説明

コンパクト容器

【課題】蓋体を開くときの操作性を向上できるコンパクト容器を提供する。
【解決手段】容器本体2と、容器本体2に開閉可能に連結された蓋体4と、を備えるコンパクト容器1において、容器本体2に、容器本体2の外壁から露出される操作部26と、第1磁石27が収容される収容部28と、操作部26と収容部28とを連結する軸部29と、を備える揺動片25を配設するとともに、蓋体4に第2磁石44を配設し、揺動片25を、軸部29回りに、第1磁石27と第2磁石44の異種の磁極同士が互いに接近する閉位置と、第1磁石27と第2磁石44の同種の磁極同士が互いに接近する開位置との間で揺動自在に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコンパクト容器として、アイシャドーやアイライナー、ファンデーション等の化粧料を収容する容器本体と、この容器本体の後部に開閉自在に連結された蓋体と、容器本体と蓋体との間の閉状態を保持するための係合機構と、を備えるものが従来から知られている。
【0003】
特許文献1には、上記係合機構に磁石の磁力を利用したものが開示されている。この容器では、容器本体に、S,N両磁極が前後方向に連なるように配置された第1磁石が、前方付勢状態で後方移動自在に配設されるとともに、第1磁石を後方に押し込み可能な操作部が設けられている。他方、蓋体には、第2磁石が設けられており、操作部の押し込みにより、第1磁石及び第2磁石の同種の磁極同士が接近することで、両磁石間に互いに反発し合う磁力が発生し、容器本体から蓋体が開かれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭59−25283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に係る容器では、蓋体を開くときの操作性を向上させることに改善の余地がある。
【0006】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、蓋体を開くときの操作性を向上できるコンパクト容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のコンパクト容器は、内容物を収容する容器本体と、該容器本体に開閉可能に連結された蓋体と、を備えるコンパクト容器であって、前記容器本体に、該容器本体の外壁から露出される操作部と、第1磁石が収容される収容部と、前記操作部と前記収容部とを連結する軸部と、を備える揺動片が配設されるとともに、前記蓋体に、第2磁石が配設され、前記揺動片が、前記軸部回りに、前記第1磁石と前記第2磁石の異種の磁極同士が互いに接近する閉位置と、前記第1磁石と前記第2磁石の同種の磁極同士が互いに接近する開位置との間で、揺動自在に支持されている点に特徴を有する。
【0008】
この本発明によれば、操作部を操作し、揺動片を軸部回りに揺動させることで、揺動片が閉位置から開位置に移動されるので、例えば操作部を前方付勢力に抗して直線的に移動させて蓋体を開く構成に比べて、操作部に要する力を抑えることが可能になり、蓋体を開くときの操作性を向上させることができる。
【0009】
また、上記コンパクト容器では、前記容器本体に、前記開位置における前記揺動片の前記操作部が係止される係止部が形成されていることが好ましい。
【0010】
この場合には、係止部を設けることで、揺動片を開位置に容易かつ高精度に位置合わせすることができる。
また、係止部に操作部を係止させておくことにより、第1磁石と第2磁石の同種の磁極同士が互いに接近したときに、両磁石間に生ずる互いに反発し合う磁力によって、操作部が係止部から離間するように揺動片を軸部回りに閉位置側向けて揺動させることができる。これにより、例えばスプリング等を用いずに、揺動片を開位置から閉位置に復帰できるため、部品点数を抑制でき、かつ閉操作の操作性も向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓋体の開閉における操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るコンパクト容器の上面図である。
【図2】上記コンパクト容器の上面図である。
【図3】上記コンパクト容器の右側面図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図6】上記コンパクト容器に配設された揺動片の上面図である。
【図7】上記揺動片の正面図である。
【図8】上記コンパクト容器に配設された揺動片の作動説明図である。
【図9】上記コンパクト容器に配設された揺動片の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るコンパクト容器を説明する。
【0014】
図1〜図3に示すように、本実施形態のコンパクト容器1は、化粧品を収容する携帯用の蓋付き容器であり、平面視矩形状の扁平容器である。このコンパクト容器1は、図示しない化粧料及び化粧塗布具をそれぞれ収容する容器本体2と、容器本体2にヒンジ3を介して連結された開閉可能な蓋体4と、を備えている。
【0015】
なお、以下の説明では、容器本体2からみて蓋体4側を「上」とし、その反対側を「下」とする。また、容器本体2からみてヒンジ3側を「後」とし、その反対側を「前」とする。また、前後方向(図中、Y方向)に直交する水平方向(図中、X方向)を「横方向」とする。
【0016】
図1、図4を参照し、容器本体2は、化粧料を収容する図示しない中皿を収容保持する第1凹部5と図示しない塗布具を収容する第2凹部6とが内部にそれぞれ形成された収容体であり、平面視矩形箱状の外装体7と、外装体7の内側に嵌合されて第1、第2凹部5、6をそれぞれ形成する内装体8と、で構成されている。
【0017】
外装体7は、底壁部9の外縁に周壁部10が全周に亘って立設された構成からなり、底壁部9は、横方向に長い平面視略矩形状の平板部である。周壁部10は、平面視矩形環状に形成された壁部であり、底壁部9に対して垂直に立設されている。図1に示すように、周壁部10には、ヒンジ3を構成する前方にへこむヒンジ凹部11が設けられた後方側の後壁部12と、前壁部13と、横方向両側の左側壁部14及び右側壁部15と、が備えられている。
【0018】
内装体8は、第1、第2凹部5、6をそれぞれ形成する第1、第2枠部16、17が横方向に並設された枠体であり、第1、第2枠部16、17の上端に設けられたフランジ部18の外縁が外装体7の周壁部10の上端面に係止されており、フランジ部18の上面が内装体8の上面を構成している。
【0019】
第1、第2枠部16、17はそれぞれ四隅が弧状に形成されており、図5も参照し、第1、第2枠部16、17は仕切り壁部19を介して横方向に一体に連結されている。外装体7と内装体8との間において、仕切り壁部19より前方に位置する部分及び仕切り壁部19より後方に位置する部分にはそれぞれ、比較的広い前後方向の隙間が設けられている。
【0020】
蓋体4は、天壁部20と、天壁部20の外縁の全周に亘って垂下された周壁部21と、を備え、天壁部20は横方向に長い平面視略矩形状の平板部であり、容器本体2の上方に位置する。また周壁部21は、平面視矩形環状に形成された壁部であり、天壁部20に対して垂直に形成されている。
【0021】
周壁部21の後方側の後壁部22にはヒンジ軸壁23が垂下されており、ヒンジ軸壁23は、ヒンジ凹部11の内側に配置されている。ヒンジ軸壁23の両端部とヒンジ凹部11とが横方向外側から挿入される軸部23A,23Aを介して連結されることでヒンジ3が形成される。また、天壁部20の下面には、鏡体24が配設されている。
【0022】
図1〜図3、及び図5を参照し、外装体7と内装体8との間において、第1、第2枠部16、17の前方に位置する部分に、揺動片25が配設され、揺動片25は、容器本体2の外壁から露出される操作部26と、第1磁石27が収容される収容部28と、操作部26と収容部28とを連結する軸部29と、を備えている。
【0023】
揺動片25は、右側壁部15から横方向中央に延在し、上下方向に延びる軸部29回りに揺動自在に設けられている。図2に示すように、軸部29の下部は外装体7の底壁部9における上面に形成された穴部30内に支持され、その上部は内装体8のフランジ部18における下面に形成された凹部31内に支持されている。穴部30及び凹部31は、第2枠部17の横方向中央部からわずかに右側にずれた位置に配設されている。
【0024】
図1〜図3を参照し、容器本体2には、前部右側の角部であって、前壁部13、右側壁部15及び底壁部9にわたる切欠き32が一体に形成され、操作部26は、切欠き32から容器外部に露出する。切欠き32のうち、前壁部13に形成された部分は、右側壁部15に形成された部分より長尺に形成されており、底壁部9に形成された部分は横方向に長尺な長方形状に形成されている。
【0025】
図6、図7も参照し、操作部26は、板状を呈し切欠き32を覆うように配置され、かつ軸部29より前方に位置する操作部本体37を備え、操作部本体37の左端部と軸部29とが前後方向に延びる連結部36を介して連結されている。
【0026】
操作部本体37の後面において右端部よりも左側にずれた位置には、上下方向に延在し後方に突出する板状の側方遮蔽部38が形成され、この側方遮蔽部38は、その後端部を右側壁部15の内側に配置して、切欠き32を横方向から覆うように位置している。また、操作部本体37の後面において下端部よりも上方の位置には、左右方向に延在し後方に突出する板状の下方遮蔽部39が形成されている。この下方遮蔽部39は、その後端部を底壁部9の内側に配置して、切欠き33を下方向から覆うように位置している。
【0027】
収容部28は、有底円筒状に形成され、その内部に、上下方向に異なる磁極が連なるように第1磁石27が収容されている。本実施形態では、第1磁石27のN極40が上方に配置され、S極41が下方に配置されている。収容部28は、仕切り壁部19の前方に配置され、横方向に延在する連結腕部42によって軸部29と連結されている。連結腕部42における収容部28との連結部分は、第2枠部17の弧状の角部に沿うように右側から左側に向かうに従い漸次後方に向けて延在している。
【0028】
ここで、図1、図6に示されるように、本実施形態では、連結腕部42の横方向の長さL1が操作部26の横方向の長さL2より長くなっている。また、図1、及び図2に示すように、内装体8の前部下面には、収容部28及び連結腕部42の上面に当接する複数の案内リブ43・・・が下方に向けて突設されている。
【0029】
一方、図1、図2及び図5を参照し、蓋体4には、第2磁石44が配設され、この第2磁石44は、上面視で、第1磁石27に一部重なる位置に配置されている。第2磁石44は、蓋体4の下面に凹設された収容凹部45に収容され、蓋体4と鏡体24とに挟持されるようにして保持されている。第2磁石44の異なる磁極は前後方向に連なるように配置されており、本実施形態では、第2磁石44のN極46は前方に、S極47は後方に配置されている。
【0030】
図8、図9を参照し、上記構成のコンパクト容器1では、操作部26が操作され、図中実線に示す状態から揺動片25が軸部29回りに揺動されると、収容部28が後方から前方に揺動する。この場合、第1磁石27のN極40と第2磁石44のS極47が接近した状態(図9、S1参照)から、第1磁石27のN極と第2磁石44のN極46が互いに接近する状態(図9、S2参照)になる。
【0031】
すなわち、このコンパクト容器1では、揺動片25が、第1磁石27と第2磁石44の異種の磁極(N極40とS極47)同士が互いに接近する「閉位置(実線)」と、第1磁石27と第2磁石44の同種の磁極(N極40とN極46)同士が互いに接近する「開位置(二点鎖線)」との間で揺動する。
【0032】
ここで、上記開位置において揺動片25の操作部26は、右側壁部15に形成された切欠き32の縁部に係止されて回り止めされ、この切欠き32の縁部は、揺動片25の操作部26を係止する係止部34Aとして機能する。また、開位置から閉位置に揺動片25が揺動された場合は、収容部28及び連結腕部42のうち少なくとも一方が、第1,第2枠部16,17に当接され、揺動が規制される。
【0033】
次に、上記コンパクト容器1の作用について説明する。
【0034】
図8、図9に示すように、コンパクト容器1では、操作部26を操作し、第1磁石27と第2磁石44の異種の磁極(N極40とS極47)同士が互いに接近する閉位置から、第1磁石27と第2磁石44の同種の磁極(N極40とN極46)同士が互いに接近する開位置に揺動させることで、両磁石間に生ずる互いに反発し合う磁力を発生させ、蓋体4を容器本体2から開くことができる。
【0035】
ここで、操作部26を操作し、揺動片25を軸部29回りに揺動させることで、揺動片25が閉位置から開位置に移動されるので、例えば操作部26を前方付勢力に抗して直線的に移動させて蓋体を開く構成に比べて、操作部26に要する力を抑えることが可能になり、蓋体を開くときの操作性を向上させることができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、軸部29から第1磁石27を収容する収容部28までの距離が、軸部29から操作部26の端部までの距離よりも長い。このため、揺動片25が軸部29回りに揺動することと、閉位置と開位置との間を移動することとがあいまって、操作部26に加える操作量を少なく抑えても、収容部28を大きく変位させることが可能になる。よって、蓋体4の開閉を確実に切替えることができる。
【0037】
また、容器本体2に、開位置における揺動片25の操作部26が係止される係止部34Aを設けることで、揺動片25を開位置に容易かつ高精度に位置合わせすることができる。
【0038】
また、係止部34Aに操作部26を係止させておくことにより、蓋体4を閉鎖方向に回動させて第1磁石27と第2磁石44の同種の磁極同士が互いに接近したときに、両磁石間に生ずる互いに反発し合う磁力によって、操作部26が係止部34Aから離間するように揺動片25を軸部29回りに閉位置側に向けて揺動させることができる。これにより、例えばスプリング等を用いずに、揺動片25を開位置から閉位置に復帰できるため、部品点数を抑制でき、かつ閉操作の操作性も向上できる。
【0039】
以上、本発明に係るコンパクト容器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、揺動片25の収容部28の第1磁石27をN極40が上方に位置するように配置したが、S極41を上方に配置し、蓋体4側の第2磁石44の前後の向きを上記実施形態とは逆にしてもよい。また、揺動片25の収容部28に第1磁石27の磁極が前後方向に連なるように配置し、蓋体4側の第2磁石44の磁極が上下方向に連なるような態様としても構わない。
【0041】
また、上記実施形態では、収容部28と軸部29との間に連結腕部42を設けたが、この連結腕部42をなくし、収容部28と軸部29とを近接させて直接的に連結する態様としても構わない。
さらに、コンパクト容器の形状も上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 コンパクト容器
2 容器本体
4 蓋体
25 揺動片
26 操作部
27 第1磁石
28 収容部
29 軸部
44 第2磁石
34A 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体と、該容器本体に開閉可能に連結された蓋体と、を備えるコンパクト容器であって、
前記容器本体に、該容器本体の外壁から露出される操作部と、第1磁石が収容される収容部と、前記操作部と前記収容部とを連結する軸部と、を備える揺動片が配設されるとともに、前記蓋体に、第2磁石が配設され、
前記揺動片が、前記軸部回りに、前記第1磁石と前記第2磁石の異種の磁極同士が互いに接近する閉位置と、前記第1磁石と前記第2磁石の同種の磁極同士が互いに接近する開位置との間で、揺動自在に支持されていることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
前記容器本体に、前記開位置における前記揺動片の前記操作部が係止される係止部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンパクト容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−245165(P2012−245165A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119310(P2011−119310)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)