説明

コンテナクレーン

【課題】クレーン頂部の反らせシーブが不要になるコンテナクレーン。
【解決手段】前脚5及び後脚6の頂部にガーダ9aを水平に設けると共に前記ガーダ9aの海側端にブームヒンジ23を介してブーム9bを起伏自在に設け、前記ガーダ9aの上方に起伏ロープ14を巻回させた起伏ドラム17を設け、前記前脚5上に立設させたAフレーム支柱11aに頂部シーブ18を設け、更に、前記ブーム9bの先端に先端シーブ19を設けたコンテナクレーンにおいて、前記ガーダ9aの海側端に設けたブームヒンジ23と前記ブーム9bの先端に設けた先端シーブ19との間に中間シーブ24を配置し、前記起伏ドラム17から引き出した起伏ロープ14を、クレーン頂部の頂部シーブ18を経由して前記中間シーブ24に掛け渡すと共に、該中間シーブ24から前記頂部シーブ18を経由して前記先端シーブ19に掛け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナの積み卸しを行うコンテナクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、従来、一般に、コンテナ船1等を係留する岸壁2には、コンテナ船1との間でコンテナ3の積み卸しを行うためのコンテナクレーン4が設けられている。コンテナクレーン4は、岸壁2上に岸壁に沿って移動自在に設けられた前脚5及び後脚6を有している。これら両脚5,6の間には、補強材としての水平材7及び斜材8が掛け渡されている。
【0003】
前脚5及び後脚6の頂部には、ガーダ9aが水平に設けられている。ガーダ9aの海側端には、コンテナ船1の接岸時に邪魔にならないように、起伏自在にブーム9bが取り付けられている。ガーダ9a及びブーム9bによって構成された水平梁9は、バックステー10、頂点鉄構11及びテンションバー12によって補強され、テンションバー12は、ブーム9bの俯仰時に図示しない関節部で屈曲するようになっている。符号20は、スプレッダ22を昇降させるロープを示している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1では、ブーム9bを起伏させる起伏ロープについて記載されていないが、従来は、図5及び図6のロープ掛け図に示すシーブ配置になっており、ブームヒンジ23を軸にしてブーム9bを起立させたときに、起伏ロープ14を反らせるため、クレーン頂部に反らせシーブ15を設けることが行われている。
【0005】
この反らせシーブ15は、図7に示すように、機械室16の起伏ドラム17からクレーン頂部の頂部シーブ18を経由してブーム先端の先端シーブ19に掛けられている起伏ロープ14が、ブーム9bの起立時に、最短コースaを選んで頂部シーブ18から外れるのを防いでいる。符号21は、起伏ロープ14の固定端を示している。
【0006】
しかしながら、近年は、クレーンを工場で完成状態にして出荷するために、輸送時の製品(コンテナクレーン)の高さが高くなる。一方、輸送経路に橋や高圧電線等が掛かっている場合、通過制限高さがあり、クレーン高さに制限が必要となるが、反らせシーブ15がコンテナクレーンの最も高い位置にあるため、この反らせシーブ15の高さを如何に低く抑えることが、橋の通過制限高さをクリアするための課題になる。
【0007】
一般的には、輸送時、高さ制限がある場合には、反らせシーブ15を取り外して現地で組み立てるが、コンテナクレーンの高さが約80mもあることから、反らせシーブ15の組み立てに一般的な重機が使用できない。また、反らせシーブ15の取り付けが現地での高所作業となるため、難しい作業となっている。
【0008】
また、従来は、ブーム9bの先端だけを起伏ロープ14で支えるため、ブーム9bが撓み易い。そのため、ブーム9bを起立状態に固定する固定装置との位置合わせの際に、部材の撓みによる誤差調整が必要であった。そのため、撓んだ状態で現物に合わせ位置決め調整後、溶接取付けとなる。溶接が高所で行なわれるため、低所作業者の人払い、或いは塗装面の養生が必要となるため、工期が長くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−58973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記問題点をクリアするコンテナクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るコンテナクレーンは、前脚及び後脚の頂部にガーダを水平に設けると共に前記ガーダの海側端にブームヒンジを介してブームを起伏自在に設け、前記ガーダの上方に起伏ロープを巻回させた起伏ドラムを設け、前記前脚上に立設させたAフレーム支柱に頂部シーブを設け、更に、前記ブームの先端に先端シーブを設けたコンテナクレーンにおいて、前記ガーダの海側端に設けたブームヒンジと前記ブームの先端に設けた先端シーブとの間に中間シーブを配置し、前記起伏ドラムから引き出した起伏ロープを、クレーン頂部の頂部シーブを経由して前記中間シーブに掛け渡すと共に、該中間シーブから前記頂部シーブを経由して前記先端シーブに掛け渡すことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係るコンテナクレーンは、ブーム起伏状態で、中間シーブの位置が頂部シーブと起伏ドラムを結ぶ起伏ロープの延長線上よりも低くなるように、ガーダの海側端に設けられているブームヒンジから中間シーブ迄の距離Xを設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコンテナクレーンは、前脚及び後脚の頂部にガーダを水平に設けると共に前記ガーダの海側端にブームヒンジを介してブームを起伏自在に設け、前記ガーダの上方に起伏ロープを巻回させた起伏ドラムを設け、前記前脚上に立設させたAフレーム支柱に頂部シーブを設け、更に、前記ブームの先端に先端シーブを設けたコンテナクレーンにおいて、前記ガーダの海側端に設けたブームヒンジと前記ブームの先端に設けた先端シーブとの間に中間シーブを配置し、前記起伏ドラムから引き出した起伏ロープを、クレーン頂部の頂部シーブを経由して前記中間シーブに掛け渡すと共に、該中間シーブから前記頂部シーブを経由して前記先端シーブに掛け渡すため、ブームを起立させた時に、ブームの略中間部に設けた中間シーブがクレーン頂部の頂部シーブよりもブーム側に位置し、起伏ロープが頂部シーブから外れなくなる。
【0014】
このため、クレーン頂部に設けられていた反らせシーブが不要となるため、現地での組み立て作業が不要となり、工期が短縮されると共に、難しい現地作業を回避できる。また、重機も不要となるため、重機選定の制限を受けなくなる。
【0015】
また、従来技術では、ブームが起立状態に近くなると、ワイヤロープが真下に向くため、ブームに作用するロープ張力は、ほとんど真下に作用する。このため、ブームを水平方向に引っ張る水平力成分が小さくなり、ブームを起立状態にする作業効率が悪いが、本発明のローピングでは、水平力成分が生じるため、ブームを起立状態にする作業効率が良くなる。
【0016】
また、従来は、ブーム先端だけを起伏ロープで支えるため、ブームに撓みが生じ易い。そのため、ブームを起立状態に固定するブーム固定装置との位置合わせの際に、部材の撓みによる誤差調整が必要であったが、本発明のローピングでは、ブーム先端のみならず、ブームの中間部も起伏ロープで支えるため、ブームの撓みが低減され、ブームを起立状態に固定するブーム固定装置の誤差調整が少なく、調整代が少ないため、取付け部材の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るコンテナクレーンの概略構成図である。
【図2】本発明のロープ掛け方法を示す斜視図である。
【図3】ブーム起立時の起伏ロープの掛け渡し状態を示す側面図である。
【図4】一般的なコンテナクレーンの概略構成図である。
【図5】従来のコンテナクレーンの概略構成図である。
【図6】従来のロープ掛け方法を示す斜視図である。
【図7】ブーム起立時の起伏ロープの掛け渡し状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明のコンテナクレーン4は、一般的なコンテナクレーンと同様に、前脚5及び後脚6の頂部にガーダ9aを水平に設けている。ガーダ9aの海側の端部には、ブームヒンジ23を介してブーム9bを起伏自在に取り付け、コンテナ船の接岸時に邪魔にならないようにしている。ガーダ9a及びブーム9bによって構成された水平梁9は、Aフレーム10a、前脚5の頂部に立設させたAフレーム支柱11a及びテンションバー12a,12bによって補強され、テンションバー12a,12bは、ブーム9bの起伏時に図示しないヒンジ部で屈曲するようになっている。
【0019】
更に、クレーン頂部となるAフレーム支柱11aの頂部に頂部シーブ18を設けると共に、ブーム9bの先端に先端シーブ19を設けている。その上、本発明のコンテナクレーン4は、ガーダ9aの海側端に設けたブームヒンジ23と、ブーム9bの先端に設けた先端シーブ19との間に中間シーブ24を配置している。その際、ガーダ9aの海側端に設けたブームヒンジ23からブーム9bに設けた中間シーブ24迄の距離Xを頂部シーブ18の高さYよりも小さく設定する必要がある。換言すれば、ブーム起伏状態で、中間シーブ24の位置は、頂部シーブ18と起伏ドラム17を結ぶ起伏ロープ14の延長線26よりも低くなるように、ガーダ9aの海側端に設けられているブームヒンジ23から中間シーブ24迄の距離Xを決める必要がある。
【0020】
そして、図1に示すように、ガーダ9aの上方に設置した機械室16内の起伏ドラム17から引き出した起伏ロープ14を、クレーン頂部の頂部シーブ18を経由して中間シーブ24に掛け渡した後、更に、前記中間シーブ24から前記頂部シーブ18を経由して先端シーブ19に掛け渡している。
【0021】
より詳しく説明すると、図2に示すように、起伏ドラム17から引き出した起伏ロープ14を、クレーン頂部の第1頂部シーブ181 を経由して中間シーブ24に掛け渡すと共に、この中間シーブ24から第2頂部シーブ182 →第1先端シーブ191 →第3頂部シーブ183 →第2先端シーブ192 →第4頂部シーブ184 →第3先端シーブ193 の順に掛け渡し、その自由端をAフレーム支柱11aに取り付けている。符号21は、その固定端を示している。
【0022】
図3に示すように、ガーダ9aの海側端に設けたブームヒンジ23を支点にしてブーム9bを所定の角度θ(例えば、84°)に起立させると、ブーム9bの略中間部に設けた中間シーブ24が頂部シーブ18と起伏ドラム17を結ぶ起伏ロープ14の延長線26よりも低くなるため、頂部シーブ18から起伏ロープ14が外れなくなる。このとき、ブーム9bを起伏状態に固定するブーム固定装置(図示せず)どうしが自動的に連結する。
【符号の説明】
【0023】
5 前脚
6 後脚
9a ガーダ
9b ブーム
14 起伏ロープ
17 起伏ドラム
19 先端シーブ
23 ブームヒンジ
24 中間シーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前脚及び後脚の頂部にガーダを水平に設けると共に前記ガーダの海側端にブームヒンジを介してブームを起伏自在に設け、前記ガーダの上方に起伏ロープを巻回させた起伏ドラムを設け、前記前脚上に立設させたAフレーム支柱に頂部シーブを設け、更に、前記ブームの先端に先端シーブを設けたコンテナクレーンにおいて、前記ガーダの海側端に設けたブームヒンジと前記ブームの先端に設けた先端シーブとの間に中間シーブを配置し、前記起伏ドラムから引き出した起伏ロープを、クレーン頂部の頂部シーブを経由して前記中間シーブに掛け渡すと共に、該中間シーブから前記頂部シーブを経由して前記先端シーブに掛け渡すことを特徴とするコンテナクレーン。
【請求項2】
ブーム起伏状態で、中間シーブの位置が頂部シーブと起伏ドラムを結ぶ起伏ロープの延長線上よりも低くなるように、ガーダの海側端に設けられているブームヒンジから中間シーブ迄の距離Xを設定することを特徴とする請求項1記載のコンテナクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−213460(P2011−213460A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84577(P2010−84577)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)