説明

コンバインの刈取部

【課題】合流部に詰まった穀稈を容易に除去することができ、メンテナンス性を向上させることが可能なコンバインの刈取部を提供する。
【解決手段】コンバイン1の刈取部4において、第一下部搬送装置111と、左側の穀稈を第一下部搬送装置111の後部に設ける合流部183まで搬送する第四下部搬送装置114と、第二下部搬送装置112と、中央左側の穀稈を第四下部搬送装置114の搬送途中部に設ける合流部181まで搬送する第三下部搬送装置113とを備え、第四下部搬送装置114は、合流部181及び合流部183に臨むように配置される離間用プーリ114dを含む複数の回転輪と、搬送チェン114aと、離間用プーリ114dの位置を、合流部181及び合流部183に近接させる作業位置、並びに合流部181及び合流部183から離間させる離間位置の間で変更することが可能な詰まり解除手段200と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取部の下部搬送装置において、穀稈の株元部が合流する部分の穀稈の詰まりを解除するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの刈取部は、刈刃によって刈り取った穀稈の株元部を下部搬送装置によって後方へ搬送し、複数条の穀稈を合流させて縦搬送装置へ引き渡すように構成されている。この合流部において穀稈が詰まった場合、詰まった穀稈を取り除くために、合流部における穀稈の搬送経路の幅を広げる詰まり解除手段に関する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のコンバインは4条刈のコンバインであり、同じく特許文献1に記載の詰まり解除手段は、可動ローラと、テンションアームと、解除レバーと、を具備するものである。
特許文献1に記載のコンバインの下部搬送装置において、穀稈を搬送するための突起付ベルトは、可動ローラを含む複数のローラに巻回される。可動ローラは、4条分の穀稈が合流する合流部に臨んで配置される。テンションアームは、刈取部本体に対して回動可能に設けられるとともに、可動ローラを回転自在に支持する。解除レバーは、テンションアームを回動操作するための操作具である。
【0004】
このようなコンバインの刈取部において、合流部に穀稈が詰まった場合、作業者は解除レバーを操作することでテンションアームを回動させ、可動ローラを合流部から離間する方向に移動させる。これによって、合流部に詰まった穀稈を除去することができる。
【0005】
しかし、さらに大型のコンバイン(例えば、7条刈、8条刈等)の刈取部においては、下部搬送装置に複数の合流部を有するものがある。例えば、7条刈のコンバインの場合、刈取部の右部において刈り取った2条分の穀稈に、同じく刈取部の右部において刈り取った1条分の穀稈を合流させる。また、刈取部の左部において刈り取った2条分の穀稈に、同じく刈取部の左部において刈り取った2条分の穀稈を合流させる。そして、刈取部の右部において合流させた3条分の穀稈と、刈取部の左部において合流させた4条分の穀稈とを合流させた後、7条分の穀稈を縦搬送装置へ引き渡す。
【0006】
このように、刈取部が下部搬送装置に複数の合流部を有する場合、各合流部に詰まり解除手段を設けると、合流部ごとに詰まり解除手段を操作する必要がある。このため、複数の合流部に同時に穀稈が詰まった場合、当該穀稈を除去するために、作業者は合流部ごとに詰まり解除手段を操作する必要があり、作業が煩雑である点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−215438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、下部搬送装置の合流部に詰まった穀稈を容易に除去することができ、メンテナンス性を向上させることが可能なコンバインの刈取部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、引起装置と掻込装置と切断装置と下部搬送装置と上部搬送装置と縦搬送装置とを備えるコンバインの刈取部において、前記下部搬送装置は中央左側の1条または2条分の穀稈を第一合流部まで搬送する中左下部搬送装置と、中央右側の1条または2条分の穀稈を第二合流部まで搬送する中右下部搬送装置と、左側の1条または2条分の穀稈と、前記第一合流部で合流させた前記中左下部搬送装置からの穀稈を第三合流部まで搬送する左下部搬送装置と、右側の1条または2条分の穀稈と、前記第二合流部で合流させた前記中右下部搬送装置からの穀稈と、前記第三合流部で合流させた左下部搬送装置からの穀稈とを前記縦搬送装置の搬送始端部まで搬送する右下部搬送装置とを備え、前記左下部搬送装置は、前記第一合流部及び第三合流部に臨むように配置される離間用回転輪を含む複数の回転輪と、前記複数の回転輪に巻き掛けられる穀稈搬送用の無端帯と、前記離間用回転輪の位置を、前記第一合流部及び前記第三合流部に近接させる作業位置と、前記第一合流部及び前記第三合流部から離間させる離間位置との間で変更することが可能な詰まり解除手段と、を備えるものである。
【0011】
請求項2においては、前記詰まり解除手段は、刈取部本体に対して回動可能に設けられて、前記離間用回転輪を回転自在に支持するブラケットと、前記ブラケットの回動位置を保持することにより、前記離間用回転輪を前記作業位置に保持する保持機構と、を具備し、前記ブラケットの回動支点を、前記左下部搬送装置の前記第三合流部よりも搬送上流側に配置するものである。
【0012】
請求項3においては、前記左下部搬送装置は、前記コンバインに配置される運転部に対して左右反対側に配置されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、離間用回転輪が離間位置に変更された場合、第一合流部と離間用回転輪との間の距離と、第三合流部と離間用回転輪との間の距離とが同時に広がる。従って、離間用回転輪を離間位置に変更するという一度の操作で、第一合流部及び第三合流部に詰まった穀稈を除去できる状態とすることができ、第一合流部及び第三合流部それぞれに詰まり解除手段を設けることなく簡単な構造とすることができるとともに、メンテナンス性を向上させることができる。
【0015】
請求項2においては、回動支点を第三合流部よりも上流側に配置することで、ブラケットを第一合流部及び第三合流部に対して離間する方向に回動させた場合、下部搬送装置間の距離は、第三合流部よりも第一合流部の方が大きく広がる。従って、第三合流部よりも搬送下流側に位置するために比較的多くの穀稈が詰まる可能性がある第一合流部において、詰まった穀稈を除去しやすくなり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0016】
請求項3においては、左下部搬送装置を運転部と左右反対側に配置することで、運転部と反対側から詰まり解除手段を操作することができる。これによって、詰まり解除手段を操作する際に運転部が邪魔になることがなく、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態に係る刈取部を具備するコンバインの側面図。
【図2】本発明の実施の一形態に係る刈取部を具備するコンバインの平面図。
【図3】本発明の実施の一形態に係る刈取部の側面概略図。
【図4】本発明の実施の一形態に係る刈取部の掻込装置及び下部搬送装置を示す平面図。
【図5】本発明の実施の一形態に係る刈取部の動力伝達構成を示す図。
【図6】本発明の実施の一形態に係る刈取部の詰まり解除手段を示す平面図。
【図7】本発明の実施の一形態に係る刈取部の詰まり解除手段を示す斜視図。
【図8】本発明の実施の一形態に係る刈取部の刈取フレーム及び第四下部搬送装置を示す左後方からの斜視図。
【図9】本発明の実施の一形態に係る刈取部の詰まり解除手段の作業位置での保持を解除した場合を示す平面図。
【図10】本発明の実施の一形態に係る刈取部の詰まり解除手段を離間位置に変更した場合を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の一実施形態に係る7条刈りコンバイン1の全体構成について説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、コンバイン1においては、走行部2が左右一対の走行クローラ3によって支持されている。圃場の穀稈を刈り取りながら取り込む刈取部4が、走行部2の前部に昇降調節可能に装着されている。刈取部4により刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部5が、走行部2の左上部に配設されている。脱穀部5により脱穀された処理物を選別する選別部6が、走行部2の左下部に配設されている。選別部6により選別された穀粒を貯留する穀粒タンク7が、走行部2の右部に配設されている。穀粒タンク7に貯溜された穀粒を外部へ排出する排出オーガ8が、走行部2の右後部に配設されている。そして、前記各部を操作する運転部9が、走行部2の右前部に配設されている。
【0020】
次に、刈取部4の構成について詳細に説明する。
【0021】
図3に示すように、刈取部4は、刈取フレーム10と、分草具30と、引起装置40と、掻込装置50と、切断装置60と、搬送装置100とを備える。
【0022】
刈取フレーム10は、分草具30や前記各装置を支持する、刈取部4の本体となるものである。刈取フレーム10は、刈取入力パイプ11と、縦伝動パイプ12と、横伝動パイプ13と、複数の分草フレーム14・14・・・と、駆動パイプ15と、引起縦伝動パイプ16と、縦連結フレームと、引起横伝動パイプ17と、複数の引起駆動パイプ18と、連結フレーム19と、中搬送伝動パイプ20とから構成される。
【0023】
刈取入力パイプ11は、その軸線方向を左右方向として、走行部2の左前部に回動可能に設けられる。縦伝動パイプ12は、その軸線方向を刈取入力パイプ11の軸線方向に対して直交方向として、刈取入力パイプ11の右端部から前斜下方へ延出される。横伝動パイプ13は、その軸線方向を左右方向として、縦伝動パイプ12の延出端部から左右方向へ延出される。
【0024】
各分草フレーム14は、その軸線方向を概ね前後方向として、横伝動パイプ13から前方へ延出される。複数の分草フレーム14・14・・・は、左右方向に適宜の間隔ごとに平行に並べられる。駆動パイプ15は、その軸線方向を左右方向として、左右最外側に位置する分草フレーム14・14の間に横架される。駆動パイプ15は、横伝動パイプ13の前斜下方に位置して、当該横伝動パイプ13と平行に並べられる。
【0025】
引起縦伝動パイプ16は、その軸線方向を横伝動パイプ13の軸線方向に対して直交方向として、横伝動パイプ13の左端部から前斜上方へ延出される。前記縦連結フレームは、その軸線方向を横伝動パイプ13の軸線方向に対して直交方向として、横伝動パイプ13の右端部から前斜上方へ延出される。
【0026】
引起横伝動パイプ17は、その軸線方向を左右方向として、引起縦伝動パイプ16の延出端部と縦連結フレームの延出端部との間に横架される。各引起駆動パイプ18は、その軸線方向を概ね上下方向として、引起横伝動パイプ17から前方へ延出される。複数の引起駆動パイプ18・18・・・は、左右方向に所定間隔ごとに平行に並べられる。
【0027】
連結フレーム19は、その軸線方向を概ね前後方向として、引起横伝動パイプ17の左右中途部から後方へ延出される。連結フレーム19は、その延出端部で縦伝動パイプ12の刈取入力パイプ11側に連結される。中搬送伝動パイプ20は、縦伝動パイプ12の横伝動パイプ13側から前斜上方へ延出される。
【0028】
分草具30は、圃場の穀稈を一条ごとに分離(分草)するものである。分草具30は、8つの分草板31・31・・・を具備する(図4参照)。各分草板31は、それぞれ先端が細くなるように形成される。各分草板31は、その先端が前方を向くように、各分草フレーム14の前端部に取り付けられる。
【0029】
引起装置40は、分草後の穀稈を引き起こすものである。引起装置40は、タイン付チェン42を回転駆動可能に支持する引起ケース41を7つ具備する。複数の引起ケース41は、それぞれ分草具30の後方に前低後高の傾斜状に配置されて、左右方向に適宜の間隔ごとに並べられる。各引起ケース41は、各分草フレーム14と各引起駆動パイプ18との間に位置して、これらに支持される。
【0030】
掻込装置50は、引起装置40により引き起こされた穀稈の株元を掻き込むものである。掻込装置50は、引起装置40の後方に前低後高の傾斜状に配置される。図4に示すように、掻込装置50は、第一掻込装置51と、第二掻込装置52と、第三掻込装置53と、第四掻込装置54とを備える。これらの掻込装置51〜54は、それぞれ引起装置40の後方に前低後高の傾斜状に配置されて、左右方向に適宜の間隔ごとに並べられる。
【0031】
第一掻込装置51は、7条分の穀稈のうち右側2条分の穀稈(右側から数えて1条目と2条目の穀稈171・172)の株元を掻き込むものである。第一掻込装置51は、左右一対の星形状の掻込輪51a・51bと、左右一対の突起付きの掻込ベルト51c・51dとを備える。第一掻込装置51は、複数の掻込装置51〜54のうち最も右側に配置される。
【0032】
掻込輪51aは、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸51e回りに回転可能に設けられる。掻込輪51bは、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸51f回りに回転可能に設けられる。掻込輪51aと掻込輪51bとは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに噛合される。
【0033】
大径プーリ51gが、掻込輪51aの上方に配置されて、掻込輪51aとともに回転軸51eに固定される。小径プーリ51hが、大径プーリ51gの右前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト51cが、大径プーリ51gと小径プーリ51hとに巻き掛けられる。
【0034】
大径プーリ51kが、掻込輪51bの上方に配置されて、掻込輪51bとともに回転軸51fに固定される。小径プーリ51mが、大径プーリ51kの左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト51dが、大径プーリ51kと小径プーリ51mとに巻き掛けられる。
【0035】
こうして、掻込ベルト51cと掻込ベルト51dとは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに対向するベルト面間、即ち掻込ベルト51cの左外側面と掻込ベルト51dの右外側面との間の距離が前方から後方へ向かうに従って徐々に小さくなるように、即ち正面視略ハの字状になるように、それぞれ概ね前後方向に張設される。
【0036】
第二掻込装置52は、7条分の穀稈のうち左右中央側3条分の片側、本実施形態においては右側1条分の穀稈(最右側から数えて3条目の穀稈173)の株元を掻き込むものである。第二掻込装置52は、単一で星形状の掻込輪52aと、単一で突起付の掻込ベルト52bとを備える。第二掻込装置52は、複数の掻込装置51〜54のうち左右中央側で第一掻込装置51の左隣に配置される。
【0037】
掻込輪52aは、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸52c回りに回転可能に設けられる。掻込輪52aは、第一掻込装置51の左側掻込輪51bの左側方に位置し、当該左側掻込輪51bとは噛合されない。
【0038】
大径プーリ52dが、掻込輪52aの上方に配置されて、掻込輪52aとともに回転軸52cに固定される。小径プーリ52eが、大径プーリ52dの左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト52bが大径プーリ52dと小径プーリ52eとに巻き掛けられる。
【0039】
こうして、掻込ベルト52bは概ね前後方向に張設される。また、不図示の案内杆が、掻込ベルト52bと第一掻込装置51の掻込ベルト51dとの間に設けられて、掻込ベルト52bの右外側面と所定間隔を隔てて対向するように配置される。
【0040】
第三掻込装置53は、7条分の穀稈のうち左右中央側3条分の残り2条、本実施形態においては中央1条分と左側1条分の穀稈(最右側から数えて4条目と5条目の穀稈174・175)の株元を掻き込むものである。第三掻込装置53は、左右一対で星形状の掻込輪53a・53bと、左右一対で突起付の掻込ベルト53c・53dとを備える。第三掻込装置53は、複数の掻込装置51〜54のうち左右中央側で第二掻込装置52の左隣に配置される。
【0041】
掻込輪53aは、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸53e回りに回転可能に設けられる。掻込輪53bは、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸53f回りに回転可能に設けられる。掻込輪53aと掻込輪53bとは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに噛合される。
【0042】
掻込輪53aは、第二掻込装置52の掻込輪52aの左側方に位置し、当該掻込輪52aと左右方向に隣り合うように並べられる。つまり、掻込輪53aは、左側方の掻込輪53bと右側方の掻込輪52aとに挟まれるように並べられる。そして、掻込輪53aが前述のように掻込輪53bと噛合されるとともに、掻込輪52aとも噛合される。
【0043】
大径プーリ53gが、掻込輪53aの上方に配置されて、掻込輪53aとともに回転軸53eに固定される。小径プーリ53hが、大径プーリ53gの右前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト53cが、大径プーリ53gと小径プーリ53hとに巻き掛けられる。
【0044】
大径プーリ53kが、掻込輪53bの上方に配置されて、掻込輪53bとともに回転軸53fに固定される。小径プーリ53mが、大径プーリ53kの左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト53dが、大径プーリ53kと小径プーリ53mとに巻き掛けられる。
【0045】
こうして、掻込ベルト53cと掻込ベルト53dとは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに対向するベルト面間、即ち掻込ベルト53cの左外側面と掻込ベルト53dの右外側面との間の距離が前方から後方へ向かうに従って徐々に小さくなるように、即ち正面視略ハの字状になるように、それぞれ概ね前後方向に張設される。
【0046】
第四掻込装置54は、7条分の穀稈のうち左側2条分の穀稈(右側から数えて6条目と7条目の穀稈176・177)の株元を掻き込むものである。第四掻込装置54は、左右一対で星形状の掻込輪54a・54bと、左右一対で突起付の掻込ベルト54c・54dとを備える。第四掻込装置54は、複数の掻込装置51〜54のうち最も左側で第三掻込装置53の左隣に配置される。
【0047】
掻込輪54aは、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸54e回りに回転可能に設けられる。掻込輪54bは、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸54f回りに回転可能に設けられる。掻込輪54aと掻込輪54bとは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに噛合される。
【0048】
大径プーリ54gが、掻込輪54aの上方に配置されて、掻込輪54aとともに回転軸54eに固定される。小径プーリ54hが、大径プーリ54gの右前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト54cが、大径プーリ54gと小径プーリ54hとに巻き掛けられる。
【0049】
大径プーリ54kが、掻込輪54bの上方に配置されて、掻込輪54bとともに回転軸54fに固定される。小径プーリ54mが、大径プーリ54kの左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト54dが、大径プーリ54kと小径プーリ54mとに巻き掛けられる。
【0050】
こうして、掻込ベルト54cと掻込ベルト54dとは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに対向するベルト面間、即ち掻込ベルト54cの左外側面と掻込ベルト54dの右外側面との間の距離が前方から後方へ向かうに従って徐々に小さくなるように、即ち正面視略ハの字状になるように、それぞれ概ね前後方向に張設される。
【0051】
図3に示すように、切断装置60は、掻込装置50(第一掻込装置51、第二掻込装置52、第三掻込装置53及び第四掻込装置54)によって掻き込まれた7条分の穀稈を刈刃61によって株元側で切断するものである。切断装置60は、掻込装置50の下方に配置され、前低後高の傾斜状に設けられる。
【0052】
搬送装置100は、切断装置60により切断された穀稈を脱穀部5に搬送するものである。搬送装置100は、切断装置60の後上方に配置される。搬送装置100は、下部搬送装置110と、上部搬送装置120と、縦搬送装置130と、補助搬送装置140と、穂先搬送装置150とを備える。
【0053】
下部搬送装置110は、刈り取った穀稈の株元を合流させて縦搬送装置130まで挟持搬送するものである。図4に示すように、下部搬送装置110は、第一下部搬送装置111と、第二下部搬送装置112と、第三下部搬送装置113と、第四下部搬送装置114とを備える。
【0054】
第一下部搬送装置111は、第一掻込装置51で掻き込んだ2条分の穀稈171・172の株元に、他の下部搬送装置から挟持搬送されてくる穀稈173・174・175・176・177の株元を合流させて、7条分の穀稈171・172・173・174・175・176・177の株元を縦搬送装置130まで挟持搬送するものである。第一下部搬送装置111は、第一掻込装置51及び第二掻込装置52の後方に前低後高の傾斜状に配置され、第一掻込装置51近傍から左斜後方へ向けて延出される。
【0055】
第一下部搬送装置111は、搬送チェン111aと、回転軸51eに固設された従動スプロケット111bと、駆動スプロケット111cと、この駆動スプロケット111cの左右に設けられた遊動プーリ111d・111eと、駆動スプロケット111cの右前方に設けられたテンションプーリ111fとを具備する。搬送チェン111aは、従動スプロケット111b、駆動スプロケット111c、遊動プーリ111d・111e及びテンションプーリ111fに巻き掛けられる。
【0056】
また、第一下部搬送装置111は、搬送チェン111aを案内するガイド板111gと、搬送チェン111aとの間で穀稈を挟持する挟持杆111h、ガイドバネ111k・11mと、を具備する(図6参照)。
【0057】
第二下部搬送装置112は、第二掻込装置52で掻き込んだ1条分の穀稈173の株元を第一下部搬送装置111との合流部182まで挟持搬送するものである。第二下部搬送装置112は、第二掻込装置52の後方であって第一下部搬送装置111の左側前方に前低後高の傾斜状に配置され、第二掻込装置52近傍から第一下部搬送装置111の搬送中途部近傍まで後方へ向けて延出される。
【0058】
第二下部搬送装置112は、搬送チェン112aと、回転軸52cに固設された駆動スプロケット112cと、二つの遊動プーリ112d・112eと、テンションプーリ112fとを具備する。搬送チェン112aは、駆動スプロケット112c、遊動プーリ112d・112e及びテンションプーリ112fに巻き掛けられる。
【0059】
第三下部搬送装置113は、第三掻込装置53で掻き込んだ2条分の穀稈174・175の株元を第四下部搬送装置114との合流部181まで挟持搬送するものである。第三下部搬送装置113は、第三掻込装置53の後方であって第四下部搬送装置114の右側前方に前低後高の傾斜状に配置され、第三掻込装置53近傍から第四下部搬送装置114の搬送中途部近傍まで後方へ向けて延出される。
【0060】
第三下部搬送装置113は、搬送チェン113aと、回転軸53eに固設された従動スプロケット113bと、駆動スプロケット113cと、この駆動スプロケット113cの左方に設けられた遊動プーリ113dと、駆動スプロケット113cの前方に設けられたテンションプーリ113eとを具備する。搬送チェン113aは、従動スプロケット113b、駆動スプロケット113c、遊動プーリ113d及びテンションプーリ113eに巻き掛けられる。
【0061】
また、第三下部搬送装置113は、搬送チェン113aを案内するガイド板113fと、搬送チェン113aとの間で穀稈を挟持する挟持杆113g及びガイドバネ113hと、穀稈を案内する案内杆113kと、を具備する(図6参照)。
【0062】
第四下部搬送装置114は、第四掻込装置54で掻き込んだ2条分の穀稈176・177の株元に、第三下部搬送装置113挟持搬送されてくる穀稈174・175の株元を合流させて、4条分の穀稈174・175・176・177の株元を第一下部搬送装置111との合流部183まで挟持搬送するものである。第四下部搬送装置114は、第四掻込装置54の後方に前低後高の傾斜状に配置され、第三掻込装置53近傍から第四下部搬送装置114の搬送終端部近傍まで右斜後方へ向けて延出される。
【0063】
第四下部搬送装置114は、搬送チェン114aと、回転軸54fに固設された従動スプロケット114bと、駆動スプロケット114cと、この駆動スプロケット114cの右方に設けられた離間用プーリ114d及び遊動プーリ114eと、駆動スプロケット113cの前方に設けられたテンションプーリ114fとを具備する。搬送チェン114aは、従動スプロケット114b、駆動スプロケット114c、離間用プーリ114d、遊動プーリ114e及びテンションプーリ114fに巻き掛けられる。
【0064】
また、第四下部搬送装置114は、搬送チェン114aを案内するガイド板114gと、搬送チェン114aとの間で穀稈を挟持する挟持杆114h及びガイドバネ114k・114vと、を具備する(図6参照)。
【0065】
さらに、第四下部搬送装置114は、離間用プーリ114dの位置を変更する詰まり解除手段200と、詰まり解除手段200やガイド板114g等を支持する上フレーム114m、中フレーム114n、下フレーム114pと、を具備する(図6参照)。
【0066】
第四下部搬送装置114は、平面視(図4)において縦伝動パイプ12の左側、すなわちコンバイン1の左右方向左側に配置される。
【0067】
上部搬送装置120は、下部搬送装置110で挟持搬送している穀稈の穂先を係止搬送するものである。図3に示すように、上部搬送装置120は、下部搬送装置110の上方に前低後高の傾斜状に配置され、掻込装置50の上方付近から後方へ向けて延出される。
【0068】
縦搬送装置130は、第一下部搬送装置111の搬送終端部から受け継いだ7条分の穀稈の株元を補助搬送装置140まで挟持搬送するものである。図3に示すように、縦搬送装置130は、下部搬送装置110の後方に前低後高の傾斜状に配置され、下部搬送装置110の搬送終端部付近から左斜後方へ向けて延出される。
【0069】
補助搬送装置140は、縦搬送装置130の搬送終端部から受け継いだ7条分の穀稈の株元を脱穀部5まで挟持搬送するものである。補助搬送装置140は、縦搬送装置130の後上方に配置され、縦搬送装置130の搬送終端部付近から後方へ向けて延出される。
【0070】
穂先搬送装置150は、第一下部搬送装置111、縦搬送装置130及び補助搬送装置140で搬送される穀稈の穂先を係止搬送するものである。穂先搬送装置150は、上部搬送装置120の後部下方に配置され、上部搬送装置120の搬送中途部付近から後方へ向けて延出される。
【0071】
次に、図5を用いて、刈取部4の動力伝達構造について説明する。
【0072】
刈取フレーム10、即ちこれを構成する各パイプ等には、各装置に動力を伝達する伝動軸が長手方向に沿って内挿される。具体的には、例えば、刈取入力パイプ11には、刈取入力軸161が内挿される。縦伝動パイプ12には、縦伝動軸162が内挿される。横伝動パイプ13には、横伝動軸163が内挿される。中搬送伝動パイプ20には、中搬送伝動軸164が内挿される。
【0073】
刈取入力軸161の左端には、エンジンの動力が入力される入力プーリ160が固設され、右端は縦伝動軸162に連動連結される。縦伝動軸162は、横伝動軸163、中搬送伝動軸164及びその他の伝動軸に適宜に連動連結される。こうして、エンジンから刈取入力軸161に伝達された動力が、当該刈取入力軸161から縦伝動軸162を経て、さらに引起装置40、掻込装置50、切断装置60及び搬送装置100に伝達可能とされる。
【0074】
縦伝動軸162の中途部から取り出された動力は、第一下部搬送装置111の駆動スプロケット111cに伝達される。当該動力により、第一下部搬送装置111及び第一掻込装置51が順に駆動される。
【0075】
縦伝動軸162の中途部から取り出された動力は、第三下部搬送装置113の駆動スプロケット113cに伝達される。当該動力により、第三下部搬送装置113、第三掻込装置53、第二掻込装置52、及び第二下部搬送装置112が順に駆動される。
【0076】
横伝動軸163の左端から取り出された動力は、第四下部搬送装置114の駆動スプロケット114cに伝達される。当該動力により、第四下部搬送装置114及び第四掻込装置54が順に駆動される。
【0077】
このような構成において、刈取部4は、刈取作業時に前記各装置をエンジンからの動力により駆動して、圃場の穀稈を刈り取りながら取り込む。すなわち、刈取部4においては、圃場の穀稈が分草具30により一条ごとに分離するように分草された後、分草後の穀稈が引き起こされる。つづいて、掻込装置50で引起装置40により引き起こされた穀稈の株元側が掻き込まれる。
【0078】
詳しくは、第一掻込装置51において、掻込輪51a及び大径プーリ51gが回転軸51e回りに図4における矢印方向に回転する。この大径プーリ51gの回転によって、掻込ベルト51cが回転する。また、掻込輪51aの回転によって、この掻込輪51aと噛合する掻込輪51bが回転軸51f回りに図4における矢印方向に回転する。この掻込輪51bの回転によって、大径プーリ51kが回転する。そして、大径プーリ51kの回転によって、掻込ベルト51dが回転する。これにより、右側2条分の穀稈171・172の株元側が、掻込輪51a・51b及び掻込ベルト51c・51dにより後方へ向かって掻き込まれる。
【0079】
第二掻込装置52及び第三掻込装置53において、掻込輪53a及び大径プーリ53gが回転軸53e回りに図4における矢印方向に回転する。この大径プーリ53gの回転によって、掻込ベルト53cが回転する。また、掻込輪53aの回転によって、この掻込輪53aと噛合する掻込輪52a・53bがそれぞれ回転軸52c・53f回りに図4における矢印方向に回転する。この掻込輪52aの回転によって、大径プーリ52dが図4における矢印方向に回転する。そして、大径プーリ52dの回転により、掻込ベルト52bが回転する。また、掻込輪53bの回転によって、大径プーリ53kが回転する。そして、大径プーリ53kの回転により、掻込ベルト53dが回転する。これにより、左右中央側3条のうち右側1条分の穀稈173の株元側が、掻込輪52a及び掻込ベルト52bにより後方へ向かって掻き込まれて、左右中央側3条のうち残りの2条分の穀稈174・175の株元側が、掻込輪53a・53b及び掻込ベルト53c・53dにより後方へ向かって掻き込まれる。
【0080】
第四掻込装置54において、掻込輪54b及び大径プーリ54kが回転軸54f回りに図4における矢印方向に回転する。この大径プーリ54kの回転により、掻込ベルト54dが回転する。また、掻込輪54bの回転によって、この掻込輪54bと噛合する掻込輪54aが回転軸54e回りに図4における矢印方向に回転する。この掻込輪54aの回転によって、大径プーリ54gが回転する。そして、大径プーリ54gの回転によって、掻込ベルト54cが回転する。これにより、左側2条分の穀稈176・177の株元側が、掻込輪54a・54b及び掻込ベルト54c・54dにより後方へ向かって掻き込まれる。
【0081】
そして、切断装置60により穀稈171・172、穀稈173、穀稈174・175、穀稈176・177が株元側で切断される。切断後の各条分の穀稈171・172、穀稈173、穀稈174・175、穀稈176・177が、搬送装置100により途中で合流させられつつ脱穀部5へ向けて搬送される。搬送装置100においては、まず穀稈171・172、穀稈173、穀稈174・175、穀稈176・177の株元側が下部搬送装置110により搬送され、穂先側が上部搬送装置120により搬送される。
【0082】
詳しくは、第三下部搬送装置113において、駆動スプロケット113cの回転によって、搬送チェン113aが回転する。これにより、第三掻込装置53により掻き込まれた2条分の穀稈174・175の株元側が、斜後上方の合流部181まで搬送される。ここで、合流部181は、第四下部搬送装置114の搬送中途部であって第三下部搬送装置113と近接する位置となる。
【0083】
第四下部搬送装置114においては、駆動スプロケット114cの回転によって、搬送チェン114aが回転する。これにより、第四掻込装置54により掻き込まれた2条分の穀稈176・177の株元側とともに、合流部181で受け継いだ穀稈174・175の株元側が、斜後上方の合流部183まで搬送される。ここで、合流部183は、第一下部搬送装置111の搬送中途部より下流であって第四下部搬送装置114と近接する位置となる。
【0084】
第二下部搬送装置112において、駆動スプロケット112cの回転によって、搬送チェン112aが回転する。これにより、第二掻込装置52により掻き込まれた1条分の穀稈173の株元側が、後上方の合流部182まで搬送される。ここで、合流部182は、第一下部搬送装置111の搬送中途部であって第二下部搬送装置112と近接する位置となる。
【0085】
第一下部搬送装置111において、駆動スプロケット111cの回転によって、搬送チェン111aが回転する。これにより、第一掻込装置51により掻き込まれた2条分の穀稈171・172の株元側が、斜後上方に搬送され、合流部182・183で受け継いだ穀稈173・174・175・176・177の株元側とともに縦搬送装置130まで搬送される。
【0086】
すなわち、下部搬送装置110においては、第三下部搬送装置113により搬送される穀稈174・175の株元側が合流部181において第四下部搬送装置114により搬送される穀稈176・177の株元側と合流して、搬送中の穀稈174・175・176・177が4条分の一つの束となり、この束が合流部183まで搬送される。そして、第一下部搬送装置111により搬送される穀稈171・172の株元側が合流部182において第二下部搬送装置112により搬送される穀稈173の株元側と合流して、搬送中の穀稈171・172・173が3条分の一つの束となり、この束が合流部183で第四下部搬送装置114により搬送される穀稈174・175・176・177と合流する。こうして一つの束となった7条分の穀稈171・172・173・174・175・176・177の株元側が縦搬送装置130の搬送始端部に引き渡される。
【0087】
以下では、第四下部搬送装置114の上フレーム114m、中フレーム114n、下フレーム114p、及び詰まり解除手段200について詳細に説明する。
【0088】
図6から図8までに示すように、上フレーム114mは、円筒状の部材を、中途部で折り曲げて形成されるものである。上フレーム114mの一端(後端)は、遊動プーリ114e(縦搬送装置130の前端)の近傍に配置される。上フレーム114mの他端(前端)は、最も左側に配置される分草フレーム14に固定される(図8参照)。上フレーム114mの一端部には、右方に向けて上フレーム板114qが固定(合流部183側へ延設)される。
【0089】
中フレーム114nは、細長い板状の部材である。中フレーム114nの長手方向中途部は、連結部材114rを介して上フレーム114mと連結される。
【0090】
下フレーム114pは、円筒状の部材を、中途部で折り曲げて形成されるものである。下フレーム114pの一端(後端)は、中フレーム114nの一端(後端)下部に固定される(図8参照)。下フレーム114pの他端(前端)は、横伝動パイプ13に固定される(図8参照)。
【0091】
詰まり解除手段200は、ブラケット210、回動支点軸220、離間用プーリ軸230、遊動プーリ軸240、保持機構250等を具備する。
【0092】
ブラケット210は、離間用プーリ114d及び遊動プーリ114eを回動可能に支持するものである。ブラケット210は、上ブラケット211及び下ブラケット212を具備する。
【0093】
上ブラケット211は、複数の板材を折曲、溶接等して形成される。上ブラケット211の一端(前端)側には、上ブラケット211を上下方向に貫通する回動支点孔211aが形成される。また、上ブラケット211の他端(後端)側には、上ブラケット211を上下方向に貫通する貫通孔211b及び貫通孔211cが並んで形成される。上ブラケット211の右側部には、搬送チェン114aを案内するガイド板211dが固定される。
【0094】
下ブラケット212は、板材により形成される。下ブラケット212の下面には、ガイドバネ111mが固定される。下ブラケット212の一端(後端)側には、下ブラケット212の板面を貫通する貫通孔212a及び貫通孔212bが形成される。
【0095】
回動支点軸220は、ブラケット210の回動支点となるものである。回動支点軸220は、円筒状に形成される。回動支点軸220は上ブラケット211の回動支点孔211aに相対回転可能となるように挿通される。回動支点軸220の下端は中フレーム114nの上面に当接され、回動支点軸220の上端は上フレーム板114qの下面に当接される。頭付ピン221が、平座金222、上フレーム板114qに形成される貫通孔114s、回動支点軸220、中フレーム114nに形成される貫通孔114t、及び平座金223に順に挿通されることで、回動支点軸220は支持される。また、頭付ピン221の下端部(平座金223の下方)をピン224で係止することにより、頭付ピン221が上方に抜け落ちることを防止している。
【0096】
回動支点軸220は、平面視(図6)における第四下部搬送装置114による穀稈の搬送経路において、合流部181及び合流部183よりも上流側に配置される。ここで、第四下部搬送装置114による穀稈の搬送経路とは、第四下部搬送装置114の搬送チェン114aが搬送する穀稈が通過する点の軌跡をいう。また、回動支点軸220が合流部181及び合流部183よりも上流側に配置されるとは、回動支点軸220から穀稈の搬送経路に対して垂線(図6中の一点鎖線X参照)を引いた場合に、合流部181及び合流部183が当該垂線よりも搬送方向後側に位置することをいう。
【0097】
離間用プーリ軸230は、離間用プーリ114dの回動支点となるものである。離間用プーリ軸230は、上ブラケット211の貫通孔211b、離間用プーリ114d、及びスペーサ231に順に挿通される。離間用プーリ軸230の下端は下ブラケット212に当接される。離間用プーリ軸230は、下ブラケット212の下方から貫通孔212aに挿通されるボルト232によって、下ブラケット212に固定される。
【0098】
遊動プーリ軸240は、遊動プーリ114eの回動支点となるものである。遊動プーリ軸240は、上ブラケット211の貫通孔211c、遊動プーリ114e、及びスペーサ241に順に挿通される。遊動プーリ軸240の下端は下ブラケット212に当接される。遊動プーリ軸240は、下ブラケット212の下方から貫通孔212bに挿通されるボルト242によって、下ブラケット212に固定される。
【0099】
保持機構250は、ブラケット210の回動位置を所定の位置に保持するものである。保持機構250は、操作レバー251、規制部材252、ピン253等を具備する。
【0100】
操作レバー251は、ブラケット210の回動位置を変更する際に作業者により操作されるものである。操作レバー251は、板材により形成される。操作レバー251の左側には、左右方向に延びる把持部251aが形成される。操作レバー251の前部かつ左右中途部には、前方に突出する突出部251bが形成される。操作レバー251の右端部には、操作レバー251の板面を貫通する貫通孔251cが形成される。操作レバー251の左右中途部には、操作レバー251の板面を貫通する長孔251dが形成される。長孔251dは、貫通孔251cを中心とする円弧に沿うように形成される。
【0101】
貫通孔251cには上方からボルト233が挿通され、当該ボルト233が離間用プーリ軸230の上端に所定の締結力で締結される。これによって、操作レバー251は離間用プーリ軸230を中心として回動可能に支持される。また、長孔251dには上方からボルト243が挿通され、当該ボルト243が遊動プーリ軸240の上端に所定の締結力で締結される。これによって、操作レバー251が離間用プーリ軸230を中心として一定量回動すると、ボルト243と長孔251dの一端または他端とが当接し、操作レバー251の回動量が制限される。すなわち、操作レバー251が回動可能な範囲は、長孔251dの両端間の範囲内に制限される。
【0102】
また、操作レバー251がボルト233・243によって離間用プーリ軸230及び遊動プーリ軸240の上端に締結されることで、上ブラケット211が上方に抜け落ちることを防止している。すなわち、離間用プーリ軸230及び遊動プーリ軸240によって、上ブラケット211と下ブラケット212が連結される。
【0103】
規制部材252は、板状の部材を平面視(図6)L字状に折り曲げて形成される。規制部材252は、上フレーム114m及び上フレーム板114qの後端部に立設される。規制部材252の一方の折曲部は、回動支点軸220の軸心と遊動プーリ軸240の軸心とを結ぶ線と略平行に斜め前後方向に延在して、突出部251bと当接する面となっている。規制部材252の他方の折曲部は、斜め左右方向に延在して、把持部251aの前面と当接する面となっている。このように、規制部材252の2つの折曲部は、それぞれ操作レバー251の突出部251b又は把持部251aと当接することで、当該操作レバー251のストッパとしての役目を果たしている。規制部材252は、上フレーム114m及び上フレーム板114qと、他のフレーム等の部材とを連結する連結部材として用いることも可能である。
【0104】
ピン253は、操作レバー251の回動を規制するものである。ピン253は、上フレーム114mの後端部に形成されるピン孔114uに挿通される。ピン孔114uに挿通されたピン253の先端部(下端部)は、上フレーム114mから下方に向かって突出する。
【0105】
以下では、上記の如く構成された詰まり解除手段200の動作態様について説明する。
まず、刈取部4により刈取作業を行う場合について説明する。
【0106】
図6に示すように、刈取部4により刈取作業を行う場合、操作レバー251はブラケット210に対して平面視時計回りに回動され、操作レバー251の突出部251bが規制部材252に対して右方から係止される。この状態では、搬送チェン114aの張力によりブラケット210には平面視時計回りに回動する方向に付勢力が加わる。しかし、操作レバー251が規制部材252に係止されているため、ブラケット210は平面視時計回りに回動することなく、上フレーム114mに対して所定量だけ右方に張り出した位置で保持される。
【0107】
この場合、離間用プーリ114dは、合流部183及び合流部181に近接する位置に保持される。以下、この離間用プーリ114dの位置を作業位置と定義する。
【0108】
ブラケット210が上フレーム114mに対して所定量だけ右方に張り出した位置で保持される場合、すなわち離間用プーリ114dが作業位置に保持される場合、上フレーム114mのピン孔114uにはピン253が挿通され、ピン253のピン孔114uから下方へ突出した部分は操作レバー251に対して後方から当接する。すなわち、ピン253よって操作レバー251の反時計回り方向への回動が規制される。これによって、操作レバー251を規制部材252に確実に係止させておくことができ、搬送チェン114aの張力やその他の外力が詰まり解除手段200に加わった場合にも、離間用プーリ114dを作業位置に保持することができる。
【0109】
次に、合流部183又は合流部181に穀稈が詰まった際に、当該穀稈を除去する場合について説明する。
【0110】
図9に示すように、合流部183又は合流部181に詰まった穀稈を除去する場合、まず、作業者は、刈取部4の左側方に移動してから、上フレーム114mからピン253を取り外す。これによって、操作レバー251の回動の規制が解除され、操作レバー251が反時計回りに回動可能になる。
【0111】
次に、作業者は、刈取部4の左方から操作レバー251の把持部251aを握り、当該操作レバー251を平面視反時計回りに回動させる。これによって、操作レバー251の突出部251bと規制部材252との係止が解除される。すなわち、ブラケット210が平面視時計回りに回動可能となる。
【0112】
次に、図10に示すように、作業者は、操作レバー251を長孔251dにより制限される範囲で最大限回動させた状態で、操作レバー251の把持部251aを握ったまま、当該操作レバー251を刈取部4の左方に向かって引っ張る。これによって、離間用プーリ軸230を介して操作レバー251と連結されているブラケット210が、回動支点軸220を中心に平面視時計回りに回動する。このように、ブラケット210を平面視時計回りに回動させると、当該ブラケット210の回動支点となる回動支点軸220が合流部181及び合流部183よりも搬送経路上流側に配置されているため、離間用プーリ114dが合流部183及び合流部181から離間する。以下、この離間用プーリ114dの位置を離間位置と定義する。
【0113】
離間用プーリ114dを離間位置に変更した場合、合流部183における搬送チェン114aと搬送チェン113aとの間の空間、及び合流部181における搬送チェン114aと搬送チェン111aとの間の空間が、離間用プーリ114dが作業位置にある場合に比べて広くなる。これによって、合流部183及び合流部181に詰まった穀稈を容易に除去することができる。
【0114】
次に、合流部183又は合流部181に詰まった穀稈を除去した後に、再び離間用プーリ114dの位置を作業位置に戻す場合について説明する。
【0115】
離間用プーリ114dの位置を作業位置に戻す場合、作業者は操作レバー251の把持部251aを握ったまま、当該操作レバー251を刈取部4の右方に向かって押す。これによって、離間用プーリ軸230を介して操作レバー251と連結されているブラケット210が、平面視反時計回りに回動する。作業者は、離間用プーリ114dが作業位置に戻るまでブラケット210を回動させる。
【0116】
次に、作業者は、操作レバー251を平面視時計回りに長孔251dにより制限される範囲で最大限回動させる。これによって、操作レバー251の突出部251bと規制部材252とを係止させる。
【0117】
最後に、上フレーム114mのピン孔114uにピン253を挿通することで、操作レバー251の反時計周り方向への回動を規制する。これによって、再び離間用プーリ114dを作業位置で保持することができる。
【0118】
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1の刈取部4は、引起装置40と掻込装置50と切断装置60と下部搬送装置110と上部搬送装置120と縦搬送装置130とを備えるコンバイン1の刈取部4において、前記下部搬送装置110は中央左側の1条または2条分の穀稈を合流部181まで搬送する第三下部搬送装置113と、中央右側の1条または2条分の穀稈を合流部182まで搬送する第二下部搬送装置112と、左側の1条または2条分の穀稈と、合流部181で合流させた第三下部搬送装置113からの穀稈を合流部183まで搬送する第四下部搬送装置114と、右側の1条または2条分の穀稈と、合流部182で合流させた第二下部搬送装置112からの穀稈と、合流部183で合流させた第四下部搬送装置114からの穀稈とを縦搬送装置130の搬送始端部まで搬送する第一下部搬送装置111とを備え、第四下部搬送装置114は、合流部181及び合流部183に臨むように配置される離間用プーリ114dを含む複数の回転輪と、前記複数の回転輪に巻き掛けられる穀稈搬送用の搬送チェン114aと、離間用プーリ114dの位置を、合流部181及び合流部183に近接させる作業位置と、合流部181及び合流部183から離間させる離間位置との間で変更することが可能な詰まり解除手段200と、を備えるものである。
このように構成することにより、離間用プーリ114dが離間位置に変更された場合、合流部181と離間用プーリ114dとの間の距離と、合流部183と離間用プーリ114dとの間の距離とが同時に広がる。従って、離間用プーリ114dを離間位置に変更するという一度の操作で、合流部181及び合流部183に詰まった穀稈を除去できる状態とすることができ、合流部181及び合流部183それぞれに詰まり解除手段を設けることなく簡単な構造とすることができるとともに、メンテナンス性を向上させることができる。
【0119】
また、詰まり解除手段200は、刈取部4本体に対して回動可能に設けられて、離間用プーリ114dを回転自在に支持するブラケット210と、ブラケット210の回動位置を保持することにより、離間用プーリ114dを前記作業位置に保持する保持機構250と、を具備し、ブラケット210の回動支点(回動支点軸220)を、第四下部搬送装置114の合流部183よりも搬送上流側に配置するものである。
このように構成することにより、回動支点軸220を合流部183よりも上流側に配置することで、ブラケット210を合流部181及び合流部183に対して離間する方向に回動させた場合、第四下部搬送装置114と第一下部搬送装置111との間の距離、及び第四下部搬送装置114と第三下部搬送装置113との間の距離は、合流部183よりも合流部181の方が大きく広がる。従って、合流部183よりも搬送下流側に位置するために比較的多くの穀稈が詰まる可能性がある合流部181において、詰まった穀稈を除去しやすくなり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0120】
また、第四下部搬送装置114は、コンバイン1に配置される運転部9に対して左右反対側、すなわちコンバイン1の左側に配置されるものである。
このように構成することにより、第四下部搬送装置114を運転部9と反対側に配置することで、運転部9と反対側から詰まり解除手段を操作することができる。これによって、詰まり解除手段を操作する際に運転部9が邪魔になることがなく、メンテナンス性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0121】
1 コンバイン
4 刈取部
9 運転部
40 引起装置
50 掻込装置
60 切断装置
100 搬送装置
110 下部搬送装置
111 第一下部搬送装置(右下部搬送装置)
112 第二下部搬送装置(中右下部搬送装置)
113 第三下部搬送装置(中左下部搬送装置)
114 第四下部搬送装置(左下部搬送装置)
114d 離間用プーリ(離間用回転輪)
114a 搬送チェン(無端帯)
181 合流部(第一合流部)
182 合流部(第二合流部)
183 合流部(第三合流部)
200 詰まり解除手段
210 ブラケット
250 保持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引起装置と掻込装置と切断装置と下部搬送装置と上部搬送装置と縦搬送装置とを備えるコンバインの刈取部において、
前記下部搬送装置は
中央左側の1条または2条分の穀稈を第一合流部まで搬送する中左下部搬送装置と、
中央右側の1条または2条分の穀稈を第二合流部まで搬送する中右下部搬送装置と、
左側の1条または2条分の穀稈と、前記第一合流部で合流させた前記中左下部搬送装置からの穀稈を第三合流部まで搬送する左下部搬送装置と、
右側の1条または2条分の穀稈と、前記第二合流部で合流させた前記中右下部搬送装置からの穀稈と、前記第三合流部で合流させた左下部搬送装置からの穀稈とを前記縦搬送装置の搬送始端部まで搬送する右下部搬送装置とを備え、
前記左下部搬送装置は、
前記第一合流部及び第三合流部に臨むように配置される離間用回転輪を含む複数の回転輪と、
前記複数の回転輪に巻き掛けられる穀稈搬送用の無端帯と、
前記離間用回転輪の位置を、前記第一合流部及び前記第三合流部に近接させる作業位置と、前記第一合流部及び前記第三合流部から離間させる離間位置との間で変更することが可能な詰まり解除手段と、
を備えるコンバインの刈取部。
【請求項2】
前記詰まり解除手段は、
刈取部本体に対して回動可能に設けられて、前記離間用回転輪を回転自在に支持するブラケットと、
前記ブラケットの回動位置を保持することにより、前記離間用回転輪を前記作業位置に保持する保持機構と、
を具備し、
前記ブラケットの回動支点を、前記左下部搬送装置の前記第三合流部よりも搬送上流側に配置する請求項1に記載のコンバインの刈取部。
【請求項3】
前記左下部搬送装置は、
前記コンバインに配置される運転部に対して左右反対側に配置される請求項1又は請求項2に記載のコンバインの刈取部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−152113(P2011−152113A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17395(P2010−17395)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】