コロイド剤およびイムノクロマトグラフキット
【課題】検出感度および安定性に優れ、かつ取り扱いが簡便な標識用のコロイド剤および当該コロイド剤を含むキットを提供する。
【解決手段】レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有し、粒度分布のピークを少なくとも2〜40nm未満、および、40nm以上〜100nmの範囲のそれぞれに有するコロイド用粒子と、分散媒としての水と、のみからなる、分析対象物を標識するコロイド剤、および、当該コロイド剤と、少なくとも分析対象物およびコロイド剤を毛管現象により展開させて分析対象物を免疫学的に分析する分析手段と、を有するイムノクロマトグラフキット。
【解決手段】レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有し、粒度分布のピークを少なくとも2〜40nm未満、および、40nm以上〜100nmの範囲のそれぞれに有するコロイド用粒子と、分散媒としての水と、のみからなる、分析対象物を標識するコロイド剤、および、当該コロイド剤と、少なくとも分析対象物およびコロイド剤を毛管現象により展開させて分析対象物を免疫学的に分析する分析手段と、を有するイムノクロマトグラフキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調観察や発光や蛍光の強度等を測定して標識の存在を検出することにより、分析対象物の定量あるいは定性を行なう標識用のコロイド剤およびイムノクロマトグラフキットに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫学的測定方法の一つの手法としてイムノクロマト法が知られており、簡易で迅速な臨床診断法として実用化されている。
イムノクロマト法は、その判定・測定に重厚な設備・機器を必要とせず、操作が簡便であり、例えば分析対象物を含む可能性のある検体溶液を滴下した後、約5分〜10分間静置するだけで測定結果が得られる。そのため、簡便・迅速・特異性の高い判定・測定手法として、多くの場面、例えば病院における臨床検査、研究室における検定試験等に広く使われている。
イムノクロマト法では、細菌やウイルスを特異的に検出して患者の感染を迅速・簡便に特定することができ、その後の診断、治療を素早く的確に行うことができる。例えば、サンドイッチ法を利用したイムノクロマトグラフ法では、分析対象物(例えば、抗原)に特異的に結合する第1抗体を特定の領域に固定した不溶性の薄膜状支持体(例えば、ガラス繊維膜、ナイロン膜、又はセルロ−ス膜など)中に、分析対象物と特異的に結合する標識化第2抗体と、分析対象物を含む可能性のある検体溶液とを展開し、当該薄膜状支持体の第1抗体を固定した領域上で、分析対象物との免疫複合体を形成させ、標識の着色又は発色などのシグナルを検出し、分析対象物を測定することができる。当該標識としては、例えば、金属コロイド、酵素を含むタンパク質、着色ラテックス粒子および炭素粒子などを使用することができる。
【0003】
特許文献1〜4には、標識として金属コロイドを使用するイムノクロマト法が記載してある。
【0004】
特許文献1には、不溶性粒状マーカーを用いるバイオセンサにおいて、当該不溶性粒状マーカーが1または複数の粒子群よりなる金属コロイドであり、その粒子群の主ピークが平均粒径15から100nmの範囲にあることが記載してある。
不溶性粒状マーカーのサイズを大きくすることにより、低濃度領域の測定が可能となること、当該不溶性粒状マーカーは短時間で容易に作製可能であることが記載してある。
【0005】
特許文献2には、被検査液を展開する展開層に、前記被検査液中の検査対象物質を標識する標識試薬を保持した標識試薬部を設けたバイオセンサについて開示してある。標識試薬は不溶性粒状マーカーを含んでおり、当該不溶性粒状マーカーは、別途に作成され粒度分布の異なる少なくとも2つの粒子群が混合されたものである。例えば、混合金コロイド標識抗体として、30nm金コロイド標識抗体と40nm金コロイド標識抗体とを液量にて1:1になるように混合し、よく攪拌して作製することが開示してある。
当該不溶性粒状マーカーの各粒子群における粒度分布の主ピークは、平均粒径1から100nmの範囲となっている。
【0006】
特許文献3には、金コロイド粒子の表面に、白金コロイド粒子を担持してなる白金微粒子を含有する金属コロイド粒子であって、該白金微粒子の平均粒径が5nm以下であることが記載してある。
【0007】
特許文献4には、無機銀塩もしくは銀錯体、銀イオンの為の還元剤、および金属コロイド標識または金属カルコゲニド標識を含有するイムノクロマトグラフキットが記載してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−91353号公報
【特許文献2】特開2010−32396号公報
【特許文献3】特許第4180531号公報
【特許文献4】特開2008−139296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
市販の金コロイドなどの金属コロイドは界面活性剤等の添加剤を含み、当該界面活性剤がナノ粒子表面を覆うことで、安定にコロイド化されている。
一般に、同属の金属コロイドでも、粒子径が異なるとコロイドの安定性が異なる。そのため、同一の粒子径の金属コロイド粒子に抗体を結合させてタンパク質等でコーティングを行って安定させた後、粒子径が異なるコロイド群を混合する必要がある。即ち、特許文献1,2のように、別々の粒子径の金属コロイドを混合して使用するには手間を要する。
【0010】
特許文献3に記載のように、金コロイドに白金コロイドを結合するには、金コロイドを安定な状態で白金と反応させる必要があり、手間がかかる。また、特許文献4では銀を使用しているが、銀は還元力が強く、同時に自身が酸化する為に発色しやすく高い感度が得られるが、逆に安定性に乏しく、扱いが難しい。
【0011】
一般に、血液や唾液のように粘性が高く薄膜状支持体中を流れにくい検体に対して、イムノクロマト法では詰まり現象が起こることがある。通常、当該詰まり現象が起こる場合には、界面活性剤を添加して流動性を向上させ、詰まり防止策をとる。しかし、界面活性剤は測定物に対しても作用するため、多量の界面活性剤は感度低下を招く。特に競合免疫測定法のように分子量の小さな物質を測定する場合は致命的となり、少量の界面活性剤を添加した場合でも感度の低下を招く。そのため、検出感度を考慮しながら界面活性剤の添加量を決定する必要があり、煩雑である。
【0012】
詰まり現象が起こる場合、金属コロイドなどの標識物質の粒子径を小さくすることにより回避することも考えられる。しかし、一般に当該標識物質の粒子径を小さくすると発色が弱くなり、検出感度の低下を招く。
【0013】
また、界面活性剤を添加すれば、金属コロイド粒子が凝集する虞がある。このような不都合を避けるため、さらにコロイド粒子を分散させる分散剤を添加するなど、付加的な作業を行なう場合もある。
【0014】
従って、本発明の目的は、検出感度および安定性に優れ、かつ取り扱いが簡便な標識用のコロイド剤および当該コロイド剤を含むキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
即ち、上記目的を達成するため、以下の[1]〜[4]に示す発明を提供する。
[1] レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有し、前記粒度分布のピークを少なくとも2〜40nm未満、および、40nm以上〜100nmの範囲のそれぞれに有するコロイド用粒子と、分散媒としての水と、のみからなる、分析対象物を標識するコロイド剤。
[2] 前記コロイド用粒子が金属コロイド粒子および非金属コロイド粒子および樹脂コロイド粒子の何れか1つである上記[1]に記載のコロイド剤。
[3] 前記金属コロイド粒子が金コロイド粒子である上記[2]に記載のコロイド剤。
【0016】
上記[1]〜[3]の構成によれば、レーザーアブレーション法を適用することによって粒度分布が異なる複数の粒子群を有するコロイド用粒子を作製することができるため、別々の粒子径のコロイド用粒子を混合して使用する必要がない。本明細書における「コロイド用粒子」とは、溶媒と混合してコロイド状態にすることができる粒子のことをいう。分散媒としての水には、レーザーアブレーション法によって作製された粒度分布が異なる複数の粒子群を有するコロイド用粒子のみが含まれるため、界面活性剤等の添加剤を入れなくてもコロイド用粒子そのもののゼータ電位を高い状態に維持することが可能となる。「ゼータ電位」とは、分散された粒子の分散安定性の指標として用いられており、ゼータ電位の絶対値が増加すれば、粒子間の反発力が強くなり粒子の安定性は高くなり、ゼータ電位がゼロに近くなると、粒子は凝集しやすくなる。そのため、本発明のコロイド剤は、粒度分布が異なる複数の粒子群を有していても凝集し難く、安定なコロイド状態を得ることができる。
また、分散媒中においてはコロイド用粒子の他は何れの物質も含まないため、当該コロイド用粒子は分析対象物に対してほぼ理論通りの標識やコーティングを容易に行なえる。さらに、コロイド用粒子の表面が界面活性剤などで覆われていないため抗体などの生体物質との結合力が強くなり、分析反応中に当該生体物質の剥離などが起きないため、強いシグナルを得やすい。
【0017】
本発明では、コロイド粒子が2〜100nmの範囲に複数の粒度分布を有している。即ち、粒子径の小さい群は粒度分布のピークを少なくとも40nm未満までに有する群であり、大きい粒子径を有する群は粒度分布のピークを少なくとも40nm以上の範囲に有する群とする。
【0018】
このようなコロイド用粒子において、小さい粒子径を有する群(40nm未満)は、その小ささ故にコロイド剤が毛管現象によってメンブレン中を展開する際の流動性を向上させることができ、大きい粒子径を有する群(40nm以上)は、その大きさ故に標識としての感度を向上させることができる。そのため、本発明のコロイド剤は、界面活性剤などの添加剤を追加せずとも、流動性および検出感度に優れるため、血液や唾液に代表される粘性の高い検体に対して有効である。さらに、粒子径が小さくとも強く発色する金属コロイドや、非金属コロイド粒子および樹脂コロイド粒子を使えば優れた検出感度が得られる。
また、金属コロイドが金コロイドのような直接標識であれば、分析結果を目視で直接観察できるため、検出機器を使用せずともオンサイトで簡便に分析を行なうことができる。
【0019】
[4] 上記[1]〜[3]の何れか一項に記載のコロイド剤と、少なくとも前記分析対象物および前記コロイド剤を毛管現象により展開させて前記分析対象物を免疫学的に分析する分析手段と、を有するイムノクロマトグラフキット。
【0020】
本構成では、検出感度および安定性に優れ、かつ取り扱いが簡便な標識用のコロイド剤を含むイムノクロマトグラフキットを供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】液体中でナノ粒子(コロイド用粒子)を生成するためのレーザー系システムを概略的に示す図である。
【図2】1ヶ月の間隔に亘って測定した金コロイド粒子の波長に対する吸光度(吸収スペクトル)のプロットを示す図である(2つの曲線は、共鳴ピーク付近でほぼ一致し、それはコロイドの高安定性を示す)。
【図3】液体中の2つの小粒子の間の相互作用ポテンシャルを概略的に示すプロットを示す図である(図3(a):実線の曲線は、粒子間の引力ポテンシャルを示す。破線の曲線は、例えばクーロン反発力による推定の反発ポテンシャルを示す。図3(b):引力ポテンシャル及び反発ポテンシャルの合計は、2つの粒子の間の最近接距離を増大させ得る一定の距離(x0)での反発ポテンシャル障壁を形成する)。
【図4】透過型電子顕微鏡(TEM)試料採取グリッド上のコロイドの滴を乾燥させることにより試料採取された金コロイド粒子のTEM像を示す写真図である。
【図5】銀、金及び銅コロイド粒子の吸収スペクトルを示す波長に対する吸光度のプロットを示す図である。
【図6】0(純粋なAg)、30、45、80及び100(純粋なAu)パーセントの5つのAu含有率を有するAuAg合金コロイド粒子の吸収スペクトルを示す波長に対する吸光度のプロットを示す図である。
【図7】一連の合金コロイド粒子像を示す写真図である(各種の色は、種々のプラズモン共鳴波長から生じる)。
【図8】レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子のTEM像を示す写真図および粒度分布を示すグラフである。
【図9】レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子のTEM像を示す写真図および粒度分布を示すグラフである。
【図10】レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子のTEM像を示す写真図である。
【図11】市販の金コロイド粒子のTEM像を示す写真図である。
【図12】レーザーアブレーション法により作製した金コロイド粒子および市販の金コロイド粒子の感度比較(検量線)を示すグラフである。
【図13】レーザーアブレーション法により作製した金コロイド粒子および市販の金コロイド粒子の感度比較(検量線)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の分析対象物を標識するコロイド剤は、色調観察や発光や蛍光の強度等を測定して標識の存在を検出することにより、分析対象物の定量あるいは定性を行なう標識物質である。
例えば標識した抗体を使用した場合における免疫反応の結果、生成する特異的複合体中の被検出物質の量に応じて標識物質が存在することになる。未反応物を除去した後、標識物質の量を測定することで「分析対象物」を定量することができる。標識物質の定量は、標識物質の種類と共に種々の方法をとりうる。測定された標識強度を、既知量の「分析対象物」を測定した場合の標識強度と比較することにより、液体試料中の被検出物質量を決定できる。
【0023】
本発明のコロイド剤は、レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有し、粒度分布のピークを少なくとも2〜40nm未満、および、40nm以上〜100nmの範囲のそれぞれに有するコロイド用粒子と、分散媒としての水と、のみからなる。
【0024】
コロイド用粒子はレーザーアブレーション法によって作製される。レーザーアブレーションとは、強力なレーザー光を固体に照射して、表面から原子、分子、クラスターを蒸発させて固体表面を削り取る現象のことである。レーザーアブレーション法による具体的なコロイド用粒子の作製方法は後述する。本発明のコロイド剤は、レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有している。「粒度分布が異なる複数の粒子群」とは、例えば後述するサンプルCのように5〜10nmおよび40〜60nmの二つ(複数)の粒度分布を有する粒子群をいう。即ち、本発明のコロイド剤は、単一のピークを有する粒度分布を有するのではなく、粒度分布のピークを少なくとも40nmまで、および、40nmより大きい範囲のそれぞれに有する。粒子径の範囲は、上述した範囲に限られるものではなく、例えば全粒子が概ね2〜100nmの範囲に存在する状態で、複数の粒度分布を有していればよい。
【0025】
本発明のコロイド剤は、コロイド用粒子を分散させる溶液が例えば純水であり、界面活性剤・pH安定剤・分散安定剤などを必要としない。即ち、本発明のコロイド剤は、コロイド用粒子とその分散媒のみからなる組成物である。
【0026】
当該コロイド剤は、界面活性剤等を入れなくてもコロイド用粒子そのもののゼータ電位を高い状態で維持しており、そのために粒度分布が異なる複数の粒子群を有していても凝集し難く、安定なコロイド状態を得ることができる。
【0027】
コロイド用粒子において、二つの粒度分布を有する、即ち粒度分布のピークを少なくとも40nmまで、および、40nmより大きい範囲のそれぞれに有するように構成した場合、小さい粒子径を有する群は、その小ささ故にコロイド剤が毛管現象によってメンブレン中を展開する際の流動性を向上させる成分となり、大きい粒子径を有する群は、その大きさ故に標識としての感度を向上させる成分となる。
【0028】
また、当該粒度分布のピークは三つ以上有するように構成することが可能である。この場合、後述するコロイド用粒子の作製方法において、レーザーパラメータ(パルス幅、パルスエネルギー、パルス繰返し率、ビーム移動量)を制御することによって粒度分布のピークを調製することが可能となる。
【0029】
コロイド用粒子は、金属コロイド粒子または非金属コロイド粒子を使用するとよい。当該コロイド粒子に適用できる金属または非金属は、例えば、金、銀、銅、プラチナ、セレニウム、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ガリウム、セレン、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガトリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチンやこれらを含有する合金を使用することができる。
【0030】
また、上述した金属に替えて樹脂を使用することができる。当該樹脂は、例えばラテックス、フッ素、ナイロン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ乳酸、アクリル、メタクリルなどを使用できる。
【0031】
本発明のコロイド剤を使用して分析対象物を分析する場合は、例えば「免疫化学的手法」によって行なうとよい。例えば固相法によるイムノアッセイの手法を適用することにより液体試料中の分析対象物の存在を検出あるいは定量的測定ができる。イムノアッセイの形態は、競合法、サンドイッチ型の抗原抗体反応(サンドイッチ法)の何れを利用してもよい。サンドイッチ法では、例えば抗原のような標的となる分析対象物を、標識化抗体と固定化物質表面に固定化された抗体との間に挟むことにより特異的複合体を形成させ、分析対象物を捕捉することができる。
【0032】
このような免疫化学的手法は、少なくとも分析対象物およびコロイド剤を毛管現象により展開させて分析対象物を免疫学的に分析する分析手段を用いて行なわれる。
【0033】
当該分析手段は、例えば、分析対象物およびコロイド剤を毛管現象により展開させるメンブレンに、分析対象物およびコロイド剤が結合した結合物質と免疫特異的に反応する反応物質を、あらかじめ特定の領域に固相化した分析部位を形成したものである。当該メンブレンは、例えばポアの直径が10〜200μm、厚さ100〜3000μmのニトロセルロースメンブレン・アセテート混ニトロセルロースメンブレン・ナイロンメンブレン・ポリエーテルスルホンメンブレン・ポリビニリデンジフルオライドメンブレンが好適に用いられる。
【0034】
当該分析手段は、上述したコロイド剤とセットにしたイムノクロマトグラフキットとして提供される。
【0035】
(レーザーアブレーション法によるコロイド用粒子の作製)
図1に、液体中でナノ粒子(コロイド用粒子)を生成するためのレーザー系システムの一部を概略的に示す。一実施態様において、レーザービーム1は、超短パルス源(図示せず)から受光され、レンズ2によって焦束され、ターゲット4にビームの急速移動用機構、例えば振動ミラー3により誘導される。ターゲット4は、容器6に含まれる液体5の表面の下に数ミリメートル浸水され、好ましくは1cm未満浸水される。容器6は、運動ステージ7、例えば移動ステージ上に配置される。コロイド用粒子8が押し流されて他の場所で回収されるように、液体の流れが容器に導入される。また、液体の流れは、レーザー焦点体積をも冷却する。前記液体は、好ましくは1Mオーム・cm超の比抵抗を有する脱イオン水であることが好ましい。幾つかの実施態様において、前記液体は、蒸留水又は別の適切な液体であってよい。制御装置(図示せず)は、パルス線源、運動システム及び/又は循環システムに動作可能なように連結される。制御装置は、ビームの発出、液体の流れ及び運動を調整する。また、制御装置は、システムコンピュータ、ユーザーインターフェース、電気通信機器及び/又は他の標準装置に連結され、遠隔地からプログラムされるように構成される。
【0036】
ナノ粒子生成用レーザーは、約1.03μmの波長(数ミリメートルの水の層は、この波長で無視し得る吸光度を有する)、約1〜20マイクロジュールの範囲、好ましくは約10マイクロジュール未満のパルスエネルギーを有してよい。約500fs、最高約10psのパルス幅が、ナノ粒子の形成に著しい影響を及ぼすことなく用いられ得る。パルス繰返し率は、約100kHz〜5MHzの範囲であってよい。好ましいレーザーシステムは、更に後述される。水流、ビーム移動、又はその両方が、高繰返し率での蓄熱を回避するために用いられ得る。
【0037】
例えば、振動ミラー3は、ターゲット表面上へのレーザービームの急速なラスター又は他の移動のために構成される。幾つかの実施態様において、ミラー振動数は10Hzより大きいことが好ましく、角度振幅は1mradより大きいことが好ましい。0.01m/s超のターゲット表面上のラスター速度が提供され得る。かかるミラーは、圧電駆動ミラー(piezo-driven mirror)、ガルバノメーターミラー、又はビーム移動のための他の適切な装置であり得る。
【0038】
水流は、循環システムにより容器に導入することが可能であり、流速は10mL/s超であることが好ましい。循環システムが利用可能でない場合は、横振動移動を導入することによってアブレーションスポット全体に亘る水流を局所的に引き起こすこともできる。例えば、運動ステージ7は、図1に示すようにレーザービームに対して垂直な方向に移動させることができる。振動ステージは、数Hzの振動数と数ミリメートルの振幅とを有することが好ましい。
【0039】
各種実施態様において、安定で且つ化学的に純粋なコロイド用粒子は、レーザーパラメータ及び液流量の両方を制御することによって製造される。レーザーパラメータとしては、パルス幅、パルスエネルギー、パルス繰返し率、ビーム移動量が挙げられる。
【0040】
超短パルス幅が好ましい。多くのレーザー加工用途において、例えば数ピコ秒〜数百フェムト秒の範囲の超短パルス幅は、非常に高い最大出力及び小さな熱影響部の結果としてアブレーション効率を高める。
【0041】
ナノ粒子生成における適用のために、特に本発明者らにより行なわれた研究(文献1:B. Liu, Z. D. Hu, Y. Che, Y. B. Chen, X. Q. Pan, "Nanoparticle generation in ultrafast pulsed laser ablation of nickel", Applied Physics Letters, Vol. 90, 044103 (2007), 文献2:B. Liu, Z. D. Hu, Y. Che, "Ultrafast sources: ultrafast lasers produce nanoparticles", Laser Focus World, Vol. 43, 74 (2007))において、アブレーション閾値に近い低パルスエネルギー(より正確には低フルエンス)がコロイド用粒子生成に好ましいことが分かった。アブレート材料は、主に粒度分布が狭いナノ粒子の形態で存在する。また、米国特許出願第2008/0006524号は、これらの研究に基づく真空中及び雰囲気ガス中におけるコロイド用粒子の生成方法をも教示する。
【0042】
好ましくは、例えば少なくとも約10kHz、より好ましくは少なくとも約100KHzの高パルス繰返し率が、少なくとも3つの理由のために用いられる。第1は、高繰返し率パルスレーザーアブレーションにおけるマルチパルス効果である。10マイクロ秒未満のパルス間隔(即ち、100kHz超の高繰返し率)により、アブレート材料は、レーザー焦点体積から離れる前に、多数のレーザー発射を受け、高く帯電する。本発明者らは、安定なコロイド用粒子が、更なる化学的安定剤を添加することなくかかる高繰返し率で作製され得ることを見出した。第2の理由は、マルチパルスによるアブレーションの際、大粒子の断片化が起きる可能性があり、それによってコロイド用粒子の粒度分布が生じる結果となる。第3の理由は、高繰返し率から恩恵を受ける高生成率である。
【0043】
また、本発明者らは、アブレーションの間のレーザービームの急速なラスターが、高繰返し率の操作と共に有益であるということをも見出した。例えば、レーザービームのかかる急速なラスターなしでは、先行するレーザーパルスにより生成したコロイド用粒子の流れが、散乱及び吸収によってその後のレーザーパルスを最終的には遮断することになる。更に重要なことに、高繰返し率による水に対する蓄積した加熱はまた、コロイド用粒子の凝集を誘発する可能性もある。
【0044】
本発明者らは、レーザーパラメータの他に、液体運動も安定なコロイド用粒子の作製に有用であることを見出した。水におけるコロイド用粒子の分散懸濁液は、本質的に準安定状態、即ち、熱力学的に安定な状態ではなく動力学的に安定な状態にある。生成中に液体を流すことにより、凝集の動力学的障壁を克服し得るコロイド用粒子の熱的移動の低下が促進される。更に、レーザービームの急速なラスターはまた、コロイド用粒子の熱運動を低下させるためにも有益である。
【0045】
幾つかの実施態様は、各種のプラズモン共鳴波長を有するコロイド用粒子を提供するものである。これは、金属合金ターゲットを用いることにより達成され得る。文献2は、NiFe等の二元合金について、アブレーション閾値付近の低フルエンスアブレーションによって、新規の合金ターゲットと同じ合金組成を有するコロイド用粒子が生成されることを示した。これらの研究に基づいて、各種実施態様は、二元合金ターゲットを用いて、各種組成を有し、従って各種プラズモン共鳴周波数を有する合金コロイド用粒子を作製する方法を提供する。
【0046】
以下の実施例において、IB族元素Au、Ag、Cu及びそれらの合金は、実証例として使用される。しかし、実施例は非限定的であり、各種実施態様において他の金属及び金属合金を利用してよい。例えば、貴金属を利用してよい。かかる金属としては、白金、パラジウム、白金又はパラジウムを含む合金が挙げられるが、これらに限定されない。適切な金属又は金属合金ターゲットは、超短パルスによって改質される。最も好ましくは、ターゲット材料は、液体と非反応性であり、レーザー加工の間に水又は他の液体により酸化されない。他の金属をアブレートするためのアブレーション閾値及び他のレーザーパラメータが、本明細書において考察されるようにAuとは多少異なり、これらの金属のコロイド又はそれらの金属合金が本発明の範囲内であることは、当業者によって認識されるであろう。
【0047】
図2は、上記で開示された通りの高繰返し率、超短レーザーアブレーションで作製され、1ヵ月後に測定されて安定性を決定した金コロイド粒子の2つの吸収スペクトルを示す。2つのスペクトルは共鳴ピーク付近でほとんど同一であり、このことはコロイドの高安定性を示す。実際、本発明者らはまた、約8ヵ月の延長期間の間凝集することなく安定であった金コロイド粒子をも製造した。
【0048】
その中で働くメカニズムを理解することは、実施態様の実施に必要でないにもかかわらず、凝集に対する金コロイドの安定性を調べた。金コロイドに数滴の1M NaCl水溶液を意図的に添加することによって簡単な試験を行った。元々赤色の金コロイドは、NaCl溶液を添加した際に即座に黒紫色になった。1時間未満で、暗色は消失し、金コロイドは無色透明になり、可視の沈降物が容器下部に沈んだ。この簡単な試験は、金コロイド粒子が帯電し、添加されたNa+イオン及びCl-イオンがクーロン反発力を遮蔽し、ナノ粒子凝集を引き起こしたことを示唆した。
【0049】
図3は、液体中の2つの小粒子の間の距離xの関数としての相互作用ポテンシャルWの2つの場合を概略的に示す。図3(a)における実線の曲線は、引力ポテンシャルを示すが、前記引力ポテンシャルは、水中の金コロイド粒子の場合、(i)金コロイド粒子間のファンデルワールス引力、及び(ii)界面エネルギーを減少させるために粒子凝集を選好する金の表面と水の間の疎水性相互作用による可能性がある。コロイド粒子が帯電している場合、破線の曲線で示されるクーロン反発力が粒子間に存在する。2つの逆のポテンシャルの合計は、図3(b)に示されるが、ここで一定の距離x0付近の正の(即ち反発)障壁は、粒子凝集を防止する役割を果たす。
【0050】
ナノ粒子電荷は、高繰返し率パルスレーザーアブレーションにおけるマルチパルス効果から生じる可能性がある。一般に、各単一のレーザー発射は、十分に強力である場合、イオン、電子、中性物及び粒子の混合物を生成するが、前記混合物は、多くの場合「プルーム」と呼ばれる。かかる混合物は、レーザー強度がアブレーション閾値を越える場合に生成され得る。しかし、単一のレーザー発射により生成されたプルームについては、電荷は大部分が蒸気部分にあり、一方で固体部分、特にナノ粒子は、大部分が中性のままである。10マイクロ秒未満のパルス間隔を有する高繰返し率レーザーを用いる場合、固体部分、特にプルームのナノ粒子は、焦点体積から離れる前に多数のレーザー発射を受ける。この時間の間、粒子が強力レーザー場によって帯電する。
【0051】
かかるコロイドにおいて、粒子は凝集に対して準安定に分散し続ける。図3(b)に示されるように、粒子が障壁の高さより大きいKTに相当する十分な熱エネルギーを得る場合、粒子は、引力トラップ及び凝集体に落ち込む。このメカニズムは、図3(b)において上方の破線の横線により示され、長パルス幅及び高パルスエネルギーを使用する場合に水中におけるパルスレーザーアブレーションにより生成する金属コロイド用粒子が凝集する傾向がある理由を部分的に説明することができる。例えば、水破壊閾値は、約1×1013W/cm2であり、1nsのパルスについての約104J/cm2のフルエンスに相当する。水破壊閾値を下回るフルエンスによっても、かかる長いレーザーパルスの照射下での水は、容易にその沸点を超えた高温に加熱され得る。その加熱は、アブレーションの間に視覚的に観察され得る泡によって明らかにされる。従って、コロイド用粒子は、反発障壁を克服するように十分な熱エネルギーを得ることができる。コロイド用粒子は、引力トラップ及び凝集体に落ち込む。同じ理由のため、高繰返し率レーザー、例えば10kHz以上でのレーザービームの急速なラスターは、水中の蓄熱を減少させることができる。また、水流は、レーザーの焦点体積に新鮮で且つ冷たい水を送り込むことにも役立つ可能性がある。
【0052】
幾つかの実施態様において、アブレーションは、相対的に低いフルエンスで行われる。1psのパルスで約10J/cm2のフルエンスは、過度であり得る。例えば、かかる過度のフルエンスは、アブレーション閾値(例えば、ほとんどの金属について1psのパルスで約1J/cm2)よりも数倍大きくてよい。過度のフルエンスにより、アブレート材料は大部分が蒸発し、その後、蒸気は、液体の静水圧下で再核生成される。換言すれば、相展開の経路は、固体バルクから蒸気へ、次いで固体粒子へというものである。その結果、核生成の際にコロイド用粒子の詰まったネットワークが形成し、それが凝集に対する安定性を低下させる。
【0053】
真空中及び低圧雰囲気ガス中における超短パルスレーザーアブレーションの研究(文献1)において、アブレーション閾値付近の低レーザーフルエンス、典型的にはほとんどの金属について約3J/cm2未満で、アブレートされた材料は、外的に印加された高圧によって強制的核生成が生じることなく自動的にコロイド用粒子の集合として存在することが分かった。この所見は、臨界点相爆発に基づいて後で説明されるが(文献3:T. E. Itina, M. E. Povarnitsyn, K. Gouriet, S. Noel, J. Hermann, "Mechanisms of nanoparticle formation by short laser pulses", Proceedings of SPIE, Vol. 6458, 64581U-1, (2007))、その場合、固体バルクが材料の臨界点付近でナノ粒子に崩壊する。このメカニズムは、相展開経路が固体バルクから固体ナノ粒子へというものであるナノ粒子生成用途のための好ましい低フルエンスを部分的に説明することができる。
【0054】
例えば、金属又は金属合金コロイド用粒子を作製するための各種実施態様において、パルス強度は、約1011〜1013W/cm2、好ましくは約1012〜低1013W/cm2、最も好ましくは約0.5×1012〜3×1012W/cm2の範囲であってよい。更に、上記のフルエンス値では、少なくとも約10mL/秒の表面及び液体流量での0.01〜1m/sの速度によるラスター操作が適切である。例えば、1psパルスでの最小フルエンスは、約0.1J/cm2であってよい。
【0055】
図4は、金コロイド粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。試料は、TEM試料採取グリッド上のコロイドの滴を乾燥させることにより得られる。集合は大部分が4〜5nmのナノ粒子であり、且つ、約30〜50nmの直径を有する顕著により大きなナノ粒子があることが観察される。この二峰性粒度分布は、真空中におけるNi等の他の材料の超短パルスレーザーアブレーションによって生成したナノ粒子において観察されたものと一致する(文献1)。粒度分布は、例えばガウスビームプロファイル(Gaussian beam profile)の代わりにフラットな横方向のビームプロファイルを用いることにより改善され得る。しかし、多くの用途について、二峰性粒度分布は性能に影響を及ぼす。
【0056】
低フルエンスによる粒子の低生成率を補償するため、高繰返し率レーザーもまた好ましい。これは、高繰返し率の源、例えば約0.1μ秒以下の時間間隔を有する少なくとも2つのパルスを生成する源の使用の更に別の理由である。
【0057】
IMRA America Inc.は、幾つかのファイバ型チャープパルス(chirped pulse)増幅システムを開示した。例えば、かかるシステムは、100kHz〜1MHz超の高繰返し率と、500フェムト秒〜数ピコ秒の超短パルス幅と、10W超の平均電力とを提供する。例えば、ファイバ型チャープパルス増幅システム(FCPA)が、各種実施態様において使用され得る。IMRA Americaから市販されているD−1000は、1Wの平均電力で、マイクロジュールパルス及び100KHz〜5MHzの範囲に亘る調整可能な繰返し率を提供する。出力パルス幅は、1ps未満である。これらのレーザーは、特に現行の用途に適している。標準固体レーザーの典型的な10Hz〜1kHzの繰返し率と比較して、ファイバ型システムは、粒子の生成率を1桁改善させることができる。200kHzの繰返し率、1パルスにつき10マイクロジュールのパルスエネルギー(2Wの平均電力)、及び500fsのパルス幅により、1センチメートル当たりの光学濃度(O.D.)を有する金コロイド粒子の20mLのコロイドが30分間で生成され得る。これは、文献4(S. Barcikowski, A. Hahn, A. V. Kabashin, B. N. Chichkov, "Properties of nanoparticles generated during femtosecond laser machining in air and water", Applied Physics A, Vol. 87, 47, 2007)におけるもの等の報告されたレーザーアブレーションに基づく方法よりも非常に速い速度である。10Wの典型的な平均電力によって、且つ、スプリットビームによって、生成速度を5倍増加させることが可能である。
【0058】
本明細書に開示される方法は、銀及び銅に適用され得る。図5は、IB族の3種全ての元素のナノ粒子の吸収スペクトルを示しているが、全ては、顕著なプラズモン共鳴ピークを示す。
【0059】
各種実施態様の別の一態様は、各種のプラズモン共鳴波長を有する金属合金コロイド用粒子を提供することである。真空中におけるNiFe合金の超短パルスレーザーアブレーションの以前の研究(文献2)において、アブレーション閾値の近くの低いフルエンスによって、生成物ナノ粒子が新規の合金ターゲットと同じ合金組成を有することが見出された。これは、固体バルクのその臨界点付近のナノ粒子への崩壊としても理解されるが、その間、合金相分離が阻害される。この知見が水中におけるアブレーションに適用される場合、各種合金組成と各種プラズモン共鳴波長とを有するIB族金属の合金ナノ粒子のコロイドが得られる。
【0060】
図6は、0(即ち、純粋なAg)から100(即ち、純粋なAu)パーセントまで変化する5つのAu組成を有する一連のAuAg合金コロイドの吸収スペクトルを示す。その合金組成を有するプラズモン共鳴波長のシフトは明らかである。図7は、AuAg及びAuCuを含む幾つかのかかるIB族合金コロイド粒子の像である。各種の色は、種々のプラズモン共鳴波長から生じる。
【0061】
コロイド状ナノ粒子は、コロイド用粒子粉末として回収することができ、コロイド用粒子ペースト又はコロイド用粒子インクに濃縮することができ、固体保持体に分散させることができ、薄膜又は三次元構造に集めることもできる。コロイド状ナノ粒子のこれらの集合又は改変の用途としては、導電ペースト、インク、触媒、フォトニック結晶、化学的及び生物学的センサ、医療及びライフサイエンス製品、環境的製品(例えば、抗バクテリア剤、脱臭剤、浄水剤)が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0062】
レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子と市販の金コロイド粒子との比較を透過型電子顕微鏡(TEM)にて行なった。レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子のTEM像を図8(サンプルA),図9(サンプルB)、図10(サンプルC)に示し、市販の金コロイド粒子のTEM像を図11に示した。
【0063】
サンプルAの金コロイド粒子は、平均粒子径(avg)12.5nm、標準偏差(sdev)6.3であった。粒度分布は約2〜60nmおよび65nmにて認められた。
サンプルBの金コロイド粒子は、平均粒子径21.9nm、標準偏差6.3であった。粒度分布は約10〜38nmおよび66nmにて認められた。
サンプルCでは、図10に示したように、10〜26nm,41〜68nmの金コロイド粒子の分布が認められた。
これらサンプルA〜Cは、粒度分布の範囲が不連続な種々の粒度を有する金コロイド、即ち「粒度分布が異なる複数の粒子群」を有する金コロイドであると認められた。
【0064】
一方、市販の金コロイド粒子は、図11に示したように、26.3〜37.5nmの粒子が確認でき、凡その粒度分布は25〜40nmの範囲のみであると認められた。また、当該金コロイド粒子は、界面活性剤のような高分子の中に存在しているものと認められた。当該高分子が存在することで、当該金コロイド粒子は凝集し易くなると考えられる。本発明のコロイド剤(サンプルA〜C)では、分散媒中における金コロイド粒子の他は何れの物質を含まないため、凝集し難くなっていることが判る(図8〜10)。
【0065】
〔実施例1〕
本実施例では、当該ライフサイエンス製品として、分析対象物を定量するための標識としてのコロイド剤として使用する場合について説明する。
【0066】
マウス由来の抗テストステロン抗体(Acris Antibodies社)を、上述したレーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1,1−2)へ修飾した。
(1−1)ポリプロピレン(PP)製の遠心管に適量の金コロイド液を投入し、50mMのリン酸緩衝液(pH8.5)を加えて1分間攪拌した。
(1−2)蒸留水で希釈し、抗テストステロン抗体溶液を上記遠心管に攪拌しながら添加した。
(1−3)室温で10分間静置した後、ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を加え軽く攪拌した。
(1−4)8000rpmで10分間遠心して沈殿させた後、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させ、トリス緩衝液を20mL加えた。
(1−5)8000rpmで10分間遠心し沈殿させた後、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させた。
(1−6)分光光度計でλ520の吸光度を測定し回収量を確認した。
【0067】
同様にマウス由来の抗テストステロン抗体(Acris Antibodies社)を市販の直径40nmの金コロイド(比較例1)(British BioCell International社)へ修飾した。
(2−1)PP製の遠心管に適量の金コロイド液を入れ、50mMのリン酸緩衝液(pH8.5)を加えて1分間攪拌した。
(2−2)蒸留水で希釈し、抗テストステロン抗体溶液を、上記遠心管に攪拌しながら添加した。
(2−3)室温で10分間静置した後、ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を加え軽く攪拌した。
(2−4)5000rpmで10分間遠心して沈殿させた後、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させ、保存用トリス緩衝液を20mL加えた。
(2−5)5000rpmで10分間遠心し沈殿させた後、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させた。
(2−6)分光光度計でλ520の吸光度を測定し回収量を確認した。
【0068】
上記の金コロイド修飾済み抗テストステロン抗体をグラスファイバーコンジュゲートパッド(ミリポア社)へ塗布し、風乾した。
【0069】
テストステロン-BSA複合体2.0mg/mLをニトロセルロースメンブレン(ミリポア社)に塗布して風乾し、ラインA(テストライン)とした。また、ウサギ由来の抗マウスIgG抗体0.5mg/mLを同一のニトロセルロースメンブレンに塗布して風乾し、ラインB(コントロールライン)とした。このニトロセルロースメンブレン,グラスファイバーアプライパッド,コンジュゲートパッド,セルロース吸収パッドを台紙に貼り合わせ、5mm幅に切断した後、専用のハウジング内に収納して、イムノクロマトグラフィー試験片(分析手段)を作製した。
【0070】
テストステロン(関東化学社)を2%エタノール含有リン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させ、0.1mM,10μM,1μM,0.1μM,10nM,1nM,0.1nM,10pM濃度の標準溶液を作製した。
【0071】
当該標準溶液を5%濃度で展開液(トリス緩衝液,pH7.5、塩化ナトリウム,ショ糖,界面活性剤,ブロッキング剤を含む)に加え攪拌した後、上記のイムノクロマトグラフィー試験片のアプライパットへ100μL滴下し、ニトロセルロースメンブレンへ展開した。
【0072】
発色量を専用の読取機(イムノメジャーPCB−SK100(アイシン精機株式会社製))にて測定し、読取値をグラフにプロットし、最小二乗法により4パラメータロジスティック曲線に近似しこれを検量線とした。
【0073】
レーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1,1−2)および市販の金コロイド(比較例1)において、それぞれから得られた検量線の違いを比較した。検量線を図12に示す。尚、検量線式を以下に示す。
【0074】
〔数1〕
シグモイド曲線y(sigmoidal)=d+((a−d)/(1+(x/c))^b)
(xは試料中の被験物質濃度、yはシグナル相対比を示す)
【0075】
【表1】
【0076】
この結果、レーザーアブレーション法により作製した本発明の金コロイドは、界面活性剤を同じ条件で添加した市販の粒子径サイズの大きな金コロイドと同等の感度を示すことが判明した。
【0077】
(実施例2)
実施例1と同様にマウス由来の抗テストステロン抗体(Acris Antibodies社)を市販の直径20nmの金コロイド(比較例2)(British BioCell International社)へ修飾した。
【0078】
実施例1で使用したレーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1,1−2)で作成した金コロイド修飾済み抗テストステロン抗体と、比較例2の金コロイド修飾済み抗テストステロン抗体とを実施例1同様にニトロセルロースメンブレンに塗布し、イムノクロマトグラフィー試験片を作製した。
【0079】
テストステロン(関東化学社)を2%エタノール含有リン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させ、1000ng/mL,100ng/mL,10ng/mL,1ng/mL,100pg/mL,10pg/mL,0.1pg/mL濃度の標準溶液を作製した。
【0080】
当該標準溶液をイムノクロマトグラフィー試験片のアプライパットへ100μL滴下し、ニトロセルロースメンブレンへ展開した。
【0081】
発色量をイムノメジャーにて測定し、読取値をグラフにプロットし、最小二乗法により4パラメータロジスティック曲線に近似しこれを検量線とした。
レーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1,1−2)および市販の金コロイド(比較例1)において、それぞれから得られた検量線の違いを比較した。検量線を図13に示す。尚、検量線式は数1と同様である。
【0082】
【表2】
【0083】
この結果、レーザーアブレーション法により作製した本発明の金コロイドは、比較例2の小さな粒子径サイズの金コロイドと比べ、IC50比較で6.7〜4.9倍の高い感度を示すことが判明した。つまり一般に検出反応の分散を良くしようと粒子径を小さくすると検出感度の低下が起こるが、レーザーアブレーション法により作成した本発明の金コロイドは検出感度の低下を起こさずに分散を高め、反応時間、反応安定性の向上につながることが分かった。
【0084】
(実施例3)
比較例1,2の金コロイドをMalvernsya社Zetasizer Ver.6.01にて粒子径およびゼータ電位を測定した。
【0085】
また、レーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1(粒子径13.9nm),実施例1−2(粒子径22.8nm))をTEM(JEOL 2010F analytical electron microscope:日本電子(株))にて撮影した。この画像を画像解析ソフトIGOR Proにて粒子径を測定した。RMS(Root Mean Square)の値を下表に示す。さらに、ゼータ電位を比較例1,2の金コロイドと同様の手法で測定した。
【0086】
【表3】
【0087】
この結果、実施例1の金コロイドのゼータ電位の絶対値は、比較例1,2の金コロイドのゼータ電位の絶対値と同等であることが判明した。即ち、本発明の金コロイドは、界面活性剤などの添加剤を含有しない状態で、市販の金コロイドと同等のゼータ電位を有するものと認められる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のコロイド剤およびイムノクロマトグラフキットは、色調観察や発光や蛍光の強度等を測定して標識の存在を検出することにより、標識した分析対象物の定量あるいは定性を行なうことに利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 レーザービーム
2 レンズ
3 振動ミラー
4 ターゲット
5 液体
6 容器
7 運動ステージ
8 コロイド用粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調観察や発光や蛍光の強度等を測定して標識の存在を検出することにより、分析対象物の定量あるいは定性を行なう標識用のコロイド剤およびイムノクロマトグラフキットに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫学的測定方法の一つの手法としてイムノクロマト法が知られており、簡易で迅速な臨床診断法として実用化されている。
イムノクロマト法は、その判定・測定に重厚な設備・機器を必要とせず、操作が簡便であり、例えば分析対象物を含む可能性のある検体溶液を滴下した後、約5分〜10分間静置するだけで測定結果が得られる。そのため、簡便・迅速・特異性の高い判定・測定手法として、多くの場面、例えば病院における臨床検査、研究室における検定試験等に広く使われている。
イムノクロマト法では、細菌やウイルスを特異的に検出して患者の感染を迅速・簡便に特定することができ、その後の診断、治療を素早く的確に行うことができる。例えば、サンドイッチ法を利用したイムノクロマトグラフ法では、分析対象物(例えば、抗原)に特異的に結合する第1抗体を特定の領域に固定した不溶性の薄膜状支持体(例えば、ガラス繊維膜、ナイロン膜、又はセルロ−ス膜など)中に、分析対象物と特異的に結合する標識化第2抗体と、分析対象物を含む可能性のある検体溶液とを展開し、当該薄膜状支持体の第1抗体を固定した領域上で、分析対象物との免疫複合体を形成させ、標識の着色又は発色などのシグナルを検出し、分析対象物を測定することができる。当該標識としては、例えば、金属コロイド、酵素を含むタンパク質、着色ラテックス粒子および炭素粒子などを使用することができる。
【0003】
特許文献1〜4には、標識として金属コロイドを使用するイムノクロマト法が記載してある。
【0004】
特許文献1には、不溶性粒状マーカーを用いるバイオセンサにおいて、当該不溶性粒状マーカーが1または複数の粒子群よりなる金属コロイドであり、その粒子群の主ピークが平均粒径15から100nmの範囲にあることが記載してある。
不溶性粒状マーカーのサイズを大きくすることにより、低濃度領域の測定が可能となること、当該不溶性粒状マーカーは短時間で容易に作製可能であることが記載してある。
【0005】
特許文献2には、被検査液を展開する展開層に、前記被検査液中の検査対象物質を標識する標識試薬を保持した標識試薬部を設けたバイオセンサについて開示してある。標識試薬は不溶性粒状マーカーを含んでおり、当該不溶性粒状マーカーは、別途に作成され粒度分布の異なる少なくとも2つの粒子群が混合されたものである。例えば、混合金コロイド標識抗体として、30nm金コロイド標識抗体と40nm金コロイド標識抗体とを液量にて1:1になるように混合し、よく攪拌して作製することが開示してある。
当該不溶性粒状マーカーの各粒子群における粒度分布の主ピークは、平均粒径1から100nmの範囲となっている。
【0006】
特許文献3には、金コロイド粒子の表面に、白金コロイド粒子を担持してなる白金微粒子を含有する金属コロイド粒子であって、該白金微粒子の平均粒径が5nm以下であることが記載してある。
【0007】
特許文献4には、無機銀塩もしくは銀錯体、銀イオンの為の還元剤、および金属コロイド標識または金属カルコゲニド標識を含有するイムノクロマトグラフキットが記載してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−91353号公報
【特許文献2】特開2010−32396号公報
【特許文献3】特許第4180531号公報
【特許文献4】特開2008−139296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
市販の金コロイドなどの金属コロイドは界面活性剤等の添加剤を含み、当該界面活性剤がナノ粒子表面を覆うことで、安定にコロイド化されている。
一般に、同属の金属コロイドでも、粒子径が異なるとコロイドの安定性が異なる。そのため、同一の粒子径の金属コロイド粒子に抗体を結合させてタンパク質等でコーティングを行って安定させた後、粒子径が異なるコロイド群を混合する必要がある。即ち、特許文献1,2のように、別々の粒子径の金属コロイドを混合して使用するには手間を要する。
【0010】
特許文献3に記載のように、金コロイドに白金コロイドを結合するには、金コロイドを安定な状態で白金と反応させる必要があり、手間がかかる。また、特許文献4では銀を使用しているが、銀は還元力が強く、同時に自身が酸化する為に発色しやすく高い感度が得られるが、逆に安定性に乏しく、扱いが難しい。
【0011】
一般に、血液や唾液のように粘性が高く薄膜状支持体中を流れにくい検体に対して、イムノクロマト法では詰まり現象が起こることがある。通常、当該詰まり現象が起こる場合には、界面活性剤を添加して流動性を向上させ、詰まり防止策をとる。しかし、界面活性剤は測定物に対しても作用するため、多量の界面活性剤は感度低下を招く。特に競合免疫測定法のように分子量の小さな物質を測定する場合は致命的となり、少量の界面活性剤を添加した場合でも感度の低下を招く。そのため、検出感度を考慮しながら界面活性剤の添加量を決定する必要があり、煩雑である。
【0012】
詰まり現象が起こる場合、金属コロイドなどの標識物質の粒子径を小さくすることにより回避することも考えられる。しかし、一般に当該標識物質の粒子径を小さくすると発色が弱くなり、検出感度の低下を招く。
【0013】
また、界面活性剤を添加すれば、金属コロイド粒子が凝集する虞がある。このような不都合を避けるため、さらにコロイド粒子を分散させる分散剤を添加するなど、付加的な作業を行なう場合もある。
【0014】
従って、本発明の目的は、検出感度および安定性に優れ、かつ取り扱いが簡便な標識用のコロイド剤および当該コロイド剤を含むキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
即ち、上記目的を達成するため、以下の[1]〜[4]に示す発明を提供する。
[1] レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有し、前記粒度分布のピークを少なくとも2〜40nm未満、および、40nm以上〜100nmの範囲のそれぞれに有するコロイド用粒子と、分散媒としての水と、のみからなる、分析対象物を標識するコロイド剤。
[2] 前記コロイド用粒子が金属コロイド粒子および非金属コロイド粒子および樹脂コロイド粒子の何れか1つである上記[1]に記載のコロイド剤。
[3] 前記金属コロイド粒子が金コロイド粒子である上記[2]に記載のコロイド剤。
【0016】
上記[1]〜[3]の構成によれば、レーザーアブレーション法を適用することによって粒度分布が異なる複数の粒子群を有するコロイド用粒子を作製することができるため、別々の粒子径のコロイド用粒子を混合して使用する必要がない。本明細書における「コロイド用粒子」とは、溶媒と混合してコロイド状態にすることができる粒子のことをいう。分散媒としての水には、レーザーアブレーション法によって作製された粒度分布が異なる複数の粒子群を有するコロイド用粒子のみが含まれるため、界面活性剤等の添加剤を入れなくてもコロイド用粒子そのもののゼータ電位を高い状態に維持することが可能となる。「ゼータ電位」とは、分散された粒子の分散安定性の指標として用いられており、ゼータ電位の絶対値が増加すれば、粒子間の反発力が強くなり粒子の安定性は高くなり、ゼータ電位がゼロに近くなると、粒子は凝集しやすくなる。そのため、本発明のコロイド剤は、粒度分布が異なる複数の粒子群を有していても凝集し難く、安定なコロイド状態を得ることができる。
また、分散媒中においてはコロイド用粒子の他は何れの物質も含まないため、当該コロイド用粒子は分析対象物に対してほぼ理論通りの標識やコーティングを容易に行なえる。さらに、コロイド用粒子の表面が界面活性剤などで覆われていないため抗体などの生体物質との結合力が強くなり、分析反応中に当該生体物質の剥離などが起きないため、強いシグナルを得やすい。
【0017】
本発明では、コロイド粒子が2〜100nmの範囲に複数の粒度分布を有している。即ち、粒子径の小さい群は粒度分布のピークを少なくとも40nm未満までに有する群であり、大きい粒子径を有する群は粒度分布のピークを少なくとも40nm以上の範囲に有する群とする。
【0018】
このようなコロイド用粒子において、小さい粒子径を有する群(40nm未満)は、その小ささ故にコロイド剤が毛管現象によってメンブレン中を展開する際の流動性を向上させることができ、大きい粒子径を有する群(40nm以上)は、その大きさ故に標識としての感度を向上させることができる。そのため、本発明のコロイド剤は、界面活性剤などの添加剤を追加せずとも、流動性および検出感度に優れるため、血液や唾液に代表される粘性の高い検体に対して有効である。さらに、粒子径が小さくとも強く発色する金属コロイドや、非金属コロイド粒子および樹脂コロイド粒子を使えば優れた検出感度が得られる。
また、金属コロイドが金コロイドのような直接標識であれば、分析結果を目視で直接観察できるため、検出機器を使用せずともオンサイトで簡便に分析を行なうことができる。
【0019】
[4] 上記[1]〜[3]の何れか一項に記載のコロイド剤と、少なくとも前記分析対象物および前記コロイド剤を毛管現象により展開させて前記分析対象物を免疫学的に分析する分析手段と、を有するイムノクロマトグラフキット。
【0020】
本構成では、検出感度および安定性に優れ、かつ取り扱いが簡便な標識用のコロイド剤を含むイムノクロマトグラフキットを供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】液体中でナノ粒子(コロイド用粒子)を生成するためのレーザー系システムを概略的に示す図である。
【図2】1ヶ月の間隔に亘って測定した金コロイド粒子の波長に対する吸光度(吸収スペクトル)のプロットを示す図である(2つの曲線は、共鳴ピーク付近でほぼ一致し、それはコロイドの高安定性を示す)。
【図3】液体中の2つの小粒子の間の相互作用ポテンシャルを概略的に示すプロットを示す図である(図3(a):実線の曲線は、粒子間の引力ポテンシャルを示す。破線の曲線は、例えばクーロン反発力による推定の反発ポテンシャルを示す。図3(b):引力ポテンシャル及び反発ポテンシャルの合計は、2つの粒子の間の最近接距離を増大させ得る一定の距離(x0)での反発ポテンシャル障壁を形成する)。
【図4】透過型電子顕微鏡(TEM)試料採取グリッド上のコロイドの滴を乾燥させることにより試料採取された金コロイド粒子のTEM像を示す写真図である。
【図5】銀、金及び銅コロイド粒子の吸収スペクトルを示す波長に対する吸光度のプロットを示す図である。
【図6】0(純粋なAg)、30、45、80及び100(純粋なAu)パーセントの5つのAu含有率を有するAuAg合金コロイド粒子の吸収スペクトルを示す波長に対する吸光度のプロットを示す図である。
【図7】一連の合金コロイド粒子像を示す写真図である(各種の色は、種々のプラズモン共鳴波長から生じる)。
【図8】レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子のTEM像を示す写真図および粒度分布を示すグラフである。
【図9】レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子のTEM像を示す写真図および粒度分布を示すグラフである。
【図10】レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子のTEM像を示す写真図である。
【図11】市販の金コロイド粒子のTEM像を示す写真図である。
【図12】レーザーアブレーション法により作製した金コロイド粒子および市販の金コロイド粒子の感度比較(検量線)を示すグラフである。
【図13】レーザーアブレーション法により作製した金コロイド粒子および市販の金コロイド粒子の感度比較(検量線)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の分析対象物を標識するコロイド剤は、色調観察や発光や蛍光の強度等を測定して標識の存在を検出することにより、分析対象物の定量あるいは定性を行なう標識物質である。
例えば標識した抗体を使用した場合における免疫反応の結果、生成する特異的複合体中の被検出物質の量に応じて標識物質が存在することになる。未反応物を除去した後、標識物質の量を測定することで「分析対象物」を定量することができる。標識物質の定量は、標識物質の種類と共に種々の方法をとりうる。測定された標識強度を、既知量の「分析対象物」を測定した場合の標識強度と比較することにより、液体試料中の被検出物質量を決定できる。
【0023】
本発明のコロイド剤は、レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有し、粒度分布のピークを少なくとも2〜40nm未満、および、40nm以上〜100nmの範囲のそれぞれに有するコロイド用粒子と、分散媒としての水と、のみからなる。
【0024】
コロイド用粒子はレーザーアブレーション法によって作製される。レーザーアブレーションとは、強力なレーザー光を固体に照射して、表面から原子、分子、クラスターを蒸発させて固体表面を削り取る現象のことである。レーザーアブレーション法による具体的なコロイド用粒子の作製方法は後述する。本発明のコロイド剤は、レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有している。「粒度分布が異なる複数の粒子群」とは、例えば後述するサンプルCのように5〜10nmおよび40〜60nmの二つ(複数)の粒度分布を有する粒子群をいう。即ち、本発明のコロイド剤は、単一のピークを有する粒度分布を有するのではなく、粒度分布のピークを少なくとも40nmまで、および、40nmより大きい範囲のそれぞれに有する。粒子径の範囲は、上述した範囲に限られるものではなく、例えば全粒子が概ね2〜100nmの範囲に存在する状態で、複数の粒度分布を有していればよい。
【0025】
本発明のコロイド剤は、コロイド用粒子を分散させる溶液が例えば純水であり、界面活性剤・pH安定剤・分散安定剤などを必要としない。即ち、本発明のコロイド剤は、コロイド用粒子とその分散媒のみからなる組成物である。
【0026】
当該コロイド剤は、界面活性剤等を入れなくてもコロイド用粒子そのもののゼータ電位を高い状態で維持しており、そのために粒度分布が異なる複数の粒子群を有していても凝集し難く、安定なコロイド状態を得ることができる。
【0027】
コロイド用粒子において、二つの粒度分布を有する、即ち粒度分布のピークを少なくとも40nmまで、および、40nmより大きい範囲のそれぞれに有するように構成した場合、小さい粒子径を有する群は、その小ささ故にコロイド剤が毛管現象によってメンブレン中を展開する際の流動性を向上させる成分となり、大きい粒子径を有する群は、その大きさ故に標識としての感度を向上させる成分となる。
【0028】
また、当該粒度分布のピークは三つ以上有するように構成することが可能である。この場合、後述するコロイド用粒子の作製方法において、レーザーパラメータ(パルス幅、パルスエネルギー、パルス繰返し率、ビーム移動量)を制御することによって粒度分布のピークを調製することが可能となる。
【0029】
コロイド用粒子は、金属コロイド粒子または非金属コロイド粒子を使用するとよい。当該コロイド粒子に適用できる金属または非金属は、例えば、金、銀、銅、プラチナ、セレニウム、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ガリウム、セレン、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガトリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチンやこれらを含有する合金を使用することができる。
【0030】
また、上述した金属に替えて樹脂を使用することができる。当該樹脂は、例えばラテックス、フッ素、ナイロン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ乳酸、アクリル、メタクリルなどを使用できる。
【0031】
本発明のコロイド剤を使用して分析対象物を分析する場合は、例えば「免疫化学的手法」によって行なうとよい。例えば固相法によるイムノアッセイの手法を適用することにより液体試料中の分析対象物の存在を検出あるいは定量的測定ができる。イムノアッセイの形態は、競合法、サンドイッチ型の抗原抗体反応(サンドイッチ法)の何れを利用してもよい。サンドイッチ法では、例えば抗原のような標的となる分析対象物を、標識化抗体と固定化物質表面に固定化された抗体との間に挟むことにより特異的複合体を形成させ、分析対象物を捕捉することができる。
【0032】
このような免疫化学的手法は、少なくとも分析対象物およびコロイド剤を毛管現象により展開させて分析対象物を免疫学的に分析する分析手段を用いて行なわれる。
【0033】
当該分析手段は、例えば、分析対象物およびコロイド剤を毛管現象により展開させるメンブレンに、分析対象物およびコロイド剤が結合した結合物質と免疫特異的に反応する反応物質を、あらかじめ特定の領域に固相化した分析部位を形成したものである。当該メンブレンは、例えばポアの直径が10〜200μm、厚さ100〜3000μmのニトロセルロースメンブレン・アセテート混ニトロセルロースメンブレン・ナイロンメンブレン・ポリエーテルスルホンメンブレン・ポリビニリデンジフルオライドメンブレンが好適に用いられる。
【0034】
当該分析手段は、上述したコロイド剤とセットにしたイムノクロマトグラフキットとして提供される。
【0035】
(レーザーアブレーション法によるコロイド用粒子の作製)
図1に、液体中でナノ粒子(コロイド用粒子)を生成するためのレーザー系システムの一部を概略的に示す。一実施態様において、レーザービーム1は、超短パルス源(図示せず)から受光され、レンズ2によって焦束され、ターゲット4にビームの急速移動用機構、例えば振動ミラー3により誘導される。ターゲット4は、容器6に含まれる液体5の表面の下に数ミリメートル浸水され、好ましくは1cm未満浸水される。容器6は、運動ステージ7、例えば移動ステージ上に配置される。コロイド用粒子8が押し流されて他の場所で回収されるように、液体の流れが容器に導入される。また、液体の流れは、レーザー焦点体積をも冷却する。前記液体は、好ましくは1Mオーム・cm超の比抵抗を有する脱イオン水であることが好ましい。幾つかの実施態様において、前記液体は、蒸留水又は別の適切な液体であってよい。制御装置(図示せず)は、パルス線源、運動システム及び/又は循環システムに動作可能なように連結される。制御装置は、ビームの発出、液体の流れ及び運動を調整する。また、制御装置は、システムコンピュータ、ユーザーインターフェース、電気通信機器及び/又は他の標準装置に連結され、遠隔地からプログラムされるように構成される。
【0036】
ナノ粒子生成用レーザーは、約1.03μmの波長(数ミリメートルの水の層は、この波長で無視し得る吸光度を有する)、約1〜20マイクロジュールの範囲、好ましくは約10マイクロジュール未満のパルスエネルギーを有してよい。約500fs、最高約10psのパルス幅が、ナノ粒子の形成に著しい影響を及ぼすことなく用いられ得る。パルス繰返し率は、約100kHz〜5MHzの範囲であってよい。好ましいレーザーシステムは、更に後述される。水流、ビーム移動、又はその両方が、高繰返し率での蓄熱を回避するために用いられ得る。
【0037】
例えば、振動ミラー3は、ターゲット表面上へのレーザービームの急速なラスター又は他の移動のために構成される。幾つかの実施態様において、ミラー振動数は10Hzより大きいことが好ましく、角度振幅は1mradより大きいことが好ましい。0.01m/s超のターゲット表面上のラスター速度が提供され得る。かかるミラーは、圧電駆動ミラー(piezo-driven mirror)、ガルバノメーターミラー、又はビーム移動のための他の適切な装置であり得る。
【0038】
水流は、循環システムにより容器に導入することが可能であり、流速は10mL/s超であることが好ましい。循環システムが利用可能でない場合は、横振動移動を導入することによってアブレーションスポット全体に亘る水流を局所的に引き起こすこともできる。例えば、運動ステージ7は、図1に示すようにレーザービームに対して垂直な方向に移動させることができる。振動ステージは、数Hzの振動数と数ミリメートルの振幅とを有することが好ましい。
【0039】
各種実施態様において、安定で且つ化学的に純粋なコロイド用粒子は、レーザーパラメータ及び液流量の両方を制御することによって製造される。レーザーパラメータとしては、パルス幅、パルスエネルギー、パルス繰返し率、ビーム移動量が挙げられる。
【0040】
超短パルス幅が好ましい。多くのレーザー加工用途において、例えば数ピコ秒〜数百フェムト秒の範囲の超短パルス幅は、非常に高い最大出力及び小さな熱影響部の結果としてアブレーション効率を高める。
【0041】
ナノ粒子生成における適用のために、特に本発明者らにより行なわれた研究(文献1:B. Liu, Z. D. Hu, Y. Che, Y. B. Chen, X. Q. Pan, "Nanoparticle generation in ultrafast pulsed laser ablation of nickel", Applied Physics Letters, Vol. 90, 044103 (2007), 文献2:B. Liu, Z. D. Hu, Y. Che, "Ultrafast sources: ultrafast lasers produce nanoparticles", Laser Focus World, Vol. 43, 74 (2007))において、アブレーション閾値に近い低パルスエネルギー(より正確には低フルエンス)がコロイド用粒子生成に好ましいことが分かった。アブレート材料は、主に粒度分布が狭いナノ粒子の形態で存在する。また、米国特許出願第2008/0006524号は、これらの研究に基づく真空中及び雰囲気ガス中におけるコロイド用粒子の生成方法をも教示する。
【0042】
好ましくは、例えば少なくとも約10kHz、より好ましくは少なくとも約100KHzの高パルス繰返し率が、少なくとも3つの理由のために用いられる。第1は、高繰返し率パルスレーザーアブレーションにおけるマルチパルス効果である。10マイクロ秒未満のパルス間隔(即ち、100kHz超の高繰返し率)により、アブレート材料は、レーザー焦点体積から離れる前に、多数のレーザー発射を受け、高く帯電する。本発明者らは、安定なコロイド用粒子が、更なる化学的安定剤を添加することなくかかる高繰返し率で作製され得ることを見出した。第2の理由は、マルチパルスによるアブレーションの際、大粒子の断片化が起きる可能性があり、それによってコロイド用粒子の粒度分布が生じる結果となる。第3の理由は、高繰返し率から恩恵を受ける高生成率である。
【0043】
また、本発明者らは、アブレーションの間のレーザービームの急速なラスターが、高繰返し率の操作と共に有益であるということをも見出した。例えば、レーザービームのかかる急速なラスターなしでは、先行するレーザーパルスにより生成したコロイド用粒子の流れが、散乱及び吸収によってその後のレーザーパルスを最終的には遮断することになる。更に重要なことに、高繰返し率による水に対する蓄積した加熱はまた、コロイド用粒子の凝集を誘発する可能性もある。
【0044】
本発明者らは、レーザーパラメータの他に、液体運動も安定なコロイド用粒子の作製に有用であることを見出した。水におけるコロイド用粒子の分散懸濁液は、本質的に準安定状態、即ち、熱力学的に安定な状態ではなく動力学的に安定な状態にある。生成中に液体を流すことにより、凝集の動力学的障壁を克服し得るコロイド用粒子の熱的移動の低下が促進される。更に、レーザービームの急速なラスターはまた、コロイド用粒子の熱運動を低下させるためにも有益である。
【0045】
幾つかの実施態様は、各種のプラズモン共鳴波長を有するコロイド用粒子を提供するものである。これは、金属合金ターゲットを用いることにより達成され得る。文献2は、NiFe等の二元合金について、アブレーション閾値付近の低フルエンスアブレーションによって、新規の合金ターゲットと同じ合金組成を有するコロイド用粒子が生成されることを示した。これらの研究に基づいて、各種実施態様は、二元合金ターゲットを用いて、各種組成を有し、従って各種プラズモン共鳴周波数を有する合金コロイド用粒子を作製する方法を提供する。
【0046】
以下の実施例において、IB族元素Au、Ag、Cu及びそれらの合金は、実証例として使用される。しかし、実施例は非限定的であり、各種実施態様において他の金属及び金属合金を利用してよい。例えば、貴金属を利用してよい。かかる金属としては、白金、パラジウム、白金又はパラジウムを含む合金が挙げられるが、これらに限定されない。適切な金属又は金属合金ターゲットは、超短パルスによって改質される。最も好ましくは、ターゲット材料は、液体と非反応性であり、レーザー加工の間に水又は他の液体により酸化されない。他の金属をアブレートするためのアブレーション閾値及び他のレーザーパラメータが、本明細書において考察されるようにAuとは多少異なり、これらの金属のコロイド又はそれらの金属合金が本発明の範囲内であることは、当業者によって認識されるであろう。
【0047】
図2は、上記で開示された通りの高繰返し率、超短レーザーアブレーションで作製され、1ヵ月後に測定されて安定性を決定した金コロイド粒子の2つの吸収スペクトルを示す。2つのスペクトルは共鳴ピーク付近でほとんど同一であり、このことはコロイドの高安定性を示す。実際、本発明者らはまた、約8ヵ月の延長期間の間凝集することなく安定であった金コロイド粒子をも製造した。
【0048】
その中で働くメカニズムを理解することは、実施態様の実施に必要でないにもかかわらず、凝集に対する金コロイドの安定性を調べた。金コロイドに数滴の1M NaCl水溶液を意図的に添加することによって簡単な試験を行った。元々赤色の金コロイドは、NaCl溶液を添加した際に即座に黒紫色になった。1時間未満で、暗色は消失し、金コロイドは無色透明になり、可視の沈降物が容器下部に沈んだ。この簡単な試験は、金コロイド粒子が帯電し、添加されたNa+イオン及びCl-イオンがクーロン反発力を遮蔽し、ナノ粒子凝集を引き起こしたことを示唆した。
【0049】
図3は、液体中の2つの小粒子の間の距離xの関数としての相互作用ポテンシャルWの2つの場合を概略的に示す。図3(a)における実線の曲線は、引力ポテンシャルを示すが、前記引力ポテンシャルは、水中の金コロイド粒子の場合、(i)金コロイド粒子間のファンデルワールス引力、及び(ii)界面エネルギーを減少させるために粒子凝集を選好する金の表面と水の間の疎水性相互作用による可能性がある。コロイド粒子が帯電している場合、破線の曲線で示されるクーロン反発力が粒子間に存在する。2つの逆のポテンシャルの合計は、図3(b)に示されるが、ここで一定の距離x0付近の正の(即ち反発)障壁は、粒子凝集を防止する役割を果たす。
【0050】
ナノ粒子電荷は、高繰返し率パルスレーザーアブレーションにおけるマルチパルス効果から生じる可能性がある。一般に、各単一のレーザー発射は、十分に強力である場合、イオン、電子、中性物及び粒子の混合物を生成するが、前記混合物は、多くの場合「プルーム」と呼ばれる。かかる混合物は、レーザー強度がアブレーション閾値を越える場合に生成され得る。しかし、単一のレーザー発射により生成されたプルームについては、電荷は大部分が蒸気部分にあり、一方で固体部分、特にナノ粒子は、大部分が中性のままである。10マイクロ秒未満のパルス間隔を有する高繰返し率レーザーを用いる場合、固体部分、特にプルームのナノ粒子は、焦点体積から離れる前に多数のレーザー発射を受ける。この時間の間、粒子が強力レーザー場によって帯電する。
【0051】
かかるコロイドにおいて、粒子は凝集に対して準安定に分散し続ける。図3(b)に示されるように、粒子が障壁の高さより大きいKTに相当する十分な熱エネルギーを得る場合、粒子は、引力トラップ及び凝集体に落ち込む。このメカニズムは、図3(b)において上方の破線の横線により示され、長パルス幅及び高パルスエネルギーを使用する場合に水中におけるパルスレーザーアブレーションにより生成する金属コロイド用粒子が凝集する傾向がある理由を部分的に説明することができる。例えば、水破壊閾値は、約1×1013W/cm2であり、1nsのパルスについての約104J/cm2のフルエンスに相当する。水破壊閾値を下回るフルエンスによっても、かかる長いレーザーパルスの照射下での水は、容易にその沸点を超えた高温に加熱され得る。その加熱は、アブレーションの間に視覚的に観察され得る泡によって明らかにされる。従って、コロイド用粒子は、反発障壁を克服するように十分な熱エネルギーを得ることができる。コロイド用粒子は、引力トラップ及び凝集体に落ち込む。同じ理由のため、高繰返し率レーザー、例えば10kHz以上でのレーザービームの急速なラスターは、水中の蓄熱を減少させることができる。また、水流は、レーザーの焦点体積に新鮮で且つ冷たい水を送り込むことにも役立つ可能性がある。
【0052】
幾つかの実施態様において、アブレーションは、相対的に低いフルエンスで行われる。1psのパルスで約10J/cm2のフルエンスは、過度であり得る。例えば、かかる過度のフルエンスは、アブレーション閾値(例えば、ほとんどの金属について1psのパルスで約1J/cm2)よりも数倍大きくてよい。過度のフルエンスにより、アブレート材料は大部分が蒸発し、その後、蒸気は、液体の静水圧下で再核生成される。換言すれば、相展開の経路は、固体バルクから蒸気へ、次いで固体粒子へというものである。その結果、核生成の際にコロイド用粒子の詰まったネットワークが形成し、それが凝集に対する安定性を低下させる。
【0053】
真空中及び低圧雰囲気ガス中における超短パルスレーザーアブレーションの研究(文献1)において、アブレーション閾値付近の低レーザーフルエンス、典型的にはほとんどの金属について約3J/cm2未満で、アブレートされた材料は、外的に印加された高圧によって強制的核生成が生じることなく自動的にコロイド用粒子の集合として存在することが分かった。この所見は、臨界点相爆発に基づいて後で説明されるが(文献3:T. E. Itina, M. E. Povarnitsyn, K. Gouriet, S. Noel, J. Hermann, "Mechanisms of nanoparticle formation by short laser pulses", Proceedings of SPIE, Vol. 6458, 64581U-1, (2007))、その場合、固体バルクが材料の臨界点付近でナノ粒子に崩壊する。このメカニズムは、相展開経路が固体バルクから固体ナノ粒子へというものであるナノ粒子生成用途のための好ましい低フルエンスを部分的に説明することができる。
【0054】
例えば、金属又は金属合金コロイド用粒子を作製するための各種実施態様において、パルス強度は、約1011〜1013W/cm2、好ましくは約1012〜低1013W/cm2、最も好ましくは約0.5×1012〜3×1012W/cm2の範囲であってよい。更に、上記のフルエンス値では、少なくとも約10mL/秒の表面及び液体流量での0.01〜1m/sの速度によるラスター操作が適切である。例えば、1psパルスでの最小フルエンスは、約0.1J/cm2であってよい。
【0055】
図4は、金コロイド粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。試料は、TEM試料採取グリッド上のコロイドの滴を乾燥させることにより得られる。集合は大部分が4〜5nmのナノ粒子であり、且つ、約30〜50nmの直径を有する顕著により大きなナノ粒子があることが観察される。この二峰性粒度分布は、真空中におけるNi等の他の材料の超短パルスレーザーアブレーションによって生成したナノ粒子において観察されたものと一致する(文献1)。粒度分布は、例えばガウスビームプロファイル(Gaussian beam profile)の代わりにフラットな横方向のビームプロファイルを用いることにより改善され得る。しかし、多くの用途について、二峰性粒度分布は性能に影響を及ぼす。
【0056】
低フルエンスによる粒子の低生成率を補償するため、高繰返し率レーザーもまた好ましい。これは、高繰返し率の源、例えば約0.1μ秒以下の時間間隔を有する少なくとも2つのパルスを生成する源の使用の更に別の理由である。
【0057】
IMRA America Inc.は、幾つかのファイバ型チャープパルス(chirped pulse)増幅システムを開示した。例えば、かかるシステムは、100kHz〜1MHz超の高繰返し率と、500フェムト秒〜数ピコ秒の超短パルス幅と、10W超の平均電力とを提供する。例えば、ファイバ型チャープパルス増幅システム(FCPA)が、各種実施態様において使用され得る。IMRA Americaから市販されているD−1000は、1Wの平均電力で、マイクロジュールパルス及び100KHz〜5MHzの範囲に亘る調整可能な繰返し率を提供する。出力パルス幅は、1ps未満である。これらのレーザーは、特に現行の用途に適している。標準固体レーザーの典型的な10Hz〜1kHzの繰返し率と比較して、ファイバ型システムは、粒子の生成率を1桁改善させることができる。200kHzの繰返し率、1パルスにつき10マイクロジュールのパルスエネルギー(2Wの平均電力)、及び500fsのパルス幅により、1センチメートル当たりの光学濃度(O.D.)を有する金コロイド粒子の20mLのコロイドが30分間で生成され得る。これは、文献4(S. Barcikowski, A. Hahn, A. V. Kabashin, B. N. Chichkov, "Properties of nanoparticles generated during femtosecond laser machining in air and water", Applied Physics A, Vol. 87, 47, 2007)におけるもの等の報告されたレーザーアブレーションに基づく方法よりも非常に速い速度である。10Wの典型的な平均電力によって、且つ、スプリットビームによって、生成速度を5倍増加させることが可能である。
【0058】
本明細書に開示される方法は、銀及び銅に適用され得る。図5は、IB族の3種全ての元素のナノ粒子の吸収スペクトルを示しているが、全ては、顕著なプラズモン共鳴ピークを示す。
【0059】
各種実施態様の別の一態様は、各種のプラズモン共鳴波長を有する金属合金コロイド用粒子を提供することである。真空中におけるNiFe合金の超短パルスレーザーアブレーションの以前の研究(文献2)において、アブレーション閾値の近くの低いフルエンスによって、生成物ナノ粒子が新規の合金ターゲットと同じ合金組成を有することが見出された。これは、固体バルクのその臨界点付近のナノ粒子への崩壊としても理解されるが、その間、合金相分離が阻害される。この知見が水中におけるアブレーションに適用される場合、各種合金組成と各種プラズモン共鳴波長とを有するIB族金属の合金ナノ粒子のコロイドが得られる。
【0060】
図6は、0(即ち、純粋なAg)から100(即ち、純粋なAu)パーセントまで変化する5つのAu組成を有する一連のAuAg合金コロイドの吸収スペクトルを示す。その合金組成を有するプラズモン共鳴波長のシフトは明らかである。図7は、AuAg及びAuCuを含む幾つかのかかるIB族合金コロイド粒子の像である。各種の色は、種々のプラズモン共鳴波長から生じる。
【0061】
コロイド状ナノ粒子は、コロイド用粒子粉末として回収することができ、コロイド用粒子ペースト又はコロイド用粒子インクに濃縮することができ、固体保持体に分散させることができ、薄膜又は三次元構造に集めることもできる。コロイド状ナノ粒子のこれらの集合又は改変の用途としては、導電ペースト、インク、触媒、フォトニック結晶、化学的及び生物学的センサ、医療及びライフサイエンス製品、環境的製品(例えば、抗バクテリア剤、脱臭剤、浄水剤)が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0062】
レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子と市販の金コロイド粒子との比較を透過型電子顕微鏡(TEM)にて行なった。レーザーアブレーション法によって作製した金コロイド粒子のTEM像を図8(サンプルA),図9(サンプルB)、図10(サンプルC)に示し、市販の金コロイド粒子のTEM像を図11に示した。
【0063】
サンプルAの金コロイド粒子は、平均粒子径(avg)12.5nm、標準偏差(sdev)6.3であった。粒度分布は約2〜60nmおよび65nmにて認められた。
サンプルBの金コロイド粒子は、平均粒子径21.9nm、標準偏差6.3であった。粒度分布は約10〜38nmおよび66nmにて認められた。
サンプルCでは、図10に示したように、10〜26nm,41〜68nmの金コロイド粒子の分布が認められた。
これらサンプルA〜Cは、粒度分布の範囲が不連続な種々の粒度を有する金コロイド、即ち「粒度分布が異なる複数の粒子群」を有する金コロイドであると認められた。
【0064】
一方、市販の金コロイド粒子は、図11に示したように、26.3〜37.5nmの粒子が確認でき、凡その粒度分布は25〜40nmの範囲のみであると認められた。また、当該金コロイド粒子は、界面活性剤のような高分子の中に存在しているものと認められた。当該高分子が存在することで、当該金コロイド粒子は凝集し易くなると考えられる。本発明のコロイド剤(サンプルA〜C)では、分散媒中における金コロイド粒子の他は何れの物質を含まないため、凝集し難くなっていることが判る(図8〜10)。
【0065】
〔実施例1〕
本実施例では、当該ライフサイエンス製品として、分析対象物を定量するための標識としてのコロイド剤として使用する場合について説明する。
【0066】
マウス由来の抗テストステロン抗体(Acris Antibodies社)を、上述したレーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1,1−2)へ修飾した。
(1−1)ポリプロピレン(PP)製の遠心管に適量の金コロイド液を投入し、50mMのリン酸緩衝液(pH8.5)を加えて1分間攪拌した。
(1−2)蒸留水で希釈し、抗テストステロン抗体溶液を上記遠心管に攪拌しながら添加した。
(1−3)室温で10分間静置した後、ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を加え軽く攪拌した。
(1−4)8000rpmで10分間遠心して沈殿させた後、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させ、トリス緩衝液を20mL加えた。
(1−5)8000rpmで10分間遠心し沈殿させた後、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させた。
(1−6)分光光度計でλ520の吸光度を測定し回収量を確認した。
【0067】
同様にマウス由来の抗テストステロン抗体(Acris Antibodies社)を市販の直径40nmの金コロイド(比較例1)(British BioCell International社)へ修飾した。
(2−1)PP製の遠心管に適量の金コロイド液を入れ、50mMのリン酸緩衝液(pH8.5)を加えて1分間攪拌した。
(2−2)蒸留水で希釈し、抗テストステロン抗体溶液を、上記遠心管に攪拌しながら添加した。
(2−3)室温で10分間静置した後、ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を加え軽く攪拌した。
(2−4)5000rpmで10分間遠心して沈殿させた後、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させ、保存用トリス緩衝液を20mL加えた。
(2−5)5000rpmで10分間遠心し沈殿させた後、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させた。
(2−6)分光光度計でλ520の吸光度を測定し回収量を確認した。
【0068】
上記の金コロイド修飾済み抗テストステロン抗体をグラスファイバーコンジュゲートパッド(ミリポア社)へ塗布し、風乾した。
【0069】
テストステロン-BSA複合体2.0mg/mLをニトロセルロースメンブレン(ミリポア社)に塗布して風乾し、ラインA(テストライン)とした。また、ウサギ由来の抗マウスIgG抗体0.5mg/mLを同一のニトロセルロースメンブレンに塗布して風乾し、ラインB(コントロールライン)とした。このニトロセルロースメンブレン,グラスファイバーアプライパッド,コンジュゲートパッド,セルロース吸収パッドを台紙に貼り合わせ、5mm幅に切断した後、専用のハウジング内に収納して、イムノクロマトグラフィー試験片(分析手段)を作製した。
【0070】
テストステロン(関東化学社)を2%エタノール含有リン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させ、0.1mM,10μM,1μM,0.1μM,10nM,1nM,0.1nM,10pM濃度の標準溶液を作製した。
【0071】
当該標準溶液を5%濃度で展開液(トリス緩衝液,pH7.5、塩化ナトリウム,ショ糖,界面活性剤,ブロッキング剤を含む)に加え攪拌した後、上記のイムノクロマトグラフィー試験片のアプライパットへ100μL滴下し、ニトロセルロースメンブレンへ展開した。
【0072】
発色量を専用の読取機(イムノメジャーPCB−SK100(アイシン精機株式会社製))にて測定し、読取値をグラフにプロットし、最小二乗法により4パラメータロジスティック曲線に近似しこれを検量線とした。
【0073】
レーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1,1−2)および市販の金コロイド(比較例1)において、それぞれから得られた検量線の違いを比較した。検量線を図12に示す。尚、検量線式を以下に示す。
【0074】
〔数1〕
シグモイド曲線y(sigmoidal)=d+((a−d)/(1+(x/c))^b)
(xは試料中の被験物質濃度、yはシグナル相対比を示す)
【0075】
【表1】
【0076】
この結果、レーザーアブレーション法により作製した本発明の金コロイドは、界面活性剤を同じ条件で添加した市販の粒子径サイズの大きな金コロイドと同等の感度を示すことが判明した。
【0077】
(実施例2)
実施例1と同様にマウス由来の抗テストステロン抗体(Acris Antibodies社)を市販の直径20nmの金コロイド(比較例2)(British BioCell International社)へ修飾した。
【0078】
実施例1で使用したレーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1,1−2)で作成した金コロイド修飾済み抗テストステロン抗体と、比較例2の金コロイド修飾済み抗テストステロン抗体とを実施例1同様にニトロセルロースメンブレンに塗布し、イムノクロマトグラフィー試験片を作製した。
【0079】
テストステロン(関東化学社)を2%エタノール含有リン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させ、1000ng/mL,100ng/mL,10ng/mL,1ng/mL,100pg/mL,10pg/mL,0.1pg/mL濃度の標準溶液を作製した。
【0080】
当該標準溶液をイムノクロマトグラフィー試験片のアプライパットへ100μL滴下し、ニトロセルロースメンブレンへ展開した。
【0081】
発色量をイムノメジャーにて測定し、読取値をグラフにプロットし、最小二乗法により4パラメータロジスティック曲線に近似しこれを検量線とした。
レーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1,1−2)および市販の金コロイド(比較例1)において、それぞれから得られた検量線の違いを比較した。検量線を図13に示す。尚、検量線式は数1と同様である。
【0082】
【表2】
【0083】
この結果、レーザーアブレーション法により作製した本発明の金コロイドは、比較例2の小さな粒子径サイズの金コロイドと比べ、IC50比較で6.7〜4.9倍の高い感度を示すことが判明した。つまり一般に検出反応の分散を良くしようと粒子径を小さくすると検出感度の低下が起こるが、レーザーアブレーション法により作成した本発明の金コロイドは検出感度の低下を起こさずに分散を高め、反応時間、反応安定性の向上につながることが分かった。
【0084】
(実施例3)
比較例1,2の金コロイドをMalvernsya社Zetasizer Ver.6.01にて粒子径およびゼータ電位を測定した。
【0085】
また、レーザーアブレーション法により作製した金コロイド(実施例1−1(粒子径13.9nm),実施例1−2(粒子径22.8nm))をTEM(JEOL 2010F analytical electron microscope:日本電子(株))にて撮影した。この画像を画像解析ソフトIGOR Proにて粒子径を測定した。RMS(Root Mean Square)の値を下表に示す。さらに、ゼータ電位を比較例1,2の金コロイドと同様の手法で測定した。
【0086】
【表3】
【0087】
この結果、実施例1の金コロイドのゼータ電位の絶対値は、比較例1,2の金コロイドのゼータ電位の絶対値と同等であることが判明した。即ち、本発明の金コロイドは、界面活性剤などの添加剤を含有しない状態で、市販の金コロイドと同等のゼータ電位を有するものと認められる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のコロイド剤およびイムノクロマトグラフキットは、色調観察や発光や蛍光の強度等を測定して標識の存在を検出することにより、標識した分析対象物の定量あるいは定性を行なうことに利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 レーザービーム
2 レンズ
3 振動ミラー
4 ターゲット
5 液体
6 容器
7 運動ステージ
8 コロイド用粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有し、前記粒度分布のピークを少なくとも2〜40nm未満、および、40nm以上〜100nmの範囲のそれぞれに有するコロイド用粒子と、分散媒としての水と、のみからなる、分析対象物を標識するコロイド剤。
【請求項2】
前記コロイド用粒子が金属コロイド粒子および非金属コロイド粒子および樹脂コロイド粒子の何れか1つである請求項1に記載のコロイド剤。
【請求項3】
前記金属コロイド粒子が金コロイド粒子である請求項2に記載のコロイド剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のコロイド剤と、少なくとも前記分析対象物および前記コロイド剤を毛管現象により展開させて前記分析対象物を免疫学的に分析する分析手段と、を有するイムノクロマトグラフキット。
【請求項1】
レーザーアブレーション法によって作製することにより粒度分布が異なる複数の粒子群を有し、前記粒度分布のピークを少なくとも2〜40nm未満、および、40nm以上〜100nmの範囲のそれぞれに有するコロイド用粒子と、分散媒としての水と、のみからなる、分析対象物を標識するコロイド剤。
【請求項2】
前記コロイド用粒子が金属コロイド粒子および非金属コロイド粒子および樹脂コロイド粒子の何れか1つである請求項1に記載のコロイド剤。
【請求項3】
前記金属コロイド粒子が金コロイド粒子である請求項2に記載のコロイド剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のコロイド剤と、少なくとも前記分析対象物および前記コロイド剤を毛管現象により展開させて前記分析対象物を免疫学的に分析する分析手段と、を有するイムノクロマトグラフキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−13668(P2012−13668A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220822(P2010−220822)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
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