説明

コレステリック液晶光学本体およびその製造方法

【課題】透過偏光の吸収率が低く、広範囲の波長にわたって一様に動作する反射偏光子を提供すること。
【解決手段】光学本体は、コレステリック液晶材料を用いて作製されることができる。コレステリック液晶材料を含む少なくとも2種類の異なるコーティング組成物が、基板上にコーティングされる。各コーティング組成物の少なくとも一部は、光学本体の厚さ寸法に沿ったピッチの変化を形成するために、相互拡散させることができる。例えば、光学ディスプレイにおいて、反射偏光子としてこの光学本体を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶を含む光学本体に関する。本発明はまた、2層以上のコレステリック液晶またはコレステリック液晶前駆物質の同時コーティングによって作製される反射型光学偏光子に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子およびミラーなどの光学素子は、液晶ディスプレイ(LCD)をはじめとするさまざまな用途に有用である。液晶ディスプレイは、2種類に大きく分類される。それらは光がディスプレイパネルの背後から提供される背面照射型(例えば、透過型)ディスプレイおよび光がディスプレイの前面から提供される(例えば周辺光)前面照射型(例えば、反射型)ディスプレイである。例えば、薄暗い照明状態の下で、背面照射されたり、明るい周辺光の下で読んだりすることができる半透過型ディスプレイを作製するために、これらの2つのディスプレイモードを結合することができる。
【0003】
従来の背面照射型LCDディスプレイは一般に、吸収偏光子を用い、10%未満の光の透過率を有することができる。従来の反射型LCDディスプレイはまた、吸収偏光子に基づき、一般に25%未満の反射率を有する。これらのディスプレイの低い透過率または反射率は、ディスプレイのコントラストおよび明るさを低減するため、高い消費電力が必要となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反射偏光子は、ディスプレイおよび他の用途に利用するために開発されてきた。反射偏光子は、1つの偏光の光を優先的に透過し、直交する偏光を有する光を優先的に反射する。反射偏光子は、比較的大量の光を吸収することなく、光を透過および反射することが好ましい。反射偏光子は透過偏光のために10%未満の吸収率を有することが好ましい。大半のLCDは、広範囲の波長で動作するため、反射偏光子も一般にその広範囲の波長にわたって動作しなければならない。
【0005】
背面照射型ディスプレイにおいて、偏光子によって背面照明に向かって透過されるのではなく、光の偏光を反射することによって光の利用効率を増大させるために、反射偏光子を用いることができる。バックライトは、反射偏光子による透過に関して、再循環される光の偏光状態を変換する。このような光の再循環は、ディスプレイ全体の明るさを増大させることができる。反射型ディスプレイおよび半透過型ディスプレイにおいて、反射偏光子は、光の通過偏光に関して、大部分の吸収偏光子より吸光率および色度が低く、ディスプレイの明るさを50%まで増大させることができる。少なくとも一部の用途にとって重要である反射偏光子の特性としては、例えば、偏光子の厚さ、波長範囲にわたる反射の一様性、所定の波長範囲にわたって反射される光の相対的な量などが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、本発明は、コレステリック液晶を含む光学本体、それらの作製方法のほか、反射偏光子など光学素子におけるコレステリック液晶の使用に関する。一実施形態は、光学本体の作製方法である。基板と第2のコーティング組成物との間に第1のコーティング組成物を有する状態で、第1のコーティング組成物および第2のコーティング組成物が基板上にコーティングされる。第1のコーティング組成物および第2のコーティング組成物は異なり、コレステリック液晶化合物およびコレステリック液晶モノマーから選択される少なくとも1種類のコレステリック液晶材料を含む。第2のコーティング組成物の少なくとも一部が第1のコーティング組成物の一部と相互拡散する。相互拡散後、少なくとも1層のコレステリック液晶層は、第1のコーティング組成物および第2のコーティング組成物から形成される。第1のコーティング組成物および第2のコーティング組成物のコーティングは、個別または同時に行うことができる。同時コーティング方法としては、例えば、スライドコーティング、カーテンコーティング、押出バーコーティングなどが挙げられる。さらなるコーティング組成物(例えば、第3のコーティング組成物または第4のコーティング組成物)もコーティングすることができ、任意に先立つコーティング組成物と少なくとも部分的に相互拡散させることができる。例えば、ディスプレイ媒体と結合される場合には、光学ディスプレイを作製するために、光学本体を反射偏光子として用いることができる。
【0007】
別の実施形態は、光学本体の別の作製方法である。第1のコーティング組成物が基板上に配置され、第2のコーティング組成物が第1のコーティング組成物上に配置される。各コーティング組成物は、溶媒と、コレステリック液晶ポリマーおよびコレステリック液晶モノマーから選択されるコレステリック液晶材料と、を含む。第2のコーティング組成物の少なくとも一部が、第1のコーティング組成物の少なくとも一部と相互拡散される。相互拡散後、両方のコーティング組成物から実質的にすべての溶媒が除去される。これには、例えば、溶媒を気化させることまたはポリマー組成物を形成するために溶媒を反応させることを挙げることができる。少なくとも1層のコレステリック液晶層は、第1のコーティング組成物および第2のコーティング組成物から形成される。コレステリック液晶層は、層の厚さ寸法の少なくとも一部に沿って、値域に関して実質的に連続的に変化するピッチを有することができる。
【0008】
さらに別の実施形態は、コレステリック液晶層を含む光学本体である。コレステリック液晶層の厚さ寸法の少なくとも一部に沿って、層のピッチが第1のピッチから始まり、第2のピッチまで増大し、第3のピッチまで減少し、第4のピッチまで増大する。光学ディスプレイにおいて、反射偏光子としてこの光学本体を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】均一なピッチを有する単独のコレステリック液晶層に関する工程インデックス厚さ対工程数の計算グラフである。
【図2】図1のコレステリック液晶層に関する計算した反射率スペクトルである。
【図3】異なるピッチを有する2層のコレステリック液晶層に関する工程インデックス厚さ対工程数の計算グラフである。
【図4】図3のコレステリック液晶層に関する計算した反射率スペクトルである。
【図5】異なるピッチを有する3層のコレステリック液晶層に関する工程インデックス厚さ対工程数の計算グラフである。
【図6】図5のコレステリック液晶層に関する計算した反射率スペクトルである。
【図7】変化するピッチを有するコレステリック液晶層に関する工程インデックス厚さ対工程数の計算グラフである。
【図8】図7のコレステリック液晶層に関する計算した反射率スペクトルである。
【図9】基板上に2種類のコレステリック液晶組成物を実質的に同時にコーティングするための方法および装置の一実施形態を示す概略図である。
【図10】基板上に2種類のコレステリック液晶組成物を実質的に同時にコーティングするための方法および装置の第2の実施形態を示す概略図である。
【図11】本発明による少なくとも1層のコレステリック液晶層に関して、光学本体の第1の実施形態の厚さ寸法に沿ったピッチの概略的なグラフである。
【図12】本発明による少なくとも1層のコレステリック液晶層に関して、光学本体の第2の実施形態の厚さ寸法に沿ったピッチの概略的なグラフである。
【図13】本発明による少なくとも1層のコレステリック液晶層に関して、光学本体の第3の実施形態の厚さ寸法に沿ったピッチの概略的なグラフである。
【図14】本発明による少なくとも1層のコレステリック液晶層に関して、光学本体の第4の実施形態の厚さ寸法に沿ったピッチの概略的なグラフである。
【図15】本発明による少なくとも1層のコレステリック液晶層に関して、光学本体の第5の実施形態の厚さ寸法に沿ったピッチの概略的なグラフである。
【図16】本発明による液晶ディスプレイの一実施形態の概略図である。
【図17】本発明による液晶ディスプレイの別の実施形態の概略図である。
【図18】基板上に2種類のコレステリック液晶組成物を実質的に同時にコーティングするための方法および装置の第3の実施形態の概略図である。
【0010】
本発明の上述の概要は、本発明の開示された各実施形態またはすべての実装例を示すことを意図しているわけではない。さらに具体的に以下に示す図および詳細な説明により、これらの実施形態は具体化される。
【0011】
本発明は、添付図面に関して、本発明のさまざまな実施形態に関する以下の詳細な説明を考慮すれば、より完全に理解することができると考えられる。
【0012】
本発明は、さまざまな修正および代替形態を容易に行うことができ、本発明の明細は、図面の例によって示され、詳細に説明される。しかし、説明された特定の実施形態に本発明を限定することを意図しているわけではないことを理解すべきである。逆に言えば、発明の精神および範囲を逸脱することなく、すべての修正物、等価物、代替物を網羅することを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、光学本体(光学フィルムなど)およびその作製のほか、反射偏光子および光学ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)などの光学素子における光学本体の使用に適用可能であると考えられる。本発明はまた、コレステリック液晶を含む光学本体にも関する。本発明は限定されるわけではなく、本発明のさまざまな態様に関して、以下に提示される実施例の説明によって理解が得られるであろう。
【0014】
「ポリマー」なる語は、ポリマー、コポリマー(例えば、2種類以上の異なるモノマーを用いて形成されるポリマー)およびそれらの混合物のほか、例えば、同時押出し成形またはエステル交換反応をはじめとする混和性配合物において形成されることができるポリマーまたはコポリマーを包含すると理解すべきである。特に指定のない限り、ブロックコポリマーおよびランダムコポリマーの両方が含まれる。
【0015】
「ポリマー材料」なる語は、上述のようなポリマーおよび例えば、酸化防止剤、安定剤、オゾン分解防止剤、可塑剤などの他の有機添加剤または無機添加剤を包含すると理解されたい。
【0016】
「相互拡散」「相互拡散する」などの語は、本願明細書で用いられるとき、いずれかの層または両方の層からの種が他の層の中で拡散する2層間の分子または高分子の拡散を指す。
【0017】
特に指定のない限り、すべての屈折率の値は、632.8nmの光に関して記録される。
【0018】
「偏光」なる語は、平面偏光、円偏光、楕円偏光、または光のビームの電気ベクトルがランダムに方向を変化させるのではなく、一定の配向を維持するか、または体系的な方法で変化するかのいずれかである、任意の他のランダムではない偏光状態を指すことができる。平面偏光では電気ベクトルは単独面に維持されるのに対し、円偏光または楕円偏光では光のビームの電気ベクトルは体系的な方法で回転する。
【0019】
反射偏光子は、1つの偏光の光を優先的に透過し、残りの光を反射する。反射型平面偏光子の場合には、1つの平面で偏光される光が優先的に透過され、直交する平面で偏光される光は優先的に反射される。円反射偏光子の場合には、ある点で円偏光される光は、時計回りであっても、反時計回りであっても(例えば、右回りまたは左回り)よく、優先的に透過され、対向する点で偏光される光は優先的に反射される。円偏光子の1つのタイプとしては、コレステリック液晶偏光子が挙げられる。
【0020】
「コレステリック液晶化合物」なる語は、コレステリック液晶相を形成することができる化合物(ポリマーを含む)を指す。
【0021】
コレステリック液晶化合物
コレステリック液晶化合物は、一般にキラル分子であり、ポリマーであってもよい。そのような化合物は、一般に本質的には掌性である(例えば、鏡面を持たない)分子単位および本質的にはメソゲンである(液晶相を呈する)分子単位を含む。コレステリック液晶化合物は、液晶のディレクタ(すなわち、平均的局所分子配列方向における単位ベクトル)がディレクタに垂直である寸法に沿って螺旋状に回転するコレステリック液晶相を有する化合物を含む。コレステリック液晶化合物または、キラルネマチック液晶化合物ともいう。コレステリック液晶化合物のピッチは、(ディレクタに垂直な方向において)ディレクタが360°回転するのにかかる距離である。この距離は一般に、100nm以上である。
【0022】
一般に、キラル化合物(例えば、コレステリック液晶化合物)をネマチック液晶化合物と混合するかまたは他の方法で結合することによって、コレステリック液晶化合物のピッチを変更することができる。ピッチは、キラル化合物およびネマチック液晶化合物の重量による相対比に左右される。ピッチは、所定の光のおよそ波長程度であるように一般に選択される。ディレクタの螺旋状のねじれは、誘電テンソルに空間的に周期的な変動を生じ、今度は、光の波長選択的反射を生じる。例えば、選択的反射が光の可視波長、紫外波長または赤外波長にピークとなるように、ピッチを選択することができる。
【0023】
コレステリック液晶ポリマーを含むコレステリック液晶化合物は、一般に公知であり、通常は光学本体を作製するために用いることができるこれらの材料のいずれかである。適切なコレステリック液晶ポリマーの一例としては、米国特許第4,293,435号および米国特許第5,332,522号に記載されている。しかし、他のコレステリック液晶化合物も用いることができる。特定の用途または光学本体の場合には、一般に、コレステリック液晶化合物は、例えば、屈折率、ピッチ、加工可能性、透明度、色、所定の波長における低い吸光率、他の化合物(例えば、ネマチック液晶化合物)との互換性、作製の容易さ、液晶ポリマーを作製するための液晶化合物またはモノマーの利用可能性、レオロジ、硬化方法および要件、溶媒除去の容易さ、物理的特性および化学的特性(例えば、可撓性、引張り強さ、耐溶媒性、耐ひっかき性、および相転移温度)、および浄化の容易さをはじめとする1つ以上の要因に基づいて選択される。
【0024】
コレステリック液晶ポリマーは一般に、メソゲン基(例えば、コレステリック液晶相の形成を促進するためのロッド状構造物を一般に有する硬質基)を含むことができるキラル(またはキラルおよびアキラルの混合物)分子(モノマーを含む)を用いて作製される。メソゲン基としては、例えば、p−置換環状基(例えば、p−置換ベンゼン環)が挙げられる。これらのメソゲン基は、スペーサによってポリマーバックボーンに任意に接合される。スペーサは、例えば、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、アルキン、エステル、アルキレン、アルカン、エーテル、チオエーテル、チオエステル、およびアミドなどを有する官能基を含み得る。
【0025】
適切なコレステリック液晶ポリマーとしては、硬質コモノマーまたは軟質コモノマーによって任意に離隔されるメソゲン基を含むキラルポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリシロキサンまたはポリエステルイミドのバックボーンが挙げられる。他の適切なコレステリック液晶ポリマーは、キラルメソゲン側鎖基を有するポリマーバックボーン(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリオレフィンまたはポリマロネートバックボーン)を有する。側鎖基は、可撓性を提供するために、アルキレンまたは酸化アルキレンスペーサなどのスペーサによってバックボーンから任意に離隔される。
【0026】
一般に、コレステリック液晶層を形成するために、コレステリック液晶組成物が面上にコーティングされる。コレステリック液晶組成物は、コレステリック液晶ポリマーを形成するために用いる(例えば重合または架橋する)ことができる少なくとも1種類のキラル化合物(例えば、コレステリック液晶化合物)またはキラルモノマー(コレステリック液晶モノマー)を含む。コレステリック液晶組成物はまた、ネマチック液晶ポリマーを形成するために用いることができる少なくとも1種類のネマチック液晶化合物またはネマチック液晶モノマーを含むことができる。コレステリック液晶組成物のピッチを修正するために、ネマチック液晶化合物またはネマチック液晶モノマーを用いることができる。コレステリック液晶組成物はまた、例えば、硬化剤、架橋剤、または紫外線、赤外線、オゾン分解防止剤、酸化防止剤または可視光吸収染料などの1種類以上の加工添加剤を含むことができる。
【0027】
コレステリック液晶組成物はまた、以下のもの、すなわち、コレステリック液晶、コレステリック液晶モノマー、ネマチック液晶、ネマチック液晶モノマーまたはそれらの組合せのいずれかのうち、2つ以上の異なるタイプを用いて形成されることができる。コレステリック液晶組成物における材料の重量による特定の比は、一般に、少なくとも部分的にコレステリック液晶層のピッチを決定する。
【0028】
コレステリック液晶組成物はまた、一般に溶媒を含む。「溶媒」なる語は、本願明細書で用いられるとき、分散剤および2種類以上の溶媒と分散剤との組合せも指す。場合によっては、1種類以上の液晶化合物、液晶モノマーまたは加工添加剤もまた、溶媒として作用する。例えば、溶媒を気化させるために組成物を乾燥させることによって、または溶媒の一部を反応させる(例えば、液晶ポリマーを形成するために、溶媒和液晶モノマーを反応させる)ことによって、コーティング組成物から溶媒を実質的に除去することができる。
【0029】
コーティング後、コレステリック液晶組成物は、液晶層に変換される。例えば、熱、放射線(例えば、化学線)、光(例えば、紫外光、可視光または赤外光)、電子ビームまたはこれらの組合せまたは類似の技術を用いた溶媒の気化、コレステリック液晶化合物またはコレステリック液晶モノマーの架橋またはコレステリック液晶モノマーの硬化(例えば重合)をはじめとするさまざまな技術によって、この変換を実現することができる。
【0030】
従来の処理を用いて、コレステリック液晶相を実現することができる。例えば、コレステリック液晶相の作製方法は、延伸された基板上にコレステリック液晶組成物を蒸着することを含む。例えば、延伸技術またはレーヨンまたは他の布で擦ることを用いて、基板を延伸することができる。蒸着後、コレステリック液晶組成物は、組成物のガラス転移温度以上に加熱され、液晶相となる。次に、ガラス転移温度未満に組成物が冷却されると、液晶相が固定されたままとなる。
【0031】
コレステリック液晶光学本体
光波長の特定の帯域幅にわたって一方の円偏光(例えば、左円偏光または右円偏光)を有する光を実質的に反射し、他方の円偏光(例えば、右円偏光または左円偏光)を有する光を実質的に透過する層にコレステリック液晶組成物(ピッチを修正するために添加される追加のネマチック液晶化合物またはモノマーの有無にかかわらず)を形成することができる。この特性は、コレステリック液晶材料のディレクタに対する垂直入射で指向される光の反射率または透過率を表す。他の角度で指向される光は一般に、コレステリック液晶材料によって楕円偏光される。コレステリック液晶材料は一般的に、以下に説明するように垂直入射光に対して特徴付けられるが、既知の技術を用いて、垂直入射でない光に関してこれらの材料の対応を決定することができることを認識されたい。
【0032】
例えば、反射偏光子などの光学本体を作製するために、単独または他の層または素子との併用でコレステリック液晶層を用いることができる。コレステリック液晶偏光子は、あるタイプの反射偏光子において用いられる。コレステリック液晶偏光子のピッチは、多層反射偏光子の光学層の厚さに類似している。ピッチおよび光学層の厚さはそれぞれ、コレステリック液晶偏光子および多層反射偏光子の中心波長を画定する。コレステリック液晶偏光子の回転ディレクタは、多層反射偏光子において同様の光学層を有する複数の層の使用と類似した光学反復単位をなす。
【0033】
コレステリック液晶層によって反射される光の中心波長λ0およびスペクトル帯域Δλは、コレステリック液晶のピッチpに左右される。中心波長λ0は、
λ0=0.5(no+ne)p
によって近似される。式中、noおよびneは、液晶のディレクタに平行に偏光される光(ne)および液晶のディレクタに垂直に偏光される光(no)に関するコレステリック液晶の屈折率である。スペクトル帯域幅Δλは、
Δλ=2λ0(ne−no)/(ne+no)=p(ne−no
によって近似される。
【0034】
図1は、一定のピッチを有するコレステリック液晶組成物の層に関する工程インデックス厚さ(nm)対工程数の計算グラフを示している。工程インデックス厚さは、材料の屈折率に関して2分の1の波長板に相当する材料の厚さに対応している。図1は、光の1つの偏光が2つの異なる屈折率neおよびnoを受けることを示している。高い工程インデックス厚さおよび低い工程インデックス厚さの和は、ピッチに相当する。工程数は、光の偏光の場合の1つの屈折率の領域から第2の屈折率の領域への移行を示している。2つの工程は、ピッチの1つの回転に相当する。
【0035】
図2は、図1のコレステリック液晶層によって反射される光の偏光に関して波長の関数として計算された反射率スペクトルである。コレステリック液晶ポリマーの単独層のスペクトル帯域幅(2分の1ピークの高さにおける全幅として測定される)は、一般に約100nm以下である。これにより、実質的に100nmより大きい可視光領域全体(約400nm〜700nm)または任意の他の波長領域にわたる反射率が望ましい場合には、コレステリック液晶組成物の有用性に限界がある。
【0036】
図3は、重ねて配置される2層のコレステリック液晶層を有する反射偏光子に関するピッチ層厚さ(nm)対ピッチ層数の計算グラフを示している。2層は光の異なる波長を反射するように、異なるピッチを有する。図4は、2層構造物を用いた光の反射偏光に関する計算した反射率スペクトルである。図4に示されているように、2層構成は、全体の帯域幅にわたってより高い反射率を生じるが、反射率はほとんど一様ではない。具体的に言えば、2層構造物は、約400〜500nmと約600〜700nmの2つの個別の反射帯域を含む。一様でない反射により、通常、光学フィルムが着色されたように見える。透過光から観測されるとき、色は一般に、低い方の反射率の波長に相当する。反射光も着色され、一般に高い方の反射される波長に相当する。
【0037】
図5は、3層の積層を有する反射偏光子に関するピッチ層厚さ(nm)対ピッチ層数の計算グラフを示している。3層は光の異なる波長(例えば、赤色光、緑色光、青色光)を反射するために、異なるピッチを有する。図6は、この3層構造を用いた光の反射偏光に関する計算した反射率スペクトルである。図6に示されているように、3層構成は、全体の帯域幅にわたってより高い反射率を生じ、この反射率は2層構造より一様である。著しく低い反射率の領域も依然として存在し、着色しているように見えるフィルムを生じ得る。
【0038】
図7は、コレステリック液晶のピッチが反射偏光子の厚さ寸法の少なくとも一部に沿った値域にわたって単調に増大する反射偏光子に関する、ピッチ層厚さ(nm)対ピッチ層数の計算グラフを示している。図8は、この段階的なピッチ構造の場合の光の反射偏光に関する計算した反射率スペクトルを示している。この場合には、スペクトルは、前例の場合より著しくなだらかである可能性があり、全体の反射率はより高く、より一様な反射の結果として着色は薄いことが多い。
【0039】
図7によって示された構造物は、異なるピッチを有する2層の既に形成されたコレステリック液晶層(例えば、コレステリックおよびネマチック液晶化合物または液晶モノマーの重量による異なる比の異なる組成物を有する層)を積層または別の方法で積み重ねることによって既に形成されている。これらの2層は、層の間の液晶材料を拡散させるために加熱される。2層間の材料の拡散は一般に、2層の個別のピッチ間の領域にわたって変化する層のピッチを生じる。
【0040】
しかし、この方法は、各層を個別に形成すること(例えば、各層を個別に乾燥または硬化させること)と、層を積み重ねる(例えば、積層する)ことと、次に2層間の液晶材料の拡散を生じるために層を加熱することと、をはじめとする相当数の処理工程を必要とする。これはまた、特に、2層の既に形成された液晶層の間の拡散に必要な時間を考慮すれば、相当の処理時間も必要である。
【0041】
コレステリック液晶光学本体を作製するための新たな方法
コレステリック液晶光学本体を作製するための新たな方法は、基板上に少なくとも2種類の異なるコレステリック液晶組成物をコーティングすることと、組成物をコレステリック液晶層に変換する前に、組成物間の層間拡散を可能にすることと、を含む。組成物のコレステリック液晶層への変換は、例えば、溶媒に基づくのであれば、溶媒のすべてを実質的に除去すること、または液晶組成物を硬化させることによって、実現される。次に、層は加熱された後、冷却されることによって、コレステリック液晶相における層を固定する。この方法は、液晶組成物間でより急速に混合することができ、基板上で組成物をコーティングすること、組成物において材料の少なくとも一部を相互拡散させることができるようにし、相互拡散後、組成物を乾燥または硬化させる工程以外のさらなる処理工程を行うことなく、実現されることができる。乾燥は、組成物の部分的な硬化または完全な硬化の前または後に行うことができる。
【0042】
この方法は、一般に、基板(例えば、ポリマー基板または予め形成された液晶層)上にコレステリック液晶化合物または液晶モノマーを含む少なくとも2種類の異なる液晶組成物をコーティングすることを含む。さまざまな技術または装置を用いて、これを行うことができる。一実施形態において、2種類以上のコーティング組成物が、基板上に実質的に同時にコーティングされる。基板上に2種類以上のコーティング組成物を実質的に同時にコーティングする方法としては、例えば、スライドコーティング、カーテンコーティング、押出バーコーティングなどが挙げられる。2層以上を同時にコーティングするための適切な方法およびこれらの方法を行うための適切な装置の実例については、例えば米国特許第3,508,947号、同第3,996,885号、同第4,001,024号、同第5,741,549号に開示されている。
【0043】
図9は、基板上に2種類以上のコーティング組成物の実質的に同時のコーティングを実現するための一方法および装置を示している。押出バーコーティング装置100は、基板200がコーティングヘッド104を通り過ぎるように搬送するキャリア102(例えば、ローラ、鋳造ホイール、リールまたは連続ウェブキャリア)を具備している。2種類以上のコーティング組成物202および204が、コーティングヘッド104のスロット106を介して、基板200上に実質的に同時にコーティングされる。コーティング組成物202および204は、コーティングヘッド104の供給ポート108および110によって外部から供給される。基板200の速度およびコーティング組成物の流速は、組成物202および204のそれぞれの所望の厚さを提供するために制御される。一般に、ギャップ112により真空を適用することによって、コーティングの品質および均一性を向上させることができる。
【0044】
コーティング組成物202および204は、例えばアクリレートまたは他の光硬化可能な官能基などの例えば紫外硬化可能な官能基を有する化合物を含むことができる。このような化合物が存在するとき、例えば、紫外線ランプなどの放射線源206を用いて適切な光硬化エネルギーを印加することによって、組成物202と204との間の相互拡散を制御することができる。その代わり、位置206’に放射線源を配置することによって、より多くの相互拡散を可能にするためにより長い時間を提供することが可能となる。また、放射線源206の強度または基板200の速度を変更することによって、相互拡散の程度を制御することが可能となる。図9に示されているように、コーティング組成物202および204は、キャリア102から引出されることができ、光源207、207’のいずれかまたは両方を用いて、一方の側面または両側面から光によって任意に照射されることができる。
【0045】
複数の層を塗布するために、スライドコーティングも用いることができる。適切なスライドコーティング装置および方法の一例は、図10に示されている。スライドコーティング装置300は、開口部304,306を有するスライド面302を具備するコーティングヘッド302を有し、開口部304、306を通って、第1のコーティング組成物350および第2のコーティング組成物352がそれぞれ分配される。スライド面は一般に、約25°〜30°またはそれ以上傾斜しているが、所望であれば、他の角度を用いることができる。次に、これらのコーティング組成物350,352が、スライドコーティング装置を通り過ぎて移動する基板354上にコーティングされる。この場合も先の場合と同様に、ギャップ308によって真空を適用することができ、コーティングの品質および均一性を向上させる。
【0046】
コーティング組成物350および352は、例えばアクリレートまたは他の光硬化可能な官能基などの例えば紫外硬化可能な官能基を有する化合物を含むことができる。このような化合物が存在するとき、例えば、紫外線ランプなどの放射線源356および358を用いて適切な光硬化エネルギーを印加することによって、組成物350と352との間の相互拡散を制御することができる。放射線源356および358のいずれか一方または両方が用いられる。位置358’に放射線源358を配置することによって、より多くの相互拡散を可能にするためにより長い時間を提供することが可能となる。また、放射線源356または358の強度を修正することによって、相互拡散の程度を制御することが可能となる。図12に示されているように、コーティング組成物350、352は、キャリア354から引出されることができ、光源357、357’のいずれかまたは両方を用いて、一方の側面または両側面から光によって任意に照射されることができる。
【0047】
多層コーティングを施すために用いることができる別のコーティング方法が、カーテンコーティングである。図18を参照すると、コーティングヘッド401は、開口部404、406を有する面402を具備し、開口部404、406を通って、第1のコーティング組成物450および第2のコーティング組成物452がそれぞれ分配される。次に、混合されたコーティング組成物が、カーテン457として移動中の基板462(例えば、ポリマーフィルム)上に落とすことができる。別の実施形態において、コーティングヘッドは、コーティングヘッドを離れる際に、コーティング組成物が落ち始めるようにすることができる実質的に垂直な面に沿った開口部を有する。
【0048】
コーティング組成物452および454は、例えばアクリレートまたは他の光硬化可能な官能基などの例えば紫外硬化可能な官能基を有する化合物を含むことができる。このような化合物が存在するとき、例えば、紫外線ランプなどの1つ以上の放射線源(例えば、1つ以上の放射線源453、456、458、460)を用いて適切な光硬化エネルギーを印加することによって、層452と454との間の相互拡散を制御することができる。放射源460のみを用いることによって、より多くの相互拡散を可能にするためにより長い時間を提供することが可能となり、放射源453の利用によってより短い相互拡散時間を提供することが可能となる。放射線源453、456、458および460の強度を制御することによって、相互拡散の程度もまた制御してもよい。放射線源453、456、458および480のすべてを設ける必要があるとは限らず、必要に応じて、さらなる放射線源を設けることができることを十分に理解されたい。さらに、図18に示されているランプの特定の数または位置は、例示に過ぎない。他の位置のより多くのランプまたはより少ないランプが、特定の状態に適していることが分かっている場合もある。
【0049】
基板上に2層以上を同時にコーティングするために、図9、図10および図18に示されている装置および方法を修正することができる。一般に、実質的な同時コーティングを可能にするために、コーティング組成物は適合するレオロギを有するように選択される。別のコーティング方法としては、個別に、または2種類以上のグループでコーティング組成物を蒸着することができる。
【0050】
一般に、2種類のコーティング組成物による基板のコーティング前、コーティング中またはコーティング後に、第1のコーティング組成物の少なくとも一部は、第2のコーティング組成物の少なくとも一部と相互拡散する。この相互拡散は一般に、2種類のコーティング組成物間の境界に沿って生じ、そこから広がる。
【0051】
相互拡散の速度は、例えば、各組成物に用いられる特定の材料、材料の分子量、組成物の温度、組成物の粘度、各組成物の重合度、各コーティング組成物の中および組成物間の溶媒/溶質相互作用変数をはじめとするさまざまな要因に左右される。例えば、材料、温度、粘度、ポリマーおよび溶媒の分子量またはこれらの変数の組合せの選択によって、これらの変数の1つ以上を制御することによって、所望の拡散速度を得ることができる。
【0052】
また、コーティング中またはコーティング後に生じる架橋または他の硬化の程度によって、相互拡散速度は影響を及ぼされ得る。コーティング分散体における重合可能または架橋可能な反応性基を提供することにより、相互拡散を制御するために用いることができると同時に、そのような反応もコーティング特性または接着力に影響を及ぼし得る。相互拡散を制御するために重合または架橋を利用するために、急激な反応または初期反応の影響をある程度避けると同時に、コーティング組成物の間に相互拡散制御層を加えることが可能である。この相互拡散制御層は、コーティング組成物のいずれかよりも高いレベルの反応性基(例えば、重合可能または架橋可能である)を含む。例えば、紫外光による放射時に、相互拡散制御層は、コーティング組成物において望ましくないレベルの重合または架橋を形成することなく、コーティング組成物間の拡散のレベルを制限するための障壁を形成する。
【0053】
コーティング組成物は、コレステリック液晶層を作製するために重合化されるモノマーを含む一部の実施形態において、コーティング前、コーティング中またはコーティング後にモノマーを部分的に重合することができる。例えば、特定の速度でモノマーを部分的に硬化(例えば、重合または架橋)するために、処理経路に沿って1つ以上の点に1つ以上の硬化用の光源または放射線源を配置することができる。最終的なコレステリック液晶層におけるピッチ外形を制御し、拡散速度を変更するためにこれを行うことができる。
【0054】
所望の量の相互拡散後、次に、第1および第2のコーティング組成物が1層以上の液晶層に変換される。一般に、コーティング組成物で用いられる材料に少なくとも部分的に左右される、技術の選択など、さまざまな技術によってコーティング組成物を変換することができる。変換技術としては、例えば、(例えば溶媒の乾燥または重合または架橋による)コーティング組成物からの溶媒の実質的にすべての除去およびコーティング組成物における材料の重合または架橋が挙げられる。次に、上述のように、液晶層がコレステリック液晶相に変換される。一部の実施形態において、乾燥および硬化(重合または架橋)の両方が用いられる。完全硬化または部分硬化の前、後または硬化と同時のいずれかで、乾燥を行うことができる。
【0055】
さまざまな異なるピッチ外形を形成することができる。図11〜図15は、可能な外形の例を示しているが、他のさまざまな外形を生成することも可能である。例えば、ピッチp1およびp2をそれぞれ有する2種類の液体コレステリック液晶組成物間の相互拡散を可能にすることによって、図11における外形を実現することができる。各コーティング組成物の少なくとも一部が依然として相対的に他方のコーティング組成物に混和されないように、相互拡散が制御される。これは、コレステリック液晶層のピッチがp1からp2に変化する構造物を生じる。
【0056】
図12は、例えば、実質的に混合されていない材料が残っていないようなピッチp1およびp2をそれぞれ有する2種類のコレステリック液晶組成物間の相互拡散を可能にすることによって実現することができるピッチ外形を示している。この構造物において、ピッチは、p1とp2との間の2つの値の間に及んでいる。別の実施形態では、コレステリック液晶組成物の一方のみの一部が依然として混合されていない状態であるように、2つの組成物の厚さまたは組成物の相互拡散比も選択されることができることを理解されたい。
【0057】
図13は、ピッチp1、p2およびp3をそれぞれ有する3種類のコレステリック液晶組成物間の相互拡散を可能にすることによって実現することができるピッチ外形を示している。3種類の組成物の間を同時相互拡散することによって、または第1の組成物と第2の組成物との間の相互拡散を可能にし、次に第3の組成物をコーティングし、第2の組成物と第3の組成物との間の相互拡散を可能にすることによって、これを実現することができる。
【0058】
図14は、例えば、第1の液晶組成物の2層間に第2のコレステリック液晶組成物をコーティングし、層間の相互拡散を可能にすることによって実現することができるピッチ外形を示している。一実施形態において、第3の層のピッチが第2の層のピッチより低く、第1の層のピッチより高いか、または低い状態で、第1の層および第3の層が異なっている。この実施形態において、ピッチは単調に増大または減少しない。つまり、ピッチは増大した後、減少する。ピッチにおける単調でない変化は、主要な反射帯域幅の外側のサイドピークのサイズを減少させるために、アポダイジング技術として有用である場合もある。そのようなサイドピークは、約730nmおよび780nmに関して図8に示されている。
【0059】
図15は、第1の層および第3の層が同一の第1のコレステリック液晶組成物を用いて形成され、第2の層および第4の層が同一の第2のコレステリック液晶組成物を用いて形成される、4層構造に関するピッチ外形を示している。この実施形態において、ピッチ外形は2つの領域にわたって増大し、2つの領域にわたって減少する。しかし、4層のそれぞれに関して異なるコレステリック液晶組成物を用いることができることと、ピッチ外形は増大と減少との間で交互に起こる必要はないことと、を理解されたい。また、5層以上の層を用いて他のピッチ外形を形成することができることも理解されたい。
【0060】
具体的にはピッチが厚さと共に変化する部分のピッチ外形の幅および形状を修正または制御することができる。ピッチ外形の画定または制御のために用いることができる要因としては、例えば、相互拡散速度、相互拡散許容時間、液晶コーティング組成物の材料、相互拡散中または相互拡散前の組成物の変更(例えば重合または架橋)、温度、各コーティング組成物内および組成物間の溶媒/溶質相互作用変数などが挙げられる。
【0061】
例えば、反射偏光子および偏光ビームスプリッタをはじめとするさまざまな光学本体において、この方法で形成されるコレステリック液晶層を用いることができる。これらの光学本体は、例えば、円偏光を直線偏光に変換するための4分の1波長板をはじめとする他の素子を含んでもよい。所望の反射帯域幅を実現するために、偏光子に関する特定の材料および層を選択することができる。透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイまたは半透過型液晶ディスプレイおよびコントラスト強化フィルムなどの用途において、光学本体を用いることができる。
【0062】
一例として、本願明細書に記載された方法および構成に基づいて、広帯域反射偏光子を作製することができる。この広帯域反射偏光子は、100nm、200nmまたは300nmまたはそれ以上の波長領域にわたって、1つの偏光の光を実質的に一様に(例えば、わずか約10%または5%の変動で)反射することができる。具体的に言えば、可視波長領域(例えば、約400nm〜750nm)にわたって、1つの偏光の光を実質的に一様に反射する広帯域反射偏光子を作製することができる。
【実施例】
【0063】
ディスプレイの実施例
透過型(例えば、背面照射)ディスプレイ、反射型ディスプレイ、半透過型ディスプレイをはじめとするさまざまな光学ディスプレイおよび他の用途において、コレステリック液晶光学本体を用いることができる。例えば、図16は、ディスプレイ媒体602と、バックライト604と、上述したようなコレステリック液晶反射偏光子608と、任意の反射体606と、を具備している1つの例示の背面照射型ディスプレイシステム600の概略断面図を示している。ディスプレイシステムは、コレステリック液晶反射偏光子の一部として、または液晶反射偏光子からの円偏光を直線偏光に変換するための個別の素子として、4分の1波長板を任意に具備している。観測者は、バックライト604ト対向するディスプレイ装置602の側面に位置している。
【0064】
ディスプレイ媒体602は、バックライト604から発せられる光を透過することによって、観測者に情報または画像を表示する。ディスプレイ媒体602の一例は、1つの偏光状態の光のみを透過する液晶ディスプレイ(LCD)である。
【0065】
ディスプレイシステム600を見るために用いられる光を供給するバックライト604は、例えば、光源616および光導波路618を具備しているが、他の背面照射システムを用いることができる。図16に示される光導波路618は、略矩形の断面を有するが、バックライドは任意の適切な形状の光導波路を用いることができる。例えば、光導波路618は、楔形、チャネル形、擬似楔形の導波路などであってもよい。光導波路618は光源616からの光を受光し、その光を放射することができることを主に考慮する必要がある。その結果、光618は、後方反射体(例えば、任意の反射体606)と、抽出機構と、所望の機能を実現するための他の素子と、を具備することができる。
【0066】
反射偏光子608は、上述したような少なくとも1種類のコレステリック液晶光学本体を具備する光学フィルムである。反射偏光子608は、光導波路618を出る1つの偏光状態の光を実質的に透過し、光導波路618を出る異なる偏光状態の光を実質的に反射するために設けられる。
【0067】
図17は、反射型液晶ディスプレイ700の1つのタイプの概略図である。この反射型液晶ディスプレイ700は、ディスプレイ媒体702と、ミラー704と、反射偏光子706と、を具備している。ディスプレイシステムは、コレステリック液晶反射偏光子の一部として、または液晶反射偏光子からの円偏光を直線偏光に変換するための個別の素子として、4分の1波長板を任意に具備している。光708は、反射偏光子によって偏光され、ディスプレイ媒体を通過し、ミラーで反射し、ディスプレイ媒体および反射偏光子に戻る。この反射型液晶ディスプレイ700の反射偏光子は、上述したような1つのコレステリック液晶光学本体を具備している。コレステリック液晶光学本体の特定の選択は、例えば、コスト、サイズ、厚さ、材料および所定の波長領域などの要因に左右され得る。
【0068】
液晶ディスプレイに対する他の特性を強化または提供するさまざまな他の素子およびフィルムと共に、コレステリック液晶光学本体を用いることができる。そのような素子およびフィルムとしては、例えば、明るさ強化フィルム、4分の1波長板およびフィルムをはじめとする波長板、多層または連続/分散層反射偏光子、金属後方反射体、プリズム後方反射体、拡散反射後方反射体、多層誘電後方反射体などが挙げられる。
【0069】
本発明は、上述の特定の実施例に限定されると考えるべきではなく、むしろ、添付特許請求の範囲に完全に記載されているような本発明のすべての態様を網羅するものと理解すべきである。本発明が適用可能であると考えられるさまざまな修正、等価な処理のほか、さまざまな構造物は、本願明細書を再検討すれば、本発明が狙いとしている当業者には、容易に明白となるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1のコーティング組成物および第2のコーティング組成物をコーティングする工程であって、前記第1のコーティング組成物が前記基板と前記第2のコーティング組成物との間に配置され、前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物が異なり、それぞれがコレステリック液晶化合物およびコレステリック液晶モノマーから選択される少なくとも1種類のコレステリック液晶材料を含む工程と、
前記第2のコーティング組成物の少なくとも一部を前記第1のコーティング組成物と相互拡散させる工程と、
前記基板上の前記第1の液晶組成物と前記基板上で前記第2の液晶組成物の少なくとも一部を相互拡散させた後、前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物から少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する工程と、を含む光学本体の作製方法。
【請求項2】
前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物をコーティングする前記工程が、前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物を同時にコーティングする工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物を同時にコーティングする前記工程が、スライドコーティング、カーテンコーティング、押出バーコーティングおよびそれらの組合せから選択される技術を用いて、前記基板上に前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物を同時にコーティングする工程を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する前記工程が、前記コレステリック液晶層のピッチが前記少なくとも1層のコレステリック液晶層の厚さ寸法の少なくとも一部に沿って、実質的に連続的に変化する少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する前記工程が、前記コレステリック液晶層のピッチが前記少なくとも1層のコレステリック液晶層の厚さ寸法の少なくとも一部に沿って単調に変化する少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する工程をさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する前記工程が、前記コレステリック液晶層のピッチが前記少なくとも1層のコレステリック液晶層の厚さ寸法の少なくとも一部に沿って、第1のピッチの値まで増大し、次に第2のピッチの値まで減少する少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する工程をさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する前記工程が、前記コレステリック液晶層のピッチが前記少なくとも1層のコレステリック液晶層の厚さ寸法の少なくとも一部に沿って、第1のピッチの値まで増大し、第2のピッチの値まで減少し、次に第3のピッチの値まで増大する少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する工程をさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のコーティング組成物が第1の溶媒をさらに含み、前記第2のコーティング組成物が第2の溶媒をさらに含み、少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する前記工程が前記第1の溶媒および前記第2の溶媒の実質的にすべてを除去する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のコーティング組成物の前記少なくとも1種類のコレステリック液晶材料が第1の液晶モノマーを含み、前記第2のコーティング組成物の前記少なくとも1種類のコレステリック液晶材料が第2の液晶モノマーを含み、少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する前記工程が前記第1の液晶モノマーおよび前記第2の液晶モノマーを重合して、第1の液晶化合物および第2の液晶化合物を形成する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のコーティング組成物の少なくとも一部を前記第2のコーティング組成物と混合する工程を終了する前に、前記第1の液晶モノマーおよび前記第2の液晶モノマーのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を重合させる工程をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のコーティング組成物の少なくとも一部を前記第1のコーティング組成物と混合する前記工程が、前記第1の液晶モノマーおよび前記第2の液晶モノマーの任意の部分を重合する前に行われる請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の液晶モノマーおよび前記第2の液晶モノマーを重合する前記工程が、前記第2の液晶モノマーの少なくとも一部を前記第1の液晶モノマーの少なくとも一部と共重合させる工程を含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のコーティング組成物が第1のネマチック液晶材料をさらに含み、前記第2のコーティング組成物が第2のネマチック液晶材料をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のコレステリック液晶材料および前記第2のコレステリック液晶材料が同一である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のネマチック液晶材料および前記第2のネマチック液晶材料が同一であり、前記第1のコーティング組成物における第1のネマチック液晶材料に対する第1のコレステリック液晶材料の重量比が、前記第2のコーティング組成物における第2のネマチック液晶材料に対する第2のコレステリック液晶材料の重量比とは異なる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のコーティング組成物上に第3のコーティング組成物をコーティングする工程であり、前記第2のコーティング組成物および前記第3のコーティング組成物が異なり、前記第3のコーティング組成物がコレステリック液晶およびコレステリック液晶モノマーから選択される少なくとも1種類のコレステリック液晶材料を含む工程と、
前記第3のコーティング組成物の少なくとも一部を前記第2のコーティング組成物と相互拡散させる工程と、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
基板上に第1のコーティング組成物を配置する工程であって、前記第1のコーティング組成物が第1の溶媒と、コレステリック液晶およびコレステリック液晶モノマーから選択される第1のコレステリック液晶材料と、を含む工程と、
前記第1のコーティング組成物上に第2のコーティング組成物を配置する工程であって、前記第2のコーティング組成物が第2の溶媒と、コレステリック液晶およびコレステリック液晶モノマーからなる群から選択される第2のコレステリック液晶材料と、を含む工程と、
前記第1の溶媒の実質的にすべてを除去する前および前記第2の溶媒の実質的にすべてを除去する前に、前記第2のコーティング組成物の少なくとも一部を前記第1のコーティング組成物の少なくとも一部と相互拡散させる工程と、
前記第1の溶媒および前記第2の溶媒の実質的にすべてを除去する工程と、
前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物から少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する工程であって、前記コレステリック液晶層が、前記層の厚さ寸法の少なくとも一部に沿ってある範囲の値で実質的に連続的に変化するピッチを有するような工程と、
を含む光学本体の作製方法。
【請求項18】
第1のコーティング組成物を配置する工程が、前記基板上に前記第1のコーティング組成物を配置する工程を含み、前記第1のコーティング組成物がコレステリック液晶モノマーおよびネマチック液晶モノマーを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第2のコーティング組成物を配置する工程が、前記基板上に前記第2のコーティング組成物を配置する工程を含み、前記第2のコーティング組成物が、前記第1のコーティング組成物とは重量比の異なるコレステリック液晶モノマーおよびネマチック液晶モノマーを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
光学本体を作製する工程が、コレステリック液晶モノマーおよびネマチック液晶モノマーを重合する工程を含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
第1のコーティング組成物を配置する工程および第2のコーティング組成物を配置する工程が、前記基板上に前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物を実質的に同時に配置する工程を含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物を同時に配置する前記工程が、スライドコーティング、コーティング、カーテンコーティング、押出バーコーティングおよびその組合せからなる群から選択される技術を用いて、前記基板上に前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物を実質的に同時に配置する工程を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のコーティング組成物上に、第3の溶媒と、第3のコレステリック液晶およびコレステリック液晶モノマーからなる群から選択される第3のコレステリック液晶材料と、を含む第3のコーティング組成物を配置する工程と、
前記第2の溶媒の実質的にすべてを除去する前および前記第3の溶媒の実質的にすべてを除去する前に、前記第3のコーティング組成物の少なくとも一部を前記第2のコーティング組成物の少なくとも一部と相互拡散させる工程と、
をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の溶媒および前記第2の溶媒の実質的にすべてを除去する工程が、第1の溶媒、第2の溶媒、第3の溶媒の実質的にすべてを除去して、第1のコーティング組成物、第2のコーティング組成物、第3のコーティング組成物を含む少なくとも1層のコレステリック液晶層を含みかつ層の厚さ寸法の少なくとも一部に沿って実質的に連続的に変化するピッチを有する光学本体を作製する工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
コレステリック液晶層のピッチが、前記層の厚さ寸法に沿って、第1のピッチから始まり、第2のピッチまで増大し、第3のピッチまで減少し、第4のピッチまで増大するコレステリック液晶層を含む光学本体。
【請求項26】
コレステリック液晶層のピッチが、前記層の厚さ寸法に沿って、前記コレステリック液晶層の第1の主面における第1のピッチで始まり、第2のピッチまで増大し、第3のピッチまで減少し、第4のピッチで増大する請求項25に記載の光学本体。
【請求項27】
コレステリック液晶層のピッチが、前記層の厚さ寸法に沿って、第1の主面における第1のピッチで始まり、第2のピッチまで増大し、第3のピッチまで減少し、前記コレステリック液晶層における第2の主面における第4のピッチまで増大する請求項25に記載の光学本体。
【請求項28】
ディスプレイ媒体と、
コレステリック液晶層のピッチが、層の厚さ寸法に沿って、第1のピッチで始まり、第2のピッチまで増大し、第3のピッチまで減少し、第4のピッチまで増大するコレステリック液晶層を含む反射偏光子と、を具備する光学ディスプレイ。
【請求項29】
基板上に第1のコーティング組成物および第2のコーティング組成物をコーティングする工程であって、前記第1のコーティング組成物が前記基板と前記第2のコーティング組成物との間に配置され、前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物が異なり、それぞれがコレステリック液晶化合物およびコレステリック液晶モノマーから選択される少なくとも1種類のコレステリック液晶材料を含む工程と、
前記第2のコーティング組成物の少なくとも一部を前記第1のコーティング組成物と相互拡散させる工程と、
前記基板上の前記第1の液晶組成物と前記基板上で前記第2の液晶組成物の少なくとも一部を相互拡散させた後に限り、前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物から少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成する工程と、
前記少なくとも1層のコレステリック液晶層と前記基板と、を含む反射偏光子を形成する工程と、
前記反射偏光子およびディスプレイ媒体を用いて液晶ディスプレイを作製する工程と、
を含む光学ディスプレイの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−15170(P2010−15170A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−219235(P2009−219235)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【分割の表示】特願2002−568064(P2002−568064)の分割
【原出願日】平成13年11月19日(2001.11.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】