説明

コンバイン

【課題】案内体と入口板との間の隙間から穀粒が飛散することを防ぐ。
【解決手段】前処理部(2)から搬送される穀稈を供給口(13)から導入して脱穀する脱穀部(3)と、供給口(13)の下縁部から前方に延出し、穀稈を供給口(13)に導く入口板(17)と、前処理部(2)の搬送終端部から入口板(17)の上面部に亘って設けられ、穀稈を入口板(17)上へ導く案内体(20)と、を備えるコンバインにおいて、供給口(13)の穂先側前方位置に、案内体(20)と入口板(17)との間に形成される隙間(X)からの穀粒の吹き出しを防止する塞ぎ部材(21)を設け、塞ぎ部材(21)は可撓性を有する板状体で構成し、その基端部(21a)を脱穀機体(F)側に取付支持し、先端部(21b)が案内体(20)との接触によって移動可能に片持ち状に設けると共に、塞ぎ部材(21)の先端部(21b)を長く延出して案内体(20)の下に入り込ませた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理部の搬送終端部から脱穀入口板の上面部に亘って設けられ、搬送穀稈を脱穀入口板上又は供給口内に導く案内体を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、前処理部から搬送される穀稈を、脱穀部の供給口から導入して扱室内で脱穀処理するにあたり、前処理部の搬送終端部から脱穀入口板の上面部に亘って板状又はシート状の可撓性を有する案内体を設けたコンバインが知られている。この案内体は、前処理部と脱穀部との間に存在する隙間を塞ぎつつ、前処理部の昇降動作を許容するために設けられるもので、前処理部と脱穀部との間の隙間に搬送穀稈が落ち込むことを防ぐようになっている。また、脱穀部の供給口から穀粒が吹き出すのを防止する為に、供給口の前面に搬送穀稈の導入を許容しながら穀粒の吹き出しを防止する飛散防止体(可撓体)を吊り下げ状に設けたコンバインも一般的である。
ところで、案内体の下面部(搬送終端部穂先側)と、脱穀入口板の上面部との間に隙間が形成され、この隙間から穀粒が吹き出す虞があるが、前記飛散防止体は案内体の上方で供給口から吹き出す穀粒の飛散を防止するためのものであるから、案内体の下方における穀粒の吹き出しを防止する作用はない。そこで、案内体と脱穀入口板との間に形成される隙間からの穀粒の吹き出しを防止する塞ぎ部材を設けたコンバインが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−278754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献のものは、塞ぎ部材(穂先ガイド部材21)が硬く、案内体(可撓体20)が前処理部の昇降動作によって穂先ガイド部材21上を前後に摺動移動する際に抵抗となり易く、可撓体20が摺れて破れたり、可撓体20が撓んで穀稈の搬送を妨げるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、穀稈を刈り取る前処理部と、前処理部から搬送される穀稈を供給口から導入し、導入した穀稈を脱穀処理する脱穀部と、供給口の下縁部から前方に延出し、搬送穀稈を供給口に導く入口板と、前処理部の搬送終端部から入口板の上面部に亘って設けられ、搬送穀稈を入口板上又は供給口内へ導く案内体と、を備えるコンバインにおいて、供給口の穂先側前方位置に、案内体と入口板との間に形成される隙間からの穀粒の前方への吹き出しを防止する塞ぎ部材を設け、塞ぎ部材は可撓性を有する板状体で構成し、その基端部を脱穀機体側に取付支持し、先端部が案内体との接触によって移動可能に片持ち状に設けると共に、塞ぎ部材の先端部を長く延出して案内体の下に入り込ませたことを特徴とする。
また、塞ぎ部材の先端部を、入口板の前端よりも前方まで延出したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明のコンバインによれば、案内体と入口板との間に形成される隙間からの穀粒の吹き出しを防止する塞ぎ部材を設けたから、穀粒の飛散を防止してロスを減少できる。また、塞ぎ部材を可撓性を有する板状体で構成し、その先端部が案内体との接触によって移動可能に片持ち状に設けたから、案内体が摺れて破れたり、塞ぎ部材が抵抗となって案内体が撓んで穀稈の搬送を妨げることを防止できる。また、塞ぎ部材の先端部を長く延出して案内体の下に入り込ませたから、案内体と入口板との間の隙間を確実に塞いで穀粒の飛散を防止できる。
また、塞ぎ部材の先端部を、入口板の前端よりも前方まで延出したから、案内体との接触によって塞ぎ部材の先端部が入口板上を前方へ摺動移動する時に、例えば、入口板の前端に穀粒の落下を阻止する上方を向いた曲げ部が形成されていたとしても、塞ぎ部材が曲げ部を乗り越えて引っ掛かりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】脱穀部の始端部を示す左側面図である。
【図3】前処理部の終端部及び脱穀部の始端部を示す平面図である。
【図4】脱穀部の始端部を示す正面図である。
【図5】脱穀部の始端部を示す斜視図である。
【図6】塞ぎ部材の単品図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1において、1はコンバインであって、コンバイン1は穀稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別された穀粒を貯留する穀粒タンク4と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5と、運転席や各種の操作具が設けられる操縦部6と、クローラ式の走行部7と、を備えて構成されている。
【0009】
前処理部2は、穀稈を分草するデバイダ8、穀稈を引き起こす引起装置9、穀稈の株元を切断する刈刃装置10、刈り取った穀稈を脱穀フィードチェン11の始端部まで搬送する搬送装置12などを備えて構成されている。そして、前処理部2は、走行機体の前端部に昇降自在に連結され、走行機体と前処理部2との間に介設される前処理昇降シリンダ(図示せず)の油圧伸縮動作に応じて昇降されるようになっている。
【0010】
図2〜図5に示すように、脱穀部3は、前処理部2から搬送される穀稈を脱穀フィードチェン11で引継ぐと共に、引継いだ搬送穀稈を供給口13から扱室14内に導入し、扱室14に内装される扱胴15で脱穀処理するようになっている。そして、扱室14で脱穀された穀粒は、受網16を介して選別室(図示せず)に漏下され、ここで選別される。本実施形態の扱胴15は、いわゆる下扱ぎ式であり、正面から見て時計回り方向Aに回転される。従って、供給口13は、扱胴15の下側外周面に沿って穀稈を供給すべく、その下縁が円弧状に形成されている。
【0011】
次に、本発明の要部である脱穀部3の始端部構成について説明する。これらの図に示すように、脱穀部3の始端部には、入口板17、カバー体18、飛散防止カバー体19及び、塞ぎ部材21が設けられている。
【0012】
入口板17は、供給口13の下縁部から前方に延出する正面視で略円弧状(樋状)の樹脂材からなる板材であり、搬送穀稈を供給口13へ導くようになっている。尚、本実施形態の入口板17は、前高後低状に傾斜すると共に、前後方向中間位置に段差17aを有し、段差17aよりも前側の上面17bを高く、段差17aよりも後側の上面17cを低くしてある。これにより、入口板17上の穀粒が前方に転がり落ちることが防止される。更に、入口板17の前端17dには上方に向く曲げ部(図2参照)を形成しており、この曲げ部も穀粒の落下を阻止している。
【0013】
カバー体18は、供給口13の穂先側端部に立設されている。飛散防止カバー体19は、カバー体18から株元側に突出するように設けられた板部材であり、供給口13の穂先側前方に位置することにより、供給口13の穂先側から吹き出す穀粒の飛散を防止するようになっている。
【0014】
案内体20は、前処理部2の搬送終端部から入口板17の上面部に亘って設けられる板状又はシート状の可撓部材であり、前処理部2と脱穀部3との間に存在する隙間を塞ぎつつ、前処理部2の昇降動作を許容する。これにより、前処理部2と脱穀部3との間の隙間に搬送穀稈が落ち込むことが防止される。具体的には、案内体20の前端部20aは前処理部2側に片持ち状に取付支持され、前処理部2が昇降動作して前処理部2の搬送終端部が前後に移動すると、案内体20の遊端側である後端部20bが入口板17上を前後に摺動移動する。案内体20は搬送穀稈が乗っても前処理部2と脱穀部3との隙間に落ち込まないように、張りのある硬めのゴム板で構成されている。
【0015】
案内体20は、前処理部2からの搬送穀稈を供給口13に導入ガイドする作用があり、その後端部20bは入口板17の形状に合わせて正面視で湾曲した形状となる。これにより、搬送穀稈の穂先部は、受網16の曲げ方向に予め曲げられて、扱室14内にスムーズに入って脱穀処理されることになる。
【0016】
ところで、案内体20は硬めのゴム板で構成される為に、案内体20と入口板17との間の隙間が完全には塞がれず(案内体20が入口板17の形状に沿わない箇所ができて)、案内体20の下面部と入口板17の上面部との間に隙間が形成され、この隙間から穀粒が前方に吹き出す問題があった。特に、扱胴15の回転下手側である供給口13の穂先側においては、入口板17、飛散防止カバー体19及び、案内体20で形成される三角形状の隙間Xから勢いよく穀粒が吹き出し、穀粒が飛散してロスが発生する問題があった。
そこで本実施形態では、前記隙間Xを塞ぎ、隙間Xからの穀粒の吹き出しを防止する塞ぎ部材21を設けている。次に、塞ぎ部材21の具体的な構成について説明する。
【0017】
塞ぎ部材21は、図6に示されるように可撓性を有する板状体(柔軟性のある薄目の可撓体)で構成される。塞ぎ部材21の上部21aの片側(案内体20と接触する側)は三角形状に切欠いて形成しており、前記隙間Xを塞ぐのに影響のない余分な部分をカットすることで、塞ぎ部材21が案内体20の前後移動を極力邪魔しないように構成している。そして、図2〜図5に示されるように、塞ぎ部材21は供給口13の穂先側前方位置に吊り下げ状態で設けられ、基端側である上部21aが飛散防止カバー体19側(脱穀機体F側)に取付支持されており、先端側(遊端側)である下部21bの板面で、前記隙間Xを正面視で覆う構成となっている。即ち、隙間Xの穂先側側方又は上方に位置する脱穀機体F側に塞ぎ部材21の上部21aを取付け、その取付部から隙間Xに向けて塞ぎ部材21を垂らすことにより隙間Xを覆う構成となっている。尚、本実施形態では塞ぎ部材21を飛散防止カバー体19に接着剤で貼り付けた構成となっているが、これに限らずボルト止めで取付けた構成としてもよい。
【0018】
また、吊り下げ支持された塞ぎ部材21の下部21bは、入口板17の上面17bに達する長さよりも長く延出され、延出された下部21bは前方に折り曲がりながら入口板17の上面17bに沿って前方に延設される。該延出部は入口板17の前端17dにある上方を向いた曲げ部(図2参照)を越えて、該曲げ部よりも前方まで延出される構成となっている。
【0019】
前記案内体20の後端部20bは、入口板17及び塞ぎ部材21に対して上方から乗っかるように配置され、可撓性を有する板状体で構成された塞ぎ部材21が案内体20下面及び入口板17上面の形状に沿って変形して案内板20下面及び入口板17上面に接触することにより、入口板17、飛散防止カバー体19及び、案内体20で形成される三角形状の隙間Xが塞ぎ部材21の下部21bの板面により確実に塞がれる。また、長く延出されて前方に折り曲げられた延出部21bは入口板17の下に入り込ませ、案内体20の前後移動によって塞ぎ部材21の下部21bが引き摺られて前後に移動しても、塞ぎ部材21と入口板17の上面17bとの間に隙間が空かないように構成している。
【0020】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、穀稈を刈り取る前処理部2と、前処理部2から搬送される穀稈を供給口13から導入し、導入した穀稈を脱穀処理する脱穀部3と、供給口13の下縁部から前方に延出し、搬送穀稈を供給口13に導く入口板17と、前処理部2の搬送終端部から入口板17の上面部に亘って設けられ、搬送穀稈を入口板17上又は供給口13内へ導く案内体20と、を備えるコンバインにおいて、供給口13の穂先側前方位置に、案内体20と入口板17との間に形成される隙間Xからの穀粒の前方への吹き出しを防止する塞ぎ部材21を設け、塞ぎ部材21は可撓性を有する板状体で構成し、その基端部21aを脱穀機体F側に取付支持し、先端部21bが案内体20との接触によって移動可能に片持ち状に設けると共に、塞ぎ部材21の先端部21bを長く延出して案内体20の下に入り込ませた。よって、案内体20と入口板17との間に形成される隙間Xからの穀粒の吹き出しを防止する塞ぎ部材21を設けたから、穀粒の飛散を防止してロスを減少できる。また、塞ぎ部材21を可撓性を有する板状体で構成し、その先端部21bが案内体20との接触によって移動可能に片持ち状に設けたから、案内体20が摺れて破れたり、塞ぎ部材21が抵抗となって案内体20が撓んで穀稈の搬送を妨げることを防止できる。また、塞ぎ部材21の先端部21bを長く延出して案内体20の下に入り込ませた構成としたから、案内体20と入口板17との間の隙間Xを確実に塞いで穀粒の飛散を防止できる。
また、塞ぎ部材21の先端部21bを、入口板17の前端17dよりも前方まで延出したから、案内体20との接触によって塞ぎ部材21の先端部21bが入口板17上を前方へ摺動移動する時に、例えば、入口板17の前端17dに穀粒の落下を阻止する上方を向いた曲げ部(図2参照)が形成されていたとしても、塞ぎ部材21が曲げ部を乗り越えて引っ掛かりを防止することができる。
【符号の説明】
【0021】
2 前処理部
3 脱穀部
13 供給口
17 入口板
17d 前端
20 案内板
21 塞ぎ部材
21a 基端部(上部)
21b 先端部(下部)
X 隙間
F 脱穀機体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈り取る前処理部(2)と、前処理部(2)から搬送される穀稈を供給口(13)から導入し、導入した穀稈を脱穀処理する脱穀部(3)と、供給口(13)の下縁部から前方に延出し、搬送穀稈を供給口(13)に導く入口板(17)と、前処理部(2)の搬送終端部から入口板(17)の上面部に亘って設けられ、搬送穀稈を入口板(17)上又は供給口(13)内へ導く案内体(20)と、を備えるコンバインにおいて、供給口(13)の穂先側前方位置に、案内体(20)と入口板(17)との間に形成される隙間(X)からの穀粒の前方への吹き出しを防止する塞ぎ部材(21)を設け、塞ぎ部材(21)は可撓性を有する板状体で構成し、その基端部(21a)を脱穀機体(F)側に取付支持し、先端部(21b)が案内体(20)との接触によって移動可能に片持ち状に設けると共に、塞ぎ部材(21)の先端部(21b)を長く延出して案内体(20)の下に入り込ませたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
塞ぎ部材(21)の先端部(21b)を、入口板(17)の前端(17d)よりも前方まで延出したことを特徴とする請求項1のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−80832(P2012−80832A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230192(P2010−230192)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】