説明

コネクタ

【課題】樹脂チューブを圧入しやすく、引抜き荷重を高くするコネクタを提供する。
【解決手段】樹脂チューブ30が挿入されるファーツリ14を有するコネクタ10において、コネクタ10根元の基部12から、押圧部20がパイプ部13と離間して間隙21を形成して軸方向に平行に突出している。パイプ部13に対向して押圧部20に押圧面22が形成され、押圧部20の先端には、圧入時に樹脂チューブ30を間隙21に案内する案内面23を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の燃料タンク内の燃料蒸気を燃料タンク外に連通する樹脂チューブの連結部材として用いられるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の燃料タンク内の燃料蒸気を燃料タンク外、たとえばキャニスタに逃がすため、金属パイプと樹脂チューブを樹脂のコネクタで接続している。コネクタは、ファーツリを形成する環状突部を有しており、樹脂チューブがファーツリに圧入されることで、コネクタと樹脂チューブが接続されている。また、燃料タンクの満タンを検知したり、自動車の揺動時にキャニスタに不必要に液体燃料が流れないようにする燃料遮断弁においても、ファーツリ構造が、用いられている。
【0003】
樹脂チューブとコネクタの締結構造においては、樹脂チューブが容易に抜けないよう高い締結力を必要とする。締結力を向上させるために、ゴムホースとコネクタの締結構造では、コネクタ基部からゴムホースを囲むように突設する環状基部から内周にむかって歯状突起部がゴムホースの外周に食い込み、締結力を向上させている(特許文献1)。
【0004】
しかし、食い込みやすいゴムホースであれば、ゴムホースの外周に食い込ませることで、締結力を向上させることができるが、樹脂チューブの場合、外周部から歯状突起部を食い込ませることが難しく、締結力を高めにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−113488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂チューブとコネクタの締結構造において、締結力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のコネクタは、内部に流路を有する基部と、上記流路を連通して上記基部から突設され、樹脂チューブの一端が圧入され外周に環状突部を形成するパイプ部を有するコネクタにおいて、
上記パイプ部と間隙を形成するように上記パイプ部と平行に上記基部から突出している押圧部と、を備え、
上記押圧部は、案内面を有しており、
上記案内面の最外径部の直径は、上記環状突部の最外径部の直径と樹脂チューブの肉厚の2倍の合計よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、請求項1に記載のコネクタにおいて、
上記押圧部が、上記環状突部まで離間して延出されており、上記環状突部に対向して導入面を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のように、パイプ部の環状突部の最外径部より外周から内周まで案内面を有した押圧部を有することで、樹脂チューブをパイプ部に挿入したときに、樹脂チューブが最外径部を超え、案内部にあたり、パイプ部と押圧部で形成される間隙に案内され、かしめられるように収納される。押圧部により、樹脂チューブが、かしめられることによって、環状突部の位置の樹脂チューブも締め付けられ、樹脂チューブとファーツリの引き抜き荷重が向上し、締結力が向上する。また、軸対称で押圧部が設けられているため、樹脂チューブは、楕円に変形し、さらに、樹脂チューブと押圧部との摩擦力も増えるため、コネクタに対し回転しにくくなる。
【0010】
さらに、環状突部と離間して覆うように押圧部が突設されている。押圧部は導入面が環状突部に対向するように形成されており、樹脂チューブが挿入時に環状突部により拡径しても、樹脂チューブが導入面に当接し、より確実にパイプ部と押圧部の間隙に樹脂チューブを案内する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例に係るコネクタと樹脂チューブの締結状態での断面図である。
【図2】押圧部20の付近を示す説明図である。
【図3】樹脂チューブ30を圧入したときの押圧部20の付近の説明図である。
【図4】本発明の第 1 実施例に係るコネクタを上面視した図である。
【図5】図4におけるA−A断面図である。
【図6】第2実施例にかかる押圧部20B付近を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の第1実施例に係るコネクタと樹脂チューブの締結状態での断面図である。図示するように、コネクタ10に樹脂チューブ30が圧入され締結されている。コネクタ10は流路11を内周に形成している基部12と、基部12から内周に流路を形成するパイプ部13が突出した形状で構成されている。
【0013】
パイプ部13の外周は、第1環状突部15、第2環状突部16、第3環状突部17からなるファーツリ14となっている。第1環状突部15は、パイプ部13の先端に位置し、先端から徐々に拡径していきパイプ部13に対して略直角で内周方向へ縮径する山型となっており、樹脂チューブ30の圧入時は挿入しやすく、樹脂チューブ30が引き抜かれる方向に力が加わっても抜けにくくなっている。第2環状突部16は、第1環状突部15より根元側であって、第1環状突部15と間にOリングを収納できるだけの離れた位置に、形成されている。第2環状突部16よりも根元側にある第3環状突部17は、第1環状突部15と同様の形状であるが、すでに樹脂チューブ30が拡径した状態で圧入されてくるので、挿入方向の面とパイプ部13の中心軸とのなす角度は第1環状突部15よりも鋭角でも良い。
【0014】
図2、図4に示すとおり、コネクタ10の基部12より、パイプ部13に離間して押圧部20が軸方向に突設している。本実施例では、押圧部20は、軸対称の位置に2つ設けられている。押圧部20とパイプ部13の間には、間隙21が形成されており、押圧部20の間隙21側には、パイプ部13の中心軸と平行に押圧面22を形成している。間隙21は樹脂チューブ30の厚み±10%以内に設計されている。図5に示すように押圧部20は、軸方向からみると長方形となっている。
【0015】
さらに、図2に示すとおり、押圧部20の先端は、第3環状突部17の最外径部18の外周側から最外径部18の内周側までパイプ部13に向いて傾斜している略平面の案内面23を形成している。図3に示すとおり、案内面23の最外径部24の直径φ1と、第3環状突部17の最外径部18の直径φ2と、樹脂チューブ厚さtとの関係は、φ1>φ2+2tとなっている。
【0016】
第1実施例の作用・効果
図1に示すように、樹脂チューブ30は、樹脂チューブ30の内径よりも大きいファーツリ14を有するパイプ部13に圧入される。圧入初めでは、樹脂チューブ30が第1環状突部15により徐々に拡径されながら挿入されていく。さらに、樹脂チューブ30が圧入され、第2環状突部と第3環状突部を越えると、押圧部20の案内面23に当接する。パイプ部13に向かって傾斜している案内面23により、樹脂チューブが間隙21に案内される。このとき、案内面23の最外径部24の直径φ1と、第3環状突部17の最外径部18の直径φ2と、チューブ厚さtとの関係が、φ1>φ2+2tとなっているため、挿入された樹脂チューブ30が確実に案内面23に当接され、間隙21案内される。
【0017】
また、押圧面22を有する押圧部20により、樹脂チューブ30を縮径することで、樹脂チューブ30内周方向への緊迫力が増え、第1環状突部15や第3環状突部への引っかかりが強くなり、樹脂チューブ30がコネクタ10に対する引き抜き荷重が増加する。さらに、樹脂チューブ30のコネクタ10に対する締付け力が向上するので、樹脂チューブ30が回転しにくくなる。また、軸対称で押圧部20が設けられているため、樹脂チューブ30は、楕円に変形し、また、樹脂チューブ30に対する摩擦力も増えるため、コネクタ10に対し回転しにくくなる。間隙21の幅が樹脂チューブ30の肉厚よりやや大きい場合は、樹脂チューブ30の挿入性がよく、逆に狭い場合は、押圧部20による樹脂チューブ30に対するカシメ効果が増え、引抜き荷重が増大する。
【0018】
また、軸対称で対向して一対で押圧部20が設けられているため、製造過程においても、型割が容易で、特殊な金型を使わず、従来のコネクタと同様に成形できる。
【実施例2】
【0019】
図6は、第2実施例にかかる押圧部20B付近を示す説明図である。第1実施例に対し、第2実施例では、押圧部20Bが、第3環状突部17Bと離間して覆うように軸方向に延出している。第3環状突部17Bに径方向で対向している箇所には導入面25Bが形成されている。樹脂チューブ30の圧入時には、第3環状突部17Bにより外周方向へ開こうとしている樹脂チューブ30が導入面25Bにより内周方向へ押圧され、案内面23Bに倣い、21Bに案内されていく。圧入完了時には、押圧面22Bにより押圧されている。延出された押圧部20Bは、樹脂チューブ30の開きを抑制し、さらに、第1実施例よりも早く樹脂チューブ30を案内でき、確実に圧入できる。
【0020】
なお、この発明は上記実施例に限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0021】
(1)上記実施例では、ファーツリ14が、第1環状突部15、第2環状突部16、第3環状突部17で構成されているが、これに限らず、1つの環状突部のみで構成してもよい。
【0022】
(2)上記実施例では、図5に示すように、押圧部20の径方向断面は長方形としたが、これにかぎらず、型割りが可能な円形、長円形、三角形であっても良い。
【符号の説明】
【0023】
10 コネクタ
11 流路
12 基部
13 パイプ部
14 ファーツリ
15 第1環状突部
15B 第1環状突部
16 第2環状突部
16B 第2環状突部
17 第3環状突部
17B 第3環状突部
18 最外径部
20 押圧部
21 間隙
22 押圧面
22B 押圧面
23 案内面
23B 案内面
24 最外径部
25B 導入面
30 樹脂チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路(11)を有する基部(12)と、上記流路と連通して上記基部から突設され、樹脂チューブ(30)の一端が圧入され外周に環状突部(15,16,17)を形成するパイプ部(13)を有するコネクタ(10)において、
上記パイプ部(13)と間隙(21)を形成するように上記パイプ部(13)の中心軸と平行に上記基部(12)から突出している押圧部(20)と、を備え、
上記押圧部(20)は、案内面(23)を有しており、
上記案内面の最外径部(24)の直径をφ1とし、上記環状突部(15,16,17)の最外径部(18)の直径をφ2とし、樹脂チューブの肉厚をtとしたときに、φ1>φ2+2tを満足することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
上記押圧部(20B)が、上記環状突部(17B)まで離間して延出されており、上記環状突部(17B)に対向して導入面(24B)を有しているコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−276072(P2010−276072A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127444(P2009−127444)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】