コンバインの排気構造
【課題】走行機体の前部に設けられた刈取部と、刈取部の後方に設けられた運転部と、運転部の後方に左右方向に並設された脱穀装置および穀粒を回収する回収部と、運転部の下方に設けられたエンジンからの排気を排出する排気管とを備えたコンバインの排気構造を、排気ガスが運転部のオペレータに向けて移動し難く、且つ、排気管の全体に亘ってワラ屑や泥が堆積し難くする。
【解決手段】排気管XPがエンジン60の排気部67から脱穀装置4と回収部5との間を斜め上向きに通され、脱穀装置4を構成する筐体4Sに支持されている排気構造とした。
【解決手段】排気管XPがエンジン60の排気部67から脱穀装置4と回収部5との間を斜め上向きに通され、脱穀装置4を構成する筐体4Sに支持されている排気構造とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部に設けられた刈取部と、前記刈取部の後方に設けられた運転部と、前記運転部の後方に左右方向に並設された脱穀装置および穀粒を回収する回収部と、前記運転部の下方に設けられたエンジンと、前記エンジンからの排気を排出する排気管とを備えたコンバインの排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコンバインの排気構造に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたコンバインでは、エンジンの排気ガスが運転部のオペレータに向けて移動することを抑制する目的で、排気管の排気出口は脱穀装置の上面に配置されている。
【0003】
また、特許文献1に記されたコンバインでは、排気管は、クローラ式走行装置と平行に前後方向に延設された直線状の前半部と、クローラ式走行装置の後端部付近から斜め上方に向けて延設されたほぼ直線状の後半部とを有し、前半部と後半部との間の屈曲部を、選別ファンによって外気を脱穀装置に導入するダクトに隣接配置しているので、ダクトから導入される外気の一部が、屈曲部の上面を介して脱穀装置内に導入されることで、少なくとも排気管の屈曲部にワラ屑が堆積し難くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206439号公報(0006−0010段落、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記されたコンバインの排気構造では、排気管の前半部が脱穀装置および回収部の下方で水平に延設されているため、同箇所の上面にワラ屑や泥が堆積する虞があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術によるコンバインの排気構造が与える課題に鑑み、エンジンの排気ガスが運転部のオペレータに向けて移動し難く、且つ、排気管の全体に亘ってワラ屑や泥が堆積し難いコンバインの排気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコンバインの排気構造の特徴構成は、
走行機体の前部に設けられた刈取部と、前記刈取部の後方に設けられた運転部と、前記運転部の後方に左右方向に並設された脱穀装置および穀粒を回収する回収部と、前記運転部の下方に設けられたエンジンと、前記エンジンからの排気を排出する排気管とを備えたコンバインの排気構造であって、
前記排気管が、前記エンジンの排気部から前記脱穀装置と前記回収部との間を斜め上向きに通され、前記脱穀装置を構成する筐体に支持されている点にある。
【0008】
上記の特徴構成によるコンバインの排気構造では、排気管がエンジンの排気部から脱穀装置と回収部との間を斜め上向きに通されることで、排気管の排気出口が運転部から離間配置されるため、排気ガスが運転部のオペレータに向けて移動し難いだけでなく、排気管がエンジンの排気部から脱穀装置と回収部との間を斜め上向きに通されているため、排気管がクローラ式走行装置よりも十分に高い位置に配置される点や、排気管の横側に脱穀装置や回収部が配置される点により、排気管の全体に亘ってワラ屑が堆積し難いという効果も得られる。さらに、排気管が、脱穀装置を構成する筐体に支持されているため、排気管が回収部を構成する筐体に支持された構成に比して、回収部を走行機体や脱穀装置に対して縦軸心回りで揺動自在に無理なく構成することができ、脱穀装置と回収部との間に設けられた揚穀装置などに対するメンテナンスの容易なコンバインが得られる。
【0009】
本発明の他の特徴構成は、前記脱穀装置の側面には、脱穀された穀粒を前記回収部に供給するための揚穀装置が設けられており、前記排気管の一部は、前記揚穀装置を脱穀装置の筐体に連結するステーに支持されている点にある。
【0010】
本構成であれば、排気管の一部が、供給筒の一部を脱穀装置の筐体に連結するステーを利用して脱穀装置の筐体に支持されるので、排気管と供給筒の間で少なくとも一つのステーを共用することとなり、排気管を取り付けるための部品数を減少させることができ、また、脱穀装置の側面付近の構造を簡素化できる。
【0011】
本発明の他の特徴構成は、前記排気管は、前記排気管に固定されたブラケットを、前記脱穀装置を構成する筐体に固定されたステーに連結することで支持されており、最も車両後方に配置された前記ブラケットは、車両の幅方向に延設された板状を呈し、前記幅方向に離間配置された複数のボルトによって前記ステーに連結されている点にある。
【0012】
本構成であれば、この最も車両後方に配置されたブラケットの位置では、排気管を脱穀装置の天井部よりも上方に支持する必要がある場合でも、最も車両後方に配置されたブラケットを車両の前後方向に延設された板状とした形態に比して、走行振動などに基づく排気管の横揺れを効果的に抑制できる。
【0013】
本発明の他の特徴構成は、前記脱穀装置の側面には、2番物の穀粒を前記脱穀装置の選別部に還元する還元処理部が外方に突出形成されており、前記排気管は前記還元処理部を上方に迂回するように延設されている点にある。
【0014】
本構成であれば、脱穀装置と回収部との間に挟まれるように還元処理部の上方に位置する狭い空間に排気管を配置することで、コンパクトな構成のコンバインを実現できた。
【0015】
本発明の他の特徴構成は、前記回収部の筐体の側面には、前記脱穀装置の前記還元処理部との干渉を避けるための間隙空間と、前記排気管の通過を許す間隙空間とが連続的に形成されている点にある。
【0016】
本構成であれば、回収部が脱穀装置の還元処理部や排気管と干渉することを回避できると同時に回収部の筐体外形の簡素化が得られ、回収部の内部での穀粒の自然な流下が阻害されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る排気構造を備えたコンバインの左全体側面図である。
【図2】本発明に係る排気構造を備えたコンバインの右全体側面図である。
【図3】本発明に係る排気構造を備えたコンバインの全体平面図である。
【図4】本発明に係る排気構造を主に示す右要部側面図である。
【図5】脱穀装置と回収部の境界付近を示す横断面図である。
【図6】排気管を構成する2つの管部の取り付け構造を示す斜視図である。
【図7】排気管の第1管部を主に示す縦断面図である。
【図8】排気管の第2管部を示す縦断面図である。
【図9】第1管部を示す図7におけるIX−IX断面図である。
【図10】第2管部を示す図8におけるX−X断面図である。
【図11】別実施形態による排気構造を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1および図2に示すコンバインは、本発明に係る排気構造を備えたコンバインの一例である。このコンバインは、一般に自脱形コンバインと呼ばれ、角パイプ材などにより枠状に形成した機体フレーム1を備え、機体フレーム1の下部には左右一対のクローラ式走行装置2が備えられている。また、機体フレーム1の前方および左前部には昇降揺動可能に連結した刈取搬送装置3(刈取部の一例)、刈取搬送装置3の後方には搭乗運転部14(運転部の一例)が備えられている。この搭乗運転部14の下方には原動部6が配置されている。さらに搭乗運転部14の後方には脱穀装置4と、脱穀装置4により脱穀された穀粒を回収する穀粒貯留装置5(回収部の一例)とが左右に並設されている。なお、後述するように、本実施形態では、穀粒貯留装置5はグレンタンク51により構成しているが、袋詰め用のホッパー(図示せず)により構成してもよい。
【0019】
〔機体フレームの構成〕
機体フレーム1上には、図3に示すように、機体フレーム1を構成する左右のメインフレーム(不図示)の両側に振り分けた状態で、左後部に脱穀装置4、右後部に穀粒貯留装置5が搭載されており、右前部には原動部6が設けられている。
機体フレーム1の右後端部には、穀粒貯留装置5の穀粒排出用オーガ52が配設されており、前方側の機体フレーム1上には、エンジン60などを搭載した原動部6が設けられている。
【0020】
〔刈取搬送装置の構成〕
図1、2に示すように、刈取搬送装置3には、伝動ケースを兼ねた筒状の刈取部フレーム26が前下がり傾斜姿勢で接続されている。この刈取部フレーム26の前側端部の間には、筒状の駆動ケース28が横長姿勢で連結されている。また、刈取部フレーム26には、植立穀稈を所定の刈取姿勢に引き起す引起装置21、引き起した植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置22、および、切断した穀稈を脱穀装置4の横外側に備えられたフィードチェーン30の始端部まで搬送する穀稈搬送装置23が連結されている。
【0021】
〔原動部の構成〕
本発明における原動部6では、エンジンマフラー67(排気部の一例)は、機体の左右方向の中央付近上部に備えられており、後述するサイドパネル15bの下方に備えられている。これにより、エンジンマフラー67上にワラ屑等が落下し難くなっている。また、エンジンマフラー67は、エンジン60からの排気を排気管XPに導く排気吐出管67Aを備えている。排気吐出管67Aは斜め後方上方に向けて屈曲した形状に形成されている。
【0022】
〔穀粒排出用オーガの構成〕
図1から3に示すように、グレンタンク51の後方にはグレンタンク51内の穀粒をコンバイン外へ排出するための穀粒排出用オーガ52が設けられている。穀粒排出用オーガ52は、グレンタンク51の底部から穀粒を上向きに搬送する縦筒部分52Aと、縦筒部分52Aの上端にグレンタンク51の揺動中心である縦軸心Y回りで旋回自在に支持された中間部分52Jと、中間部分52Jから横に長く延びた横筒部分52Bとを有する。横筒部分52Bは、中間部分52Jに対して横軸心X回りで起伏揺動自在に構成してある。横筒部分52Bの起伏動作は、縦筒部分52Aと横筒部分52Bとの間に亘って設けた油圧駆動式の伸縮シリンダ5Sによって行われる。穀粒排出用オーガ52の休止状態では、横筒部分52Bの中間部を脱穀装置4の前方に設置されたオーガ受け台52Hの上に支持固定することができる。
【0023】
グレンタンク51の底部には一対の傾斜面51a,51bが互いに対向するように配置され、これらの傾斜面51a,51bどうしが交差する最も深い位置に、第2横送りスクリューSF4が前後向きに延設されている。
グレンタンク51内の穀粒は、先ず、第2横送りスクリューSF4によって後方に送られて、グレンタンク51外の縦筒部分52Aに供給され、引き続き、縦筒部分52Aの内部に配設された第3縦送りスクリューSF5と、横筒部分52Bの内部に配設された第3横送りスクリューSF6とによって穀粒排出用オーガ52から排出されて、コンバインと並走されるトラックの穀粒槽などに移送される。第2横送りスクリューSF4は原動部6からの出力によって回転駆動され、その回転力はべベルギヤを介して第3縦送りスクリューSF5、第3横送りスクリューSF6へと伝達される。
【0024】
〔搭乗運転部の構成〕
図2に示すように、搭乗運転部14には、運転座席14S、フロントパネル15aおよびサイドパネル15bが備えられている。フロントパネル15aには機体の操向操作を行う操向操作レバー18等が備えられている。一方、サイドパネル15bには、機体の前後進変速操作を行う変速レバー17が備えられている。運転座席14Sの背もたれの後方にはエンジン60の吸気室に連通するエアクリーナ62aが配置され、エアクリーナ62aの上方にはプレクリーナ62bが配置されている。
【0025】
左右の各クローラ式走行装置2は、搭乗運転部14に装備した変速レバー17を前後方向に揺動操作することにより、静油圧式無段変速装置(不図示)による無段階の変速操作と前後進の切り換え操作とを行うことができる。また、搭乗運転部14に装備した操向操作レバー18を左右方向に揺動操作することにより、ミッションケース(不図示)内のギヤ式変速装置による直進状態、左右の緩旋回状態、及び左右の急旋回状態の切り換えを行えるように構成されている。
【0026】
刈取部フレーム26には、原動部6からの出力が前記静油圧式無段変速装置による変速を経て伝達される。この動力が複数の引起装置21、バリカン形の刈取装置22、および、穀稈搬送装置23等に伝達される。この動力により、機体の走行に伴って、その前端に装備された複数の分草具24が植立穀稈を分草し、各引起装置21が分草後の植立穀稈を引き起こし、刈取装置22が引き起こされた植立穀稈の株元側を切断し、穀稈搬送装置23が刈取穀稈を起立姿勢から横倒し姿勢に切り換えながら後方の脱穀装置4に向けて搬送する。
【0027】
なお、刈取速度を、前記静油圧式無段変速装置による無段階での変速のみならず、圃場の条件や茎稈の倒伏状況などに応じて大きく変化させたい場合には、前記ミッションケース内に装備させた専用のギヤ変速機構で構成された刈取変速機構(不図示)による高低2段の変速操作で行えるように構成してある。
【0028】
〔脱穀装置とグレンタンクの構成〕
脱穀装置4を構成する主ケーシング4S(筐体の一例)には扱室4Aが設けてあり、この扱室4A内では、フィードチェーン30で株元側を挟持搬送される穀稈の穂先側が、エンジン60からの動力によって前後水平の軸心回りで回転駆動される扱胴41(図4を参照)によって扱き処理される。
扱室4Aにおいて穀稈から分離された処理物は扱室4Aの下部に沿って張設した受網31で選別され、この受網31を漏下した処理物は扱室4Aの下方に配備された選別部4Bの前半部に落下供給されるとともに、受網31を漏下しなかった処理物は扱室4Aの終端の送塵口から搬出されて選別部4Bの前後中間部に落下供給される。
【0029】
選別部4Bに落下供給された処理物は前後に長い揺動選別ケース32で受け止められ、処理物は同揺動選別ケース32によって後方に向けて揺動搬送されながらグレンパンで比重差選別されるとともに、粗選別用のチャフシーブ、精選別用のグレンシーブ、ほぐし用の選別ラック、ストローラック等(いずれも不図示)により篩い選別される。また、選別部前端部に備えた唐箕33から後方上方に向けて流動する選別風が、篩い選別されて落下する処理物に供給されて、処理物に含まれている軽いワラ屑や塵埃が後方に飛散排出されるようになっている。
【0030】
そして、穀粒は1番物として1番回収部34に、2番物は2番回収部36にそれぞれ選別回収され、ストローラックで漏下しないワラ屑が選別部後端の排塵口4Cから外部に排出される。また、1番回収部34に回収された1番物の穀粒は、第1横送りスクリューSF1によって機外にまで横送りされた後、スクリュー式の揚穀装置35によって揚送されてグレンタンク51に供給投入され、2番回収部36に回収された2番物は第2横送りスクリューSF7によって横送りされた後、スクリュー式の還元装置37によって揺動選別ケース32の前部に還元供給されて再選別処理を受ける構成になっている。
【0031】
図5に示すように、揚穀装置35は、機体右側の横外側に起立姿勢で連結固定された搬送筒35Tに第1縦送りスクリューSF2を内装して構成されており、第1縦送りスクリューSF2の下端部と第1横送りスクリューSF1の終端部とが図示しない伝動機構を介して連動連結されている。第1横送りスクリューSF1で送られてきた穀粒は第1縦送りスクリューSF2に受け渡されて揚送され、揚送された穀粒は第1縦送りスクリューSF2の上端に設けられた供給口35Mの回転羽根35F(図4を参照)でグレンタンク51に放出され貯留される。
【0032】
還元装置37は、起立姿勢で連結固定された搬送筒37Tに第2縦送りスクリューSF3を内装して構成されるとともに、搬送筒37Tの上端に揚穀された穀粒を選別部4Bの前部に放出する回転羽根38Bを内蔵した吐出ケース38が連設されている。吐出ケース38は脱穀装置4の主ケーシング4Sの右側壁の外側に位置していて、吐出ケース38の吐出口は前向きに開口している。吐出口に対応する右側壁は、吐出ケース38側程大きく外方に斜めに張り出させた還元用案内板39を備えており、吐出ケース38の吐出口は還元用案内板39の後向き開口端に接続されている。これによって、第2縦送りスクリューSF3によって上方に搬送された2番物は、第2縦送りスクリューSF3の上端の回転羽根38Bによって吐出ケース38から前方に放出され、還元用案内板39に沿って選別部4Bの前部に飛散供給されるようになっている。
【0033】
扱室4Aの後方で選別部4Bの後部上方箇所には横断流ファンからなる排塵ファン40が横架されており、扱室4Aの終端から吹き出てきた浮塵やワラ屑、選別風によって選別部5の後部上方に吹き上げられた浮塵やワラ屑が排塵ファン40に吸引されて強制的に機体後方に排出されるようになっている。なお、この排塵ファン40の上方には排ワラ搬送装置41が配備されており、扱室4Aから搬出されてきた排ワラがフィードチェーン30から排ワラ搬送装置41に受継がれて後方かつ穂先側に向けて斜め搬送され、脱穀装置4の後端上部に連結装備された排ワラカッタ装置54に供給されて細断されるようになっている。
【0034】
排ワラカッタ装置54の上部には、排ワラカッタ装置54の開口54Aを閉鎖可能な蓋体55が電動モータによって揺動自在に設けられている。実線で示すように蓋体55が開放されているときは、排ワラ搬送装置41の後端部まで挟持搬送されてきた排ワラは、開口54Aを介して排ワラカッタ装置54に供給され細断されて下方に落下放出される。他方、蓋体55が閉じられているときは、排ワラ搬送装置41の後端部から落下放出された排ワラは、蓋体55の傾斜した上面に沿って後方の下方に落下放出される。
【0035】
図3に示すように、穀粒貯留装置5を構成するグレンタンク51は、その後部に備えた縦軸心Y周りに、全体がエンジン60の後方に位置する作業位置(実線で示す)と、前部側が機体フレーム1の右外方に張り出してエンジン60の後方や脱穀装置4の右側壁を開放するメンテナンス位置(二点鎖線で示す)とにわたって揺動変位可能に構成されている。グレンタンク51の揺動変位に関わらず揚穀装置35は脱穀装置4側の一定位置に維持されており、グレンタンク51の揺動変位に応じて、揚穀装置35の上端に設けられた穀粒供給口35Mがグレンタンク51に対して接続及び離間される。グレンタンク51は、ロック機構(不図示)によって作業位置及びメンテナンス位置での位置保持が可能に構成されている。
【0036】
尚、揚穀装置35の搬送筒35Tは、脱穀装置4の主ケーシング4Sからグレンタンク51側に離間した位置を上下に延設されているので、グレンタンク51の一側面には、作業位置において揚穀装置35の搬送筒35Tの大半を収納するための上下に延びた溝状の凹部51Vが設けられている。
【0037】
〔排気構造の構成〕
図4などに示すように、排気管XPは、エンジンマフラー67(排気部の一例)の排気吐出管67Aから、機体の左右方向において脱穀装置4とグレンタンク51との間を斜め上向きに通され、脱穀装置4の天井部を超える高さまで直線状に延設された第1管部68と、第1管部68の後端から第1管部68よりも緩い勾配で斜め上向きにやはり直線状に延設された第2管部70とを有する。
また、第1管部68と第2管部70とは側面視で逆V字状となるように配備され、図3に示すように、平面視では、前後方向に略一直線状となるように配備されている。より詳細には、平面視において、第2管部70は、前後方向に延設された第1管部68の後端への接続箇所からやや機体後方右方へ傾斜した状態で配備されている。
第2管部70の全体が、揚穀装置35の供給筒35Tよりも後方で、且つ、脱穀装置4の天井部の高さよりも上方に配置されるように、第1管部68は比較的急な勾配で斜め上向きに延設され、還元装置37の還元用案内板39を上方に十分に迂回した位置を通っている。
【0038】
図5に示すように、グレンタンク51の脱穀装置4と向き合う側面には、脱穀装置4から離間するように引退した凹部51Cが形成されており、グレンタンク51が通常の前記作業位置にあるとき、この凹部51Cによってグレンタンク51と脱穀装置4の間には上下に連続した2つの間隙空間S1,S2が形成される。下方の間隙空間S1は還元用案内板39によって占有されており、間隙空間S1の上方に隣接する間隙空間S2に排気管XPを通してある。
【0039】
第2管部70は全長に亘ってグレンタンク51の天井部51Aの高さよりも下方に配置されている。また、第2管部70の後端に位置する排気出口70Cは、排ワラ処理部8(54)の上方に配置され、平面視におけるコンバインの外形から突出しないように、排ワラカッタ装置54の後端よりも前側に配置されている。
また、図3に示すように、横筒部分52Bをオーガ受け台52Hに支持させた穀粒排出用オーガ52の格納状態では、平面視において、第2管部70の大半が、穀粒排出用オーガ52の横筒部分52Bと重なり合った状態となる。
【0040】
第1管部68は、比較的小径の第1内管68Aと、第1内管68Aの長さの大半を外周からカバーする第1外管68Bとを有する。同様に、第2管部70も、比較的小径の第2内管70Aと、第2内管70Aの長さの大半を外周から覆う第2外管70Bとを有する。図9及び図10に示すように、第1外管68Bは第1内管68Aに対して全周に亘ってほぼ均等に離間配置され、第2外管70Bも第2内管70Aに対して全周に亘ってほぼ均等に離間配置されている。
【0041】
第1内管68Aの前端にはエンジン60に近接するほど大径となる第1漏斗状部68Rが設けられている。第1内管68Aの後端には、第1内管69Aよりも緩い勾配で斜め上向きに延設された短い連設補助管68Fが溶接されている。
【0042】
排気吐出管67Aの後端と、第1内管68Aの第1漏斗状部68Rの前端とは、排気管XPの軸心に沿って部分的に互いにオーバーラップするように配置されている。このオーバーラップ箇所において、排気吐出管67Aの後端と第1漏斗状部68Rの前端との間に形成された環状の間隙は、排気管XP内に発生する負圧に基づくエジェクタ効果で外気を第1内管68Aの内部に導入する第1導入部E1を構成している。
【0043】
第2内管70Aの前端部にもエンジン60に近接するほど大径となる第2漏斗状部70Rが設けられている。第2漏斗状部70Rの前端と第1管部68の連設補助管68Fとは排気管XPの軸心に沿って互いにオーバーラップするように配置されている。このオーバーラップ箇所(連設部の一例)において、第1管部68の後端すなわち連設補助管68Fと第2管部70の前端である第2漏斗状部70Rの前部との間に形成された環状の間隙は、排気管XP内に発生する負圧に基づいて外気を第2内管70Aの内部に導入する第2導入部E2を構成している。
【0044】
第1外管68Bの前端は、第1内管69Aから延設された第1漏斗状部68Rの外周面の一部に溶接されている。他方、第1外管68Bの後端は、第1内管69Aの後端付近の外周から径方向外向きに溶接されたブラケット68Jの前面に溶接されている。
第2外管70Bの前端は、第2内管70Aから延設された第2漏斗状部70Rの外周面の一部に溶接されている。第2外管70Bの後端は、第2内管70Aの後端付近の外周から径方向外向きに溶接されたブラケット70Jの前面などに外周面に溶接されている。
【0045】
エンジンマフラー67の排気吐出管67Aと第1管部68とは略直線状に連設されており、第2管部70の軸心も第1管部68の軸心に対して45°以下の比較的小さな角度で交差しているので、エンジンマフラー67からの排気は排気管XP内をスムーズに流れ、排気管XPに局所的な温度上昇を生じさせることがない。
【0046】
また、上記のように第1導入部E1および第2導入部E2を設けることにより、第1導入部E1および第2導入部E2に設けられた環状の間隙から排気管XPに外気が吸入され、排気温度を低下させることができる。
特に、第2導入部E2は、脱穀装置4とグレンタンク51とで挟まれた閉鎖的な空間にではなく、脱穀装置4の天井部よりも上方の空間に位置するので、比較的低温の外気が第2管部70の第2内管70Aに導入される。
【0047】
第1管部68と第2管部70とには保護カバー72,73が各々設けられている。保護カバー72,73は、第1管部68と第2管部70が周囲の空気によって放冷されるのを妨げないように、多数の丸孔がパンチングメタル状に貫通形成され、第1外管68B及び第2外管70Bの外周面に溶接されたブラケット72B,73Bにボルトナットなどで取り付けられている。
【0048】
各保護カバー72,73は、断面が円弧状で全体として樋状を呈し、第1管部68と第2管部70の外周面のうちの約半分、すなわちグレンタンク51と面する領域を覆うように取り付けられている。したがって、オペレータがグレンタンク51をメンテナンス位置に揺動操作すると、脱穀装置4の右側壁と共に排気管XPが開放されるが、オペレータからは排気管XPがほぼ全長に亘って保護カバー72,73で覆われた状態となる。但し、排気管XPは、上下方向に延設された揚穀装置35と脱穀装置4の右側壁との間隙を通っており、この揚穀装置35の背後に相当する箇所では保護カバー72が省略されている。
【0049】
保護カバー72,73は、第1内管68Aと第1外管68Bの間の間隔や第2内管70Aと第2外管70Bの間の間隔を超える距離で、第1外管68B及び第2外管70Bの外周面とから離間配置されている。尚、保護カバー72,73はパンチングメタル状に限らず、例えばメッシュ状としてもよい。
【0050】
排気管XPは、グレンタンク51と脱穀装置4の双方の側面から概して等距離となるように支持されている。グレンタンク51を、縦軸心Y周りに作業位置とメンテナンス位置との間で自由に揺動操作できる構成とするため、排気管XPはグレンタンク51ではなく脱穀装置4の側面に支持されている。より具体的には、排気管XPは脱穀装置4の側面に固定された4つのステー80A,78A,80B,80Cを介して支持されている。
【0051】
さらに具体的には、排気管XPの第1管部68の前部については、第1外管68Bの前端に溶接された板状の小さめの第1ブラケット82Aを、脱穀装置4の側面の前端にネジ固定された断面がL字状の第1ステー80Aの垂直面にネジVで締め付けることで固定されている。尚、排気吐出管67Aの後端の位置変動に応じて第1管部68の前端付近の位置を微調整可能なように、第1ブラケット82AにはネジVの雄ネジ部の外径を十分に上回る内径の2つの貫通孔Hが上下に並置されている。
【0052】
第1管部68の後部については、第1外管68Bに溶接された板状の小さめの第2ブラケット82Bを、断面がL字状の補助ブラケット82Cにネジ固定し、この補助ブラケット82Cを、揚穀装置35の一部を脱穀装置4の側面に取り付けている2つのステー78A,78Bのうちの前側の第2ステー78Aの中間付近の垂直面にネジ固定している。第2ステー78Aに設けられた2つの取り付け用の貫通孔も上下に並置されている。
【0053】
第2管部70の前部については、第2外管70Bの前端に溶接された断面がL字状の大きめの第3ブラケット82Dを、脱穀装置4の側面にネジ固定された断面がL字状の第3ステー80Bの水平面にネジ固定されている。第3ステー80Bに設けられた2つの取り付け用の貫通孔は、コンバインの進行方向に沿って前後に並置されている。
【0054】
第2管部70の後部については、第2外管70Bの長手方向の中間付近に溶接された断面がL字状の大きめの第4ブラケット82Eを、脱穀装置4の側面に溶接され、断面が下に開いたコ字状の第4ステー80Cの水平面にネジ固定されている。第4ステー80Cに設けられた2つの取り付け用の貫通孔は、コンバインの進行方向と交差する横向きに並置されている。
【0055】
〔別実施形態〕
〈1〉上記の実施形態では、直線状の第1管部68と第2管部70とが側面視で互いに異なる勾配で斜め上向きに延設されることで、両管部68,70の間に一つの屈曲した継ぎ目部を含むように延設されている。しかし、本発明はこのような形態に限らず、第1管部68の途中に更なる継ぎ目を設けることで、全体として3つの直線状の管部で構成し、3つの直線状の管部が側面視で互いに全て異なる勾配またはいずれか同士が同じ勾配で斜め上向きに延設される構成にしてもよい。この場合、新たな継ぎ目に導入部を設けることが可能であるが、必須ではない。
【0056】
〈2〉また、斜め上向きに延設された第1管部68に対して、第2管部70が側面視で傾斜せずに前後向きに延設された構成や、第2管部70が側面視で斜め下向きに延設された構成としてもよい。
【0057】
〈3〉また、排気管XPが、エンジン60の排気部から排ワラ処理部8の上方に配置されている同排気管XPの排気出口70Cまで、屈曲部を含むことなく側面視で一定の勾配で一直線状に延設されることで、脱穀装置4と回収部5との間を斜め上向きに通された形態で実施することも可能である。
【0058】
〈4〉また、排気管XPが、エンジン60の排気部から排ワラ処理部8の上方に配置されている同排気管XPの排気出口70Cまで側面視で斜め上方に上側に凸または下側に凸に湾曲状に延設されることで、脱穀装置4と回収部5との間を斜め上向きに通された形態で実施することも可能である。この場合、排気管XPがほぼ全長に亘って湾曲状に延設された形態でもよいが、直線状に延びた第1管部68と第3管部とが湾曲状の第2管部によって接続された形態としてもよい。
【0059】
〈5〉また、直線状の第1管部68と第2管部70とが、平面視で前後向きに又は斜め前後向きに一直線状に配備された構成や、第2管部70が平面視で第1管部68の後端への接続箇所から機体後方左方に傾斜した状態で配備された構成でもよい。
【0060】
〈6〉排気管XPを以上に例示したどの形態で設置する場合も、長手方向に沿って数本の管部に分割することが可能であるが、分割せず単一の管としてもよい。また、分割する場合、中間の継ぎ目部の全て或いは一部に導入部を設けてもよいが、継ぎ目部には導入部を設けない形態で実施することも可能である。
【0061】
〈7〉図11に例示するように、上記の実施形態で記載した第2管部70の部位が省略され、排気管XPが第1管部68のみで構成された形態で実施することも可能である。この場合、排気管XPはエンジンマフラー67(排気部)から脱穀装置4と回収部5との間を斜め上向きに通され、排気出口68Cは脱穀装置4の天井部よりも上方で開口している。ここでも、排気管XP(68)は脱穀装置4を構成する筐体4Sに支持されている。より具体的には、排気管XP(68)は、筐体4Sに固定された第1及び第2ステー80A,78A、並びに、第1管部68に取り付けられた第1及び第2ブラケット82A,82B、補助ブラケット82Cによって筐体4Sに支持されている。排気管XP(68)のうち、脱穀装置4の天井部よりも上方に延びた部位は、揚穀装置35の搬送筒35Tと筐体4Sとの間に位置しており、カバー72は同部位を除く箇所を覆っている。
【0062】
〈8〉排ワラカッタ装置54などの排ワラ処理部8を有さないコンバインの形態で実施することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
走行機体の前部に設けられた刈取部と、刈取部の後方に設けられた運転部と、運転部の後方に左右方向に並設された脱穀装置および穀粒回収部と、脱穀装置の後方に設けられた排ワラ処理部と、運転部の下方に設けられたエンジンからの排気を排出する排気管とを備えたコンバインの改良された排気構造として、自脱型及び普通型の双方のコンバインに利用できる。
【符号の説明】
【0064】
E2 第2導入部
S1 間隙空間
S2 間隙空間
XP 排気管
1 機体フレーム(走行機体)
3 刈取搬送装置(刈取部)
4 脱穀装置
4S 主ケーシング(筐体)
5 穀粒貯留装置(回収部)
14 搭乗運転部(運転部)
35 揚穀装置
39 還元用案内板(還元処理部)
51 グレンタンク(回収部)
60 エンジン
67 エンジンマフラー(排気部)
67A 排気吐出管(排気部)
68 第1管部(排気管)
70 第2管部(排気管)
80C 第4ステー(ステー)
80C 第4ステー(ステー)
82A 第1ブラケット(ブラケット)
82B 第2ブラケット(ブラケット)
82D 第3ブラケット(ブラケット)
82E 第4ブラケット(ブラケット)
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部に設けられた刈取部と、前記刈取部の後方に設けられた運転部と、前記運転部の後方に左右方向に並設された脱穀装置および穀粒を回収する回収部と、前記運転部の下方に設けられたエンジンと、前記エンジンからの排気を排出する排気管とを備えたコンバインの排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコンバインの排気構造に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたコンバインでは、エンジンの排気ガスが運転部のオペレータに向けて移動することを抑制する目的で、排気管の排気出口は脱穀装置の上面に配置されている。
【0003】
また、特許文献1に記されたコンバインでは、排気管は、クローラ式走行装置と平行に前後方向に延設された直線状の前半部と、クローラ式走行装置の後端部付近から斜め上方に向けて延設されたほぼ直線状の後半部とを有し、前半部と後半部との間の屈曲部を、選別ファンによって外気を脱穀装置に導入するダクトに隣接配置しているので、ダクトから導入される外気の一部が、屈曲部の上面を介して脱穀装置内に導入されることで、少なくとも排気管の屈曲部にワラ屑が堆積し難くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206439号公報(0006−0010段落、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記されたコンバインの排気構造では、排気管の前半部が脱穀装置および回収部の下方で水平に延設されているため、同箇所の上面にワラ屑や泥が堆積する虞があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術によるコンバインの排気構造が与える課題に鑑み、エンジンの排気ガスが運転部のオペレータに向けて移動し難く、且つ、排気管の全体に亘ってワラ屑や泥が堆積し難いコンバインの排気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコンバインの排気構造の特徴構成は、
走行機体の前部に設けられた刈取部と、前記刈取部の後方に設けられた運転部と、前記運転部の後方に左右方向に並設された脱穀装置および穀粒を回収する回収部と、前記運転部の下方に設けられたエンジンと、前記エンジンからの排気を排出する排気管とを備えたコンバインの排気構造であって、
前記排気管が、前記エンジンの排気部から前記脱穀装置と前記回収部との間を斜め上向きに通され、前記脱穀装置を構成する筐体に支持されている点にある。
【0008】
上記の特徴構成によるコンバインの排気構造では、排気管がエンジンの排気部から脱穀装置と回収部との間を斜め上向きに通されることで、排気管の排気出口が運転部から離間配置されるため、排気ガスが運転部のオペレータに向けて移動し難いだけでなく、排気管がエンジンの排気部から脱穀装置と回収部との間を斜め上向きに通されているため、排気管がクローラ式走行装置よりも十分に高い位置に配置される点や、排気管の横側に脱穀装置や回収部が配置される点により、排気管の全体に亘ってワラ屑が堆積し難いという効果も得られる。さらに、排気管が、脱穀装置を構成する筐体に支持されているため、排気管が回収部を構成する筐体に支持された構成に比して、回収部を走行機体や脱穀装置に対して縦軸心回りで揺動自在に無理なく構成することができ、脱穀装置と回収部との間に設けられた揚穀装置などに対するメンテナンスの容易なコンバインが得られる。
【0009】
本発明の他の特徴構成は、前記脱穀装置の側面には、脱穀された穀粒を前記回収部に供給するための揚穀装置が設けられており、前記排気管の一部は、前記揚穀装置を脱穀装置の筐体に連結するステーに支持されている点にある。
【0010】
本構成であれば、排気管の一部が、供給筒の一部を脱穀装置の筐体に連結するステーを利用して脱穀装置の筐体に支持されるので、排気管と供給筒の間で少なくとも一つのステーを共用することとなり、排気管を取り付けるための部品数を減少させることができ、また、脱穀装置の側面付近の構造を簡素化できる。
【0011】
本発明の他の特徴構成は、前記排気管は、前記排気管に固定されたブラケットを、前記脱穀装置を構成する筐体に固定されたステーに連結することで支持されており、最も車両後方に配置された前記ブラケットは、車両の幅方向に延設された板状を呈し、前記幅方向に離間配置された複数のボルトによって前記ステーに連結されている点にある。
【0012】
本構成であれば、この最も車両後方に配置されたブラケットの位置では、排気管を脱穀装置の天井部よりも上方に支持する必要がある場合でも、最も車両後方に配置されたブラケットを車両の前後方向に延設された板状とした形態に比して、走行振動などに基づく排気管の横揺れを効果的に抑制できる。
【0013】
本発明の他の特徴構成は、前記脱穀装置の側面には、2番物の穀粒を前記脱穀装置の選別部に還元する還元処理部が外方に突出形成されており、前記排気管は前記還元処理部を上方に迂回するように延設されている点にある。
【0014】
本構成であれば、脱穀装置と回収部との間に挟まれるように還元処理部の上方に位置する狭い空間に排気管を配置することで、コンパクトな構成のコンバインを実現できた。
【0015】
本発明の他の特徴構成は、前記回収部の筐体の側面には、前記脱穀装置の前記還元処理部との干渉を避けるための間隙空間と、前記排気管の通過を許す間隙空間とが連続的に形成されている点にある。
【0016】
本構成であれば、回収部が脱穀装置の還元処理部や排気管と干渉することを回避できると同時に回収部の筐体外形の簡素化が得られ、回収部の内部での穀粒の自然な流下が阻害されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る排気構造を備えたコンバインの左全体側面図である。
【図2】本発明に係る排気構造を備えたコンバインの右全体側面図である。
【図3】本発明に係る排気構造を備えたコンバインの全体平面図である。
【図4】本発明に係る排気構造を主に示す右要部側面図である。
【図5】脱穀装置と回収部の境界付近を示す横断面図である。
【図6】排気管を構成する2つの管部の取り付け構造を示す斜視図である。
【図7】排気管の第1管部を主に示す縦断面図である。
【図8】排気管の第2管部を示す縦断面図である。
【図9】第1管部を示す図7におけるIX−IX断面図である。
【図10】第2管部を示す図8におけるX−X断面図である。
【図11】別実施形態による排気構造を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1および図2に示すコンバインは、本発明に係る排気構造を備えたコンバインの一例である。このコンバインは、一般に自脱形コンバインと呼ばれ、角パイプ材などにより枠状に形成した機体フレーム1を備え、機体フレーム1の下部には左右一対のクローラ式走行装置2が備えられている。また、機体フレーム1の前方および左前部には昇降揺動可能に連結した刈取搬送装置3(刈取部の一例)、刈取搬送装置3の後方には搭乗運転部14(運転部の一例)が備えられている。この搭乗運転部14の下方には原動部6が配置されている。さらに搭乗運転部14の後方には脱穀装置4と、脱穀装置4により脱穀された穀粒を回収する穀粒貯留装置5(回収部の一例)とが左右に並設されている。なお、後述するように、本実施形態では、穀粒貯留装置5はグレンタンク51により構成しているが、袋詰め用のホッパー(図示せず)により構成してもよい。
【0019】
〔機体フレームの構成〕
機体フレーム1上には、図3に示すように、機体フレーム1を構成する左右のメインフレーム(不図示)の両側に振り分けた状態で、左後部に脱穀装置4、右後部に穀粒貯留装置5が搭載されており、右前部には原動部6が設けられている。
機体フレーム1の右後端部には、穀粒貯留装置5の穀粒排出用オーガ52が配設されており、前方側の機体フレーム1上には、エンジン60などを搭載した原動部6が設けられている。
【0020】
〔刈取搬送装置の構成〕
図1、2に示すように、刈取搬送装置3には、伝動ケースを兼ねた筒状の刈取部フレーム26が前下がり傾斜姿勢で接続されている。この刈取部フレーム26の前側端部の間には、筒状の駆動ケース28が横長姿勢で連結されている。また、刈取部フレーム26には、植立穀稈を所定の刈取姿勢に引き起す引起装置21、引き起した植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置22、および、切断した穀稈を脱穀装置4の横外側に備えられたフィードチェーン30の始端部まで搬送する穀稈搬送装置23が連結されている。
【0021】
〔原動部の構成〕
本発明における原動部6では、エンジンマフラー67(排気部の一例)は、機体の左右方向の中央付近上部に備えられており、後述するサイドパネル15bの下方に備えられている。これにより、エンジンマフラー67上にワラ屑等が落下し難くなっている。また、エンジンマフラー67は、エンジン60からの排気を排気管XPに導く排気吐出管67Aを備えている。排気吐出管67Aは斜め後方上方に向けて屈曲した形状に形成されている。
【0022】
〔穀粒排出用オーガの構成〕
図1から3に示すように、グレンタンク51の後方にはグレンタンク51内の穀粒をコンバイン外へ排出するための穀粒排出用オーガ52が設けられている。穀粒排出用オーガ52は、グレンタンク51の底部から穀粒を上向きに搬送する縦筒部分52Aと、縦筒部分52Aの上端にグレンタンク51の揺動中心である縦軸心Y回りで旋回自在に支持された中間部分52Jと、中間部分52Jから横に長く延びた横筒部分52Bとを有する。横筒部分52Bは、中間部分52Jに対して横軸心X回りで起伏揺動自在に構成してある。横筒部分52Bの起伏動作は、縦筒部分52Aと横筒部分52Bとの間に亘って設けた油圧駆動式の伸縮シリンダ5Sによって行われる。穀粒排出用オーガ52の休止状態では、横筒部分52Bの中間部を脱穀装置4の前方に設置されたオーガ受け台52Hの上に支持固定することができる。
【0023】
グレンタンク51の底部には一対の傾斜面51a,51bが互いに対向するように配置され、これらの傾斜面51a,51bどうしが交差する最も深い位置に、第2横送りスクリューSF4が前後向きに延設されている。
グレンタンク51内の穀粒は、先ず、第2横送りスクリューSF4によって後方に送られて、グレンタンク51外の縦筒部分52Aに供給され、引き続き、縦筒部分52Aの内部に配設された第3縦送りスクリューSF5と、横筒部分52Bの内部に配設された第3横送りスクリューSF6とによって穀粒排出用オーガ52から排出されて、コンバインと並走されるトラックの穀粒槽などに移送される。第2横送りスクリューSF4は原動部6からの出力によって回転駆動され、その回転力はべベルギヤを介して第3縦送りスクリューSF5、第3横送りスクリューSF6へと伝達される。
【0024】
〔搭乗運転部の構成〕
図2に示すように、搭乗運転部14には、運転座席14S、フロントパネル15aおよびサイドパネル15bが備えられている。フロントパネル15aには機体の操向操作を行う操向操作レバー18等が備えられている。一方、サイドパネル15bには、機体の前後進変速操作を行う変速レバー17が備えられている。運転座席14Sの背もたれの後方にはエンジン60の吸気室に連通するエアクリーナ62aが配置され、エアクリーナ62aの上方にはプレクリーナ62bが配置されている。
【0025】
左右の各クローラ式走行装置2は、搭乗運転部14に装備した変速レバー17を前後方向に揺動操作することにより、静油圧式無段変速装置(不図示)による無段階の変速操作と前後進の切り換え操作とを行うことができる。また、搭乗運転部14に装備した操向操作レバー18を左右方向に揺動操作することにより、ミッションケース(不図示)内のギヤ式変速装置による直進状態、左右の緩旋回状態、及び左右の急旋回状態の切り換えを行えるように構成されている。
【0026】
刈取部フレーム26には、原動部6からの出力が前記静油圧式無段変速装置による変速を経て伝達される。この動力が複数の引起装置21、バリカン形の刈取装置22、および、穀稈搬送装置23等に伝達される。この動力により、機体の走行に伴って、その前端に装備された複数の分草具24が植立穀稈を分草し、各引起装置21が分草後の植立穀稈を引き起こし、刈取装置22が引き起こされた植立穀稈の株元側を切断し、穀稈搬送装置23が刈取穀稈を起立姿勢から横倒し姿勢に切り換えながら後方の脱穀装置4に向けて搬送する。
【0027】
なお、刈取速度を、前記静油圧式無段変速装置による無段階での変速のみならず、圃場の条件や茎稈の倒伏状況などに応じて大きく変化させたい場合には、前記ミッションケース内に装備させた専用のギヤ変速機構で構成された刈取変速機構(不図示)による高低2段の変速操作で行えるように構成してある。
【0028】
〔脱穀装置とグレンタンクの構成〕
脱穀装置4を構成する主ケーシング4S(筐体の一例)には扱室4Aが設けてあり、この扱室4A内では、フィードチェーン30で株元側を挟持搬送される穀稈の穂先側が、エンジン60からの動力によって前後水平の軸心回りで回転駆動される扱胴41(図4を参照)によって扱き処理される。
扱室4Aにおいて穀稈から分離された処理物は扱室4Aの下部に沿って張設した受網31で選別され、この受網31を漏下した処理物は扱室4Aの下方に配備された選別部4Bの前半部に落下供給されるとともに、受網31を漏下しなかった処理物は扱室4Aの終端の送塵口から搬出されて選別部4Bの前後中間部に落下供給される。
【0029】
選別部4Bに落下供給された処理物は前後に長い揺動選別ケース32で受け止められ、処理物は同揺動選別ケース32によって後方に向けて揺動搬送されながらグレンパンで比重差選別されるとともに、粗選別用のチャフシーブ、精選別用のグレンシーブ、ほぐし用の選別ラック、ストローラック等(いずれも不図示)により篩い選別される。また、選別部前端部に備えた唐箕33から後方上方に向けて流動する選別風が、篩い選別されて落下する処理物に供給されて、処理物に含まれている軽いワラ屑や塵埃が後方に飛散排出されるようになっている。
【0030】
そして、穀粒は1番物として1番回収部34に、2番物は2番回収部36にそれぞれ選別回収され、ストローラックで漏下しないワラ屑が選別部後端の排塵口4Cから外部に排出される。また、1番回収部34に回収された1番物の穀粒は、第1横送りスクリューSF1によって機外にまで横送りされた後、スクリュー式の揚穀装置35によって揚送されてグレンタンク51に供給投入され、2番回収部36に回収された2番物は第2横送りスクリューSF7によって横送りされた後、スクリュー式の還元装置37によって揺動選別ケース32の前部に還元供給されて再選別処理を受ける構成になっている。
【0031】
図5に示すように、揚穀装置35は、機体右側の横外側に起立姿勢で連結固定された搬送筒35Tに第1縦送りスクリューSF2を内装して構成されており、第1縦送りスクリューSF2の下端部と第1横送りスクリューSF1の終端部とが図示しない伝動機構を介して連動連結されている。第1横送りスクリューSF1で送られてきた穀粒は第1縦送りスクリューSF2に受け渡されて揚送され、揚送された穀粒は第1縦送りスクリューSF2の上端に設けられた供給口35Mの回転羽根35F(図4を参照)でグレンタンク51に放出され貯留される。
【0032】
還元装置37は、起立姿勢で連結固定された搬送筒37Tに第2縦送りスクリューSF3を内装して構成されるとともに、搬送筒37Tの上端に揚穀された穀粒を選別部4Bの前部に放出する回転羽根38Bを内蔵した吐出ケース38が連設されている。吐出ケース38は脱穀装置4の主ケーシング4Sの右側壁の外側に位置していて、吐出ケース38の吐出口は前向きに開口している。吐出口に対応する右側壁は、吐出ケース38側程大きく外方に斜めに張り出させた還元用案内板39を備えており、吐出ケース38の吐出口は還元用案内板39の後向き開口端に接続されている。これによって、第2縦送りスクリューSF3によって上方に搬送された2番物は、第2縦送りスクリューSF3の上端の回転羽根38Bによって吐出ケース38から前方に放出され、還元用案内板39に沿って選別部4Bの前部に飛散供給されるようになっている。
【0033】
扱室4Aの後方で選別部4Bの後部上方箇所には横断流ファンからなる排塵ファン40が横架されており、扱室4Aの終端から吹き出てきた浮塵やワラ屑、選別風によって選別部5の後部上方に吹き上げられた浮塵やワラ屑が排塵ファン40に吸引されて強制的に機体後方に排出されるようになっている。なお、この排塵ファン40の上方には排ワラ搬送装置41が配備されており、扱室4Aから搬出されてきた排ワラがフィードチェーン30から排ワラ搬送装置41に受継がれて後方かつ穂先側に向けて斜め搬送され、脱穀装置4の後端上部に連結装備された排ワラカッタ装置54に供給されて細断されるようになっている。
【0034】
排ワラカッタ装置54の上部には、排ワラカッタ装置54の開口54Aを閉鎖可能な蓋体55が電動モータによって揺動自在に設けられている。実線で示すように蓋体55が開放されているときは、排ワラ搬送装置41の後端部まで挟持搬送されてきた排ワラは、開口54Aを介して排ワラカッタ装置54に供給され細断されて下方に落下放出される。他方、蓋体55が閉じられているときは、排ワラ搬送装置41の後端部から落下放出された排ワラは、蓋体55の傾斜した上面に沿って後方の下方に落下放出される。
【0035】
図3に示すように、穀粒貯留装置5を構成するグレンタンク51は、その後部に備えた縦軸心Y周りに、全体がエンジン60の後方に位置する作業位置(実線で示す)と、前部側が機体フレーム1の右外方に張り出してエンジン60の後方や脱穀装置4の右側壁を開放するメンテナンス位置(二点鎖線で示す)とにわたって揺動変位可能に構成されている。グレンタンク51の揺動変位に関わらず揚穀装置35は脱穀装置4側の一定位置に維持されており、グレンタンク51の揺動変位に応じて、揚穀装置35の上端に設けられた穀粒供給口35Mがグレンタンク51に対して接続及び離間される。グレンタンク51は、ロック機構(不図示)によって作業位置及びメンテナンス位置での位置保持が可能に構成されている。
【0036】
尚、揚穀装置35の搬送筒35Tは、脱穀装置4の主ケーシング4Sからグレンタンク51側に離間した位置を上下に延設されているので、グレンタンク51の一側面には、作業位置において揚穀装置35の搬送筒35Tの大半を収納するための上下に延びた溝状の凹部51Vが設けられている。
【0037】
〔排気構造の構成〕
図4などに示すように、排気管XPは、エンジンマフラー67(排気部の一例)の排気吐出管67Aから、機体の左右方向において脱穀装置4とグレンタンク51との間を斜め上向きに通され、脱穀装置4の天井部を超える高さまで直線状に延設された第1管部68と、第1管部68の後端から第1管部68よりも緩い勾配で斜め上向きにやはり直線状に延設された第2管部70とを有する。
また、第1管部68と第2管部70とは側面視で逆V字状となるように配備され、図3に示すように、平面視では、前後方向に略一直線状となるように配備されている。より詳細には、平面視において、第2管部70は、前後方向に延設された第1管部68の後端への接続箇所からやや機体後方右方へ傾斜した状態で配備されている。
第2管部70の全体が、揚穀装置35の供給筒35Tよりも後方で、且つ、脱穀装置4の天井部の高さよりも上方に配置されるように、第1管部68は比較的急な勾配で斜め上向きに延設され、還元装置37の還元用案内板39を上方に十分に迂回した位置を通っている。
【0038】
図5に示すように、グレンタンク51の脱穀装置4と向き合う側面には、脱穀装置4から離間するように引退した凹部51Cが形成されており、グレンタンク51が通常の前記作業位置にあるとき、この凹部51Cによってグレンタンク51と脱穀装置4の間には上下に連続した2つの間隙空間S1,S2が形成される。下方の間隙空間S1は還元用案内板39によって占有されており、間隙空間S1の上方に隣接する間隙空間S2に排気管XPを通してある。
【0039】
第2管部70は全長に亘ってグレンタンク51の天井部51Aの高さよりも下方に配置されている。また、第2管部70の後端に位置する排気出口70Cは、排ワラ処理部8(54)の上方に配置され、平面視におけるコンバインの外形から突出しないように、排ワラカッタ装置54の後端よりも前側に配置されている。
また、図3に示すように、横筒部分52Bをオーガ受け台52Hに支持させた穀粒排出用オーガ52の格納状態では、平面視において、第2管部70の大半が、穀粒排出用オーガ52の横筒部分52Bと重なり合った状態となる。
【0040】
第1管部68は、比較的小径の第1内管68Aと、第1内管68Aの長さの大半を外周からカバーする第1外管68Bとを有する。同様に、第2管部70も、比較的小径の第2内管70Aと、第2内管70Aの長さの大半を外周から覆う第2外管70Bとを有する。図9及び図10に示すように、第1外管68Bは第1内管68Aに対して全周に亘ってほぼ均等に離間配置され、第2外管70Bも第2内管70Aに対して全周に亘ってほぼ均等に離間配置されている。
【0041】
第1内管68Aの前端にはエンジン60に近接するほど大径となる第1漏斗状部68Rが設けられている。第1内管68Aの後端には、第1内管69Aよりも緩い勾配で斜め上向きに延設された短い連設補助管68Fが溶接されている。
【0042】
排気吐出管67Aの後端と、第1内管68Aの第1漏斗状部68Rの前端とは、排気管XPの軸心に沿って部分的に互いにオーバーラップするように配置されている。このオーバーラップ箇所において、排気吐出管67Aの後端と第1漏斗状部68Rの前端との間に形成された環状の間隙は、排気管XP内に発生する負圧に基づくエジェクタ効果で外気を第1内管68Aの内部に導入する第1導入部E1を構成している。
【0043】
第2内管70Aの前端部にもエンジン60に近接するほど大径となる第2漏斗状部70Rが設けられている。第2漏斗状部70Rの前端と第1管部68の連設補助管68Fとは排気管XPの軸心に沿って互いにオーバーラップするように配置されている。このオーバーラップ箇所(連設部の一例)において、第1管部68の後端すなわち連設補助管68Fと第2管部70の前端である第2漏斗状部70Rの前部との間に形成された環状の間隙は、排気管XP内に発生する負圧に基づいて外気を第2内管70Aの内部に導入する第2導入部E2を構成している。
【0044】
第1外管68Bの前端は、第1内管69Aから延設された第1漏斗状部68Rの外周面の一部に溶接されている。他方、第1外管68Bの後端は、第1内管69Aの後端付近の外周から径方向外向きに溶接されたブラケット68Jの前面に溶接されている。
第2外管70Bの前端は、第2内管70Aから延設された第2漏斗状部70Rの外周面の一部に溶接されている。第2外管70Bの後端は、第2内管70Aの後端付近の外周から径方向外向きに溶接されたブラケット70Jの前面などに外周面に溶接されている。
【0045】
エンジンマフラー67の排気吐出管67Aと第1管部68とは略直線状に連設されており、第2管部70の軸心も第1管部68の軸心に対して45°以下の比較的小さな角度で交差しているので、エンジンマフラー67からの排気は排気管XP内をスムーズに流れ、排気管XPに局所的な温度上昇を生じさせることがない。
【0046】
また、上記のように第1導入部E1および第2導入部E2を設けることにより、第1導入部E1および第2導入部E2に設けられた環状の間隙から排気管XPに外気が吸入され、排気温度を低下させることができる。
特に、第2導入部E2は、脱穀装置4とグレンタンク51とで挟まれた閉鎖的な空間にではなく、脱穀装置4の天井部よりも上方の空間に位置するので、比較的低温の外気が第2管部70の第2内管70Aに導入される。
【0047】
第1管部68と第2管部70とには保護カバー72,73が各々設けられている。保護カバー72,73は、第1管部68と第2管部70が周囲の空気によって放冷されるのを妨げないように、多数の丸孔がパンチングメタル状に貫通形成され、第1外管68B及び第2外管70Bの外周面に溶接されたブラケット72B,73Bにボルトナットなどで取り付けられている。
【0048】
各保護カバー72,73は、断面が円弧状で全体として樋状を呈し、第1管部68と第2管部70の外周面のうちの約半分、すなわちグレンタンク51と面する領域を覆うように取り付けられている。したがって、オペレータがグレンタンク51をメンテナンス位置に揺動操作すると、脱穀装置4の右側壁と共に排気管XPが開放されるが、オペレータからは排気管XPがほぼ全長に亘って保護カバー72,73で覆われた状態となる。但し、排気管XPは、上下方向に延設された揚穀装置35と脱穀装置4の右側壁との間隙を通っており、この揚穀装置35の背後に相当する箇所では保護カバー72が省略されている。
【0049】
保護カバー72,73は、第1内管68Aと第1外管68Bの間の間隔や第2内管70Aと第2外管70Bの間の間隔を超える距離で、第1外管68B及び第2外管70Bの外周面とから離間配置されている。尚、保護カバー72,73はパンチングメタル状に限らず、例えばメッシュ状としてもよい。
【0050】
排気管XPは、グレンタンク51と脱穀装置4の双方の側面から概して等距離となるように支持されている。グレンタンク51を、縦軸心Y周りに作業位置とメンテナンス位置との間で自由に揺動操作できる構成とするため、排気管XPはグレンタンク51ではなく脱穀装置4の側面に支持されている。より具体的には、排気管XPは脱穀装置4の側面に固定された4つのステー80A,78A,80B,80Cを介して支持されている。
【0051】
さらに具体的には、排気管XPの第1管部68の前部については、第1外管68Bの前端に溶接された板状の小さめの第1ブラケット82Aを、脱穀装置4の側面の前端にネジ固定された断面がL字状の第1ステー80Aの垂直面にネジVで締め付けることで固定されている。尚、排気吐出管67Aの後端の位置変動に応じて第1管部68の前端付近の位置を微調整可能なように、第1ブラケット82AにはネジVの雄ネジ部の外径を十分に上回る内径の2つの貫通孔Hが上下に並置されている。
【0052】
第1管部68の後部については、第1外管68Bに溶接された板状の小さめの第2ブラケット82Bを、断面がL字状の補助ブラケット82Cにネジ固定し、この補助ブラケット82Cを、揚穀装置35の一部を脱穀装置4の側面に取り付けている2つのステー78A,78Bのうちの前側の第2ステー78Aの中間付近の垂直面にネジ固定している。第2ステー78Aに設けられた2つの取り付け用の貫通孔も上下に並置されている。
【0053】
第2管部70の前部については、第2外管70Bの前端に溶接された断面がL字状の大きめの第3ブラケット82Dを、脱穀装置4の側面にネジ固定された断面がL字状の第3ステー80Bの水平面にネジ固定されている。第3ステー80Bに設けられた2つの取り付け用の貫通孔は、コンバインの進行方向に沿って前後に並置されている。
【0054】
第2管部70の後部については、第2外管70Bの長手方向の中間付近に溶接された断面がL字状の大きめの第4ブラケット82Eを、脱穀装置4の側面に溶接され、断面が下に開いたコ字状の第4ステー80Cの水平面にネジ固定されている。第4ステー80Cに設けられた2つの取り付け用の貫通孔は、コンバインの進行方向と交差する横向きに並置されている。
【0055】
〔別実施形態〕
〈1〉上記の実施形態では、直線状の第1管部68と第2管部70とが側面視で互いに異なる勾配で斜め上向きに延設されることで、両管部68,70の間に一つの屈曲した継ぎ目部を含むように延設されている。しかし、本発明はこのような形態に限らず、第1管部68の途中に更なる継ぎ目を設けることで、全体として3つの直線状の管部で構成し、3つの直線状の管部が側面視で互いに全て異なる勾配またはいずれか同士が同じ勾配で斜め上向きに延設される構成にしてもよい。この場合、新たな継ぎ目に導入部を設けることが可能であるが、必須ではない。
【0056】
〈2〉また、斜め上向きに延設された第1管部68に対して、第2管部70が側面視で傾斜せずに前後向きに延設された構成や、第2管部70が側面視で斜め下向きに延設された構成としてもよい。
【0057】
〈3〉また、排気管XPが、エンジン60の排気部から排ワラ処理部8の上方に配置されている同排気管XPの排気出口70Cまで、屈曲部を含むことなく側面視で一定の勾配で一直線状に延設されることで、脱穀装置4と回収部5との間を斜め上向きに通された形態で実施することも可能である。
【0058】
〈4〉また、排気管XPが、エンジン60の排気部から排ワラ処理部8の上方に配置されている同排気管XPの排気出口70Cまで側面視で斜め上方に上側に凸または下側に凸に湾曲状に延設されることで、脱穀装置4と回収部5との間を斜め上向きに通された形態で実施することも可能である。この場合、排気管XPがほぼ全長に亘って湾曲状に延設された形態でもよいが、直線状に延びた第1管部68と第3管部とが湾曲状の第2管部によって接続された形態としてもよい。
【0059】
〈5〉また、直線状の第1管部68と第2管部70とが、平面視で前後向きに又は斜め前後向きに一直線状に配備された構成や、第2管部70が平面視で第1管部68の後端への接続箇所から機体後方左方に傾斜した状態で配備された構成でもよい。
【0060】
〈6〉排気管XPを以上に例示したどの形態で設置する場合も、長手方向に沿って数本の管部に分割することが可能であるが、分割せず単一の管としてもよい。また、分割する場合、中間の継ぎ目部の全て或いは一部に導入部を設けてもよいが、継ぎ目部には導入部を設けない形態で実施することも可能である。
【0061】
〈7〉図11に例示するように、上記の実施形態で記載した第2管部70の部位が省略され、排気管XPが第1管部68のみで構成された形態で実施することも可能である。この場合、排気管XPはエンジンマフラー67(排気部)から脱穀装置4と回収部5との間を斜め上向きに通され、排気出口68Cは脱穀装置4の天井部よりも上方で開口している。ここでも、排気管XP(68)は脱穀装置4を構成する筐体4Sに支持されている。より具体的には、排気管XP(68)は、筐体4Sに固定された第1及び第2ステー80A,78A、並びに、第1管部68に取り付けられた第1及び第2ブラケット82A,82B、補助ブラケット82Cによって筐体4Sに支持されている。排気管XP(68)のうち、脱穀装置4の天井部よりも上方に延びた部位は、揚穀装置35の搬送筒35Tと筐体4Sとの間に位置しており、カバー72は同部位を除く箇所を覆っている。
【0062】
〈8〉排ワラカッタ装置54などの排ワラ処理部8を有さないコンバインの形態で実施することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
走行機体の前部に設けられた刈取部と、刈取部の後方に設けられた運転部と、運転部の後方に左右方向に並設された脱穀装置および穀粒回収部と、脱穀装置の後方に設けられた排ワラ処理部と、運転部の下方に設けられたエンジンからの排気を排出する排気管とを備えたコンバインの改良された排気構造として、自脱型及び普通型の双方のコンバインに利用できる。
【符号の説明】
【0064】
E2 第2導入部
S1 間隙空間
S2 間隙空間
XP 排気管
1 機体フレーム(走行機体)
3 刈取搬送装置(刈取部)
4 脱穀装置
4S 主ケーシング(筐体)
5 穀粒貯留装置(回収部)
14 搭乗運転部(運転部)
35 揚穀装置
39 還元用案内板(還元処理部)
51 グレンタンク(回収部)
60 エンジン
67 エンジンマフラー(排気部)
67A 排気吐出管(排気部)
68 第1管部(排気管)
70 第2管部(排気管)
80C 第4ステー(ステー)
80C 第4ステー(ステー)
82A 第1ブラケット(ブラケット)
82B 第2ブラケット(ブラケット)
82D 第3ブラケット(ブラケット)
82E 第4ブラケット(ブラケット)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に設けられた刈取部と、前記刈取部の後方に設けられた運転部と、前記運転部の後方に左右方向に並設された脱穀装置および穀粒を回収する回収部と、前記運転部の下方に設けられたエンジンと、前記エンジンからの排気を排出する排気管とを備えたコンバインの排気構造であって、
前記排気管が、前記エンジンの排気部から前記脱穀装置と前記回収部との間を斜め上向きに通され、前記脱穀装置を構成する筐体に支持されているコンバインの排気構造。
【請求項2】
前記脱穀装置の側面には、脱穀された穀粒を前記回収部に供給するための揚穀装置が設けられており、前記排気管の一部は、前記揚穀装置を前記脱穀装置の筐体に連結するステーに支持されている請求項1に記載されたコンバインの排気構造。
【請求項3】
前記排気管は、前記排気管に固定されたブラケットを、前記脱穀装置を構成する筐体に固定されたステーに連結することで支持されており、最も車両後方に配置された前記ブラケットは、車両の幅方向に延設された板状を呈し、前記幅方向に離間配置された複数のボルトによって前記ステーに連結されている請求項1または2に記載されたコンバインの排気構造。
【請求項4】
前記脱穀装置の側面には、2番物の穀粒を前記脱穀装置の選別部に還元する還元処理部が外方に突出形成されており、前記排気管は前記還元処理部を上方に迂回するように延設されている請求項1から3のいずれか一項に記載されたコンバインの排気構造。
【請求項5】
前記回収部の側面には、前記脱穀装置の前記還元処理部との干渉を避けるための間隙空間と、前記排気管の通過を許す間隙空間とが連続的に形成されている請求項4に記載されたコンバインの排気構造。
【請求項1】
走行機体の前部に設けられた刈取部と、前記刈取部の後方に設けられた運転部と、前記運転部の後方に左右方向に並設された脱穀装置および穀粒を回収する回収部と、前記運転部の下方に設けられたエンジンと、前記エンジンからの排気を排出する排気管とを備えたコンバインの排気構造であって、
前記排気管が、前記エンジンの排気部から前記脱穀装置と前記回収部との間を斜め上向きに通され、前記脱穀装置を構成する筐体に支持されているコンバインの排気構造。
【請求項2】
前記脱穀装置の側面には、脱穀された穀粒を前記回収部に供給するための揚穀装置が設けられており、前記排気管の一部は、前記揚穀装置を前記脱穀装置の筐体に連結するステーに支持されている請求項1に記載されたコンバインの排気構造。
【請求項3】
前記排気管は、前記排気管に固定されたブラケットを、前記脱穀装置を構成する筐体に固定されたステーに連結することで支持されており、最も車両後方に配置された前記ブラケットは、車両の幅方向に延設された板状を呈し、前記幅方向に離間配置された複数のボルトによって前記ステーに連結されている請求項1または2に記載されたコンバインの排気構造。
【請求項4】
前記脱穀装置の側面には、2番物の穀粒を前記脱穀装置の選別部に還元する還元処理部が外方に突出形成されており、前記排気管は前記還元処理部を上方に迂回するように延設されている請求項1から3のいずれか一項に記載されたコンバインの排気構造。
【請求項5】
前記回収部の側面には、前記脱穀装置の前記還元処理部との干渉を避けるための間隙空間と、前記排気管の通過を許す間隙空間とが連続的に形成されている請求項4に記載されたコンバインの排気構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−60956(P2012−60956A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209453(P2010−209453)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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