説明

コンクリートダム施工におけるコンクリート打設予定部の上方へのロール状止水板の設置方法、及び、当該方法に使用されるロール状止水板支持部材

【課題】櫓を組み立てることなく、コンクリート打設予定部の上方へのロール状止水板の設置作業を容易にできるようにする。
【解決手段】コンクリートダムを施工するに際し、コンクリートダムの壁面となる位置に上方移動可能な型枠を設置し、隣り合うブロック間に跨るように型枠の型枠面に沿って止水板を設置する場合に、帯状の止水板がロール状に巻かれたロール状止水板をコンクリート打設予定部の上方に設置する方法であって、ロール状止水板のロールの中心に軸を通し、当該軸を支持してロール状止水板を支持するロール状止水板支持部材を、上方移動可能な型枠の上部に取り付けたことにより、ロール状止水板をコンクリート打設予定部の上方に設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートダム施工においてコンクリート中に埋設される止水板を巻いたロール状止水板をコンクリート打設予定部の上方に設置する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートダムを施工する際においては、ダムの横方向(堰をする方向)となる方向とダムの高さ方向となる方向とにおいて任意の領域毎にコンクリートの打設作業を行っていく。当該領域の横方向の区切りの単位をブロックと言い、当該領域の高さ方向の区切りの単位をリフトと言う。
コンクリートの打設作業に際しては、コンクリートダムの上流側の壁面となる位置及びコンクリートダムの下流側の壁面となる位置にダムフォームと呼ばれる上方に移動可能な型枠を設置し(例えば特許文献1等参照)、さらに、隣り合うブロック間に跨るように型枠の型枠面に沿って止水板(例えば特許文献2等参照)を設置し、かつ、ブロックの境界部分に型枠を兼ねた目地板を設置した後、ブロックにコンクリートを打設していくことにより、壁面に沿ってブロック間に跨るように止水板が埋設されたコンクリートダムが完成する。
このようにダムの壁面に沿ってブロック間に跨るように止水板を連続的に設置するためには、帯状の止水板を供給する必要がある。
そこで、従来は、帯状の止水板がロール状に巻かれたロール状止水板を用いて、ロール状止水板のロールの中心に軸を通し、当該軸を支持する櫓を鋼材を用いて組み立てて作成することによって、ロール状止水板を櫓を介してコンクリート打設予定部の上方に位置させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−74743号公報
【特許文献2】特公平5−29724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来は、コンクリート打設予定部に櫓を組み立てていたので、以下のような問題点があった。
・櫓がコンクリート打設予定部に設置されるので、コンクリート打設予定部に打設されたコンクリートの締固め作業を行う際に櫓が邪魔となって締固め作業が困難となる。
・櫓がコンクリートに埋め込まれるので、リフト毎に鋼材の継ぎ足し作業が発生し、かつ鋼材が無駄となる。
・櫓の組み立て作業に熟練を要する。
・櫓の高さは次にコンクリートを打設する位置より高い高さにする必要があるので、櫓の組立作業は高所作業となる(例えば、1リフトが1.5mであれば1.5m以上上方での作業となる)ので、立馬上で不安定な姿勢での作業を行わなければならない。
・止水板を型枠面の勾配に合わせるために櫓の構造が複雑な構造となる。
本発明は、櫓を組み立てることなく、コンクリート打設予定部の上方へのロール状止水板の設置作業を容易にできるコンクリートダム施工におけるコンクリート打設予定部の上方へのロール状止水板の設置方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンクリートダム施工におけるコンクリート打設予定部の上方へのロール状止水板の設置方法は、ダムの横方向となる方向とダムの高さ方向となる方向において任意の領域毎にコンクリートの打設作業を行ってコンクリートダムを施工するに際し、コンクリートダムの上流側の壁面となる位置及びコンクリートダムの下流側の壁面となる位置に上方移動可能な型枠を設置し、任意の領域の横方向の区画であるブロックの隣り合うブロック間に跨るように型枠の型枠面に沿って止水板を設置し、かつ、ブロックの境界部分に目地板を設置した後、ブロックにコンクリートを打設していくことにより、止水板がコンクリートダムの壁面に沿ってブロック間に跨るようにコンクリート中に埋設されたコンクリートダムを施工する場合に、帯状の止水板がロール状に巻かれたロール状止水板をコンクリート打設予定部の上方に設置する方法であって、ロール状止水板のロールの中心に軸を通し、当該軸を支持してロール状止水板を支持するロール状止水板支持部材を、上方移動可能な型枠の上部に取り付けたことにより、ロール状止水板をコンクリート打設予定部の上方に設置したので、コンクリート打設予定部の上方にロール状止水板を設置するための作業が容易となる。
上記方法に使用されるロール状止水板支持部材であって、型枠の上部における型枠面の裏側に着脱可能に取り付けられる支柱部と、支柱部の上端よりコンクリート打設予定部の上方に延長するように設けられた支持梁部と、支持梁部に形成されてロール状止水板のロールの中心に通された軸が係合される軸係合部とを備えたので、コンクリート打設予定部の上方にロール状止水板を設置するための作業が容易となる。また、ロール状止水板支持部材は型枠に対して着脱可能な構成としたので、コンクリートダムの壁面の勾配が変わった場合にも、勾配に適したロール状止水板支持部材を用いることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】コンクリートダムの施工方法及び施工装置を示す図(実施形態1)。
【図2】型枠の上部に設けられたロール状止水板支持部材にロール状止水板が設置された状態を示す斜視図(実施形態1)。
【図3】ロール状止水板支持部材を示す図(実施形態1)。
【図4】(a)はコンクリートダムの縦断面図、(b)は(a)のA−A断面の拡大図(実施形態1)。
【図5】(a)はロール状止水板支持部材及びロール状止水板の設置状態を示す平面図、(b)はロール状止水板支持部材及びロール状止水板の設置状態を示す平面図(実施形態1)。
【図6】ロール状止水板支持部材にロール状止水板を設置する方法を示す図(実施形態1)。
【図7】(a)はロール状止水板支持部材及びロール状止水板の設置状態を示す平面図、(b)はロール状止水板支持部材及びロール状止水板の設置状態を示す平面図(実施形態2)。
【図8】ロール状止水板支持部材を示す図(実施形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1では、コンクリートダム施工予定地においてブロック単位及びリフト単位で決められたコンクリート打設予定部6に上方移動可能な型枠12を備えたダムフォーム1を用いてコンクリート打設作業を行っていくことでコンクリートダム50(図4(a)参照)を施工する際に、隣り合うブロック間に跨るようにダムフォーム1の型枠12の型枠面16に沿って止水板2を設置するために、帯状の止水板2がロール状に巻かれたロール状止水板20のロールの中心20G(図2参照)に軸30を通し、当該軸30を支持してロール状止水板20を支持するロール状止水板支持部材3を、型枠12の上部12tに設けられたロール状止水板支持部材3を介して型枠12の上部12tに取り付けた。これにより、ブロック単位及びリフト単位のコンクリート打設作業が終了する毎に型枠12を上方に移動させることによってロール状止水板20も上方に移動してロール状止水板20がコンクリート打設予定部6の上方に設置されるようにした。このようにしたことで、従来のように、ロール状止水板20を設置するためにコンクリート打設予定部に櫓を組み立てる必要がなくなり、上述したような櫓を用いた場合の問題点を解消できるようになる。
【0008】
図1;図5に示すように、ダムフォーム1は、端材11と、型枠12と、端材11と施工済みコンクリート部分とを連結する連結手段13と、コンクリート打設予定部6にアンカー5を設置するためのアンカー設置手段14と、型枠12に加わるコンクリート荷重を施工済みコンクリート部分6aの壁面6bに受けさせて型枠面16がコンクリートダム50の壁面予定面より移動しないようにする機能及び型枠面16の傾斜勾配を調整するための機能とを備えた調整手段15とを備える。
尚、端材11には足場枠7が着脱可能に取り付けられ、足場枠7には手摺8が着脱可能に取り付けられ、足場枠7の上には足場板9が設置される。
【0009】
端材11は、コンクリートダム50を施工するに当り、コンクリートダム50の壁面予定部の高さ方向に延長するように設置される柱状部品であり、コンクリートダム50の壁面予定部の横方向に複数本並ぶように設けられる。これら複数本の端材11の壁面予定部側においてこれら複数の端材11に掛け渡されるように型枠12が配置される。
【0010】
型枠12は、例えば、一方の面が型枠面16として形成され、型枠面16の裏面に格子桟状のリブ17を備えた型枠板18と、型枠板18のリブ17と端材11との間に位置して横方向に延長し、溶接などの固定手段によってリブ17に固定された横桟状補強部材19とを備える。
型枠12は、単数又は複数の型枠板18により構成され、複数の型枠板18で構成される場合、例えば複数の端材11に掛け渡される長さの型枠板18が上下方向に複数並ぶように設けられて各型枠板18同士がフックボルト等の図外の固定具で着脱可能に連結された構成である。
また、型枠12のリブ17と端材11とがフックボルト等の固定具21によって着脱可能に連結されていることにより、型枠12と端材11とが着脱可能な構成である。
【0011】
連結手段13は、例えば、シーボルト13aと呼ばれるボルトと、シーボルト固定手段13bとを備える。シーボルト13aは、一端側にアンカー5の周面に形成された図外のねじ部と螺着締結される図外のねじ孔部を備え、他端部の外周面に図外のねじ部が形成された構成である。シーボルト固定手段13bは、シーボルト13aのねじ部を螺着させるために端材11に形成されたねじ孔13c(図5(b)参照)と、シーボルト13aを端材11に固定するためのナット13dとを備える。当該シーボルト13aをシーボルト固定手段13bのねじ孔13cに螺着するとともにねじ孔13cを通過した一端側のねじ孔部と施工済みのコンクリート部分6aのコンクリート内に埋設されたアンカー5とを螺着させて結合し、シーボルト13aの他端側からシーボルト13aのねじ部にナット13dを螺着してナット13dを締結することにより、ダムフォーム1と施工済みのコンクリート部分6aのコンクリートとが連結手段13によって連結される。
【0012】
アンカー設置手段14は、例えば、ダミーボルト14aと呼ばれるボルトと、ダミーボルト固定手段14bとを備える。ダミーボルト14aは、例えば、一端側にアンカー5の周面に形成された図外のねじ部と螺着締結される図外のねじ孔部を備え、他端部には軸を横断する図外の固定具嵌合孔を備える。ダミーボルト固定手段14bは、ダミーボルト14aを貫通させるために端材11に形成された貫通孔14c(図5(b)参照)と、型枠板18に形成された貫通孔14fと、これら貫通孔14c;14fに貫通されたダミーボルト14aの他端側を挟むように端材11に設けられた一対の支持プレート14d;14dと、支持プレート14dに設けられた図外の固定具嵌合孔と、固定嵌合孔に嵌合される固定具としての棒14eとを備える。当該ダミーボルト14aをダミーボルト固定手段14bの貫通孔14c及び型枠板18の貫通孔14fに通して一端側のねじ孔部とアンカー5とを螺着させて結合し、かつ、一対の支持プレート14d;14dに設けられた固定具嵌合孔及びダミーボルト14aに設けられた固定嵌合孔に固定具としての棒14eを嵌合させることにより、ダミーボルト14aがダムフォーム1に固定され、コンクリート打設予定部6にアンカー5が設置される。
【0013】
調整手段15は、ジャッキボルト15aと呼ばれるボルトと、ジャッキボルト固定手段15bとを備える。ジャッキボルト15aは、外周面に図外のねじ部が形成されたボルト部15cと、ボルト部15cの一端に設けられて施工済みのコンクリート部分6aの壁面6bに面接触される壁面当てプレート15dとを備える。ジャッキボルト固定手段15bは、ジャッキボルト15aのボルト部15cを螺着させるために端材11に形成されたねじ孔15e(図5(b)参照)と、ボルト部15cを端材11に固定するためのナット15fとを備える。当該ジャッキボルト15aのボルト部15cをジャッキボルト固定手段15bのねじ孔15eに螺着して、かつ、ボルト部15cの一端に壁面当てプレート15dを螺着結合等で連結し、ジャッキボルト15aのボルト部15cの他端側からボルト部15cのねじ部にナット15fを螺着してナット15fを締結することにより、壁面当てプレート15dの面が施工済みのコンクリート部分6aの壁面6bに押し付けられるようにジャッキボルト15aがダムフォーム1に固定される。
調整手段15のナット15fの締結位置を調整することによって端材11及び型枠12の傾斜勾配を調整することができる。また、壁面当てプレート15dの面と施工済みのコンクリート部分6aの壁面6bとを接触させた状態でジャッキボルト15aのボルト部15cがナット15fにより端材11に固定されることにより、コンクリート打設予定部6に打設されるコンクリートの荷重が型枠12の型枠面16に加わった場合に壁面当てプレート15dの面と施工済みのコンクリート部分6aの壁面6bとが接触していることによって型枠面16が壁面予定面の位置に維持される。
【0014】
図5(b)に示すように、ジャッキボルト固定手段15bのねじ孔15eは、端材11の下端部11aに設けられ、シーボルト固定手段13bのねじ孔13cは、ジャッキボルト固定手段15bのねじ孔15eの位置よりも上方位置において端材11に設けられ、ダミーボルト固定手段14bのねじ孔14cは、シーボルト固定手段13bのねじ孔13cの位置よりも上方位置において端材11に設けられる。
【0015】
図1乃至図3に示すように、ロール状止水板支持部材3は、型枠12の上部12tのリブ17にフックボルト31a及びナット31b等の固定具31によって着脱可能に取り付けられる支柱部32と、支柱部32が型枠12の上部12tに取り付けられることによって支柱部32の上端よりコンクリート打設予定部6の上方に延長する支持梁部33と、支持梁部33に形成された軸係合部34と、支柱部32と支持梁部33とを連結して支持梁部33を補強する補強支持部36とを備える。ロール状止水板支持部材3は、例えば断面コ字状の鋼材を溶接で継ぎ合わせて作製される。例えば図2に示すように、固定具31は、フックボルト31aと、ナット31bと、リブ17に形成されたフックボルト係合孔31cとを備える。
図3(a)はコンクリートダム50の上流壁面側に埋設される上流側主止水板2aをロール状に巻いたロール状止水板20a、及び、上流側副止水板2bをロール状に巻いたロール状止水板20bを支持するロール状止水板支持部材3Aを示し、図3(b)はコンクリートダム50の下流壁面側に埋設される下流側止水板2cをロール状に巻いたロール状止水板20cを支持するロール状止水板支持部材3Bを示す。
【0016】
図3(a)に示すように、ロール状止水板支持部材3Aには、ロール状止水板20aの軸30を係合支持するための軸係合部34aとロール状止水板20bの軸30を係合支持するための軸係合部34bとが、支持梁部33の延長方向に沿った方向に間隔を隔てて設けられる。また、図3(b)に示すように、ロール状止水板支持部材3Bには、ロール状止水板20cの軸30を係合支持するための軸係合部34cが設けられる。
【0017】
尚、図3に示すように、軸係合部34は、支持梁部33の延長方向に沿った方向に所定の間隔を隔てて設けられた複数の軸係合凹部35を備える。
また、支柱部32は、型枠12の型枠面16の裏面のリブ17に溶接固定された横桟状補強部材19に係合する位置決め係合凹部37と、固定具31のフックボルト31aのねじ部を通過させる図外の貫通孔とを備える。
【0018】
そして、支持梁部33の先端をコンクリート打設予定部6の上方に向け、フックボルト31aの係合フック31eがリブ17に形成されたフックボルト係合孔31cに係合され、かつ、フックボルト31aのねじ部が支柱部32の貫通孔に挿入されてフックボルト31aのねじ部に挿入されたナット31bが支柱部32に締結されて、支柱部32と型枠12とが着脱可能に連結される。これにより、ロール状止水板支持部材3が型枠12の上部12tにおける型枠面16の裏側に取り付けられて、軸係合部34がコンクリート打設予定部6の上方に位置し、ロール状止水板20bの軸30が当該軸係合部34に係合支持されることによって、ロール状止水板20bがコンクリート打設予定部6の上方に設置される。
【0019】
コンクリートダム50の施工方法を説明する。
図1に示すように、予め決められたブロックの境界位置の地盤100を掘削し、ブロックを区切る型枠を兼ねた目地板51と止水板2とを結合及び係合させて目地板51の下端部52と止水板2の下端部53とを掘削部101に設置して掘削部101にモルタルやコンクリートを打設して目地板51の下端部52及び止水板2の下端部53を地盤100に固定する。この場合、止水板2の面がコンクリートダム50の予定壁面とほぼ平行になるように止水板2を設置する。例えば、図4(b)に示すように、目地板51と止水板2との結合は、止水板2に設けられた接合用突起部55と目地板51とをねじ56等で結合された構成であり、目地板51と止水板2との係合は、止水板2に設けられた係合用凹部57に目地板51の端部を挿入した構成である。
尚、止水板2としては、例えば、塩化ビニール製のものが使用される。また、目地板51としては、例えば、鉄板又はステンレス板のような金属製のものが使用される。
【0020】
次に、最下層のリフトにコンクリートを打設する作業は、ダムフォーム1の型枠12の下端を端材11の下端の位置まで下げておいて端材11及び型枠12の下端を地盤100に接触させ、図外のサポート材でダムフォーム1を地盤100に支持させておく。また、シーボルト固定手段13bに固定したシーボルト13aの一端のねじ孔部にアンカー5を着脱自在に取り付けておく。さらに、ダミーボルト固定手段14bに固定したダミーボルト14aの一端のねじ孔部にアンカー5を着脱自在に取り付けておく。尚、ここでは、型枠12の高さは2リフト分を一気に打設できる高さのものを用いた場合を例にして説明する。
また、予め決められたブロックの境界位置の両側に位置される型枠12の上部12tにそれぞれロール状止水板支持部材3;3を取り付けておく。そして、下端が地盤100に固定されたロール状止水板20をクレーン等で吊り上げてロール状止水板20のロールの中心20Gに通された軸30をロール状止水板支持部材3の軸係合凹部35に挿入する。これにより、ロール状止水板支持部材3の軸30の両端側がロール状止水板支持部材3の係合凹部35;35で支持され、ロール状止水板支持部材3がコンクリート打設予定部6の上方に設置される。
尚、軸30の両端部には、軸係合凹部35からの脱落を防止するための脱落防止具38;38が設けられている。
また、止水板2の面と型枠12の型枠面16とがほぼ平行となるように軸係合凹部35が位置されるよう、ロール状止水板支持部材3が設計されている。
【0021】
その後、例えば、コンクリートダム50の上流側壁面となる位置に沿って設置された上流側ダムフォーム1の型枠面16、コンクリートダム50の下流側壁面となる位置に沿って設置された下流側ダムフォーム1の型枠面16、地盤100又は掘削部101に固定された目地板51及び止水板2で囲まれた例えば1ブロック区間に2リフト分のコンクリートを打設する。この場合、ダミーボルト14aの一端に取り付けられたアンカー5がコンクリートで埋まる位置までコンクリートを打設する。打設したコンクリートが固化することで、コンクリートダム50の最下層の例えば2リフト1ブロック分の施工が完了する。
【0022】
コンクリートダムの最下層のコンクリートが固化した後、シーボルト13aとアンカー5との結合を解除してシーボルト13aをダムフォーム1より取り外すとともに、ダミーボルト14aとアンカー5との結合を解除してダミーボルト14aをダムフォーム1より取り外し、さらに、固定具21を取り外す。そして、型枠12の下端が端材11に設けられたシーボルト固定手段13bのねじ孔13cの位置よりも上方に位置されるように型枠12を上方に移動させた後に、固定具21で型枠12と端材11とを再び連結する。尚、型枠12と端材11とに設けられた図外のガイド機構により型枠12が端材11に対してスライド可能となっており、型枠12をクレーン等で上方に吊り上げることにより型枠12を端材11に沿って上方に移動させることができる。
【0023】
その後、施工済みのコンクリート部分6aの壁面6bに沿って型枠12と端材11とを一緒にクレーン等で上方に吊り上げる。そして、前回の打設時のダミーボルト固定手段14bのねじ孔14cが位置されていた位置にシーボルト固定手段13bのねじ孔13cを位置させ、このねじ孔13cにシーボルト13aを螺着してシーボルト13aの一端のねじ孔部に前回ダミーボルト14aに結合されていて現在コンクリート中に埋設されているアンカー5を結合した後、シーボルト固定手段13bでシーボルト13aをダムフォーム1に固定する(図1参照)。このとき、型枠12の型枠面16の下端部と施工済みのコンクリート部分6aの壁面6bの上端部とが接触した状態に設定される(図1参照)。
【0024】
次に、端材11のジャッキボルト固定手段15bでジャッキボルト15aを固定してジャッキボルト15aの一端の壁面当てプレート15dを壁面6bに押し当て、かつ、ダミーボルト固定手段14bで固定されたダミーボルト14aの一端のねじ孔部にアンカー5を着脱自在に取り付けておく。
そして、コンクリートダム50の上流側壁面となる位置に沿って設置された上流側ダムフォーム1の型枠面16、コンクリートダム50の下流側壁面となる位置に沿って設置された下流側ダムフォーム1の型枠面16、目地板51及び止水板2で囲まれた1ブロック区間に例えば2リフト分のコンクリートを打設する。当該打設したコンクリートが固化した後は、上述したように、施工済みのコンクリート部分6aの壁面6bに沿って型枠12と端材11とを一緒にクレーン等で上方に吊り上げる作業、ダミーボルト14aとシーボルト13aとの入れ替え作業、ダミーボルト14aによるアンカー5の設置作業からなる一連の作業を繰り返していくことにより、コンクリートダム50を完成させることができる。
【0025】
尚、目地板51及び止水板2は継ぎ足していく。上下の目地板51;51は溶接で継がれる。上下の止水板2;2は図外の連結部材や溶着等により連結される。止水板2を継ぎ足した場合には、図6に示すように、ロール状止水板20をクレーン等で吊り上げるとともにロール状止水板20のロールの中心20Gに通された軸30を作業者が下方から専用の支持竿60で支えながら軸30をロール状止水板支持部材3の軸係合凹部35に挿入することにより、ロール状止水板支持部材3で軸30の両端側を支持させる。この場合、止水板2の下端側がコンクリート中に埋まっているので、ロール状止水板20をクレーン等で吊り上げ過ぎると、軸30の両端側をロール状止水板支持部材3の軸係合凹部35に支持させた状態においてロール状止水板20から垂れ下がる止水板2が弛んでしまうので、図6(a);(b)に示すように、止水板2が弛まない位置までロール状止水板20をクレーン等で吊り、図6(c)に示すように、軸30をロール状止水板支持部材3の支持梁部33;33に沿った方向に向けた状態で下から支持竿60で軸30を支えながら軸30の向きを回転させて軸30を軸係合凹部35に入れることで、止水板2が弛まないようにロール状止水板20の軸30をロール状止水板支持部材3の軸係合凹部35に設置できる。このようにすることで、止水板2の弛みを防止でき、所定の位置に止水板2を埋設できる。
【0026】
実施形態1によれば、上方移動可能な型枠12の上部12tにロール状止水板20を設置するためのロール状止水板支持部材3を設け、ブロック単位及びリフト単位のコンクリート打設作業が終了する毎に型枠12を上方に移動させることによってロール状止水板20も上方に移動してロール状止水板20がコンクリート打設予定部6の上方に常に設置される。従って、コンクリート打設予定部の上方にロール状止水板を設置するためにコンクリート打設予定部に櫓を組み立てる必要がなくなり、櫓を用いた場合の問題点を解消でき、コンクリート打設予定部6の上方にロール状止水板20を設置するための作業が容易となる。
また、ロール状止水板20の軸30を支持するロール状止水板支持部材3の軸係合部34が、支持梁部33の延長方向に沿った方向に所定の間隔を隔てて設けられた複数の軸係合凹部35を備えるので、ロール状止水板20のロールの径寸法が変化して止水板2の位置が所定の位置から外れてしまう場合に、ロール状止水板20の軸30を支持させる軸係合凹部35を変えることができるので、所定の位置に止水板2を埋設できるようになる。
【0027】
実施形態2
図7に示すように、隣り合うブロック間で型枠12の上下位置が異なって、上方に位置する型枠にのみロール状止水板支持部材を取り付けて当該ロール状止水板支持部材でロール状止水板20を支持する必要がある場合には、当該ロール状止水板支持部材3として、上述したロール状止水板支持部材3A又は3Bと、ロール状止水板支持部材3C又は3D(図8参照)とを用いる。ロール状止水板支持部材3C;3Dは、例えば軸係合部が貫通孔39により形成された構成である。
図8(a)はコンクリートダム50の上流壁面側に埋設される上流側主止水板2aをロール状に巻いたロール状止水板20a、及び、上流側副止水板2bをロール状に巻いたロール状止水板20bを支持するロール状止水板支持部材3Cを示し、図8(b)はコンクリートダム50の下流壁面側に埋設される下流側止水板2cをロール状に巻いたロール状止水板20cを支持するロール状止水板支持部材3Dを示す。
即ち、図7に示すように、軸30の一端部をロール状止水板支持部材3Cの貫通孔39に挿入するとともに軸30の一端側をロール状止水板支持部材3Aで下側から支持する。つまり、ロール状止水板支持部材3Aは、ロール状止水板支持部材3Cとロール状止水板20との間に設置される(好ましくは、軸30のロール状止水板20に近い部位を支持するように設置される)。このように、軸30の一端側がロール状止水板支持部材3Aで下側から支持され、かつ、軸30の一端部がロール状止水板支持部材3Cの貫通孔39に挿入される構成とすれば、軸30がロール状止水板支持部材3Aにより水平状態に支持されるとともに、ロール状止水板支持部材3Cの貫通孔39の上縁を形成する板材と軸30の一端部の周面とが接触することにより、軸30がロール状止水板20の重量で傾いて貫通孔39より脱落してしまうことを防止でき、軸30を片持ち状態に支持できる。
また、同様に、軸30の一端部をロール状止水板支持部材3Dの貫通孔39に挿入するとともに軸30の一端側をロール状止水板支持部材3Bで下側から支持する。つまり、ロール状止水板支持部材3Bは、ロール状止水板支持部材3Dとロール状止水板20との間に設置される(好ましくは、軸30のロール状止水板20に近い部位を支持するように設置される)。このように、軸30の一端側がロール状止水板支持部材3Bで下側から支持され、かつ、軸30の一端部がロール状止水板支持部材3Dの貫通孔39に挿入される構成とすれば、軸30がロール状止水板支持部材3Bにより水平状態に支持されるとともに、ロール状止水板支持部材3Dの貫通孔39の上縁を形成する板材と軸30の一端部の周面とが接触することにより、軸30がロール状止水板20の重量で傾いて貫通孔39より脱落してしまうことを防止でき、軸30を片持ち状態に支持できる。
実施形態2によれば、コンクリート打設計画により、隣り合うブロック間で型枠12の上下位置が異なることになっても、実施形態1と同様に、隣り合うブロック間に跨るようにダムフォーム1の型枠12の型枠面16に沿って止水板2を埋設する場合に、コンクリート打設予定部6の上方にロール状止水板20を設置するための作業が容易となる。
【0028】
尚、コンクリートダム50の壁面の勾配が変わる場合には、勾配に適したロール状止水板支持部材3を作成して用いればよい。
本発明では、ロール状止水板支持部材3は型枠12に対して着脱可能な構成としたので、コンクリートダム50の壁面の勾配が変わった場合にも、勾配に適したロール状止水板支持部材3を用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
2 止水板、3 ロール状止水板支持部材、6 コンクリート打設予定部、
12 型枠、16 型枠面、20 ロール状止水板、20G ロールの中心、
30 軸、32 支柱部、33 支持梁部、34 軸係合部、51 目地板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムの横方向となる方向とダムの高さ方向となる方向において任意の領域毎にコンクリートの打設作業を行ってコンクリートダムを施工するに際し、コンクリートダムの上流側の壁面となる位置及びコンクリートダムの下流側の壁面となる位置に上方移動可能な型枠を設置し、任意の領域の横方向の区画であるブロックの隣り合うブロック間に跨るように型枠の型枠面に沿って止水板を設置し、かつ、ブロックの境界部分に目地板を設置した後、ブロックにコンクリートを打設していくことにより、止水板がコンクリートダムの壁面に沿ってブロック間に跨るようにコンクリート中に埋設されたコンクリートダムを施工する場合に、帯状の止水板がロール状に巻かれたロール状止水板をコンクリート打設予定部の上方に設置する方法であって、
ロール状止水板のロールの中心に軸を通し、当該軸を支持してロール状止水板を支持するロール状止水板支持部材を、上方移動可能な型枠の上部に取り付けたことにより、ロール状止水板をコンクリート打設予定部の上方に設置したことを特徴とするコンクリートダム施工におけるコンクリート打設予定部の上方へのロール状止水板の設置方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法に使用されるロール状止水板支持部材であって、型枠の上部における型枠面の裏側に着脱可能に取付けられる支柱部と、支柱部の上端よりコンクリート打設予定部の上方に延長するように設けられた支持梁部と、支持梁部に形成されてロール状止水板のロールの中心に通された軸が係合される軸係合部とを備えたことを特徴とするロール状止水板支持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202064(P2012−202064A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66101(P2011−66101)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)