説明

コレステリック液晶材料を含有する光学体およびその製造方法

【課題】コレステリック液晶を含有する光学体の提供。
【解決手段】光学体は基板と基板上に設けられたコレステリック液晶層を含む。コレステリック液晶層は層厚方向にそって不均等なピッチを有しており、コレステリック液晶層を実質的に固定する架橋ポリマー物質を含んでいる。この架橋によって、コレステリック液晶層中のコレステリック液晶材料の拡散が阻害される。他の光学体形成方法では、処理中第1コレステリック液晶の上にキラル物質のリザーバを設け、キラル物質を層中に拡散させると共にピッチを不均等なものとする。あるいは、2種類のコーティング組成物を基板上に設けても良い。この場合、第1コーティング組成物の材料は第2コーティング組成物に対して実質的に可溶性のものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶を含有する光学体に係る。本発明はまた、コレステリック液晶またはコレステリック液晶前駆体を2層以上コーティングして形成される反射型偏光器に係る。
【背景技術】
【0002】
偏光器やミラーのような光学装置は、液晶表示装置(LCD)等の多様な用途に用いられる。液晶表示装置は大きく分けて、表示パネル後方から光が供給されるバックライト型(例えば透過型)表示装置と、表示装置前方から光(例えば外光)が供給されるフロントライト型(例えば反射型)の2種類がある。これら2種類の表示モードを組み合わせて、例えば薄暗い条件下ではバックライトを利用し、周りが明るい時はその光を利用する半透過型表示装置を形成することもできる。
【0003】
従来のバックライト型LCDでは、吸光型偏光器を使用するのが一般的であり、その光透過率は10%未満にすぎない。従来の反射型LCDも吸光偏光器をベースにしており、通常その反射率は25%未満である。これらの表示装置は透過率または反射率が低いため、表示のコントラストおよび輝度が低い上、消費電力が大きくなる場合もある。
【0004】
反射型偏光器は表示装置を初めとする各種用途に用いることを目的として開発されたものである。反射型偏光器は一方向の偏光の光を優先的に透過し、直交偏光の光を優先的に反射する。反射型偏光器は比較的大量の光の吸収することなく光を透過・反射するのが好ましい。また、反射型偏光器は透過偏光に関する吸収率を10%以下とするのが好ましい。大半のLCDは広い波長領域で動作するため、一般には反射型偏光器もまた広い波長領域で動作する必要がある。
【0005】
バックライト型表示装置において反射型偏光器を用いると、偏光器が透過しない光の偏光を反射してバックライトに戻すことにより、光の利用効率を高めることができる。バックライトは再循環された光の偏光状態を変えて、反射型偏光器を透過するようにする。このように光を再循環することによって表示の全体的輝度を高めることができる。反射型表示装置および半透過型表示装置において、反射型偏光器は大方の吸光偏光器に比較して光の通過偏光に関する吸光率および色調が低く、表示の輝度を50%以上高くすることができる。反射型偏光器の特徴の中で少なくともいくつかの用途では重要である特徴として、例えば偏光器の厚さ、反射率が波長領域全体にわたって均等であること、対象とする波長領域全体で相対量の光が反射されることなどが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に言うと、本発明はコレステリイク液晶を含有する光学体およびその製造方法、ならびにコレステリック液晶を反射型偏光器などの光学装置に利用する方法に係る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は光学体の形成方法である。まず、第1コーティング組成物を用いて基板上にコレステリック液晶ポリマー層を形成する。次に反応性キラルモノマーから選択された少なくとも1種のキラルモノマー物質を含む第2コーティング組成物を第1層上にコーティングする。次に、キラルモノマー物質の一部を第1コレステリック液晶層の第2コーティング組成物に隣接する部分に拡散させる。最後に、キラルモノマー物質を硬化させて、第1コレステリック液晶ポリマー層と第2コーティング組成物から1層またはそれ以上のコレステリック液晶層を形成する。形成されたコレステリック液晶層は不均等なピッチを有する。
【0008】
本発明の別の実施形態は光学体を形成する別の方法である。まず、コレステリック液晶化合物とコレステリック液晶モノマーとから選択される少なくとも1種のコレステリック液晶材料を含む第1コーティング組成物を用いて、基板上に第1層を形成する。次に、反応性キラルモノマーから選択される少なくとも1種のキラルモノマー物質を含む第2コーティング組成物を第1層上にコーティングする。次に、キラルモノマー物質の一部を第1層の第2コーティング組成物に隣接する部分に拡散させる。最後に、キラルモノマー物質を第1層と架橋させて、1層またはそれ以上のコレステリック液晶層を形成して固定する。コレステリック液晶層は不均等なピッチを有しており、架橋によって残りのキラルモノマー物質のそれ以上の拡散が阻害される。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態は光学体を製造するさらに別の方法である。まず、第1コーティング組成物を用いて基板上に層を形成する。次に第2コーティング組成物を第1層上にコーティングする。第1コーティング組成物と第2コーティング組成物は異なるものであり、いずれの組成物もキラル化合物から選択される少なくとも1種のキラル物質を含んでいる。第2コーティング組成物はさらに溶剤を含んでおり、第1層はこの第2コーティング組成物の溶剤に対して実質的に不溶性である。次に、第2コーティング組成物の一部を第1層の第2コーティング組成物に隣接する部分に拡散させる。拡散後、第2コーティング組成物と第1層から1層以上のコレステリック液晶層が形成される。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態は、基板と基板上に配設されたコレステリック液晶層とを含んでなる光学体である。コレステリック液晶層は層の厚さ方向に沿って不均等なピッチを有しており、コレステリック液晶層を実質的に固定する架橋ポリマー物質を含む。架橋によって、コレステリック液晶層内のコレステリック液晶材料の拡散が阻害される。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態は、表示媒体と反射型偏光器を含んでなる光学表示装置である。反射型偏光器は基板と基板上に配設されたコレステリック液晶層とを備える。コレステリック液晶層は層の厚さ方向に沿って不均等なピッチを有しており、コレステリック液晶層を実質的に固定する架橋ポリマー物質を含んでいる。架橋によって、コレステリック液晶層内のコレステリック液晶材料の拡散が阻害される。
【0012】
上に述べた本発明の概要は、本発明に関して開示する実施形態の一つ一つ、あるいは実施方法の全てを説明することを意図したものではない。図面および以下の詳細な説明がこれらの実施形態をさらに詳細に例示するものである。
【0013】
次に、添付図面に関連して本発明の様々な実施形態について詳細な説明を行うが、この説明から本発明が完全に理解されるであろう。
【0014】
本発明は様々な変更を施すことができると共に、代替的形態において実施できるものであり、その一例を添付図面に具体的に示すと共に、その例について以下詳細に説明するが、これを以って本発明をここに記載する特定の実施形態に限定することを意図するものではない。その逆に、本発明は本発明の精神と範囲の中に入る全ての変更、等価物、代替物を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基板の上にコレステリック液晶組成物を2層以上連続的にコーティングする本発明の方法および装置の一実施形態を示す略図。
【図2】本発明により基板上に形成された第1コーティング組成物層を示す略断面図。
【図3】本発明により基板上に形成された第1および第2コーティング組成物層を示す略断面図。
【図4】本発明により拡散領域を設けて基板上に形成された第1および第2コーティング組成物層を示す略断面図。
【図5】本発明による液晶表示装置の一実施形態を示す略図。
【図6】本発明による液晶表示装置の別の実施形態を示す略図。
【図7】実施例1により形成した光学体の透過スペクトルを示す図。
【図8】実施例2により形成した光学体の光透過スペクトルを示す図。
【図9】実施例3により形成した光学体の光透過スペクトルを示す図。
【図10】実施例4により形成した光学体の光透過スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、光学体(光学フィルム等)およびその製造方法に適用できる他、この光学体の反射型偏光器および光学表示装置(例えば液晶表示装置)等の光学装置への使用にも適用可能であると考えられる。本発明はまた、コレステリック液晶を含む光学体も対象としている。以下に記載する各実施例の説明から、本発明の様々な態様について理解することができるであろうが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
「ポリマー」という用語は、各種ポリマー、コポリマー(2種類以上のモノマーを用いて形成されるポリマー等)、およびこれらの組み合わせたものの他、例えばエステル交換などの反応や同時押出し等により混和物の形で形成できるポリマーまたはコポリマーも含むものとする。特に断らない限り、ブロックコポリマーとランダムコポリマーの両方が含まれる。
【0018】
「高分子材料」という用語は、上に定義したポリマーの他、例えば抗酸化剤、安定化剤、オゾン分解防止剤、可塑剤、染料、顔料等の有機添加物または無機添加物も含むものとする。
【0019】
「コレステリック液晶化合物」という用語は、コレステリック液晶相を形成し得る化合物(ポリマー等)を指す。
【0020】
「キラル物質」という用語は、他の液晶物質と組み合さってコレステリック液晶相を形成または誘発することのできる、キラル液晶化合物およびキラル非液晶化合物などのキラル化合物を指す。
【0021】
特に断らない限り、屈折率の値はすべて632.8nmの光に関するものである。
【0022】
「偏光」という用語は、平面偏光、円偏光、楕円偏光など、光線の電気ベクトルが不規則に方向を変えず、一定の方向を維持するかあるいはその変化が系統的である非ランダムの偏光状態を指す。平面偏光では、電気ベクトルが常に一つの平面に存在するが、円偏光または楕円偏光では、光線の電気ベクトルが対称的に回転する。
【0023】
反射型偏光器は一方向の偏光の光を優先的に透過し、残りの光を反射する。反射型平面偏光器の場合、一の平面において偏光された光が優先的に透過され、それに直交する平面において偏光された光は優先的に反射される。反射型円偏光器の場合、時計回りまたは反時計回り(それぞれ右円偏光または左円偏光とも言う)のいずれか一つの向きで円偏光された光が優先的に透過され、逆の向きに偏光された光は優先的に反射される。円偏光器の一種としてコレステリック液晶偏光器がある。
【0024】
コレステリック液晶化合物
コレステリック液晶材料は一般に、本質的にキラルである分子単位(例えば鏡面を持たない分子)と本質的にメソゲンである分子単位(例えば液晶相を呈する分子)とを含んでおり、ポリマーの場合もある。コレステリック液晶組成物は、液晶のディレクタ(平均的局所分子配列の方向を特定する単位ベクトル)がディレクタに垂直な方向に沿って螺旋状に回転するコレステリック液晶相を有する化合物を含む。コレステリック液晶組成物は、キラルネマチック液晶組成物とも呼ばれる。コレステリック液晶化合物のピッチは、ディレクタが360度回転するのに要する距離(ディレクタに対して垂直方向の距離)である。この距離は通常100nm以上である。
【0025】
コレステリック液晶材料のピッチは一般に、キラル化合物とネマチック液晶化合物を(例えば共重合反応で)混合その他により組み合わせることによって変更することができる。また、キラル非液晶物質でもコレステリック相を誘発することができる。ピッチはキラル化合物とネマチック液晶化合物の相対重量比によって決まる。ディレクタが螺旋状に捩れている結果、この物質の誘電テンソルが空間的に周期的に変化し、それによって光の波長選択的反射が生じることとなる。螺旋軸に沿って伝播される光については、波長λが下記の範囲にある場合一般にブラッグ反射が生じる。
op < λ < ne
上記不等式において、pはピッチであり、noとneはコレステリック液晶材料の主要屈折率である。例えば、ピッチはブラッグ反射が光の可視波長域、紫外線波長域または赤外線波長域においてピークになるように選択することができる。
【0026】
コレステリック液晶ポリマーを含めてコレステリック液晶化合物は公知であり、一般にこれらの材料のいずれを用いても光学体を作製することができる。適切なコレステリック液晶ポリマーの例が、米国特許第4,293,435号、第5,332,522号、第5,886,242号、第5,847,068号、第5,780,629号、第5,744,057号の各明細書に記載されている。これら以外のコレステリック液晶化合物を使用することもできる。一般に、特定の用途または特定の光学体用としてコレステリック液晶化合物を選択する場合、例えば屈折率、ピッチ、加工性、透明度、色、対象波長での吸光率が低いこと、他の化合物(例えばネマチック液晶化合物)との相容性、製造が容易であること、液晶ポリマーを形成する液晶化合物またはモノマーが入手可能であること、レオロジー、硬化方法およびその要件、溶剤の除去が容易であること、物理・化学特性(例えば可とう性、引張り強度、耐溶剤性、耐引掻き性、相転移温度等)、および精製が容易であることなど、一つまたはそれ以上の要因に基づいて選択が行われる。
【0027】
コレステリック液晶ポリマーは一般に、キラル(またはキラルと非キラルの混合)分子(モノマーを含む)を用いて形成されるが、キラル分子はメソゲン基(例えば、コレステリック液晶相の形成を容易にする棒状構造を通常有する剛性の基)を含む場合もある。メソゲン基には、例えばパラ置換環状基(例えばパラ置換ベンゼン環)がある。メソゲン基はスペーサを介してポリマーのバックボーンに結合しても良い。スペーサは例えばベンゼン、ピリジン、ピリミジン、アルキン、エステル、アルキレン、アルケン、エーテル、チオエーテル、チオエステル、アミド等の官能性を有する官能基を含むことができる。スペーサの長さおよび種類を変更することで溶剤中での溶解度を変えることができる。
【0028】
適切なコレステリック液晶ポリマーとしては、剛性または可とう性のコポリマーによって任意に分離されたメソゲン基を含むキラルまたは非キラルのポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、またはポリエステルアミドのバックボーンを有するポリマーがある。それ以外に適切なコレステリック液晶ポリマーとしては、キラルまたは非キラルのメソゲン側鎖基を有するポリマーバックボーン(例えばポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリオレフィン、またはポリマロネートのバックボーン)を有するものがある。側鎖基は、任意にアルキレンや酸化アルキレンのようなスペーサを用いてバックボーンから分離し、可とう性を与えるようにしても良い。
【0029】
一般に、コレステリック液晶層を形成するには、コレステリック液晶組成物を表面上にコーティングその他の方法で配設する。コレステリック液晶組成物は(i)キラル化合物、(ii)コレステリック液晶ポリマーの形成に使用できる(例えば重合または架橋して)キラルモノマー、および(iii)それらの組み合わせの少なくとも一つを含有するキラル化合物を含む。コレステリック液晶組成物はまた、(i)ネマチック液晶化合物、(ii)ネマチック液晶ポリマーの形成に使用できるネマチック液晶モノマー、および(iii)それらの組み合わせの少なくとも一つを含有する非キラル化合物を含む場合もある。ネマチック液晶化合物またはネマチック液晶モノマーを用いることにより、コレステリック液晶組成物のピッチを変更することができる。コレステリック液晶組成物はまた、例えば硬化剤、架橋剤、オゾン分解防止剤、抗酸化剤、可塑剤、安定化剤や紫外線、赤外線または可視光を吸収する染料および顔料などの添加剤を1種類またはそれ以上含む場合もある。
【0030】
コレステリック液晶組成物はまた、キラル化合物、非キラル化合物、コレステリック液晶、コレステリック液晶モノマー、ネマチック液晶、ネマチック液晶モノマー、潜在性のネマチック物質またはキラル物質(潜在性物質は他の物質と結合して液晶中間相を呈する)、およびそれらの組み合わせの中から2種類以上を用いても形成することができる。通常の場合、コレステリック液晶組成物に含まれる各物質の個々の重量比によって、コレステリック液晶層のピッチが少なくとも部分的に決定される。
【0031】
コレステリック液晶組成物は、通常は溶剤を含むコーティング組成物の一部を成すのが一般的である。ここで用いる「溶剤」という用語は、分散剤および2種以上の溶剤および分散剤を組み合わせたものも指す。場合によっては、液晶、液晶モノマー、加工用添加剤のうち1種類またはそれ以上、あるいはコレステリック液晶組成物のその他いずれかの成分も溶剤となることがある。溶剤は例えば組成物を乾燥させて溶剤を蒸発させたり、溶剤の一部を反応させたり(例えば溶媒型液晶モノマーを反応させて液晶ポリマーを形成する)することによって、コーティング組成物から実質的に除去することができる。
【0032】
コレステリック液晶組成物はコーティングされた後、液晶層へと変換される。この変換は、溶剤の蒸発、コレステリック液晶組成物の架橋、熱、放射線(化学線等)、光(紫外線、可視光、赤外線等)電子ビーム、またはこれらの組み合わせなどを用いてのコレステリック液晶組成物の硬化(例えば重合)と言った様々な方法を用いて達成することができる。
【0033】
必要に応じ、コレステリック液晶組成物の中に開始剤を含ませて、組成物のモノマー成分の重合または架橋を開始させるようにしても良い。適切な開始剤の例としては、重合または架橋を開始して伝播する遊離ラジカルを発生できるものが挙げられる。安定性または半減期に基づいて遊離ラジカルジェネレータを選択しても良い。遊離ラジカル開始剤は吸収その他によりコレステリック液晶層に新たな色を生成しない方が良い。適切な遊離ラジカル開始剤の例として、遊離ラジカルの熱開始剤および光開始剤が挙げられる。遊離ラジカルの熱開始剤には例えば過酸化物、過硫酸塩、アゾニトリル化合物などがある。これらの遊離ラジカル開始剤は熱分解時に遊離ラジカルを発生する。
【0034】
光開始剤は電磁放射または粒子照射により活性化することができる。適切な光開始剤の例として、オニウム塩光開始剤、有機金属光開始剤、金属塩カチオン光開始剤、光分解性オルガノシラン、潜在性スルホン酸、酸化ホスフィン、シクロヘキシルフェニルケトン、アミン置換アセトフェノン、ベンゾフェノン等がある。一般に光開始剤の活性化には紫外線を用いるが、その他の光源を用いることもできる。光開始剤の選択は特定波長の光の吸収性に基づいて行われる。
【0035】
コレステリック液晶相は従来の処理法を用いて達成することができる。コレステリック液晶相の発現方法としては、例えばコレステリック液晶組成物を配向基板上に堆積する方法がある。基板の配向は、例えば延伸法またはレーヨンその他の布を用いて摩擦する方法などで行うことができる。光アラインメント層については、米国特許第4,974,941号、同第5,032,009号、同第5,389,698号、同第5,602,661号、同第5,838,407号、同第5,958,293号の各明細書に記載されている。堆積後のコレステリック液晶組成物を前記組成物のガラス転移温度より高い温度に加熱して液晶相とする。その後組成物をガラス転移温度より低い温度に冷却するが、組成物は液晶相のままとなる。
【0036】
コレステリック液晶光学体
コレステリック液晶組成物は、特定波長帯の光に関して、一方の円偏光(例えば左回りまたは右回りに円偏光された光)を有する光を実質的に反射し、他方の円偏光(例えば右回りまたは左回りに円偏光された光)を有する光を実質的に透過する層として形成することができる。このような特徴付けは、コレステリック液晶材料のディレクタに対して垂直に入射する光の反射または透過を説明するものである。その他の角度で当たる光は、通常の場合コレステリック液晶材料により楕円偏光され、ブラッグ反射ピークはその軸上波長から青方偏移されるのが一般的である。コレステリック液晶材料の特徴付けは、以下でもそうするように垂直入射光に関して行うのが一般的であるが、これらの物質の応答については公知技術を用いて非垂直入射光に関して測定できることが理解されよう。
【0037】
コレステリック液晶層は単独で用いて、あるいは他の層やデバイスと組み合わせて用いて反射型偏光器等の光学体を形成することができる。コレステリック液晶偏光器は反射型偏光器の一種に用いられる。コレステリック液晶偏光器のピッチは多層反射型偏光器の光学層の厚さと同様のものである。コレステリック液晶偏光器の中心波長はピッチによって、多層反射型偏光器の中心波長は光学層の厚さによって決定される。コレステリック液晶偏光器の回転ディレクタが光学繰り返し単位を形成するが、これは多層反射型偏光器において同じ光学層の厚さを有する複数の層を用いた場合と同様である。
【0038】
コレステリック液晶層によって反射された光の中心波長λ0とスペクトル幅Δλは、コレステリック液晶のピッチpによって決まる。中心波長λ0は、下式により概算することができる。
λ0=0.5(no+ne)p
上記式においてnoとneはコレステリック液晶の屈折率であり、neは液晶のディレクタに平行に偏光された光の屈折率、noは液晶のディレクタに垂直に偏光された光の屈折率を表す。スペクトル幅Δλは、下式により概算することができる。
Δλ=2λ0(ne−no)/(ne−no)=p(ne−no
【0039】
従来コレステリック液晶偏光器の形成は、これまではそれぞれ個別の基板上に異なるピッチでコレステリック液晶層を設けたもの(例えば、キラル液晶化合物またはモノマーとネマチック液晶化合物またはモノマーの重量比が異なるなど組成の異なる層)を2層予め形成しておき、これらをラミネートその他の方法で積層し、これら2つの層を加熱して液晶物質を層と層の間に拡散させる方法で行っていた。2層の間に物質を拡散した場合、通常各層のピッチは2層の個々のピッチの間の範囲で変化する結果となる。
【0040】
しかし、この方法では、各層を別々に形成(例えば各層を個別に乾燥または硬化させるなどして)した後、これらの層を加熱して液晶物質を2層間に拡散させるなど、加工の工程がかなり多くなる。また、予め形成する液晶層2層は通常は本質的に高分子であり、これらの液晶層間での拡散に要する時間を考えた場合、加工時間も相当長くなると言える。
【0041】
コレステリック液晶光学体の新規形成方法
コレステリック液晶光学体の作成方法が新たにいくつか開発された。これらの方法は次の特長を一つ以上含んでいる。(i)連続コーティングを容易にするような溶剤と材料の選択;(ii)キラルコレステリック液晶材料のリザーバを使用;(iii)架橋によるコレステリック液晶層の「固定」。これらの特長の一つ一つについて述べるが、これらの特長をどのように組み合わせて使用しても良いことが認識されよう。
【0042】
コレステリック液晶光学体の新規形成方法の一つでは、それぞれ異なるコレステリック液晶組成物を含む少なくとも2種類のコーティング組成物を基板上に連続的にコーティングする。コーティングした後、第2のコーティング組成物から第1のコーティング組成物の中に物質を拡散させ、その後最終的にコレステリック液晶層へと変換する。これら2種類の液晶組成物は各々溶剤を含み、それぞれ異なる溶剤である。一実施形態では、第1コーティング組成物のコレステリック液晶組成物を、第2コーティング組成物に用いる溶剤に対して溶解性のないものとする。第2コーティング組成物は重合されてコレステリック液晶を形成することのできるキラルモノマー(キラルモノマーまたはコレステリック液晶モノマーなど)を含んでいる。第1コーティング組成物には高分子または低分子コレステリック液晶組成物を含ませることができる。
【0043】
この方法では、第1コーティング組成物を、何れかのコーティング技術など任意の技術を用いて基板上に配置する。次に第2コーティング組成物を第1コーティング組成物の上に配置する。第1コーティング組成物のコレステリック液晶組成物は第2コーティング組成物の溶剤に対して実質的に不溶性であるため、溶剤による第1コーティング組成物の破壊が回避または低減される。第1コーティング組成物の上に第2コーティング組成物を配置した後、第2コーティング組成物が第1コーティング組成物の中に拡散し得る。第1コーティング組成物が重合可能な物質を含む場合、拡散を行う前に第1コーティング組成物が重合し得る。拡散後、第2コーティング組成物の溶剤を除去し、両組成物を液晶層へと変換させる。
【0044】
この方法の別の実施形態では、第1コーティング組成物を重合可能なモノマーを含むものとする。第1コーティング組成物を基板上に配置した後、第1コーティング組成物を部分的または完全に重合させる。第2コーティング組成物を重合した第1コーティング組成物の上に配置し、その後は上述の方法と同じ手順を踏む。この実施形態では、重合した第1コーティング組成物を第2コーティング組成物の溶剤に対して実質的に不溶性とする必要がある。重合していない第1コーティング組成物については、第2コーティング組成物の溶剤に対する溶解性について何ら要件はない。
【0045】
少なくとも場合によっては、第1コーティング組成物の重合の結果、前記組成物の形成する層の厚さ方向に沿って分子量の勾配が生じることがある。一般に、分子量の勾配は分子量の最も大きい物質が基板近くに、分子量の小さい物質が第2コーティング組成物を形成する方の表面近くになるように形成される。このような勾配によって、第2コーティング組成物の重合した第1コーティング組成物中への拡散の制御を容易にすることができる。一般に分子量の大きい物質中ほど拡散が遅くなる。また、分子量の小さいポリマーを基板近くに置き、分子量の大きいポリマーを反対側表面に置くなど、その他の勾配を用いることもできる。
【0046】
分子量の勾配は様々な技術を用いて形成することができる。その一つとして、第1コーティング組成物を部分的にのみ硬化させる(例えば重合する)方法がある。部分的硬化は加熱、放射、光の照射、またはそれらの組み合わせを行う時間を短くするか、あるいはその強さを弱めることによって達成できる。一般に、この方法を用いる場合は硬化用の放射源または熱源を、分子量を最も大きくしたい部分の表面に最も近接させて配置する。場合によっては、第1コーティング組成物に硬化用放射線を吸収する物質を含ませて、厚さ方向に伝播される硬化用放射線の量を低減させる。部分的硬化を行う結果、分子量勾配を含むポリマー層を形成できる。
【0047】
これ以外の分子量勾配形成方法としては、酸素を含む雰囲気(例えば大気などの酸素ガス混合物)またはその他の重合停止成分の中で第1コーティング組成物を硬化させる方法がある。酸素(例えば大気中の)と接触する層の表面に近いところにあるコレステリック液晶材料は、酸素と接触しない表面(例えば基板表面)に比べて重合し難い。重合が遊離ラジカルのプロセスを介して生じる場合に特にこのことが言える。酸素は、使用できる遊離ラジカルの量を減らすことによって重合反応を停止または阻害することが知られている。酸素による重合阻害の結果、層の厚さ方向に重合物質の勾配を形成できる。
【0048】
酸素による阻害効果を回避するために、窒素雰囲気のような酸素が最小限または皆無の条件下で重合を行うようにしても良い。重合中に窒素が存在することによって界面における重合が実質的に阻害されることは通常ない。この場合、一般には層の厚さ方向の分子量は均等でかつ高くなる。
【0049】
ここに記載した方法と組み合わせて、あるいは個別に使用できるその他の方法として、第2コーティング組成物をキラル物質(例えばキラル化合物、コレステリック液晶化合物、コレステリック液晶モノマーなど)のリザーバとして利用する方法がある。この方法の一実施形態においては、第2コーティング組成物の選択は、光学体により反射されるべき所望の波長領域の外にその中心反射波長を置くピッチを有するコレステリック液晶材料を生成するものとすることができる。例えば、可視光反射型偏光器の場合、第2コーティング組成物として、赤外光または紫外光を反射させるようなピッチを有するコレステリック液晶材料を生成するものを選択することができる。また、第2コーティング組成物の選択にあたっては、ネマチック液晶化合物またはモノマーのような非キラル物質よりキラル物質の拡散の方が速くなるように行うのが好ましい。その一例として、先に堆積した層において非キラル物質より溶解度の高いキラル物質を選択する方法がある。
【0050】
第2コーティング組成物のキラル化合物が先に堆積した層の中に拡散することによって、第2コーティング組成物中のキラル化合物対非キラル化合物の比率が変わることになる。その結果、第2コーティング組成物から形成することのできるコレステリック液晶材料のピッチが変化する。しかし、中心反射波長が所望の反射波長領域の外にあるため、第2コーティング組成物を用いて形成する構造体部分に獲得させようとする光学特性に対してこのピッチの変化が余り影響することはない。別の実施形態では、第2コーティング組成物をコレステリック液晶組成物とせずに、第1コーティング組成物を用いて形成する層の一部のピッチを変えるのに必要なだけのキラル化合物を含むだけのものとする。第2コーティング組成物中のキラル物質の濃度、すなわちパーセンテージは、キラル物質の第1層への拡散が光学体に所望の光学特性を与えるために必要なキラル物質の量を減少させない程度とする。別の選択肢として、第2コーティング組成物に第1コーティング組成物によって形成されるコレステリック液晶材料のピッチを変えることのできる拡散性非キラル物質を含ませることもできる。以下、キラル物質を拡散に使用する場合に関してさらに別の例について論じるが、キラル物質の代わりに非キラル物質を用いても同じ構造と目的を達成できることが理解されるであろう。
【0051】
別の方法では、第2コーティング組成物に重合するだけでなく架橋もできる反応性モノマー物質を含ませる。好適には、この反応性モノマー物質は反応性キラルモノマーとし、また実施形態によってはコレステリック液晶化合物、コレステリック液晶ポリマーの前駆体、またはキラル化合物とする。例えば、反応性モノマー物質は、ジ(メタ)アクリレート、ジエポキシド、ジビニル、またはジアリルエーテルとすることができる。この反応性モノマー物質を先に形成した層の中に拡散させると、反応性モノマー物質は第2コーティング組成物中だけでなく当該層の中でも架橋することができる。これによってコレステリック液晶層が「固定」され、層中でのさらなる物質の拡散を防止または実質的に減少させる。
【0052】
この方法および構成は、コレステリック液晶ポリマー層の各部を混合するために熱で誘発される拡散を用いていたこれまでの技術に比べていくつか利点がある。従前の技術の場合、結果として得られる製品は、特にこの製品が実質的な熱を生成するような用途、例えば多くの表示用途などに使用される場合、異なる組成物からなる層と層の間で長期的に引き続き拡散が生じることになる。このように拡散が続くことによって、製品の光学特性が長期に亘って変化する結果となる。
【0053】
これに対し、ここに開示したコレステリック液晶層を架橋する技術では、拡散用のモノマー物質の分子量を大きくし、その可用性を低減することによって、架橋後にさらに生じる分散を実質的に減少または防止する方法を提供する。このため、結果として得られる光学体の光学特性を長期的に実質的に安定させることができると共に、これを用いて寿命の長い信頼性の高い製品を製造することが可能となる。
【0054】
以上に記載した方法は、様々な技術および設備を用いて実施することができる。図1は、基板上に2種類以上のコーティング組成物を連続的にコーティングするために好適な方法と装置の例を示したものである。連続コーティング装置100は、基板200を第1コーティング剤ディスペンサ104を通過して搬送するキャリヤ(例えばコンベヤベルトやスライディング・プラットフォームなど)を備える。別の方法として、基板200を連続ウェブとし、駆動ロールを用いて引っ張りながら装置100を通過させるようにしても良い。駆動ロールまたは同様の機構を用いて基板200と一つ以上のコーティング層を移動させることにより、基板200の下方に配置したキャリヤ102を設ける必要を無くすことができる。第1コーティング組成物202が第1コーティングヘッド106から基板200上に分注される。ナイフコーティング、ロッドコーティング、スロットコーティング、グラビアコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティングなど、任意のコーティング技術を用いることができる。一実施形態では、第1コーティング組成物202は、溶剤と、高分子液晶物質またはコーティングの前または後に部分的または完全に重合されて高分子液晶物質を形成できるモノマーを含む。
【0055】
必要に応じて第1コーティング組成物202と基板200とを乾燥オーブン108を通過させて溶剤を除去するようにしても良い。また、第1コーティング組成物202が重合性成分を含んでおり、かつこれらの成分をこの段階で重合したい場合は、第1コーティング組成物202と基板200とを、例えば熱源または光源を備える硬化ステーション110を通過させて第1コーティング組成物を重合(部分的まは完全に)させるようにすることもできる。硬化ステーション110は基板200と第1コーティング組成物202に関して一つまたは複数の位置に配置することができる。
【0056】
次に、第2コーティング剤ディスペンサ112が第2コーティング組成物204を第2コーティングヘッド114から第1コーティング組成物202の上に分注する。ここでもまた任意のコーティング技術を用いることができる。上でも述べたように、第1コーティング組成物から先に形成されている層が第2コーティング組成物の溶剤に対して実質的に不溶性とするのが好ましい。第2コーティング組成物204は溶剤とキラル物質(例えばコレステリック液晶モノマーまたはその他のキラル化合物、あるいはネマチック(例えば非キラル)液晶モノマーとキラル液晶モノマーまたはその他のキラル化合物との混合物)とを含む。第2コーティング組成物204のキラル物質の少なくとも一部は第1コーティング組成物の溶剤に対して少なくとも部分的には可溶である。また、第2コーティング組成物には、光学体による所望の反射波長領域の外の光を反射する層を形成するのに十分なキラル物質を含有させるのが好ましい。こうすることで、第2コーティング組成物は第1コーティング組成物を用いて形成される層にキラル物質を提供するリザーバとして作用し、しかもその後形成される光学体が所望の波長領域をカバーする能力を低減させることはない。第2コーティング組成物から形成されるコレステリック液晶のピッチ(第2コーティング組成物がコレステリック液晶を形成し得る場合)に変化があるとしても、その変化は所望の波長領域外でのみ観察できるものとするのが好ましい。
【0057】
第1コーティング組成物と第2コーティング組成物とが相互に接触する場合、第2コーティング組成物のキラル物質が第1コーティング組成物202中に拡散し得る。このようにキラル物質が拡散する結果、コレステリック液晶が中間ピッチを持つようになる。中間ピッチとは、第1コーティング組成物のみで形成されるコレステリック液晶層のピッチと第2コーティング組成物のみで形成されるコレステリック液晶層のピッチとの中間にあるピッチである。
【0058】
拡散の速度は、各組成物に用いた特定材料、これら組成物中で各材料が占めるパーセント、前記材料の分子量、組成物の温度、組成物の粘度、各組成物の重合化の程度など、様々な要因によって決まるものである。例えば材料、温度、粘度、ポリマー分子量等を選択したり、これらの変数の組み合わせを選択するなどして、これらの変数の一つまたはそれ以上を制御することによって、所望の拡散速度を得ることができる。任意に第1および第2コーティング組成物をオーブン116またはその他の加熱装置に入れて、第2コーティング組成物のキラル物質が第1コーティング組成物から形成された層の中に拡散する速度を高めるようにしても良い。このオーブンはまた、必要に応じて第1および第2コーティング組成物から溶剤を部分的または完全に除去する目的でも使用することができる。
【0059】
所望の程度の拡散を達成した後、第1および第2コーティング組成物を、例えば光源または熱源を備えた硬化ステーション118を用いて完全に硬化させる。一実施形態では、上述のように、第2コーティング組成物は第1コーティング組成物から形成された層の中に拡散してその層内および第2コーティング組成物内の物質を架橋することのできる物質を含む。
【0060】
基板200の速度およびコーティング組成物の流量を制御することによって、組成物202と組成物204の厚さをそれぞれ所望の厚さにする。また基板200の速度を制御することによって、オーブン108、116または硬化ステーション110、118による処理時間を変えることもできる。図1に示した装置および速度を変更して、基板上に2種類より多くの種類のコーティング組成物を連続的にコーティングするようにすることも可能である。例えば、装置にコーティング剤ディスペンサ、オーブン、または光源などを増設することができる。
【0061】
図2〜図4は図1の方法の各段階を説明するものである。本発明の一実施形態では、図2に示すように、第2コーティング組成物を塗布する前に第1コーティング組成物302を重合させる。重合の結果、第1コーティング組成物の厚さ方向に沿って分子量の勾配を形成させることもできる。この重合化は、熱不安定性の遊離ラジカル開始剤または感光性の遊離ラジカル開始剤(例えば光開始剤)を活性化することによって開始させることが可能である。遊離ラジカルの作用を阻害することのできる適切な化合物または酸素を第1コーティング組成物の表面に存在させることによって、遊離ラジカルの作用を阻害することもできる。硬化用の熱または光は、それぞれオーブンまたは紫外光などの適切な熱源または光源によって供給することができる。熱または光、あるいはその両方を照射する時間または強さを利用して、重合化の程度を変え、それによって分子量勾配に影響を与えることができる。重合化の程度はまた、処理中に存在する酸素の相対含有量を調整することによっても制御することができる。
【0062】
図2に示すように、第1コーティング組成物302を基板300に塗布する。第1コーティング組成物302は適当な溶剤の中に、第2コーティング組成物をコーティングする前または後に硬化させることができる高分子液晶物質または低分子液晶物質を含んでいる。
【0063】
図3に示すように、第1コーティング組成物を用いて形成した層303の上に第2コーティング組成物304を塗布する。分子量勾配を用いる場合、層303の分子量は一般に基板300と層303との界面から層303と第2コーティング組成物304との界面へと減少する。第2コーティング組成物304は層303中へ拡散し得るキラルモノマーを少なくとも1種含んでいる。キラル化合物の拡散の速度および程度を分子量勾配によって制限することができる。
【0064】
図4に示すように、第2コーティング組成物304から基板300上にコーティングされた層303へと拡散が生じて、第1および第2コーティング組成物から形成されたコレステリック液晶材料のピッチが厚さ方向に沿って変化する領域306が形成される。この領域306は図4に示すように元の層303の一部のみに拡がるようにしても良いし、層303の全体に拡がるようにしても良い。
【0065】
コーティング組成物が、重合されてコレステリック液晶層を形成するモノマーを含む実施形態では、これらのモノマーを部分的に重合化するのはコーティングの前、コーティング中、あるいはコーティング後の何れでも良いが、2つのコーティング組成物間の拡散が完了する前とする。例えば、加工経路の1箇所以上の地点に1つまたはそれ以上の硬化用光源または放射源を配置して、モノマーを特定速度で部分的に硬化(例えば重合または架橋)させても良い。こうすることによって、拡散速度を変え、最終的に得られるコレステリック液晶層内のピッチプロファイルを制御することができる。
【0066】
一例として、ここに記載した方法および構成により、広帯域反射型偏光器を形成することができる。この広帯域反射型偏光器は100nm、200nm,または300nm以上の波長領域に亘って一方向の偏光の光を実質的に均等に(例えば約10%または5%以下の偏差で)反射することができる。特に、可視波長領域(例えば約400nm〜750nm)において一方向の偏光の光を実質的に均等に反射する広帯域反射型偏光器を形成することができる。
【0067】
表示装置の実施例
コレステリック液晶光学体は、透過型(例えばバックライト型)、反射型、半透過型表示装置など様々な光学表示装置およびその他の用途に利用することができる。例えば、図5は表示媒体402と、バックライト404と、上記のコレステリック液晶反射型偏光器408と、任意に設けられるリフレクタ406とを備えるバックライト型表示システム400の一説明例を示す略断面図である。この表示システムは、任意に4分の1波長板をコレステリック液晶反射型偏光器の一部として、あるいは別個の部品として備えることにより、液晶反射型偏光器からの円偏光を直線偏光に変換するようもできる。見る人はバックライト404とは反対側にある表示装置402の側に位置する。
【0068】
表示媒体402は、バックライト404から出射される光を透過することによって、見る人に対して情報や画像を表示する。表示媒体402の一例として、一つの偏光状態の光のみを透過する液晶表示装置(LCD)がある。
【0069】
表示システム400を見るために使用される光を供給するバックライト404は、例えば光源416と光導波路418を備えるが、これ以外のバックライトシステムを用いることも可能である。図5に示した光導波路418は全体的に矩形の断面を有するものであるが、バックライトの光導波路は任意の形状でよい。例えば、光導波路418は楔形、チャネル形、擬似楔形などとすることができる。重要視しなければいけないのは、光導波路418が光源416から受光してその光を出射できるということである。このため、光418はその所望の機能を達成するべく、バックリフレクタ(例えば光学リフレクタ406)、抽出機構およびその他の成分を備えている。
【0070】
反射型偏光器408は上述のようなコレステリック液晶光学体を少なくとも一つ含む光学フィルムである。反射型偏光器408は、光導波路418から出射される一方向の偏光状態の光を実質的に透過し、光導波路418から出射される異なる偏光状態の光を実質的に反射するように構成される。
【0071】
図6は反射型液晶表示装置500の一種を概略的に示している。この反射型液晶表示装置500は、表示媒体502と、ミラー504と、反射型偏光器506とを備える。この表示システムに4分の1波長板をコレステリック液晶反射型偏光器の一部として、あるいは別個の成分として備えることにより、液晶反射型偏光器からの円偏光を直線偏光に変換するように構成することもできる。光508は反射型偏光器により偏光され、表示媒体を通過し、ミラーに当たって反射された後、表示媒体と反射型偏光器を通って戻る。この反射型液晶表示装置500の反射型偏光器は、上述のようなコレステリック液晶光学体を少なくとも一つ備えている。特定のコレステリック液晶光学体を選択するに際しては、例えばコスト、大きさ、厚さ、材料、対象となる波長領域などの要因が考慮される。
【0072】
コレステリック液晶光学体は、液晶表示装置の特性の向上あるいは特性の付加を行う様々な構成要素やフィルムと共に用いることができる。このような構成要素およびフィルムとして、例えば輝度向上フィルム、4分の1波長板およびフィルムなどのリターデーションプレート、多層反射型偏光器または連続相・分散相反射型偏光器、金属化バックリフレクタ、プリズム・バックリフレクタ、拡散反射形バックリフレクタ、多層誘電バックリフレクタ、ホログラフィック・バックリフレクタなどが挙げられる。
【実施例1】
【0073】
コーティング処理用として数種類のコーティング溶液を調製した。これらのコーティング溶液の組成を表1に示す。コーティング溶液4は溶液1と溶液2の混合液である。テトラヒドロフラン(THF)とメチルエチルケトン(MEK)(いずれもウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co., Milwaukee,WI)から入手可能)を溶剤として用いた。化合物Aの調製方法は、欧州特許出願公開公報第834754号に記載されている通りである。化合物Aの構造式は次の通り。
【化1】

化合物756(パリオカラー(Paliocolor)(登録商標)LC756)と化合物242(パリオカラー(Paliocolor)(登録商標)LC242)とは、ドイツ国ルードビヒスハーフェンのバスフ社(BASF; Ludwigshafen, Germany)から販売されている液晶モノマーである。ダロクール(Darocur(登録商標))4265(スイス国バーゼルのチバガイギー社製(Ciba Geigy Corp., Basel, Switzerland))は光開始剤である。ヴァゾ(Vazo(登録商標))52(デラウェア州ウィルミントンのデュポン社(DuPont, Wilmington, DE)は熱分解性の置換アゾニトリル化合物であり、これを遊離ラジカル開始剤として使用する。コーティングに用いる基板の上に、延伸(6.8倍に延伸)したポリビニルアルコール(PVA)(ペンシルバニア州アレンタウンのエア・プロダクツ社製エアヴォル425(Airvol 425, Air Products, Allentown, PA)からなる配向膜を設けた。
【0074】
表1に示したコーティング溶液1の各化合物を60℃でTHFに溶解してコーティング溶液1を調製した。その後コーティング溶液1を窒素ガスでパージした後、容器に密封して、60℃で16時間加熱し、液晶モノマーの重合化を行った。コーティング溶液2と3は、表に示した各化合物を60℃で溶剤に溶解して調製した。コーティング溶液4は室温で溶液1と溶液2を混合した後光開始剤を添加して調製した。
【0075】
コーティング溶液4を20番ワイヤ巻きロッドを用いてPVA基板上に塗布して光学体を形成した。コーティング溶液4の塗布は乾燥時の厚さが概ね7.5μmになるように行った。コーティングを室温で5分間空気乾燥した後、110℃のオーブンに10分間入れて、ポリマーの配向を行った。次に、300ワット/インチのフュージョン(Fusion(登録商標))コンベヤUV硬化システム(メリーランド州ガイザースバーグのフュージョンUVシステム社製フュージョンMC−6RQN(Fusion MC−6RQN;Fusion UV Systems, Inc., Gaithersburg, Maryland))とフュージョン(Fusion(登録商標))Dランプを用いて、空気中でコーティングを紫外線硬化させた。照射量は概ね1.5J/cm2であった。コーティングの硬化は20フィート/分×2パスで行った。
【0076】
続いてコーティング溶液3を硬化したコーティング溶液4の上に、やはり14番のワイヤ巻きロッドを用いて塗布した。このコーティングを再び室温で5分間空気乾燥した。コーティング溶液3の塗布は乾燥時の厚さが概ね5μmになるように行った。これら2層のコーティングを含む基板を90℃のオーブンに15分間入れ、コーティング組成物を拡散させた。2層のコーティングを含む基板を再び300ワット/インチのフュージョン(Fusion(登録商標))コンベヤUV硬化システムを用いて空気中で紫外線硬化させた。照射量は概ね1.5J/cm2であった。コーティングの硬化は20フィート/分×2パスで行った。
【0077】
最後に、ラムダ(Lambda(登録商標))900光電分光光度計(カリフォルニア州サンタクララのパーキン・エルマー社製)(Perkin Elmer, Santa Clara, CA)を用いて、光学体の光学特性を測定した。コーティングの正面に4分の1波長フィルムを置き、光路に標準直線偏光器を配置して、コーティングの透過率を400nm〜700nmの範囲で測定した。透過率の測定は、平行偏光と直交偏光の結果が得られるように、4分の1波長フィルムから+45°と−45°の両方の角度で回転させた直線偏光器を用いて行った。測定波長帯における透過率の測定結果を図7に示す。
【実施例2】
【0078】
表1に示したコーティング溶液5の各化合物を60℃でTHFに溶解してコーティング溶液5を調製した。その後コーティング溶液5を窒素ガスでパージした後、容器に密封して、60℃で16時間加熱し、液晶モノマーの重合化を行った。コーティング溶液6とコーティング溶液7は、表に示した各化合物を60℃で溶剤に溶解して調製した。コーティング溶液10は室温で溶液5と溶液6を混合した後、ドイツ国ルードビヒスハーフェンのバスフ社(BASF; Ludwigshafen, Germany)から販売されているルシリン(Lucirin(登録商標))TPOを添加して調製した。
【0079】
コーティング溶液10を26番ワイヤ巻きロッドを用いてPVA基板上に塗布して光学体を形成した。コーティング溶液10の塗布は乾燥時の厚さが概ね10μmになるように行った。コーティングを室温で5分間空気乾燥した後、115℃のオーブンに10分間入れて、ポリマーの配向を行った。次に、300ワット/インチのフュージョン(Fusion(登録商標))コンベヤUV硬化システム(フュージョンMC−6RQN(Fusion MC−6RQN)とフュージョン(Fusion(登録商標))H電球を用いて、空気中でコーティングを紫外線硬化させた。照射量は概ね1.2J/cm2であった。コーティングの硬化はフィルム裏側から20フィート/分×3パスで行った。
【0080】
続いてコーティング溶液7を硬化したコーティング溶液10の上に、14番のワイヤ巻きロッドを用いて塗布した。このコーティングを再び室温で5分間空気乾燥した。コーティング溶液7の塗布は乾燥時の厚さが概ね5μmになるように行った。これら2層のコーティングを含む基板を105℃のオーブンに6分間入れてコーティング組成物を拡散させた。2層のコーティングを含む基板を窒素雰囲気下で300ワット/インチのフュージョン(Fusion(登録商標))コンベヤUV硬化システムとフュージョン(Fusion)D電球を用いて、空気中で紫外線硬化させた。コーティングの硬化は20フィート/分×2パスで行った。
【0081】
最後に、ラムダ(Lambda(登録商標))900光電分光光度計(カリフォルニア州サンタクララのパーキン・エルマー社製)(Perkin Elmer, Santa Clara, CA)を用いて、光学体の光学特性を測定した。コーティングの正面に4分の1波長フィルムを置き、光路に標準直線偏光器を配置して、コーティングの透過率を400nm〜700nmの範囲で測定した。透過率の測定は、平行偏光と直交偏光の結果が得られるように、4分の1波長フィルムから+45°と−45°の両方の角度で回転させた直線偏光器を用いて行った。測定波長帯における透過率の測定結果を図8に示す。
【実施例3】
【0082】
表1に示したコーティング溶液8の各化合物を60℃でTHFに溶解してコーティング溶液8を調製した。その後コーティング溶液8を窒素ガスでパージした後、容器に密封して、60℃で16時間加熱し、液晶モノマーの重合化を行った。コーティング溶液9とコーティング溶液12は、表に示した各化合物を60℃で溶剤に溶解して調製した。コーティング溶液11は室温で溶液8と溶液9を混合した後光開始剤を添加して調製した。
【0083】
コーティング溶液11を20番ワイヤ巻きロッドを用いてPVA基板上に塗布して光学体を形成した。コーティング溶液11の塗布は乾燥時の厚さが概ね7.5μmになるように行った。コーティングを室温で5分間空気乾燥した後、120℃のオーブンに10分間入れて、ポリマーの配向を行った。次に、300ワット/インチのフュージョン(Fusion(登録商標))コンベヤUV硬化システム(フュージョンMC−6RQN(Fusion MC−6RQN))とフュージョン(Fusion(登録商標))Dランプを用いて、空気中でコーティングを紫外線硬化させた。照射量は概ね1.5J/cm2であった。コーティングの硬化はフィルム裏側から20フィート/分×2パスで行った。
【0084】
続いてコーティング溶液12を硬化したコーティング溶液11の上に、やはり20番のワイヤ巻きロッドを用いて塗布した。このコーティングを再び室温で5分間空気乾燥した。コーティング溶液12の塗布は乾燥時の厚さが概ね7.5μmになるように行った。これら2層のコーティングを含む基板を80℃のオーブンに10分間入れてコーティング組成物を拡散させた。2層のコーティングを含む基板を、窒素雰囲気下で300ワット/インチのフュージョン(Fusion(登録商標))コンベヤUV硬化システムを用いて再度紫外線硬化させた。照射量は概ね1.5J/cm2であった。コーティングの硬化は20フィート/分×2パスで行った。
【0085】
最後に、ラムダ(Lambda(登録商標))900光電分光光度計(カリフォルニア州サンタクララのパーキン・エルマー社製)(Perkin Elmer, Santa Clara, CA)を用いて、光学体の光学特性を測定した。コーティングの正面に4分の1波長フィルムを置き、光路に標準直線偏光器を配置して、コーティングの透過率を400nm〜700nmの範囲で測定した。透過率の測定は、平行偏光と直交偏光の結果が得られるように、4分の1波長フィルムから+45°と−45°の両方の角度で回転させた直線偏光器を用いて行った。測定波長帯における透過率の測定結果を図9に示す。
【実施例4】
【0086】
表1に示したコーティング溶液13の各化合物を60℃でTHFに溶解してコーティング溶液13を調製した。その後コーティング溶液13を窒素ガスでパージした後、容器に密封して、60℃で16時間加熱し、液晶モノマーの重合化を行った。コーティング溶液12を上述と同様に調製した。
【0087】
コーティング溶液13を16番ワイヤ巻きロッドを用いてPVA基板上に塗布して光学体を形成した。コーティング溶液13の塗布は乾燥時の厚さが概ね6μmになるように行った。コーティングを室温で5分間空気乾燥した後、130℃のオーブンに10分間入れて、ポリマーの配向を行った。次に、コーティング溶液12を引き続き16番ワイヤ巻きロッドを用いてコーティング溶液13の上に塗布した。このコーティングを再び室温で5分間空気乾燥した。コーティング溶液12の塗布は、乾燥時の厚さが概ね6μmになるように行った。これら2層のコーティングを含む基板を90℃のオーブンに7分間入れてコーティング組成物を拡散させた。次に2層のコーティングを含む基板を、窒素雰囲気下で300ワット/インチのフュージョン(Fusion(登録商標))コンベヤUV硬化システム(フュージョンMC−6RQN(Fusion MC−6RQN))を用いて紫外線硬化させた。照射量は概ね1.5J/cm2であった。コーティングの硬化は20フィート/分×2パスで行った。
【0088】
最後に、ラムダ(Lambda(登録商標))900光電分光光度計(カリフォルニア州サンタクララのパーキン・エルマー社製)(Perkin Elmer, Santa Clara, CA)を用いて、光学体の光学特性を測定した。コーティングの正面に4分の1波長フィルムを置き、光路に標準直線偏光器を配置して、コーティングの透過率を400nm〜700nmの範囲で測定した。透過率の測定は、平行偏光と直交偏光の結果が得られるように、4分の1波長フィルムから+45°と−45°の両方の角度で回転させた直線偏光器を用いて行った。測定波長帯における透過率の測定結果を図10に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
本発明は、以上に記載した具体的実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に適正に明記するところの本発明の全ての態様を包含すると解釈されるべきである。本発明の係る技術分野に精通する者が本明細書を検討すれば、様々な変更、等価の方法の他、本発明を適用し得る数多くの構造体についても明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学体の製造方法であって、
第1コーティング組成物を用いて基板上に第1コレステリック液晶ポリマー層を形成するステップと、
反応性キラルモノマーから選択される少なくとも1種のキラルモノマー物質を含む第2コーティング組成物を前記第1コレステリック液晶ポリマー層上にコーティングするステップと、
前記第1コレステリック液晶ポリマー層の前記第2コーティング組成物に隣接する部分に前記キラルモノマー物質の一部を拡散させるステップと、
前記キラルモノマー物質を硬化して、前記第1コレステリック液晶ポリマー層と第2コーティング組成物から、不均等なピッチを有する少なくとも1層のコレステリック液晶層を生成するステップとを含んでなる方法。
【請求項2】
第1コレステリック液晶ポリマー層の形成が、
コレステリック液晶化合物とコレステリック液晶モノマーとから選択した少なくとも1種のコレステリック液晶材料を含む第1コーティング組成物を基板上にコーティングすることと、
前記第1コーティング組成物を重合化して前記第1コレステリック液晶ポリマー層を形成することとからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1コーティング組成物の重合化が、空気に曝露された時に前記第1コーティング組成物を重合化して、前記第1コレステリック液晶ポリマー層の少なくとも一部に、前記基板に近いほど分子量が大きくなる分子量勾配を形成することからなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記キラルモノマー物質の一部の拡散が、前記第1コレステリック液晶ポリマー層の一部に前記キラルモノマー物質の一部を拡散させることからなり、前記拡散が前記第1コレステリック液晶ポリマー層の分子量勾配によって制限される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2コーティング組成物のコーティングが、前記第1コレステリック液晶ポリマー層上に前記第2コーティング組成物をコーティングすることからなり、前記第2コーティング組成物がさらに前記第1コレステリック液晶ポリマー層が実質的に不溶性である溶剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1コレステリック液晶ポリマー層の形成が、コレステリック液晶ポリマーを含む前記第1コーティング組成物で前記基板をコーティングすることからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記キラルモノマー物質の硬化が前記キラルモノマー物質を架橋させることからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記キラルモノマー物質の硬化が、前記キラルモノマー物質および前記第1コレステリック液晶ポリマー層を架橋させることからなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キラルモノマー物質と第1コレステリック液晶ポリマー層とを架橋させることにより、少なくとも1層のコレステリック液晶層を固定し、残りのキラルモノマー物質のそれ以上の拡散を実質的に阻害する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成するステップが、コレステリック液晶層の厚さ方向の少なくとも一部に沿って前記コレステリック液晶層のピッチが実質的に連続的に変化する少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成することからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成するステップが、コレステリック液晶層の厚さ方向の少なくとも一部に沿って前記コレステリック液晶層のピッチが実質的に単調に変化する少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成することからなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
光学体の製造方法であって、
コレステリック液晶化合物とコレステリック液晶モノマーとから選択される少なくとも1種のコレステリック液晶材料を含む第1コーティング組成物を用いて、基板上に第1層を形成するステップと、
反応性キラルモノマーから選択される少なくとも1種のキラルモノマー物質を含む第2コーティング組成物を前記第1層上にコーティングするステップと、
前記第1層の第2コーティング組成物に隣接する部分に前記キラルモノマー物質の一部を拡散させるステップと、
前記キラルモノマー物質を前記第1層と架橋させて、不均等なピッチを有する少なくとも1層のコレステリック液晶層を生成して固定するステップとを含んでなり、前記架橋により残りのキラルモノマー物質のそれ以上の拡散を阻害する方法。
【請求項13】
第1コーティング組成物を用いて基板上に第1層を形成するステップと、
第2コーティング組成物を前記第1層上にコーティングするステップであって、前記第1コーティング組成物と第2コーティング組成物とは異なるもので、かつ第1コーティング組成物と第2コーティング組成物の各々がキラル化合物から選択される少なくとも1種のキラル物質を含み、第2コーティング組成物が更に溶剤を含み、前記第1層が前記第2コーティング組成物の溶剤に実質的に不溶性であるステップと、
前記第2コーティング組成物の少なくとも一部を前記第1層の前記第2コーティング組成物に隣接する部分に拡散させるステップと、
前記第2コーティング組成物を前記第1層中に拡散させた後、前記第1層と第2コーティング組成物とから少なくとも1層のコレステリック液晶層を形成するステップとを含む、光学体の製造方法。
【請求項14】
前記第2コーティング組成物のキラル物質のキラル化合物が、コレステリック液晶化合物とコレステリック液晶モノマーとから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1層の形成が、前記第1コーティング組成物を前記基板上にコーティングすることからなり、前記第1コーティング組成物の少なくとも1種のコレステリック液晶材料が前記第2コーティング組成物の溶剤に対して実質的に不溶性である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1層の形成が、前記第1コーティング組成物を基板上にコーティングし、前記第1コーティング組成物を硬化させて高分子液晶物質を形成することからなり、前記高分子液晶物質が前記第2コーティング組成物の溶剤に対して実質的に不溶性である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2コーティング組成物がキラル液晶モノマー物質と非キラル物質とを含み、前記第1層中への第2コーティング組成物の拡散が、前記第2コーティング組成物のキラル液晶モノマー物質を前記第1層に拡散させることからなる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記キラル液晶モノマー物質の拡散が、前記非キラル物質の第1層への拡散より速い前記キラル液晶モノマー物質の第1層への拡散からなる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2コーティング組成物がキラルモノマー物質を含み、前記第2コーティング組成物の前記第1層への拡散が、前記第2コーティング組成物のキラルモノマー物質を前記第1層へ拡散させることからなる、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記第2コーティング組成物がさらに非キラル物質を含み、前記拡散ステップにおいて、前記キラル物質が前記第1層へ拡散する速度の方が、非キラル物質が前記第1層へ拡散する速度より速い、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1コーティング組成物および前記第2コーティング組成物がそれぞれスペーサを有する液晶化合物を含み、前記第1コーティング組成物のスペーサと前記第2コーティング組成物のスペーサが異なるものであり、それによってそれぞれの液晶化合物の溶解度を異ならせている、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
基板と、
前記基板上に設けられたコレステリック液晶層とを含む光学体であって、
前記コレステリック液晶層が前記コレステリック液晶層の厚さ方向に沿って不均等なピッチを有しており、前記コレステリック液晶層が、前記コレステリック液晶層を固定して前記コレステリック液晶層中のコレステリック液晶材料の拡散を阻害する架橋ポリマー物質を含む、光学体。
【請求項23】
前記コレステリック液晶層の少なくとも一部のピッチが厚さ方向に沿って単調に変化する、請求項22に記載の光学体。
【請求項24】
前記コレステリック液晶層の少なくとも基板に隣接する部分が均等なピッチを有する、請求項22に記載の光学体。
【請求項25】
前記コレステリック液晶層の基板と反対側の部分が、400〜750nmの範囲外の波長を有する光を反射するようなピッチを有する、請求項22に記載の光学体。
【請求項26】
表示媒体と反射型偏光器とを備える光学表示装置であって、前記反射型偏光器が、
基板と、
前記基板上に設けられたコレステリック液晶層とからなり、前記コレステリック液晶層は前記コレステリック液晶層の厚み方向に沿って不均等なピッチを有しており、前記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶層を実質的に固定して前記コレステリック液晶層内のコレステリック液晶材料の拡散を阻害する架橋ポリマー物質を含んでいる、光学表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−100153(P2011−100153A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−169(P2011−169)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【分割の表示】特願2002−568093(P2002−568093)の分割
【原出願日】平成13年11月29日(2001.11.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】