付部32の内周とが密着し、第2開口部15から液体が流れ出ない状態(液密状態)で、かつ、気体も漏れない状態(気密状態)となる。なお、フタ33内を液密状態及び気密状態とする構成はこれに限定されるものではなく、例えば、第2開口部15を外側から覆うフタ係止部を設けてもよい。また、本実施の形態1に係るフタ33は、ヒンジ34と対向する位置にツマミを設け、このツマミに指をかけることでフタ33の開閉を容易にしている。なお、本発明のフタ部は、本実施の形態ではフタ33、ヒンジ34、及びフタ係止部35に相当する。
【0029】
次に、以上のように構成された輸液ラインセット1のプライミングについて説明する。プライミングを行う際には、まず、チューブ5の先端に取り付けられた雄コネクター40に、コネクター用キャップ10を接続する。
図4は、実施の形態1に係る雄コネクター40とコネクター用キャップ10との接続状態を示す断面模式図である。なお、図4では、コネクター用キャップ10のフタ33の記載を省略している。
【0030】
雄コネクター40とコネクター用キャップ10とを接続する際には、まず、雄コネクター40の注入管部43を、コネクター用キャップ10のセプタム21に対面させて接近させる。そして、雄コネクター40の注入管部43を、コネクター用キャップ10のセプタム21のスリット22に差し込んでいく。このとき、コネクター用キャップ10の突起12が雄コネクター40の溝部54に嵌合するよう、コネクター用キャップ10を周方向に回転させる。突起12が溝部54に嵌合されると、係止部57の鉤面56と突起12とが接して、突起12が溝部54内に位置規制される。これにより、雄コネクター40とコネクター用キャップ10とが安定した状態で接続される。
【0031】
図4に示す接続状態において、雄コネクター40の注入管部43の先端は、コネクター用キャップ10のセプタム21を突き抜けて、ハウジング11の貯留部13内に突き出た状態である。また、セプタム21の入口側の面に、中間管部44が当接している。注入管部43の外周面は弾性材料で構成されたセプタム21が密着していて、注入管部43とセプタム21との間で液漏れが生じないようになっている。なお、本実施の形態では、接続状態において雄コネクター40の注入管部43の先端がセプタム21を突き抜けて貯留部13内に突き出るものとして説明したが、必ずしも注入管部43の先端が貯留部13内に突き出る必要はなく、スリット22が開いて流体の流通が可能な程度に、注入管部43がハウジング11の内部に挿入されていればよい。
【0032】
次に、プライミングの手技を説明する。
術者は、コネクター用キャップ10のフタ33を開けた状態で、ローラクランプ6を調節してチューブ5内に流体を流す。このようにすると、チューブ5及び雄コネクター40の流路内にある空気は、フィルター31を通ってコネクター用キャップ10の外側へ徐々に排出されていく。そして、チューブ5内を下流側に向かって進んできた流体は、雄コネクター40の基管部42に浸入し、中間管部44を通って注入管部43内に進む。注入管部43の先端開口から出た流体が貯留部13に入ると、チューブ5及び雄コネクター40の流路から空気が排出されたこととなるので、術者は、ローラクランプ6を調整して流体の流れを停止させてプライミングを終了する。
【0033】
プライミングが終了すると、術者はコネクター用キャップ10のフタ33を閉める。このようにすることで、仮にフィルター31がアルコールや界面活性剤に触れて親水化した場合でも、フィルター31を介して薬液等の流体がコネクター用キャップ10の外側に漏出することがない。
続けて、コネクター用キャップ10を雄コネクター40から取り外す。具体的には、コネクター用キャップ10を周方向に回転させるようにしてコネクター用キャップ10の突起12と、雄コネクター40の係止部57との係合状態を解除し、突起12を溝部54から外す。そして、雄コネクター40の注入管部43を、セプタム21から引き抜く。このようにすると、弾性体で構成されたセプタム21の復元力によりスリット22が閉じるため、プライミング時にコネクター用キャップ10の貯留部13に侵入した流体は、貯留部13内に閉じこめられ、コネクター用キャップ10の外側に漏出することがない。
【0034】
以上のように、本実施の形態1に係るコネクター用キャップ10は、ハウジング11の入口側に開口する第1開口部14に、雄コネクター40の注入管部43が挿入されていない状態において貯留部13と外部とを遮断するセプタム21を備え、貯留部13の出口側に開口する第2開口部15には疎水性のフィルター31を備えた。プライミング時には、疎水性のフィルター31を介して空気が排出されるが薬液は貯留部13内に閉じこめられるので、フィルター31を介して薬液が漏出するのを防ぐことができる。また、コネクター用キャップ10を雄コネクター40から取り外した場合でも、プライミング時に貯留部13内に流入した流体をセプタム21により貯留部13内に閉じこめることができる。したがって、プライミング時の液漏れを防ぐことができる。また、プライミング時に雄コネクター40から排出される薬液は、最大でも貯留部13内に収容可能な量のみであるので、プライミング時に無駄になる薬液を低減することができる。
【0035】
また、貯留部13の第2開口部15に取り付けたフィルター31の外側に、フィルター31を液密に覆うフタ33を備えた。このため、プライミング終了後にはフタ33を閉めてフィルター31を覆うことで、プライミング時にコネクター用キャップの貯留部13内に流入した薬液等が疎水性フィルターを親水化した場合でも、疎水性フィルターを介して薬液等が外部へしみ出すのを防ぐことができる。また、プライミング終了後にはフタ33を閉めてフィルター31を覆うことで、プライミング後にフィルター31を介して空気が雄コネクター40内に引き込まれるのを防止できる。
【0036】
また、本実施の形態1では、フィルター31を貯留部13の第2開口部15に着脱可能に取り付けるフィルター取付部32を備えた。フィルター31は、フィルター取付部32により着脱可能であるので、例えばアルコールや界面活性剤に触れるなどして万一フィルター31が親水化した場合でも、フィルター31を容易に交換してプライミングを行うことができる。また、例えば、流通させる液体の特性に応じたフィルターを貯留部13に取り付けることができ、フィルター31を介した流体の漏出をさらに抑制することができる。
【0037】
実施の形態2.
本実施の形態2では、先端側にルアー部を形成した流通管を有する雄コネクターと、これに取り付け可能なコネクター用キャップを例に説明する。なお、本実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一または対応する構成については同一の符号を付す。
【0038】
図5は、実施の形態2に係る雄コネクター80を説明する図であり、(a)は側面を、(b)は断面を示している。雄コネクター80は、略円筒状に形成された外筒部81と、外筒部81の内部先端側に設けられた雄ルアー部82と、外筒部81の先端側の外周に取り付けられたロックリング83とを備えている。なお、図5では、雄コネクター80にチューブ5を接続した状態を示しており、説明上、図面左側を基端側、図面右側を先端側としている。
外筒部81は、ほぼ円筒状であり、チューブ5に接続される基端側部分から先端側に向かって徐々に直径が大きくなり、その先端から前方に向かって延びている。外筒部81の内部は、薬液を通すための流路が形成されていて、その先端は雄ルアー部82の流路と繋がっている。
【0039】
雄ルアー部82は、外筒部81の先端側内周面と液密的に接触するように取り付けられていて、雄ルアー部82の先端82a近傍は、先端に行くほど直径が小さくなった緩やかなテーパーを備えた筒状に形成されている。雄ルアー部82の基端82bは、外筒部81の内部の流路内に位置している。雄ルアー部82は、本発明の注入管部に相当する。
【0040】
ロックリング83の内部は、雄コネクター80の接続先であるコネクター用キャップ60(図6参照)や雌コネクター(図示せず)の接続側端部を収容できる略円筒状に形成されている。すなわち、ロックリング83は、雄ルアー部82との間に、コネクター用キャップ60の接続側端部(セプタム71を取り付けた側のハウジング61の端部。詳細は後述する。)を入れることができる大きさに設定されている。ロックリング83は、軸周り方向に回転可能になっているとともに、雄ルアー部82の軸方向にも移動可能になっている。
また、ロックリング83の内周面における先端部から軸方向における中央部分にかけて、雌ねじ84が形成されている。
【0041】
図6は、実施の形態2に係るコネクター用キャップ60を示す図であり、(a)は正面を、(b)は側面を、(c)は背面を、(d)は縦断面を示している。コネクター用キャップ60は、ほぼ円筒状に形成されたハウジング61と、セプタム71と、フィルター31とを備えている。ハウジング61は、本発明の収容部に相当する。
【0042】
ハウジング61は、合成樹脂等で構成されていてほぼ円筒状であり、軸方向端部に第1開口部64と第2開口部65が設けられている。ハウジング61の第1開口部64側に、雄コネクター90が接続される。ハウジング61の内部空間であって、第1開口部64に保持されたセプタム71(後述する)が占める空間を除く空間を、貯留部63と称する。貯留部63は、薬液等の流体を貯留可能であり、貯留部63の容積は、例えば0.06〜0.1ミリリットル程度である。
ハウジング61の上流側、すなわち、雄コネクター80と接続される側の外周面には、雄コネクター80の雌ねじ84と螺合可能な係合部62が形成されている。本実施の形態2では、ハウジング61は、上流側から順に、小径の先頭部61a、先頭部61aよりも大径の中間部61b、先頭部61aより大径で中間部61bよりも小径の後端部61c、という直径の異なる3つの部位により構成されている。ハウジング61の形状はこれに限定されるものではないが、本実施の形態2では、このように直径を異ならせることによってハウジング61の内壁面に段差を設け、セプタム71の位置決めをしている。
【0043】
セプタム71は、本発明の封止部に相当し、ゴムなどの弾性体で構成されていてハウジング61の第1開口部64に保持されている。セプタム71の中心部には、本発明の挿入路に相当するスリット72が形成されている。スリット72は、本発明の挿入体としての雄コネクター80の雄ルアー部82を挿入可能に形成されている。セプタム71は、雄ルアー部82の挿入の容易性と、雄ルアー部82を引き抜いた後のシール性との両方を適切にする弾性力を有している。セプタム71の軸方向の厚さは、雄コネクター80の雌ねじ84とコネクター用キャップ60の係合部62とを係合状態としたときに、スリット72が開いて雄ルアー部82と貯留部63内とで流体が流通可能となる程度の厚さである。
【0044】
図7は、実施の形態2に係る雄コネクター80とコネクター用キャップ60の接続状態を示す断面模式図である。なお、図7では、コネクター用キャップ60のフタ33の記載を省略している。
雄コネクター80とコネクター用キャップ60とを接続する際には、まず、雄コネクター80の雄ルアー部82の先端開口と、コネクター用キャップ60のセプタム71とを対向させて接近させる。そして、雄コネクター80の雄ルアー部82を、コネクター用キャップ60のセプタム71のスリット72に差し込んでいく。そして、ロックリング83の雌ねじ84と、コネクター用キャップ60の係合部62とを接触させたのち、ロックリング83を所定の軸周り方向に回転させることにより、雌ねじ84と係合部62とを螺合させていく。
【0045】
そして、雌ねじ84と係合部62との螺合が適度な状態になると、図7に示したように、セプタム71のスリット72が押し広げられて、雄ルアー部82とコネクター用キャップ60の貯留部63内との間で流体の流通が可能となる。図7に示す接続状態において、雄ルアー部82の先端は、セプタム71を貫通しておらず貯留部63内に突き出てはいないが、ハウジング61の内部に挿入された状態である。雄ルアー部82の外周面は弾性材料で構成されたセプタム71が密着していて、雄ルアー部82とセプタム71との間で液漏れが生じないようになっている。なお、本実施の形態では、接続状態において雄ルアー部82の先端が貯留部63内に突き出ていないものとして説明したが、雄ルアー部82の先端が貯留部63内に突き出るようにしてもよい。
【0046】
このように構成された雄コネクター80とコネクター用キャップ60を用いても、実施の形態1と同様の手技でプライミングを行うことができ、同様の効果を得ることができる。
【0047】
実施の形態3.
本実施の形態3に係る雄コネクター90は、コネクター用キャップや雌コネクターと接続状態にあるときに開放され、接続されていないときに閉じる弁を備えている。本実施の形態3では、実施の形態2との相違点を中心に説明し、実施の形態2と同一または対応する構成については同一の符号を付す。
【0048】
図8は、実施の形態3に係る雄コネクター90とコネクター用キャップ60の断面模式図であり、(a)は雄コネクター90の弁99が閉じた状態を、(b)は雄コネクター90にコネクター用キャップ60が接続されて弁99が開いた状態を示している。なお、図8では、説明上、図面左側を基端側、図面右側を先端側としている。
雄コネクター90は、略円筒状に形成された外筒部91と、外筒部91の内部先端側に設けられた雄ルアー部92と、外筒部91の先端側の外周に取り付けられたロックリング93とを備えている。
【0049】
外筒部91は、ほぼ円筒状であり、チューブ5に接続される基端側部分から先端に向かって徐々に直径が大きくなり、その先端から前方に向かって延びている。外筒部91の内部は、薬液を満たすための流路が形成されていて、その先端は雄ルアー部92の流路と繋がっている。外筒部91内部の流路は、大径部96と、この大径部96よりも直径の小さい小径部97とが形成されている。すなわち、外筒部91内部の流路は、大径部96と小径部97という直径の異なる少なくとも2つのパートに分かれている。
【0050】
そして、弁99が、大径部96と小径部97との間に周縁部を差し込んだ状態で取り付けられている。すなわち、弁99の周縁部を大径部96と小径部97との間に差し込んで、大径部96と小径部97との間を隔てるように弁99を取り付けている。弁99のほぼ中央位置には、伸縮することにより開口したり閉口したりする伸縮穴99aが形成されている。
【0051】
雄ルアー部92は、外筒部91の先端側内周面と液密的に接触するように取り付けられていて、雄ルアー部92の先端近傍は、先端に行くほど直径が小さくなった緩やかなテーパーを備えた筒状に形成されている。なお、雄ルアー部92は、本発明の注入管部に相当する。
【0052】
雄ルアー部92の外周部の軸方向中程には、外向きフランジ状に張り出した位置規制突起98が設けられている。
【0053】
雄ルアー部92は、軸方向に移動可能であって、図8(a)に示すように、軸方向先端側(先端92a側)に移動した状態のときには弁99の伸縮穴99aが閉じられた状態となる。雄ルアー部92が軸方向基端側(基端92b側)に移動すると、雄ルアー部92の基端92bが弁99を押圧して、弁99が開口する。雄ルアー部92の基端側方向への移動は、位置規制突起98が外筒部91の先端部91aに接することにより規制される。すなわち、本実施の形態3では、外筒部91の先端部91aと雄ルアー部92の位置規制突起98とにより、雄ルアー部92の軸方向の移動が所定範囲内に規制される。
【0054】
ロックリング93の内部は、雄コネクター90の接続先であるコネクター用キャップ60や雌コネクター(図示せず)の接続側端部を収容できる略円筒状に形成されている。すなわち、ロックリング93は、雄ルアー部82との間に、コネクター用キャップ60の接続側端部を入れることができる大きさに設定されている。ロックリング93は、軸周り方向に回転可能になっているとともに、雄ルアー部92の軸方向にも移動可能になっている。
また、ロックリング93の内周面における先端部から軸方向における中央部分にかけて、雌ねじ94が形成されている。
【0055】
このように構成された雄コネクター90とコネクター用キャップ60との接続について説明する。雄コネクター90とコネクター用キャップ60とを接続する際には、まず、雄コネクター90の雄ルアー部92の先端開口と、コネクター用キャップ60のセプタム71とを対向させて接近させる。そして、雄コネクター90の雄ルアー部92を、コネクター用キャップ60のセプタム71のスリット72に差し込んでいく。そして、ロックリング93の雌ねじ94と、コネクター用キャップ60の係合部62とを接触させたのち、ロックリング93を所定の軸周り方向に回転させることにより、雌ねじ94と係合部62とを螺合させていく。
【0056】
雄ルアー部92がコネクター用キャップ60のセプタム71に侵入する際に、雄ルアー部92は基端92b側に向かって押圧される。そして、雌ねじ94と係合部62との螺合が適度な状態になると、雄ルアー部92が軸方向基端側(基端92b側)に移動し、雄ルアー部92の基端92bが弁99を押圧して、弁99の伸縮穴99aを開口させる。
プライミングを行う際には、この状態で行うことができる。
【0057】
プライミングが終了すると、雄コネクター90からコネクター用キャップ60を取り外す。そうすると、基端92b側に押圧されていた雄ルアー部92の押圧力が解除され、弁99の形状が元に戻る復元力(弾性力)により、雄ルアー部92は先端92aの方向に移動し、弁99が閉じる。このため、プライミング後にコネクター用キャップ60を取り外した後でも、雄ルアー部92の先端から薬液等が漏れることがない。
【0058】
以上のように、本実施の形態3によれば、実施の形態2と同様の手技でプライミングを行うことができ、同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施の形態3に係る雄コネクター90は、雄ルアー部92が軸方向先端側に移動したときに閉じられ、雄ルアー部92が軸方向基端側に移動したときに開放される弁99を備えた。このため、プライミング後にコネクター用キャップ60を取り外したときに、雄コネクター90側からの薬液等の液漏れを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 輸液ラインセット、2 流体容器、3 チューブ、4 点滴筒、5 チューブ、6 ローラクランプ、10 コネクター用キャップ、11 ハウジング、12 突起、13 貯留部、14 第1開口部、15 第2開口部、21 セプタム、22 スリット、31 フィルター、32 フィルター取付部、33 フタ、34 ヒンジ、35 フタ係止部、40 雄コネクター、41 流通管、42 基管部、43 注入管部、44 中間管部、51 外筒体、52 底部、53 外筒部、54 溝部、55 係止面、56 鉤面、57 係止部、60 コネクター用キャップ、61 ハウジング、61a 先頭部、61b 中間部、61c 後端部、62 係合部、63 貯留部、64 第1開口部、65 第2開口部、71 セプタム、72 スリット、80 雄コネクター、81 外筒部、82 雄ルアー部、82a 先端、82b 基端、83 ロックリング、84 雌ねじ、90 雄コネクター、91 外筒部、91a 先端部、92 雄ルアー部、92a 先端、92b 基端、93 ロックリング、94 雌ねじ、96 大径部、97 小径部、98 位置規制突起、99 弁、99a 伸縮穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄コネクターに着脱可能に取り付けられるコネクター用キャップであって、
第1開口部及び第2開口部を備えた収容部と、
前記収容部内部とその外部とを隔てるようにして前記第1開口部に保持され、外部から前記収容部内部まで挿入体を挿入させることのできる挿入路が形成された封止部と、
前記第2開口部に保持される疎水性のフィルターと、を備えた
ことを特徴とするコネクター用キャップ。
【請求項2】
前記フィルターの外側から前記第2開口部を液密状態に覆うことのできるフタ部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のコネクター用キャップ。
【請求項3】
前記フィルターを前記第2開口部に着脱可能に取り付けるフィルター取付部を備えた
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクター用キャップ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか記載のコネクター用キャップと、
前記コネクター用キャップの前記封止部の前記挿入路に挿入可能な注入管部を有する雄コネクターと、を備えた
ことを特徴とする輸液ラインの接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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