説明

コンテナ固縛金具

【課題】甲板上の可燃性のガスが発生しているような区画においてもコンテナを搭載することを可能とし、また、そのような区画において隣接するコンテナ同士を接近させて積み重ねることを可能とするコンテナ固縛金具を提供する。
【解決手段】筐体部1と、筐体部1により回転可能に支持され下端側が下側コンテナ上面の係合孔に締着される下側締着部3となされ上端側が上側コンテナ下面の係合孔に締着される上側締着部4となされた軸部2とを備え、筐体部1及び軸部2は、ベリリウム銅合金、または、ニッケルベリリウム系合金など、非着火性の材料により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ船において多数のコンテナを多段に積み重ねて輸送するにあたって、多段積みされた多数のコンテナを固縛するためのコンテナ固縛金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、多数のコンテナを多段に積み重ねて船舶輸送することが行なわれている。このようなコンテナの船舶輸送においては、多数のコンテナは、甲板上に積み重ねられる。甲板上に積み重ねられたコンテナは、船体の揺れによって傾きを生じ、その傾きによって、コンテナ同士が接触する虞がある。そのため、甲板上に積み重ねられたコンテナは、固縛金具によって固縛して、安定させる必要がある。
【0003】
固縛金具は、下段のコンテナの上面部に締着されるとともに、上段のコンテナの下面部に締着されることによって、これらコンテナ間を固縛する。コンテナの上面部の四隅部には、固縛金具が締着されるための係合孔が設けられている。また、コンテナの下面部の四隅部にも、固縛金具が締着されるための係合孔が設けられている、固縛金具は、下段のコンテナの上面四隅部の係合孔のそれぞれに下端側を締着され、上段のコンテナの下面四隅部の係合孔のそれぞれに上端側を締着されることによって、これらコンテナの四隅部同士を固縛するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−161941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のようなコンテナ及び固縛金具は鉄製であり、固縛金具をコンテナへ締着させるときに、これら固縛金具とコンテナとの擦過により、火花が発生する虞がある。
【0006】
また、甲板上に積み重ねられたコンテナは、固縛金具によって固縛されていても、船体の揺れによって僅かな傾きを生ずることがある。隣接するコンテナ同士を接近させて積み重ねている場合には、僅かな傾きであっても、コンテナ同士が接触する虞がある。このようなコンテナ同士の接触によっても、火花が発生する虞がある。
【0007】
そのため、積み重ねたコンテナは、甲板上の可燃性のガスが発生しているような区画には搭載できない。例えば、LNG燃料船において、可燃性のガス(Vapor)が発生しているような区画には、積み重ねたコンテナを積載することができない。
【0008】
甲板上にコンテナを搭載できない区画があることは、搭載できるコンテナの数量が減ってしまうことになるため、輸送効率が低下し、問題である。
【0009】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、甲板上の可燃性のガスが発生しているような区画においてもコンテナを搭載することを可能とし、また、そのような区画において隣接するコンテナ同士を接近させて積み重ねることを可能とするコンテナ固縛金具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係るコンテナ固縛金具は、以下の構成のいずれか一つを有するものである。
【0011】
〔構成1〕
筐体部と、筐体部により回転可能に支持され下端側が下側コンテナ上面の係合孔に締着される下側締着部となされ上端側が上側コンテナ下面の係合孔に締着される上側締着部となされた軸部とを備え、筐体部及び軸部は、非着火性の材料により形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
〔構成2〕
構成1を有するコンテナ固縛金具において、筐体部の外側部には、フランジ部が設けられており、フランジ部の外延は、軸部の中心からの距離が、コンテナの係合孔の中心から該係合孔にコンテナの直近の側面部までの距離よりも長く、軸部がコンテナの係合孔に締着されたときに、コンテナの直近の側面部よりも側方に突出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコンテナ固縛金具においては、構成1を有することにより、筐体部及び軸部は、非着火性の材料により形成されているので、コンテナに擦過しても、火花が発生することがない。
【0014】
また、本発明に係るコンテナ固縛金具においては、構成2を有することにより、筐体部の外側部に設けられたフランジ部の外延は、軸部がコンテナの係合孔に締着されたときに、コンテナの直近の側面部よりも側方に突出するので、隣接するコンテナ同士を接近させて積み重ねた場合に、コンテナが傾いても、隣接するコンテナに締着されたコンテナ固縛金具のフランジ部同士が接触し、コンテナ同士が接触することがなく、火花が発生することがない。
【0015】
すなわち、本発明は、甲板上の可燃性のガスが発生しているような区画においてもコンテナを搭載することを可能とし、また、そのような区画において隣接するコンテナ同士を接近させて積み重ねることを可能とするコンテナ固縛金具を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明に係るコンテナ固縛金具の構成を示す側面図であり、(b)は、本発明に係るコンテナ固縛金具の構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係るコンテナ固縛金具の構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係るコンテナ固縛金具を用いて積み上げたコンテナの状態を示す側面図である。
【図4】本発明に係るコンテナ固縛金具がコンテナを固縛している状態を示す側面図である。
【図5】本発明に係るコンテナ固縛金具のコンテナの係合孔への締着操作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図3は、本発明に係るコンテナ固縛金具を用いて積み上げたコンテナの状態を示す側面図である。
【0019】
本発明に係るコンテナ固縛金具は、図3に示すように、コンテナの船舶輸送において、輸送船の甲板101上に多数のコンテナ102を多段に積み重ねたときに、下側のコンテナ102と上側のコンテナ102との間に配置され、これら上下コンテナ102,102間を固縛するために使用される金具であり、ツイストロックと称されるものである。
【0020】
図1中の(a)は、本発明に係るコンテナ固縛金具の構成を示す側面図である。
【0021】
このコンテナ固縛金具は、図1の(a)に示すように、筐体部1と、この筐体部1により回転可能に支持された軸部2とを備えて構成されている。軸部2は、中央部分を筐体部1によって回転可能に支持され、上端側及び下端側を筐体部1の上下に突出させている。軸部2は、下端側が下側コンテナ上面の係合孔に締着される下側締着部3となされ、上端側が上側コンテナ下面の係合孔に締着される上側締着部4となされている。
【0022】
図1中の(b)は、本発明に係るコンテナ固縛金具の構成を示す平面図である。
【0023】
下側締着部3及び上側締着部4は、図1中の(b)に示すように、先端側が扁平に広がった形状を有しており、断面形状が略長円形となっている。また、下側締着部3及び上側締着部4の先端側は、略長円形の断面が軸方向について回転してゆく螺旋形状となっている。
【0024】
図2は、本発明に係るコンテナ固縛金具の構成を示す断面図である。
【0025】
このコンテナ固縛金具の軸部2は、図2に示すように、筐体部1内に内蔵された屈曲したリセットピン6によって、初期位置に位置決めされている。リセットピン6は、筐体部1内に内蔵された圧縮コイルバネ5により、図2中矢印Aで示すように、屈曲部によって軸部2を引っぱる方向に付勢されている。リセットピン6は、軸部2を引っぱることによって、この軸部2を初期位置に位置決めしている。リセットピン6は、筐体部1から側方に突設されたセットボタン7が、図2中矢印Bで示すように、圧縮コイルバネ5の付勢力に抗して押し込まれることによって、軸部2から離間し、軸部2の回転を可能とする。
【0026】
図4は、本発明に係るコンテナ固縛金具がコンテナを固縛している状態を示す側面図である。
【0027】
このコンテナ固縛金具は、図3に示すように、輸送船の甲板101上に多段に積み重ねられた多数のコンテナ102において、下側のコンテナ102と上側のコンテナ102との間に配置されたときには、図4に示すように、下側コンテナ102の上面の係合孔103に下側締着部3を締着させ、上側コンテナ102の下面の係合孔103に上側締着部4を締着させることにより、これら上下コンテナ102,102間を固縛する。
【0028】
図5は、本発明に係るコンテナ固縛金具のコンテナの係合孔への締着操作を示す斜視図である。
【0029】
下側締着部3を下側コンテナ102の上面の係合孔103に締着させるには、図5に示すように、筐体部1を回転しない状態に保持して、図5中矢印Cで示すように、下側締着部3を係合孔103に押し込む。係合孔103は、開口部が、下側締着部3の断面形状に対応した長円形となっており、内方側においては長円の短径方向に拡がっている。この係合孔103に下側締着部3を押し込むと、下側締着部3の先端側が螺旋形状となっているため、下側締着部3は、係合孔103に倣って、圧縮コイルバネ5の付勢力に抗して回転される。そして、下側締着部3の先端側が係合孔103の内方側に至ると、下側締着部3は、圧縮コイルバネ5の付勢力により初期位置に復帰する。このとき、下側締着部3の断面形状の長径方向が、係合孔103の開口部の長径方向と交差する状態となり、下側締着部3は、係合孔103に締着される。
【0030】
コンテナ102の下面の係合孔103は、上面の係合孔103と同様の形状に形成されており、上側締着部4を上側コンテナ102の下面の係合孔103に締着させる場合も、同様に、上側締着部4を係合孔103に押し込む。
【0031】
そして、下側締着部3及び上側締着部4を係合孔103から抜くには、セットボタン7を押圧して軸部2の回転を可能として、下側締着部3及び上側締着部4の断面形状の長径方向を、係合孔103の開口部の長径方向に一致させる。
【0032】
このコンテナ固縛金具は、少なくとも筐体部1及び軸部2が、非着火性の材料により形成されている。非着火性の材料とは、C(炭素)及びFe(鉄)のような、接触した際に着火して火花を発する物質を含有せず、かつ、熱伝導性が良い材料であり、例えば、ベリリウム銅合金、または、ニッケルベリリウム系合金などを用いることができる。また、接触部のみに前記材料をコーティングしてもよい。
【0033】
このコンテナ固縛金具は、筐体部1及び軸部2が、ベリリウム銅合金、または、ニッケルベリリウム系合金のような、非着火性の材料により形成されているので、コンテナ102に擦過しても、火花が発生することがない。したがって、このコンテナ固縛金具は、甲板101上の可燃性のガスが発生しているような区画においても、コンテナ102を搭載することを可能とする。
【0034】
そして、このコンテナ固縛金具においては、図1及び図2に示すように、筐体部1の外側部には、フランジ部8が設けられている。
【0035】
このフランジ部8の外延は、図4に示すように、軸部2の中心からの距離dが、コンテナ102の係合孔103の中心から係合孔103にコンテナ102の直近の側面部までの距離eよりも長くなっている。したがって、フランジ部8は、軸部2がコンテナ102の係合孔103に締着されたときに、コンテナ102の直近の側面部よりも側方に突出する。
【0036】
このコンテナ固縛金具は、軸部2がコンテナ102の係合孔103に締着されたときに、フランジ部8の外延がコンテナ102の直近の側面部よりも側方に突出するので、図3に示すように、隣接するコンテナ102同士を接近させて積み重ねた場合に、コンテナ102が傾いても、隣接するコンテナ102に締着されたコンテナ固縛金具のフランジ部8同士が接触し、コンテナ102同士が接触することがなく、火花が発生することがない。
【0037】
したがって、このコンテナ固縛金具は、甲板上の可燃性のガスが発生しているような区画においても、隣接するコンテナ102同士を接近させて積み重ねることを可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、コンテナ船において多数のコンテナを多段に積み重ねて輸送するにあたって、多段積みされた多数のコンテナを固縛するためのコンテナ固縛金具に適用される。
【符号の説明】
【0039】
1 筐体部
2 軸部
3 下側締着部
4 上側締着部
8 フランジ部
101 甲板
102 コンテナ
103 係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体部と、
前記筐体部により回転可能に支持され、下端側が下側コンテナ上面の係合孔に締着される下側締着部となされ、上端側が上側コンテナ下面の係合孔に締着される上側締着部となされた軸部と
を備え、
前記筐体部及び前記軸部は、非着火性の材料により形成されている
ことを特徴とするコンテナ固縛金具。
【請求項2】
前記筐体部の外側部には、フランジ部が設けられており、
前記フランジ部の外延は、前記軸部の中心からの距離が、前記コンテナの係合孔の中心から該係合孔にコンテナの直近の側面部までの距離よりも長く、前記軸部が前記コンテナの係合孔に締着されたときに、コンテナの直近の側面部よりも側方に突出する
ことを特徴とする請求項1記載のコンテナ固縛金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91371(P2013−91371A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233638(P2011−233638)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)