説明

コンパクト容器

【課題】回転式プッシュピースを採用した場合に、プッシュピースの振れ動きに起因する異音の発生を防止することが可能なコンパクト容器を提供する。
【解決手段】蓋体3が係脱自在な係合部11を介して容器本体2に係合されて閉じ状態とされるコンパクト容器1において、容器本体に回転支軸10を介して正逆回転自在に設けられ、蓋体を開放するために正回転方向へ押圧操作されるプッシュピース4と、プッシュピースから延出して、容器本体と蓋体との間の隙間Cに位置させて設けられ、プッシュピースの正回転で蓋体に当接しこれを押圧して係合部を離脱させると共に、プッシュピースの逆回転で容器本体に係止可能なレバー片17と、プッシュピースに設けられると共に容器本体に当接され、プッシュピースを逆回転方向へ弾発付勢してレバー片を容器本体に係止させる弾性変形自在な弾性片18とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式プッシュピースを採用した場合に、プッシュピースの振れ動きに起因する異音の発生を防止することが可能なコンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体にヒンジを介して回動自在に連結した蓋体で容器本体を開閉するようにすると共に、係脱自在な係合部を介して容器本体に蓋体を係合して閉じ状態とするようにしたコンパクト容器の中には、係合部の離脱操作を回転式のプッシュピースで行うようにしたものが知られている。
【0003】
特許文献1の「化粧料収容装置」では、フックピースは、断面形状略L字状に形成された押圧片と、この押圧片の左右両端部に相対向状に設けた左右一対の側板とからなり、これら両側板の外側面に形成された軸穴に、化粧皿収容枠体の前側凹部の両横側壁の軸部がそれぞれ回転自在に係合している。また、押圧片のL字状の上片の後端部が、閉蓋状態では、蓋体の前端部のすぐ下側に位置決めされるようにしている。片方の手指で押圧片の上片の前部を下方に押圧し、押圧片の前片が前側凹部の底板に当るまで押圧片を回動させることを行う。これにより、押圧片の上片の後端部が上方に移動し、ここで蓋体を上方に跳ね上げ、蓋体の係合爪の係合穴と容器本体の外周側壁の係合凸部との係合を外し、蓋体を開蓋する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−168666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンパクト容器に組み込まれる回転式のプッシュピースは、一回りしてしまうと操作性が良くないため、その回転範囲が通常、容器本体の形状設定などによって制限されている。また、このプッシュピースは、係合部の係合により蓋体が容器本体を閉じているときには、蓋体に当接するなどしてその動きが規制される一方で、係合部を離脱して蓋体を開放した状態では、制限された回転範囲で自在に振れ動いてしまう。
【0006】
プッシュピースが振れ動くと、回転範囲を制限している容器本体などに繰り返しぶつかり、このため、蓋体を開放してコンパクト容器を使用しているときに、カタカタとした異音が発生するという課題があった。特に、高級感をもたせた商品価値の高いコンパクト容器で、この種の異音が生じることは、商品イメージを落とすことにもなり、その改善が望まれていた。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、回転式プッシュピースを採用した場合に、プッシュピースの振れ動きに起因する異音の発生を防止することが可能なコンパクト容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるコンパクト容器は、容器本体にこれを開閉すべくヒンジを介して回動自在に連結された蓋体が、係脱自在な係合部を介して該容器本体に係合されて閉じ状態とされるコンパクト容器において、上記容器本体に回転支軸を介して正逆回転自在に設けられ、上記蓋体を開放するために正回転方向へ押圧操作されるプッシュピースと、該プッシュピースから延出して、上記容器本体と上記蓋体との間の隙間に位置させて設けられ、該プッシュピースの正回転で該蓋体に当接しこれを押圧して上記係合部を離脱させると共に、該プッシュピースの逆回転で該容器本体に係止可能なレバー片と、上記プッシュピース及び上記容器本体のいずれか一方に設けられると共に他方に当接され、該プッシュピースを逆回転方向へ弾発付勢して上記レバー片を該容器本体に係止させる弾性変形自在な弾性片とを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記弾性片と前記容器本体の間及び該弾性片と上記プッシュピースの間のうち、いずれか一方の間に設けられ、互いに当接する両者間の摩擦を低減するための凸部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるコンパクト容器にあっては、回転式プッシュピースを採用した場合に、プッシュピースの振れ動きに起因する異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るコンパクト容器の好適な一実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1のコンパクト容器の前面部周辺を示す分解斜視図である。
【図3】図2中、A−A線矢視断面図である。
【図4】図1のコンパクト容器の要部拡大側断面図である。
【図5】図1のコンパクト容器で、プッシュピースの押圧操作状態を示す要部拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るコンパクト容器の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1〜図5に示すように、本実施形態に係るコンパクト容器1は主に、容器本体2と、容器本体2を開閉する蓋体3と、蓋体3を開放操作するために押圧操作されるプッシュピース4とを備えて構成される。
【0013】
容器本体2は、合成樹脂製であって、底壁5と、底壁5の周縁に当該底壁5から立ち上げて形成した周壁6とを備える。容器本体2には、底壁5上に周壁6で取り囲んで、化粧料を充填した中皿7を収納する収納空間Sが形成される。中皿7は、容器本体2上方から収納空間S内へ挿入され、係止部8で係止されて、収納空間S内に固定して設置される。
【0014】
図2に示すように、容器本体2の周壁6のうち、前方に面する前方壁部6aには、これを窪ませて、容器本体2の前方及び上方に向かって開放された凹所9が形成される。凹所9は、前方壁部6aにおいて、底面部9aと、底面部9aの左右両側に位置する一対の側面部9bと、これら側面部9b間に位置して底面部9aの後側から立ち上げた奥面部9cとで取り囲んで形成される。
【0015】
左右一対の側面部9bそれぞれには、互いに相対向させて凹所9内方へ水平に突出させて、プッシュピース4を回転自在に支持するための回転支軸10が設けられる。奥面部9cには、側面部9b間のほぼ中央から凹所9内方へ突出させて、蓋体3を係合するための係合突起11aが設けられる。奥面部9cには、係合突起11aの両側に左右一対で位置させて、凹所9及び上方へ向けて開放して、容器本体2の前方壁部6aと蓋体3との間に隙間Cを形成する溝12が形成される。
【0016】
蓋体3は、合成樹脂製であって、裏面には鏡13が取り付けられている。蓋体3の後端が、容器本体2の周壁6のうち、後方に面する後方壁部6bに、ヒンジ14を介して連結され、これにより、蓋体3は容器本体2に回動自在に取り付けられる。蓋体3は、下方へ向かって回動されることで、収納空間Sを覆いつつ容器本体2を閉じ、上方へ向かって回動されることで、容器本体2を開放して収納空間Sを露出させる。
【0017】
蓋体3の前端には、これより垂下させて、凹所9の係合突起11aに係脱自在に係合される係合凸部11bが形成される。これら係合凸部11bと係合突起11aにより、蓋体3を容器本体2に係脱自在に係合させる係合部11が構成される。係合部11の係合により蓋体3が容器本体2に係合して閉じ状態とされ、係合部11の離脱により蓋体3の開放操作が可能となる。蓋体3の閉じ状態で、係合凸部11b周辺の蓋体3前端は、容器本体2側の溝12の上方から凹所9上方に庇状に突出して、これら凹所9及び溝12をそれらの上方から覆う。
【0018】
容器本体2の凹所9には、これを容器本体2前方から塞ぐように容器本体2の前面に面して、合成樹脂製のプッシュピース4が設けられる。プッシュピース4は板状に形成され、上端部4aには、凹所9の回転支軸10に面して、軸孔15が左右一対形成される。プッシュピース4は、この軸孔15に回転支軸10が挿入されることで、当該回転支軸10を介して容器本体2に正逆回転自在に設けられる。
【0019】
プッシュピース4は、蓋体3を開放するために、容器本体2の前面から奥面部9cへ向かって正回転方向Xへ押圧操作され、これによりプッシュピース4の下端部4bが、回転支軸10回りに凹所9内方へ移動する。プッシュピース下端部4bの表面には、容器本体2前方へ迫り出して、手指をかける迫り出し部16が形成される。
【0020】
プッシュピース4には、レバー片17が一体成形して設けられる。レバー片17は、プッシュピース4の上端部4aから左右一対で奥面部9cの溝12内方へ延出される。レバー片17は、溝12内部に配設されることで、この溝12を覆う蓋体3の前端と容器本体2の前方壁部6aとの間の隙間Cに位置される。レバー片17は、プッシュピース4の正回転で回転支軸10回りに上方へ移動し、蓋体3の前端に下方から当接しこれを押圧して押し上げる。また、レバー片17は、プッシュピース4の逆回転で回転支軸10回りに下方へ移動し、溝12の底面、すなわち容器本体2の奥面部9cにその上方から係止可能となっている。プッシュピース4は、正回転方向Xへはプッシュピース4の下端部4bが奥面部9cに当接するまで、逆回転方向Yへはレバー片17が奥面部9cに当接するまでの範囲で、回転可能となっている。
【0021】
回転支軸10回りに移動するプッシュピース4の下端部4bと容器本体2の奥面部9cとの間には、凹所9内部に位置させて、弾性変形自在な弾性片18が設けられる。本実施形態にあっては、弾性片18は、奥面部9cに面するプッシュピース4の裏面に一体形成して設けられる。弾性片18は図3に示すように、プッシュピース4の左右方向に沿って、当該プッシュピース4の裏面側に向かって凸形態のアーチ状に形成され、中央部18aがプッシュピース下端部4bの裏面に接合されると共に、左右両端部18bが奥面部9cに当接される。弾性片18は、左右両端部18bが当接された奥面部9cに反力をとって弾性変形され、プッシュピース4の下端部4bを回転支軸10回りに凹所9から容器本体2前方へ押し出す方向、すなわちプッシュピース4を逆回転方向Yへ弾発付勢する。
【0022】
本実施形態にあっては、弾性片18は、プッシュピース4に設けられているが、容器本体2に設けるようにしても良い。例えば、弾性片18は、凹所9の奥面部9cに設けたり、凹所9の左右一対の側面部9b間に架け渡して設けたり、各側面部9bに個別に設けたり、あるいは底面部9aから起立させて設けるなど、種々の構成を採用することができる。
【0023】
プッシュピース4が回転支軸10回りに正回転することで、プッシュピース4の下端部4bは、回転軌跡に沿って奥面部9cの下方側から上方側へ向かって移動する。これに伴い、弾性片18の左右両端部18bは、奥面部9cに当接しつつ下方から上方へ移動する。弾性片18の左右両端部18bとこれらが当接しつつ移動する容器本体2の奥面部9cとの間には、互いに当接するこれら両者間の摩擦を低減するために、接触面積を小さくする凸部19が設けられる。
【0024】
本実施形態にあっては、弾性片18の左右両端部18bに、奥面部9cに向かって凸形態で凸部19が設けられている。凸部19は、弾性片18ではなく、奥面部9cに上下方向に沿って凸条形態で形成しても良い。また、弾性片18を容器本体2の凹所9側に設けた場合には、弾性片18とプッシュピース4との間に凸部19が設けられる。この場合、凸部19は、容器本体2の弾性片18に設けるようにしても、あるいは弾性片18に面してプッシュピース4に設けるようにしても良い。
【0025】
次に、本実施形態に係るコンパクト容器1の作用について説明する。まず、図1及び図4に示すように、係合部11で容器本体2に蓋体3が係合して当該容器本体2が閉じられているときには、レバー片17は上方から蓋体3で押さえられて、容器本体2の前方壁部6aと蓋体2の前端との間の隙間Cである溝12内部に位置し、これにより、プッシュピース4は、容器本体2の前面に面して位置している。この際、弾性片18は、凹所9の奥面部9cに当接していて、この当接によりプッシュピース4を逆回転方向Yに弾発付勢している。プッシュピース4が逆回転方向Yへ弾発付勢されることで、レバー片17は、溝12の底面、すなわち容器本体2の前方壁部6aに係止される。これにより、コンパクト容器1の不使用時、プッシュピース4の振れ動きが阻止され、カタカタという異音の発生を防止できる。
【0026】
次に、コンパクト容器1を使用する際には、プッシュピース4の迫り出し部16に手指をかけ、図5に示すように、当該プッシュピース4を凹所9内方へ押圧操作する。プッシュピース4を押圧操作すると、プッシュピース4はその下端部4bと共に、弾性片18を弾性変形させつつその弾発付勢に抗して、回転支軸10回りに正回転方向Xに回転する。プッシュピース4が正回転すると、レバー片17は、蓋体3の前端に下方から当接し、さらに溝12から迫り上がりつつ、蓋体3を押し上げる。押し上げられた蓋体3は、その係合凸部11bが容器本体2の係合突起11aから離脱して、開放操作が可能となり、その後、蓋体3を手指で上方へ押し上げることで、収納空間Sを露出することができる。
【0027】
プッシュピース4の押圧操作の際、当該プッシュピース4の下端部4bの回転軌跡に沿って、弾性片18の左右両端部18bは、奥面部9cを迫り上がるように移動する。この移動による摩擦は、凸部19によって低減することができ、弾性片18を設けたにも拘わらず、プッシュピース4を軽い感触でスムーズに押圧操作することができる。
【0028】
蓋体3を開放した後、プッシュピース4から手指を離すと、押圧操作力が解除され、弾性変形されていた弾性片18が弾性復帰し、プッシュピース4を逆回転方向Yへ回転させる。これにより、プッシュピース4は、押圧操作前の蓋体3が閉じられていた位置に戻り、これに伴って、レバー片17は、溝12内部に納まって、容器本体2の前方壁部6aに係止される。これにより、コンパクト容器1の使用時にあっても、プッシュピース4の振れ動きが阻止され、カタカタという異音が発生することを防止することができる。
【0029】
蓋体3を再び閉じるときには、蓋体3を下方へ回動して係合部11により容器本体2と係合させる。弾性片18が、プッシュピース4の振れ動きを阻止してレバー片17を容器本体2に常に係止した状態に維持するので、蓋体3を容器本体2に係合するときにも、レバー片17が振れ動いて蓋体3に引っ掛かるなどの干渉が生じることを防止でき、きわめてスムーズに蓋体3を閉じる操作を行うことができる。
【0030】
以上説明にしたように、本実施形態に係るコンパクト容器1にあっては、正逆回転自在に設けられて振れ動きが発生するプッシュピース4を、弾性片18による弾発付勢によって、レバー片17を介し容器本体2に常時係止することができるので、常にカタカタという異音が発生することを防止できる。
【0031】
また、本実施形態にあっては、弾性片18の左右両端部18bに凸部19を形成し、弾性片18とこれが当接する奥面部9cとの摩擦を低減するようにしたので、弾性片18を備えたにも拘わらず、プッシュピース4の軽くスムーズな操作性を確保することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 コンパクト容器
2 容器本体
3 蓋体
4 プッシュピース
10 回転支軸
11 係合部
14 ヒンジ
17 レバー片
18 弾性片
19 凸部
C 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体にこれを開閉すべくヒンジを介して回動自在に連結された蓋体が、係脱自在な係合部を介して該容器本体に係合されて閉じ状態とされるコンパクト容器において、
上記容器本体に回転支軸を介して正逆回転自在に設けられ、上記蓋体を開放するために正回転方向へ押圧操作されるプッシュピースと、
該プッシュピースから延出して、上記容器本体と上記蓋体との間の隙間に位置させて設けられ、該プッシュピースの正回転で該蓋体に当接しこれを押圧して上記係合部を離脱させると共に、該プッシュピースの逆回転で該容器本体に係止可能なレバー片と、
上記プッシュピース及び上記容器本体のいずれか一方に設けられると共に他方に当接され、該プッシュピースを逆回転方向へ弾発付勢して上記レバー片を該容器本体に係止させる弾性変形自在な弾性片とを備えたことを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
前記弾性片と前記容器本体の間及び該弾性片と上記プッシュピースの間のうち、いずれか一方の間に設けられ、互いに当接する両者間の摩擦を低減するための凸部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のコンパクト容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−189043(P2011−189043A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58913(P2010−58913)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)