説明

コンバーチブル型のコンピュータおよびアンテナ性能を向上する方法

【課題】タブレット入力位置でアンテナの電波特性を良好にするコンピュータを提供する。
【解決手段】ディスプレイ筐体は上縁にアンテナ51を収納する。使用停止位置およびキーボード入力位置ではアンテナがシステム筐体の手前側端面14cより内側に位置付けられシステム筐体11と対向または接近する。ディスプレイ筐体を使用停止位置からキーボード入力位置まで回動させ、さらにディスプレイ筐体の背面がキーボードを向くようにタブレット入力位置まで回動させる。ヒンジ機構100は、このときディスプレイ筐体をシステム筐体の手前側端面14cの方向にシフトさせる。タブレット入力位置では、アンテナが手前側端面より外側に配置されるためシステム筐体と対向しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバーチブル型コンピュータのタブレット入力モードにおけるアンテナ性能を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナル・コンピュータの中で、ディスプレイに対してペンや指で入力する薄型のものをタブレット型パーソナル・コンピュータ(以下、タブレットPCという。)という。タブレットPCは、キーボードを使用しないでペンや指で入力することにより、ノートブック型パーソナル・コンピュータ(以後ノートPCという。)と同等の機能を提供する。タブレットPCには、大きく分けてコンバーチブル型とピュアタブレット型の2種類がある。コンバーチブル型は、キーボードを実装したノートPCのディスプレイの方向を変えて、ノートPCまたはタブレットPCのいずれかとして利用できる構造のものである。ピュアタブレット型は、キーボードを実装せずディスプレイに対する入力のみを行う構造のものである。
【0003】
以下、本明細書においては単にコンピュータと記載したときはコンバーチブル型のタブレットPCを示すものとする。そして、コンピュータがキーボードから入力するノートPCとして動作する状態をキーボード入力モードといい、ディスプレイから入力するタブレットPCとして動作する状態をタブレット入力モードということにする。コンピュータは、無線通信装置およびアンテナを装備することにより、無線LAN(Wireless Local Area Network)または無線WAN(Wireless Wide Area Network)などを介してネットワークに接続することができる。このとき、アンテナは電波の送受信特性を良好にするためにディスプレイ筐体の周辺に設けられる。
【0004】
一般にはアンテナは、キーボード入力モードで使用するときのディスプレイ筐体の位置において最も良好な電波特性が期待できるようにディスプレイ筐体の上縁に配置する。本明細書においてはキーボード入力モードでのディスプレイ筐体の位置をキーボード入力位置ということにする。図9は、アンテナを装備する従来のコンピュータの外形図である。コンピュータ10は、システム・デバイスを収納し表面にキーボード15を実装するシステム筐体11およびペンで入力するデジタイザの機能と指で入力するタッチ・スクリーンの機能と液晶ディスプレイとを組み合わせた入力表示パネル17を収納するディスプレイ筐体13を備える。
【0005】
システム筐体11およびディスプレイ筐体13は、それぞれの端部の中央でヒンジ機構21によって連結されている。ヒンジ機構21は、これらの筐体を互いに開閉する方向に回動自在に支持している。さらにヒンジ機構21は、システム筐体11からディスプレイ筐体13を開いたキーボード入力位置で、入力表示パネルとディスプレイ筐体13の背面が反転するまでディスプレイ筐体13を少なくとも180度の範囲で回動させることが可能である。
【0006】
コンピュータ10は、図9(A)に示すキーボード入力モードでは、通常のノートPCのように、キーボード15に対して操作して使用することができる。さらに、図9(B)に示すようにキーボード入力位置のディスプレイ筐体13を回転させて、図9(C)に示すようにシステム筐体11の上にディスプレイ筐体13の背面を重ねるように折り畳み、入力表示パネル17が表を向くようにすれば、図9(D)に示すタブレット入力モードとなる。本明細書においてはタブレット入力モードでのディスプレイ筐体13の位置をタブレット入力位置ということにする。
【0007】
ディスプレイ筐体13は、入力表示パネル17の周辺部に4つの枠縁を含んでいる。下縁12aには、表示方向や表示する画面を変更する複数の操作ボタン23が設けられている。上縁12cの内部には、無線WANの補助アンテナおよび複数の無線LANのアンテナが実装されている。さらに上縁12cから突き出るように無線WANの主アンテナ60が設けられている。上縁12cと下縁12aは、入力表示パネル17を囲むように左縁12dと右縁12bで連絡している。
【0008】
キーボード入力位置では、上縁12cに収納されているアンテナがシステム筐体11の影響を受けないが、タブレット入力位置ではシステム筐体11と接近するために性能が低下する。無線WANの主アンテナ60は送信と受信に使用するため補助アンテナよりも高い性能が要求される。主アンテナ60は、タブレット入力位置でもシステム筐体11からの電波干渉を受けないようにするために、タブレット入力位置でシステム筐体11より外側に突き出るようにしている。
【0009】
特許文献1は、コンバーチブル型のタブレットPCを腕に抱えて操作するときに人体とアンテナの距離が接近することを防ぐために、タブレット入力位置でアンテナがシステム筐体の外周縁よりも内側に配置されるようにしたヒンジ機構を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−158771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図9に示すように主アンテナ60をディスプレイ筐体13の上縁12cの側端面から突き出すと、筐体全体の外形寸法が大きくなったり、キャビネットに収納する際にアンテナ60が上を向くように位置設定をする必要があったりして不便である。さらにタブレット入力位置でも、システム筐体のサイズを維持したままで、すべてのアンテナの電波特性をキーボード入力位置と同等に維持することが望まし。そこで本発明の目的は、タブレット入力位置におけるアンテナの電波特性が良好なコンバーチブル型のコンピュータを提供することにある。さらに本発明の目的は、コンバーチブル型コンピュータのタブレット入力位置におけるアンテナの電波特性を向上する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はキーボード入力位置またはタブレット入力位置のいずれかで使用可能なコンバーチブル型のコンピュータに関する。コンピュータはキーボードを実装するシステム筐体とディスプレイを収納したディスプレイ筐体とディスプレイ筐体の周辺に実装されたアンテナを有する。ディスプレイ筐体とシステム筐体は、ヒンジ機構で回動可能なように結合される。
【0013】
ヒンジ機構は、使用停止位置でアンテナをシステム筐体の側端面より内側に位置付け、タブレット入力位置でシステム筐体の側端面より外側に位置付けるようにディスプレイ筐体を回動可能に支持する。使用停止位置においては、ディスプレイ筐体とシステム筐体の少なくとも3つの側端面の位置を整合させることができる。少なくとも3つの側端面は、キーボード入力位置でユーザが入力表示パネルに正対したときの手前側、左側および右側の側端面とすることができる。
【0014】
ヒンジ機構は、ディスプレイ筐体を使用停止位置から少なくとも180度の範囲で回動可能に支持する水平軸と、水平軸を少なくとも180度の範囲で回動可能に支持する垂直軸とを有し、使用停止位置において、水平軸またはキーボード入力位置の入力表示パネルに正対したときのディスプレイ筐体の左右方向の中心を通過するラインの少なくともいずれか一方と垂直軸とが交差しないように構成することができる。
【0015】
アンテナが外側に配置されるシステム筐体の側端面は、キーボード入力位置の入力表示パネルに正対したときの手前側の側端面とすることができる。このときヒンジ機構は、使用停止位置において水平軸が垂直軸よりシステム筐体の奥側に配置され、タブレット入力位置において水平軸が垂直軸より手前側に配置されるように構成することができる。
【0016】
アンテナが外側に配置されるシステム筐体の側端面は、キーボード入力位置の入力表示パネルに正対したときの右側または左側の側端面とすることができる。このときヒンジ機構は、使用停止位置において前述のラインが垂直軸より左側または右側に配置され、タブレット入力位置において前述のラインが垂直軸より右側または左側に配置されるように構成することができる。
【0017】
アンテナが外側に配置されるシステム筐体の側端面は、キーボード入力位置の入力表示パネルに正対したときの右側または左側のいずれかの側端面と手前側の側端面とすることができる。このときヒンジ機構は、使用停止位置において水平軸が垂直軸よりシステム筐体の奥側に配置されかつ前述のラインが垂直軸より左側または右側に配置され、タブレット入力位置において水平軸が垂直軸よりシステム筐体の手前側に配置されかつ前述のラインが垂直軸より右側または左側に配置されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、タブレット入力位置におけるアンテナの電波特性が良好なコンバーチブル型のコンピュータを提供することができた。さらに本発明により、コンバーチブル型コンピュータのタブレット入力位置におけるアンテナの電波特性を向上する方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施の形態にかかるコンピュータ50の外形を示す斜視図である。
【図2】ヒンジ構造100の構造を説明する図である。
【図3】ディスプレイ筐体13が垂直軸203を中心にして回動するときのヒンジ機構100の挙動を説明する図である。
【図4】ヒンジ機構100を適用したコンピュータ50が、使用停止位置からタブレット入力位置に姿勢を変更する際に、ディスプレイ筐体13が手前側端面14cの方向にシフトする様子を示す図である。
【図5】ヒンジ機構の他の例を示す図3に対応する図である。
【図6】図5のヒンジ機構を適用したコンピュータ300が、使用停止位置からタブレット入力位置に姿勢を変更する際にディスプレイ筐体13が右側端面14bの方向にシフトする様子を示す図である。
【図7】ヒンジ機構の他の例を示す図3、図5に対応する図である。
【図8】図7のヒンジ機能140を適用したコンピュータ400が、使用停止位置からタブレット入力位置に姿勢を変更する際に、ディスプレイ筐体13が右側端面14bの方向および手前側端面14cの方向にそれぞれシフトする様子を示す図である。
【図9】アンテナを装備する従来のコンピュータの外形図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施の形態にかかるコンピュータ50の外形を示す斜視図である。コンピュータ50は主として、ヒンジ機構100の構造と、無線WANの主アンテナがディスプレイ筐体13の上縁の内部に実装されている点で図9のコンピュータ10と異なっている。本明細書の全体を通じて実施形態を説明する上で区別する必要がない範囲では図面の同一の要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0021】
キーボード入力位置で入力表示パネル17に正対したユーザを基準にして、システム筐体11の周囲を奥側端面14a、右側端面14b、手前側端面14c、および左側端面14dということにする。システム筐体11とディスプレイ筐体13は、ヒンジ機構100で結合されている。ヒンジ機構100の構造は図2〜図4に基づいて説明する。
【0022】
図2は、ヒンジ機構100の構造を説明する図である。図2(A)はディスプレイ筐体13をキーボード入力位置まで回動させ、垂直軸203を含み奥側端面14aに平行な平面で切断した断面図である。図2(B)は、ヒンジ機構100の回動部分の構造を示す斜視図である。ヒンジ機構100は、回動部101と水平軸受部111a、111bと垂直軸受部113で構成されている。水平軸受部111a、111bはディスプレイ筐体13の下縁12aの内部に固定されている。垂直軸受部113は、システム筐体11の左右方向の中心で奥側端面14aに近い位置のシステム筐体11の内部に固定されている。
【0023】
回動部101は、連結部103、水平円筒部105a、105b、垂直円筒部107で構成されている。連結部103は水平円筒部105a、105bおよび垂直円筒部107を相互に回転したり移動したりしないように結合する。水平円筒部105aは水平軸受部111aで回動可能に支持され、水平円筒部105bは水平軸受部111bで回動可能に支持されている。水平円筒部105a、105bの中心には水平軸201が定義される。
【0024】
いまコンピュータ10の使用を停止したり持ち運んだりする際に、入力表示パネル17をキーボード15に対向するように閉じたときのディスプレイ筐体13の位置を使用停止位置ということにする。ディスプレイ筐体13は水平軸201を中心にして、使用停止位置から入力表示パネル17が完全に上を向くまでの少なくとも180度の角度の範囲で回動することができる。その際に水平円筒部105a、105bに対して水平軸受部111a、111bはそれぞれ所定の制動トルクを与える。したがってユーザは、制動トルクより強い力を加えて水平軸201を中心にしてディスプレイ筐体13を回動させることができるが、手を離すと任意の位置でディスプレイ筐体13は停止する。
【0025】
垂直円筒部107は垂直軸受部113により回動可能に支持されている。垂直円筒部107の中心には、垂直軸203が定義されている。水平円筒部105a、105bで支持されるディスプレイ筐体13は、垂直軸203を中心にして入力表示パネル17がキーボード15側を向いているキーボード入力位置からディスプレイ筐体13の背面がキーボード15側を向くまでの少なくとも180度の角度の範囲で回動することができる。その際に垂直円筒部107に対して垂直軸受部113は所定の制動トルクを与える。したがって、ディスプレイ筐体13はキーボード入力位置で軽く手が触れただけでは垂直軸203を中心に回動しないようになっている。
【0026】
図3は、ディスプレイ筐体13が垂直軸203を中心にして回動するときのヒンジ機構100の挙動を説明する図である。図3は、図の上側が奥側端面14aの方向に位置するようにヒンジ機構を上からみた状態を模式的に示している。図3(A)は、従来のヒンジ機構を示し、図3(B)は使用停止位置でのヒンジ機構100の状態を示し、図3(C)はタブレット入力位置でのヒンジ機構100の状態を示している。なお、使用停止位置とキーボード入力位置でのヒンジ機構の状態は図3の表現上は同じになる。
【0027】
ライン207は、使用停止位置およびタブレット入力位置におけるディスプレイ筐体13の左右方向の中心を通過し、奥側端面14aに垂直なラインである。ライン207はシステム筐体11の左右方向の中心線にも一致する。ディスプレイ筐体11の左右方向の中心は、図4に示す右側端面16bと左側端面16dの間の距離の中心に相当する。図3では、いずれもライン207は垂直軸203と交差している。ただし本発明は、ライン207が垂直軸203と交差しない場合にも適用することができる。
【0028】
従来のヒンジ機構では、図3(A)に示すように水平軸201と垂直軸203が交差するように水平円筒部105と垂直円筒部107が結合されていた。したがって、使用停止位置からタブレット入力位置まで水平円筒部105が垂直軸203を中心にして180度回動した場合に、回動の前後で奥側端面14aから水平軸201までの距離X1は同じになる。
【0029】
これに対して本実施の形態にかかるヒンジ機構100では、図3(B)の使用停止位置において水平円筒部105の水平軸201は、垂直軸203から距離Yだけ奥側端面14aの方向に変位している。このとき奥側端面14aから水平軸201までの距離をX2とする。使用停止位置からタブレット入力位置まで水平円筒部105が垂直軸203を中心にして180度回動したときは、図3(C)に示すように水平軸201は、垂直軸203から距離Yだけ手前側端面14cの方向に変位した位置に位置付けられる。このとき奥側端面14aから水平軸201までの距離をX3とすれば、X3=X2+2*Yとなる。よって、ディスプレイ筐体13は使用停止位置からタブレット入力位置に姿勢を変更する際に、システム筐体11に対して手前側端面14cの方向に距離2Yだけシフトすることになる。
【0030】
図4は、ヒンジ機構100を適用したコンピュータ50が使用停止位置からタブレット入力位置まで姿勢を変更する際に、ディスプレイ筐体13が手前側端面14cの方向にシフトする様子を示す図である。図4(A)は、使用停止位置における平面図で、図4(B)は使用停止位置における左側側面図である。図4(C)は、タブレット入力位置における平面図で、図4(D)はタブレット入力位置における左側面図である。
【0031】
ここで、システム筐体11に対応させて、ディスプレイ筐体13の4つの側端面を奥側側面16a、右側端面16b、手前側端面16cおよび左側端面16dとする。システム筐体11とディスプレイ筐体13の右側端面14b、16b、手前側端面14c、16c、左側端面14d、16dはそれぞれ使用停止位置で平面的に位置が整合している。図4(A)、(B)に示す使用停止位置では、上縁12cの内部に実装されたアンテナ51a〜51dは、システム筐体11の手前側端面14cの内側(キーボード15側)に位置付けられシステム筐体11の表面と対向する。
【0032】
キーボード入力位置では、上縁12cの内部に実装されたアンテナ51a〜アンテナ51dの周囲にはシステム筐体11が存在しないので、アンテナ51a〜51dは良好な電波特性を維持することができる。図4(C)、(D)に示すタブレット入力位置ではキーボード入力位置に対して、ディスプレイ筐体13の手前側端面16cがシステム筐体11の手前側端面14cより外側に2*Yだけシフトしている。したがって、アンテナ51a〜51dは手前側端面14cの外側に位置付けられてシステム筐体11と対向しないため、システム筐体11や内部の金属部品の影響を受けることがなく良好な電波特性を維持する。
【0033】
図5は、ヒンジ機構の他の例を示す図3に対応する図である。図5(A)は使用停止位置でのヒンジ機構120の状態を示し、図5(B)はタブレット入力位置でのヒンジ機構120の状態を示している。ライン211は、ディスプレイ筐体13の左右方向の中心を通過し、奥側端面14aに垂直なラインである。ライン211は使用停止位置ではシステム筐体11の左右方向の中心線にも一致する。ライン211と垂直軸203は距離Yだけ離れている。よって、ディスプレイ筐体13は使用停止位置からタブレット入力位置に姿勢を変更する際に、システム筐体11に対して右側端面14bの方向に距離2*Yだけシフトすることになる。
【0034】
図6は、ヒンジ機能120を適用したコンピュータ300が使用停止位置からタブレット入力位置に姿勢を変更する際に、ディスプレイ筐体13が右側端面14bの方向にシフトする様子を示す図である。図6(A)は、使用停止位置における平面図で、図6(B)は使用停止位置における正面図である。図6(C)は、タブレット入力位置における平面図で、図6(D)はタブレット入力位置における正面図である。システム筐体11とディスプレイ筐体13の右側端面14b、16b、手前側端面14c、16c、左側端面14d、16dはそれぞれ使用停止位置で平面的に位置が整合している。
【0035】
コンピュータ300は、アンテナ53a〜53cをディスプレイ筐体13の左縁12dの内部に実装しており、図6(A)、(B)に示す使用停止位置では、左側端面14dの内側に位置付けられてシステム筐体11と対向する。キーボード入力位置では、アンテナ53a〜53cの周囲にシステム筐体11が存在しないので良好な電波特性を維持する。
【0036】
図6(C)、(D)に示すタブレット入力位置ではキーボード入力位置に対して、ディスプレイ筐体13の左側端面16dがシステム筐体11の右側端面14bより外側に2*Yだけシフトしている。したがって、アンテナ53a〜53cは右側端面14bの外側に位置付けられてシステム筐体11と対向しないため、システム筐体11や内部の金属部品の影響を受けることがなく良好な電波特性を維持する。なお、アンテナ53a〜53cを右縁12bの内部に実装し、タブレット入力位置でディスプレイ筐体13の右側端面16bがシステム筐体11の左側端面14dより外側にシフトするようにヒンジ機構を構成してもよい。
【0037】
図7は、ヒンジ機構の他の例を示す図3、図5に対応する図である。図7(A)は使用停止位置でのヒンジ機構140の状態を示し、図7(B)はタブレット入力位置でのヒンジ機構140の状態を示している。ライン215は、ディスプレイ筐体13の左右方向の中心を通過し、奥側端面14aに垂直なラインである。ライン215は使用停止位置ではシステム筐体11の左右方向の中心線にも一致する。垂直軸203とライン215は距離Yだけ離れ、さらに垂直軸203と水平軸201も距離Yだけ離れている。よって、ディスプレイ筐体13は使用停止位置からタブレット入力位置に姿勢を変更する際に、システム筐体11に対して右側端面14bの方向と手前側端面14cの方向にそれぞれ距離2*Yだけシフトすることになる。
【0038】
図8は、ヒンジ機能140を適用したコンピュータ400が使用停止位置からタブレット入力位置に姿勢を変更する際に、ディスプレイ筐体13が右側端面14bの方向および手前側端面14cの方向にそれぞれシフトする様子を示す図である。図8(A)は、使用停止位置における平面図で、図8(B)はタブレット入力位置における平面図である。システム筐体11とディスプレイ筐体13の右側端面14b、16b、手前側端面14c、16c、左側端面14d、16dはそれぞれ使用停止位置で平面的に位置が整合している。
【0039】
コンピュータ400は、アンテナ51a〜51dをディスプレイ筐体13の上縁12cの内部に実装し、アンテナ53a〜53cを左縁12dの内部に実装しており、図8(A)に示すように使用停止位置では、アンテナ51a〜51dが手前側端面14cの内側に位置付けられ、アンテナ53a〜53cは左側端面14dの内側に位置付けられてシステム筐体11と対向する。
【0040】
図8(B)に示すようにタブレット入力位置では、アンテナ51a〜51dは、システム筐体11の手前側端面14cの外側に位置付けられ、アンテナ53a〜53cは右側端面14bの外側に位置付けられてそれぞれシステム筐体11と対向しないため、システム筐体11や内部の金属部品の影響を受けることがなく良好な電波特性を維持する。コンピュータ400は、上縁12cとともに左縁12dに実装したすべてのアンテナのタブレット入力位置における電波特性が良好になるので実装するアンテナの数が増えたときに有効である。なお、アンテナ53a〜53cを右縁12bの内部に実装し、タブレット入力位置で、アンテナ51a〜51dが、システム筐体11の手前側端面14cの外側に位置付けられ、アンテナ53a〜53cが左側端面14dの外側に位置付けられるようにヒンジ機構を構成するようにしてもよい。
【0041】
コンピュータ50、300、400では、タブレット入力モードで使用する際にアンテナが人体に接近することがあるが、その場合は、重力加速度計で画面の表示方向を検知してアンテナが人体に接近する状態で保持されているとコンピュータが判断した場合は、アンテナからの電波出力を低下させたり、停止させたりしてSAR(Specific Absorption Rate)が許容値未満になるようにすることができる。その際には、入力表示パネル17にはアンテナの使用制限に関する表示をして、ユーザがアンテナを体から離してコンピュータを保持するように促すことができる。
【0042】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0043】
50、300、400…コンバーチブル型コンピュータ
11…システム筐体
12a、12b、12c、12d…ディスプレイ筐体の下側、右側、上側、左側の縁
13…ディスプレイ筐体
14a、14b、14c、14d…システム筐体の奥側、右側、手前側、左側の側端面
15…キーボード
16a、16b、16c、16d…ディスプレイ筐体の奥側、右側、手前側、左側の側端面
17…入力表示パネル
100、120、140…ヒンジ機構
201…水平軸
203…垂直軸
207、211、215…ディスプレイ筐体の左右方向の中心を通過するライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボード入力位置またはタブレット入力位置のいずれかで使用可能なコンバーチブル型のコンピュータであって、
キーボードを実装するシステム筐体と、
入力表示パネルを収納したディスプレイ筐体と、
前記ディスプレイ筐体の周辺に実装されたアンテナと、
使用停止位置で前記アンテナを前記システム筐体の側端面より内側に位置付け、前記タブレット入力位置で前記アンテナを前記側端面より外側に位置付けるように前記ディスプレイ筐体を回動可能に支持するヒンジ機構と
を有するコンピュータ。
【請求項2】
前記使用停止位置において前記ディスプレイ筐体と前記システム筐体の少なくとも3つの側端面の位置が整合している請求項1に記載のコンピュータ。
【請求項3】
前記ヒンジ機構が、
前記ディスプレイ筐体を前記使用停止位置から少なくとも180度の範囲で回動可能に支持する水平軸と、
前記水平軸を少なくとも180度の範囲で回動可能に支持する垂直軸とを有し、
前記使用停止位置において、前記水平軸または前記キーボード入力位置で前記入力表示パネルに正対したときの前記ディスプレイ筐体の左右方向の中心を通過するラインの少なくともいずれか一方と前記垂直軸とが交差しないように構成されている請求項1または請求項2に記載のコンピュータ。
【請求項4】
前記側端面が前記キーボード入力位置の前記入力表示パネルに正対したときの手前側の側端面である請求項3に記載のコンピュータ。
【請求項5】
前記使用停止位置において前記水平軸が前記垂直軸より前記システム筐体の奥側に配置され前記タブレット入力位置において前記水平軸が前記垂直軸より手前側に配置される請求項4に記載のコンピュータ。
【請求項6】
前記側端面が前記キーボード入力位置の前記入力表示パネルに正対したときの右側または左側の側端面である請求項3に記載のコンピュータ。
【請求項7】
前記使用停止位置において前記ラインが前記垂直軸より左側または右側に配置され前記タブレット入力位置において前記ラインが前記垂直軸より右側または左側に配置される請求項6に記載のコンピュータ。
【請求項8】
前記側端面が前記キーボード入力位置の前記入力表示パネルに正対したときの右側または左側のいずれかの側端面と手前側の側端面である請求項3に記載のコンピュータ。
【請求項9】
前記使用停止位置において前記水平軸が前記垂直軸より前記システム筐体の奥側に配置されかつ前記ラインが前記垂直軸より左側または右側に配置され、前記タブレット入力位置において前記水平軸が前記垂直軸より手前側に配置されかつ前記ラインが前記垂直軸より右側または左側に配置される請求項8に記載のコンピュータ。
【請求項10】
中央に入力表示パネルを収納し周辺にアンテナを収納するディスプレイ筐体とシステム筐体が結合部で回動可能に結合され、キーボード入力位置またはタブレット入力位置のいずれかで使用可能なコンバーチブル型のコンピュータにおいて、前記タブレット入力位置で前記アンテナの電波特性を向上させる方法であって、
前記ディスプレイ筐体を閉じた使用停止位置で前記アンテナを前記システム筐体の側端面より内側に位置付けるステップと、
前記ディスプレイ筐体を前記使用停止位置からキーボード入力位置まで回動させる第1の回動ステップと、
前記キーボード入力位置において前記入力表示パネルと前記ディスプレイ筐体の背面が反転するまで回動させる第2の回動ステップと、
前記第2の回動ステップの実行に伴って前記結合部が前記ディスプレイ筐体を前記システム筐体のいずれかの側端面の方向に移動させるステップと、
前記システム筐体の背面がキーボードに対向するように前記ディスプレイ筐体を前記タブレット入力位置まで回動させる第3の回動ステップと
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−181799(P2012−181799A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45947(P2011−45947)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄