説明

コンパクト容器

【課題】本発明は、鏡を通しての視界の広さと使い勝手との両立が図られたコンパクト容器を提供する。
【解決手段】本発明は、内容物が収容される収容面1fを有し当該収容面1fの奥行き寸法LYと幅寸法LXとが異なる容器本体1と、収容面1fに覆い被さる合せ面2fを有し当該合せ面2fに鏡Mが設けられた蓋体2とを備え、蓋体2がヒンジ部3を介してピンP1の周りを反転可能に連結されることで、当該蓋体2を反転させて開いたとき鏡Mを通した視認が可能なコンパクトである。容器本体1は、奥行き寸法LYが幅寸法LXよりも長い矩形の形状に形作られ、ヒンジ部3は、奥行き方向の一方に偏った収容面1f上の位置に、当該収容面1f上にピンP2によって回転可能に軸支されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体がヒンジ部を介して反転可能に連結されることで、当該蓋体を開いたとき鏡を通した視認が可能なコンパクト容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクト容器は、主として、ファンデーションやアイシャドウ等を用いたメイクの際に使用される。このため、従来のコンパクト容器としては、幅寸法が奥行き寸法よりも長くなるように構成することで、鏡を通しての視界を広く確保できるようにしたものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−49362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来のコンパクト容器は、幅寸法が長くなる分、横に細長くて持ち難いため、使い勝手に改善の余地がある。これに対し、奥行き寸法が幅寸法よりも長手になるように構成すれば、持ち難さの問題を解消できるが、鏡を通しての視界の広さが損なわれてしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、鏡を通しての横方向での視界の広さと使い勝手との両立が図られたコンパクト容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明である、コンパクト容器は、内容物が収容される収容面を有し当該収容面の奥行き寸法と幅寸法とが異なる容器本体と、この容器本体の収容面に覆い被さる合せ面を有し当該合せ面に鏡が設けられた蓋体とを備え、蓋体がヒンジ部を介して反転可能に連結されることで、当該蓋体を開いたとき鏡を通した視認が可能なコンパクト容器であって、
容器本体は、奥行き寸法が幅寸法よりも長い形状に形作られ、
ヒンジ部は、奥行き方向の一方に偏った収容面上の位置に、当該収容面上に回転可能に軸支されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明によれば、容器本体に、蓋体を開いた状態で、ヒンジ部の周りに所定の角度だけ回転させたとき、当該蓋体に接触するストッパを設けることができる。ストッパによって規制される角度としては、使用者の要求等に応じて適宜、設定することが可能であるが、奥行き方向(長手方向)に対して左右90度とすることが好ましい。
【0008】
ストッパとしては、例えば、容器本体の収容面に対して一体に設けたリブや、収容面に配置される内容物の収納皿、又は、当該収納皿と共に前記収容面に配置される受皿などの、収容部材が挙げられる。
【0009】
また、ストッパを設けた場合には、蓋体の隅部のうち、ヒンジ部側の隅部の少なくとも一方に、面取り加工を行うことができる。
【0010】
また、ヒンジ部は、蓋体に形成された凹部に配置される本体を有し当該本体に凹部を形作る蓋体の部位が回転可能に軸支されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、容器本体の奥行き寸法が幅寸法よりも長くなる分、縦に細長く持ち易い。このため、横に細長い従来のコンパクト容器に比べて、使い勝手がよい。
【0012】
また、本発明では、蓋体を反転させて開いた状態でヒンジ部ごと回転させることができるため、蓋体を開いた状態での鏡を通しての視界は、容器本体から奥行き方向に反転させて開いただけの場合に比べて、横方向に広く確保される。
【0013】
従って、本発明によれば、鏡を通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立が図られたコンパクト容器を提供することができる。特に、本発明に従うコンパクト容器を化粧用のコンパクト容器に適用すれば、アイシャドウを塗る等の際に、両目を同時に写すことが可能になる。
【0014】
また、容器本体に、蓋体を開いた状態で、ヒンジ部の周りに所定の角度だけ回転させたとき、当該蓋体に接触するストッパを設ければ、蓋体の角度を所望の角度に容易に位置決めすることができる。これにより、鏡を通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を容易に実現することができる。
【0015】
特に、上記角度が90度となるようにストッパを設ければ、蓋体を回転させたときに蓋体が真横になるので、鏡を通しての、横方向の視界を最も広く確保することができる。これにより、鏡を通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を最も効率的に図ることができる。
【0016】
上記ストッパとして、前記収容面に配置される収容部材を採用すれば、ストッパとして既存の部材を用いることができる。これにより、コストを抑えつつ、鏡を通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を容易に実現することができる。
【0017】
特に、ストッパを設けた場合、蓋体の隅部のうち、ヒンジ部側隅部の少なくとも一方に面取り加工を施せば、面取り加工の施されたヒンジ部側隅部の方向に蓋体を回転させたとき、ヒンジ部側隅部とストッパとの干渉(接触)が生じ難い。
【0018】
即ち、ストッパを設けた場合、蓋体の隅部のうち、ヒンジ部側隅部の少なくとも一方を面取り加工すれば、かかる干渉を回避すべく、蓋体とストッパとの間に設けられた間隔を短くを抑えることができる。これにより、容器としての小型化を図りつつ、鏡を通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を図ることができる。
【0019】
また、ヒンジ部として、蓋体に形成された凹部に配置される本体を有し当該本体に凹部を形作る蓋体の部位が回転可能に軸支されるものを採用すれば、ヒンジ部は蓋体の開閉状態に関わらず、蓋体の凹部内に常時配置された状態にあるため、容器としての薄型化(小型化)を図りつつ、鏡を通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a),(b)はそれぞれ、本発明の一形態である化粧用コンパクト容器が蓋体を閉じた状態を模式的に示す上面図及び斜視図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、同コンパクト容器が蓋体を開いた状態を模式的に示す上面図及び、その右側面図である。
【図3】同コンパクト容器の蓋体を開いて右90度を回転した状態を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の一形態である、化粧用コンパクト容器を詳細に説明する。
【0022】
本発明の一形態である、化粧用コンパクト容器(以下、「コンパクト」)は、図1に示すように、幅寸法LXが奥行き寸法LYよりも長い矩形の形状に形作られている。
【0023】
1は、容器本体である。容器本体1も、図1(a)に示すように、奥行き寸法LYが幅寸法LXよりも長い矩形の形状に形作られている。また、容器本体1は、図2に示すように、化粧料を収容する収容面1fを有し、収容面1fには、トレイTが嵌め込まれている。トレイTは、化粧料が充填される化粧充填部C1と、化粧筆等を収納するための塗布具収納部C2とに区画されている。なお、トレイTは、化粧充填部C1及び塗布具収納部C2はそれぞれ、収納皿として別体で構成し、これら収納皿の受皿とすることもできる。また、トレイT等は、容器本体1と一体に成形することもできる。
【0024】
2は、図2に示すように、収容面1fに覆い被さる合せ面2fを有し当該合せ面2fに鏡Mが設けられた蓋体である。
【0025】
3は、図2(b)の実線に示すように、容器本体1に対して蓋体2を反転可能に連結するヒンジ部である。ヒンジ部3は、図1に示すように、蓋体2に形成された凹部2aに配置される本体3aを有し、この本体3aに凹部2aを形作る蓋体2の部位2bがピンP1を介して回転可能に軸支されている。これにより、蓋体2は、ヒンジ部3を介して反転可能に連結される。
【0026】
従って、蓋体2を、図2(b)の矢印d1に示すように回転させれば、図1(b)に示すように容器本体1に覆い被されるように合さって閉じられる。容器本体1には、ヒンジ部3と対向する位置に、外向きに付勢されたプッシュピース4が設けられており、蓋体2を閉じたときに、合せ面2fに形成された図2に示す爪部2cが引っ掛かることで、蓋体2の開放が防止される。
【0027】
これに対し、蓋体2を開くときは、プッシュピース4をその付勢力に抗して容器本体1内に押し込んで爪部2cの引っ掛かりを解放する。これにより、蓋体2を、図2(b)の矢印d2に示すように回転させれば、図2に示すように蓋体2を反転させた状態に開くことができる。
【0028】
また、ヒンジ部3は、図1等に示すように、収容面1f上にあって、奥行き方向(長手方向)OYに沿ったいずれか一方の方向に偏った位置に配置されていると共に、図2(a)に示すように、ピンP2を介して収容面1f上に回転可能に軸支されている。これにより、蓋体2は、同図の矢印d3又はd4に示す方向に回転するように、ヒンジ部3を介して収容面1f上を回転可能に連結される。
【0029】
加えて、本形態では、図2(b)に示すように、容器本体1の収容面1fに対してトレイTを高さ(厚み)寸法ΔLZだけ突出させることで、蓋体2を反転させて開いた状態で、ヒンジ部3の周りに所定の角度ASだけ回転させたとき、図3に示すように、当該蓋体2の側面に接触して回転を防止するストッパとして構成する。
【0030】
本形態では、トレイTを矩形とすることで、そのヒンジ部3側の縁部(以下、「トレイ縁部」)TE(3)をストッパSとして機能させる。これにより、角度ASは、図3に示すように、長手方向軸線OYに対して90度(短手方向軸線OXと平行)に設定される。
【0031】
従って、蓋体2を、図2(a)に示すように反転させて開いた後、例えば、図3に示すように矢印d3の方向に回転させれば、蓋体2は、同図に示すように、鏡Mを使用者側に向けた状態のまま、右側に90度倒れて横方向に延在する。この場合、例えば、利き手が右手である場合、左手で容器本体1を把持しつつ、鏡Mを見ながら右手でメイクを行うことができる。
【0032】
また、蓋体2を、図2(a)に示すように反転させて開いた後、矢印d4の方向に回転させれば、蓋体2は、鏡Mを使用者側に向けた状態のまま、左側に90度倒れて横方向に延在する。この場合、例えば、利き手が左手である場合、右手で容器本体1を把持しつつ、鏡Mを見ながら左手でメイクを行うことができる。
【0033】
更に、本形態では、図1(a)に示すように、蓋体2の隅部Eにそれぞれ、曲率半径rの面取り加工が施されている。これにより、ピンP2を基点にして蓋体2を回転させる場合、面取り加工が施されないときに比べて、ヒンジ部側の隅部EがストッパSと干渉(接触)し難くなる。
【0034】
本形態では、容器本体1の奥行き寸法LYが幅寸法LXよりも長くなる分、縦に細長く持ち易い。このため、横に細長い従来のコンパクト容器に比べて、使い勝手がよい。
【0035】
また、本形態では、蓋体2を開いてヒンジ部3ごと、蓋体2を矢印d3又は矢印d4に回転させることができるため、蓋体2を開いた状態での鏡Mを通しての視界は、図2(a)に示すように、容器本体1から奥行き方向OYに反転させて開いただけの場合に比べて、横方向に広く確保される。
【0036】
従って、本形態によれば、鏡Mを通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立が図られたコンパクトを提供することができる。特に、本形態の如く、化粧用コンパクトに適用すれば、アイシャドウを塗る等の際に、両目を同時に写すことが可能になる。
【0037】
また、本形態の如く、収容面1fに、蓋体2を反転させて開いた状態で、ヒンジ部3の周りに所定の角度ASだけ回転させたとき、当該蓋体2に接触するストッパSを設ければ、蓋体2の角度Aを所望の角度ASに容易に位置決めすることができる。これにより、鏡Mを通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を容易に実現することができる。
【0038】
特に、本形態の如く、所定の角度ASが90度となるようにストッパSを設ければ、蓋体2を回転させたときに蓋体2が図3に示すように真横になるので、鏡Mを通しての、横方向の視界を最も広く確保することができる。これにより、鏡Mを通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を最も効率的に図ることができる。
【0039】
また、本形態の如く、ストッパSとして、収容面1fに配置されるトレイTなどの、収容部材を採用すれば、ストッパSとして既存の部材を用いることができる。これにより、コストを抑えつつ、鏡を通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を容易に実現することができる。なお、ストッパSは、収容面1fから隆起させたリブ等を用いることで、容器本体1と一体に設けることも可能である。
【0040】
特に、ストッパSを設けた場合、本形態の如く、蓋体2の隅部Eのうち、ヒンジ部側隅部Eの少なくとも一方に面取り加工を施せば、面取り加工が施されたヒンジ部側隅部Eの方向に蓋体2を回転させたとき、ヒンジ部側隅部EとストッパSとの干渉(接触)が生じ難い。
【0041】
即ち、ストッパSを設けた場合、蓋体2の隅部Eのうち、ヒンジ部側隅部Eの少なくとも一方を面取り加工すれば、かかる干渉を回避すべく、蓋体2とストッパSとの間に設けられた間隔を短くを抑えることができる。これにより、コンパクトとしての小型化を図りつつ、鏡Mを通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を図ることができる。
【0042】
また、本形態の如く、ヒンジ部3として、蓋体2に形成された凹部2aに配置される本体3aを有し当該本体3aに凹部2aを形作る蓋体2の部位2bが回転可能に軸支されるものを採用すれば、図1(b)及び図2(b)に示すように、ヒンジ部3は蓋体2の開閉状態に関わらず、蓋体2の凹部2内に常時配置された状態にあるため、コンパクトとしての薄型化(小型化)を図りつつ、鏡Mを通しての、横方向の視界の広さと使い勝手との両立を図ることができる。
【0043】
上述したところは、本発明の好適な形態をしたものであるが、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、ピンP1又はピンP2はそれぞれ、蓋体2又は容器本体1に固定されることで、ヒンジ部3を回転させる構成は勿論、ヒンジ部3に固定されることで、蓋体2又は容器本体1を回転させる構成とすることも可能である。また、蓋体2は、容器本体1に対し、爪部2c及びプッシュピース4の構成に替えて、互いの合せ面に設けた凹凸による嵌合で係止される構成とすることもできる。また、ヒンジ部3は、蓋体2を反転させて開く構成として、ピンP1に替えて、薄肉の連結片を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、化粧用のコンパクト容器に限定されるものではなく、例えば、目元に塗布する軟膏等を内容物とする医薬品用のコンパクト容器等としても適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 容器本体
1f 収容面
2 蓋体
2a 凹部
2b 蓋体部位
2c 爪部
2f 合せ面
3 ヒンジ部
3a 本体
4 プッシュピース
X 幅寸法
Y 奥行き寸法
M 鏡
1 ピン
2 ピン
S ストッパ
T トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される収容面を有し当該収容面の奥行き寸法と幅寸法とが異なる容器本体と、この容器本体の収容面に覆い被さる合せ面を有し当該合せ面に鏡が設けられた蓋体とを備え、蓋体がヒンジ部を介して反転可能に連結されることで、当該蓋体を反転させて開いたとき鏡を通した視認が可能なコンパクト容器であって、
容器本体は、奥行き寸法が幅寸法よりも長い形状に形作られ、
ヒンジ部は、奥行き方向の一方に偏った収容面上の位置に、当該収容面上に回転可能に軸支されていることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
請求項1において、容器本体に、蓋体を開いた状態で、ヒンジ部の周りに所定の角度だけ回転させたとき、当該蓋体に接触するストッパが設けられていることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項3】
請求項2において、ストッパは、収容面に配置される収容部材であることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項4】
請求項1又は2において、蓋体の隅部のうち、ヒンジ部側隅部の少なくとも一方を面取り加工してなることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、ヒンジ部は、蓋体に形成された凹部に配置される本体を有し当該本体に凹部を形作る蓋体の部位が回転可能に軸支されるものであることを特徴とするコンパクト容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−233699(P2010−233699A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83272(P2009−83272)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)