説明

コンパクト容器

【課題】落下した場合などの強い衝撃による本体容器内での化粧料の飛散を防止することができる。
【解決手段】化粧料を充填、保持する中皿7を収納する第1区画凹部5cを有する容器本体2と、容器本体2に支持されるとともに開閉する蓋体3とを備え、中皿7と容器本体2との間に衝撃緩衝部材としてのケース10を配設し、容器本体2に中皿7を塞ぐ内蓋体4が第2ヒンジ部41を介して開閉自在に支持されたコンパクト容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば化粧料を収容して携帯するために利用されるコンパクト容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のコンパクト容器として、アイシャドーやアイライナー、ファンデーション等の化粧料を塗布具(パフ等)とともに収容する容器本体と、この容器本体に対してヒンジ軸を介して揺動可能に連結された蓋体とを備え、蓋体に係合片が設けられ、この係合片を容器本体に形成された係止部に係合させることで閉状態が保持される構成のものが知られている。このような容器本体は、中皿収容用の内部空間を有しており、例えば化粧料などの内容物を使い切ったのちに新品の内容物を中皿ごと入れ替えすることができるようになっている。
【0003】
通常、このようなコンパクト容器に適用される中皿は、容器本体に直接或いは枠体を介して係合手段にて連係保持されているが、落下等により容器そのものに衝撃が加えられた場合にあっては、その衝撃が中皿へ伝達され、中皿が容器本体から外れたり、ドライタイプの化粧料等の内容物にひびが入って割れてしまうおそれがあった。
【0004】
そこで、例えば下記特許文献1に記載されているような、中皿と容器本体との間に空胴を形成する中空凸部や中空凸条が形成されたクッション部を備え、中皿の周囲及び底部を囲繞する衝撃緩衝層を形成して中皿を保持することで、中皿に対する衝撃力の影響を軽減し得るコンパクト容器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−166976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来のコンパクト容器では、中皿内の化粧料の割れを防ぐことは可能となるが、蓋体と容器本体との間に内部空間があるため、落下した場合の衝撃によって本体容器内で化粧料が飛び散るおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、落下した場合などの強い衝撃による本体容器内での化粧料の飛散を防止することができるコンパクト容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係るコンパクト容器は、化粧料を充填、保持する中皿を収納するための区画凹部を有する容器本体と、該容器本体に支持されるとともに開閉する蓋体と、を備えたコンパクト容器であって、前記中皿と前記容器本体との間に衝撃緩衝部材を配設してなり、前記容器本体には、前記中皿を塞ぐ内蓋体がヒンジ部を介して開閉自在に支持されていることを特徴としている。
【0009】
本発明に係るコンパクト容器によれば、内蓋体をヒンジ部回りに回動させ中皿の開口を塞ぐように配置して閉じるとともに、内蓋体の閉状態において蓋体を容器本体に積み重ねるようにして閉じることでコンパクト容器の閉状態が保持される。
そして、本コンパクト容器では、中皿と容器本体との間に衝撃緩衝部材を配設したので、落下やぶつけること等によりコンパクト容器に衝撃が加えられても、その衝撃緩衝部材により衝撃力が分散され、中皿の脱落や化粧料の割れにつながる衝撃力の伝達を抑制することができる。
【0010】
また、内蓋体および蓋体が閉状態である場合において、コンパクト容器に上述したような強い衝撃が加わっても、中皿が内蓋体によって塞がれているので、その衝撃によって中皿に充填されている化粧料が中皿から飛び出し、容器本体内で飛散するのを防止することができる。
【0011】
しかも、内蓋体は、蓋体の内側に設けられるため、蓋体が閉状態のときには上述した衝撃によって容易に開くことがないという利点がある。
さらに、内蓋体が容器本体側に支持されていて中皿とは別体となるので、中皿自体に蓋を設ける必要がなく、コンパクト容器の構造を複雑にすることがなく簡素化を図ることができる。
【0012】
また、上記本発明のコンパクト容器において、前記容器本体は、外枠と、該外枠内に配設されるとともに前記中皿を収納するための区画凹部の開口を形成する内枠とからなり、前記内蓋体は、前記内枠に開閉自在に支持されていることが好ましい。
【0013】
この場合には、内蓋体のヒンジ部を内枠に支持させることで、そのヒンジ部を蓋体の内面側に配置することが容易となり、コンパクト容器の構造をより簡素化させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るコンパクト容器によれば、蓋体の内側で中皿を塞ぐ内蓋体を設けることで、落下等によりコンパクト容器に強い衝撃が加わった場合でも、本体容器内での化粧料の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るコンパクト容器の実施形態を示す部分縦断面図である。
【図2】コンパクト容器の側断面図であって、図1に示すA−A線断面図である。
【図3】コンパクト容器の側断面図であって、図1に示すB−B線断面図である。
【図4】コンパクト容器の部分拡大断面図であって、図1に示すC−C線断面図である。
【図5】図2に示すコンパクト容器の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るコンパクト容器の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のコンパクト容器1は、容器本体2と、この容器本体2に重なるようにして配置される蓋体3と、蓋体3の内側に配置されるとともに容器本体2に設けられた内蓋体4とを備えて概略構成されている。
なお、図1から図3では、蓋体3が閉じられた状態を示している。また、本実施形態では、コンパクト容器1において、図2及び図3に示すY方向に沿って蓋体3側を上側といい、その反対側を下側という。
【0017】
図1乃至図3に示すように、蓋体3は、容器本体2の一端側(図1において左側の長辺側)に設けられた第1ヒンジ部31を備え、この第1ヒンジ部31によって開閉自在に支持されている。この蓋体3は、平面視で略長方形状をなしており、周壁3aと、周壁3aの上端で一体連結する蓋面(頂壁)3bとからなり、この蓋面3bの下面、すなわち閉状態において容器本体2と対向する内面に鏡Mが装着されている。
第1ヒンジ部31は、軸方向両端の中心部に軸受孔31a、31aが設けられた筒形状をなす部分である。これら軸受孔31aには容器本体2に対して蓋体3を回転可能に係合するヒンジ軸(ピン)21が配設され、これにより蓋体3が第1ヒンジ部31とともにヒンジ軸21回りに回転自在に支持されている。
【0018】
蓋体3の他端側(図1において右側)には、容器本体2に対して閉状態で保持するための係合部が設けられている。この係合部は、蓋体3の内側から垂下され前記一端側に向けて突設された係合突部を有する係合片(図示省略)が容器本体2に対して係合するとともに、容器本体2側に設けられるプッシュピース32により離脱する構成となっている。
【0019】
容器本体2は、平面視形状が矩形状(蓋体と略同形の長方形状)で有底筒状に形成された外枠5と、化粧料を充填、保持する凹部を有する中皿7を収納する区画凹部の開口を形成し、前記外枠5に嵌合される内枠6とからなる。
外枠5は、周壁5aと、この周壁5aの下端で一体連結する底壁5bとからなり、その内側には中皿7と、パフ等の化粧料を塗布する塗布具を収納する内カップ8とを配置する区画凹部5c、5dが形成されている。そして、外枠5における4つの辺部のうち1つ(図1において左側)には、蓋体3を回転可能に連結する前記第1ヒンジ31が配置される凹部が設けられている。
なお、図2及び図4に示すように、蓋体3が閉じた状態において、周壁5aの上面に蓋体3の周壁3aの下端が当接しており、このとき中皿7と蓋体3の蓋面3bとの間には所定の隙間が設けられている。
【0020】
ここで、一方の第1区画凹部5c(図2において紙面下側)に配置される中皿7は、周壁7aと、この周壁7aの下端に一体連結する底壁7bとからなり、周壁7aの外周における複数個所にはアンダーカット係合用の凹部7c(図4参照)が設けられている。
また、図2に示すように、内カップ8は、周壁8aと底壁8bから形成されており、他方の第2区画凹部5d(図2において紙面上側)に配置された状態で中皿7側の内面上縁部にアンダーカット係合用の凹部8cが設けられている。そして、周壁8aの上端には外側に張り出す鍔部8dが設けられており、その鍔部8dを外枠5の周壁5a及び後述するケース10の周壁10aの上面に係止されている。
【0021】
内枠6は、容器本体2の外周縁部(周壁5aの上面)に沿って配置される枠体9と、その枠体9と一体成形された前記内カップ8とからなる。
また、第1区画凹部5cにおいて、中皿7と容器本体2との間には衝撃緩衝部材としてケース10が配置されている。
前記ケース10は、周壁10aと底壁10bがゴムやエストラマー等の軟質材から形成されており、中皿7の周囲および底部を密着状態で囲繞する衝撃緩衝層を形成するものであって、その周壁10aの内面には、中皿7の凹部7cに係合する凸部10cが設けられている。前記ケース10は、別部材として形成して容器本体2および/あるいは内枠6と係合する構成、容器本体2と内枠6とで挟持する構成、インサート形成あるいは接着剤等による接着により内枠6あるいは容器本体2と一体化する構成、など、その配置方法は限定されない。
また、このケース10によって中皿7が保持されている。
【0022】
また、図4に示すように、外枠5の底壁5bの4箇所(第1区画凹部5cの4角部の位置)に曲面凹部5eが設けられ、ケース10の底壁10bの四隅において一体的に球状脚部11が設けられている(図1参照)。この球状脚部11は、ケース10と同材質により形成され、曲面凹部5eに適合して中皿7の第1区画凹部5cでの位置決めを行う機能を有するものであり、曲面凹部5eに適合することでケース10の底壁10bと外枠5の底壁5bとの相互間に微小隙間が形成されている。
さらに、外枠5の底壁5bには、図2に示すように、ケース10の底壁10bを押圧して中皿7の取り外しを行うための開口5fが設けられている。
【0023】
図2に示すように、内蓋体4は、内面にパッキンPが装着されており、一端が容器本体2における外枠5の短辺側に設けられた第2ヒンジ部41を介して開閉自在に支持されている。すなわち、内蓋体4は、閉状態において、ケース10(中皿7)の上端開口を塞ぐ蓋部材であり、閉状態の蓋体3の内側に配置されている。そして、図1に示すように、内蓋体4の一端に凹部が形成されており、この凹部の対向する内側面にヒンジ軸42が設けられている。
第2ヒンジ部41は、図5に示すように、軸方向両端の中心部に軸受孔41aが設けられた筒状をなし、軸方向を容器本体2の短辺に沿う方向に向けて枠体9と一体に形成されているこれら軸受孔41aにはヒンジ軸42が回転可能に係合され、これにより内蓋体4がヒンジ軸42回りに回転自在に支持されている。なお、図5では、蓋体3が省略されている。
【0024】
また、図2に示すように、内蓋体4の他端(第2ヒンジ部41と反対側)には、第2ヒンジ部41側へ向けて突設された係止爪部43が設けられており、この係止爪部43が内カップ8の凹部8cに着脱可能に係止されている。
なお、本実施形態では、図5に示すように、内蓋体4の閉状態において内面のパッキンPによって中皿7の周壁7aが上から押さえられている。
【0025】
次に、上述したように構成されたコンパクト容器1の作用について説明する。
図2及び図5に示すように、コンパクト容器1は、内蓋体4を第2ヒンジ部41回りに回動させることで、内蓋体4が中皿7の開口を塞ぐように配置して閉じられ、係止爪部43を内カップ8の凹部8cに係止させて閉状態が保持される。さらに、内蓋体4の閉状態において、蓋体3を第1ヒンジ部31回りに回動させて容器本体2に積み重ねるように配置するとともに、蓋体3の係合部を容器本体2に係合させることで、コンパクト容器1の閉状態が保持される。
なお、コンパクト容器1を開けるときには、プッシュピース32の操作部を押圧することで蓋体3を開き、さらに蓋体3の開状態において内蓋体4の係合部32の内カップ8に対する係合を解除することで、内蓋体4を開くことができる。
【0026】
そして、コンパクト容器1では、衝撃緩衝部材であるケース10により中皿7を密着状態で囲繞するとともに、このケース10を球状脚部11を介して外枠5の第1区画凹部5cに配置したので、落下やぶつけること等によりコンパクト容器1に衝撃が加えられても、球状脚部11などにより衝撃力が分散され、中皿7の脱落や化粧料の割れにつながる衝撃力の伝達を抑制することができる。
【0027】
また、内蓋体4および蓋体3が閉状態である場合において、コンパクト容器1に上述したような強い衝撃が加わっても、中皿7が内蓋体4によって塞がれているので、その衝撃によって中皿7に充填されている化粧料が中皿7から飛び出し、容器本体2内で飛散するのを防止することができる。
しかも、内蓋体4は、蓋体3の内側に設けられるため、蓋体3が閉状態のときには上述した衝撃によって容易に開くことがないという利点がある。
【0028】
さらに、内蓋体4が容器本体2側(すなわち、内枠6の枠体9)に支持されていて中皿7とは別体となるので、中皿7自体に蓋を設ける必要がなく、中皿7をレフィル式とする際に、このレフィル容器(中皿)の構造を複雑にすることがなく簡素化を図ることができる。
そして、内蓋体4の第2ヒンジ部41を枠体9に設けることで、その第2ヒンジ部41を蓋体3の内面側に配置することが容易となり、コンパクト容器1の構造をより簡素化させることができる。
【0029】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0030】
例えば、本実施形態では第2ヒンジ部41を枠体9に設けた構成としているが、第2ヒンジ部41の位置は限定されることはなく、例えば外枠5の周壁5aの一部に第2ヒンジ部41を設けるようにしても良い。
また、本実施形態では第2ヒンジ部41の構造として、ヒンジ軸42を係合する軸受孔41aを有する円筒状の構成を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、例えば枠体9と内蓋体4とが薄肉部を介して一体的に連結されるヒンジ構造であってもかまわない。
さらに、第1ヒンジ部31の軸線と第2ヒンジ部41の軸線とを直交するように配置しているが、これらの軸線が平行となるように各ヒンジ部を配置してもよいし、その他の位置関係とすることもできる。
【0031】
さらに、容器本体2、蓋体3、内蓋体4の形状などの構成は、化粧料の種類、量などの条件に基づいて適宜変更することが可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 コンパクト容器
2 容器本体
3 蓋体
4 内蓋体
5 外枠
5b 底壁
5c 第1区画凹部
5d 第2区画凹部
5e 曲面凹部
6 内枠
7 中皿
8 内カップ
9 枠体
10 ケース
10b 底壁
11 球状脚部
41 第2ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を充填、保持する中皿を収納するための区画凹部を有する容器本体と、該容器本体に支持されるとともに開閉する蓋体と、を備えたコンパクト容器であって、
前記中皿と前記容器本体との間に衝撃緩衝部材を配設してなり、
前記容器本体には、前記中皿を塞ぐ内蓋体がヒンジ部を介して開閉自在に支持されていることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
前記容器本体は、外枠と、該外枠内に配設されるとともに前記中皿を収納するための区画凹部の開口を形成する内枠とからなり、
前記内蓋体は、前記内枠に開閉自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のコンパクト容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−75565(P2012−75565A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222208(P2010−222208)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)