説明

コンクリート打設工法及びこれに用いる型枠用板材

【課題】コンクリート打設工法に伴う工期の短期化及び施行コストの低減を実現可能なコンクリート打設工法及びこれに用いる型枠用板材を提供する。
【解決手段】 支持板1の一面に補強材3が配設され、この支持板1の他面に断熱板2が配設されてなる一対の型枠用板材10を、補強材3がそれぞれ外側に位置するように対向配置させることで、型枠100を形成する工程と、当該型枠100の内部にコンクリート30を流し込む工程と、当該コンクリート30を固化させた後、型枠100から補強材3のみを除去し、支持板1をそのまま埋め込んだ状態で、支持板1に壁材40を配設する工程と、を経てコンクリート躯体200を完成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠内部にコンクリートを流し込んで打設を行うコンクリート打設工法と、これに用いる型枠用板材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンクリート打設工法として、予め所定位置に形成した堀孔に、ベニヤ板等の支持板からなる板材を対向配置させて型枠を形成し、型枠内部にコンクリートを流し込んで、当該コンクリートを固化させた後に型枠を除去することで、コンクリート躯体を完成させるものが公知となっている。
【0003】
ところが、このような工法においては、固化させたコンクリートと型枠とが強固に接着した状態となることから、型枠をコンクリートから除去する際にかなりの力が必要であるため、作業性が良好ではないという不具合があった。また、型枠をコンクリートから除去する際に、型枠やコンクリートが破損し、その補修コストが嵩むという不具合があった。
【0004】
このような不具合を解消すべく、特許文献1では、コンクリート打設工法で用いる型枠用板材として、コンクリートに接する側に開口する吹出口と、当該吹出口と連通し型枠除去時に加圧流体を取り込み、加圧流体の圧力を吹出口からコンクリート側に印加する取込口とを備えたものを用いて、固化されたコンクリートからの型枠の除去を、加圧流体の圧力で行うようにした技術が提案されている。
【特許文献1】特開2001−32521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術においては、型枠の取込口に加圧流体を供給するためのコンプレッサや、コンクリートからの除去作業時に型枠の倒壊を防止するためのクレーンが必要であることから、コンクリート打設に伴う作業工程が複雑となり、工期が長期化するとともに、施行コストが嵩むという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、コンクリート打設に伴う作業工程を簡易なものとし、工期の短期化及び施行コストの低減を実現可能なコンクリート打設工法及びこれに用いる型枠用板材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、支持板の一面に補強材が配設されてなる一対の型枠用板材を、前記補強材がそれぞれ外側に位置するように対向配置させることで、型枠を形成する工程と、当該型枠内部にコンクリートを流し込む工程と、当該コンクリートを固化させた後、前記型枠をそのまま埋め込んだ状態で、前記補強材に壁材を配設する工程と、を備えたことを特徴とするコンクリート打設工法を提供する。
【0008】
また、本発明は、支持板の一面に補強材が配設されてなる一対の型枠用板材を、前記補強材がそれぞれ外側に位置するように対向配置させることで、型枠を形成する工程と、当該型枠内部にコンクリートを流し込む工程と、当該コンクリートを固化させた後、前記型枠から前記補強材のみを除去し、前記支持板をそのまま埋め込んだ状態で、前記支持板に壁材を配設する工程と、を備えたことを特徴とするコンクリート打設工法を提供する。
【0009】
本発明に係るコンクリート打設工法によれば、型枠に流し込んだコンクリートを固化させた後、少なくとも支持板を除去せず、そのまま埋め込んだ状態で壁材を配設する構成としたことにより、型枠をコンクリートから除去する際の作業が不要となるため、作業性が良好となるとともに、型枠やコンクリートの破損を防止できる。また、本発明に係るコンクリート打設工法によれば、上述した特許文献1に記載の技術のように、コンプレッサやクレーン等の装置が不要であるため、コンクリート打設に伴う作業工程が簡易となり、工期の短期化及び施行コストの低減を実現できる。
【0010】
さらに、本発明は、前記コンクリート打設工法において、前記補強材が支持板の側端に配設されてなる一の型枠用板材と、前記補強材が支持板の側端から所定長さ分だけ内側に配設されてなる他の型枠用板材とを用い、一の型枠用板材の側方に他の型枠用板材の側端面を当接させて固定することで、コーナー部の型枠を形成することを特徴とするコンクリート打設工法である。
この構成によれば、コーナー部における型枠の形成を容易に行うことが可能となり、工期の短期化等に資することとなる。
【0011】
ここで、本発明に係るコンクリート打設工法においては、前記対向配置させる型枠用板材のうち少なくとも一方を、前記支持板の一面に補強材が配設され、且つ、前記支持板の他面に断熱材が配設されたものとしてもよい。
この構成によれば、コンクリートを固化させた後に断熱材を配設する工程を省略できるため、工期のさらなる短期化及び施行コストのさらなる低減を実現できる。
【0012】
本発明はさらに、コンクリート打設工法で用いる型枠を形成するための板材であって、一面に補強材が、他面に断熱材が配設された支持板からなり、前記補強材がそれぞれ外側に位置するように対向配置させることで型枠を形成し、コンクリートを固化させた後に、少なくとも前記支持板をそのまま埋め込んだ状態で用いることを特徴とする型枠用板材を提供する。
【0013】
本発明はさらに、コンクリート打設工法で用いる型枠を形成するための板材であって、一面に補強材が配設され、他面に断熱材が配設された支持板からなり、前記補強材がそれぞれ外側に位置するように対向配置させることで型枠を形成し、当該型枠内部に流し込んだコンクリートを固化させた後に、少なくとも前記支持板をそのまま埋め込んだ状態で用いることを特徴とする型枠用板材を提供する。
【0014】
本発明に係る型枠用板材によれば、コンクリート打設に伴う作業工程を簡易にすることができるため、工期の短期化及び施行コストの低減を実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコンクリート打設工法及び型枠用板材によれば、コンクリート打設に伴う作業工期の短期化及び施行コストの低減を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係るコンクリート打設工法で用いる型枠の一例を示す斜視図である。
【0017】
本実施形態に係る型枠100は、図1に示すように、同じ構成を有する一対の型枠用板材10が、セパレーター20により所定間隔を空けて対向配置されることで形成されている。
【0018】
型枠用板材10は、平面視略矩形状のベニヤ板からなる支持板1と、この支持板1の一面に接着剤により配設され、ビーズ法ポリスチレンフォーム(以下、「EPS」と記す。)からなり、支持板1と同一寸法の断熱板(断熱材)2と、この支持板1の他面に釘により配設され、支持板1の他面において周囲を覆うように組み込まれた桟木からなる補強材3と、から構成されている。
ここで、支持板1、断熱板2、及び補強材3の寸法(縦寸法、横寸法、幅寸法)は、それぞれ形成する素材や、建築物の大きさ・形状・設計条件などに応じて適宜変更する。
【0019】
セパレーター20は、型枠100の内側面をなす二枚の断熱板2の間に配設される合成樹脂製の筒部材21と、型枠100の外側面をなす二枚の補強材3の間に配設され、筒部材21の内部を貫通し両端部に雄ネジを備える金属製の芯部材22と、で構成されている。
【0020】
そして、このような型枠用板材10を一対用いて、補強材3がそれぞれ外側に位置するように対向配置させた後、対向する型枠用板材10間にセパレーター20を配設させ、該セパレータ20の芯部材22を筒部材21に貫通させた状態で、両側から雌ネジを備える固定部材24により固定して型枠用板材10を保持することで、所定寸法の型枠100を完成させる。
【0021】
次に、このような型枠用板材10を用いたコンクリート打設工法の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は、本発明に係るコンクリート打設工法の一例であり、図1に示すA−A断面から見た各工程を示すものである。
【0022】
まず、図2(a)に示すように、予め所定位置に形成した堀孔内に、一対の型枠用板材10を、それぞれ補強材3が外側に位置するように所定間隔を空けて対向配置させた状態で、セパレーター20で保持し、型枠100を完成させる。
なお、固定部材24でセパレータ20を固定する際、図面に示すように、該固定部材24により型枠100の外側にある足場用あるいは型枠支持用の支柱Pをともに固定することが好ましい。
【0023】
次に、図2(b)に示すように、一対の型枠用板材10間に設けられた隙間(つまり、型枠100の内部)に、コンクリート30を流し込んで、所定期間放置させる。
【0024】
次に、図2(c)に示すように、コンクリート30を固化させた後、固定部材24を外し、替わって芯部材22の両側にナットNを嵌め込み固定し、型枠100から補強材3のみを取り外す。そして、外部に露出した支持板1の表面(コンクリート30との接触面とは反対側の面)にタイル等の壁材40を配設することで、コンクリート躯体200を完成させる。
なお、セパレーター20を構成する筒部材21は、コンクリート30の内部にそのまま埋め込まれた状態となる。また、壁材40の支持板1との当接面所定箇所には、芯部材22の端部及びナットNを収容するための窪みSが適宜設けられている。
【0025】
すなわち、本実施形態におけるコンクリート打設工法によれば、コンクリート30を固化させた後、型枠100を形成する型枠用板材10のうち、少なくともコンクリート30と強固に接着した支持板1を除去せず、そのまま埋め込んだ状態で壁材40を配設する構成としたことにより、上述した特許文献1に記載の技術のように、コンクリート30から支持板1を除去する際のコンプレッサやクレーン等の装置が不要となる。よって、コンクリート打設に伴う作業工程が簡易となり、工期の短期化及び施行コストの低減を実現できる。
【0026】
また、本実施形態に係るコンクリート打設工法においては、対向配置させる一対の型枠用板材10を、支持板1の一面に補強材3が配設され、且つ、支持板1の他面に断熱板2が配設されたものとしたことにより、コンクリート30を固化させた後に断熱板2を配設する工程を省略できるため、工期のさらなる短期化及び施行コストのさらなる低減を実現できる。
【0027】
なお、本実施形態では、コンクリート30を固化させた後、型枠100から補強材3のみを取り外し、外部に露出した支持板1の表面にタイル等の壁材40を配設することで、コンクリート躯体200を完成させる場合について説明したが、型枠100から補強材3を取り外すことなく、該補強材の上から壁材40を配設することも可能である。
【0028】
すなわち、図3(a)・(b)に示すように、コンクリート30を流し込んで固化させるまでは、上記実施形態と同様の工程を採用し、その後、図3(c)に示すように、コンクリート30を固化させた後、固定部材24を外し、替わって芯部材22の両側にナットNを嵌め込み固定し、型枠100における補強材3の上からタイル等の壁材40を配設することで、コンクリート躯体200を完成させる。
【0029】
これにより、芯部材22の端部及びナットNが補強材3の高さ内に収まることとなって、壁材40に芯部材22の端部及びナットNを収容するための窪みSを設ける必要がなくなるため、該壁材40に本発明特有の加工を施す必要がなく、工期のさらなる短期化及び施行コストのさらなる低減を実現することができる。
【0030】
また、本実施形態では、型枠100を、一面に補強材3が配設され、他面に断熱板2が配設された支持板1からなる型枠用板材10を一対用いて形成した場合について説明したが、型枠100の構成はこれに限らない。
【0031】
例えば、図4に示すように、一面に補強材3が配設された支持板1からなる一対の型枠用板材10Aを対向配置させて形成した型枠100Aを用いてもよい。
一方、図5に示すように、一面に断熱板2が配設され、他面に補強材3が配設された支持板1からなる型枠用板材10と、一面に補強材3が配設された支持板1からなる型枠用板材10Aとを対向配置させて形成した型枠100Bを用いてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、型枠用板材10を構成する支持板1としてベニヤ板を用いた場合について説明したが、支持板1の素材はこれに限らず、例えば、株式会社ノダ製のモルタル下地板(商標名「ラスカット」)や日本製紙株式会社製のモルタル下地板(商標名「ラストップ」)、パーティクルボード、サイディングボード、セメント板を用いてもよい。
【0033】
さらに、本実施形態では、型枠用板材10を構成する断熱板2として、EPSを用いた場合について説明したが、断熱板2の素材はこれに限らず、例えば、押し出し法ポリスチレン断熱材、フェノール系発泡プラスチック断熱材、ポリウレタン系発泡プラスチック断熱材、無機質系発泡プラスチック断熱材を用いてもよい。
【0034】
さらに、本実施形態では、型枠用板材10を構成する補強材3として、桟木を枠状に組み込んで形成した場合について説明したが、補強材3の素材はこれに限らず、例えば、金属製枠部材や合成樹脂製枠部材を用いてもよい。
【0035】
次に、本発明に係るコンクリート打設工法におけるコーナー部の型枠を形成するための実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図6は、本発明に係るコンクリート打設工法におけるコーナー部の型枠を形成するための実施例である。
【0036】
すなわち、補強材3が支持板1の側端に配設されてなる一の型枠用板材10aと、補強材3が支持板1の側端から所定長さ分だけ内側に配設されてなる他の型枠用板材10bとを用いる。
【0037】
まず、図6(a)に示すように、一の型枠用板材10aの側方に他の型枠用板材10bの側端面(補強材3が支持板1の側端から所定長さ分だけ内側に配設されることで、支持板1の表面あるいは裏面における側端部における補強材3が配設されていない部分)を当接させることで、図6(b)に示す状態に型枠を形成する。
かかる状態において、一の型枠用板材10aにおける補強材3と他の型枠用板材10bにおける側端面とを固定することで、コーナー部の型枠が完成する。
なお、一の型枠用板材10aと他の型枠用板材10bとの固定手段については、特に限定するものではないが、例えば、図6(c)に示すように、両型枠用板材10a・10bにそれぞれ孔を形成し、その位置を合わせてボルト・ナットにより固定する手段等が考え得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るコンクリート打設工法で用いる型枠の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るコンクリート打設工法の一例を示し、図1に示すA−A断面からみた各工程を示す断面図である。
【図3】本発明に係るコンクリート打設工法の一例を示し、図1に示すA−A断面からみた各工程を示す断面図である。
【図4】本発明に係るコンクリート打設工法で用いる型枠の他の例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るコンクリート打設工法で用いる型枠の他の例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るコンクリート打設工法におけるコーナー部の型枠を形成するための実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 支持板
2 断熱板(断熱材)
3 補強材
10 型枠用板材
20 セパレーター
30 コンクリート
40 壁材
100 型枠
200 コンクリート躯体
N ナット
P 足場用支柱
S 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板の一面に補強材が配設されてなる一対の型枠用板材を、前記補強剤が夫々外側に位置するように対向配置させることで、型枠を形成する工程と、
当該型枠内部にコンクリートを流し込む工程と、
当該コンクリートを固化させた後、前記型枠をそのまま埋め込んだ状態で、前記補強材に壁材を配設する工程と、
を備えたことを特徴とするコンクリート打設工法。
【請求項2】
支持板の一面に補強材が配設されてなる一対の型枠用板材を、前記補強材がそれぞれ外側に位置するように対向配置させることで、型枠を形成する工程と、
当該型枠内部にコンクリートを流し込む工程と、
当該コンクリートを固化させた後、前記型枠から前記補強材のみを除去し、前記支持板をそのまま埋め込んだ状態で、前記支持板に壁材を配設する工程と、
を備えたことを特徴とするコンクリート打設工法。
【請求項3】
前記コンクリート打設工法において、前記補強材が支持板の側端に配設されてなる一の型枠用板材と、前記補強材が支持板の側端から所定長さ分だけ内側に配設されてなる他の型枠用板材とを用い、一の型枠用板材の側方に他の型枠用板材の側端面を当接させて固定することで、コーナー部の型枠を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリート打設工法。
【請求項4】
前記コンクリート打設工法において、前記対向配置させる型枠用板材のうち少なくとも一方を、前記支持板の一面に補強材が配設され、且つ、前記支持板の他面に断熱材が配設されたものとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンクリート打設工法。
【請求項5】
コンクリート打設工法で用いる型枠を形成するための板材であって、
一面に補強材が配設された支持板からなり、
前記補強材がそれぞれ外側に位置するように対向配置させることで型枠を形成し、当該型枠内部に流し込んだコンクリートを固化させた後に、少なくとも前記支持板をそのまま埋め込んだ状態で用いることを特徴とする型枠用板材。
【請求項6】
コンクリート打設工法で用いる型枠を形成するための板材であって、
一面に補強材が配設され、他面に断熱材が配設された支持板からなり、
前記補強材がそれぞれ外側に位置するように対向配置させることで型枠を形成し、当該型枠内部に流し込んだコンクリートを固化させた後に、少なくとも前記支持板をそのまま埋め込んだ状態で用いることを特徴とする型枠用板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−191447(P2009−191447A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30231(P2008−30231)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(508044324)