説明

コンクリート供試体用型枠

【目的】 本発明は、コンクリート供試体の作成に先立って、型枠の底板と周側枠との取付結合部等に予めグリース等を塗って水漏れを防止する必要がないと共に、コンクリート供試体の作成後に、型枠の底板及び周側枠の内面にこびりついたコンクリートを掻き取る必要もなく、コンクリート供試体の作成前後の作業を容易にかつ短時間に行うことができ、しかもコンクリート供試体を該型枠から取り出すときに、供試体周面や端部に傷が付いたり破損したりすることがないコンクリート供試体用型枠を提供することを目的とするものである。
【構成】 本発明は、分離可能に組み付けられる底板及び周側枠を備え、内部にコンクリートを流し込んでコンクリート供試体を作成するコンクリート供試体用型枠において、前記型枠の底板及び周側枠の内面が平滑性に富む非透水性材によって被包されていることを特徴とするコンクリート供試体用型枠をその要旨とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えばコンクリートの圧縮度試験に使用するコンクリート供試体を作成するためのコンクリート供試体用型枠に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、コンクリート供試体を作成する場合には、図1に示すような分離可能に組み付けられる底板及び周側枠を備え、かつ周側枠が左右に分割可能な型枠を使用し、その型枠の底板及び周側枠を組み付けると共に、その取付結合部等にグリース等を塗って水もれを防止した状態で、セメント、砂利や砂等の骨材及び水を所定割合で混合してなるコンクリートを型枠内に流し込んで、コンクリート供試体を作成し、その後に底板及び型枠から離型していた。
【0003】ところが、この従来技術においては、型枠内にコンクリートを直接流しこんでコンクリート供試体を作成しているため、その型枠の底板と周側枠との組付け結合部等に予めグリース等を塗って水漏れを防止する必要があると共に、型枠の底板及び周側枠の内面にコンクリートがこびりつきやすいため、底板及び周側枠を分離して、コンクリート供試体を型枠から離型した後、底板及び周側枠の内面にこびりついたコンクリートを掻き取る必要があって、その準備作業及び後処理作業が非常に面倒で時間がかかるという問題があった。また、グリース等による水漏れ防止は不十分であり、作成後のコンクリート供試体の圧縮強度(kg/f)は20〜30%程度高くなっていた。このため、構造物の正確な強度予測ができないという不具合を生じていた。
【0004】また、コンクリート供試体の作成には、図7R>7に示すような周側枠の内径と略同一の径を有すると共に底面側に向かってテーパー状に形成された底板と、この底板のテーパー部が係止する係止部を底端に設けた周側枠とからなり、この周側枠に底板を係止させることにより、コンクリートを流し込むべき容器部分を構成するようにした型枠も用いられている。この型枠を用いた場合、コンクリート供試体は、作成後、該型枠の底板をコンクリートの流し込み口の方向に向かってシリンダー等で押圧することによって、型枠内から押し抜かれて取り出されるようになっている。
【0005】ところが、この型枠の場合、底板を押し抜くときに、コンクリート供試体周面が周側枠に摺動させつつ取り出されるため、コンクリート供試体周面に傷が付くことがあった。また、コンクリート供試体内の砂利や骨材が部分的に片寄った分布状態となっている場合には、コンクリート供試体が押し抜き時に傾斜した状態に取り出されるため、コンクリート供試体端部が破損するということもあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目なされたものであって、その目的とするところは、コンクリート供試体の作成に先立って、型枠の底板と周側枠との取付結合部等に予めグリース等を塗って水漏れを防止する必要がないと共に、コンクリート供試体の作成後に、型枠の底板及び周側枠の内面にこびりついたコンクリートを掻き取る必要もなく、コンクリート供試体の作成前後の作業を容易にかつ短時間に行うことができ、しかもコンクリート供試体を該型枠から取り出すときに、供試体周面や端部に傷が付いたり破損したりすることがないコンクリート供試体用型枠を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項の1記載の発明では、「分離可能に組み付けられる底板及び周側枠を備え、内部にコンクリートを流し込んでコンクリート供試体を作成するコンクリート供試体用型枠において、前記型枠の底板及び周側枠の内面が平滑性に富む非透水性材によって被包されていることを特徴とするコンクリート供試体用型枠」をその要旨とした。請求項の2記載の発明では、「型枠内に、その底板及び周側枠の内面に接触するように、合成樹脂シートよりなる内側容器が挿入されていることを特徴とするコンクリート供試体用型枠」をその要旨とした。請求項の3記載の発明では、「内側容器の上端周縁には、内側容器本体と型枠の周側枠との間の間隙及び周側枠の外周を覆うスカート体を設けたことを特徴とするコンクリート供試体用型枠」をその要旨とした。請求項の4記載の発明では、「型枠の底板及び周側枠の内面に、合成樹脂被膜が形成されていることを特徴とするコンクリート供試体用型枠」をその要旨とした。
【0008】本発明のコンクリート供試体用型枠は、同型枠を構成する底板及び周側枠の内面を、平滑性に富む非透水性材によって被包したものであり、従来より用いられている図1或いは図7に示すような型枠1,31をそのまま使用することができるようになっている。型枠内面を被包する平滑性に富む非透水性材としては、特に限定されるものではなく、摩擦係数が小さい非透水性材、例えば合成樹脂シート、紙、紙表面に樹脂コートして平滑化、非透水性化したもの、紙表面に合成樹脂シートを張り合わせたものなどのシート状物を型枠1,31の内面形状に沿って成形したもの、或いは型枠1,31の内面に合成樹脂を塗布又は噴霧することによって形成した合成樹脂被膜等どんなものであってもよい。また、非透水性材は、型枠1,31の内面に密着状態に配されておればよく、非透水性材が型枠の内面に固着されていてもいなくてもよい。
【0009】
【作用】上記のように構成された本発明のコンクリート供試体用型枠にあっては、型枠の底板及び周側枠を組み付け、その型枠内にセメント、砂利や砂等の骨材及び水を所定割合で混合してなるコンクリートを流し込んで、コンクリート供試体を作成する。その後、型枠の底板及び周側枠を分離した状態で、コンクリート供試体を型枠から離型し、コンクリート供試体を取り出す、といったコンクリート供試体の作成過程を取る。このとき、本発明のコンクリート供試体用型枠にあっては、その内面が、合成樹脂シートよりなる内側容器や合成樹脂被膜などの非透水性材によって被包されていることから、型枠の底板と周側枠との組付け結合部等に予めグリース等を塗っておかなくても、コンクリートに含まれる水が型枠から漏れ出るおそれは全くない。又、このコンクリート供試体の作成時に、型枠の底板及び周側枠の内面にコンクリートが直接内面にこびりつくことはなく、その底板及び周側枠の内面にこびりついたコンクリートを掻き取る必要も全くない。そのため、コンクリート供試体の作成前後の作業を容易かつ短時間に行うことができる。
【0010】また、本発明の構成を、図7に示すような型枠に適用した場合でも、型枠の底板及び周側枠の内面とコンクリート供試体との間には、平滑性に富む非透水性材が介在されていることから、コンクリート供試体との摩耗度が小さく、スムーズな供試体の押し抜きが実現され、同供試体周面に傷が付いたり、供試体端部が破損したりしないようになっている。
【0011】さらに、前記内側容器の上端周縁にスカート体を設けた場合には、そのスカート体により内側容器と型枠の周側枠との間の間隙及び周側枠の外周を覆うことができて、コンクリートの流し込み時に、内側容器と周側枠との間隙にコンクリートが浸入したり、周側枠の外周にコンクリートが付着したりするおそれを防止することができ、コンクリート供試体の作成を一層容易にかつ能率的に行うことができるようになっている。
【0012】
【実施例】以下、この発明を具体化したコンクリート供試体用型枠の第1実施例を、図1及び図2に基づいて説明する。図面に示すように、型枠1はほぼ円板状の底板2とほぼ円筒状の周側枠3とより構成され、底板2の上面には周側枠3の下端に嵌合可能な嵌合突部4が設けられている。各一対の支持片5は底板2の外周に突設され、この一対の支持片5間には組付ボルト6が支軸7により回動可能に支持されている。各一対の係合片8は支持片5に対応して、周側枠3の下端外周に突設され、組付けボルト6をこの一対の係合片8間に係合させた状態で、座金9を介して、締付ナット10を締め付けることにより、底板2と周側枠3とを分離可能に組み付けることができる。
【0013】前記周側枠3は分離可能なほぼ半円筒状の一対の分割体11,12から構成されている。各一対の支持片13は一方の分割体11の上下両端の外周に突設され、この一対の支持片13間には組付けボルトが支軸15により回動可能に支持されている。各一対の係合片16は支持片13に対応して他方の分割体12の上下端の外周に突設され、組付けボルト14をこの一対の係合片16間に係合させた状態で、座金17を介して、締付ナット18を締め付けることにより、一対の分割体11,12を分離可能に組付けることができる。
【0014】内側容器19は前記型枠1内にその底板2及び周側枠3の内面と接触するように挿入され、平滑性に富む非透水性の合成樹脂シートにより有底円筒状に形成されている。ビニール等の柔軟性を有する合成樹脂材料よりなるスカート体20は中央の透孔部21において内側容器19の上端周縁に嵌合固定され、内側容器19と型枠1の周側枠3との間の間隙及び周側枠3の外周を覆うようになっている。
【0015】次に、前記のように構成されたコンクリート供試体用型枠の作用を説明する。さて、この型枠1を使用して、コンクリート供試体を作成する場合には、型枠1の底板2及び周側枠3を組み付けた状態で、その型枠1内に内側容器19を挿入し、その内側容器19の上端周縁に固定されたスカート体20を下方へ垂らして、内側容器19と型枠1の周側枠3との間の間隙及び周側枠3の外周を覆う。この状態で、セメント、砂利や砂等の骨材及び水を所定割合で混合してなるコンクリートを内側容器19内に流し込むことにより、円柱状のコンクリート供試体22を作成することができる。このとき、内側容器19が平滑性に富む非透水性の合成樹脂シートで形成されているため、前もって型枠1の底板2と周側枠3との取付結合部や、周側枠3の両分割体11,12間の取付結合部にグリース等をぬっておかなくても、コンクリートに含まれる水が型枠1から漏れ出るおそれが全くない。
【0016】又、内側容器19と型枠1の周側枠3との間の間隙及び周側枠3の外周がスカート体20により覆われているため、コンクリートの流し込み時に、内側容器本体19と周側枠3との間隙にコンクリートが浸入したり、周側枠3の外周にコンクリートが付着したりするおそれはなく、コンクリートの流し込み作成を容易に行うことができ、特に多数のコンクリート供試体22を連続して作成する場合には、その作業能率を向上させることができる。
【0017】さらに、このコンクリートの流し込み作業後に、スカート体20を上方に反転させて、その開口部を輪ゴム等により閉じておけば、型枠1の上面開口部に蓋等を設けなくても、コンクリートに含まれる水分の異常な蒸発を防止することができる。そして、コンクリート供試体22が所定の固さまで硬化した後、型枠1の底板2と周側枠3とを分離すると共に、周側枠3の両分割体11,12を分離して、コンクリート供試体22を内側容器19と共に型枠1から離型し、その後、内側容器19を破ることによって、その内部からコンクリート供試体22を取り出すことができる。又、このコンクリート供試体22の作成時には、型枠1の底板2及び周側枠3の内面にコンクリートが直接こびりつくことがないため、その底板2及び周側枠3の内面にこびりついたコンクリート掻き取る必要がなく、コンクリート供試体22の作成後の作業を容易にかつ短時間に行うことができる。
【0018】次に、この発明の第2実施例を図3及び図4R>4に基づいて説明する。この実施例において、有底円筒状をなす内側容器19の上端外周にフランジ部23が設けられ、型枠1内に内側容器19を挿入したとき、このフランジ部23が型枠1の周側枠3の上端縁に接合するようになっている。従って、スカート体20透孔部21を内側容器19の上端周縁に固定する必要がなく、図4に示すように、型枠1の周側枠3にスカート体20を被せた状態で、そのスカート体20の透孔部21を介して、型枠1に内側容器19を挿入することにより、フランジ部23と周側枠3の上端縁との間でスカート体20の透透孔部21の周縁を挟着保持することができる。
【0019】次に、この発明の第3実施例を図5及び図6R>6に基づいて説明する。この実施例においては、内側容器19がビニール等の柔軟性を有する合成樹脂シートにより袋状に形成され、その開口端縁にスカート体20が一体が設けられている。又、この実施例では、内側容器19の他に、薄手の合成樹脂シートによりなる円板状の底部押圧板24と、同じく合成樹脂シートよりなり、外周の一部を解放して拡径方向に付勢力を有するほぼ円筒状の周面押圧体25とを備えている。そして、図6に示すように、前記内側容器19を型枠1内に挿入した状態で、底部押圧板24及び周面押圧体25を型枠1内に挿入することにより、内側容器19の底部が型枠1の底板2の内面に接合されると共に、内側容器19の周側が型枠1の周側枠3の内面に接合されるようになっている。
【0020】更に、この発明の第4実施例を図7に基づいて説明する。図面に示すように、型枠31はほぼ円板状で外側部がテーパー状に形成された底板37と、この底板37のテーパー部38が係止する係止部39を底端に設け、前記底板37の径と略同一の内径を有するほぼ円筒状の周側枠36とからなり、この周側枠36に底板37を係止させることにより、コンクリートを流し込むべき容器部分を構成するようにしたものである。この型枠31の底板37及び周側枠36の内面にはポリエチレン、ポリエステルなどの合成樹脂が塗布又は噴霧されて合成樹脂被膜40が形成されている。そして、この型枠31を用いた場合には、コンクリート供試体22は、作成後、該型枠31の底板36を底板36側からシリンダー等で押圧具41で押圧することによって、型枠31内から押し抜かれて取り出されるようになっている。この場合、型枠31の底板37及び周側枠36の内面には合成樹脂被膜40が形成されていることから、コンクリート供試体22との摩耗度が小さく、スムーズな供試体22の押し抜きが実現され、同供試体22周面に傷が付いたり、供試体22端部が破損したりしないようになっている。
【0021】尚、この発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、例えば、内側容器19の材料を適宜に変更して構成する等、この発明の趣旨から逸脱しない範囲で、各部の構成を任意に変更して具体化することも可能である。
【0022】
【発明の効果】この発明は、以上説明したように構成されているため、次のような効果を奏する。請求項の1、2及び4に記載の発明によれば、その内面が、合成樹脂シートよりなる内側容器や合成樹脂被膜などの非透水性材によって被包されていることから、型枠の底板と周側枠との組付け結合部等に予めグリース等を塗っておかなくても、コンクリートに含まれる水が型枠から漏れ出るおそれは全くない。又、このコンクリート供試体の作成時に、型枠の底板及び周側枠の内面にコンクリートが直接内面にこびりつくことはなく、その底板及び周側枠の内面にこびりついたコンクリートを掻き取る必要も全くない。そのため、コンクリート供試体の作成前後の作業を容易かつ短時間に行うことができる。
【0023】また、請求項の1、2及び4記載の本発明の構成を、図7に示すような型枠に適用した場合でも、型枠の底板及び周側枠の内面とコンクリート供試体との間には、平滑性に富む非透水性材が介在されていることから、コンクリート供試体との摩耗度が小さく、スムーズな供試体の押し抜きが実現され、同供試体周面に傷が付いたり、供試体端部が破損したりしないようになっている。
【0024】さらに、請求項の3記載の発明のように、内側容器の上端周縁にスカート体を設けた場合には、そのスカート体により内側容器と型枠の周側枠との間の間隙及び周側枠の外周を覆うことができて、コンクリートの流し込み時に、内側容器と周側枠との間隙にコンクリートが浸入したり、周側枠の外周にコンクリートが付着したりするおそれを防止することができ、コンクリート供試体の作成を一層容易にかつ能率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の具体化したコンクリート供試体用型枠の第1実施例を示す分解斜視図である。
【図2】図2はその型枠を使用してコンクリート供試体を作製している状態を示す断面図である。
【図3】図3は第2実施例を示す斜視図である。
【図4】図4はその型枠を使用してコンクリート供試体を作製している状態を示す断面図である。
【図5】図5は第3実施例を示す分解斜視図である。
【図6】図6はその型枠を使用してコンクリート供試体を作成している状態を示す断面図である。
【図7】図7は第4実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1,31・・・型枠
2,37・・・底板
3,36・・・周側枠
19 ・・・内側容器
20 ・・・スカート体
22 ・・・コンクリート供試体
40 ・・・合成樹脂被膜

【特許請求の範囲】
【請求項の1】 分離可能に組み付けられる底板及び周側枠を備え、内側にコンクリートを流しこんでコンクリート供試体を作成するコンクリート供試体用型枠において、前記型枠の底板及び周側枠の内面が平滑性に富む非透水性材によって被包されていることを特徴とするコンクリート供試体用型枠。
【請求項の2】 前記型枠内に、その底板及び周側枠の内面に接触するように、合成樹脂シートよりなる内側容器が挿入されていることを特徴とする請求項1記載のコンクリート供試体用型枠。
【請求項の3】 前記内側容器の上端周縁には、内側容器本体と型枠の周側枠との間の間隙及び周側枠の外周を覆うスカート体を設けたことを特徴とする請求項2記載のコンクリート供試体用型枠。
【請求項の4】 前記型枠の底板及び周側枠の内面に、合成樹脂被膜が形成されていることを特徴とする請求項の1記載のコンクリート供試体用型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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