説明

コンパクト容器

【課題】 蓋体との係合部を容器本体に一体に設けて操作部材を別途必要とせず、閉蓋時の不快な密閉音の発生を防ぐとともに係合部のガタ付き音の発生を防止したコンパクト容器を提供すること。
【解決手段】 化粧料等を収容する容器本体と、容器本体にヒンジ軸を介して回動可能に取り付けられた蓋体とからなるコンパクト容器であって、容器本体の前面には、蓋体の前記第1係合部に係合する第2係合部が、容器本体とインサート成形により一体成形された弾性体により囲繞されて揺動可能に立設され、第2係合部は、上端の第2係合凸部に続く下方に第2係合凹部が形成され、前記弾性体が、第2係合部の前方操作面を覆うとともに第2係合凹部の下面に突出して緩衝部を形成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料などを収納して携帯するコンパクト容器、とくに蓋体と係合するフック状の係合部を容器本体に一体に形成したコンパクト容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクト容器は、一般に化粧料をパフなどの塗布具とともに収容する容器本体と、容器本体に枢軸で開閉可能に取り付けられた蓋体と、容器本体または蓋体に取り付けられて蓋体の開閉を行う操作部材とからなっている。
【0003】
このようなコンパクト容器として、蓋体に垂設したフック状の第1係合部と、本体に立設したフック状の第2係合部とを係合することによって閉蓋し、開蓋にあたっては、容器本体にスライド自在に保持された係合解除手段(操作部材)を押圧することによって、容器本体と蓋体の係合を解除し離脱させるようにしたコンパクト容器が、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭64−6259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のコンパクト容器では、係合解除手段(操作部材)を別途製造し容器本体に組み込まなければならないから、部品点数が多く製造工程が複雑になる。
また、蓋体の第1係合部と容器本体の第2係合部は、閉蓋する際にフック状の凸部が係合するように互いに接近する方向に弾発力が与えられているため、フック状の凸部を乗り越えて嵌合するときに不快な密閉音が発生したり、製造誤差が避けられないため、係合した後に嵌合したフック状の凸部のガタ付き音が発生するということがあった。
さらに、係合解除手段により容器本体と蓋体の係合を解除した際の蓋体のせり上がり量を大きくすることはできるが、蓋体を大きく開いて使用するためには、手で蓋体を開かなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とするものであり、係合解除可能なフック状の係合部を容器本体に一体に設けて操作部材を必要とせず、閉蓋時の不快な密閉音の発生を防ぐとともに係合部のガタ付き音の発生を防止し、開蓋時に蓋体を跳ね上げて大きく蓋体を開くことができるコンパクト容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、コンパクト容器として、化粧料等の内容物を収容する容器本体と、容器本体にヒンジ軸を介して回動可能に取り付けられた蓋体とからなるコンパクト容器であって、蓋体には、ヒンジ部と反対側の前面に、フック状の第1係合凸部を設けた第1係合部が垂設され、容器本体の前面には、前記第1係合部に係合する第2係合部が、容器本体とインサート成形により一体成形された弾性体により囲繞されて揺動可能に立設され、第2係合部は、上端にフック状の第2係合凸部と、第2係合凸部に続く下方に第2係合凹部が形成され、前記弾性体が、第2係合部の前方操作面を覆うとともに第2係合凹部の下面に突出して緩衝部を形成していることを特徴とする構成を採用する。
【0008】
コンパクト容器の別実施例として、緩衝部の第2係合凹部下面からの突出高さは、閉蓋時において、蓋体の第1係合凸部が容器本体の第2係合凸部を乗り越えた後、第1係合部の下端が緩衝部に接し、緩衝部を押圧しながら第1係合凸部が第2係合凹部に嵌合するように設定したことを特徴とする構成、また、弾性体は、容器本体のヒンジ部側の後面にヒンジ軸より上方で突出する跳ね上げ凸部を形成し、蓋体の頂壁端部から垂設された蓋枠のヒンジ部側の内側には、跳ね上げ凸部に対向する位置に跳ね上げ押圧部を設け、跳ね上げ凸部は、閉蓋時には跳ね上げ押圧部に圧接され、開蓋時には跳ね上げ押圧部を押し上げて蓋体を跳ね上げるように形成されていることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンパクト容器は、蓋体と係合する第2係合部が、容器本体とインサート成形により一体成形された弾性体により囲繞されて揺動可能に立設されているから、別途操作部材を必要とせず製造が容易である。
また、当該弾性体は、第2係合部の前方操作面を覆っているので、第2係合部は前方に突出するようなことがなくデザイン的に優れているとともに、第2係合凹部の下面に突出して緩衝部を形成しているから、その弾性力により係合凸部が嵌合する時の衝撃を吸収し、閉蓋時に不快な密閉音を発生することがない。
しかも、閉蓋状態では常に緩衝部が第1係合部の下端を押圧しているからガタ付き音が発生するようなことはない。
さらに、緩衝部の第2係合凹部下面からの突出高さは、閉蓋時に第1係合部の下端が緩衝部を押圧しながら第1係合凸部が第2係合凹部に嵌合するように設定したから、蓋体を閉めるための力の変化が小さくなってソフトタッチで良好な操作感が得られる。
また、弾性体の跳ね上げ凸部が、閉蓋時には跳ね上げ押圧部に圧接され、開蓋時には跳ね上げ押圧部を押し上げて蓋体を跳ね上げるように形成されているから、容器本体の第2係合部の前面を押圧して蓋体との係合を解除するだけで、蓋体は開蓋と同時に上方に跳ね上げられ、すみやかに使用を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のコンパクト容器を閉蓋したときの(図2のX−X面における)断面側面図である。
【図2】本発明のコンパクト容器の容器本体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面正面図[図(a)のY−Y断面]である。
【図3】本発明のコンパクト容器の要部を示す図であり、図1のP部分を拡大して示す図である。
【図4】本発明のコンパクト容器の要部を示す図であり、図1のQ部分を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明のコンパクト容器について、実施例を示した図面を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
図1〜4において、Aは容器本体、Bは蓋体、Cは容器本体Aと蓋体Bが図示しないヒンジ軸を介して連結するヒンジ部である。
【0013】
図1,2に示すように、容器本体Aは、平面視で略長方形を有し、底壁1から立ち上がった、ヒンジ部側の後壁2と、ヒンジ部と反対側の前壁3と、左右側部の側壁4とに囲まれた内部には、内ケース5を備えた収容部6が設けられている。
収容部6には、化粧料が入った中皿やパフなどの塗布具が収納される。7は、中皿を固定する爪である。
【0014】
図3に示すように、前壁3の中央付近には、後述する蓋体Bの第1係合部28と係合する第2係合部8が設けられ、上端に外側に向けてフック状に突出した第2係合凸部9と、該第2係合凸部9に続く下方に第2係合凹部10が形成されている。
第2係合部8は、前方操作面11からの押圧操作により前後にわずかに揺動するように、エラストマー等からなる弾性体12によって囲繞され、底壁1、前壁3とは弾性体12を介して連設されている。
弾性体12は、第2係合部8の前方操作面11を覆って、さらに第2係合凹部10の下面に突出して緩衝部13を形成している。
【0015】
容器本体Aの後壁2の左右両端部には、ヒンジ部Cを構成する軸受け部14が設けられ、蓋体Bを連結するヒンジ軸(図示していない)を嵌合する軸孔15が形成されている。
後壁2の中央付近のヒンジ軸の軸心よりも上方位置には、弾性体12が後方に突出して跳ね上げ凸部16を形成している。
弾性体12はインサート成形により容器本体Aと一体に成形され、前壁3側の第2係合部8を囲繞する部位と跳ね上げ凸部16の周辺部位とは、収容部6内を縦断する成形路17で連絡されており、成形路17は内ケース5の底部溝18により覆われている。
【0016】
蓋体Bは、容器本体Aと一致する略長方形の外形を有し、平面状の頂壁21の端部から蓋枠22が垂設され、閉蓋時には、その下端は容器本体Aの前壁3,側壁4および軸受け部14の上端にほぼ接して収容部6を閉鎖するようになっている。
頂壁21の裏側の蓋体B内面には、鏡23が保持枠24により取り付けられている。
【0017】
蓋体Bのヒンジ部Cには、容器本体Aの左右両端の軸受け部14の間に嵌入するように、蓋枠22の内側に蝶番腕25が軸受け部14に摺接して左右2箇所に設けられ、ヒンジ軸を嵌合する蝶番軸孔26が穿設されている。
図4に示すように、左右の蝶番腕25の間のヒンジ部Cの中央付近には、跳ね上げ凸部16に対向するように、蓋枠22の内側に跳ね上げ押圧部27が形成されており、その内側端面は、閉蓋時には跳ね上げ凸部16に圧接するような形状をなしている。
【0018】
図3に示すように、蓋体Bのヒンジ部Cと反対側の蓋枠22の中央付近には、容器本体Aの第2係合部8に係合する第1係合部28が設けられ、その下端部に内側に向けてフック状をなした第1係合凸部29と、第1係合凸部29に続く上方に第1係合凹部30が形成されている。
閉蓋時には、蓋体Bの第1係合凸部29が容器本体Aの第2係合凹部10に嵌合するとともに、容器本体Aの第2係合凸部9が蓋体Bの第1係合凹部30に嵌合するように構成されている。
その際、第1係合部28の下端が弾性体12の緩衝部13を圧接するようになっており、緩衝部13が第2係合凹部10の下面から突出する高さHは、第1係合凸部29が第2係合凸部9を乗り越えた後、第1係合部8の下端が緩衝部13に接し、緩衝部13を押圧しながら第1係合凸部29が第2係合凹部10に嵌合するように設定されている。
【0019】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
図3に示すように、コンパクト容器が閉蓋しているときは、蓋体Bの第1係合部28の第1係合凸部29は容器本体Aの第2係合部28の第2係合凹部10に嵌合し、第1係合部28の下端は弾性体12の緩衝部13に圧接している。
また、図4に示すように、蓋枠22の内側に設けられた跳ね上げ押圧部27の内側端面が、容器本体Aの後壁2の跳ね上げ凸部16に圧接している。
この状態では、緩衝部13が常に第1係合部28の下端を押し上げて、フック状の第1係合凸部29とフック状の第2係合凸部9とが互いに引っ掛けあうように密接しているから、安定した係合状態が保たれガタ付き音が発生するようなことはない。
【0020】
この閉蓋状態から、容器本体Aの前方操作面11を押圧すると、第2係合部8は、弾性体12によって囲繞され、底壁1、前壁3とは弾性体12を介して連設されているから、図3中に2点鎖線で示されるように、弾性体12の弾性によって後方に揺動し、第1係合部28は緩衝部13により押し上げられながら、第1係合凸部29が第2係合凹部10から離脱し、係合が解除される。
また、蓋体Bの係合が解除されるにともなって、跳ね上げ押圧部27によって圧接変形されていた弾性体12の跳ね上げ凸部16が復元し、跳ね上げ押圧部27を一気に押し上げるから、容器本体Bの前方操作面11を押圧して蓋体Bとの係合を解除するだけで、蓋体Bは同時に上方に跳ね上げられ、すみやかに使用を開始することができる。
なお、本実施例では、跳ね上げ凸部16は、容器本体Aの後壁2の後面に突出して設けられているが、後壁2の上面に設けても良く、その場合は、跳ね上げ押圧部27は跳ね上げ凸部16の上部から圧接するように構成される。
【0021】
この際、弾性体12は、インサート成形により容器本体Aと一体に成形されているから、弾性体12により囲繞された第2係合部28を形成したことにより、従来のように操作部材を別途製造してスプリングなどで容器本体に組み込む必要はなく、また、弾性体12により跳ね上げ凸部16を形成したから、蓋体Bを跳ね上げるためにスプリングなどの別途の手段を必要とせず、製造が容易となった。
また、弾性体12は、前壁3に連設するとともに第2係合部の前方操作面を覆っているので、第2係合部が前方に突出するようなことがなく、前面が連続した平面を形成してデザイン的にも優れている。さらに、弾性体12をゴムなどのエラストマーで形成すれば、操作時に手を滑らせるようなことがなく、操作性が向上する。
なお、本実施例では、弾性体12は、成形路17から収容部6内に一定面積の広がりをもって形成され、さらに容器本体Aの底壁1または後壁2を貫通して外周面に広がる第2係合部28を囲繞する部位および跳ね上げ凸部16を形成しているが、このようにすると容器本体Aとの一体強度が強まり耐久性がよい。
【0022】
次に、蓋体Bを閉めるときには、蓋体Bの第1係合部28と容器本体Aの第2係合部8が互いに端部をすり合わせながら第1係合凸部9が第2係合凸部29を乗り越えると、第2係合凹部30に嵌合し始めるが、そのとき第1係合部28の下端は緩衝部13に接触を始め、緩衝部13を押圧変形させながら第1係合凸部29が第2係合凹部10に嵌合していく。
同時に、蓋体Bの跳ね上げ押圧部27は容器本体Aの跳ね上げ凸部16に接触し始め、次第に跳ね上げ凸部16を押圧変形しながら圧接していく。
そして、前述したように、第1係合凸部29が第2係合凹部10嵌合して第1係合部28の下端が緩衝部13に圧接し、跳ね上げ押圧部27が跳ね上げ凸部16に圧接して、完全に閉蓋された状態となる。
【0023】
このように、蓋体Bの第1係合部28の下端が緩衝部13を押圧しながら第1係合凸部29が第2係合凹部10に嵌合し、同時に跳ね上げ押圧部27が跳ね上げ凸部16に圧接しながら閉蓋するから、弾性体12が、その弾性力により互いの係合凸部が嵌合する時の衝撃を吸収し、不快な密閉音を発生することがないとともに、蓋体Bを閉めるための力の変化が小さくなってソフトタッチで良好な操作感が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のコンパクト容器は、化粧料などを収納して携帯するコンパクト容器に適用して好適なものであるが、ヒンジ軸回りに開閉する蓋体がフック状の係合部で容器本体に係合する形態の容器であれば広く利用可能であり、製造が容易で良好な操作感が得られるものである。
【符号の説明】
【0025】
A 容器本体
B 蓋体
C ヒンジ部
H 緩衝部の突出高さ
1 底壁
2 後壁
3 前壁
4 側壁
5 内ケース
6 収容部
7 爪
8 第2係合部
9 第2係合凸部
10 第2係合凹部
11 前方操作面
12 弾性体
13 緩衝部
14 軸受け部
15 軸孔
16 跳ね上げ凸部
17 成形路
18 底部溝
21 頂壁
22 蓋枠
23 鏡
24 保持枠
25 蝶番腕
26 蝶番軸孔
27 跳ね上げ押圧部
28 第1係合部
29 第1係合凸部
30 第1係合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料等の内容物を収容する容器本体と、容器本体にヒンジ軸を介して回動可能に取り付けられた蓋体とからなるコンパクト容器であって、
蓋体には、ヒンジ部と反対側の前面に、フック状の第1係合凸部を設けた第1係合部が垂設され、
容器本体の前面には、前記第1係合部に係合する第2係合部が、容器本体とインサート成形により一体成形された弾性体により囲繞されて揺動可能に立設され、
第2係合部は、上端にフック状の第2係合凸部と、第2係合凸部に続く下方に第2係合凹部が形成され、前記弾性体が、第2係合部の前方操作面を覆うとともに第2係合凹部の下面に突出して緩衝部を形成していることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
緩衝部の第2係合凹部下面からの突出高さは、閉蓋時において、蓋体の第1係合凸部が容器本体の第2係合凸部を乗り越えた後、第1係合部の下端が緩衝部に接し、緩衝部を押圧しながら第1係合凸部が第2係合凹部に嵌合するように設定したことを特徴とする請求項1記載のコンパクト容器。
【請求項3】
弾性体は、容器本体のヒンジ部側の後面にヒンジ軸より上方で突出する跳ね上げ凸部を形成し、
蓋体の頂壁端部から垂設された蓋枠のヒンジ部側の内側には、跳ね上げ凸部に対向する位置に跳ね上げ押圧部を設け、
跳ね上げ凸部は、閉蓋時には跳ね上げ押圧部に圧接され、開蓋時には跳ね上げ押圧部を押し上げて蓋体を跳ね上げるように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のコンパクト容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−115410(P2012−115410A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266886(P2010−266886)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)