説明

コンテナ昇降装置

【課題】 互いに積み重ねられた複数のコンテナのうち、任意のコンテナをその下方のコンテナに対して簡単に持ち上げることができ、しかも、持ち上げたコンテナを再び下方のコンテナ上に簡単に積み重ねることのできるコンテナ昇降装置を提供すること。
【解決手段】 下部に車輪を備えた基体1と、基体1に上下動自在に設けられ、一対の支持アーム21を備えた支持部2と、支持部2の上方に設けられ、一対の昇降アーム31を備えた昇降部3と、昇降部3を支持部2に対して昇降させる昇降手段4と、から構成されており、支持アーム21を昇降対象のコンテナの下方に位置するコンテナのフランジ上面に係合させるとともに、昇降アーム31を昇降対象のコンテナのフランジ下面に係合させ、昇降手段4を作動させて昇降アーム31を支持アーム21に対し昇降させることによって昇降対象のコンテナを昇降させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに縦に積み重ねられた複数のコンテナのうち、任意のコンテナを適宜に昇降させるコンテナ昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば遺跡発掘現場において採集したサンプルを一時的に保管する場合、互いに嵌合させて積み重ねることのできる合成樹脂製のコンテナを使用することが多い。図9に示すように、サンプルを収容した複数のコンテナC1〜C6を縦に積み重ねることによって、保管スペースを節約しながら多量のサンプルを保管し得るからである。同図に示すように、複数のコンテナを台車W上に積み重ねたり、直接、床積みしたりする。
【0003】
ところが、例えばサンプル整理の段階において、積み重ねた複数のコンテナから中間のコンテナを取り出す必要が生じた場合、従来では、取出対象のコンテナの上方に積まれたコンテナを全て、手作業で傍らに移動させなければならず、手間がかかる難点があった。そして、目的のコンテナを取り出した後、傍らに移動させておいたコンテナを再び積み戻す作業も専ら手作業で行うより仕方がなかった。
【0004】
また、サンプルが収容された個々のコンテナは相当の重さがあることから、上方のコンテナをまとめて移動させる場合は勿論、コンテナを一つずつ移動させる場合であっても、人手によるコンテナ移動作業は、重労働とならざるを得なかった。積み重ねられた複数のコンテナのうち、中間のコンテナ内からサンプルだけを取り出す場合も事情は同じであった。
【0005】
下記の特許文献1には、積み重ねられた複数のトレイのうち、最上段のトレイを持ち上げてその下方のトレイと分離する装置が記載されている。しかしながら、この装置はあくまでも持ち上げたトレイを他の場所へ搬送する搬送装置に関するものであり、また、その構成が大掛かりになる難点がある。
【特許文献1】特開平9−86666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、互いに積み重ねられた複数のコンテナのうち、任意のコンテナをその下方のコンテナに対し簡単に持ち上げることができ、しかも、持ち上げたコンテナを再び下方のコンテナ上に簡単に積み重ねることのできるコンテナ昇降装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、互いに積み重ねられた複数のコンテナのうち、任意のコンテナをその下方のコンテナに対し昇降させるコンテナ昇降装置であって、
下部に車輪を備えた基体と、前記基体に上下動可能に設けられ、一対の支持アームを備え、該支持アーム間に前記コンテナを受け入れ可能な受入空間を有する支持部と、前記支持部の上方に設けられ、一対の昇降アームを備え、該昇降アーム間に前記コンテナを受け入れ可能な受入空間を有する昇降部と、前記支持部に設けられ、前記昇降部を該支持部に対し昇降させる昇降手段と、を備え、
互いに積み重ねられた複数のコンテナを前記受入空間内に相対的に進入させ、前記支持部の支持アームを任意の昇降対象のコンテナの下方に位置するいずれかのコンテナのフランジの上面に係合させるとともに、前記昇降部の昇降アームを昇降対象のコンテナのフランジの下面に係合させ、前記昇降手段を作動させて前記昇降アームを前記支持アームに対して昇降させることによって昇降対象のコンテナを昇降させることを特徴とする。
【0008】
なお、ここで、コンテナとは、上方に開口部を有し、外壁に少なくとも一つのフランジを備えた容器を意味するものであり、例えば、トレー、ケース、ばんじゅう、バット、かごその他の容器をも含む。
【0009】
また、本発明は、前記基体の上部に設けられた滑車と、前記滑車に掛けられ、一方の端部が前記支持部に接続されたワイヤと、前記ワイヤの他方の端部に接続されたバランスウェイトと、を備えており、前記バランスウェイトと釣り合わせた状態で、前記支持部を前記昇降部及び前記昇降手段と共に前記基体に対し上下動させ得ることを特徴とする。
【0010】
更にまた、本発明は、前記支持アーム及び前記昇降アームにそれぞれ、前記各受入空間へ突出する係合爪が設けられており、該係合爪を前記コンテナのフランジに係合させ得ることを特徴とする。
【0011】
更にまた、本発明は、前記係合爪が、前記受入空間へ突出した前進位置と該受入空間から退避した後退位置との間で進退可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンテナ昇降装置によれば、支持部を基体に対し適宜に上下動させ、支持アームを昇降対象のコンテナの下方に位置するいずれかのコンテナのフランジ上面に係合させるとともに、昇降アームを昇降対象のコンテナのフランジ下面に係合させ、そして、昇降手段を作動させて昇降アームを支持アームに対し上昇させるだけで、簡単に昇降対象のコンテナをその下方のコンテナに対して持ち上げることができる。したがって、積み重ねた複数のコンテナから中間のコンテナを取り出す場合に、従来のように、取出対象のコンテナの上方に積まれたコンテナを全て、手作業で移動させなければならない面倒な作業を行う必要もなく、重労働を強いられることもない。
【0013】
しかも、上下移動自在な支持アームを下方のコンテナのフランジ上面に載置するように係合させ、この載置状態の支持アームを支点として昇降アームを上昇させることによって、上方のコンテナを持ち上げているので、持ち上げられたコンテナ及びそのコンテナ内の物品の総荷重は、昇降部、昇降手段、及び支持部を通じて、下方のコンテナに加わることになる。このことで、下方のコンテナを安定に保持することができる。したがって、例えば、積み重ねた複数のコンテナから中間のコンテナを取り出す際、或いは中間のコンテナ内から物品だけを取り出す際、或いは、別のコンテナを挿入する際に、下方のコンテナがつられて移動してしまうこともなく、これら取り出し作業等を容易に行うことができる。複数のコンテナを台車上に積み重ねた場合に特に効果的である。
【0014】
また、このように持ち上げた上方のコンテナの荷重を利用して下方のコンテナを安定保持することができるので、取り出し作業後に、昇降手段により昇降アームを下降させるだけで、そのまま下方のコンテナ上に積み重ねることができる。持ち上げたコンテナの下方コンテナに対する水平方向の位置調節を行う必要もなく、積み戻し作業を容易に行うことができる。
【0015】
更にまた、バランスウェイトを設けたコンテナ昇降装置によれば、バランスウェイトと釣り合わせた状態で、支持部を昇降部及び昇降手段と共に基体に対して適宜に上下移動させることができので、手動で支持部を簡単に上下動させることができ、しかも、移動後の支持部をその高さ位置で維持することができる。したがって、互いに積み重ねられた複数のコンテナに対する支持部の上下方向の位置合わせ作業を容易に行うことができる。
【0016】
更にまた、係合爪を設けたコンテナ昇降装置によれば、外壁面に縦方向の補強リブを備えたコンテナに対しても、これら係合爪を介して支持アーム及び昇降アームを確実にコンテナのフランジに係合させることができる。また、これら係合爪を、受入空間へ突出した前進位置と受入空間から退避した後退位置との間で進退可能に設ければ、これら係合爪を受入空間から退避させることによって、積み重ねた複数のコンテナを受入空間内に相対進入させる作業も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施形態のコンテナ昇降装置10は、図1〜図3に示すように、主として、下部に車輪12、13を備えた基体1と、この基体1に上下動自在に設けられ、一対の支持アーム21を備えた支持部2と、この支持部2の上方に設けられ、一対の昇降アーム31を備えた昇降部3と、この昇降部3を支持部2に対し昇降させる昇降手段4と、から構成されている。
【0018】
基体1は、ステンレス製角材を組み立てて縦長の直方体形状に構成されている。図2に示すように、基体1の前部には、開口部11が形成されており、互いに積み重ねられた複数のコンテナを、開口部11を通して基体1の内側へ受け入れることができる。また、図1に示すように、基体1の下部には、その前部の左右両側に車輪12が配設されており、後部の左右両側にはキャスタ13が配設されている。このことで、基体1を適宜に移動させることができる。また、基体1の左右両側の側部にはそれぞれ、前後二本のガイドレール14が縦方向に配設されている。
【0019】
支持部2は、図4に示すように、一定間隔をあけて平行に並んだ水平な一対の支持アーム21と、これら支持アーム21の後端同士を連結する連結部材22とから構成され、平面視コ字形状を成している。これら一対の支持アーム21の間には、その前方からコンテナを受け入れ可能な受入空間23が形成されている。また、本実施形態の支持アーム21は角形管状に形成されている。
【0020】
各支持アーム21の外側面には、上記ガイドレール14に沿って移動するスライダ24が、ブラケット25を介して配設されている。このことで、支持部2全体がガイドレール14に案内されて上記基体1に対して上下移動する。
【0021】
図1〜図3に示すように、基体1の上部には、その左右両側にそれぞれ、前後一対の滑車51が配設され、滑車51にはワイヤ52が掛けられている。この滑車51から下方へ至るワイヤ52の一方の端部は、支持部2の支持アーム21に固定されたピン53に接続されており、ワイヤ52の他方の端部にはバランスウェイト54が接続されている。バランスウェイト54は、支持部2、昇降部3、及び昇降手段4の総重量とほぼ釣り合う重量を有している。このことで、支持部2を、昇降部3及び昇降手段4と共に、手動で簡単に上下動させることができ、移動後の支持部2をその高さ位置で維持することができる。なお、基体1の側部には、バランスウェイト54の移動経路を囲むようにケース55が設けられており、バランスウェイト54とコンテナ等との接触、干渉を防いでいる。
【0022】
また、各支持アーム21の下部には、図5に示すように、係合爪27がヒンジ26を介して揺動可能に設けられている。ヒンジ26は、その回動軸261が支持アーム21の長手方向と平行に配設されている。このことで、係合爪27は、図5に示すように、受入空間23側へ突出した前進位置(二点鎖線参照)と、受入空間23から退避した後退位置(実線参照)との間で進退揺動させることができる。係合爪27は、待機時には後退位置にあり、コンテナ昇降作業時に手動で前進位置へ揺動させる。また、図8に示すように、係合爪27は、各支持アーム21の長手方向の前後二か所に配設されており、係合爪27の回動中心側の端部同士が連結部271によって連結されている。このことで、後側の係合爪27を揺動操作するだけで、同時に前側の係合爪27を揺動させることができる。
【0023】
昇降部3は、図1及び図3に示すように、上記支持部2の上方に、昇降手段4を介して設けられている。昇降部3は、図6に示すように、一定間隔をあけて平行に並んだ水平な一対の昇降アーム31と、これら昇降アーム31の後端同士を連結する連結部材32とから構成され、平面視コ字形状を成している。これら一対の昇降アーム31の間には、その前方からコンテナを受け入れ可能な受入空間33が形成されている。また、本実施形態の昇降アーム31は角形管状に形成されている。
【0024】
各昇降アーム31の外側面には、上記ガイドレール14に沿って移動するスライダ34が、ブラケット35を介して配設されている。このことで、昇降部3は、ガイドレール14に案内されて、下方の支持部2及び昇降手段4と共に基体1に対して上下移動する。
【0025】
また、各昇降アーム31の上部には、図7に示すように、係合爪37がヒンジ36を介して揺動可能に設けられている。ヒンジ36は、その回動軸361が昇降アーム31の長手方向と平行に配設されている。このことで、係合爪37は、図7に示すように、受入空間33側へ突出した前進位置(二点鎖線参照)と、受入空間33から退避した後退位置(実線参照)との間で進退揺動させることができる。係合爪37は、待機時には後退位置にあり、コンテナ昇降作業時に手動で前進位置へ揺動させる。また、図6に示すように、係合爪37は、各昇降アーム31の長手方向の前後二か所に配設されており、係合爪37の回動中心側の端部同士が連結部371によって連結されている。このことで、後側の係合爪37を揺動操作するだけで、同時に前側の係合爪37を揺動させることができる。
【0026】
昇降手段4は、図8に示すように、上記支持部2と上記昇降部3との間に配設されており、昇降部3を支持部2に対して昇降させる。本実施形態の昇降手段4は、クロスリンク機構41と、このクロスリンク機構41に連結された送りねじ機構42と、この送りねじ機構42を駆動するためのハンドル43とから構成されている。
【0027】
クロスリンク機構41は、互いにその中央部が支軸411により回動自在に連結されて交差した一対のリンク412・413から構成されている。また、送りねじ機構42は、角形管状の昇降アーム31内に設けられたねじ棒421と、このねじ棒421と螺合して昇降アーム31内を摺動移動するねじブロック422とから構成され、このねじ棒421の後端にハンドル43が取り付けられている。また、昇降アーム31の両側面には、ねじブロック422の移動経路に沿って長孔311が開設されており、支持アーム21の両側面には、角形管状の支持アーム21内を転動移動するローラ44の移動経路に沿って長孔211が開設されている。
【0028】
クロスリンク機構41の一方のリンク412は、その上端部が送りねじ機構42のねじブロック422に支軸414により軸支され、その下端部が支持アーム21の前端部に支軸415により軸支されている。また、他方のリンク413は、その上端部が昇降アーム31の前端部に支軸416により軸支され、その下端部がローラ44に支軸417により軸支されている。このことで、上記ハンドル43を回転操作して、送りねじ機構42のねじブロック422を摺動移動させれば、リンク412の上端部をリンク413の上端部に対して接近、離隔動作させることができ、昇降アーム31を支持アーム21に対し適宜に昇降させることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、図3に示すように、支持部2の一対の支持アームと昇降部3の一対の昇降アームとの間に、一対のクロスリンク機構41を設け、これらクロスリンク機構41を同期的に動作させるように構成している。つまり、一対の昇降アーム内にはそれぞれ、送りねじ機構が設けられており、これら送りねじ機構のねじ棒の後端にそれぞれ、プーリ431が設けられている。そして、これらプーリ431の間にタイミングベルト432が掛け渡されている。このことで、ハンドル43を回転操作すれば、左右両側のプーリ431を同時に回転させることができ、一対のクロスリンク機構41を同期させて昇降動作させることができるのである。
【0030】
以下、図9〜図14を参照しながら、本実施形態のコンテナ昇降装置10によるコンテナ昇降作業について説明する。
【0031】
ここでは、図9に示すように、互いに嵌合させて積み重ねられたコンテナC1〜C6のうち、下から3番目のコンテナC3のみを取り出す場合について説明する。これらコンテナC1〜C6は公知の合成樹脂製コンテナであり、各コンテナはその外壁面の上部、中程部、及び下部にそれぞれ、フランジFが設けられ、更にこれらフランジFと交差して縦方向に複数の補強リブRが設けられている。これらコンテナC1〜C6は、下部に車輪を備えて移動可能な公知の台車Wの上に積み重ねられており、図10に示すように、コンテナC1〜C6内にはそれぞれ、物品Sが収容されている。
【0032】
まず、図10に示すように、コンテナ昇降装置10を、互いに積み重ねられたコンテナC1〜C6へ向けて前進移動させることによって、これらコンテナC1〜C6を基体1の開口部11を通して基体1の内側に受け入れ、支持部2の支持アーム21間、及び昇降部3の昇降アーム31間の受入空間内に相対的に進入させる。コンテナC1〜C6は台車W上に積み重ねられているので、コンテナC1〜C6を移動させて支持アーム21及び昇降アーム31の受入空間内に進入させても良い。
【0033】
コンテナC1〜C6を支持アーム21及び昇降アーム31の受入空間に進入させた後、図11に示すように、手動にて支持部2を適宜に上下移動させることにより、支持部2の高さを、取出対象であるコンテナC3の下方に位置するコンテナC2の位置に合わせる。このとき、支持部2と共に昇降部3及び昇降手段4も同時に上下移動する。なお、コンテナC1〜C6を受入空間内に相対進入させる前に、予め支持部2の高さをコンテナC2の位置に大まかに合わせておいても良い。
【0034】
次いで、図11に示すように、支持アーム21の各係合爪27を手動にて後退位置から前進位置へ揺動させ、各係合爪27を受入空間側へ突出させる。そして、図12に示すように、手動にて支持部2を下降させ、各係合爪27をコンテナC2の下部のフランジFの上面に載せるように係合させる。なお、各係合爪27をコンテナC2の中程部のフランジの上面に位置合わせして係合させても良い。
【0035】
次いで、図12に示すように、昇降手段4のハンドル43を手動で回転操作して、支持部2に対し昇降部3を適宜に昇降させることにより、昇降部3の高さを取出対象のコンテナC3の直上のコンテナC4の位置に合わせる。そして、手動にて昇降アーム31の各係合爪37を後退位置から前進位置へ揺動させ、各係合爪37を受入空間側へ突出させる。なお、コンテナC1〜C6を受入空間に相対進入させる前に、予め昇降部3の高さをコンテナC4の位置に大まかに合わせておいても良い。
【0036】
次いで、昇降手段4のハンドル43を手動で回転操作して、支持部2に対し昇降部3を上昇させることにより、昇降アーム31の各係合爪37をコンテナC4の中程部のフランジFの下面に係合させる。なお、各係合爪37をコンテナC4の上部のフランジの下面に位置合わせして係合させても良い。
【0037】
そして、さらに昇降アーム31を支持アーム21に対し上昇させれば、図13に示すように、コンテナC4を下方のコンテナC3に対し持ち上げることができる。この状態で、コンテナC3だけを簡単に取り出すことができるのである。
【0038】
そして、図14に示すように、コンテナC3を取り出した後、昇降手段4のハンドル43を逆に回転操作して昇降部3を下降させれば、そのまま、コンテナC4を下方のコンテナC2上に積み重ねることができる。
【0039】
その後、コンテナ昇降装置10を、積み重ねられたコンテナから取り外す場合は、上述した作業と逆の作業を行えば良い。つまり、昇降手段4のハンドル43を手動で回転操作して昇降部3を更に下降させ、各係合爪37をコンテナC4のフランジFから外した後、各係合爪37を前進位置から後退位置へ揺動させ、そして、支持部2を手動で上昇させて支持部2の各係合爪27をコンテナC2のフランジFから外した後、各係合爪27を前進位置から後退位置へ揺動させれば、コンテナ昇降装置10を複数のコンテナから取り外すことができる。
【0040】
なお、互いに積み重ねられたコンテナC1〜C6のうち、最下方のコンテナC1を取り出す場合は、図15に示すように、支持部2を最下降位置まで下降させておき、支持アーム21の各係合爪27をいずれのコンテナにも係合させないようにすれば良い。この状態で、昇降アーム31の各係合爪37を、下から二番目のコンテナC2のフランジFの下面に係合させた後、昇降手段4を操作して昇降部3を支持部2に対し上昇させれば、昇降アーム31でコンテナC2を持ち上げることができ、コンテナC1だけを簡単に取り出すことができる。なお、本実施形態では、図15に示すように、各ガイドレール14の下部にストッパ141を設け、このストッパ141で支持部2の下降移動を制限しているが、支持部2の下降移動を制限するためのストッパを基体1の下部に設けても勿論良い。
【0041】
また、互いに積み重ねられたコンテナC1〜C6のうち、コンテナC3から物品だけを取り出す場合は、コンテナC3それ自体を取り出す必要はないので、支持アーム21の各係合爪27をコンテナC3のフランジの上面に係合させ、昇降アーム31の各係合爪37をその上方のコンテナC4のフランジの下面に係合させれば良い。この状態で昇降手段4を操作して昇降部3を支持部2に対し上昇させれば、コンテナC4をコンテナC3に対して持ち上げることができ、コンテナC4とコンテナC3との間の隙間を通してコンテナC3内の物品を取り出すことができる。更にまた、この隙間を利用して、コンテナC4とコンテナC3との間に別の新たなコンテナを挿入することもできる。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態のコンテナ昇降装置10によれば、支持部2を基体1に対し適宜に上下動させ、支持アーム21を任意の昇降対象のコンテナの下方に位置するいずれかのコンテナのフランジ上面に係合させるとともに、昇降アーム31を昇降対象のコンテナのフランジ下面に係合させ、そして、昇降手段4を操作して昇降アーム31を支持アーム21に対し上昇させるだけで、簡単に昇降対象のコンテナをその下方のコンテナに対して持ち上げることができる。したがって、積み重ねた複数のコンテナから中間のコンテナを取り出す場合に、従来のように、取出対象のコンテナの上方に積まれたコンテナを全て、手作業で移動させなければならない面倒な作業を行う必要もなく、重労働を強いられることもない。
【0043】
しかも、本実施形態のコンテナ昇降装置10によれば、上下移動自在な支持アーム21を下方のコンテナのフランジ上面に載置するように係合させ、この載置状態の支持アーム21を支点として昇降アーム31を上昇させることによって、上方のコンテナを持ち上げているので、持ち上げられたコンテナ及びそのコンテナ内の物品の総荷重は、昇降部3、昇降手段4、及び支持部2を通じて、下方のコンテナに加わることになる。このことで、下方のコンテナを安定に保持することができる。したがって、例えば、積み重ねた複数のコンテナから中間のコンテナを取り出す際、或いは中間のコンテナ内から物品だけを取り出す際、或いは、持ち上げた隙間に別のコンテナを挿入する際に、下方のコンテナがつられて移動してしまうこともなく、これら取り出し作業等を容易に行うことができる。本実施例のように、複数のコンテナを台車上に積み重ねた場合に特に効果的である。
【0044】
また、このように持ち上げた上方のコンテナの荷重を利用して下方のコンテナを安定保持することができるので、取り出し作業後に、昇降手段4を操作して昇降アーム31を下降させるだけで、そのまま下方のコンテナ上に積み重ねることができる。持ち上げたコンテナの下方コンテナに対する水平方向の位置調節を行う必要もなく、積み戻し作業を容易に行うことができる。
【0045】
更にまた、このように持ち上げた上方コンテナの荷重が下方のコンテナに加わるので、持ち上げた上方コンテナ等の総荷重を直接、基体1で支える必要がない。したがって、基体1の構成の簡素化、軽量化を図ることができ、移動させ易く取り扱いの容易なコンテナ昇降装置を提供することができる。
【0046】
更にまた、本実施形態のコンテナ昇降装置10によれば、バランスウェイト54と釣り合わせた状態で、支持部2を昇降部3及び昇降手段4と共に基体1に対し適宜に上下移動させることができので、手動で支持部2を簡単に上下動させることができ、しかも、移動後の支持部2をその高さ位置で維持することができる。したがって、互いに積み重ねられた複数のコンテナに対する、支持部2の上下方向の位置合わせ作業を容易に行うことができる。
【0047】
更にまた、本実施形態のコンテナ昇降装置10にあっては、支持アーム21及び昇降アーム31にそれぞれ、受入空間側へ突出する係合爪27、37を設けているので、外壁面に縦方向の補強リブを備えたコンテナに対しても、これら係合爪27、37を介して支持アーム21及び昇降アーム31を確実にコンテナのフランジに係合させることができる。しかも、これら係合爪27、37を、受入空間へ突出した前進位置と受入空間から退避した後退位置との間で進退揺動させることができるので、これら係合爪27、37を受入空間から退避させておけば、積み重ねた複数のコンテナを受入空間内に相対進入させる作業も容易に行うことができる。
【0048】
以上、本実施形態のコンテナ昇降装置10について説明したが、本発明に係るコンテナ昇降装置は、その他の形態でも実施することができる。
【0049】
例えば、上記実施形態では、支持アーム21及び昇降アーム31にそれぞれ、係合爪27、37を、水平な回動軸を有するヒンジ26、36を介して揺動可能に設けているが、本発明は決してこれに限定されるものではなく、例えば、図16に示すように、昇降アーム31に、垂直方向の支軸39を介して係合爪38を揺動可能に設けても良い。このことで、各係合爪38を、受入空間33側へ突出した前進位置と、受入空間33から退避した後退位置との間で水平方向に進退揺動させることができ、そして、突出させた係合爪38でコンテナのフランジを支えることができる。各昇降アーム31の前後に設けた二つの係合爪38を同時操作するために、これら係合爪38同士を連結片によって揺動可能に連結しても良い。支持アーム21に設けるべき係合爪についても同様である。更にまた、各係合爪を支持アーム21及び昇降アーム31に直線移動可能に設けても良い。
【0050】
また、昇降対象のコンテナの種類によっては、必ずしも支持アーム21及び昇降アーム31に係合爪を設ける必要はない。例えば、外壁面にフランジのみを備え、縦方向の補強リブを備えていないコンテナ(トレー、ばんじゅう等)を昇降対象とする場合、一対の支持アーム21及び昇降アーム31を直接、コンテナのフランジに係合させることができるので、この場合、受入空間側へ突出する係合爪は設ける必要はない。
【0051】
また、上記実施形態では、昇降手段4としてクロスリンク機構42を採用しているが、本発明は決してこれに限定されるものではなく、例えば、昇降部3を支持部2に対して直接、送りねじ機構で昇降させても良く、また、例えばピニオンラック機構等の他の移動機構を採用しても良い。また、上記実施形態では、昇降手段4を人力で駆動しているが、勿論これに限定されるものではなく、駆動源として、例えば電動モータ、流体圧シリンダを採用しても良い。また、支持部2を、電動モータ、流体圧シリンダ等を駆動源として基体1に対して上下移動させても良い。
【0052】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良く、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る実施形態のコンテナ昇降装置の全体側面図である。
【図2】同装置の全体平面図である。
【図3】同装置の全体背面図である。
【図4】同装置の支持部を説明する要部平面図である。
【図5】同装置の支持部の係合爪の概略動作説明図である。
【図6】同装置の昇降部を説明する要部平面図である。
【図7】同装置の昇降部の係合爪の概略動作説明図である。
【図8】同装置の昇降手段を説明する要部側面図である。
【図9】昇降対象である互いに積み重ねられた複数のコンテナの背面図である。
【図10】本実施形態のコンテナ昇降装置によるコンテナ昇降作業の手順を説明する概略平面図である。
【図11】同装置によるコンテナ昇降作業を説明する概略背面図である。
【図12】同装置によるコンテナ昇降作業を説明する概略背面図である。
【図13】同装置によるコンテナ昇降作業を説明する概略背面図である。
【図14】同装置によるコンテナ昇降作業を説明する概略背面図である。
【図15】同装置による他のコンテナ昇降作業を説明する概略背面図である。
【図16】本発明に係る他のコンテナ昇降装置の昇降部の係合爪を説明する要部平面図である。
【符号の説明】
【0054】
C1〜C6 コンテナ
F (コンテナの)フランジ
R (コンテナの)補強リブ
10 コンテナ昇降装置
1 基体
2 支持部
21 支持アーム
23 受入空間
27 係合爪
3 昇降部
31 昇降アーム
33 受入空間
37 係合爪
4 昇降手段
51 滑車
52 ワイヤ
54 バランスウェイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積み重ねられた複数のコンテナのうち、任意のコンテナをその下方のコンテナに対し昇降させるコンテナ昇降装置であって、
下部に車輪を備えた基体と、
前記基体に上下動可能に設けられ、一対の支持アームを備え、該支持アーム間に前記コンテナを受け入れ可能な受入空間を有する支持部と、
前記支持部の上方に設けられ、一対の昇降アームを備え、該昇降アーム間に前記コンテナを受け入れ可能な受入空間を有する昇降部と、
前記支持部に設けられ、前記昇降部を該支持部に対し昇降させる昇降手段と、
を備え、
互いに積み重ねられた複数のコンテナを前記受入空間内に相対的に進入させ、前記支持部の支持アームを任意の昇降対象のコンテナの下方に位置するいずれかのコンテナのフランジの上面に係合させるとともに、前記昇降部の昇降アームを昇降対象のコンテナのフランジの下面に係合させ、前記昇降手段を作動させて前記昇降アームを前記支持アームに対して昇降させることによって昇降対象のコンテナを昇降させることを特徴としたコンテナ昇降装置。
【請求項2】
前記基体の上部に設けられた滑車と、
前記滑車に掛けられ、一方の端部が前記支持部に接続されたワイヤと、
前記ワイヤの他方の端部に接続されたバランスウェイトと、
を備えており、
前記バランスウェイトと釣り合わせた状態で、前記支持部を前記昇降部及び前記昇降手段と共に前記基体に対し上下動させ得る請求項1記載のコンテナ昇降装置。
【請求項3】
前記支持アーム及び前記昇降アームにそれぞれ、前記各受入空間へ突出する係合爪が設けられており、該係合爪を前記コンテナのフランジに係合させ得る請求項1または請求項2記載のコンテナ昇降装置。
【請求項4】
前記係合爪が、前記受入空間へ突出した前進位置と該受入空間から退避した後退位置との間で進退可能に設けられている請求項3記載のコンテナ昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−298609(P2006−298609A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125055(P2005−125055)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(391058336)第一合成株式会社 (3)