説明

コントラスト検出による自動焦点合せ方法

【目的】 映像信号から求められるコントラスト値にノイズ成分があっても、このノイズ成分の影響を少なく抑え得る、また、その焦点合せの再現性も向上できて誤差の少ない自動焦点合せを行う。
【構成】 テレビカメラにて撮影した被撮像物の画像から数ライン分のテレビ走査線上の映像信号を得、その各映像信号を重ね合せて平均化させた最大のコントラスト値を合焦位置の割出しデータとして求め、また、対物レンズを被撮影物から離間するZ軸方向に原点より所定量づつステップ移動させ、その各ステップにおけるテレビカメラにて撮影した被撮像物の画像からテレビ走査線上の映像信号を得て各コントラスト値を求め、これらコントラスト値のピーク値近傍前後に位置するコントラスト値を重心演算し、その演算値から対物レンズの焦点を合焦位置に自動設定するコントラスト値のピーク値並びに当該ピーク値に応じた位置を割り出す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば薄膜ヘッドのスロートハイト研削加工工程において、画像計測によるスロートハイト寸法測定や自動アライメント等を行うのに必要な対物レンズの合焦位置を自動設定するのに適用されるコントラスト検出による自動焦点合せ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、上述した画像計測によるスロートハイト寸法の測定等を行うのにあたっては、顕微鏡の対物レンズによる人為的な焦点合せにより被撮影物の映像を捉え、この映像に基づいた各種の検索処理で研削加工条件を割り出すことが行なわれている。然し、この人為的な焦点合せでは数μm単位まで正確に合焦位置を求めるのは困難であり、スロートハイト寸法測定等に大きな誤差が生ずることを免れ得ない。
【0003】その焦点合せには、レーザ光のスポットビームによるフォーカシングや光路差分離によるフォーカシング等の自動焦点合せ方法を適用することが考えられる。然し、前者にあってはスポットビームの照射位置により目標とする位置にフォーカスすることが難しく、また、後者にあっては被撮影物が反射率の低いガラス膜表面等であると適用できないことにより被撮影物に制約があるところから好ましくない。これらに比べ、被撮影物の画像処理による映像信号からコントラストのピーク値並びに当該ピーク値に応じた位置を求め、そのピーク値並びに当該ピーク値に応じた位置に基づいて顕微鏡の対物レンズを自動設定するコントラスト検出による自動焦点合せ方法を採用するとよい。
【0004】このコントラスト検出による自動焦点合せ方法を適用する場合、対物レンズを有する顕微鏡に連結装備されたテレビカメラ等の撮像機を用い、その対物レンズを被撮影物から離間するZ軸方向に原点よりステップ移動させて各ステップ毎の被撮影物の画像を撮像機で捉えると共に、各ステップ毎の被撮影物の画像による映像信号から各コントラスト値を求め、これらコントラスト値からピーク値並びに当該ピーク値に応じた位置を割り出すことにより、それを合焦位置として対物レンズを自動的に移動制御すればよい。
【0005】然し、このコントラスト検出による自動焦点合せ方法ではテレビカメラ等にて撮影している被撮影物の表面にゴミや傷等がある場合、任意のテレビ走査線の1ラインについて当該映像信号からコントラストを求めると、実際に焦点合せしたい画像のコントラストよりもゴミや傷等がある映像信号上のコントラストがノイズ成分で強いことがあるから、各ステップ毎にコントラスト値を得るのにあたって被撮影物独自のコントラスト値乃至はピーク値を正確に求められない事態が生ずる。
【0006】また、上述したように各ステップで得られるコントラストのプロフィールからコントラストのピーク値並びに当該ピーク値に応じた位置を求めることができるが、それをそのまま合焦位置として焦点合せすると、フォーカスの再現性に劣るところから誤差範囲を数μm乃至は1μm程度の微少な範囲内に維持することが難しい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、各ステップ毎のコントラスト値,延いては当該被撮影物の画像からノイズ成分の影響の少ないコントラストのピーク値を求めて誤差の少ない焦点合せを行え、また、その再現性を良好に保てるよう改良したコントラスト検出による自動焦点合せ方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係るコントラスト検出による自動焦点合せ方法においては、テレビカメラにて撮影した被撮像物の画像から数ライン分のテレビ走査線上の映像信号を得、その各映像信号を重ね合せて平均化させた最大のコントラスト値を合焦位置の割出しデータとして求めるようにされている。同請求項2に係るコントラスト検出による自動焦点合せ方法においては、対物レンズを被撮影物から離間するZ軸方向に原点より所定量づつステップ移動させ、その各ステップにおけるテレビカメラにて撮影した被撮像物の画像からテレビ走査線上の映像信号を得て各コントラスト値を求め、これらコントラスト値のピーク値近傍前後に位置するコントラスト値を重心演算し、その演算値から対物レンズの焦点を合焦位置に自動設定するコントラスト値のピーク値並びに当該ピーク値に応じた位置を割り出すようにされている。その過程中でも、同請求項3に係るコントラスト検出による自動焦点合せ方法においてはステップ毎の被撮影物の画像から各数ライン分のテレビ走査線上の映像信号を得、その各映像信号を重ね合せて各ステップ毎の平均化させた最大のコントラスト値を合焦位置の割出しデータとして求めるようにされている。
【0009】
【作用】本発明の請求項1に係るコントラスト検出による自動焦点合せ方法では、テレビ走査線の数ライン分の映像信号を重ね合せて平均化させた最大のコントラスト値を求めるから、1ラインのテレビ走査線上にノイズ成分があっても、このノイズ成分を他のテレビ走査線の映像信号と重ね合せることによりノイズ成分の影響を少なくでき、当該被撮影物自体よりのコントラスト値を確実に求められるようになる。
【0010】本発明の請求項2に係るコントラスト検出による自動焦点合せ方法では、各ステップから求められるコントラスト値のピーク値をそのまま合焦位置とせず、該ピーク値の近傍前後に位置するコントラスト値を重心演算することによりピーク値並びに当該ピーク値の位置を割り出すから、対物レンズを自動設定する合焦位置に正確に再現移動させることができるようになる。この方法中においても、同請求項3に係るコントラスト検出による自動焦点合せ方法では各ステップ毎のコントラスト値を求めるのにテレビ走査線の数ライン分の映像信号に基づいて求めることにより各ステップ毎のコントラスト値,延いてはコントラストのピーク値並びに当該ピーク値に応じた位置を正確に割り出すことができる。
【0011】
【実施例】以下、添付図面を参照して説明すると、図1は本発明のコントラスト検出による自動焦点合せ方法を実施する自動焦点機構を概略的に示す。図中、1は対物レンズを有する顕微鏡、2は顕微鏡1に連結装備されたテレビカメラ、3は顕微鏡1並びにテレビカメラ2を支持するブラケットフレーム、4はブラケットフレーム3をZ軸方向に移動するスクリューシャット、5はスクリューシャット4を回動する駆動モータ、6はブラケットフレーム3と接触させて顕微鏡1における対接レンズの移動位置を検出するマイクロメータ、7はテレビカメラ2と接続されたフレームメモリ、8はフレームメモリ7並びに駆動モータ5,マイクロメータ6と接続された中央演算制御装置、9はフレームメモリ7に接続されたモニタテレビ、Hは被撮影物を示す。
【0012】この自動焦点機構を用いては、顕微鏡1の対物レンズをスイッチング操作又は外部からの作動指令で原点位置にサーチ移動することにより自動焦点合せをスタートさせる。その対物レンズは駆動モータ5を正逆いずれかの所定方向に回動させてスクリューシャット4を回転すれば、顕微鏡1並びにテレビカメラ2を保持するブラケットフレーム3を被撮影物Hと近接乃至離間するZ軸方向に上下動することにより所定位置に移動させられる。
【0013】対物レンズがZ軸方向の原点位置に移動すると、テレビカメラ2にて被撮影物の画像を取込み、この画像のテレビ走査線から映像信号を得る。その映像信号を中央演算制御装置8で微分処理することにより、コントラスト値を求める。この際にはテレビ走査線の数ライン分の映像信号を得、例えば図2で示すようにテレビ走査線の5ラインL1 〜 L5 分の映像信号を微分処理し、これらのコントラスト微分値C1〜C5 を重ね合せることにより平均化させた最大のコントラスト値を求める。その結果求められる最大のコントラスト値は被撮影物の表面上にゴミや傷等があっても、これによるノイズ成分の影響を少なく抑えた適正なコントラスト値として得られる。そのコントラスト値並びに当該コントラスト値を得た原点の位置はテレビカメラ5,マイクロメータ6からフレームメモリ7に保存させる。
【0014】この原点の位置におけるコントラスト値並びに当該原点位置を保存後、次に、対物レンズを1ステップづつZ軸方向に上昇させるよう被撮像物Hから離間動することにより、上述したと同様に当該各位置における画像位置の取込みから最大の適正なコントラスト値、求めて位置データと共に合焦位置の割出しデータとしてフレームメモリ7に保存させる。そのステップ移動は0.5〜1.0μm/ステップで行うとよく、被撮影物に応じたスキャン範囲内で数ステップ実行させるようにする。
【0015】これら各ステップにおけるコントラスト値を得た後、そのコントラストプロフィールよりコントラスト値のピーク値並びに当該ピーク値に応じたステップ位置を求める。このピーク値並びにステップ位置は対物レンズの合焦位置に相当するが、それをそのまま合焦位置とせず、このピーク値の近傍前後に位置するコントラスト値の重心位置を演算することにより重心演算位置を合焦位置として割り出すようにする。即ち、図3で示すようにnステップ目のコントラスト値がピーク値であるとき、図4で示す如く当該ピーク値に応じた位置をNとし、コントラスト量VC (n)とすると、当該nステップ目の前後に位置するn−i,n+jステップ目のコントラスト量から合焦位置としての重心演算値Zfを次の数式1で割り出せば、その合焦位置の再現性をより確実に図れるようになる。
【数1】


但し、i,jはVc(n)の例えば70%ベレル程度でスライスしたときの交差位置とする。
【0016】この重心演算により割り出された合焦位置に基づいて、対物レンズを原点位置に復帰動させ後当該合焦位置にZ軸移動することにより自動焦点合せを完了することができる。
【0017】顕微鏡の理論的焦点深度εは、テレビカメラで撮像するとき、次の数式2で求められる。
【数2】


その対物レンズとしては(オリンパス社ULWD MSPLAN×50)N.A=0.55で、カメラ画素サイズ11μmを使用した場合にε=約1μmあるから、このコントラスト検出による自動焦点合せ方法を適用するときにはフォーカス精度として1μm以下を目標にできる。また、フォーカス時間はオペレータによるマニュアルフォーカス時間が約5秒程度であるから5秒以下を目標にするよう作動制御すればよい。
【0018】なお、この自動焦点合せ方法では撮像センサーとしてテレビカメラを用いることからオフセットが発生せず、また、図5で示す如き薄膜ヘッドのような一つの被撮影物を捉えてもテレビカメラをZ軸方向に移動することで、セラミックベース面,パターン面,ガラス表面に応じた夫々固有のコントラスト量を検出できるから複数のフォーカス位置を検索するのに適用することができる。
【0019】
【発明の効果】以上の如く、本発明に係るコントラスト検出による自動焦点合せ方法に依れば、映像信号から求められるコントラスト値にノイズ成分があっても、このノイズ成分の影響を少なく抑え得、また、その焦点合せの再現性も向上できて誤差の少ない自動焦点合せを行うことを可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコントラスト検出による自動焦点合せ方法を実施する自動焦点機構を示す説明図である。
【図2】本発明に係るコントラスト検出による自動焦点合せ方法において数ライン分のテレビ走行線から平均化させた最大のコントラスト値を求める過程の説明図である。
【図3】同方法において求められるZ軸方向のステップ位置とコントラスト量との関係を波形で示す説明図である。
【図4】図3の波形をコントラストのピーク値から適宜なレベルでスライスした波形を拡大させて示す説明図である。
【図5】同方法において検索可能な複数のフォーカス位置を被撮影物の各部に対応したコントラスト量の波形で示す説明図である。
【符号の説明】
1 対物レンズを有する顕微鏡
2 テレビカメラ
1〜L5 数ライン分のテレビ走査線の映像信号
C1〜C5 数ライン分からの映像信号の各コントラスト値
n ピーク値を示すステップ位置
n−i,n+j ピーク値近傍前後のステップ位置
H 被撮影物

【特許請求の範囲】
【請求項1】 対物レンズを備えるテレビカメラにて撮影した被撮影物の画像からテレビ走査線上の映像信号を得、この映像信号からコントラスト値を求めて対物レンズの焦点を合焦位置に自動設定するデータとして用いるところのコントラスト検出による自動焦点方法において、上記テレビカメラにて撮影した被撮影物の画像から数ライン分のテレビ走査線上の映像信号を得、その各映像信号を重ね合せて平均化させた最大のコントラスト値を合焦位置の割出しデータとして求めるようにしたことを特徴とするコントラスト検出による自動焦点合せ方法。
【請求項2】対物レンズを備えるテレビカメラにて撮影した被撮影物の画像からテレビ走査線上の映像信号を得、この映像信号からコントラスト値を求めて対物レンズの焦点を合焦位置に自動設定するデータとして用いるところのコントラスト検出による自動焦点方法において、上記対物レンズを被撮影物から離間するZ軸方向に原点より所定量づつステップ移動させ、その各ステップにおけるテレビカメラにて撮影した被撮影物の画像からテレビ走査線上の映像信号を得て各コントラスト値を求め、これらコントラスト値のピーク値近傍前後に位置するコントラスト値を重心演算し、その演算値から対物レンズの焦点を合焦位置に自動設定するコントラスト値のピーク値並びに当該ピーク値に応じた位置を割り出すようにしたことを特徴とするコントラスト検出による自動焦点合せ方法。
【請求項3】 上記各ステップ毎の被撮影物の画像から各数ライン分のテレビ走査線上の映像信号を得、その各映像信号を重ね合せて各ステップ毎の平均化させた最大のコントラスト値を合焦位置の割出しデータとして求めるようにしたことを特徴とする請求項2のコントラスト検出による自動焦点合せ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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