説明

コンタクトレンズの白濁解消用製剤及び白濁解消方法

【課題】コンタクトレンズ(CL)に発生する白濁を解消するための組成物及び方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも1種類以上のシクロデキストリンを有効成分として用いる。シクロデキストリンを含有する水溶液にCLを浸漬することによって、CLに油脂成分が付着することによって発生すると考えられている白濁を解消できることと、白濁の発生を予防し得る。さらに、シクロデキストリンと界面活性剤を併用することによって、CLに生じた白濁及び油脂成分を除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ(CL)、特に酸素透過性を向上させるシリコン系素材を含有するCLに生じる白濁を解消するための製剤及び方法であって、シクロデキストリンを有効成分として使用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の有用な視力の矯正方法としては、眼鏡の使用、CLの装用、又はLASIKを初めとする視力矯正手術が挙げられる。その中でもCLは、高い視力矯正力に加え、眼鏡の使用時よりも矯正された視野が広いこと、運動時でも安定した視界が得られること、さらに手術に比べ侵襲性が低いことから多くの人に使用されている。現在、日本では人口の約13%に当たる1600万人程度がCLを使用している。
【0003】
CLは、一般的にハードCL(HCL)とソフトCL(SCL)に大別される。HCLには、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた酸素透過性のないハードレンズと、フルオロメタクリレートやシロキサンメタクリルアミド等のフッ素又はケイ素を含有するモノマーからなる酸素透過性ハードレンズ(RGPCL)がある。現在、HCLとして広く使用されているのは後者のRGPCLである。
【0004】
RGPCLは、酸素透過性が高く、CLの装用による角膜への負担が少ない反面、装用による異物感が大きい。また、フッ素又はケイ素を含有する疎水性の高い素材を使用しているため、涙液中の油脂成分が付着しやすいという欠点がある。一方、SCLにはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)又はN−ビニルピロリドン(NVP)を用いた含水性SCLと、ブチルアクリレート又はジメチルシロキサン等を使用した非含水性SCLがある。現在、一般にSCLと呼ばれ広く使用されているのは前者の含水性ソフトコンタクトレンズである。
【0005】
含水性SCLはやわらかい素材を使用しているため、装用による異物感が小さく、激しい運動時でもCLがずれにくいという利点がある反面、素材が酸素を通しにくいので長時間の装用は角膜への負担が大きい。また、CLの含水率を上げることで酸素透過性を向上させるためにメタクリル酸(MA)を含有する素材で作られたSCLは、涙液中のタンパク質が付着しやすいという欠点がある。
【0006】
このような状況の中で、近年、シリコーンハイドロゲル(SH)と呼ばれる素材を用いたCL(シリコーンハイドロゲルレンズ:SHCL)が新たに開発され、CLメーカー各社から上市された。SHCLは酸素透過性の高いシロキサン(ケイ素)成分とHEMA、NPV又は熱可塑性塩化ビニル(TPVC)のようなハイドロゲル素材を重合した素材で作られており、HCLの酸素透過性の高さと、SCLの装用感の良さとを兼ね備えたCLとなっている。SHCLは装用時の異物感が小さく、さらに酸素透過性が高いので角膜への負担も少なく、長時間の装用が可能な画期的なCLだと言える。
【0007】
しかしながら、SHCLも実装用とするにあたって、いくつかの問題が浮上した。その一つが装用によってレンズが白濁するというものである。SHCLは、RGPCLと同様に構成成分にシロキサン(ケイ素)成分を含有する疎水性の高い素材を使用している。このため、涙液中の油脂成分がレンズに付着し、レンズが白濁するという事例が数多く報告された(例えば、非特許文献1参照)。また、この白濁の発生は、CLへの油脂成分の付着及びCL表面の性状に関係することが報告されており(例えば、非特許文献2)、油脂成分とCL表面との何らかの相互作用によって発生するものと考えられる。
【0008】
この白濁は、CLをこすり洗いするという物理的な方法で除去することが可能であるが、こすり洗いの操作は煩雑であり、頻繁に行うには難がある。また、ユーザーの得手不得手もあるために、白濁の除去が不十分となる場合もあり、より簡便に白濁を解消する方法が求められていた。
【0009】
一方、シクロデキストリン(CD)は5個以上のD−グルコースがα1−4結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ糖である。一般的には、D−グルコースが6〜8個結合したものが知られており、それぞれ6個結合したものをα−CD、7個結合したものをβ−CD、8個結合したものをγ−CDと呼ぶ。シクロデキストリンは他の多糖より比較的安定であり、さらに環状構造の内部は小さな分子を包接できる程度の孔となっている。また、シクロデキストリン環状構造の外側は親水性、内側は疎水性であるため疎水性の分子を包接しやすい。このような特性から、疎水性の物質の可溶化剤又は水などと反応しやすい物質の安定化剤として、医薬品や食品の分野においてシクロデキストリンは広く利用されている。
【0010】
CLケアの分野において、シクロデキストリンは消毒剤の安定化、タンパク質又は脂質のCLへの吸着抑制剤として使用されている(例えば、特許文献1〜10参照)。また、CLの洗浄成分としても使用されている(例えば、特許文献11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−285529号公報
【特許文献2】特開平11−151288号公報
【特許文献3】特開2001−318350号公報
【特許文献4】特開2002−284706号公報
【特許文献5】特開2002−284706号公報
【特許文献6】特表2004−536668号公報
【特許文献7】特表2004−538096号公報
【特許文献8】特開平8−175974号公報
【特許文献9】特開2001−125052号公報
【特許文献10】特開2001−318348号公報
【特許文献11】特開平4−264422号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】植田喜一、柳井亮二:あたらしい眼科 25(7):923〜930,2008
【非特許文献2】中村滋、笹沼一博等:第62回臨床眼科学会抄録集:p68
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献11には、シクロデキストリンによる効果として、涙液に含まれるタンパク様物質等の除去及びCLへの堆積の防止が開示されているのみで、RGPCL又はSHCLなどのCLの酸素透過性を向上させる疎水性成分を含有するCLに油脂成分が付着し、CL表面との相互作用によって発生する白濁への効果については全く記載されていない。そのため、RGPCL又はSHCL等のシロキサン成分を含有するCLの油脂成分の付着による白濁を解消するという課題は、いまだ未解決のままであった。
【0014】
本発明は、CLに油脂成分が付着することによって発生する白濁を解消するためのCL白濁解消用製剤、及びCL白濁解消方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意研究を行った。その結果、CL、特に酸素透過性を向上させる成分を含有するCLに油脂成分が付着することで発生する白濁を、シクロデキストリンを含む水溶液にCLを浸漬することによって解消できることを見出した。また、シクロデキストリンを含む水溶液にCLを浸漬することによって、CLに白濁が発生することも防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
具体的に、本発明は、
少なくとも1種類以上のシクロデキストリンを有効成分として含有する、CL白濁解消用製剤に関する。
【0017】
また、本発明は、
少なくとも1種類以上のシクロデキストリンを含有する水溶液にCLを浸漬することにより、CLの白濁解消方法に関する。
【0018】
使用時におけるシクロデキストリン濃度は、0.0001重量%以上50重量%以下とすることが好ましい。ここで、本発明のCL白濁解消用製剤の使用時とは、CLを実際に処理する水溶液としたときを意味し、固体製剤等を水に溶解させて水溶液とした場合、高濃度液剤を希釈した場合等が該当する。
【0019】
本発明のCL白濁解消用製剤及びCLの白濁解消方法は、シロキサン成分を含む酸素透過性CLに対して特に有用である。油脂成分が付着し易い素材のCLは、白濁が発生し易いからである。
【0020】
CL白濁解消用製剤は、少なくとも1種類以上の界面活性剤をさらに含有することが好ましい。シクロデキストリンと界面活性剤とを併用することによって、CLに発生した白濁と共に、油脂成分を含めて除去できるためである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、CLに生じる白濁を解消及び予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の実験結果を示す図面である。
【図2】実施例2の実験結果を示す図面である。
【図3】実施例3の実験結果を示す図面である。
【図4】実施例4のコレステロール付着量の定量結果を示すグラフである。
【図5】実施例4の実験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参酌しながら説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されない。
【0024】
本発明は、CL表面に油脂成分が付着することに起因して発生すると考えられる白濁に対して適用される。本発明で使用する白濁解消用製剤は、CLに発生した白濁を解消する成分として、少なくとも1種以上のシクロデキストリン(CD)を含有していれば足りる。
【0025】
ここで、本発明の白濁解消用製剤は、液剤(水溶液)であってもよく、使用時に水溶液とするための粉末、顆粒又は錠剤等であってもよい。また、使用時に希釈するための液剤であってもよい。すなわち、CLを洗浄する時点で白濁を解消する成分としてのシクロデキストリンを含有していればよく、それまでは液体、固体、エマルジョン、またはそれらの剤型から選択される複数の製剤の組合せであってもよい。
【0026】
使用時(水溶液中)のシクロデキストリン濃度は、0.0001w/v%以上50.0w/v%以下の範囲とすることが好ましい。0.0001w/v%未満では白濁解消効果が少なく、50.0w/v%超ではシクロデキストリンが溶解し難くなり、製剤化が困難となるためである。
【0027】
ここで用いられる「シクロデキストリン(CD)」は、(1)シクロデキストリンカルボネート、エーテル、エステル又はポリエーテルのような全てのシクロデキストリンの誘導体;(2)重合化β−シクロデキストリンのような重合化シクロデキストリンのポリマー又はコポリマー;(3)水酸基に官能基が結合した置換シクロデキストリン:を含む。なお、水酸基に結合する官能基としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基又はアセチル基が挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
本発明のCL白濁解消用製剤には、シクロデキストリンによる白濁解消効果を妨げず、かつ、生体(目)及びCLの物性及び形状に対する何らの有意な影響を及ぼさない範囲において、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤等の安定化剤、粘稠化剤又は界面活性剤等を含有させることができる。
【0029】
殺菌剤は、CL、特に含水性CLの殺菌消毒を目的で含有させることができる。殺菌剤は、CL用洗浄液等のCL用製剤に一般的に用いられるものであれば特に差し支えない。例えば、塩酸ポリヘキサニド(PHMB)のようなビグアニド又はその塩類、塩化ポリドロニウムのような第4級アンモニウム塩、ハロゲン化ベンザルコニウム、過酸化水素等の酸化抗菌剤、ヨウ素化合物等を使用し得る。これらの殺菌剤は、各殺菌剤に応じたCLの殺菌消毒に十分であり、かつ、生体(目)への刺激及び悪影響がない濃度範囲で、CL白濁解消用製剤に含有させることができる。
【0030】
緩衝剤は、CL白濁解消用製剤のpHを安定化する目的で含有させることができる。緩衝剤は、CL用洗浄液などのCL用製剤又は眼科用製剤に一般的に用いられているものであれば特に差し支えない。例えば、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム又はリン酸二水素カリウムのようなリン酸系緩衝剤;硼酸、硼酸ナトリウムのような硼酸系緩衝剤;トリスアミノメタンと希塩酸、トリスマレートと希水酸化ナトリウム液のようなトリス系緩衝剤:等を使用し得る。緩衝剤は0.05w/v%以上1.0w/v%以下の濃度範囲とすることが好ましい。
【0031】
本発明のCL白濁解消用製剤は、使用時(水溶液)のpH範囲を、pH5〜8とすることが好ましい。pH5未満の酸性領域及びpH8超のアルカリ性領域では、眼刺激又は眼障害を生じる可能性があるので避けるべきである。
【0032】
等張化剤は、CL白濁解消用製剤の使用時(水溶液)の浸透圧を調整する目的で、製剤中に含有させることができる。等張化剤は、CL用洗浄液等のCL用製剤又は眼科用製剤に一般的に用いられているものであれば特に差し支えない。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属塩;グルコース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール又はデキストラン等の糖質:を使用しうる。これら等張化剤は、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。等張化剤の濃度は、0.5w/v%以上5.0w/v%以下の濃度範囲とすることが好ましい。本発明のCL白濁解消用製剤の使用時(水溶液)の浸透圧は、生理食塩水を1とした場合、その浸透圧比が0.7〜1.3の範囲に収まるように、等張化剤の濃度を調整することが好ましい。
【0033】
安定化剤は、CL白濁解消用製剤に含まれる成分を安定化する目的等で含有することができる。安定化剤は、CL用洗浄液等のCL用製剤又は眼科用製剤に一般に用いられているものであれば特に差し支えない。例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、クエン酸又はクエン酸塩等を使用し得る。安定化剤は、0.01w/v%以上0.2w/v%以下の濃度範囲とすることが好ましい。
【0034】
粘稠化剤は、CL白濁解消用製剤の使用時(水溶液)の粘度を調整する目的で含有させることができる。粘稠化剤は、CL用洗浄液等のCL用製剤又は眼科用製剤に一般に用いられているものであれば特に差し支えない。例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はポリビニルアルコール等のポリオール類;トレハロース、シュクロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はβ−シクロデキストリン等の糖質類;カルボキシビニルポリマー又はポリビニルピロリドン等の高分子:等を使用し得る。粘稠剤は、目的とするCL白濁解消用製剤の使用時(水溶液)の粘性率によって適宜設定され、0.05w/v%以上5.0w/v%以下の濃度範囲とすることが好ましい。
【0035】
界面活性剤は、油脂成分又は糖質等をCLから除去する目的で、CL白濁解消用水溶液に含有させることができる。特に、シロキサン成分を含む酸素透過性CLは、油脂成分が付着しやすく、白濁を生じやすいため、このようなCLを対象とする白濁解消用水溶液は、界面活性剤を含有していることが好ましい。
【0036】
界面活性剤は、CL用洗浄液等のCL用製剤又は眼科用製剤に一般的に用いられているものであれば特に差し支えない。例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤等に分類される各種の界面活性剤を使用し得る。但し、界面活性剤が目と接触する可能性がある場合には、眼刺激及び細胞毒性等の目への影響を考慮した上で、界面活性剤の種類及び含有濃度を決定しなければならない。このような場合、非イオン性界面活性剤を使用することが好ましく、その濃度は0.0001w/v%以上10.0w/v%以下の範囲とすることが好ましい。
【0037】
[実施例1]
(1)人工白濁CLの作成
コレステロール及びオレイン酸を、終濃度50μg/mlになるように、それぞれテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。次に、これらコレステロール溶液及びオレイン酸溶液を1対1の割合で混合した(コレステロール/オレイン酸溶液)。試験管にリン酸緩衝化生理食塩水(Phospate buffer saline:PBS)を10ml取り、ボルテックスミキサーを用いて撹拌しながらコレステロール/オレイン酸溶液を50μl加え、しばらく撹拌した。撹拌後の溶液を「汚れ液」と称する。
【0038】
12穴プレートに汚れ液を4ml分注し、その中にSHSCL(アキュビューアドバンス:ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を浸し、35℃で24時間静置した。24時間後のCLを、人工白濁CLとした。
【0039】
(2)人工白濁CLの処理
人工白濁CLを、(a) PBS、(b) 1w/v%シクロデキストリン含有PBS、又は(c) 0.1w/v%Tween80含有PBSにそれぞれ浸漬し、25℃で一晩静置した。
【0040】
(3)CLに残存する白濁の観察及びコレステロールの定量
(a)〜(c)の各溶液で処理したCLを、顕微鏡を用いて観察した。また、ヘキサンを用いて各CLに付着したコレステロールを抽出し、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いてコレステロール付着量を定量した。図1は、その結果を示す。
【0041】
図1の顕微鏡写真から明らかなように、シクロデキストリンを含有する(b)の水溶液に浸漬した場合には、人工白濁CLの白濁がほとんど解消された。一方、コレステロール付着量は、界面活性剤であるTween80を含有する(c)の水溶液に浸漬した場合が最も少なかったが、CL白濁は、(c)の水溶液では解消できなかった。このように、シクロデキストリンには白濁を解消する作用はあるが、白濁の原因と考えられているコレステロールを除去する効果はないことが確認された。
【0042】
[実施例2]
(1)CLの前処理
SHCL(アキュビューアドバンス:ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を、(a)PBS又は(b) 20w/v%シクロデキストリン含有PBSに浸漬し、4時間静置した。
【0043】
(2)CLへの白濁汚れの付加
(1)の処理後のCLについて、実施例1の(2)と同様の操作を行い、白濁汚れを付加した。
【0044】
(3)CLに残存する白濁の観察及びコレステロールの定量
実施例1と同様に、CLを、顕微鏡を用いて観察した後、コレステロール付着量を定量した。図2は、その結果を示す。
【0045】
図2の顕微鏡写真から明らかなように、シクロデキストリンを含有する(b)の水溶液に浸漬して前処理した場合には、CLの白濁がほとんど発生しないことが確認された。ただし、一方、コレステロール付着量は、白濁が発生しなかった(b)の水溶液で前処理した場合の方が多かった。
【0046】
[実施例3]
(1)人工白濁CLの作成
実施例1と同様の操作によって、RGPCLを用いて人工白濁CLを作成した。
【0047】
(2)人工白濁CLの処理
(1)で作成した人工白濁レンズを、(a) PBS又は(b) 5w/v%シクロデキストリン含有PBSに浸漬し、25℃で一晩静置した。
【0048】
(3)CLに残存する白濁の観察
実施例1と同様に、CLを、顕微鏡を用いて観察した。図3は、その結果を示す。
【0049】
(b)の水溶液で処理した場合には、CL白濁をほとんど解消することができた。一方、(a)の水溶液で処理した場合には、CL白濁は全く解消されなかった。
【0050】
[実施例4]
(1)CLへの人工白濁の付着
実施例1と同様の方法で汚れ液を作成し、汚れ液1mlにSHCL(アキュビューオアシス:ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を浸漬し、140rpm、35℃で6時間振盪した。
【0051】
(2)人工白濁CLの処理
(1)で作成した人工白濁CLを、(a) PBS、(b) 0.025w/v%HCO−60含有PBS、(c) 0.025w/v%HCO−60+0.0125w/v%シクロデキストリン含有PBS、又は(d) 0.025w/v%HCO−60+0.0063w/v%シクロデキストリン含有PBSに浸漬し、室温で一晩静置した。また、(1)で作成した人工白濁CLレンズを(e) 市販過酸化水素製剤A又は(f) 市販過酸化水素製剤Bを用いて、それぞれの用法通り処理を行った。
【0052】
(3)(1)および(2)の操作の繰り返し
(1)および(2)の操作を3回繰り返した。
【0053】
(4)CLに残存する白濁の観察およびコレステロールの定量
実施例1と同様に、CLを、顕微鏡を用いて観察した後、GCによってコレステロール付着量を定量した。図4及び図5は、その結果を示す。
【0054】
図4の棒グラフから、コレステロール付着量は(b)の水溶液で処理した場合が最も少なく、次いで(c)及び(d)の水溶液で処理した場合が少なかった。しかし、図5の写真から、(c)及び(d)の水溶液で処理した場合には白濁が解消されるが、それら以外の水溶液で処理した場合には白濁がほとんど解消されないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のCLの白濁解消用製剤及び白濁解消方法は、CL洗浄用製剤及びCL洗浄方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類以上のシクロデキストリンを有効成分として含有する、コンタクトレンズ白濁解消用製剤。
【請求項2】
使用時におけるシクロデキストリン濃度が0.0001重量%以上50重量%以下である、請求項1に記載のコンタクトレンズ白濁解消用製剤。
【請求項3】
前記コンタクトレンズがシロキサン成分を含む酸素透過性コンタクトレンズである、請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ白濁解消用製剤。
【請求項4】
少なくとも1種類以上の界面活性剤をさらに含有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ白濁解消用製剤。
【請求項5】
少なくとも1種類以上のシクロデキストリンを含有する水溶液にコンタクトレンズを浸漬することにより、コンタクトレンズの白濁解消方法。
【請求項6】
水溶液中のシクロデキストリン濃度が0.0001重量%以上50重量%以下である、請求項5に記載のコンタクトレンズの白濁解消方法。
【請求項7】
前記コンタクトレンズがシロキサン成分を含む酸素透過性コンタクトレンズである、請求項5又は6に記載のコンタクトレンズ白濁解消方法。
【請求項8】
前記水溶液が少なくとも1種類以上の界面活性剤をさらに含有する、請求項5乃至7のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ白濁解消方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−203665(P2011−203665A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73220(P2010−73220)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(595149793)株式会社オフテクス (8)
【Fターム(参考)】