説明

コンバイン

【課題】引継ぎガイドが上限位置付近まで揺動したとき、その先端部が茎稈搬送領域内に突出することを回避し、茎稈の搬送が引継ぎガイドによって阻害される不都合を解消する。
【解決手段】前処理部が刈り取った茎稈の株元側を、搬送始端側を支点として上下揺動する扱深さ調整搬送装置16と、扱深さ調整搬送装置16の上方に配置される第一補助搬送装置17と、補助搬送装置17の外方に配置される第二補助搬送装置18とを介して脱穀フィードチェン13まで搬送すると共に、第一補助搬送装置17側から第二補助搬送装置18の始端側に向けて第一引継ぎガイド19を延出したコンバインにおいて、第一引継ぎガイド19を、上下揺動自在に支持し、扱深さ調整搬送装置16との接当に応じて上方に退避揺動させるにあたり、第一引継ぎガイドの先端部が、上方へ揺動するほど内方に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理部が刈り取った茎稈の株元側を、扱深さ調整搬送装置、第一補助搬送装置及び第二補助搬送装置を介して、脱穀部の脱穀フィードチェンまで搬送するコンバインに関し、特に、茎稈の株元側を第二補助搬送装置上に導く引継ぎガイドが設けられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
前処理部が刈り取った茎稈の株元側を、搬送始端側を支点として上下揺動する扱深さ調整搬送装置と、該扱深さ調整搬送装置の上方に配置される第一補助搬送装置と、該第一補助搬送装置の外方に配置される第二補助搬送装置とを介して、脱穀部の脱穀フィードチェンまで搬送するようにしたコンバインが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のコンバインでは、第一補助搬送装置と第二補助搬送装置との間に隙間が空く構成となっており、この隙間に株元が入り込み、脱穀フィードチェンに株元を引き継ぐことができずに、茎稈を落下させる可能性があるため、第一補助搬送装置側から第二補助搬送装置の始端側に向けて引継ぎガイドを延出し、該引継ぎガイドによって茎稈の株元側を第二補助搬送装置上に導くことが好ましい。
【特許文献1】特許第3712480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載される引継ぎガイドは、上下揺動自在に支持され、扱深さ調整搬送装置との接当に応じて上方に退避揺動するように構成されている。これにより、扱深さ調整搬送装置の上下揺動範囲を可及的に広くし、短稈にも対応することが可能であるが、特許文献1の引継ぎガイドは、左右方向を向く支軸を支点として上下揺動するに過ぎないため、上限位置付近まで揺動させると、茎稈搬送領域内に突出し、茎稈の搬送を阻害する可能性がある。
【0004】
また、特許文献1に記載される引継ぎガイドは、第一補助搬送装置のケース下部で支持されているので、第一補助搬送装置の左右位置を調整可能なコンバインに適用した場合、第一補助搬送装置の左右位置調整に伴って引継ぎガイド位置が変化し、第二補助搬送装置への引継ぎに支障をきたす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、前処理部が刈り取った茎稈の株元側を、搬送始端側を支点として上下揺動する扱深さ調整搬送装置と、該扱深さ調整搬送装置の上方に配置される第一補助搬送装置と、該補助搬送装置の外方に配置される第二補助搬送装置とを介して、脱穀部の脱穀フィードチェンまで搬送すると共に、前記第一補助搬送装置側から前記第二補助搬送装置の始端側に向けて引継ぎガイドを延出し、該引継ぎガイドによって茎稈の株元側を前記第二補助搬送装置上に導くコンバインにおいて、前記引継ぎガイドを、上下揺動自在に支持し、前記扱深さ調整搬送装置との接当に応じて上方に退避揺動させるにあたり、前記引継ぎガイドの先端部が、上方へ揺動するほど内方に移動することを特徴とする。このようにすると、引継ぎガイドが上限位置付近まで揺動したとき、その先端部が茎稈搬送領域内に突出することを回避できるので、茎稈の搬送が引継ぎガイドによって阻害される不都合がない。
また、前記引継ぎガイドは、上限位置まで退避揺動したとき、先端部が前記第一補助搬送装置に設けられる搬送チェンの爪先端軌跡よりも内側に入り込むことを特徴とする。このようにすると、上限位置まで退避揺動したとき、引継ぎガイドの先端部を茎稈の搬送領域内から確実に退避させることができる。
また、前記第一補助搬送装置を左右位置調整自在とし、前記引継ぎガイドを前記前処理部の固定フレームで支持したことを特徴とする。このようにすると、第一補助搬送装置の左右位置を調整しても、第二補助搬送装置と引継ぎガイドの位置関係に変化はないので、第一補助搬送装置の左右位置調整に拘わらず第二補助搬送装置への引継ぎを良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀し、これを選別する脱穀部3と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5と、オペレータが乗車する操作部6と、クローラ式の走行部7とを備えて構成されている。
【0007】
本実施形態の前処理部2は、6条刈り仕様であって、茎稈を刈取条数分に分草するデバイダ8と、茎稈を引起す引起装置9と、茎稈の株元を切断する刈刃10と、茎稈の株元側を掻込み搬送するスターホイール11と、茎稈の穂先側を掻込み搬送する掻込み搬送ベルト12と、掻き込まれた左側2条分の茎稈を合流点に向けて搬送する左側搬送部(図示せず)と、掻き込まれた中央2条分の茎稈を合流点に向けて搬送する中央搬送部(図示せず)と、掻き込まれた右側2条分の茎稈を合流点に向けて搬送する右側搬送部(図示せず)と、合流した茎稈を脱穀部3に設けられる脱穀フィードチェン13の始端部に向けて搬送する後側搬送部14とを備えて構成されている。
【0008】
図3〜図7に示すように、後側搬送部14は、穂先搬送装置15と、扱深さ調整搬送装置16と、第一補助搬送装置17と、第二補助搬送装置18とを備えて構成されている。
穂先搬送装置15は、合流位置から脱穀部3に向けて前低後高状に配置され、合流された茎稈の穂先側を、爪付きチェン15aとガイドレール15bとの間で挟持しながら、後上方に向けて搬送する。
【0009】
扱深さ調整搬送装置16は、合流された茎稈の株元側を、搬送チェン16aと挟持レール16bとの間で挟持しながら、後上方に向けて搬送するものであるが、搬送始端側を支点とする上下揺動により、脱穀部3における茎稈の扱深さ調整を行う。つまり、茎稈の穂先位置を検出し、該穂先位置が一定となるように扱深さ調整搬送装置16の上下揺動位置を制御することにより、脱穀部3における茎稈の扱深さが一定に保たれる。
【0010】
第一補助搬送装置17は、扱深さ調整搬送装置16の上方で、かつ、穂先搬送装置15の下方に前低後高状に配置され、茎稈の中間部を、搬送チェン17aと挟持レール17bとの間で挟持しながら、後上方に向けて搬送する。そして、第一補助搬送装置17の搬送範囲を、扱深さ調整搬送装置16及び脱穀フィードチェン13の搬送範囲にオーバーラップさせることにより、扱深さ調整搬送装置16から脱穀フィードチェン13への茎稈の受け渡しが確実に行われる。
また、本実施形態では、第一補助搬送装置17の位置を左右方向(図6及び図7に示す矢印A方向)に調整できるようにしている。このようにすると、第一補助搬送装置17の左右位置を茎稈の稈長に適合させ、様々な茎稈を良好に搬送することが可能になる。
【0011】
第二補助搬送装置18は、第一補助搬送装置17の外方で、かつ、脱穀フィードチェン13の始端部内方に配置され、茎稈の株元側を、搬送チェン18aによって脱穀フィードチェン13の始端部に向けて搬送する。そして、第二補助搬送装置18の搬送範囲を、第一補助搬送装置17及び脱穀フィードチェン13の搬送範囲にオーバーラップさせることにより、第一補助搬送装置17から脱穀フィードチェン13への茎稈の受け渡しが確実に行われる。
【0012】
第一補助搬送装置17と第二補助搬送装置18との間に隙間が空く構成となっており、この隙間に株元が入り込むと、脱穀フィードチェン13に株元を引き継ぐことができずに、茎稈を落下させる可能性があるので、第一補助搬送装置17側から第二補助搬送装置18の始端側に向けて第一引継ぎガイド19を延出し、該第一引継ぎガイド19によって茎稈の株元側を第二補助搬送装置18上に確実に導くようにしている。
【0013】
また、第一引継ぎガイド19は、上下揺動自在に支持され、扱深さ調整搬送装置16との接当に応じて上方に退避揺動するように構成されている。これにより、扱深さ調整搬送装置16の上下揺動範囲を可及的に広くし、極端な短稈にも対応することが可能になる。本発明に係るコンバイン1では、第一引継ぎガイド19を、扱深さ調整搬送装置16との接当に応じて上方に退避揺動させるにあたり、第一引継ぎガイド19の先端部が、上方へ揺動するほど内方に移動するようにしている。このようにすると、第一引継ぎガイド19が上限位置付近まで揺動したとき、その先端部が茎稈搬送領域内に突出することを回避できるので、茎稈の搬送が第一引継ぎガイド19によって阻害される不都合がない。
【0014】
また、第一引継ぎガイド19は、上限位置まで退避揺動したとき、先端部が第一補助搬送装置17に設けられる搬送チェン17aの爪先端軌跡よりも内側に入り込むことが好ましい。このようにすると、上限位置まで退避揺動したとき、第一引継ぎガイド19の先端部を茎稈の搬送領域内から確実に退避させることができる。
また、第一引継ぎガイド19を上記のように構成する場合、扱深さ調整搬送装置16の先端部に第二引継ぎガイド20を設けることが好ましい。この第二引継ぎガイド20は、扱深さ調整搬送装置16の延長線方向に突出しており、扱深さ調整搬送装置16を下げた状態では殆ど機能しないが、扱深さ調整搬送装置16を上げた状態では、扱深さ調整搬送装置16の先端部から第二補助搬送装置18の始端側に延出するので、第一引継ぎガイド19に代わって、茎稈の株元側を第二補助搬送装置18上に導くことができる。これにより、扱深さ調整搬送装置16を上げた状態でも、茎稈の株元が第二補助搬送装置18の内側に入り込む不都合を確実に回避できる。
【0015】
また、本実施形態の第一引継ぎガイド19は、固定フレーム(例えば、穂先搬送装置15の取付フレーム)に固着される取付部材19aと、茎稈をガイドする丸棒等のガイド部材19bと、両者を連結する板バネ等の弾性部材19cとを備えて構成され、弾性部材19cの弾性変形に応じてガイド部材19bを上下揺動させる。そして、弾性部材19cが内向きに傾斜するように第一引継ぎガイド19を取り付ければ、扱深さ調整搬送装置16との接当に応じて上方に退避揺動させる際、第一引継ぎガイド19の先端部が、上方へ揺動するほど内方に移動するようになる。このようにすると、第一引継ぎガイド19の構造を簡素化できるだけでなく、耐久性も向上させることができる。尚、図面において、19dはガイド部材19bの先端位置を調整するための長孔である。
【0016】
また、本実施形態では、第一補助搬送装置17を左右位置調整自在とし、第一引継ぎガイド19を前処理部2の固定フレームで支持しているので、第一補助搬送装置17の左右位置を調整しても、第二補助搬送装置18と第一引継ぎガイド19の位置関係が変化することを回避できる。これにより、第一補助搬送装置17の左右位置調整に拘わらず第二補助搬送装置18への引継ぎを良好に行うことができる。
【0017】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、前処理部2が刈り取った茎稈の株元側を、搬送始端側を支点として上下揺動する扱深さ調整搬送装置16と、該扱深さ調整搬送装置16の上方に配置される第一補助搬送装置17と、該補助搬送装置17の外方に配置される第二補助搬送装置18とを介して、脱穀部3の脱穀フィードチェン13まで搬送すると共に、第一補助搬送装置17側から第二補助搬送装置18の始端側に向けて第一引継ぎガイド19を延出し、該引継ぎガイド19によって茎稈の株元側を第二補助搬送装置18上に導くコンバイン1において、第一引継ぎガイド19を、上下揺動自在に支持し、扱深さ調整搬送装置16との接当に応じて上方に退避揺動させるにあたり、第一引継ぎガイドの先端部が、上方へ揺動するほど内方に移動するようにしたので、第一引継ぎガイド19が上限位置付近まで揺動したとき、その先端部が茎稈搬送領域内に突出することを回避でき、その結果、茎稈の搬送が第一引継ぎガイド19によって阻害される不都合がない。
【0018】
また、第一引継ぎガイド19は、上限位置まで退避揺動したとき、先端部が第一補助搬送装置17に設けられる搬送チェン17aの爪先端軌跡よりも内側に入り込むので、上限位置まで退避揺動したとき、第一引継ぎガイド19の先端部を茎稈の搬送領域内から確実に退避させることができる。
【0019】
また、第一補助搬送装置17を左右位置調整自在とし、第一引継ぎガイド19を前処理部2の固定フレームで支持したので、第一補助搬送装置17の左右位置を調整しても、第二補助搬送装置18と第一引継ぎガイド19の位置関係を維持できる。これにより、第一補助搬送装置17の左右位置調整に拘わらず第二補助搬送装置18への引継ぎを良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】コンバインの要部正面図である。
【図4】扱深さ調整搬送装置を下げた状態を示す要部側面図である。
【図5】扱深さ調整搬送装置を上げた状態を示す要部側面図である。
【図6】扱深さ調整搬送装置を下げた状態を示す要部平面図である。
【図7】扱深さ調整搬送装置を上げた状態を示す要部平面図である。
【図8】第一引継ぎガイドの斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 コンバイン
2 前処理部
3 脱穀部
13 脱穀フィードチェン
14 後側搬送部
15 穂先搬送装置
16 扱深さ調整搬送装置
17 第一補助搬送装置
18 第二補助搬送装置
19 第一引継ぎガイド
20 第二引継ぎガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理部が刈り取った茎稈の株元側を、搬送始端側を支点として上下揺動する扱深さ調整搬送装置と、該扱深さ調整搬送装置の上方に配置される第一補助搬送装置と、該補助搬送装置の外方に配置される第二補助搬送装置とを介して、脱穀部の脱穀フィードチェンまで搬送すると共に、前記第一補助搬送装置側から前記第二補助搬送装置の始端側に向けて引継ぎガイドを延出し、該引継ぎガイドによって茎稈の株元側を前記第二補助搬送装置上に導くコンバインにおいて、前記引継ぎガイドを、上下揺動自在に支持し、前記扱深さ調整搬送装置との接当に応じて上方に退避揺動させるにあたり、前記引継ぎガイドの先端部が、上方へ揺動するほど内方に移動することを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記引継ぎガイドは、上限位置まで退避揺動したとき、先端部が前記第一補助搬送装置に設けられる搬送チェンの爪先端軌跡よりも内側に入り込むことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第一補助搬送装置を左右位置調整自在とし、前記引継ぎガイドを前記前処理部の固定フレームで支持したことを特徴とする請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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