説明

コンピュータ・ネットワークを用いた集中管理型栽培システム

【課題】コンピュータ・ネットワームを用いて、栽培管理上のリスクの軽減、設備投資および維持コストの軽減を同時に図りながら、タモギダケなど生産量の少ない作物の小規模生産者数を増やし、生産量を拡大できる栽培システムを提供する。
【解決手段】高断熱および高気密のコンテナ20内に作物の栽培棚23と空調装置24と加湿装置26と照明装置27とを備え、コンテナ側の通信制御部35と栽培管理サーバー10とを通信回線網50により結ぶ。栽培管理サーバーは、栽培管理プログラムに従い、各コンテナに制御信号を送信して各コンテナの各装置を制御し、各コンテナ20内のセンサーによりコンテナ20内の温度、湿度、CO2濃度を含む各計測信号を受信して各コンテナの各装置をフィードバック制御する。栽培管理サーバー10は、栽培管理プログラムと各コンテナ20からの計測信号により生成される栽培管理に関する情報を各コンテナの生産者端末40に通知する通知手段14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ・ネットワークを用いた集中管理型栽培システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりキノコの一種としてタモギダケ(別名:ゴールデンシメジ)が知られている。このタモギダケは、一般的なキノコに比べてたんぱく質等の栄養素が豊富で、抗酸化物質も豊富とされている。近年人工栽培用の菌床が開発され、通年栽培が可能となっているが、現状では国内の一部の地域で栽培されているのみであり、生産量が少なく消費者の認知度も低いために販路においては安定した市場がなく、その結果として生産者が増えず安定供給ができず、消費も拡大できていなかった。
【0003】
このタモギダケの通年栽培には、専用ハウスに断熱・照明・空調の各設備と栽培ノウハウが必要で、設備投資が大きく、専業農家でなければ取り組みが難しく、また、栽培技術をマニュアル化しても、温度・湿度・日照・CO2の厳重な管理の下でなければ上手く栽培することは難しい。例えば、温度管理はハウスに設置した冷暖房装置に付属のリモコンを用いて手動で行い、また湿度管理は手動又は自動噴霧器等をタイマー等で周期的に作動させてハウス内にミスト噴射して行っており、管理や作業メニュー等は全て生産者本人が現場において判断し、作業を行っていた。
【0004】
CO2濃度の管理は最も重要とされるが、かかるCO2濃度の調整にあたっては、ハウスに強力な排気ファンおよび吸気ファンを装備し、必要以上に外気と内気の入れ替えを行っている。このため、かかる換気によってハウス内の湿度が低下し、キノコの菌床の乾燥を招くことから、ハウス内の加湿を過度に行わなければならなかった。また、かかる換気によってハウス内に大量の外気が流入することから、ハウス内の温度維持が難しく、必要以上に冷暖房等の光熱費が掛かり、ランニングコストが上がる要因となっていた。
【0005】
このように通年栽培には設備コストが多く掛かり、また栽培ノウハウも必要であることから、小規模生産農家が通年栽培を導入することは設備投資や維持コストの面や栽培管理リスクの面から難しかった。また、タモギダケのような生産量の少ない作物の生産者を増やして生産量を拡大し、安定供給して消費拡大を図ることが難しかった。
【0006】
例えば、キノコの人工栽培装置として、キノコの栽培瓶を収納したコンテナやクレーン装置を用いる栽培装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−346442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の栽培装置は、設備規模が大掛かりであって、小規模生産農家や、従来細々と生産されてきたタモギダケ等の人工栽培には適さないものである。
【0009】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたもので、コンピュータ・ネットワームを用いて、栽培管理上のリスクの軽減、設備投資および維持コストの軽減を同時に図りながら、タモギダケなど生産量の少ない作物の小規模生産者数を増やし、その生産量を拡大することのできる栽培システムを提供すること、また、出荷先の要望にあわせて計画的に無駄なく生産し、タイムリーに出荷できる栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る栽培システムは、コンピュータ・ネットワークを用いた集中管理型の栽培システムであって、
高断熱および高気密のコンテナ内に作物の栽培棚と空調装置と加湿装置と照明装置を備え、
各コンテナに設けた通信装置と栽培管理サーバーとを通信回線により結び、
栽培管理サーバーは、内蔵された栽培管理プログラムに従って、各コンテナに制御信号を送信して、各コンテナの空調装置と加湿装置と照明装置を制御し、かつ、各コンテナに設けたセンサーによりコンテナ内の温度、湿度、CO2濃度を含む各計測信号を受信して各コンテナの空調装置と照明装置をフィードバック制御し、
栽培管理サーバーは、内蔵された栽培管理プログラムと各コンテナから受信された計測信号により生成される栽培管理に関する情報を各コンテナの生産者端末に通知する通知手段を備えることを主要な特徴とする。
【0011】
本発明に係る栽培管理システムによると、高断熱および高気密のコンテナ内に作物の栽培棚と空調装置と加湿装置と照明装置を備えることにより、栽培設備を統一規格化することができる。そして、各コンテナに設けた通信装置と栽培管理サーバーとを通信回線により結び、栽培管理サーバーは、内蔵された栽培管理プログラムに従って、各コンテナに制御信号を送信して、各コンテナの空調装置と加湿装置と照明装置を制御し、かつ、各コンテナに設けたセンサーによりコンテナ内の温度、湿度、CO2濃度を含む各計測信号を受信して各コンテナの空調装置と照明装置をフィードバック制御することにより、温度・湿度・CO2濃度をコンピュータ・ネットワークを用いて遠隔にて集中管理するとともに、24時間自動監視することができ、これにより栽培上の無駄やミス、品質のムラ、人件費の軽減を図ることができ、栽培管理上のリスクを軽減できる。
【0012】
また、栽培設備をコンテナにより統一規格化することにより設備投資の軽減を図ることができる。例えば、共通の栽培施設として保冷型の海上コンテナ等に代表される、高断熱性、高気密性、完全遮光性を備える保冷コンテナを採用し、保冷コンテナ内に作物の栽培棚と空調装置と加湿装置と照明装置を取り付け、同コンテナに通信装置を取り付けて、ユニット化する。保冷コンテナは、建築許可が不要で、基礎工事も簡易に対応可能であり、移動や設置も非常に簡単であり、設置工事の期間と費用の軽減を図れる。また、コンテナの規格が統一されているので、コンテナに設置する設備等の規格も統一でき、量産化が図れる。このようなことからイニシャルコストの軽減につながる。
【0013】
さらに、栽培設備のユニット化により、資金計画に基づく段階的な増設や、生産状況に応じた設備の縮小、買い替えなども容易であり、ユニット化された栽培設備の中古市場も新たに構築できることから、生産者の設備投資へのリスク軽減の要素としても大きい。
【0014】
上に述べた保冷コンテナは、高気密性と高断熱性に優れ、容積も比較的小さいことから、コンテナ内の冷暖房効率が非常によく、光熱費等の軽減が図れる。また、完全遮光できるので現在時刻に関係なく作物(例えばタモギダケ)の自生環境を人工的に再現することが容易である。冷暖房時の消費電力のピークカットについては、夏季の昼間で外気温の高い時間帯にはコンテナ内に夜を再現して照明設備からの放熱をカットして冷房消費電力を抑制し、冬季の夜間で外気温の低い時間帯にはコンテナ内に昼を再現して照明設備から放熱を補助的に暖房に利用し、暖房消費電力を抑制し、省エネルギ対策を講じることができる。これによりランニングコストの軽減が図れる。
【0015】
また、保冷コンテナは、台風や地震等の災害にも強く、気候の影響を受けないので栽培計画に狂いが生じることがなく、これによって生産農家以外の者でも、敷地内に家庭菜園規模の空き地があれば容易に栽培に取り組むことが可能であり、これにより小規模生産でありながら生産者の数を増やすことが容易となる。
【0016】
本発明に係る栽培システムは、通知手段により生産者端末に通知される情報として、各コンテナの栽培管理プログラムに基づいて各コンテナで栽培される作物の生育過程に対応して生成される作業指示情報および出荷指示情報をそれぞれ含むことを第2の特徴とする。
【0017】
栽培管理サーバーから、各コンテナの栽培管理プログラムに従って、作物の生育過程に対応して計画的に作業指示情報および出荷指示情報が生産者端末に通知されるから、生産者は作物の生育に伴う諸作業や生育後の出荷作業を忘れたりタイミングを逃すことなく適切に行うことができる。これにより作業ミスや出荷ミスの防止が図られ、栽培管理上のリスクがより軽減される。
【0018】
本発明に係る栽培システムは、通知手段により生産者端末に通知される情報として、各コンテナから受信された温度、湿度、CO2濃度の計測信号のいずれか一つに異常値がある場合の緊急指示情報を含むことを第3の特徴とする。
【0019】
例えば、停電や落雷などで空調設備や照明設備に障害が発生した場合は、障害が発生したコンテナから受信される温度、湿度、CO2濃度の計測信号の少なくともいずれか一つに異常値が発生する。この異常値を受信すると、栽培管理サーバーは、障害が発生したコンテナの生産者端末に直ちに緊急指示情報を通知する。これによりコンテナの生産者は自分のコンテナに異常が発生したことを直ちに認識することができ、異常に対する緊急措置を講じることができる。
【0020】
本発明に係る栽培システムは、栽培プログラムとして、栽培対象の作物に対応した自生環境の再現プログラムが組み込まれていることを第4の特徴とする。
【0021】
本発明に係る栽培システムは、栽培管理サーバーに内蔵された栽培プログラムにおいて、出荷先端末からの出荷時期変更情報の受信により、同出荷時期変更情報に従って、各コンテナの温度、湿度、CO2濃度、照度の各栽培条件のいずれか一つ又は複数の設定値を変更することを第5の特徴とする。
【0022】
例えば、出荷先端末から出荷時期変更情報として、出荷時期の短縮あるいは伸長を要請する変更情報を直ちに受信すると、同出荷時期変更情報に従って、CO2濃度の設定値の変更や照度時間の設定値の変更等を直ちに行い、栽培管理サーバーから変更後の制御信号を送信し、同変更後の制御信号に基づき空調装置や照明装置の設定を変更し、作物の栽培を促進しあるいは抑制することができる。これにより、出荷先の要望にあわせて計画的に無駄なく生産し、タイムリーに出荷することができ、また、栽培した作物を廃棄する事態を防止することができる。
【0023】
本発明に係る栽培システムは、栽培管理サーバーが、栽培管理プログラムに含まれる温度、湿度、CO2濃度、照度を含む栽培条件情報と各コンテナから受信された温度、湿度、CO2濃度の各計測信号をコンテナ毎に蓄積する栽培管理情報データベースを備えることを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の栽培管理システムによると、高断熱および高気密のコンテナを栽培設備として用い、各コンテナと栽培管理サーバーとの間を通信回線により結び、栽培管理サーバーに内臓された栽培管理プログラムからの制御信号および各コンテナに設けたセンサーからの計測信号に基づき、各コンテナの空調装置と加湿装置と照明設備とを制御し、これにより各コンテナ内の栽培を集中管理するようにしたから、通年栽培における栽培管理上のリスクを軽減し、あわせて設備投資および維持コストの軽減を図ることができるようになった。これにより、タモギダケなど生産量の少ない作物の小規模生産数を増やして、その生産量を拡大することができるという優れた効果を奏する。
【0025】
また、本発明によると、栽培管理サーバーに内蔵された栽培プログラムにおいて、出荷先端末からの出荷時期変更情報の受信により、同出荷時期変更情報に従って、各コンテナの温度、湿度、CO2濃度、照度の各栽培条件のいずれか一つ又は複数の設定値を変更するようにしたから、出荷先の要望にあわせて計画的に無駄なく生産し、タイムリーに出荷することができ、また、栽培した作物を廃棄する事態を防止できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。図1ないし図7は本発明の一実施形態を示すもので、図中、符号Sは本発明に係るコンピュータ・ネットワークを用いた栽培システムの全体構成図を示している。なお、本実施形態では栽培される作物の例としてタモギダケ(別名ゴールデンシメジ)を取り上げている。
【0027】
栽培システムSは、図1に示すように、栽培管理サーバー10と複数の栽培コンテナ20・・・との間が通信回線網50により結ばれている。また、栽培管理サーバー10とそれぞれの栽培コンテナ20の生産者側の生産者端末40・・・との間、さらに、栽培管理サーバー10と出荷先の出荷先端末41・・・との間でも、それぞれ通信回線網50により結ばれている。通信回線網50には、インターネット回線網の他、モバイル通信網等も含まれる。
【0028】
栽培管理サーバー10は、図2に示すように、入出力部11と、栽培データベース部12と、制御部13と、通知部14とを備えている。栽培データベース部12は、作物の種類に応じて用意された栽培プログラム(本実施形態ではタモギダケの栽培プログラム)が格納された栽培プログラム格納部15と、栽培管理プログラムに含まれる温度、湿度、CO2濃度、照度を含む栽培条件情報と各コンテナから受信された温度、湿度、CO2濃度の各計測信号を含む栽培管理情報が栽培コンテナ20毎に蓄積された栽培管理情報格納部(栽培管理情報データベース)16とを備えている。
【0029】
栽培コンテナ(以下、「コンテナ」という)20は、高断熱性および高気密性を備える長尺な箱体で、図3(A)に示すように、コンテナ20の側面に出入口用のドア21が設けられている。コンテナ20内は、図3(B)に示すように、密閉空間の栽培室22とされ、左右の内側面寄りに多段(図示例の場合、5段)の栽培棚23,23が設けられている。図4に示すように、コンテナ20の前後の内側面には、コンテナ20内の空気調整を行う冷暖房機能付きの空調装置(エアコン)24がそれぞれ取り付けられている。空調装置24は、室外機25との協働によって、コンテナ20内の冷暖房と換気の運転をインバータ等制御により行うようになっている。
【0030】
図4に示すように、コンテナ20内の床面の略中央には、前後に沿って複数の加湿装置26が設置されている。加湿装置26は、コンテナ20内に霧を噴霧し、コンテナ20内を所定の湿度に保持するようになっている。また、図3(B)に示すように、コンテナ20内の天井付近および左右の栽培棚23付近には、複数の照明装置27が所定間隔で取り付けられている。照明装置27はコンテナ20内の栽培用人工光設備であり、コンテナ20内を所定の照度に保持するようになっている。照明装置27は例えばLED蛍光管からなる。
【0031】
さらに、図4に示すように、コンテナ20内には、各栽培棚23上に載置された菌床60の、タモギダケ菌の育成状況を撮影し、外部から観察するためのIPカメラ28が取り付けられている。
【0032】
コンテナ20内には、図1に示すように、コンテナ20内の温度を検出する温度センサー30、コンテナ20内の湿度を検出する湿度センサー31、コンテナ20内の照度を検出する照度センサー32、コンテナ20内のCO2濃度を検出するCO2濃度センサー33、菌床60のPH濃度を検出するPHセンサー34がそれぞれ設置されている。
【0033】
また、コンテナ20には、図1に示すように、通信制御部35が設けられている。通信制御部35は、栽培管理サーバー10からの各種制御信号を受信し、同制御信号を空調装置24、加湿装置26、照明装置27に送信し、各装置を制御運転し、また、温度センサー30、湿度センサー31、照度センサー32、CO2濃度検出センサー33、PHセンサー34からの各計測信号を受信し、同計測信号を栽培管理サーバー10に送信するようになっている。
【0034】
栽培管理サーバー10の、図2に示す栽培プログラム格納部15には、タモギダケの自生環境の再現プログラムが格納されている。タモギダケは、東北地方と北海道地方の一部に夏場の一時期のみ自生するキノコであり、同再現プログラムによって、東北地方と北海道地方の一部であって、夏場の一時期の自生環境条件が、高断熱性・高気密性・完全遮光性のコンテナ20内に再現されるようになっている。図2に示す通知部14は、タモギダケの栽培管理プログラムに基づいて各コンテナ20で栽培されるタモギダケの生育過程に対応して生成される作業指示情報および出荷指示情報、さらには、各コンテナ20から受信された温度、湿度、CO2濃度の計測信号のいずれか一つに異常値があった場合には栽培管理プログラムに基づいて緊急指示情報を生産者端末40に通知するようになっている。
【0035】
次に上記構成の栽培システムSにおいて、コンテナ20内でタモギダケを栽培する方法について、図5ないし図7を参照しながら、説明する。
【0036】
タモギダケの栽培にあたっては、コンテナ20内にタモギダケの自生環境を再現する。栽培管理サーバー10の管理者端末17からタモギダケの自生環境の再現プログラムを始動させると、栽培管理サーバー10から通信回線網50を通して各設備の制御信号がコンテナ20に送信される。コンテナ20の通信制御部35が制御信号を受信すると、空調装置24、加湿装置26、照明装置27に制御信号を送信し、これらの装置を制御運転し、コンテナ20内にタモギダケの自生環境を再現する。かかる環境下で、コンテナ20内の栽培棚23にタモギダケの多数の菌床60を多段に並べる。
【0037】
図5は管理者端末17の監視および操作画面例を示している。管理者端末17の画面18には、IPカメラ映像部18Aと、設定値表示部18Bと、室内値表示部18Cと、装置運転状態表示部18Dと、作業指示入力表示部18Eがそれぞれ設けられている。
【0038】
管理者は、IPカメラ映像部18Aに出力される映像によりコンテナ20内の様子をモニタリングできる。設定値表示部18Bには、タモギダケの自生環境の再現プログラムにより予め設定された温度・湿度・CO2濃度・PH値の各設定値が表示されるので、各設定値を確認できる。室内値表示部18Cにはコンテナ20内の温度・湿度・CO2濃度・PH値の実際値(現在値)が表示されるので、各実際値を確認できる。装置運転状態表示部18Dには空調装置24における冷暖房のON・OFF状態、加湿装置26における噴霧のON・OFF状態が表示される。
【0039】
管理者は、これらの情報を基にしてコンテナ20内のタモギダケの生育状況をチェックしながら、作業指示入力表示部18Eに作業指示情報を入力することができる。作業指示情報の入力後、送信釦18Fをクリックすると、作業指示情報を生産者端末40に通知できる。また、タモギダケの自生環境の再現プログラムに従い、通知部14からタモギダケの生育過程に対応する作業指示情報を一日毎にあるいは一定時間毎に自動生成し、生産者端末40に通知させることもできる。
【0040】
コンテナ20内の温度・湿度・照度・CO2濃度、菌床60のPH濃度は、それぞれ温度センサー30、湿度センサー31、照度センサー32、CO2濃度センサー33、PHセンサー34により常時計測され、計測信号がコンテナ20の通信制御部35から栽培管理サーバー10に送信される。栽培管理サーバー10は、受信した計測信号がタモギダケの自生環境再生プログラムに設定された各数値を維持するように空調装置24、加湿装置26、照明装置27をフィードバック制御する。
【0041】
図6はコンテナ20内の温度・湿度の制御フロー例を示している。図6(A)に示すように、コンテナ20内の室内温度は、空調装置24の主電源を入れ、24度に設定維持される(この時冷暖房はいずれも停止状態にある)が、室内温度が24度を下回ると(例えば22度になると)、温度センサー30からの計測信号により暖房運転が開始(ON)され、24度に戻ると暖房運転が停止(OFF)される。また、室内温度が24度を上回ると(例えば26度に至ると)、温度センサー30からの計測信号により冷房運転が開始(ON)され、24度に戻ると冷房運転が停止(OFF)される。同じく、図6(B)に示すように、コンテナ20内の湿度は、加湿装置26の主電源を入れ、90%に設定維持されるが、湿度が90%を下回ると(例えば85%になると)、湿度センサー31からの計測信号により、加湿運転が開始(ON)され、90%に戻ると加湿運転が停止(OFF)される。
【0042】
図7は空調・PHの制御フロー例を示している。図7(A)に示すように、コンテナ20内のCO2濃度は、空調装置24の主電源を入れ、300ppm以下に設定されるが、室内のCO2濃度が300ppmを上回ると、CO2濃度センサー33からの計測信号により、空調装置24の給排気ファンが運転され、室内のCO2を排出し、外気のO2を導入する。室内のCO2濃度が300ppm以下に低下すると、給排気ファンの運転が停止される。また、図7(B)に示すように、コンテナ20内の菌床60のPHは7に設定されるが、PHが7を下回ると管理者に警告ランプ(黄)が通知され、PHが7を上回ると警告ランプ(赤)が通知される。
【0043】
各装置に異常が発生した場合、例えば停電や落雷があると空調装置24や加湿装置26の主電源が直ちにOFF状態となる。栽培管理サーバー10は、これらの装置から異常信号を受信すると、通知部14が異常が発生したコンテナ20の生産者端末40に直ちに異常情報・緊急指示情報を通知する。コンテナ20の生産者は自分のコンテナに異常が発生したことを直ちに認識し、異常に対する緊急措置を講じることができる。
【0044】
出荷先端末41からの出荷時期変更情報として、出荷時期の短縮を要請する変更情報(例えば出荷日を前日に前倒しする)を栽培管理サーバー10が受信すると、管理者は、同出荷時期変更情報に従って、タモギダケの成長を促進するべく温度・湿度・CO2濃度の設定値を変更し、栽培管理サーバー10から変更後の制御信号を送信し、コンテナ20の空調装置24や加湿装置25、照明装置27の運転を変更制御する。これにより、タモギダケの成長を調整して、タイムリーに出荷することができる。
【0045】
このようにして、温度・湿度・照度・CO2濃度(酸素量)の4つの要素をコントロールすることにより、タモギダケの成長を促進しあるいは抑制し、常温では日持ちの悪いタモギダケを計画的に無駄なく生産して、タイムリーに出荷することができる。また、出荷のタイミングが遅れることによる作物の廃棄を防ぐことができる。
【0046】
以上説明したように、本発明に係る栽培システムによれば、コンピュータ・ネットワークを利用して、栽培管理上のリスクを軽減し、あわせて設備投資および維持コストの軽減を同時に図りながら、生産量の少ない作物の小規模生産者数を増やして、その生産量を拡大することができ、また、計画的に生産しつつ、その収穫時期を自由に調整し、非常にメリットの高い栽培システムである。なお、本発明に係る栽培システムは、代表例としてタモギダケを挙げたが、これに関わらず、他のキノコ類、他の作物にも適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る栽培システムは、タモギダケなどのキノコ類やその他の作物に関し、コンピュータ・ネットワークを用いた集中管理型の栽培システムとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態を示す栽培システムの全体構成図、
【図2】栽培管理サーバーの構成図、
【図3】栽培コンテナの縦断面図、
【図4】栽培コンテナの水平断面図、
【図5】栽培管理サーバーの管理者端末画面、
【図6】栽培コンテナ内の温度・湿度の制御フロー例、
【図7】栽培コンテナ内の空調・PHの制御フロー例である。
【符号の説明】
【0049】
10 栽培管理サーバー
11 入出力部
12 栽培データベース部
13 制御部
14 通知部
15 栽培プログラム格納部
16 栽培管理情報格納部(栽培管理情報データベース)
17 管理者端末
18 画面
18A IPカメラ映像部
18B 設定値表示部
18C 室内値表示部
18D 装置運転状態表示部
18E 作業指示入力表示部
18F 送信釦
20 コンテナ(栽培コンテナ)
21 ドア
22 栽培室
23 栽培棚
24 空調装置
25 室外機
26 加湿装置
27 照明装置
28 IPカメラ
30 温度センサー
31 湿度センサー
32 照度センサー
33 CO2濃度センサー
34 PHセンサー
35 通信制御部
40 生産者端末
41 出荷先端末
50 通信回線網
60 菌床
S 栽培システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ・ネットワークを用いた集中管理型の栽培システムであって、
高断熱および高気密のコンテナ内に作物の栽培棚と空調装置と加湿装置と照明装置を備え、
各コンテナに設けた通信装置と栽培管理サーバーとを通信回線により結び、
栽培管理サーバーは、内蔵された栽培管理プログラムに従って、各コンテナに制御信号を送信して、各コンテナの空調装置と加湿装置と照明装置を制御し、かつ、各コンテナに設けたセンサーによりコンテナ内の温度、湿度、CO2濃度を含む各計測信号を受信して各コンテナの空調装置と加湿装置と照明装置をフィードバック制御し、
栽培管理サーバーは、内蔵された栽培管理プログラムと各コンテナから受信された計測信号により生成される栽培管理に関する情報を各コンテナの生産者端末に通知する通知手段を備えることを特徴とする栽培システム。
【請求項2】
通知手段により生産者端末に通知される情報として、各コンテナの栽培管理プログラムに基づいて各コンテナで栽培される作物の生育過程に対応して生成される作業指示情報および出荷指示情報をそれぞれ含むことを特徴とする、請求項1記載の栽培システム。
【請求項3】
通知手段により生産者端末に通知される情報として、各コンテナから受信された温度、湿度、CO2濃度の計測信号のいずれか一つに異常値がある場合の緊急指示情報を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2記載の栽培システム。
【請求項4】
栽培管理サーバーにおいて、栽培プログラムとして、栽培対象の作物に対応した自生環境の再現プログラムが組み込まれていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3いずれか一項に記載の栽培システム。
【請求項5】
栽培管理サーバーに内蔵された栽培プログラムにおいて、出荷先端末からの出荷時期変更情報の受信により、同出荷時期変更情報に従って、各コンテナの温度、湿度、CO2濃度、照度の各栽培条件のいずれか一つ又は複数の設定値を変更することを特徴とする、請求項1ないし請求項4いずれか一項に記載の栽培システム。
【請求項6】
栽培管理サーバーが、栽培管理プログラムに含まれる温度、湿度、CO2濃度、照度を含む栽培条件情報と各コンテナから受信された温度、湿度、CO2濃度の各計測信号を含む栽培管理情報をコンテナ毎に蓄積する栽培管理情報データベースを備えることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の栽培システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−97852(P2011−97852A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253496(P2009−253496)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(509305804)合同会社環境アースエコ (1)
【出願人】(505184104)
【Fターム(参考)】