説明

コンバイン

【課題】コンバインを運搬用車輌の荷台に歩み板を用いて積み込む際、その積み込み作業の直前に、運転席から見え難い走行クローラの歩み板に対する位置合わせを容易に行えるようにする。
【解決手段】左右一対の走行クローラ14,14の踏面中心CL,CR位置を、コンバインのオペレータが運転席21に着座した状態で認識することができる指標33L,33Rを、コンバイン11,41の前部を構成する前処理部18の引起装置34,34の引起しケース34a、34aまたは分草体15等に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインをトラックやトレーラ等の運搬用車輌に歩み板を用いて積み込む際の位置合わせの容易化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの運転席は、機体前部の一側に配設されると共に、前方視界を確保すべく比較的高い位置に設けられており、当該運転席にオペレータが着座した状態では、足元部に位置する走行クローラが見え難く、特に歩み板(ブリッジ)を用いてコンバインをトラックやトレーラ等の運搬用車輌へ積み込む際には、歩み板に対する走行クローラの位置合わせが難しいといった不具合を有していた。
【0003】
そこで、コンバインの前処理部の下部に配設した刈高さ超音波センサを利用して、歩み板上を低速走行する機体の移動線上の対地高さ、換言すると前記歩み板に対する前処理部の高さを検出し、この検出高さが予め設定した初期設定高さよりも大きくなった時、即ち歩み板から走行クローラが外れようとする直前で機体を自動的に走行停止させる走行停止制御手段を設け、該走行停止制御手段によって歩み板から走行クローラが外れることを未然に防止しようとするものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平3−22622号公報(第4−9頁、第1図−第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のものでは、歩み板から走行クローラが外れようとする直前で機体が自動的に走行停止した後、オペレータが不安定な歩み板上のコンバインに搭乗し、低速での操向操作具による機体の進行方向の修正を行わなければならず面倒であった。
【0005】
そこで、コンバインをトラックやトレーラ等の運搬用車輌の荷台に歩み板を用いて積み込む際、その積み込み作業の直前に、見え難い走行クローラの歩み板に対する位置合わせを確実に行うことができるように、当該走行クローラの位置を認識することができる指標を設けることが期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、左右一対の走行クローラを備えるクローラ走行装置と、該クローラ走行装置に支持した機体フレームと、該機体フレームの前方で穀稈を刈取る前処理部と、前記機体フレームの左右一側に運転席と各種操作具を備える操縦部を配置したコンバインにおいて、該コンバインの前側に、走行クローラの位置を認識することができる指標を設けたことを第1の特徴としている。
【0007】
そして、前記指標が走行クローラの踏面中心位置を示すことを第2の特徴としている。
【0008】
そして、前記指標を前処理部の引起しケースの下部、または分草体に設けたことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、コンバインの前側に、走行クローラの位置を認識することができる指標を設けたことによって、コンバインをトラックやトレーラ等の運搬用車輌の荷台に歩み板を用いて積み込む際、その積み込み作業の直前に、前記指標を利用して見え難い走行クローラの歩み板に対する位置合わせを容易に行うことができるようになる。
【0010】
そして、請求項2の発明によれば、前記指標が走行クローラの踏面中心位置を示すので、歩み板の幅方向中心に対する走行クローラの踏面中心位置を精度よく位置合わせすることができるようになる。
【0011】
そして、請求項3の発明によれば、前記指標を前処理部の引起しケースの下部、または分草体に設けたことによって、前処理部の前部に位置する前処理部の引起しケースの下部及び分草体を歩み板に近接させた状態で、走行クローラの踏面中心の歩み板に対する位置合わせが行えるので、その位置合わせ精度が向上して安全な積み込み作業が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン11を運搬用車輌であるトラック12の荷台12aに積み込む直前の状態を示す側面図、図2は、コンバイン11の正面図であって、コンバイン11は、左右一対の走行クローラ14,14を備えるクローラ走行装置15L,15Rに機体フレーム16を支持すると共に、この機体フレーム16の前方には、穀稈を刈取りながら脱穀部17まで搬送する6条刈りの前処理部18を備えている。
【0013】
脱穀部17は機体フレーム16上の左側前部に設けてあり、この脱穀部17において前処理部18で刈取った穀稈を脱穀して穀粒を選別すると共に、脱穀部17で脱穀した後の 排稈を機外に排出処理する後処理部19とを、前後に連続して機体フレーム16上に配置している。
【0014】
そして、機体フレーム16の右側前部には、オペレータが着座する運転席21と各種操作具を備える操縦部22と、該操縦部22を覆うキャビン23を配置すると共に、その後方且つ脱穀部17の右側方には、該脱穀部17で選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク24を設けてあり、この穀粒タンク24に貯留した穀粒を穀粒排出オーガ25を介して機外に排出することができるようになっている。
【0015】
また、コンバイン11をトラック12の荷台12aに歩み板28L,28Rを用いて積み込む際は、先ず、当該トラック12の駐車ブレーキを掛けて車輪12bの回り止め31,31を施した後、左右一対の走行クローラ14,14の踏面中心CL,CRに対応して、トラック12の荷台12aと平行に歩み板28L,28Rをセットする。この時、コンバイン11の前側には、詳細は後述する両走行クローラ14,14の踏面中心CL,CR位置を認識可能な指標33L,33Rが設けてあり、該指標33L,33Rを利用して歩み板28L,28Rを容易にセットすることができる。
【0016】
しかる後に、オペレータは、コンバイン11に搭乗して前処理部18を最上昇させた状態で、前記歩み板28L,28Rに対する左右一対の走行クローラ14,14の踏面中心CL,CRの最終的な位置合わせを行うが、この時、オペレータが運転席21に着座した状態で、両走行クローラ14,14を直接見ることができなくても視認容易な前記指標33L,33Rを利用して、両走行クローラ14,14の踏面中心CL,CR位置が歩み板28L,28Rと平行となるように確実に位置合わせすることができる。
【0017】
更に詳しくは、前記指標33L,33Rは、前処理部18の前部に設けられている刈取穀稈を引起すための複数の引起装置34,34,・・・のうち、左右一対の走行クローラ14,14の踏面中心CL,CRと正面視で重合する引起装置34,34の引起しケース34a,34aの外表面(前面)に、両走行クローラ14,14の踏面中心CL,CRと一致する視認性に優れたデザインテープを貼着するか、または帯状の塗装を施すことにより構成したものであって、コンバイン11をトラック12の荷台12aに歩み板28L,28Rを用いて積み込む際、その積み込み作業の直前に、当該指標33L,33Rを利用して運転席21から見え難い両走行クローラ14,14の歩み板28L,28Rに対する位置合わせを容易に行うことができるようになり、コンバイン11の安全な積み込み作業が可能になる。
【0018】
また、コンバイン11を倉庫等に格納する際や運搬移動する際において、前処理部18の最前部(先端)に設けられている刈取穀稈を分草する複数の分草体35,35,・・・の先端を保護すべく、当該先端部に、図3に示すような平板状のガード体36を装着するが、このガード体36に図示の如く視認性に優れる指標33L,33Rを設けてもよい。
【0019】
また、図1に示すように、左右一対の走行クローラ14,14の踏面中心CL,CRと正面視で重合する引起装置34,34の引起しケース34a,34aの外表面(前面)に、オペレータが運転席21に着座した状態で認識可能な棒状の突起体37L、37Rを設け、この突起体37L、37Rを両走行クローラ14,14の踏面中心CL,CR位置を認識する指標としてもよい。
【0020】
ところで、図4に示す3条刈りコンバイン41のように、右側の走行クローラ14の踏面中心CRと最右側の分草体35が正面視で重合する構成になっており、この最右側の分草体35に視認性に優れる指標33Rを設けてもよい。
【0021】
以上説明したように、オペレータが運転席21に着座した状態で、左右一対の走行クローラ14,14の踏面中心CL,CR位置を認識可能な指標33L,33Rを、コンバイン11,41の前部を構成する前処理部18の引起装置34,34の引起しケース34a、34aまたは分草体15等に設けたことによって、当該指標33L,33Rを運転席21に着座したオペレータが容易に視認することができると共に、前処理部18の前部に位置する引起装置34,34の引起しケース34a、34aの下部及び分草体15等を歩み板28L,28Rに近接させた状態で、両走行クローラ14,14の踏面中心CL,CRの歩み板28L,28Rに対する位置合わせが行えるので、その位置合わせ精度が向上して安全なコンバイン11,41の積み込み作業が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバインを運搬用車輌の荷台に積み込む直前の状態を示す側面図。
【図2】指標を設ける位置の第1実施例を示す6条刈りコンバインの正面図。
【図3】指標を設ける位置の第2実施例を示す6条刈りコンバインの正面図。
【図4】指標を設ける位置の第3実施例を示す3条刈りコンバインの正面図。
【符号の説明】
【0023】
11 コンバイン(6条刈り)
14 走行クローラ
15L クローラ走行装置(左)
15R クローラ走行装置(右)
16 機体フレーム
18 前処理部
21 運転席
22 操縦部
33L 指標(左)
33R 指標(右)
34a 引起しケース
35 分草体
41 コンバイン(3条刈り)
CL 走行クローラの踏面中心(左)
CR 走行クローラの踏面中心(右)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の走行クローラ(14,14)を備えるクローラ走行装置(15L、15R)と、該クローラ走行装置(15L、15R)に支持した機体フレーム(16)と、該機体フレーム(16)の前方で穀稈を刈取る前処理部(18)と、前記機体フレーム(16)の左右一側に運転席(21)と各種操作具を備える操縦部(22)を配置したコンバイン(11,41)において、該コンバイン(11,41)の前側に、走行クローラ(14,14)の位置を認識することができる指標(33L,33R)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記指標(33L,33R)が走行クローラ(14,14)の踏面中心(CL,CR)位置を示すことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記指標(33L,33R)を前処理部(18)の引起しケース(34a,34a)の下部、または分草体(35)に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−288312(P2006−288312A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115381(P2005−115381)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】